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特開2024-86447特性値補正装置、特性値算出装置およびこれを備えた検査装置、特性値補正方法、発光装置、特性値補正プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086447
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】特性値補正装置、特性値算出装置およびこれを備えた検査装置、特性値補正方法、発光装置、特性値補正プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/26 20200101AFI20240620BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20240620BHJP
【FI】
G01R31/26 F
H01L33/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201575
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】山路 芳紀
【テーマコード(参考)】
2G003
5F241
【Fターム(参考)】
2G003AA06
2G003AB01
2G003AE06
2G003AH05
5F241AA46
5F241BB07
5F241BD02
5F241BD04
5F241FF16
(57)【要約】
【課題】パルス電流を印加して発光装置の特性を検査する際に、本来、印加したい電流値で印加した場合の特性検査の結果を得ることが可能な特性値補正装置およびこれを備えた検査装置を提供する。
【解決手段】PC10は、波形取得部10a、面積算出部10b、時間算出部10c、補正係数算出部10dを備える。波形取得部10aは、LED12にパルス電流が印加された際に得られる経過時間と第1電流値との関係を示す波形を取得する。面積算出部10bは、波形取得部10aにおいて取得された波形の全体の第1面積と、第1電流値が安定した矩形波の部分の第2面積とを算出する。時間算出部10cは、印加開始時間と印加終了時間との間の第1時間と第2面積に対応する第2時間とを算出する。補正係数算出部10dは、第1面積と第2面積との比率と、第1時間と第2時間との比率と、を含む補正係数を求める。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光装置の特性を検査する検査装置において前記発光装置にパルス電流を印加して前記発光装置の特性の検査を実施する際に、前記発光装置に実際に流れた第1電流値を用いて、前記発光装置の特性値を補正する特性値補正装置であって、
前記発光装置に前記パルス電流が印加された際に得られる経過時間と前記第1電流値との関係を示す波形を取得する波形取得部と、
前記波形取得部において取得された前記波形の全体の第1面積と、前記波形における前記第1電流値が安定した矩形波の部分の第2面積とを算出する面積算出部と、
前記波形の全体のパルス電流の印加開始時間と印加終了時間との間の第1時間と、前記第2面積に対応する第2時間と、を算出する時間算出部と、
前記面積算出部において算出された前記第1面積と前記第2面積との比率と、前記時間算出部において算出された前記第1時間と前記第2時間との比率と、を含む補正係数を求める補正係数算出部と、
を備える特性値補正装置。
【請求項2】
前記面積算出部は、前記第2面積に対応する矩形波の開始点として、単位時間当たりの変化量がほぼ0になった時点を設定する
請求項1に記載の特性値補正装置。
【請求項3】
前記面積算出部は、前記第2面積に対応する前記矩形波の終了点を、前記パルス電流の印加終了時に合わせて設定する
請求項1または2に記載の特性値補正装置。
【請求項4】
前記補正係数Kは、以下の関係式(1)によって表される
請求項1または2に記載の特性値補正装置。
補正係数K=(第2面積/第1面積)×(第1時間/第2時間)・・・(1)
【請求項5】
発光装置の特性を検査する検査装置において前記発光装置にパルス電流を印加して前記発光装置の特性の検査を実施する際に、前記発光装置に実際に流れた第1電流値を用いて、前記発光装置の特性値を算出する特性値算出装置であって、
前記発光装置に前記パルス電流が印加された際に得られる経過時間と前記第1電流値との関係を示す波形を取得する波形取得部と、
