(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086441
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】電磁波シールド用ペースト、硬化物、及び電子部品
(51)【国際特許分類】
H01B 1/22 20060101AFI20240620BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
H01B1/22 A
H05K9/00 W
H05K9/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201566
(22)【出願日】2022-12-16
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】川本 里美
【テーマコード(参考)】
5E321
5G301
【Fターム(参考)】
5E321BB32
5E321BB53
5E321BB57
5E321GG05
5G301DA03
5G301DA05
5G301DA06
5G301DA10
5G301DA11
5G301DA12
5G301DA13
5G301DA57
5G301DD01
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】ジェットディスペンス法による塗布性に優れ、局所領域への充填性が良好で、充填後に導電性粒子の分離が発生しにくい電磁波シールド用ぺ―スト、電磁波シールド用ペーストの硬化物、及び該硬化物を含む電子部品を提供することができる。
【解決手段】(A)導電性粒子、(B)エポキシ樹脂、及び(C)硬化剤を含み、E型粘度計で25℃10rpmの条件で測定した粘度が50Pa・s以下である、電磁波シールド用ペースト。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分として、導電性粒子、
(B)成分として、エポキシ樹脂、及び
(C)成分として、硬化剤
を含み、
E型粘度計で25℃10rpmの条件で測定した粘度が50Pa・s以下である、
電磁波シールド用ペースト。
【請求項2】
前記(A)成分が、平均粒径(D50)が0.01~10μmの導電性粒子を含む、請求項1に記載の電磁波シールド用ペースト。
【請求項3】
前記(A)成分が、親水性の表面処理剤で処理した導電性粒子を含む、請求項1又は2に記載の電磁波シールド用ペースト。
【請求項4】
前記(B)成分が、脂肪族骨格を有するエポキシ樹脂を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の電磁波シールド用ペースト。
【請求項5】
前記(B)成分は、HBT粘度計で25℃50rpmの条件で測定した粘度が50Pa.s以下のエポキシ樹脂を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の電磁波シールド用ペースト。
【請求項6】
前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対し1~30質量部である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電磁波シールド用ペースト。
【請求項7】
前記(C)成分が、フェノール系樹脂を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の電磁波シールド用ペースト。
【請求項8】
溶剤、又は希釈剤を実質的に含有しない、請求項1~7のいずれか1項に記載の電磁波シールド用ペースト。
【請求項9】
E型粘度計で25℃で測定した、回転数1rpmの粘度/回転数10rpmの粘度であるチキソトロピックインデックス値が、10以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の電磁波シールド用ペースト。
【請求項10】
前記電磁波シールド用ペーストが、ジェットディスペンス型電磁波シールド用ペーストである、請求項1~9のいずれか1項に記載の電磁波シールド用ペースト。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の電磁波シールド用ペーストの硬化物。
【請求項12】
請求項11に記載の硬化物を含む電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド用ペースト、電磁波シールド用ペーストの硬化物、及び該硬化物を含む電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレス機器の普及に伴い、電子機器の通信量、通信速度が飛躍的に増大している。一方で電子機器は小型化、高集積化が進んでおり、機器に含まれる半導体ICを含むパッケージやベースバンド部品、RF(無線周波数:Radio Frequency)用部品、ワイヤレス部品、アナログ機器、及び電力管理コンポーネント等の電子部品間距離は短くなっている。
【0003】
その結果、電子部品間の電磁干渉(EMI:Electromagnetic Interference)問題が顕著となり、対策が求められている。従来技術においてもEMIの対策は行われており、例えばEMI除去フィルタを挿入することでノイズとなる信号を除去する方法や外部に電磁波吸収シートを添付する方法(例えば特許文献1)、金属の筐体で覆うことにより電磁波を遮蔽する方法などが挙げられる。
【0004】
しかしながら、これらの方法は実装面積や重量に制限がある小型電子機器への適応が難しく、特に、システムオンチップ(SoC)、システムインパッケージ(SiP)、マルチチップモジュール(MCM)のように電子部品同士が近接する構造内に挿入することが出来ない。
【0005】
この問題を解決するため、電子部品を実装、モールドしたパッケージや基板に間隙や溝といったトレンチ構造を設け、そこに導電ペーストを充填、硬化することでEMI対策を行う方法が検討されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6461416号明細書
【特許文献2】国際公開第2021/075265号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載されているような従来の導電性ペーストでは、トレンチに充填した際に、導電性ペーストに含まれる導電性粒子と樹脂成分とが分離してしまう場合があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、特にジェットディスペンス法による塗布性に優れ、局所領域、特に間隙や溝等への充填がしやすく、充填後のペーストにおいて導電性粒子と樹脂の分離が発生しにくい電磁波シールド用ぺ―ストを提供することを目的とする。また、電磁波シールド用ペーストの硬化物、該硬化物を含む電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、導電性粒子とエポキシ樹脂と硬化剤とを含有する電磁波シールド用ペーストにおいて、粘度を特定の範囲とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りであり、本発明は、以下の態様を包含する。
〔1〕
(A)成分として、導電性粒子、
