(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086172
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/00 20100101AFI20240620BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20240620BHJP
【FI】
H01L33/00 K
H01L33/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201163
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲瀬▼ 知弘
【テーマコード(参考)】
5F142
5F241
【Fターム(参考)】
5F142AA54
5F142BA02
5F142BA32
5F142CA11
5F142CB03
5F142CD02
5F142CG04
5F142CG05
5F142CG42
5F142DA13
5F142DA14
5F142DA73
5F142FA28
5F241AA35
5F241AA46
(57)【要約】 (修正有)
【課題】発光素子と波長変換部材との間の位置ずれをより高い精度で検出することができる発光装置の製造方法を提供する。
【解決手段】第1面を備え、主波長が所定の範囲内にある第1光により励起され、前記第1光よりも長波長の第2光を出射する波長変換部材と、前記第1面の一部分に配置される第2面と、前記第2面とは反対の第3面を備え、前記第3面に電極が配置された発光素子を有する積層体の前記第1面及び前記第3面に前記第1光を照射して、前記積層体から戻ってくる前記第1光と前記第2光を含む第3光を取得する工程と、前記第3光から波長が所定の範囲内にある光の成分を抽出して、前記発光素子の第1外形を特定する工程と、前記第3光から波長が所定の範囲内にある光の成分を抽出して、前記波長変換部材の第2外形を特定する工程と、前記第1外形及び前記第2外形から前記波長変換部材と前記発光素子との相対的な位置関係を取得する工程を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を備え、主波長が380nm以上490nm以下の範囲内にある第1光により励起され、前記第1光よりも長波長の第2光を出射可能な波長変換部材と、前記第1面の一部分に配置される第2面と、前記第2面とは反対の第3面とを備え、前記第3面に電極が配置された発光素子とを有する積層体の前記第1面及び前記第3面に、前記第1光を照射して、前記積層体から戻ってくる、前記第1光と前記第2光とを含む第3光を取得する工程と、
前記第3光から、波長が500nm以上570nm以下の範囲内にある光の成分を抽出して、前記発光素子の第1外形を特定する工程と、
前記第3光から、波長が600nm以上680nm以下の範囲内にある光の成分を抽出して、前記波長変換部材の第2外形を特定する工程と、
前記第1外形及び前記第2外形から前記波長変換部材と前記発光素子との相対的な位置関係を取得する工程と、
を有する、発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1面及び前記第3面に前記第1光を照射したときに、前記第3光のうちで、前記第3面により反射される光に含まれる波長が500nm以上570nm以下の範囲内にある光の強度は、前記第2光に含まれる波長が500nm以上570nm以下の範囲内にある光の強度よりも低い、請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記波長変換部材は、前記第1面とは反対の第4面を有し、
前記第3光を取得する工程において、前記積層体は固定部材に固定され、前記固定部材は、前記第4面に接触し、前記第4面よりも広い第5面を有する、請求項1又は2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1面、前記第3面及び前記第5面に前記第1光を照射したときに、前記第3光のうちで、前記第5面により反射される光に含まれる波長が600nm以上680nm以下の範囲内にある光の強度は、前記第2光に含まれる波長が600nm以上680nm以下の範囲内にある光の強度よりも低い、請求項3に記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記位置関係が、予め定められている条件を満たしている場合、
前記第3面を配線基板に対向させ、前記積層体を前記配線基板に実装する工程を有する、請求項1又は2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記位置関係が、前記条件を満たしていない場合、前記積層体を廃棄する工程を有する、請求項5に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(light emitting diode:LED)及び蛍光体板を備えた発光装置においては、LEDが出射した光の一部を蛍光体板が波長変換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-83279号公報