前記波形取得部において取得された前記波形を、前記発光装置に流れる電流値と特性値との関係に基づいて、経過時間と明るさとの関係を示す矩形波のグラフに置換するグラフ置換処理部と、
前記グラフ置換処理部によって置換された前記矩形波のグラフを積分して、前記発光装置の特性値を算出する特性値算出部と、
を備える特性値算出装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の特性値補正装置と、
前記発光装置の特性を測定する測定装置と、
前記測定装置で得られた第1測定値に、前記特性値補正装置で得られた前記補正係数を乗じて、第2測定値を算出する特性変換部と、
を備える検査装置。
【請求項7】
発光装置の特性を検査する検査装置において前記発光装置にパルス電流を印加して前記発光装置の特性の検査を実施する際に、前記発光装置に実際に流れた第1電流値を用いて、前記発光装置の特性値を補正する特性値補正方法であって、
前記発光装置に前記パルス電流が印加された際に得られる経過時間と前記第1電流値との関係を示す波形を取得する波形取得ステップと、
前記波形取得ステップにおいて取得された前記波形の全体の第1面積と、前記波形における前記第1電流値が安定した矩形波の部分の第2面積と、を算出する面積算出ステップと、
前記波形の全体のパルス電流の印加開始時間と印加終了時間との間の第1時間と、前記第2面積に対応する第2時間と、を算出する時間算出ステップと、
前記面積算出ステップにおいて算出された前記第1面積と前記第2面積との比率と、前記時間算出ステップにおいて算出された前記第1時間と前記第2時間との比率と、を含む補正係数を求める補正係数算出ステップと、
を備える特性値補正方法。
【請求項8】
請求項7に記載の特性値補正方法によって補正された特性値を用いて検査された発光装置。
【請求項9】
発光装置の特性を検査する検査装置において前記発光装置にパルス電流を印加して前記発光装置の特性の検査を実施する際に、前記発光装置に実際に流れた第1電流値を用いて、前記発光装置の特性値を補正する特性値補正プログラムであって、
前記発光装置に前記パルス電流が印加された際に得られる経過時間と前記第1電流値との関係を示す波形を取得する波形取得ステップと、
前記波形取得ステップにおいて取得された前記波形の全体の第1面積と、前記波形における前記第1電流値が安定した矩形波の部分の第2面積と、を算出する面積算出ステップと、
前記波形の全体のパルス電流の印加開始時間と印加終了時間との間の第1時間と、前記第2面積に対応する第2時間と、を算出する時間算出ステップと、
前記面積算出ステップにおいて算出された前記第1面積と前記第2面積との比率と、前記時間算出ステップにおいて算出された前記第1時間と前記第2時間との比率と、を含む補正係数を求める補正係数算出ステップと、
を備える特性値補正方法をコンピュータに実行させる特性値補正プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特性値補正装置、特性値算出装置およびこれを備えた検査装置、特性値補正方法、発光装置、特性値補正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED(Light Emitting Diode)等の発光装置について、所定の電流を印加して光量を測定し、正常な範囲の光量を得られるか否かを検査する検査装置が用いられている。
例えば、特許文献1には、所定の関係でLEDの温度に関係する所定のパラメータを用いて、較正テーブルを用いて決定される補正因子によって測定された放出光量は、放出光量の温度起因揺らぎについて補正されることで、光検出器の温度依存性を補正するための手法について開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、応答性が異なる2つの受光素子を用いて、入出力特性およびその微分特性を測定し、これらの測定結果から算出される第2受光素子の結合効率に基づいて、第2受光素子が測定した短パルス駆動における半導体レーザ素子の入出力特性を較正することで、LD(Laser Diode)素子の安定性を検出する手法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007-537583号公報
