(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086552
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】アミノオキシカルボン酸組成物及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 239/20 20060101AFI20240620BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
C07C239/20
B01D53/14 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134711
(22)【出願日】2023-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2022201604
(32)【優先日】2022-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坪井 裕基
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大地
(72)【発明者】
【氏名】須藤 幸徳
【テーマコード(参考)】
4D020
4H006
【Fターム(参考)】
4D020AA08
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB03
4D020CB25
4D020CB33
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB81
4H006AC59
4H006BB14
4H006BE10
(57)【要約】
【課題】 塩化物イオン含有量が低減されたアミノオキシカルボン酸組成物、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
少なくとも、一般式(1)
【化1】
(式中、Rは、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは1~6の整数を表す。)で示されるアミノオキシカルボン酸と塩化物イオンを含む常温固体の組成物であって、前記アミノオキシカルボン酸1モルに対して、塩化物イオンが0.0001~0.4モル存在することを特徴とする、組成物を用いる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、一般式(1)
【化1】
(式中、Rは、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは1~6の整数を表す。)で示されるアミノオキシカルボン酸と塩化物イオンを含む常温固体の組成物であって、前記アミノオキシカルボン酸1モルに対して、塩化物イオンが0.0001~0.4モル存在することを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記の一般式(1)で示されるアミノオキシカルボン酸が、アミノオキシ酢酸(前記一般式(1)において、Rが水素原子、nが1を表す)であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物の製造方法であって、
(工程a)下記一般式(1)
【化2】
(式中、Rは、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは1~6の整数を表す。)
で示されるアミノオキシカルボン酸の塩酸塩(前記アミノオキシカルボン酸 1モルに対して、塩酸が0.4~1.1モル存在する塩)と、アルコール溶媒、エーテル溶媒、及びグリコールエーテル溶媒からなる群より選ばれる溶媒と、アルカリ性金属塩化合物を混合し、スラリー液を得る工程と、
(工程b) 前記(工程a)で得られたスラリー液を濾過し、次いで、ろ別した固体を乾燥させ、常温固体の組成物を得る工程、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物の製造方法。
【請求項4】
前記(工程a)のアルカリ性金属塩化合物が、水酸化リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸ナトリウムからなる群より選ばれる1つ又は2つ以上であることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記(工程a)の溶媒が、アルコール溶媒である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記(工程a)の溶媒が、メタノールである、請求項3に記載の製造方法。
【請求項7】
前記一般式(1)で示されるアミノオキシカルボン酸が、アミノオキシ酢酸(前記一般式(1)において、Rが水素原子、nが1を表す)である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項8】
前記一般式(1)で示されるアミノオキシカルボン酸が、アミノオキシ酢酸であって、前記一般式(1)で示されるアミノオキシカルボン酸の塩酸塩が、アミノオキシ酢酸ヘミ塩酸塩(前記アミノオキシカルボン酸 1モルに対して、塩酸が0.5モル存在する塩)である、請求項3に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノオキシカルボン酸組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノオキシカルボン酸は、アセトアルデヒドやホルムアルデヒド等のアルデヒド類と化学的に反応して、効率良く捕獲・無害化することができ、アルデヒド類の捕捉剤(以下、「アルデヒド捕捉剤」ということもある。)の有効成分として有用である(例えば、特許文献1参照)。アミノオキシカルボン酸は水溶液とすることで、樹脂や繊維等の素材に塗布又は噴霧して使用できる。
