(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086224
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】物体検出装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/524 20060101AFI20240620BHJP
G01S 15/931 20200101ALI20240620BHJP
G01S 15/08 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G01S7/524 Q
G01S15/931
G01S15/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201248
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】318006365
【氏名又は名称】JRCモビリティ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】吹野 幸治
(72)【発明者】
【氏名】杉村 慎治
(72)【発明者】
【氏名】田口 豊
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB12
5J083AB13
5J083AC16
5J083AC30
5J083AE01
5J083BA01
5J083BB20
5J083BE19
5J083CA01
(57)【要約】
【課題】残響を最小化するための残響抑圧信号のパラメータを最適化することが可能な物体検出装置を提供する。
【解決手段】超音波等の送信波を送信して物体からの反射波から物体の存在を検出する物体検出装置1は、その構成として、物体検出に使用する送信波(超音波)を出力させるための駆動信号S1を出力する駆動信号発生回路11と、残響を抑圧させるための残響抑圧信号S2を出力する残響抑圧信号発生回路12と、送信信号S3を超音波(送信波)Uに変換して出力し、超音波Uが物体により反射した反射波を受信するトランスデューサ30と、反射波に含まれる残響を最小化するために残響抑圧信号S2のパラメータを最適化する校正処理部51と、デジタル信号S5に対する処理を行ってベースバンド信号に変換して物体の存在を検出する検出処理部52と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体に対して送信波を送信し、前記物体からの反射波を受信し、前記反射波に基づいて前記物体を検出して当該物体までの距離を測定する物体検出装置であって、
前記送信波を送信し、前記反射波を受信する送受信手段と、
前記送受信手段に対して、前記送信波を送信させる駆動信号を出力する駆動信号発生手段と、
前記送受信手段に対して、前記送信波の残響を抑圧するための残響抑圧信号を出力する残響抑圧信号発生手段と、
前記反射波をベースバンド信号に変換し、前記ベースバンド信号に基づいて前記物体の存在を検出して当該物体までの距離を測定する検出処理手段と、
前記反射波に含まれる残響を最小化するために前記残響抑圧信号のパラメータを最適化する校正処理手段と、を備え、
前記残響抑圧信号発生手段は、前記残響抑圧信号を出力するためのパラメータとして振幅及び位相を使用し、
前記校正処理手段は、前記パラメータである前記残響抑圧信号の振幅及び位相を、前記残響抑圧信号の振幅及び位相に対応する前記残響の大きさを示す残響面積の変化率を示す勾配を割り出し、前記残響抑圧信号の振幅及び位相を調整して前記残響面積が最小となるように決定する、
ことを特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
前記校正処理手段は、前記残響面積を、前記残響抑圧信号の振幅及び位相により偏微分して前記勾配をそれぞれ割り出し、前記勾配及び前記残響面積に対して更新する数値の重みを決める学習率を乗じたものを更新差分としてパラメータを順次更新し、前記残響面積が最小となるように決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記校正処理手段は、前記残響面積を、前記勾配の正負に基づき前記残響抑圧信号の振幅及び位相を調整して前記残響面積が最小となるように決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記校正処理手段は、前記残響面積を、前記残響抑圧信号の振幅と位相とを交互に調整して前記残響面積が最小となるように決定する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記校正処理手段は、前記残響面積を、前記残響抑圧信号の振幅と位相とを同時に調整して前記残響面積が最小となるように決定する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記校正処理手段は、前記残響抑圧信号の振幅及び位相を調整する際、複数回更新を行って得られた最後の前記残響抑圧信号の振幅及び位相の値と、その直近の1または複数の前記残響抑圧信号の振幅及び位相の値との平均値を割り出し、前記平均値を前記残響抑圧信号の振幅及び位相の値とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項7】