【特許文献2】特開2007-207999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報に開示された方法では、通常、LEDの発熱量を抑制するためにできるだけ短い時間のパルス電流を印加して、LEDの特性(光束等)の検査を実施する。しかし、パルス電流はパルス幅が短くなるにつれて矩形波から逸脱しやすいため、本来、印加したい電流値が印加できないおそれがある。
本開示の課題は、パルス電流を印加して発光装置の特性を検査する際に、本来、印加したい電流値で印加した場合の特性検査の結果を得ることが可能な特性値補正装置、特性値算出装置およびこれを備えた検査装置、特性値補正方法、発光装置、特性値補正プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る特性値補正装置は、発光装置の特性を検査する検査装置において発光装置にパルス電流を印加して発光装置の特性の検査を実施する際に、発光装置に実際に流れた第1電流値を用いて、発光装置の特性値を補正する特性値補正装置であって、波形取得部と、面積算出部と、時間算出部と、補正係数算出部と、を備える。波形取得部は、発光装置にパルス電流が印加された際に得られる経過時間と第1電流値との関係を示す波形を取得する。面積算出部は、波形取得部において取得された波形の全体の第1面積と、波形における第1電流値が安定した矩形波の部分の第2面積とを算出する。時間算出部は、波形の全体のパルス電流の印加開始時間と印加終了時間との間の第1時間と、第2面積に対応する第2時間と、を算出する。補正係数算出部は、面積算出部において算出された第1面積と第2面積との比率と、時間算出部において算出された第1時間と第2時間との比率と、を含む補正係数を求める。
【0007】
本開示に係る特性値算出装置は、発光装置の特性を検査する検査装置において発光装置にパルス電流を印加して発光装置の特性の検査を実施する際に、発光装置に実際に流れた第1電流値を用いて、発光装置の特性値を算出する特性値算出装置であって、波形取得部と、グラフ置換処理部と、特性値算出部と、を備える。波形取得部は、発光装置にパルス電流が印加された際に得られる経過時間と第1電流値との関係を示す波形を取得する。グラフ置換処理部は、波形取得部において取得された波形を、発光装置に流れる電流値と特性値との関係に基づいて、経過時間と明るさとの関係を示す矩形波のグラフに置換する。特性値算出部は、グラフ置換処理部によって置換された矩形波のグラフを積分して、発光装置の特性値を算出する。
【0008】
本開示に係る検査装置は、特性値補正装置と、発光装置の特性を測定する測定装置と、測定装置で得られた第1測定値に、特性値補正装置で得られた補正係数を乗じて、第2測定値を算出する特性変換部と、を備える。
本開示に係る特性値補正方法は、発光装置の特性を検査する検査装置において発光装置にパルス電流を印加して発光装置の特性の検査を実施する際に、発光装置に実際に流れた第1電流値を用いて、発光装置の特性値を補正する特性値補正方法であって、波形取得ステップと、面積算出ステップと、時間算出ステップと、補正係数算出ステップと、を備える。波形取得ステップでは、発光装置にパルス電流が印加された際に得られる経過時間と第1電流値との関係を示す波形を取得する。面積算出ステップでは、波形取得ステップにおいて取得された波形の全体の第1面積と、波形における第1電流値が安定した矩形波の部分の第2面積と、を算出する。時間算出ステップでは、波形の全体のパルス電流の印加開始時間と印加終了時間との間の第1時間と、第2面積に対応する第2時間と、を算出する。補正係数算出ステップでは、面積算出ステップにおいて算出された第1面積と第2面積との比率と、時間算出ステップにおいて算出された第1時間と第2時間との比率と、を含む補正係数を求める。
【0009】
本開示に係る特性値補正プログラムは、発光装置の特性を検査する検査装置において発光装置にパルス電流を印加して発光装置の特性の検査を実施する際に、発光装置に実際に流れた第1電流値を用いて、発光装置の特性値を補正する特性値補正プログラムであって、波形取得ステップと、面積算出ステップと、時間算出ステップと、補正係数算出ステップと、を備える特性値補正方法をコンピュータに実行させる特性値補正プログラムである。波形取得ステップでは、発光装置にパルス電流が印加された際に得られる経過時間と第1電流値との関係を示す波形を取得する。面積算出ステップでは、波形取得ステップにおいて取得された波形の全体の第1面積と、波形における第1電流値が安定した矩形波の部分の第2面積と、を算出する。