【0003】
アミノオキシカルボン酸は、α位に(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)オキシ基を有するカルボン酸エステルを酸加水分解する方法で製造することができ、アミノオキシカルボン酸と酸との塩が得られる。この時、酸として塩酸を用いる製造方法が報告されている(例えば、特許文献2又は3参照)。
【0004】
上記の方法で製造したアミノオキシカルボン酸は、いずれも塩酸との塩を形成しているが、皮膚刺激性低減等の観点から、塩基で中和した状態で使用することが好ましい。しかし、例えばアミノオキシカルボン酸の塩酸塩の水溶液を水酸化ナトリウムで中和する場合、中和によって副生する塩化ナトリウムが水溶液中に残存してしまい、純度が悪化し、それに伴いアルデヒド捕捉効率も低下する。また、塩化物イオンを含む水溶液は金属腐食性を持つため、上記の方法で得られるアミノオキシカルボン酸は用途が限られる課題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/124208号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/49864号パンフレット
【特許文献3】国際公開第98/14447号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、塩化物イオン含有量が低減されたアミノオキシカルボン酸組成物、及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一態様は、以下の[1]~[8]に存する。
【0009】
[1]
少なくとも、一般式(1)
【0010】
【0011】
(式中、Rは、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは1~6の整数を表す。)
で示されるアミノオキシカルボン酸と塩化物イオンを含む常温固体の組成物であって、前記アミノオキシカルボン酸1モルに対して、塩化物イオンが0.0001~0.4モル存在することを特徴とする、組成物。
【0012】
[2]
前記の一般式(1)で示されるアミノオキシカルボン酸が、アミノオキシ酢酸(前記一般式(1)において、Rが水素原子、nが1を表す)であることを特徴とする、[1]に記載の組成物。
【0013】
[3]
請求項1に記載の組成物の製造方法であって、
(工程a)下記一般式(1)
【0014】
【0015】
(式中、Rは、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは1~6の整数を表す。)
で示されるアミノオキシカルボン酸の塩酸塩(前記アミノオキシカルボン酸 1モルに対して、塩酸が0.4~1.1モル存在する塩)と、アルコール溶媒、エーテル溶媒、及びグリコールエーテル溶媒からなる群より選ばれる溶媒と、アルカリ性金属塩化合物を混合し、スラリー液を得る工程と、
(工程b) 前記(工程a)で得られたスラリー液を濾過し、次いで、ろ別した固体を乾燥させ、常温固体の組成物を得る工程、
を含むことを特徴とする、[1]に記載の組成物の製造方法。
【0016】
[4]
前記(工程a)のアルカリ性金属塩化合物が、水酸化リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸ナトリウムからなる群より選ばれる1つ又は2つ以上であることを特徴とする、[3]に記載の製造方法。
【0017】
[5]
前記(工程a)の溶媒が、アルコール溶媒である、[3]に記載の製造方法。
【0018】
[6]
前記(工程a)の溶媒が、メタノールである、[3]に記載の製造方法。
【0019】
[7]
前記一般式(1)で示されるアミノオキシカルボン酸が、アミノオキシ酢酸(前記一般式(1)において、Rが水素原子、nが1を表す)である、[3]に記載の製造方法。
【0020】
[8]
前記一般式(1)で示されるアミノオキシカルボン酸が、アミノオキシ酢酸であって、前記一般式(1)で示されるアミノオキシカルボン酸の塩酸塩が、アミノオキシ酢酸ヘミ塩酸塩(前記アミノオキシカルボン酸 1モルに対して、塩酸が0.5モル存在する塩)である、[3]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、高純度で、皮膚刺激性の低い、固体状のアミノオキシカルボン酸組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその両端の数値を含む以上以下の数値範囲を意味する。
【0023】
本発明の組成物は、上記一般式(1)で表されるアミノオキシカルボン酸と塩化物イオンを含む常温固体の組成物であって、前記アミノオキシカルボン酸1モルに対して、塩化物イオンが0.0001~0.4モル存在することを特徴とする、組成物に係る。
【0024】
上記一般式(1)で表されるアミノオキシカルボン酸において、Rは、各々独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0025】
当該炭素数1~4のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基等を例示することができる。
【0026】
上記一般式(1)において、nは、1~6の整数を表す。
【0027】