(B)成分として、エポキシ樹脂、及び
(C)成分として、硬化剤
を含み、
E型粘度計で25℃10rpmの条件で測定した粘度が50Pa・s以下である、
電磁波シールド用ペースト。
〔2〕
前記(A)成分が、平均粒径(D50)が0.01~10μmの導電性粒子を含む、〔1〕に記載の電磁波シールド用ペースト。
〔3〕
前記(A)成分が、親水性の表面処理剤で処理した導電性粒子を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の電磁波シールド用ペースト。
〔4〕
前記(B)成分が、脂肪族骨格を有するエポキシ樹脂を含む、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の電磁波シールド用ペースト。
〔5〕
前記(B)成分は、HBT粘度計で25℃50rpmの条件で測定した粘度が50Pa.s以下のエポキシ樹脂を含む、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の電磁波シールド用ペースト。
〔6〕
前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対し1~30質量部である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の電磁波シールド用ペースト。
〔7〕
前記(C)成分が、フェノール系樹脂を含む、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の電磁波シールド用ペースト。
〔8〕
溶剤、又は希釈剤を実質的に含有しない、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の電磁波シールド用ペースト。
〔9〕
E型粘度計で25℃で測定した、回転数1rpmの粘度/回転数10rpmの粘度であるチキソトロピックインデックス値が、10以下である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の電磁波シールド用ペースト。
〔10〕
前記電磁波シールド用ペーストが、ジェットディスペンス型電磁波シールド用ペーストである、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の電磁波シールド用ペースト。
〔11〕
〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の電磁波シールド用ペーストの硬化物。
〔12〕
〔11〕に記載の硬化物を含む電子部品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特にジェットディスペンス法による塗布性に優れ、充填後に導電性粒子の分離が発生しにくい電磁波シールド用ぺ―スト、電磁波シールド用ペーストの硬化物、及び該硬化物を含む電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る電磁波シールド用ペーストを実施形態に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は、以下の電磁波シールド用ペーストに限定されない。
【0012】
〔電磁波シールド用ペースト〕
本発明の実施形態に係る電磁波シールド用ペーストは、(A)導電性粒子、(B)エポキシ樹脂、及び(C)硬化剤を含み、E型粘度計で25℃10rpmの条件で測定した粘度が50Pa・s以下である。
【0013】
本発明の実施形態に係る電磁波シールド用ペーストが、ジェットディスペンス法による塗布性(ジェットディスペンサーからの吐出性を意味し、以下、ジェットディスペンス性ともいう)に優れ、局所領域への充填がしやすく、充填後に導電性粒子の分離が発生しにくい理由については定かではないが、本発明者らは以下のように推察している。
本発明の実施形態に係る電磁波シールド用ペーストは、粘度が50Pa・s以下の低粘度に抑えられている。そのため、ディスペンスノズルからの吐出性に優れ、ジェットディスペンス法を用いた塗布に好適に用い得ることができる。また、ボイドの巻き込みなく、局所領域への充填性も良好となる。
そして、電磁波シールド用ペースト中の樹脂としてエポキシ樹脂を用いることにより、電磁波シールド用ペーストの塗接対象である基材と樹脂との間に生じる斥力を小さくすることができるのではないかと考えている。特に、基材に設けられた間隙や溝等に塗付、充填する場合に、上記の斥力低減効果が得られ、その結果として、充填後の電磁波シールド用ペースト中の導電性粒子と樹脂との分離を抑制できるのではないかと推察している。
【0014】
なお、電磁波シールド用ペーストの塗布方法としては、後述するように種々の方法を用い得るが、本発明の実施形態に係る電磁波シールド用ペーストは特にジェットディスペンス性に優れるため、ジェットディスペンス型電磁波シールド用ペーストであることが好ましい。
そして、本発明の実施形態に係る電磁波シールド用ペーストは、ジェットディスペンス法により局所領域、特に、基材に形成された間隙又は溝を充填するための電磁波シールド用ペーストとして好適に用いられる。なお、ジェットディスペンスとは、ノズルから圧力をかけてペーストを吐出させて、ライン状またはスポット状に塗布する方法であり、公知のジェットディスペンス装置を用いることができる。
【0015】
(粘度)
本発明の実施形態に係る電磁波シールド用ペーストは、E型粘度計で測定した25℃、回転数10rpmにおける粘度が50Pa・s以下である。粘度を50Pa・s以下とすることにより、ジェットディスペンス性に優れ、局所領域への充填性が良好となる。
上記粘度は、25Pa・s以下であることが好ましく、15Pa・s以下がより好ましく、10Pa・s以下が更に好ましい。下限としては特に限定されるものではないが、例えばジェットディスペンスした際の液滴の飛び散りを抑える観点から、例えば、0.5Pa・s以上が好ましい。
また、上記粘度は、0.5~25Pa・sの範囲内であることが好ましく、0.5~15Pa・sの範囲内であることがより好ましく、0.5~10Pa・sの範囲内であることがさらに好ましい。この範囲とすることにより、ジェットディスペンス性に優れ、局所領域への充填性が良好なものにすることができる。
【0016】
(チクソトロピックインデックス値)
本発明の実施形態に係る電磁波シールド用ペーストは、E型粘度計で25℃で測定した、回転数1rpmの粘度/回転数10rpmの粘度であるチクソトロピックインデックス値(TI)が、10以下であることが好ましい。TIを10以下とすることによって、ジェットディスペンス性、間隙や溝等の局所領域への充填性をより向上させることができる。
TIは、10以下であることが好ましく、5.0以下がより好ましく、3.5以下がさらに好ましく、2.0以下が特に好ましい。下限としては、例えばジェットディスペンスした際の液滴の飛び散りを抑える観点から1.0以上が好ましい。
また、TIは、1.0~10の範囲内であることが好ましく、1.0~5.0の範囲内であることがより好ましく、1.0~3.5の範囲内であることがさらに好ましく、1.0~2.0の範囲内であることが特に好ましい。この範囲とすることにより、ジェットディスペンス性に優れ、局所領域への充填性が良好となる。
【0017】
<(A)成分(導電性粒子)>