時間算出ステップでは、波形の全体のパルス電流の印加開始時間と印加終了時間との間の第1時間と、第2面積に対応する第2時間と、を算出する。補正係数算出ステップでは、面積算出ステップにおいて算出された第1面積と第2面積との比率と、時間算出ステップにおいて算出された第1時間と第2時間との比率と、を含む補正係数を求める。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る特性値補正装置によれば、パルス電流を印加して発光装置の特性を検査する際に、本来、印加したい電流値で印加した場合の特性検査の結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係るPCを含む検査システムの構成を示すブロック図。
図2図1の検査システムに含まれるPC内に形成される機能ブロックを示すブロック図。
図3図1の検査システムにおいて検査対象であるLEDに印加されるパルス電流の波形を示すグラフ。
図4】(a)は、図3のパルス電流の波形の拡大図。(b)は、(a)に対応するパルス電流の印加時間を示すグラフ。
図5図2のPCによって補正されるLEDの特性(光束等)を示す図。
図6図1の検査システムのPCにおいて実施される特性値補正方法の処理の流れを示すフローチャート。
図7】(a)は、本開示の他の実施形態に係る特性値補正方法において利用される経過時間とLEDに流れる電流値との関係を示すグラフ。(b)は、LEDに流れる電流とLEDから照射される光の明るさとの関係を示すグラフ。(c)は、経過時間と、LEDに流れる電流および明るさとの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の一実施形態に係るPC(Personal Computer)(特性値補正装置)10およびこれを備えた検査システム(検査装置)20について、図1図6を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、以下の説明において、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については、原則として同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。また、以下の説明では必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」およびそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は、図面を参照した開示の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本開示の技術的範囲が制限されるものではない。また、本開示において「平行」および「垂直」または「直交」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺あるいは面等がそれぞれ0°から±5°程度および90°から±5°程度の範囲にある場合を含む。
【0013】
(1)検査システム20の構成
本実施形態の検査システム(検査装置)20は、検査対象となる発光装置(LED(Light Emitting Diode)12)の特性(例えば、光束や輝度)の検査を実施するシステムであって、図1に示すように、PC(特性値補正装置)10、電源11、LED12、分光器(測定装置)13およびオシロスコープ14を備えている。
【0014】
PC(特性値補正装置)10は、LED12の特性を検査する分光器13においてLED12にパルス電流(図3参照)を印加してLED12の特性の検査を実施する際に、LED12に実際に流れた第1電流値を用いて、LED12の特性値を補正する。より具体的には、PC10は、所定の補正係数を用いて、LED12に実際に流れた第1電流値を、本来、LED12に印加されるべき電流値である第2電流値が流れた場合に得られたはずの特性値に補正する。
【0015】
ここで、パルス電流を印加して発光装置の光束等の特性を検査する際に、パルス電流はパルス幅が短くなるにつれて矩形波から逸脱しやすいため、本来、印加したい電流値が印加できないおそれがある。このため、所定の第2電流値とは、実際にLED12に流れた電流値とは異なり、本来、印加したい電流値を意味している。
なお、PC10の詳細な構成については、後段にて詳述する。
【0016】