アルデヒド捕捉効果に優れる点で、Rは、水素原子であることが好ましく、nは、1~4の整数であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0028】
また、上記一般式(1)で表されるアミノオキシカルボン酸については、アルデヒド捕捉効果に優れる点で、アミノオキシ酢酸(前記一般式(1)において、Rが水素原子、nが1を表す)であることが好ましい。
【0029】
前記の塩化物イオンは、前記の一般式(1)で表されるアミノオキシカルボン酸と塩を形成している。当該塩については、特に限定するものではないが、例えば、アミノオキシカルボン酸の塩酸塩が挙げられる。
【0030】
本発明の組成物については、常温固体であることを特徴とし、更に、上記一般式(1)で表されるアミノオキシカルボン酸 1モルに対して、塩化物イオンが0.0001~0.4モル存在することを特徴とする。
【0031】
本発明のアミノオキシカルボン酸と塩化物イオンを含む常温固体の組成物に含まれる塩化物イオンの含有量については、皮膚刺激性が低減できる点で、アミノオキシカルボン酸 1モルに対して、0.001~0.2モルであることが好ましく、0.003~0.1モルであることがより好ましい。
【0032】
前記の組成物については、特に限定するものではないが、例えば、次の製造方法によって製造することができる。
【0033】
一般式(1)で示されるアミノオキシカルボン酸は、特許文献2又は3の方法によって製造できることが知られているが、当該製造方法によって製造されるアミノオキシカルボン酸は、ヘミ塩酸塩(アミノオキシカルボン酸 1モルに対し、0.5モルの塩酸が含まれる)の固体である。
【0034】
本発明の組成物については、一例として、アミノオキシカルボン酸ヘミ塩酸塩の固体を用いて、一例として、以下のような工程aと工程bを経て、製造することができる。
(工程a)下記一般式(1)
【0035】
【0036】
(式中、Rは、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは1~6の整数を表す。)
で示されるアミノオキシカルボン酸の塩酸塩(前記アミノオキシカルボン酸 1モルに対して、塩酸が0.4~1.1モル存在する塩)と、アルコール溶媒、エーテル溶媒、及びグリコールエーテル溶媒からなる群より選ばれる溶媒と、アルカリ性金属塩化合物を混合し、スラリー液を得る工程
(工程b) 前記(工程a)で得られたスラリー液を濾過し、次いで、ろ別した固体を乾燥させ、常温固体の組成物を得る工程
下記の一般式(1)で示されるアミノオキシカルボン酸の塩酸塩(前記アミノオキシカルボン酸 1モルに対して、塩酸が0.4~1.1モル存在する塩)については、特に限定するものではないが、例えば、上記の一般式(1)で示されるアミノオキシカルボン酸のヘミ塩酸塩を挙げることができる。
【0037】
前記のアルコール溶媒については、特に限定するものではないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ブタンジオール、又はグリセリン等が挙げられる。
【0038】
前記のエーテル溶媒については、特に限定するものではないが、例えば、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、又はジオキソラン等が挙げられる。
【0039】
前記のグリコールエーテル溶媒については、特に限定するものではないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、又はジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0040】
アルコール溶媒、エーテル溶媒、及びグリコールエーテル溶媒からなる群より選ばれる溶媒については、塩素含量低減効果が高い点で、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコールが好ましく、これらの溶媒については、単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。これらのうち、メタノールがより好ましい。
【0041】
前記のアルカリ性金属塩化合物については、水溶時にアルカリ性を示す金属塩化合物を示し、特に限定するものではないが、例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩、遷移金属水酸化物、遷移金属炭酸塩、又は遷移金属炭酸水素塩等が挙げられる。
【0042】
なお、前記のアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、又はフランシウムが挙げられる。
【0043】
前記のアルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、又はラジウムが挙げられる。
【0044】
前記の遷移金属としては、アルミニウム、チタニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、水銀、タリウム、鉛、又はビスマスが挙げられる。
【0045】
前記のアルカリ性金属塩化合物については、塩化物イオン低減効果が高い点で、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属水酸化物、及び遷移金属水酸化物からなる群より選ばれる1つ又は2つ以上であることが好ましく、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化チタニウム、水酸化マンガン、水酸化ニッケル、及び水酸化亜鉛からなる群より選ばれる1つ又は2つ以上であることがより好ましく、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素リチウム、及び炭酸水素ナトリウムからなる群より選ばれる1つ又は2つ以上であることがより好ましい。