本発明の実施形態に係る電磁波シールド用ペーストは、(A)成分として導電性粒子を含む。導電性粒子は電磁波を遮蔽するために配合する。
導電性粒子(以下、「(A)成分」又は「(A)導電性粒子」と称する場合がある。)は、特に制限されないが、導電性の金属粒子や炭素粒子等の粒子を用いることができる。
【0018】
金属粒子の金属の種類としては、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、スズ(Sn)及びこれらの合金等が挙げられ、銀又は銅が好ましく、電磁波を遮蔽する観点から、銀がより好ましい。
【0019】
炭素粒子の種類としては、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、フラーレン等が挙げられ、グラフェンが好ましい。グラフェンは、密に充填された1原子厚さのシートに、原子が六角形のパターンに配置された純粋な炭素からなる物質である。
導電性樹脂組成物中に炭素粒子が含まれていると、導電性樹脂組成物を対象物に塗布して電磁波シールド層を形成した際に、電磁波シールド層の靭性を向上させることができる。炭素粒子の市販品としては、例えば、株式会社中越黒鉛工業所製のグラファイト(鱗片状黒鉛)(品名:CX3000)、XGScience株式会社製のグラフェン粉末(グレード:XGnP-R10)、グラフェンプラットフォーム株式会社製のグラフェン(品名:GNH-XA)が挙げられる。
【0020】
本発明の実施形態に係る導電性樹脂組成物において、(A)導電性粒子は、上記炭素粒子等の非導電性粒子が上記金属で被覆された粒子や、ニッケル等の磁性金属粒子が、銀、銅等の非磁性金属で被覆された粒子等を含んでいてもよい。また、(A)導電性粒子は、樹脂などの有機物又は金属以外の無機物をコアとして、前述の金属の成分をコーティングした複合体でもよく、前述の金属の成分が表面処理剤により表面処理されたものであってもよい。
【0021】
本発明の実施形態においては、(A)導電性粒子が、銀粒子又は銀を含む合金粒子等の金属粒子を含むことが好ましく、銀粒子を含むことがより好ましい。銀の電気伝導率は、他の金属と比べて高いためである。(A)導電性粒子として、銀粒子を含むことにより、より高い電磁波シールド効果を発揮する導電性樹脂組成物を得ることができる。
【0022】
本発明の実施形態に用いる導電性粒子は、親水性の表面処理剤で処理した導電性粒子を含むことが好ましい。導電性粒子の表面を親水性の表面処理剤で表面処理することにより、電磁波シールド用ペーストの粘度やチキソトロピック性を低減することができ、ジェットディスペンス性や局所領域への充填性を向上させることができる。
【0023】
なお、本明細書において、表面処理剤が親水性であるとは、分子内に親水性基を持つ表面処理剤、または、疎水性であってもアミン塩等によって親水性構造を導入した表面処理剤のいずれかのことを意味する。
【0024】
親水性基の例としては、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基等が挙げられるが、これらの中でもアミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基が好ましい。
【0025】
分子内に親水性基を持つ表面処理剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸塩、アゾール系化合物、及びそれらの誘導体等が挙げられる。
脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、ステアリン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、アロイリット酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸等を挙げることができる。
脂肪酸塩としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの金属と脂肪酸が塩を形成したものを挙げることができる。
アゾール系化合物としては、例えば、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
【0026】
アミン塩等によって親水性構造を導入した表面処理剤としては、例えば、カルボン酸にアルキルアミン等のアミン塩等を添加し親水性構造を導入した、ポリカルボン酸アルキルアミン塩等を挙げることができる。
【0027】
上記親水性の表面処理剤の中でも、分子内に親水性基を持つ表面処理剤が好ましく、脂肪酸および脂肪酸塩、アゾール系化合物およびその誘導体が好ましく、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、ベンゾトリアゾール、アロイリット酸、ヒドロキシステアリン酸、からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
表面処理剤は単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0028】
表面処理剤による処理量としては特に限定されるものではないが、例えば、導電性粒子のイグロス値(強熱減量)が後述の好ましい範囲となるように設定することが好ましい。
【0029】
導電性粒子としては、市販品を用いることもできる。表面処理された銀フィラーとしては、例えば、オレイン酸表面処理銀フィラー(品名:FA-SNA-253、AG 2 1C、AG 4 1F、いずれもDOWAホールディングス株式会社製)、リシノール酸/ベンゾトリアゾール表面処理銀フィラー(品名:AG 2 98J、DOWAホールディングス株式会社製)、ベンゾトリアゾール表面処理銀フィラー(品名:AG 3 11F、DOWAホールディングス株式会社製)、などを用いることができる。
【0030】
導電性粒子は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0031】
(形状)
(A)導電性粒子は、球状、楕円球状、針状、フレーク(鱗片)状、不定形状などの形状を有するものを用いることができるが、ジェットディスペンス性の観点から、球状であることが好ましい。
【0032】
(粒径)
(A)導電性粒子の大きさは、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて観察し、SEM画像から任意に50個の粒子を測定して平均値を算出することができる。粒子の形状が球状である場合には、前記平均値を平均粒径とし、形状が針状、楕円球状、フレーク(鱗片)状、不定形状である場合には、長軸平均値を平均粒径とする。
【0033】
(A)導電性粒子は、形状が球状である導電性粒子を含むことが好ましい。その場合、(A)導電性粒子は、平均粒径(D50)が、好ましくは0.01μm以上10μm以下の範囲内の導電性粒子を含むことが好ましい。また、(A)導電性粒子は、平均粒径(D50)が、より好ましくは0.1μm以上5μm以下の範囲内であり、さらに好ましくは0.5μm以上3μm以下の範囲内の導電性粒子を含むことが好ましい。導電性粒子の平均粒径がこの範囲であることにより、粘度を低減し、ジェットディスペンス性に優れ、局所領域への充填性が良好な電磁波シールド用ペーストを得やすくなり、剥離の低減にも寄与する。なお、(A)導電性粒子は0.01μm以上10μm以下の範囲内の導電性粒子のみからなることが好ましい。