【特許文献2】特開昭63-111405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の発光装置においては、発光ダイオードと蛍光体板との間で位置ずれが生じることがある。このため、発光ダイオードと蛍光体板とを組み合わせた後には、発光ダイオードと蛍光体板との間の相対的な位置関係を測定することが望まれる。しかしながら、発光ダイオード等の発光素子と蛍光体板等の波長変換部材との間の位置ずれをより高い精度で検出することは困難である。
【0005】
本開示は、発光素子と波長変換部材との間の位置ずれをより高い精度で検出することができる発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の一態様によれば、発光装置の製造方法は、第1面を備え、主波長が380nm以上490nm以下の範囲内にある第1光により励起され、前記第1光よりも長波長の第2光を出射可能な波長変換部材と、前記第1面の一部分に配置される第2面と、前記第2面とは反対の第3面とを備え、前記第3面に電極が配置された発光素子とを有する積層体の前記第1面及び前記第3面に、前記第1光を照射して、前記積層体から戻ってくる、前記第1光と前記第2光とを含む第3光を取得する工程と、前記第3光から、波長が500nm以上570nm以下の範囲内にある光の成分を抽出して、前記発光素子の第1外形を特定する工程と、前記第3光から、波長が600nm以上680nm以下の範囲内にある光の成分を抽出して、前記波長変換部材の第2外形を特定する工程と、前記第1外形及び前記第2外形から前記波長変換部材と前記発光素子との相対的な位置関係を取得する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、発光素子と波長変換部材との間の位置ずれをより高い精度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る発光装置の製造方法を示す模式斜視図である。
【
図2】実施形態に係る発光装置の製造方法を示す模式断面図である。
【
図3】実施形態における積層体を配線基板に実装する方法を示す模式平面図(その1)である。
【
図4】実施形態における積層体を配線基板に実装する方法を示す模式平面図(その2)である。
【
図5】実施形態における積層体を配線基板に実装する方法を示す模式平面図(その3)である。
【
図6】実施形態における積層体を配線基板に実装する方法を示す模式断面図(その4)である。
【
図7】実施形態における積層体を配線基板に実装する方法を示す模式平面図(その5)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示を実施するための実施形態を説明する。以下の説明は、本開示の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本開示を以下の記載に限定するものではない。
【0010】
各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態に分けて示す場合があるが、異なる実施形態や実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせは可能である。後に示す実施形態では、先に示した実施形態との異なる事項について主に説明し、先に示した実施形態と共通の事柄について重複する説明を省略することがある。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合がある。
【0011】
本実施形態は発光装置の製造方法に関する。
図1は、実施形態に係る発光装置の製造方法を示す模式斜視図である。
図2は、実施形態に係る発光装置の製造方法を示す模式断面図である。
【0012】
まず、
図1及び
図2に示すように、積層体10に主波長が380nm以上490nm以下の範囲内にある青色光50を照射して、積層体10から戻ってくる光を取得する工程を行う。積層体10は、発光ダイオード(LED)20と、蛍光体板30とを有する。青色光50は第1光の一例である。青色光50は、青色波長成分を主成分とし、若干の緑色波長成分を含んでもよく、赤色波長成分を含まない。
【0013】
蛍光体板30は、第1面31と、第1面31とは反対の第4面32とを備える。蛍光体板30は、例えば、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)蛍光体を含むセラミックスや樹脂等である。例えば、蛍光体板30は、青色光50により励起され、青色光50よりも長波長である緑色波長成分及び赤色波長成分を含む光を出射可能である。蛍光体板30は波長変換部材の一例である。
【0014】