電源11は、LED12に対して電力を印加する電源装置であって、PC10によって制御されている。電源11は、PC10によって、LED12に対して印加される電力の印加条件の設定、LED12のON/OFFの制御が行われる。電源11は、図3に示すように、LED12に対して、露光時間が、例えば、100msの場合において、パルス幅0.05msのパルス電流を、5ms間隔で印加する。
【0017】
LED(発光装置)12は、検査システム20における検査対象となる発光装置の1つであって、本実施形態では、LED12の特性として、所定の電流値に対して適切な光束(lm)が得られるか否かが検査される。具体的には、LED12は、電源11から印加された電力によって光を照射し、その光束が分光器13によって測定される。
分光器(測定装置)13は、LED12の特性の1つである光束を測定する。具体的には、分光器13は、電源11から印加された電力によってLED12から照射された光を測定し、スペクトルデータとしてPC10へ送信する。
【0018】
これにより、PC10は、分光器13から受信したスペクトルデータを用いて、LED12の相対明るさを演算する。
オシロスコープ14は、PC10によって制御される電源11からLED12へ印加される電力の電流波形(パルス電流)を測定し、電流波形デジタルデータとして、PC10へ送信する。
【0019】
これにより、PC10は、オシロスコープ14から受信した波形デジタルデータを用いて、後述する補正係数Kを算出する。
【0020】
(2)PC10の構成
本実施形態に係るPC10は、LED12に対して印加されたパルス電流の波形から、2つの面積(第1面積S1および第2面積S2)を算出し、その比率を用いて、本来、印加したかった電流値のパルス電流が印加されたと仮定した場合の測定値(明るさ)を算出する。PC10は、図2に示すように、波形取得部10a、面積算出部10b、時間算出部10c、補正係数算出部10dおよび特性変換部10eを有している。
【0021】
なお、図2に示す波形取得部10a、面積算出部10b、時間算出部10c、補正係数算出部10dおよび特性変換部10eは、PC10のCPUが、PC10内のメモリに保存された各種プログラムを読み込んでPC10内に生成される機能ブロックである。
波形取得部10aは、LED12に対して、図3に示すパルス電流が印加された際に得られる経過時間と、LED12に流れた第1電流値との関係を示す波形を取得する。
【0022】
ここで、波形取得部10aにおいて取得された波形は、図4(a)に示すように、1つの波形を拡大すると、図4(b)に示す理想の印加時間(第2時間t)(例えば、50μs)に対して、立上りの遅れ、オーバーシュート、立下りの遅れ等によって、実際には、厳密な矩形波にならない場合がある。特に、パルス電流のパルス幅が短くなるにつれて矩形波から逸脱しやすいため、本来、印加したい電流値が印加できないおそれがある。
【0023】
このため、本実施形態のPC10は、実際にLED12に流れたパルス電流の波形を取得して、後述する補正係数を用いて補正することで、本来、LED12に印加したかった電流値を算出する。
面積算出部10bは、波形取得部10aにおいて取得された波形の全体の第1面積S1と、波形における第1電流値(図4(a)では、100mA)が安定した矩形波の部分の第2面積S2(図中ハッチング部分)とを算出する。
【0024】
ここで、面積算出部10bは、第2面積S2に対応する矩形波の開始点(安定開始点)として、単位時間当たりの変化量がほぼ0になった時点を設定する。安定開始点は、例えば、微分法等を用いて算出することができる。
また、面積算出部10bは、第2面積S2に対応する矩形波の終了点を、図4(b)に示すパルス電流の印加終了時に合わせて設定する。
【0025】
時間算出部10cは、波形の全体のパルス電流の印加開始時間と印加終了時間との間の第1時間tと、第2面積に対応する第2時間tと、を算出する。
補正係数算出部10dは、面積算出部10bにおいて算出された第1面積S1と第2面積S2との比率と、時間算出部10cにおいて算出された第1時間tと第2時間tとの比率と、を含む補正係数Kを求める。
【0026】
補正係数Kは、第1面積S1、第2面積S2、第1時間t、第2時間tとすると、以下の関係式(1)によって表される。
補正係数K=(S2/S1)×(t/t) ・・・(1)
特性変換部10eは、分光器13で測定されたLED12の光束(lm)(第1測定値)に、PC10で得られた補正係数Kを乗じて、第2測定値を算出する。
【0027】