前記物体検出装置の温度を計測する温度センサを備え、
前記校正処理手段は、前記温度センサの計測結果である温度が変化した場合に、前記残響抑圧信号の振幅及び位相を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項8】
温度の値に対応して前記残響抑圧信号の振幅及び位相を決定する温度テーブルを記憶し、
前記校正処理手段は、前記温度センサの計測結果である温度に対応する前記温度テーブルにおける前記残響抑圧信号の振幅及び位相の値を調整して前記残響面積が最小となるように前記残響抑圧信号の振幅及び位相を決定する、
ことを特徴とする請求項7に記載の物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物体を検出する物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波のような送信波を送信し、なんらかの物体が存在すると当該物体から送信波が反射されるので、その反射波を検出することで当該物体の存在を検出し、当該物体までの距離を測定する物体検出の技術が知られている。このような物体検出の技術は、例えば自動車等の車両が物体に衝突することを回避するため、物体を検出して当該物体までの距離を測定するために用いられている。
【0003】
物体検出の技術においては、送信波を送信する超音波センサの近傍では、送信波の残響により物体の検出ができない、という課題がある。そのため、高い減衰成果を実現するための逆パルスを制御する超音波送受信装置が知られている(特許文献1参照)。この超音波送受信装置は、位相位置(遅延時間)と信号強度(パルスの数と幅)とをパラメータとする逆パルスを付加する制御を行っており、残響をモニタリングしてトレーニングをすることによりパラメータの最適値をとるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の超音波送受信装置は、2つのパラメータの組み合わせに対して大きなステップ幅でパラメータを調節し、残響の大きさを示す残響面積を調べて残響面積が最も小さくなる組み合わせを探索し、徐々にステップ幅を小さくすることで最適点に到達している。しかしながら、このような手法は、最適点に到達するまでに長時間を要する、という課題がある。
【0006】
また、複数のパラメータの組み合わせに対して、任意の初期値から最短で最適点に到達する手法として、最急降下法という公知技術がある。しかしながら、この最急降下法では、演算量が大きく、安価な超音波センサに適用することは困難であった。
【0007】
そこでこの発明は、演算量を簡素化し、パラメータの分解能が荒くても安定して収束させることが可能な、物体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は、物体に対して送信波を送信し、前記物体からの反射波を受信し、前記反射波に基づいて前記物体を検出して当該物体までの距離を測定する物体検出装置であって、前記送信波を送信し、前記反射波を受信する送受信手段と、前記送受信手段に対して、前記送信波を送信させる駆動信号を出力する駆動信号発生手段と、前記送受信手段に対して、前記送信波の残響を抑圧するための残響抑圧信号を出力する残響抑圧信号発生手段と、前記反射波をベースバンド信号に変換し、前記ベースバンド信号に基づいて前記物体の存在を検出して当該物体までの距離を測定する検出処理手段と、前記反射波に含まれる残響を最小化するために前記残響抑圧信号のパラメータを最適化する校正処理手段と、を備え、前記残響抑圧信号発生手段は、前記残響抑圧信号を出力するためのパラメータとして振幅及び位相を使用し、前記校正処理手段は、前記パラメータである前記残響抑圧信号の振幅及び位相を、前記残響抑圧信号の振幅及び位相に対応する前記残響の大きさを示す残響面積の変化率を示す勾配を割り出し、前記残響抑圧信号の振幅及び位相を調整して前記残響面積が最小となるように決定する、ことを特徴とする。
【0009】
この発明に係る物体検出装置は、前記残響面積を、前記残響抑圧信号の振幅及び位相により偏微分して前記勾配をそれぞれ割り出し、前記勾配及び前記残響面積に対して更新する数値の重みを決める学習率を乗じたものを更新差分としてパラメータを順次更新し、前記残響面積が最小となるように決定する、ようにしてもよい。
【0010】
この発明に係る物体検出装置は、前記校正処理手段を、前記勾配の正負(方向)に基づき前記残響抑圧信号の振幅及び位相を調整して前記残響面積が最小となるように決定する、ようにしてもよい。
【0011】
この発明に係る物体検出装置は、前記校正処理手段を、前記残響抑圧信号の振幅と位相とを交互に調整して前記残響面積が最小となるように決定する、ようにしてもよい。
【0012】