LED20は、基板25と、半導体積層体26と、第1電極23Aと、第2電極23Bとを有する。半導体積層体26は基板25の上に配置されている。LED20は、第2面21と、第2面21とは反対の第3面22とを備える。第2面21は基板25の一つの面であり、第3面22は半導体積層体26の一つの面である。第2面21は第1面31の一部分に配置されている。本実施形態においては、第2面21は第1面31の一部に接して配置されている。また、第2面21は、例えば接着材を介して第1面31の一部に配置されていてもよい。第1電極23A及び第2電極23Bは第3面22に配置されている。第1電極23Aは、平面視で環状の形状を有し、平面形状が角丸正方形の外縁を有する。第2電極23Bは、第1電極23Aの内側に配置されている。例えば、第2面21及び第3面22は第1面31に平行である。第3面22に垂直な方向からの平面視で、第3面22の周囲に第1面31の一部分があり、例えば第3面22は第1面31に囲まれている。第1電極23A及び第2電極23Bを通じて半導体積層体26に電圧が印加され、LED20から光が出射される。LED20は発光素子の一例である。
【0015】
積層体10に青色光50を照射する際には、積層体10を吸着ノズル40に固定しておく。吸着ノズル40は、蛍光体板30の第4面32に接触する第5面41を有する。積層体10が吸着ノズル40に固定された状態で、第3面22に垂直な方向からの平面視で、第1面31の周囲に第5面41の一部分があり、例えば第1面31は第5面41に囲まれている。第5面41の面積は、第4面32の面積よりも広い。吸着ノズル40は、例えばチタン(Ti)等の金属製である。吸着ノズル40の少なくとも第5面41の近傍の部分は、緑色波長成分よりも赤色波長成分を吸収しやすい材料から構成されている。吸着ノズル40は固定部材の一例である。
【0016】
そして、光検出装置60から青色光50を第1面31、第3面22及び第5面41に照射する。なお、光検出装置60は、例えば、青色光50を出射可能な照明と、積層体10から戻ってくる光を取得可能なCMOS(相補型金属酸化膜半導体(Complementary Metal Oxide Semiconductor))カメラとを少なくとも備えることができる。
【0017】
青色光50が照射されると、LED20は第3面22において青色光50を反射し、第3面22から青色光(青色波長成分52Bを主として含む光)が光検出装置60に向けて進む。なお、第3面22から光検出装置60に向けて進む青色光は、青色波長成分52Bを主成分とし、若干の緑色波長成分52Gを含んでもよく、赤色波長成分を含まない。
【0018】
青色光50が照射されると、蛍光体板30は青色光50により励起され、蛍光体板30は緑色波長成分53G及び赤色波長成分53Rを含む光(例えば、黄色光)を出射する。緑色波長成分53G及び赤色波長成分53Rを含む光の一部が第1面31から出射されて光検出装置60に向けて進み、他の一部が蛍光体板30の側面から出射されて吸着ノズル40に到達する。また、蛍光体板30は第1面31において青色光50を反射し、第1面31から青色光(青色波長成分53Bを主として含む光)が光検出装置60に向けて進む。緑色波長成分53G及び赤色波長成分53Rを含む光は第2光の一例である。
【0019】
青色光50が照射されると、吸着ノズル40は第5面41において青色光50を反射し、第5面41から青色光(青色波長成分54Bを主として含む光)が光検出装置60に向けて進む。また、吸着ノズル40は第5面41において、蛍光体板30から出射された緑色波長成分53G及び赤色波長成分53Rを含む光を反射し、第5面41から緑色波長成分54G及び赤色波長成分54Rを含む光の一部が光検出装置60に向けて進む。ただし、第5面41から光検出装置60に向けて進む光の大部分は青色波長成分54Bを含む光である。また、吸着ノズル40が緑色波長成分53Gよりも赤色波長成分53Rを吸収しやすいため、赤色波長成分53Rの光の強度と赤色波長成分54Rの光の強度との差は、緑色波長成分53Gの光の強度と緑色波長成分54Gの光の強度との差よりも大きくなる。
【0020】
このように、青色光50を第1面31、第3面22及び第5面41に照射すると、光検出装置60には、第3面22からの青色波長成分52B及び緑色波長成分52Gを含む光と、第1面31からの赤色波長成分53R、緑色波長成分53G及び青色波長成分53Bを含む光と、第5面41からの赤色波長成分53R、緑色波長成分53G及び青色波長成分53Bを含む光とが戻ってくる。これら光検出装置60に戻ってくる光は第3光の一例である。
【0021】
次いで、光検出装置60に戻ってきた光から緑色波長成分を抽出して、LED20の第1外形を特定する工程を行う。緑色波長成分は、波長が500nm以上570nm以下の範囲内にある光の成分である。緑色波長成分の抽出の際に、緑色波長成分の光強度分布をグレースケール化してもよい。上記のように、蛍光体板30からは少なくとも緑色波長成分53Gを含む光が光検出装置60に戻るが、LED20から光検出装置60に戻る光に含まれる緑色波長成分52Gは僅かである。従って、光検出装置60に戻ってきた光のうちで、第3面22により反射される光に含まれる緑色波長成分52Gの光の強度は、蛍光体板30により出射された光に含まれる緑色波長成分53Gの光の強度よりも低い。このため、緑色波長成分の抽出結果に基づいて、例えばコントラストの強さに基づいて、LED20の第1外形を特定することができる。