導電性粒子は、形状が針状、楕円球状、フレーク(鱗片)状、不定形状である場合には、平均粒径(長軸平均値)が0.01μm以上10μm以下であり、アスペクト比が好ましくは5以上200以下の範囲内であり、より好ましくは10以上150以下の範囲内である。
【0034】
すなわち、導電性粒子の平均粒径が0.01~10μmであることが好ましい。(A)導電性粒子の平均粒径(D50)が0.01μm以上10μm以下の範囲であるか、平均粒径(長軸平均値)が0.01μm以上10μm以下の範囲内であると、電磁波シールド用ペースト中で、(A)導電性粒子の分散性がよく、ジェットディスペンス性が良好となり、狭小の間隙又は溝にも十分に充填することができる。
【0035】
(BET比表面積)
導電性粒子のBET法で測定した質量あたりの表面積(BET比表面積)としては、0.35m2/g以上であることが好ましく、0.4m2/g以上であることがより好ましく、0.5m2/g以上であることが特に好ましい。また、2.5m2/g以下であることが好ましく、1.2m2/g以下であることがより好ましく、0.8m2/g以下であることが特に好ましい。
導電性粒子のBET法で測定した質量あたりの表面積(BET比表面積)としては、0.35~2.5の範囲内であることが好ましく、0.4~1.2の範囲内であることがより好ましく、0.5.~0.8の範囲内であることが特に好ましい。上記範囲とすることによって、粘度を低減し、ジェットディスペンス性を良好にすることができる。
【0036】
(タップ密度)
導電性粒子のタップ密度としては、2.0g/ml以上であることが好ましく、3.0g/ml以上であることがより好ましい。また、4.0g/ml以下であることが好ましく、6.0g/ml以下であることがより好ましく、5.5g/ml以下であることがさらに好ましく、5.0g/ml以下であることが特に好ましい。
すなわち、導電性粒子のタップ密度としては、2.0~6.0g/mlであることが好ましく、3.0~5.5g/mlであることがより好ましく、4.0~5.0g/mlであることが特に好ましい。上記範囲とすることによって、比抵抗値を低減することができる。
【0037】
(イグロス値)
導電性粒子のイグロス値(強熱減量)としては、0.1%以上であることが好ましく、0.2%以上であることがより好ましく、0.3%以上であることが好ましい。また、1.2%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましく、0.9%以下であることが特に好ましい。
すなわち、導電性粒子のイグロス値(強熱減量)としては、0.1~1.2%が好ましく、0.2~1.0%がより好ましく、0.3~0.9%が特に好ましい。上記範囲とすることによって、電磁波シールド用ペーストのTIが低くなり、ジェットディスペンス性が良好で、狭小の間隙又は溝にも十分に充填することができる電磁波シールド用ペーストを得やすくなる。
【0038】
電磁波シールド用ペーストの全体量に対する(A)導電性粒子の含有量は、比抵抗や電磁波シールド性の観点から、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは85質量%以上である。また、上限としては、密着性の観点から、99質量%以下が好ましく、より好ましくは95質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以下である。
すなわち、磁波シールド用ペーストの全体量に対する、(A)導電性粒子の含有量は、70~99質量%が好ましく、80~95質量%がより好ましく、85~90質量%が特に好ましい。
【0039】
<(B)成分(エポキシ樹脂)>
本発明の実施形態に係る電磁波シールド用ペーストは、(B)成分として、エポキシ樹脂(以下、「(B)成分」、「(B)樹脂」又は「(B)エポキシ樹脂」と称する場合がある。)を含む。
(B)エポキシ樹脂としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、芳香族アミン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、アルコールエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、シロキサン系エポキシ樹脂などを用いることができ、これらを2種以上混合してもよい。
【0040】
(B)エポキシ樹脂としては、分子の一部に、ポリエチレングリコール骨格、ポリプロレピレングリコール骨格、ポリエーテル骨格、ウレタン骨格、ポリブタジエン骨格、ニトリルゴム骨格等の柔軟骨格を含んでいるものを用いてもよい。
【0041】
柔軟骨格を有するエポキシ樹脂としてより具体的には、ビスフェノールA等の芳香族ジヒドロキシ化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを反応させポリアルキレングリコール骨格を有する化合物を合成し、ポリアルキレングリコール骨格を有する化合物の末端をさらにエポキシ化して得られる「芳香族ジヒドロキシ化合物とポリアルキレングリコールが結合し、末端にエポキシ基を有するエポキシ樹脂化合物」や、プロパンジオールやブタンジオール等のアルカンジオールやジエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールをエポキシ化し、さらにビスフェノールA等の芳香族ジヒドロキシ化合物と反応させ、その生成物をエポキシ化して得られる「アルカンジオールやポリアルキレングリコールと芳香族ジヒドロキシ化合物が結合し、末端にエポキシ基を有するエポキシ樹脂化合物」、脂肪族、芳香族炭化水素化合物、プロパンジオールやブタンジオール等のアルカンジオールやジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールをジビニルエーテル化し、さらにビスフェノールA等の芳香族ジヒドロキシ化合物と反応させ、その生成物をエポキシ化して得られる「脂肪族骨格や芳香族骨格、あるいはアルカンジオールやポリアルキレングリコールと芳香族ジヒドロキシ化合物が結合し、末端にエポキシ基を有するエポキシ樹脂化合物」、ダイマー酸やセバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸とビスフェノールAエポキシ樹脂やその他のエポキシ化剤を反応させることで得られる脂肪族骨格を有するエポキシ樹脂化合物、プロピレンオキシド等のポリアルキレングリコーンの末端をエポキシ化して得られる末端にエポキシ基を有するポリアルキレングリコール構造を有するエポキシ樹脂化合物等を挙げることができる。
【0042】
これらの中でも、脂肪族骨格を有するエポキシ樹脂を用いることが好ましい。すなわち、(B)成分が、脂肪族骨格を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。脂肪族骨格を有するエポキシ樹脂を用いることで、柔軟性を付与しながら、エポキシ樹脂自体の粘度が低く、180℃以下での熱環境での硬化性が良く、電磁波シールド用ペースト硬化物の体積収縮抑制、ひいては、基材の局所領域への充填後の硬化物の剥離抑制の観点から好ましい。なお、脂肪族骨格を有するエポキシ樹脂は、鎖状脂肪族型や環状脂肪族型であっても良いが、柔軟性の観点から、鎖状脂肪族型エポキシ樹脂のほうが好ましい。