この発明に係る物体検出装置は、前記校正処理手段を、前記残響抑圧信号の振幅と位相とを同時に調整して前記残響面積が最小となるように決定する、ようにしてもよい。
【0013】
この発明に係る物体検出装置は、前記校正処理手段を、前記残響抑圧信号の振幅及び位相を調整する際、複数回更新を行って得られた最後の前記残響抑圧信号の振幅及び位相の値と、その直近の1または複数の前記残響抑圧信号の振幅及び位相の値との平均値を割り出し、前記平均値を前記残響抑圧信号の振幅及び位相の値とする、ようにしてもよい。
【0014】
この発明に係る物体検出装置は、前記物体検出装置の温度を計測する温度センサを備え、前記校正処理手段を、前記温度センサの計測結果である温度が変化した場合に、前記残響抑圧信号の振幅及び位相を決定する、ようにしてもよい。
【0015】
この発明に係る物体検出装置は、温度の値に対応して前記残響抑圧信号の振幅及び位相を決定する温度テーブルを記憶し、前記校正処理手段を、前記温度センサの計測結果である温度に対応する前記温度テーブルにおける前記残響抑圧信号の振幅及び位相の値を調整して前記残響面積が最小となるように前記残響抑圧信号の振幅及び位相を決定する、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る物体検出装置によれば、校正処理手段を、パラメータである残響抑圧信号の振幅及び位相を、振幅及び位相に対応する残響の大きさを示す残響面積の変化率を示す勾配を割り出し、残響抑圧信号の振幅及び位相を調整して残響面積が最小となるように残響抑圧信号の振幅及び位相を決定するようにしているので、最適なパラメータである振幅及び位相をより簡易かつ短時間に決定することが可能となる。
【0017】
この発明に係る物体検出装置によれば、残響抑圧信号の振幅及び位相により残響面積を偏微分して勾配をそれぞれ割り出し、勾配及び残響面積に対して更新する数値の重みを決める学習率を乗じたものを更新差分としてパラメータを更新するようにした場合には、パラメータを順次更新しながら残響面積を減少させるので、最適な振幅及び位相を確実に決定することが可能となる。
【0018】
この発明に係る物体検出装置によれば、勾配の正負に基づき残響抑圧信号の振幅及び位相を調整して割り出すようにした場合には、パラメータを順次更新して割り出す処理を簡略化することができるので、最適なパラメータである振幅及び位相をより簡易に決定することが可能となる。
【0019】
この発明に係る物体検出装置によれば、残響抑圧信号の振幅と位相とを交互に調整して残響面積が最小となるようにした場合には、2つのパラメータの勾配を片方ずつ求めながら順次更新することにより、両方同時に更新する場合に比べ、より安定し確実に決定することが可能となる。
【0020】
この発明に係る物体検出装置によれば、複数回更新を行って得られた最後の残響抑圧信号の振幅及び位相の値と、その直近の1または複数の残響抑圧信号の振幅及び位相の値との平均値を割り出して振幅及び位相の値とするようにした場合には、収束点における振動による誤差を緩和することが可能となる。
【0021】
この発明に係る物体検出装置によれば、物体検出装置温度を計測する温度センサを備え、校正処理手段を、温度センサの計測結果である温度が変化した場合に残響抑圧信号の振幅及び位相を決定するようにした場合には、残響がトランスデューサを含むアナログ素子の温度特性により変化するため、温度の変化に応じた最適なパラメータを決定することが可能となる。
【0022】
この発明に係る物体検出装置によれば、温度の値に対応して残響抑圧信号の振幅及び位相を決定する温度テーブルを記憶し、温度に対応する温度テーブルの振幅及び位相の値を調整して振幅及び位相を決定するようにした場合には、温度の変化に応じた最適なパラメータをより簡易に決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】従来の物体検出装置による、物体からの距離に対応する反射波の振幅を示すグラフである。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る物体検出装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図2の物体検出装置1における駆動信号S1及び残響抑圧信号S2の例を示すグラフである。
【
図4】
図2の物体検出装置1における、校正処理部51による最急降下法のパラメータ更新式の例を示す図である。
【
図5】
図2の物体検出装置1における、校正処理部51による最急降下法のパラメータ更新式の他の例を示す図である。
【
図6】
図5のパラメータ更新式による、校正処理部51による最急降下法による残響面積の収束の例を示す図である。
【
図7】
図2の物体検出装置1によるパラメータ更新処理を示すフローチャートである。
【
図8】
図2の物体検出装置1による、物体からの距離に対応する反射波の振幅を示すグラフである。
【
図9】本発明の実施の形態2に係る物体検出装置1Aの概略構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0025】
<概要>