【0022】
また、光検出装置60に戻ってきた光から赤色波長成分を抽出して、蛍光体板30の第2外形を特定する工程を行う。赤色波長成分は、波長が600nm以上680nm以下の範囲内にある光の成分である。赤色波長成分の抽出の際に、赤色波長成分の光強度分布をグレースケール化してもよい。上記のように、第5面41から光検出装置60に向けて進む赤色波長成分54Rの光の強度は、赤色波長成分53Rの光の強度よりも低い。つまり、青色光50を第1面31、第3面22及び第5面41に照射したときに、光検出装置60に戻ってきた光のうちで、第5面41により反射された光に含まれる赤色波長成分54Rの光の強度は、蛍光体板30により出射された光に含まれる赤色波長成分53Rの光の強度よりも低い。このため、赤色波長成分の抽出結果に基づいて、例えばコントラストの強さに基づいて、蛍光体板30の第2外形を特定することができる。
【0023】
次いで、LED20の第1外形及び蛍光体板30の第2外形から、蛍光体板30とLED20との相対的な位置関係を取得する工程を行う。
【0024】
このようにして、蛍光体板30とLED20との間の位置ずれをより高い精度で検出することができる。例えば、平面視でLED20及び蛍光体板30の各中心が互いに重なるように設計されている場合、LED20及び蛍光体板30の外形から各中心の位置を得ることにより、それら中心間の距離を位置ずれの量として算出することができる。
【0025】
相対的な位置関係が予め定められている条件を満たしている場合、例えば、算出された位置ずれの量が予め定められている閾値以下である場合、第3面22を配線基板に対向させ、積層体10を配線基板に実装する工程を行う。ここで、積層体10を配線基板に実装する方法の例について説明する。
図3~
図7は、積層体10を配線基板に実装する方法を示す模式平面図又は模式断面図である。この例では、外縁の平面形状が角丸正方形の第1電極23AをLED20が有し、蛍光体板30の平面形状が正方形であり、平面視で、第1電極23A及び蛍光体板30の各中心が互いに重なり、第1電極23Aの互いに平行な2辺が蛍光体板30の互いに平行な2辺と平行となるように設計されているとする。
【0026】
まず、
図3に示すように、配線基板70を準備する。配線基板70の上面に配線73が配置されている。配線73は、第1電極23Aが接続される第1配線73Aと、第2電極23Bが接続される第2配線73Bとを有する。配線基板70には、積層体10が実装される実装予定領域71が設定されている。そして、配線基板70の配線73に基づいて、配線基板70の上面にXY直交座標系を設定し、蛍光体板30の中心30Cを合わせる位置70PのX座標及びY座標を特定する。
【0027】
また、
図4に示すように、第1電極23Aの外縁の形状(第1外形)における対角線の交点から第1電極23Aの中心20Cを特定し、蛍光体板30の第2外形における対角線の交点から蛍光体板30の中心30Cを特定し、中心20Cと中心30Cとの間でのx座標及びy座標の差を検出する。これらの処理は、上記の蛍光体板30とLED20との間の位置ずれの検出として実行することができる。なお、x座標及びy座標は、蛍光体板30の第1面31に設定されたxy直交座標系での座標であり、平面視で第1面31の2辺がx軸と平行であり、他の2辺がy軸と平行である。なお、本実施形態の第1外形のように角が丸い場合、例えば、その角に隣接する2つの辺の接線が交わる点を角として対角線を求めることができる。また、第1外形及び第2外形が、三角形または5つ以上の角を有する正多角形の場合、例えば、その三角形または正多角形の内接円の中心を、LEDの中心及び蛍光体板の中心として特定することができる。
【0028】
次いで、X軸方向及びY軸方向で蛍光体板30の中心30Cが位置70Pに一致し、第1電極23Aが第1配線73Aに接続され、第2電極23Bが第2配線73Bに接続されるようにして、
図5に示すように、積層体10を配線基板70に実装する。積層体10の配線基板70への実装では、第1電極23Aと第1配線73Aとの間に第1バンプ83Aを配置し、第2電極23Bと第2配線73Bとの間に第2バンプ83Bを配置する(
図6参照)。次いで、中心20Cと位置70Pとの間でのX座標及びY座標の差を算出する。
図5に示すように、X軸方向及びY軸方向で蛍光体板30の中心30Cが位置70Pに一致したとしても、中心30Cと中心20Cとの間に位置ずれがあれば、中心20Cと位置70Pとは重ならない。また、X軸方向及びY軸方向で蛍光体板30の中心30Cが位置70Pからずれることもある。なお、積層体10の配線基板70への実装は、例えば、吸着ノズル40に積層体10を固定しながら行う。