【0043】
脂肪族骨格を有するエポキシ樹脂としては、公知の脂肪族エポキシ樹脂を使用することができ、特に限定されない。
脂肪族骨格を有するエポキシ樹脂の具体例としては、アルキルアルコールグリシジルエーテル[ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル等]、アルケニルアルコールグリシジルエーテル[ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等]などの分子内にエポキシ基を1つ有する単官能脂肪族エポキシ樹脂;アルキレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(アルキレングリコール)ジグリシジルエーテル、アルケニレングリコールジグリシジルエーテル等の分子内にエポキシ基を2つ有する二官能脂肪族エポキシ樹脂;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の三官能以上のアルコールのポリグリシジルエーテル[トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトール(トリ又はテトラ)グリシジルエーテル、ジペンタエリスリトール(トリ、テトラ、ペンタ又はヘキサ)グリシジルエーテル等]などの分子内にエポキシ基を3つ以上有する多官能脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0044】
エポキシ当量は、特に限定するものではないが、50g/eq~500g/eqの範囲内が好ましく、60~400eqの範囲内がより好ましく、70~200eqの範囲内が更に好ましい。エポキシ当量がこの範囲であると、180℃以下での熱環境下での硬化性が良くなり、電磁波シールド用ペースト硬化物の体積収縮抑制、ひいては、基材の局所領域への充填後の硬化物の剥離抑制の観点から好ましい。
【0045】
(B)エポキシ樹脂としては、市販品を用いることもできる。例えば、ADEKA株式会社製芳香族アミン型エポキシ樹脂(品名:EP-3980S、ジグリシジルオルトトルイジン)、ADEKA株式会社製ポリプロレピレングリコール骨格含有ビスフェノールA型エポキシ樹脂(品名:EP-4010L)、ADEKA株式会社製環状脂肪族型エポキシ樹脂(品名:EP-4088L、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、ADEKA株式会社製アルコールエーテル型エポキシ樹脂(品名:ED-503G)、DIC製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(品名:N-665)、新日鉄住金化学株式会社製ビスフェノールF型エポキシ樹脂(品名:YDF8170)、DIC株式会社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂(品名:EXA-850CRP)、DIC株式会社製ビスフェノールF型エポキシ樹脂(品名:EXA-835LV)、三菱ケミカル株式会社製アミノフェノール型エポキシ樹脂(品名:JER630)などを用いることができる。
【0046】
(B)エポキシ樹脂は、常温(25℃)において液状であることが好ましい。なお、エポキシ樹脂を複数併用する場合は、(B)エポキシ樹脂は、常温(25℃)において液状のエポキシ樹脂のみからなることが好ましい。また、(B)エポキシ樹脂は、HBT粘度計で25℃、回転数50rpmの条件で測定した粘度が50Pa・s以下のエポキシ樹脂を含むことが好ましく、粘度が50Pa・s以下のエポキシ樹脂であることが好ましい。粘度を50Pa・s以下とすることによって、後述するように電磁波シールド用ペースト中に実質的に溶剤又は希釈剤を含まない場合であっても、ジェットディスペンス性が良好となる。上記粘度は、10Pa・s以下がより好ましく、5Pa・s以下が更に好ましく、1Pa・s以下が特に好ましい。また、下限としては、特に限定されるものではないが、液滴の飛び散りを抑える観点から10mPa・s以上であることが好ましい。
【0047】
なお、エポキシ樹脂を複数併用する場合は、エポキシ樹脂の上記粘度が、好ましくは50Pa・s以下、より好ましくは10Pa・s以下のエポキシ樹脂のみからなることが好ましい。
【0048】
(B)エポキシ樹脂の含有量が、上記(A)導電性粒子100質量部に対し1~40質量部であることが好ましく、5~35質量部であることがより好ましく、7~30質量部であることが更に好ましく、10~25質量部であることが特に好ましい。上記範囲とすることにより、ジェットディスペンス性が良好となり、局所領域、特に狭小の間隙又は溝にボイドが形成されることなく電磁波シールド用ペーストを充填することができる。
(B)エポキシ樹脂の含有量は、上記(A)導電性粒子100質量部に対して1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、7質量部以上がさらに好ましく、10質量部以上が特に好ましい。また、40質量部以下が好ましく、35質量部以下がより好ましく、30質量部以下が更に好ましく、25質量部であることが特に好ましい。
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し1~30質量部であってもよい。
【0049】
電磁波シールド用ペーストの全体量に対する、(B)エポキシ樹脂の含有量は、密着性の観点から、好ましくは1~30質量%好ましく、5~20質量%がより好ましく、10~15質量%が更に好ましい。(B)エポキシ樹脂の含有量は、1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上である。また、上限としては、電気伝導性の観点から、30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である。
電磁波シールド用ペーストの全体量に対して、(B)エポキシ樹脂の含有量がこの範囲内であれば、後述するように電磁波シールド用ペースト中に実質的に溶剤又は希釈剤を含まない場合であっても、ジェットディスペンス性に優れる。また、局所領域、特に、狭小の間隙又は溝に充填することができる粘度を維持することができ、製造時の取り扱い性が良好となる。
【0050】
<(C)成分(硬化剤)>
本発明の実施形態に係る電磁波シールド用ペーストは、上述の(B)エポキシ樹脂を硬化する(C)成分として、硬化剤(以下、「(C)成分」、又は「(C)硬化剤」と称する場合がある。)を含む。なお、本願における硬化剤とは、エポキシ樹脂を硬化するものであればよく、硬化促進剤も硬化剤として含める。
(C)硬化剤としては、フェノール系硬化剤、脂肪族アミン・芳香族アミンなどのアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ポリメルカプタン系硬化剤、ポリアミノアミド系硬化剤、イソシアネート類、ブロックイソシアネートなどを用いることができる。
【0051】