実施の形態に係る物体検出装置は、物体検出のために超音波のような送信波を送信し、なんらかの物体、例えば障害物が存在すると、当該物体から送信波が反射されるので、その反射波を検出することで当該物体の存在を検出して当該物体までの距離を測定する装置である。このような物体検出では、上記のように、送信波を送信する超音波センサの近傍では、送信波の残響により残響振動が生じるため、残響振動によるノイズが反射波に混在するために物体の検出ができないことが課題となっている。
【0026】
図1は、従来の物体検出装置による、物体からの距離に対応する反射波の振幅を示すグラフである。
図1に示すグラフには、物体検出のために送信した送信波(超音波)からの反射波の挙動を示す曲線L1が描画されており、横軸が物体からの距離、縦軸が振幅を示している。曲線L1に示すように、物体検出装置の検出対象として障害物を設置した箇所を示す距離では、反射波の強度を示す振幅が大きくなっている。このとき、曲線L1の振幅が直線L2に示す閾値を超えた場合、当該距離になんらかの物体があると判定するように構成されており、直線L2に示す閾値は、曲線L1の挙動に合わせて適切な値が設定されている。
【0027】
ここで、
図1に示す残響エリアA1は、上記のように送信波の残響により残響振動が生じる距離の範囲を示しており、超音波センサの近傍が残響エリアA1となっている。残響エリアA1では、残響振動によるノイズが反射波と共に反応しており、直線L2の閾値以上に振幅が大きくなっている。そのため、残響エリアA1は、送信波の残響により物体検出不能としている。
【0028】
上記の特許文献1に記載の超音波送受信装置では、位相位置と信号強度とをパラメータとする逆パルス(残響抑圧信号)を送信信号に付加する制御をしており、トレーニングアルゴリズムにより、最適なパラメータを設定している。特許文献1に記載のトレーニングアルゴリズムは、2つのパラメータの組み合わせに対して大きなステップ幅でパラメータを調節し、残響の大きさを示す残響面積を調べて残響面積が最も小さくなる組み合わせを探索し、徐々にステップ幅を小さくすることで最適点に到達する、というものである。しかしながら、このような手法は、最適点に到達するまでに長時間を要していた。
【0029】
本願発明者は、このような残響を最小化するための、演算量を簡素化し、パラメータの分解能が荒くても安定して収束させるため、残響抑圧信号のパラメータ探索に最適に改良された最急降下法を用いて、残響抑圧信号のパラメータである振幅及び位相を最適化するための演算量を簡素化することを確認した。以下、このような構成について説明する。なお、以下の説明では、本発明の要点には関係しない構成、回路素子については図示および説明を省略するものとし、図示や説明がなされていないとしても物体検出装置に必要とされる構成、回路素子が適宜備えられているものとする。
【0030】
<実施の形態1>
(物体検出装置の全体構成)
図2は、本発明の実施の形態1に係る物体検出装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。
図2に示す物体検出装置1は、物体検出及び当該物体までの距離測定のために超音波のような送信波を送信することで物体からの反射波から物体の存在を検出する装置であり、上位制御装置2からの制御信号により動作が行われ、検出結果信号を送信する。上位制御装置2は、物体検出装置1が実装される装置であり、物体検出装置1に物体検出を行わせて検出結果信号によりユーザ出力等の処理を行う装置である。上位制御装置2の例は、物体検出装置1が自動車に搭載されて人や障害物等の存在を検出する装置として実装される場合における、ECU(Electronic Control Unit)である。
【0031】
物体検出装置1は、主として、送信波形生成回路10と、送信回路20と、トランスデューサ30と、受信回路40と、制御回路50と、を備える。
【0032】
送信波形生成回路10は、制御回路50からの制御信号に応じて、送信回路20に対して物体検出に使用する送信波(超音波)を出力させるための駆動信号を出力し、残響を抑圧させるための残響抑圧信号を出力する回路構成である。送信波形生成回路10は、主として、駆動信号発生回路11と、残響抑圧信号発生回路12とを含む。
【0033】
駆動信号発生回路(駆動信号発生手段)11は、物体検出に使用する送信波を出力させるための駆動信号S1を生成して出力する回路構成であり、例えば、矩形波によるバースト信号であり、周波数が超音波となる1波~32波の駆動信号S1を出力する。駆動信号発生回路11が出力する駆動信号S1の送信時間の長さは、物体検出を行いたい距離により適切に設定される。設定値は、工場出荷時に定数として持っていてもよいし、上位制御装置2により適時設定されてもよい。
【0034】
残響抑圧信号発生回路(残響抑圧信号発生手段)12は、残響を抑圧させるための残響抑圧信号S2を生成して出力する回路構成であり、例えば、矩形波によるバースト信号であり、残響抑圧信号S2に対してパラメータである振幅及び位相、ならびに周波数が調整された1波~4波の残響抑圧信号S2を、駆動信号S1の後に出力する。
【0035】