【0046】
前記の(工程a)で用いるアルカリ性金属塩化合物の量については、特に制限はないが、例えば、アミノオキシカルボン酸塩酸塩に含まれる塩酸 1モルに対して、0.5~5モルであることが好ましく、0.5~2モルであることがより好ましい。
【0047】
前記の(工程a)で用いる溶媒の量については、特に制限はないが、例えば、アミノオキシカルボン酸の塩酸塩の濃度が、0.1~10モル/Lとなる量であることが好ましく、0.3~3モル/Lとなる量であることがより好ましい。
【0048】
前記の(工程a)において、アミノオキシカルボン酸の塩酸塩と、溶媒と、アルカリ性金属塩化合物を混合した当初の混合物については、スラリー状であることが好ましい。
【0049】
前記の(工程a)では、アミノオキシカルボン酸の塩酸塩と、溶媒と、アルカリ性金属塩化合物を混合することを特徴とするが、混合する方法としては、例えば、撹拌翼を用いた混合、液循環を用いた混合、インラインミキサーを用いた混合、マグネチックスターラーを用いた混合などを挙げることができる。
【0050】
前記の混合時間については、0.1~10時間が好ましく、0.5~2時間がより好ましい。
【0051】
前記の(工程a)を行うことによって、スラリー状の混合液が得られる。スラリー中の固体の主成分は、塩化物イオン含有量が低減されたアミノオキシカルボン酸であって、低減された塩化物イオンについては、前記のアルカリ性金属塩化合物と反応して新たな塩を形成し、そのほとんどが前記の溶媒中に溶解している。
【0052】
前記の(工程b)は、前記(工程a)で得られたスラリー液を濾過し、次いで、ろ別した固体を乾燥させ、常温固体の組成物を得る工程を表す。
【0053】
前記の濾過については、特に限定するものではないが、ろ紙、ろ布、メンブレンフィルター、グラスフィルター、メッシュスクリーン、セライト、又はシリカゲルを用いた濾過を挙げることができる。
【0054】
また、濾過方法については、例えば、自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過、又は遠心ろ過等が挙げられる。効率が良く、時間が短縮できる点で、減圧ろ過、加圧ろ過、又は遠心ろ過が好ましい。
【0055】
ろ過によって、前記スラリー液中の固体を分離することができるが、当該固体は、前記の通り、塩化物イオン含有量が低減されたアミノオキシカルボン酸である。
【0056】
分離された固体については、少量の溶媒が付着しているため、乾燥して当該溶媒を除去することが好ましい。
【0057】
以上の工程を行うことによって、本発明のアミノオキシカルボン酸と塩化物イオンを含む常温固体の組成物であって、前記アミノオキシカルボン酸1モルに対して、塩化物イオンが0.0001~0.4モル存在する組成物が得られる。
【実施例0058】
以下、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定して解釈されるものではない。
【0059】
[塩化物イオン濃度測定方法]
分析法:イオンクロマトグラフ法
-IC条件-
測定装置:東ソー社製 IC-2010
分析カラム:TSKgel SuperIC-Anion HS
ガードカラム:TSKguardcolumn SuperIC-A HS
溶離液:7.5mmol/L 炭酸水素ナトリウム水溶液+0.8mmol/L 炭酸ナトリウム水溶液
流速:1.5mL/min
カラム温度:40℃
注入量:30μL
サプレッサーゲル:TSKgel suppress IC-A
検出:電気伝導度
合成例1
N-ヒドロキシフタルイミド(1.65g,10.0mmol)と炭酸水素ナトリウム(1.01g,12.0mmol)に、ジメチルホルムアミド(10mL)を加え、60℃で1時間撹拌した。次いで、このものにクロロ酢酸エチル(1.88g,15.0mmol)を加え、60℃で16時間撹拌した。反応終了後、反応液を水(100mL)に注ぎ入れ、水(100mL)でさらに希釈した。析出した固体をろ取し、水で洗浄した。得られた固体を減圧下に乾燥することにより、2-[(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)オキシ]酢酸エチルの白色固体(2.29g,収率92%)を得た。
【0060】
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ7.89-7.83(m,2H),7.80-7.74(m,2H),4.82(s,2H),4.27(q,J=7.1Hz,2H),1.31(t,J=7.1Hz,3H).
合成例2
前記の合成例1で合成した2-[(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)オキシ]酢酸エチル(2.49g,10mmol)に、6M塩酸(25mL)を加え、100℃で1.5時間撹拌した。次いで、反応液を室温まで放冷し、析出した固体をろ別し、ろ液を減圧下に濃縮(80℃/6.6kPa)した。残渣(2g)にトルエン(10mL)を加えて、再び減圧下に濃縮(80℃/6.6kPa)した。得られた残渣に2-プロピルアルコール(10mL)を加え、固体をろ過した。得られた固体を少量の2-プロピルアルコールで洗浄した後、十分に乾燥させることにより、アミノオキシ酢酸ヘミ塩酸塩の白色固体(853mg,収率78%,純度>99%)を得た。
【0061】
1H-NMR(400MHz,D2O):δ4.47(s,2H).