【0029】
このようにして、配線基板70に積層体10を実装することができる。その後、配線基板70上に少なくとも積層体10の側面を覆うように被覆部材81を配置し、被覆部材81を加熱又は被覆部材81に光を照射して硬化することにより、
図6に示される発光装置80を完成させる。被覆部材81を配置する方法としては、配線基板70の上方に樹脂吐出装置のノズルを配置し、ノズルの先端から未硬化の樹脂材料を吐出させながら、ノズルを移動させることにより配置することができる。詳細は、例えば特開2018-107371号公報の開示を参照することもできる。また、被覆部材81に用いられる樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂の1種以上を含む樹脂又はハイブリッド樹脂等が挙げられる。被覆部材81には、光反射性物質として、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、チタン酸カリウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライト等を含有させることができる。
【0030】
発光装置80は、配線基板70から積層体10に電源電圧及び制御信号が供給される。そして、LED20が第2面21から青色光を出射する。第2面21から出射された青色光の一部は蛍光体板30を透過する。また、青色光の他の一部は蛍光体板30により波長変換され、赤色波長成分及び緑色波長成分を含む黄色光が蛍光体板30から出射される。そして、蛍光体板30を透過した青色光と蛍光体板30から出射された黄色光との混色により白色光が生成される。なお、1つの配線基板70に実装する積層体10の数、つまりは発光装置80に含まれる積層体10の数は限定されない。なお、
図6は、
図5中のVI-VI線に沿った断面図に相当する。
【0031】
積層体10の実装後には、中心30Cと位置70Pとの間でのX座標及びY座標の差と、中心20Cと中心30Cとの間でのx座標及びy座標の差とから、LED20の中心20Cと位置70Pとの間でのX座標及びY座標の差を算出する。そして、予め定められた数の発光装置の製造毎に、LED20の中心20Cと位置70Pとの間でのX座標及びY座標の差の平均値を算出し、
図7に示すように、この差が0に近づくように、蛍光体板30の中心30Cを合わせる位置70Pを調整する。
【0032】
相対的な位置関係が予め定められている条件を満たしていない場合には、例えば、位置ずれの量が、予め定められている閾値より大きい場合、積層体10を廃棄する工程を行ってもよい。
【0033】
なお、青色光50に代えて、赤色波長成分及び緑色波長成分の光を含む白色光を第1面31、第3面22及び第5面41に照射した場合には、白色光に含まれる赤色波長成分の光が第5面41により反射される。このため、光検出装置60に戻ってくる赤色波長成分54Rの光の強度と赤色波長成分53Rの光の強度との差が小さく、蛍光体板30の第2外形を特定しにくい。また、白色光に含まれる緑色波長成分の光が第3面22により反射され、第3面22から光検出装置60に戻ってくる光にも緑色波長成分が含まれるようになり、LED20の第1外形を特定しにくくなるおそれもある。従って、本実施形態では、光検出装置60からの照射光として青色光50を用いることとしている。
【0034】
また、光検出装置60にて検出される緑色光のスペクトルのピーク波長と青色光のスペクトルのピーク波長との差は小さく、緑色光のスペクトルの一部と青色光のスペクトルの一部とが重なり、第3面22から光検出装置60に戻ってくる光に緑色波長成分が含まれていなくても、緑色波長成分の抽出により第1電極23A及び第2電極23Bを認識できる。一方、光検出装置60にて検出される赤色光のスペクトルのピーク波長と青色光のスペクトルのピーク波長との差は大きく、赤色光のスペクトルと青色光のスペクトルとは重ならず、第3面22から光検出装置60に戻ってくる光に赤色波長成分が含まれない場合、赤色波長成分の抽出によっては第1電極23A及び第2電極23Bを認識しにくい。第1電極23A及び第2電極23Bの認識はLED20の向きの特定に好ましい。例えば、LED20が4回回転対称の平面形状を有し、かつ第1電極23A及び第2電極23Bが4回回転対称の平面形状を有していない場合、第1外形の特定だけでは、LED20が所定の向きで配置されているのか、所定の向きから時計回りに90度回転して配置されているのか特定できない。これに対し、第1電極23A及び第2電極23Bを認識できれば、第1電極23A及び第2電極23Bの配置からLED20の向きを特定することができる。従って、本実施形態では、LED20の第1外形の特定に際して、緑色波長成分を抽出することとしている。
【0035】