駆動信号発生回路11が出力する駆動信号S1、残響抑圧信号発生回路12が出力する残響抑圧信号S2について、以下に説明する。
図3は、
図2の物体検出装置1における駆動信号S1及び残響抑圧信号S2の例を示すグラフであり、D/A変換される前のデジタル信号の例を示している。
図3に示す駆動信号S1は、上記のように所定の周波数及び振幅に設定された、矩形波によるバースト信号であり、周波数が超音波となる1波~32波の信号波形を有している。なお、駆動信号S1及び残響抑圧信号S2がD/A変換された後のアナログ信号である場合、通常は片電源となるため、
図3に示すGNDの位置は、駆動信号S1及び残響抑圧信号S2が表示されている位置よりも縦軸方向の下方向に位置することになるが、図示は省略する。
【0036】
図3に示す残響抑圧信号S2は、上記のように駆動信号S1に対して振幅及び位相、ならびに周波数が調整された、矩形波によるバースト信号であり、1波~4波の信号波形を有している。残響抑圧信号S2は、
図3に示すように、振幅Amp、位相P、及び周波数1/2Tとなっており、これらの値は、後述する校正処理部51により調整される。
【0037】
送信回路(送受信手段)20は、駆動信号発生回路11が生成した駆動信号S1、及び残響抑圧信号発生回路12が生成した残響抑圧信号S2を受け付けると、送信信号S3としてトランスデューサ30へ出力し、トランスデューサ30に対して物体検出に使用する送信波(超音波)を出力させる回路構成である。なお、送信回路(送受信手段)20は、昇圧回路であるトランス、トランスデューサ30のための整合回路、デジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換器等を、必要に応じて備えてもよい。
【0038】
トランスデューサ(送受信手段)30は、駆動信号発生回路11が生成した駆動信号S1、及び残響抑圧信号発生回路12が生成した残響抑圧信号S2を含めた送信信号S3を超音波(送信波)Uに変換して出力する装置である。また、トランスデューサ30は、出力した超音波Uが物体により反射した反射波を受信し、電気信号に変換した受信信号S4を受信回路40へ出力する装置である。
【0039】
受信回路(送受信手段)40は、トランスデューサ30が送信した受信信号S4を受け付けると、受信信号S4に含まれる不要なノイズを除去し、デジタル信号S5に変換して検出処理部52へ出力する回路構成である。受信回路40は、フィルタ、増幅回路、A/D変換器等により構成されている。
【0040】
制御回路50は、記憶されているプログラムを実行することにより物体検出装置1全体を制御し、デジタル信号S5から物体の検出を行い、残響抑圧信号のパラメータの最適化を行う回路構成である。制御回路50は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory),ストレージなどの記憶媒体、ユーザインタフェースなどにより構成される。また、制御回路50は、主として、校正処理部51と、検出処理部52とを含む。
【0041】
校正処理部(校正処理手段)51は、トランスデューサ30が受信した反射波に含まれる残響を最小化するため、残響抑圧信号S2のパラメータを最適化する回路構成である。校正処理部51は、具体例として、残響抑圧信号S2のパラメータである振幅及び位相について、デジタル信号S5を直交検波等することで得られる、受信信号S4における残響の大きさを示す残響面積を最小化するため、最急降下法と呼ばれるアルゴリズムを用いて振幅及び位相のパラメータを最適化する。校正処理部51による最急降下法のアルゴリズムを用いた処理内容は、後述する。
【0042】
検出処理部(検出処理手段)52は、受信回路40から送信されたデジタル信号S5に対して、直交検波または包絡線検波等の処理を行ってベースバンド信号に変換し、ベースバンド信号に基づいて物体の存在を検出する回路構成である。検出処理部52は、例えば、ベースバンド信号の振幅を所定の閾値と比較して当該閾値を超えている場合、物体が存在していると検出する。この閾値は、固定値でもよく、デジタル信号S5の挙動に応じて決定してもよい。
【0043】
(最急降下法のアルゴリズム)
校正処理部51が振幅及び位相のパラメータを最適化するために行う最急降下法のアルゴリズムについて、以下に説明する。
図4は、
図2の物体検出装置1における、校正処理部51による最急降下法のパラメータ更新式の例を示す図である。
図4に示す数1の式は、最急降下法によるパラメータ更新を行うための式であり、現在のパラメータに対して所定の演算を行うことにより次のパラメータを割り出すように構成されている。数1に示す式の要素F1は、割り出す次のパラメータを示し、要素F2は、現在のパラメータを示し、要素F3は、学習率を示し、要素F4は、パラメータの変化率を示す勾配を示し、要素F5は、損失と呼ばれる要素であり、残響面積を示している。要素F5で示される残響面積とは、残響抑圧信号のパラメータである振幅及び位相の値によって変化する残響の大きさを示す指標であり、残響の大きさをパラメータ更新の量に反映させるために学習率と勾配に乗算される値である。