フェノール系硬化剤としては、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラメチルビフェノール、エチリデンビスフェノール、メチルエチリデンビス(メチルフェノール)、シクロへキシリデンビスフェノール、ビフェノールなどのビスフェノール類及びその誘導体、トリ(ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(ヒドロキシフェニル)エタンなどの3官能のフェノール類及びその誘導体、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどのフェノール類とホルムアルデヒドを反応することで得られる化合物及びその誘導体などを用いることができる。
【0052】
脂肪族アミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、m-キシレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン、イソフォロンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ポリアミン、N-アミノエチルピペラジン、1,4-ビス(2-アミノ-2-メチルプロピル)ピペラジンなどのピペラジン型のポリアミンなどを用いることができる。
芳香族アミンとしては、ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4-アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエートなどの芳香族ポリアミンなどを用いることができる。
【0053】
酸無水物系硬化剤としては、フタル酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水マレイン酸とポリブタジエンの反応物、無水マレイン酸とスチレンの共重合体などを用いることができる。
【0054】
硬化剤としては、市販品を用いることもできる。具体的には、明和化成株式会社製フェノール系硬化剤(品名:MEH-8005、アリルフェノール樹脂)、四国化成株式会社製硬化促進剤(品名:2P4MZ(4-メチル-2-フェニルイミダゾール)、群栄化学工業株式会社製フェノール系硬化剤(品名:PSM4324)、アルベマール(ALBEMARLE Co.,Ltd.)株式会社製アミン系硬化剤(3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミン、および3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミンを含有)(品名:エタキュア100)、日本化薬株式会社製アミン系硬化剤(4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン)(品名:HDAA)、三菱ケミカル株式会社製酸無水物系硬化剤(品名:YH307)などを用いることができる。
【0055】
これらの硬化剤は単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。また、公知の硬化促進剤も適宜併用してもよい。
【0056】
硬化剤は、フェノール系硬化剤を含むことが好ましく、比抵抗観点から、フェノール系樹脂を含むことがより好ましい。
【0057】
これらの硬化剤のエポキシ樹脂に対する配合割合は、通常これらの硬化剤が使用される際と同様とすることができる。エポキシ樹脂の硬化作用発現の観点から、好ましくは、(B)エポキシ樹脂に対して、1質量以上が好ましく、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。また、上限としては、ジェットディスペンス性向上の観点から、30質量部以下が好ましく、より好ましくは15質量部以下である。
【0058】
<添加剤>
本発明の実施形態に係る電磁波シールド用ペーストは、上述の(A)導電性粒子、(B)エポキシ樹脂、及び(C)硬化剤の他に、添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、(D)開始剤、(E)分散剤、シランカップリング剤、消泡剤などを配合することができる。
【0059】
(E)分散剤は、電磁波シールド用ペースト中に導電性粒子を分散させるために配合するものであり、ジカルボン酸系、リン酸エステル系などの分散剤を用いることができる。
具体的には、CRODA株式会社製ジカルボン酸弱アニオン系分散剤(品名:HypermerKD-57)、CRODA株式会社製リン酸エステル系分散剤(品名:CRODAFOS O3A)、ビックケミージャパン株式会社製(品名:DISPERBYK-164,167、111)などを用いることができる。
【0060】
シランカップリング剤は、電磁波シールド用ペーストの耐熱性や接着強度を高めるために配合するものであり、例えば、エポキシ系、アミノ系、ビニル系、メタクリル系、アクリル系、メルカプト系などの各種シランカップリング剤を用いることができる。これらの中でも、エポキシ基を有するエポキシ系シランカップリング剤、メタクリル基を有するメタクリル系シランカップリング剤が好ましい。
具体的には、信越化学株式会社製エポキシ系シランカップリング剤(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)(品名:KBM403)、信越化学株式会社製メタクリル系シランカップリング剤(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)(品名:KBM503)などを用いることができる。
【0061】
消泡剤は、電磁波シールド用ペースト中の泡の発生を防止するために配合するものであり、例えば、シリコーン系及びフルオロシリコーン系などの消泡剤を用いることができる。
具体的には、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製シリコーン系消泡剤(品名:WACKER AF98/1000)などを用いることができる。
【0062】
本発明の実施形態に係る電磁波シールド用ペースト中の添加剤の含有量としては、電磁波シールド用ペースト全量に対して、0.05質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0063】
<(F)溶剤又は希釈剤>
本発明の実施形態に係る電磁波シールド用ペーストは、上述の(A)導電性粒子、(B)エポキシ樹脂、及び(C)硬化剤の他に、(F)溶剤又は希釈剤((以下、「(F)成分」、「(F)溶剤」又は「(F)溶剤又は希釈剤」と称する場合がある。))を含んでいてもよい。
【0064】
本発明の実施形態に係る(F)溶剤又は希釈剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピルアセテート、ブチルアセテート、二塩基酸エステル、エチルプロキシトールエトキシプロパノール、カルビトールアセテート、2-メトキシ-1-メチルエチルアセテート、カルビトールアセテート、2-メトキシ-1-メチルエチルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテル(DNP)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BG)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、2-ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(ECA)、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BC)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(EC)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、フェノール、テルピネオール(TEL)、γ-ブチロラクトンメチルサクシネート及びグルタル酸メチル及びジメチルアジペートを含むエステル混合物、ブチルグリコールアセテート並びにそれらの混合物などが挙げられる。