また、第1面31から光検出装置60に戻ってくる光に青色波長成分53Bが含まれ、第5面41から光検出装置60に戻ってくる光に青色波長成分54Bが含まれている。そして、上記のように、光検出装置60にて検出される緑色光のスペクトルのピーク波長と青色光のスペクトルのピーク波長との差は小さく、緑色光のスペクトルの一部と青色光のスペクトルの一部とが重なる。このため、光検出装置60に戻ってきた光から緑色波長成分を抽出した場合、青色波長成分の影響を受けて蛍光体板30と吸着ノズル40とを区別しにくい。一方、光検出装置60にて検出される赤色光のスペクトルのピーク波長と青色光のスペクトルのピーク波長との差は大きく、赤色光のスペクトルと青色光のスペクトルとは重ならないため、光検出装置60に戻ってきた光から赤色波長成分を抽出した場合、青色波長成分の影響を受けにくく、蛍光体板30と吸着ノズル40とを区別しやすく、蛍光体板30の第2外形を特定することができる。従って、本実施形態では、蛍光体板30の第2外形の特定に際して、赤色波長成分を抽出することとしている。
【0036】
更に、吸着ノズル40は、実装の際に300℃程度の熱負荷を受け、繰り返して使用されると、例えば、その吸着面の状態が、酸化等によって変色したり、表面粗さが大きくなったりするなどの変化が生じる。このように、吸着ノズル40の吸着面の状態が変化するに連れて、第5面41から光検出装置60に向けて進む緑色波長成分54Gの光の強度と第1面31から光検出装置60に向けて進む緑色波長成分53Gの光の強度との差が小さくなることがある。一方、吸着ノズル40の吸着面の状態が変化しても、第5面41から光検出装置60に向けて進む赤色波長成分54Rの光の強度と第1面31から光検出装置60に向けて進む赤色波長成分53Rの光の強度との差は大きいままである。このため、緑色波長成分を用いた場合には、吸着ノズル40の吸着面の状態が変化する程度によっては蛍光体板30と吸着ノズル40とを区別しにくいことがあるが、赤色波長成分を用いることで、吸着ノズル40が繰り返し使用されて吸着面の状態が変化したとしても、安定して蛍光体板30の第2外形を特定することができる。
【0037】
なお、第1外形を特定する工程、第2外形を特定する工程及び相対的な位置関係を取得する工程は、例えば、光検出装置60により行われてもよく、光検出装置60に接続されたコンピュータ等の演算装置により行われてもよい。
【0038】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0039】
本明細書は、下記の実施形態を含む。
1.
第1面を備え、主波長が380nm以上490nm以下の範囲内にある第1光により励起され、前記第1光よりも長波長の第2光を出射可能な波長変換部材と、前記第1面の一部分に配置される第2面と、前記第2面とは反対の第3面とを備え、前記第3面に電極が配置された発光素子とを有する積層体の前記第1面及び前記第3面に、前記第1光を照射して、前記積層体から戻ってくる、前記第1光と前記第2光とを含む第3光を取得する工程と、
前記第3光から、波長が500nm以上570nm以下の範囲内にある光の成分を抽出して、前記発光素子の第1外形を特定する工程と、
前記第3光から、波長が600nm以上680nm以下の範囲内にある光の成分を抽出して、前記波長変換部材の第2外形を特定する工程と、
前記第1外形及び前記第2外形から前記波長変換部材と前記発光素子との相対的な位置関係を取得する工程と、
を有する、発光装置の製造方法。
2.
前記第1面及び前記第3面に前記第1光を照射したときに、前記第3光のうちで、前記第3面により反射される光に含まれる波長が500nm以上570nm以下の範囲内にある光の強度は、前記第2光に含まれる波長が500nm以上570nm以下の範囲内にある光の強度よりも低い、上記1に記載の発光装置の製造方法。
3.
前記波長変換部材は、前記第1面とは反対の第4面を有し、
前記第3光を取得する工程において、前記積層体は固定部材に固定され、前記固定部材は、前記第4面に接触し、前記第4面よりも広い第5面を有する、上記1又は2に記載の発光装置の製造方法。
4.
前記第1面、前記第3面及び前記第5面に前記第1光を照射したときに、前記第3光のうちで、前記第5面により反射される光に含まれる波長が600nm以上680nm以下の範囲内にある光の強度は、前記第2光に含まれる波長が600nm以上680nm以下の範囲内にある光の強度よりも低い、上記3に記載の発光装置の製造方法。
5.
前記位置関係が、予め定められている条件を満たしている場合、
前記第3面を配線基板に対向させ、前記積層体を前記配線基板に実装する工程を有する、上記1から4のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。
6.
前記位置関係が、前記条件を満たしていない場合、前記積層体を廃棄する工程を有する、上記5に記載の発光装置の製造方法。
【符号の説明】
【0040】
10:積層体
20:LED
21:第2面
22:第3面
23A:第1電極
23B:第2電極
30:蛍光体板
31:第1面
32:第4面
40:吸着ノズル
41:第5面
50:青色光
52B、53B、54B:青色波長成分
52G、53G、54G:緑色波長成分
53R、54R:赤色波長成分
60:光検出装置
70:配線基板
80:発光装置