実施例1
合成例2で合成した固形のアミノオキシ酢酸ヘミ塩酸塩(10.93g,100mmol)と、水酸化リチウム1水和物(2.10g,50mmol)と、メタノール(189mL)を混合槽に投入し、撹拌翼を用いて25℃で1時間攪拌し、次いで、減圧ろ過した。ろ過残渣を60℃で1時間乾燥させ、固形のアミノオキシ酢酸(7.29g)を得た。
【0062】
得られたアミノオキシ酢酸をイオンクロマトグラフィーで分析したところ、塩化物イオン含量は、アミノオキシ酢酸 1モルに対して、0.0049モルであった。アミノオキシ酢酸1モルに対する塩化物イオン含量は下記式を用いて算出した。
【0063】
アミノオキシ酢酸1モルに対する塩化物イオン含量[モル]=[(アミノオキシ酢酸の分子量)×(イオンクロマトグラフィーで定量したアミノオキシ酢酸中の塩化物イオン含量[質量%])÷100]÷(塩化物イオンの分子量)
得られたアミノオキシ酢酸のアルデヒド捕捉試験を、次の方法で行った。
【0064】
得られたアミノオキシ酢酸(3.00g)と水(97.0mL)を混合し、アミノオキシ酢酸3%水溶液を調製した。このアミノオキシ酢酸3%水溶液(0.760g)と、アセトアルデヒド(0.0110g)を含む水溶液5mLを混合した。5分後、反応液を一部(0.2mL)抜き出し、これに水素化ホウ素ナトリウム2mgを添加し、残存しているアセトアルデヒドをエタノールに還元し、さらに内部標準物質としてジグリムを加えた。この溶液をガスクロマトグラフ(GC-2014、島津製作所製)で分析し、エタノールとジグリムの面積比から残存アセトアルデヒド量を算出した。さらに、下記式を用いてアルデヒド捕捉率を算出した結果、アルデヒド捕捉率は99.8%だった。
【0065】
アルデヒド捕捉率(%)=[(アセトアルデヒド初濃度-残存アセトアルデヒド濃度)÷アセトアルデヒド初濃度]×100。
【0066】
実施例2
実施例1において、水酸化リチウム1水和物(2.10g,50mmol)の代わりに、水酸化ナトリウム(2.00g,50mmol)を用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、固形のアミノオキシ酢酸(7.70g)を得た。
【0067】
得られたアミノオキシ酢酸をイオンクロマトグラフィーで分析したところ、塩化物イオン含量は、アミノオキシ酢酸 1モルに対して、0.095モルであった。
【0068】
得られたアミノオキシ酢酸について実施例1と同様にアルデヒド捕捉試験を行ったところ、アルデヒド捕捉率は94.6%だった。
【0069】
実施例3
実施例1において、メタノール(189mL)の代わりに、エタノール(190mL)を用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、固形のアミノオキシ酢酸(7.33g)を得た。
【0070】
得られたアミノオキシ酢酸をイオンクロマトグラフィーで分析したところ、塩化物イオン含量は、アミノオキシ酢酸 1モルに対して、0.34モルであった。
【0071】
得られたアミノオキシ酢酸について実施例1と同様にアルデヒド捕捉試験を行ったところ、アルデヒド捕捉率は84.4%だった。
【0072】
実施例4
実施例1において、メタノール(189mL)の代わりに、テトラヒドロフラン(THF、169mL)を用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、固形のアミノオキシ酢酸(12.10g)を得た。
【0073】
得られたアミノオキシ酢酸をイオンクロマトグラフィーで分析したところ、塩化物イオン含量は、アミノオキシ酢酸 1モルに対して、0.36モルであった。
【0074】
得られたアミノオキシ酢酸について実施例1と同様にアルデヒド捕捉試験を行ったところ、アルデヒド捕捉率は82.8%だった。
【0075】
実施例5
実施例1において、水酸化リチウム1水和物(2.10g,50mmol)の代わりに、炭酸リチウム(1.85g,25mmol)を用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、固形のアミノオキシ酢酸(7.58g)を得た。
【0076】
得られたアミノオキシ酢酸をイオンクロマトグラフィーで分析したところ、塩化物イオン含量は、アミノオキシ酢酸 1モルに対して、0.0064モルであった。
【0077】
得られたアミノオキシ酢酸について実施例1と同様にアルデヒド捕捉試験を行ったところ、アルデヒド捕捉率は99.5%だった。
【0078】
実施例6
実施例1において、水酸化リチウム1水和物(2.10g,50mmol)の代わりに、炭酸ナトリウム(2.65g,25mmol)を用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、固形のアミノオキシ酢酸(8.07g)を得た。
【0079】
得られたアミノオキシ酢酸をイオンクロマトグラフィーで分析したところ、塩化物イオン含量は、アミノオキシ酢酸 1モルに対して、0.12モルであった。
【0080】
得られたアミノオキシ酢酸について実施例1と同様にアルデヒド捕捉試験を行ったところ、アルデヒド捕捉率は91.5%だった。
【0081】
比較例1
合成例2で合成した固形のアミノオキシ酢酸ヘミ塩酸塩(10.93g,100mmol)と、水酸化ナトリウム(2.00g,50mmol)と、水(100mL)を撹拌槽に投入して混合したのち、減圧下で水を留去することで、固形のアミノオキシ酢酸(12.0g)を得た。当該固形のアミノオキシ酢酸(12.0g)は、塩化ナトリウムの形状で、塩化物イオンを含む。得られたアミノオキシ酢酸をイオンクロマトグラフィーで分析したところ、塩化物イオン含量は、アミノオキシ酢酸 1モルに対して、0.43モルであった。得られた固形のアミノオキシ酢酸について実施例1と同様にアルデヒド捕捉試験を行ったところ、アルデヒド捕捉率は75.0%だった。
【0082】