これにより、PC10は、LED12に対してパルス電流を印加してLED12の光束が印加された電流値に対応する所望の範囲の値であるか否かを検査する際に、実際にLED12に流れた電流値を、本来、印加したかった電流値に補正するための補正係数を用いて、LED12の特性(光束(lm)等)を補正することができる。
よって、パルス電流を印加してLED12の特性を検査する際に、本来、印加したい電流値で印加した場合の特性検査の結果を得ることができる。
【0028】
ここで、本実施形態において、補正係数を用いて補正されるLED12の特性は、図5に示すように、LED12の光束Φである。ただし、補正対象となるLED12の特性は、光束Φに限らず、他の項目(輝度、色度座標等)であってもよい。
なお、図5に示す各特性値は、温度Tj=25℃の条件下において、順電圧、光束、色度座標は、印加したパルス電流のパルス幅0.05ms、デューティ比1%の連続矩形波によって測定したものである。また、光束(lm)は、CIE(Commission internationale de l'eclairage)127:2007に準拠した国家標準構成値と整合させたものである。さらに、色度座標は、CIE1931色度図に基づくものである。
【0029】
<電流値補正方法>
本実施形態では、上述した検査システム20において、PC10が、図6に示すフローチャートに従って電流値補正方法(特性値補正方法)を実施する。
すなわち、ステップS11では、PC10の波形取得部10aが、図3に示すLED12にパルス電流が印加された際に得られる経過時間と第1電流値との関係を示す波形を取得する(波形取得ステップ)。
【0030】
次に、ステップS12では、PC10の面積算出部10bが、図4(a)に示す、波形取得ステップにおいて取得された波形の全体の第1面積S1と、波形における第1電流値が安定した矩形波の部分の第2面積S2と、を算出する(面積算出ステップ)。
次に、ステップS13では、PC10の時間算出部10cが、図4(a)および図4(b)に示す、波形の全体のパルス電流の印加開始時間と印加終了時間との間の第1時間tと、第2面積に対応する第2時間tと、を算出する(時間算出ステップ)。
【0031】
次に、ステップS14では、PC10の補正係数算出部10dが、面積算出ステップにおいて算出された第1面積と第2面積との比率と、時間算出ステップにおいて算出された第1時間と第2時間との比率と、を含む補正係数Kを求める(補正係数算出ステップ)。
次に、ステップS15では、PC10の特性変換部10eが、ステップS14において得られた補正係数Kを、分光器13を用いて測定された光束(lm)の値に乗じて、補正後の電流値に対応するLED12の光束(lm)を算出する。
【0032】
<主な特徴>
本実施形態のPC(特性値補正装置)10は、LED12の特性を検査する検査システム20においてLED12にパルス電流を印加してLED12の特性の検査を実施する際に、LED12に実際に流れた第1電流値を用いて、LED12の特性値を補正する。PC10は、波形取得部10aと、面積算出部10bと、時間算出部10cと、補正係数算出部10dと、を備える。波形取得部10aは、LED12にパルス電流が印加された際に得られる経過時間と第1電流値との関係を示す波形を取得する。面積算出部10bは、波形取得部10aにおいて取得された波形の全体の第1面積と、波形における第1電流値が安定した矩形波の部分の第2面積とを算出する。時間算出部10cは、波形の全体のパルス電流の印加開始時間と印加終了時間との間の第1時間と、第2面積に対応する第2時間と、を算出する。補正係数算出部10dは、面積算出部10bにおいて算出された第1面積と第2面積との比率と、時間算出部10cにおいて算出された第1時間と第2時間との比率と、を含む補正係数を求める。
【0033】
これにより、PC10は、LED12に対して所定のパルス電流を印加して、LED12の特性値(光束等)が、印加された電流値に対応する所望の範囲の値であるか否かを検査する際に、実際にLED12に流れた電流値を、本来、印加したかった電流値に補正するための補正係数を用いて、LED12の特性(光束(lm)等)を補正することができる。
【0034】
よって、パルス電流を印加してLED12の特性(光束等)を検査する際に、本来、印加したい電流値で印加した場合の特性検査の結果を得ることができる。
[他の実施形態]
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0035】
(A)