【0044】
校正処理部51が行う最急降下法とは、
図4の数1の式に示すように、現在のパラメータに対して、実測することで入手した残響面積とパラメータとの偏微分であるそれぞれの勾配と残響面積に学習率を乗じたものを更新差分としてそれぞれのパラメータを更新することを繰り返すことで、最短で最適なパラメータに到達するアルゴリズムである。本発明の場合で説明すると、要素F5の残響面積は、残響抑圧信号の振幅及び位相によって変化する実測値である。実測によって得られた残響面積を振幅及び位相でそれぞれ偏微分することで、要素F4に示す勾配、要素F5に示す残響面積をそれぞれ得ることができる。そして、数1に示す式の演算を順次行うことにより、要素F1のパラメータを順次更新し最適値に近付けていく。このようなアルゴリズムにより、残響面積が大きいときは更新差分が大きくなり、最適点付近では勾配や残響面積が小さくなることで安定性を得ることができる。本願発明者は、実際の装置による実測により残響面積を測定し、30回~50回の演算でパラメータが残響面積を最小とする最適な値に収束することを確認した。
【0045】
なお、要素F3の学習率は、1回の演算において更新する数値の重みを決める値であり、通常は小さな正の値である。本願発明者は、上記の実測により最適な値を設定している。このような演算により、最適なパラメータである振幅及び位相を確実に割り出すことを可能としている。また、数2に示す勾配の式における分母が0にならないようにするため、パラメータwは、最低でも最小桁の更新を行うようにする。
【0046】
図5は、
図2の物体検出装置1における、校正処理部51による最急降下法のパラメータ更新式の他の例を示す図である。
図5に示す数1の式は、残響面積が必ず正の値となるため2値化すると1となるため、要素F5を省略したものである。また、要素F4に示す勾配も2値化するため、数1の下に範囲を示すように+1または-1となり、学習率との乗算も省略され、更新差分は学習率のプラスまたはマイナスとなる。数2の式は、勾配の符号(プラスまたはマイナス)のみを割り出すための式であり、分母であるF7と分子であるF6のそれぞれで演算後にプラスかマイナスかの判定を行い、その組み合わせで勾配の正負を判定する。この操作により、勾配を求める際の除算を回避し、校正処理部51に必要な回路規模またはCPUに対する演算負荷を低減することを図っている。
【0047】
より具体的に説明すると、要素F6では、残響面積の値を24bitの大小比較演算により符号を示す1bitの値のみを抽出し、要素F7では、パラメータの値を8bitの大小比較演算により符号を示す1bitの値のみを抽出している。これらの組み合わせにより、勾配の符号(プラスまたはマイナス)のみを割り出している。本願発明者は、このような簡略化のため、簡略化しない場合と比較しても十分に最小値に収束することを確認した。このような演算により、最適なパラメータである振幅及び位相を簡易に、ハードウェア構成への負荷を軽減して割り出すことを可能としている。
【0048】
図6は、
図5のパラメータ更新式による、校正処理部51による最急降下法による残響面積の収束の例を示す図である。
図6に示すグラフは、校正処理部51によるパラメータ更新処理を行った回数に応じて、パラメータである振幅及び位相、ならびに残響面積がどのように変化したかを示しており、縦軸がそれぞれの値(残響面積は初期値からの相対値)の変化、横軸が更新回数を示している。また、このグラフは、曲線L3が位相、曲線L4が振幅、曲線L5が残響面積の変化を示している。
【0049】
図6に示すように、曲線L3(位相)は処理回数45回前後で所定の値に収束し、曲線L4(振幅)は処理回数30回前後で所定の値に収束し、曲線L5(残響面積)は上下の幅があるものの処理回数45回前後で所定の値に収束していることが分かる。ここで、
図6に示すように、パラメータが収束した処理回数(45回)を前後として、収束するまでの領域を加速領域、収束した後の領域を安定領域として二つの領域に分け、それぞれで異なる学習率を割り当てている。そうすることで、
図5のパラメータ更新式は、上記のように勾配の符号(プラスまたはマイナス)のみを割り出すものであり、
図4に示すパラメータ更新式と比較すると簡略化したものであるが、
図4のパラメータ更新式による安定領域までの処理回数には、有意な差が見られなかった。本来、このようにパラメータの更新差分を2値化すると、勾配や残響面積が大きいときには更新差分を大きくとる最急降下法の利点を失い最適点への収束に要する更新回数が増加し、校正に要する時間が長くなり性能が劣化することが予想される。しかし、パラメータ更新を行う為の要素である残響面積を実測により求めているため、測定の度にランダムな測定誤差が混入する。それによる発散を抑える為、
図4に示す一般的な最急降下法を用いる場合は、学習率をより小さな値にしなければならない。
図5に示すパラメータ更新方法を用いる場合は、一回の更新差分の大きさが学習率の値に固定化されていることで発散を防止し、また2値化のため測定誤差に対する耐性も向上している。そのため、このような簡略化した更新処理であっても、本実施の形態の効果を十分に発揮している。