【0065】
一方、本発明の実施形態に係る電磁波シールド用ペーストは、(F)溶剤又は希釈剤を実質的に含まないことが電磁波シールド用ペーストの加熱硬化時におけるボイド低減の観点から好ましい。本明細書において、「溶剤又は希釈剤を実質的に含まない」とは、電磁波シールド用ペースト中に、溶剤又は希釈剤を意図的に添加しないことを意味する。電磁波シールド用ペースト中に含まれる(A)導電性粒子、(B)エポキシ樹脂、又は(C)硬化剤中には、すでに(F)溶剤又は希釈剤が含まれている場合もある。電磁波シールド用ペーストに使用する(A)導電性粒子、(B)エポキシ樹脂、又は(C)硬化剤中に含まれる(F)溶剤又は希釈剤を除去することは困難であるため、(A)導電性粒子、(B)エポキシ樹脂、又は(C)硬化剤中に不可避的に含まれる溶剤又は希釈剤は、電磁波シールド用ペースト中に含まれていてもよい。
【0066】
電磁波シールド用ペーストが溶剤又は希釈剤を実質的に含まないとは、具体的には、電磁波シールド用ペースト中に含まれる溶剤又は希釈剤が、電磁波シールド用ペーストの全体量に対して、5質量%未満であることをいい、3質量%以下でもよく、2質量%以下でもよく、1質量%以下でもよい。
【0067】
また、本発明の実施形態に係る電磁波シールド用ペーストは、粘度を低減する観点から、熱可塑性樹脂を実質的に含まないことが好ましい。本明細書において、「熱可塑性樹脂を実質的に含まない」とは、電磁波シールド用ペースト中に、熱可塑性樹脂を意図的に添加しないことを意味する。(A)導電性粒子、(B)エポキシ樹脂、又は(C)硬化剤中に不可避的に含まれる熱可塑性樹脂は、電磁波シールド用ペースト中に含まれていてもよい。
【0068】
電磁波シールド用ペーストが熱可塑性樹脂を実質的に含まないとは、具体的には、電磁波シールド用ペースト中に含まれる熱可塑性樹脂が、電磁波シールド用ペーストの全体量に対して、5質量%未満であることをいい、3質量%以下でもよく、2質量%以下でもよく、1質量%以下でもよい。
【0069】
〔電磁波シールド用ペーストの製造方法〕
電磁波シールド用ペーストは、(A)導電性粒子、(B)エポキシ樹脂、(C)硬化剤、及び必要により添加剤を、各成分が前述の含有量の範囲を満たすように、配合する。
電磁波シールド用ペーストの製造は、例えば(A)導電性粒子、(B)エポキシ樹脂、及び(C)硬化剤からなる原料を、配合し、撹拌混合することにより製造することができる。具体的には、(A)導電性粒子、(B)エポキシ樹脂、及び(C)硬化剤を、公知の装置を用いて撹拌混合することにより電磁波シールド用ペーストを製造することができる。公知の装置としては、例えば、ヘンシェルミキサー、ロールミル、三本ロールミルなどを用いることができる。(A)導電性粒子、(B)エポキシ樹脂、及び(C)硬化剤は、それらを同時に装置に投入して混合してもよく、その一部を先に装置に投入して混合し、残りを後から装置に投入して混合してもよい。
【0070】
〔電子部品〕
本開示は、本発明の実施形態に係る電磁波シールド用ペーストの硬化物にも関する。そして、本開示は、上記硬化物を含む電子部品にも関する。上記硬化物を用いる電子部品としては、例えば携帯電話、スマートフォン、ノートパソコン、タブレット端末などの電子機器に用いられる、パワーアンプ、Wi-Fi/Bluetoothモジュール、フラッシュメモリなどを挙げることができる。
【0071】
電磁波シールド用ペーストにより形成した硬化物は、測定周波数500MHz~18GHzにて測定した際に、好ましくは30dB以上、より好ましくは35dB以上、さらに好ましくは40dB以上の電磁波シールド効果を有する。このようなシールド効果を有することにより、電磁波を有効に遮蔽することができる。この電磁波シールド効果は、ASTM D4935に準拠して測定することができる。
【0072】
〔電子部品の製造〕
得られた電磁波シールド用ペーストは、基板などに塗布して硬化させ、電磁波シールド効果を有する硬化物を備えた電子部品とすることができる。塗布方法としては、インクジェット法、スーパーインクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、スプレー塗布法、ディスペンス塗布法、ジェットディスペンス法などが挙げられる。特に、ジェットディスペンス性が良好であるという本発明の効果発現の観点から、ジェットディスペンス法を好ましく用い得る。
【0073】
なお、上述のように、本発明の実施形態に係る電磁波シールド用ペーストは、局所領域、特に、基材に形成された間隙又は溝を充填するための電磁波シールド用ペーストとして好適に用いられる。ジェットディスペンス法による充填が好ましい間隙又は溝としては、例えば幅が50μm以上1,000μm以下の範囲内であり、深さが100μm以上1,000μm以下の範囲内の狭小の間隙又は溝が挙げられ、アスペクト比としては、1~15である間隙や溝が挙げられる。
【0074】
電磁波シールド用ペーストの硬化方法としては、加熱処理や紫外線照射処理等を例示することができる。加熱処理の条件としては、特に限定されるものではないが、加熱温度としては、例えば、120~200℃とすることができる。加熱時間としては、30~180分とすることができる。
【実施例0075】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
実施例及び比較例の電磁波シールド用ペーストを作製するにあたり、以下の原料を用いた。
【0077】
(A)成分(導電性粒子)
以下の表1に示すA1~A6を用いた。
【0078】
【0079】
(A)導電性粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、SEM画像から任意に50個の粒子を測定して平均値を算出した。粒子の形状が球状である場合には、前記平均値を平均粒径とし、形状が針状、楕円球状、フレーク(鱗片)状、不定形状である場合には、長軸平均値を平均粒径とした。
【0080】
導電性粒子のBET法で測定した質量あたりの表面積(BET比表面積)(m2/g)は、全自動比表面積測定装置Macsoeb(MOUNTEC社株式会社製)を用いて測定した。100℃で予備乾燥し、10分間窒素ガスを流したのち、窒素ガス吸着によるBET1点法により測定した。
導電性粒子のTAP密度(g/ml)は、次のようにして測定した。タップ密度測定器(蔵持科学機器株式会社製)を用いて測定した。試料10gを10mLの沈降管に精評し、ストローク長15mmのタップを400回行い、そのときの密度をTAP密度とした。
導電性粒子のイグロス値(強熱減量)(%)としては、導電性粒子を800℃で30分間焼成した後の残分の質量から算出した。
【0081】
(B)成分
B1:アミノフェノール型エポキシ樹脂(品番:JER630、三菱ケミカル株式会社製、粘度1Pa・s以下)エポキシ当量95g/eq.