上記実施形態では、PC(特性値補正装置)10および特性値補正方法として、本開示を実現した例を挙げて説明した。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。
例えば、上述した特性値補正方法をコンピュータに実行させる特性値補正プログラムとして本開示を実現してもよい。
【0036】
この特性値補正プログラムは、特性値補正装置に搭載されたメモリ(記憶部)に保存されており、CPUがメモリに保存された特性値補正プログラムを読み込んで、ハードウェアに各ステップを実行させる。より具体的には、CPUが特性値補正プログラムを読み込んで、上述した波形取得ステップと、面積算出ステップと、時間算出ステップと、補正係数算出ステップとを実行することで、上記と同様の効果を得ることができる。
【0037】
また、本開示は、特性値補正プログラムを保存した記録媒体として実現されてもよい。
(B)
上記実施形態では、実際に測定されたLED12の電流値あるいは光束について、補正係数Kを用いて、LED12に対して本来、印加したかった電流値あるいは光束になるように補正する例を挙げて説明した。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。
【0038】
例えば、図7(a)~図7(c)に示すグラフを用いて、本来、印加したかった電流値あるいは光束になるように補正してもよい。
なお、図7(a)~図7(c)に示す、Iは電流値、Pは明るさを意味している。
具体的には、特性値補正装置のグラフ置換処理部が、図7(a)に示す経過時間とLEDに流れた電流値(第1電流値)との関係を示すグラフの波形から、各ポイント(時間)における電流値が分かっているため、LEDの電流値と明るさとの関係を示す図7(b)のグラフを利用することで、時間と明るさとの関係を示す図7(c)に示す矩形波のグラフに置換することができる。
【0039】
そして、特性値補正装置の特性値算出部が、図7(c)に示す矩形波のグラフを積分する(P(I2)'=P(I1)* P(I2)/P(I1))ことで、本来、LEDに印加したかった電流値に対応するLEDの明るさを算出することができる。
この方法によれば、微小な電流変動では電流と明るさとの関係が直線とみなせるが、電流変動が大きいと直線とみなせなくなるおそれがあるため、その場合に有効な補正方法として利用することができる。
【0040】
(C)
上記実施形態では、検査対象となる発光装置として、LED12を用いた例を挙げて説明した。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。
例えば、LD(Laser Diode)等の他の発光装置を検査対象とする検査装置に含まれる特性値補正装置であってもよい。
【0041】
(D)
上記実施形態では、本開示の特性値補正装置を、PC10内に実装した例を挙げて説明した。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。
例えば、PC等の演算装置とは別に、上記実施形態の特性値補正装置の専用装置として設けられていてもよい。
【0042】
本開示に係る実施形態は、次の各項を含む。
[項1]
発光装置の特性を検査する検査装置において前記発光装置にパルス電流を印加して前記発光装置の特性の検査を実施する際に、前記発光装置に実際に流れた第1電流値を用いて、前記発光装置の特性値を補正する特性値補正装置であって、
前記発光装置に前記パルス電流が印加された際に得られる経過時間と前記第1電流値との関係を示す波形を取得する波形取得部と、
前記波形取得部において取得された前記波形の全体の第1面積と、前記波形における前記第1電流値が安定した矩形波の部分の第2面積とを算出する面積算出部と、
前記波形の全体のパルス電流の印加開始時間と印加終了時間との間の第1時間と、前記第2面積に対応する第2時間と、を算出する時間算出部と、
前記面積算出部において算出された前記第1面積と前記第2面積との比率と、前記時間算出部において算出された前記第1時間と前記第2時間との比率と、を含む補正係数を求める補正係数算出部と、
を備える特性値補正装置。
【0043】
[項2]
前記面積算出部は、前記第2面積に対応する矩形波の開始点として、単位時間当たりの変化量がほぼ0になった時点を設定する
項1に記載の特性値補正装置。
[項3]
前記面積算出部は、前記第2面積に対応する前記矩形波の終了点を、前記パルス電流の印加終了時に合わせて設定する