【0050】
なお、
図5のパラメータ更新式における要素F3の学習率は、加速領域では任意の設定値、安定領域では1としている。
【0051】
(処理の流れ)
図7を参照しながら、物体検出装置1が実行する、パラメータ更新処理の流れの一例について説明する。
図7は、
図2の物体検出装置1によるパラメータ更新処理を示すフローチャートである。
【0052】
図7に示すフローチャートの処理は、
図2の上位制御装置2からの制御信号により動作が行われてもよく、所定の期間ごと(例えば、1日1回、1週間に1回)に自動で動作が行われてもよい。
【0053】
ステップS101の処理として、制御回路50では、前回の処理で更新を行ったパラメータによる残響面積を測定して取得する。この処理は、今回のパラメータ更新により残響面積が増加、すなわち当該処理によりパラメータが悪化することを防止するために行われる。
【0054】
ステップS102の処理として、制御回路50では、ステップS102~S106のループ処理の回数が、あらかじめ設定された所定の回数で処理を停止するため、所定の回数以上であるか否かを判定する。所定の回数以上である場合(「Y」の場合)、ステップS107へ進み、所定の回数未満である場合(「N」の場合)、ステップS103へ進む。
【0055】
ステップS103の処理として、制御回路50の校正処理部51では、現在の残響抑圧信号S2の振幅及び位相から、残響面積を測定して取得する。
【0056】
ステップS104の処理として、制御回路50では、ステップS102~S106のループ処理の回数に応じた処理の判定を行うため、処理回数を判定する。初回(1回目)である場合、ステップS102へ進み、2回目以上で偶数回である場合、ステップS105へ進み、2回目以上で奇数回である場合、ステップS106へ進む。
【0057】
ステップS105の処理として、制御回路50の校正処理部51では、振幅パラメータについて、
図4または
図5に示す、最急降下法によるパラメータ更新式による演算を行い、次の振幅パラメータを取得する。
【0058】
ステップS106の処理として、制御回路50の校正処理部51では、位相パラメータについて、
図4または
図5に示す、最急降下法によるパラメータ更新式による演算を行い、次の位相パラメータを取得する。
【0059】
ステップS104~S106のような処理を行うのは、次のパラメータを取得する処理において、振幅パラメータと位相パラメータとを交互に取得して更新するためである。本願発明者は、振幅パラメータと位相パラメータとを交互に取得することで、純粋にパラメータ毎の偏微分を求め、それぞれの勾配に適用することが可能になることを確認した。このような演算により、最適なパラメータである振幅及び位相を適切に決定することを可能としている。
【0060】
なお、ステップS104~S106のように振幅パラメータと位相パラメータとを交互に取得する理由は、上記の数1に示すように勾配は偏微分により割り出されるため、このような処理により、振幅パラメータと位相パラメータとを交互に偏微分しているのと同じような処理になるためである。ただし、このように振幅パラメータと位相パラメータとを交互に処理するのは例示であり、交互に処理したほうが、効果が高くなるため望ましいが、振幅パラメータと位相パラメータとを同時に更新してもよい。
【0061】
ステップS107の処理として、制御回路50では、例えば規定の回数更新を実行した結果得られた最後のパラメータの値と、終了直前のパラメータの値とで平均値を割り出して更新候補のパラメータとする。終了直前のパラメータの値は、例えば直近の3つのパラメータであり、最後のパラメータを含めた4つのパラメータの値の平均値を割り出す。ただし、平均値を割り出すのは4つのパラメータの値の平均値に限られず、例えば3つまたは5つでもよい。この処理は、収束点における振動による誤差を緩和するためである。
【0062】
ステップS108の処理として、制御回路50では、更新前のパラメータによる残響面積(ステップS101で測定)の値と、更新候補のパラメータによる残響面積の値とを比較し、残響面積がより小さいパラメータを採用し、記憶させる。
【0063】
(効果)
図8は、
図2の物体検出装置1による、物体からの距離に対応する反射波の振幅を示すグラフである。
図8に示すグラフには、物体検出のために送信した送信波(超音波)からの反射波の挙動を示す曲線L3,L4が描画されており、横軸が物体からの距離、縦軸が振幅を示している。曲線L3は、本発明による残響抑圧処理を行わない場合の挙動を示しており、曲線L4は、本発明による残響抑圧処理を行った場合の挙動を示している。また、
図8に示すグラフにおける物体検出装置の検出対象(障害物)を設置した場所は、本願の課題としている、送信波による残響が発生しやすい距離、すなわち超音波センサの近傍に設置している。
【0064】
図8に示すように、残響抑圧処理を行わない場合の曲線L3では、
図8に示す障害物設置箇所付近では残響が発生しており、物体検知が可能な程度に曲線L3の挙動は明確に表現されていない。しかし、残響抑圧処理を行った場合の曲線L4では、