B2:芳香族アミンエポキシ樹脂(品番:EP-3980S、ADEKA株式会社製、ジクリシジルオルトトルイジン、粘度1Pa・s以下)エポキシ当量115g/eq.
B3:ポリプロピレングリコール骨格含有ビスフェノールA型エポキシ樹脂(品番:EP-4010L、ADEKA株式会社製製、粘度50Pa・s)エポキシ当量350g/eq.
B4:環状脂肪族型エポキシ樹脂(品番:EP-4088L、ADEKA株式会社製、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、粘度1Pa・s以下)エポキシ当量165g/eq.
B5:アルコールエーテル型エポキシ樹脂(品番:ED-503G、ADEKA株式会社製、粘度1Pa・s以下)エポキシ当量135g/eq.
B’6:ビスフェノール型アクリレート樹脂(品番:SR601、Sartomer株式会社製、粘度1.1Pa・s)
B’7:脂肪族アクリレート樹脂(品番:CN2270、Sartomer株式会社製、粘度0.035Pa・s)
【0082】
樹脂の粘度は、Brookfield株式会社製HBT粘度計で25℃、回転数50rpmの条件で測定した粘度を示す。
【0083】
以下に、B1~B5の構造式を示す。B3中、mは2以上、nは2以上を表す。
【0084】
【0085】
(C)硬化剤
C1:2-フェニル-4-メチルイミダゾール(品番:2P4MZ、四国化成株式会社製)
C2:アリルフェノール樹脂(品番:MEH8005、明和化成株式会社製)
【0086】
(D)開始剤
D1:t-ブチル-パーオキシベンゾエイト(品名:パーブチルZ、日本油脂株式会社製)
【0087】
(E)分散剤
E1:リン酸ポリエステル系分散剤(品番:DISPERBYK-111、ビックケミージャパン株式会社製)
【0088】
(F)溶剤
F1:ジエチレングリコールモノブチルエーテル(品名:ブチルカルビトール、大伸化学株式会社製)
【0089】
[実施例1~14、比較例1~4]
下記表2~4に示す配合割合となるように各原料を、3本ロールミルを使用して混合・分散して電磁波シールド用ペーストを製造した。実施例1~14及び比較例1~4の電磁波シールド用ペーストは、溶剤又は希釈剤を実質的に含んでいない。また、実施例1~14の電磁波シールド用ペーストは熱可塑性樹脂を実質的に含んでいない。
表2~4において、各原料の数値は、それぞれ質量部を表す。
【0090】
〔評価〕
<電磁波シールド用ペーストの粘度>
実施例及び比較例の各電磁波シールド用ペーストの粘度は、トキメック株式会社製E型粘度計を用いて、10rpmで25℃における粘度(Pa・s)を測定した。
【0091】
<チクソトロピックインデックス>
トキメック株式会社製E型粘度計を用いて1rpm及び10rpm、25℃で粘度測定を行った。これらの測定値を用いて、1rpmの粘度/10rpmの粘度で表されるチクソトロピックインデックス値(TI)を算出した。
【0092】
<ジェットディスペンス性>
武蔵エンジニアリング株式会社製ジェットディスペンサーSUPER JET(登録商標)を使用し、実施例及び比較例の各電磁波シールド用ペーストをドット状に20回連続吐出させた際の吐出径を測定し、以下の指標を用いて評価した。
〇:最大直径と最小直径の差が20%未満
△:最大直径と最小直径の差が20%以上
×:途中で吐出出来なくなる
【0093】
<硬化物の分離及び剥離>
上記ジェットディスペンス性を確認した後の試験片を175℃で1時間加熱して、電磁波シールド用ペーストを硬化させた。硬化後に断面研磨を行い、その断面を目視観察し、硬化物の分離の有無、及びトレンチからの硬化物の剥離について、以下の指標を用いて評価した。
(分離)
〇:分離が認められる
×:分離が認められない
(剥離)
〇:剥離無し
△:一部剥離
×:全面剥離
【0094】
<電磁波シールド効果>
電磁波シールド効果は、ASTM D4935に準拠して測定した。より具体的には、精密ディスペンサ装置(品名:スペクトラムIIディスペンサ、型番:S2-920P、ノードソンアシムテック株式会社製)にディスペンス・バブル(品名:ディスペンスジェット、型番:DJ-2200、ノードソンアシムテック株式会社製)を装着し、実施例及び比較例の各電磁波シールド用ペーストを5mm角のポリイミド基板(厚さ1mm)上に塗布し、175℃で1時間加熱して電磁波シールド用ペーストを硬化させた。電磁波シールド用ペーストを硬化させた各ポリイミド基板を、「同軸管タイプ シールド効果測定システム(500MHz~18Ghz)」(シールド効果測定キットS-GPC7、キーコム株式会社製)にて測定した。
電磁波シールド効果が40dB以上の場合は「優」と評価し、30dB以上40dB未満の場合は「良」20dB以上30dB未満の場合は「可」と評価した。OverFlowとなったもの「-」とした。
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
表2~4に示すように、実施例1~14の電磁波シールド用ペーストは、ジェットディスペンス性に優れ、トレンチへの充填性が良好で、且つ、充填後に導電性粒子と樹脂との分離が認められなかった。電磁波シールド効果は、20dB以上であり、良好な結果となった。
なかでも、親水性表面処理剤により表面処理された導電性粒子を用い、低粘度のエポキシ樹脂を用いた実施例においてより良好な結果が得られた。なお、溶剤成分を含んだ実施例2は、加熱硬化時にボイドが発生し、電磁波シールド効果の測定ができなかった。
【0099】
一方、比較例1や比較例2の電磁波シールド用ペーストは、硬化物において、導電性粒子と樹脂との分離が認められた。また、比較例3や比較例4の電磁波シールド用ペーストは、ジェットディスペンス性が悪く、連続ディスペンス途中で吐出できなくなる現象が見られた。