項1または2に記載の特性値補正装置。
【0044】
[項4]
前記補正係数Kは、以下の関係式(1)によって表される
項1から3のいずれか一項に記載の特性値補正装置。
補正係数K=(第2面積/第1面積)×(第1時間/第2時間)・・・(1)
[項5]
発光装置の特性を検査する検査装置において前記発光装置にパルス電流を印加して前記発光装置の特性の検査を実施する際に、前記発光装置に実際に流れた第1電流値を用いて、前記発光装置の特性値を算出する特性値算出装置であって、
前記発光装置に前記パルス電流が印加された際に得られる経過時間と前記第1電流値との関係を示す波形を取得する波形取得部と、
前記波形取得部において取得された前記波形を、前記発光装置に流れる電流値と特性値との関係に基づいて、経過時間と明るさとの関係を示す矩形波のグラフに置換するグラフ置換処理部と、
前記グラフ置換処理部によって置換された前記矩形波のグラフを積分して、前記発光装置の特性値を算出する特性値算出部と、
を備える特性値算出装置。
【0045】
[項6]
項1から4のいずれか一項に記載の特性値補正装置と、
前記発光装置の特性を測定する測定装置と、
前記測定装置で得られた第1測定値に、前記特性値補正装置で得られた前記補正係数を乗じて、第2測定値を算出する特性変換部と、
を備える検査装置。
【0046】
[項7]
発光装置の特性を検査する検査装置において前記発光装置にパルス電流を印加して前記発光装置の特性の検査を実施する際に、前記発光装置に実際に流れた第1電流値を用いて、前記発光装置の特性値を補正する特性値補正方法であって、
前記発光装置に前記パルス電流が印加された際に得られる経過時間と前記第1電流値との関係を示す波形を取得する波形取得ステップと、
前記波形取得ステップにおいて取得された前記波形の全体の第1面積と、前記波形における前記第1電流値が安定した矩形波の部分の第2面積と、を算出する面積算出ステップと、
前記波形の全体のパルス電流の印加開始時間と印加終了時間との間の第1時間と、前記第2面積に対応する第2時間と、を算出する時間算出ステップと、
前記面積算出ステップにおいて算出された前記第1面積と前記第2面積との比率と、前記時間算出ステップにおいて算出された前記第1時間と前記第2時間との比率と、を含む補正係数を求める補正係数算出ステップと、
を備える特性値補正方法。
【0047】
[項8]
項7に記載の特性値補正方法によって補正された特性値を用いて検査された発光装置。
【0048】
[項9]
発光装置の特性を検査する検査装置において前記発光装置にパルス電流を印加して前記発光装置の特性の検査を実施する際に、前記発光装置に実際に流れた第1電流値を用いて、前記発光装置の特性値を補正する特性値補正プログラムであって、
前記発光装置に前記パルス電流が印加された際に得られる経過時間と前記第1電流値との関係を示す波形を取得する波形取得ステップと、
前記波形取得ステップにおいて取得された前記波形の全体の第1面積と、前記波形における前記第1電流値が安定した矩形波の部分の第2面積と、を算出する面積算出ステップと、
前記波形の全体のパルス電流の印加開始時間と印加終了時間との間の第1時間と、前記第2面積に対応する第2時間と、を算出する時間算出ステップと、
前記面積算出ステップにおいて算出された前記第1面積と前記第2面積との比率と、前記時間算出ステップにおいて算出された前記第1時間と前記第2時間との比率と、を含む補正係数を求める補正係数算出ステップと、
を備える特性値補正方法をコンピュータに実行させる特性値補正プログラム。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本開示の特性値補正装置は、パルス電流を印加して発光装置の特性を検査する際に、本来、印加したい電流値で印加した場合の特性検査の結果を得ることができるという効果を奏することから、各種発光装置の特性を検査する装置に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 PC(特性値補正装置)
10a 波形取得部
10b 面積算出部
10c 時間算出部
10d 補正係数算出部
10e 特性変換部
11 電源
12 LED(発光装置)
13 分光器(測定装置)
14 オシロスコープ
20 検査システム(検査装置)
K 補正係数
第1時間
第2時間
S1 第1面積
S2 第2面積
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7