図8に示す障害物設置箇所付近でも、物体検知が可能な程度に曲線L4の挙動が明確に表現されている。このように、残響抑圧処理を行うことにより、超音波センサの近傍であっても物体検出を可能としている。
【0065】
実施の形態1に係る物体検出装置1によれば、校正処理部51は、最急降下法のアルゴリズムにより、振幅及び位相に対応する残響面積の勾配を割り出し、残響抑圧信号の振幅及び位相を調整し、残響面積が最小となるように振幅及び位相を最適化する。これにより、最適なパラメータである振幅及び位相を決定することが可能となる。
【0066】
また、実施の形態1に係る物体検出装置1によれば、校正処理部51は、残響面積を、勾配の正負(方向)に基づき残響抑圧信号の振幅及び位相を調整して残響面積が最小となるように割り出す。そのため、パラメータを順次更新して割り出す処理を簡略化することができる。これにより、最適なパラメータである振幅及び位相をより簡易に決定することが可能となる。
【0067】
また、実施の形態1に係る物体検出装置1によれば、校正処理部51は、残響抑圧信号の振幅と位相とを交互に調整して勾配の方向をそれぞれ割り出し、パラメータを順次更新して残響面積が最小となるように振幅及び位相のパラメータを最適化する。そのため、2つのパラメータの勾配を片方ずつ求めながら順次更新することにより、両方のパラメータを同時に更新する場合と比較して、より安定して確実に残響面積を減少させることができる。これにより、最適なパラメータである振幅及び位相をより確実に決定することが可能となる。
【0068】
さらに、実施の形態1に係る物体検出装置1によれば、校正処理部51は、残響抑圧信号の振幅及び位相について、規定の回数更新を実行した結果得られた最後のパラメータの値と、終了直前のパラメータの値とで平均値を割り出す。これにより、収束点における振動による誤差を緩和することが可能となる。
【0069】
<実施の形態2>
(物体検出装置の全体構成)
図9は、本発明の実施の形態2に係る物体検出装置1Aの概略構成を示す機能ブロック図である。
図9に示す物体検出装置1Aは、物体検出のために超音波のような送信波を送信することで物体からの反射波から物体の存在を検出する装置である点において、
図2に示す物体検出装置1と同様であり、同様の構成を備えている。
【0070】
物体検出装置1Aは、物体検出装置1の構成の加えて、温度センサ60を備える点において、物体検出装置1の構成と異なる。温度センサ60は、物体検出装置1Aの温度を計測する装置であり、計測結果を制御回路50へ送信する。物体検出装置1の構成において温度センサ60を備えるように構成する理由は、トランスデューサ30を含むアナログ素子の温度特性が気温の変化により変化するため、温度によって最適なパラメータが異なる場合がある。なお、実施の形態2では、上位制御装置2に対する検出結果信号に、温度センサ60の計測結果である温度の情報が含まれる。
【0071】
実施の形態2に係る制御回路50は、温度センサ60の計測結果を定期的に受け付け、計測結果による物体検出装置1Aの温度が変化した場合にパラメータ更新処理を行うように構成してもよい。また、このとき、物体検出装置1Aの温度の値に対応して残響抑圧信号の振幅及び位相を決定する温度テーブルを記憶してもよい。
【0072】
実施の形態2に係る物体検出装置1Aによれば、温度センサ60を備え、温度センサ60の計測結果により温度が変化した場合にパラメータ更新処理を行う。これにより、温度の変化に応じた最適なパラメータをより簡易に決定することが可能となる。また、上位制御装置2に対する検出結果信号に温度センサ60の計測結果が含まれる構成にして、上位制御装置2が温度ごとのパラメータをメモリに記憶する構成にすることにより、温度が変化してもパラメータ更新を行う代わりにパラメータ値を上位制御装置2が指定するようにしてもよい。さらに、制御回路50が温度テーブルを記憶する構成にすることにより、パラメータ更新の指示が無くても温度の変化に応じてパラメータを最適に保つことができるため、パラメータ更新は経年劣化の対応のみ行うことで頻度を下げることが可能になる。
【0073】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0074】
例えば、上記の実施の形態では、制御回路50の機能として校正処理部51及び検出処理部52を備えるように構成したが、これらの機能をハードウェアで実現するように構成してもよい。これにより、これらの機能をより高速に実現し、高性能に行うことが可能となる。この場合、物体検出装置を構成する各回路の一部またはすべてをワンチップのASICに集約してもよい。これにより、コストダウンが可能になる。
【符号の説明】
【0075】
1,1A :物体検出装置
2 :上位制御装置
10 :送信波形生成回路
11 :駆動信号発生回路
12 :残響抑圧信号発生回路
20 :送信回路
30 :トランスデューサ
40 :受信回路
50 :制御回路
51 :校正処理部
52 :検出処理部
60 :温度センサ
S1 :駆動信号
S2 :残響抑圧信号
S3 :送信信号
S4 :受信信号
S5 :デジタル信号
U :超音波