(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086571
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、ヘッドモジュール、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
B41J2/14 201
B41J2/14 613
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023175296
(22)【出願日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2022200787
(32)【優先日】2022-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】松田 幸真
(72)【発明者】
【氏名】三輪 圭史
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 佑
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF68
2C057AG33
2C057AG44
2C057AN01
2C057AQ02
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】液体の吐出性に影響する基板の破損を抑え、歩留まりを向上させることができる液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】圧力発生手段40により容積が変化する圧力室21を有する液室基板122と、前記圧力室に対応するノズル11を有し、前記液室基板と接合されたノズル基板10と、前記ノズル基板が接合する側とは反対側に前記液室基板と接合されたフレーム基板(ダンパフレーム125)とを有する。前記フレーム基板と前記液室基板との間の少なくとも一部にダンパ123が設けられており、基板の積層方向から見た平面において、前記液室基板は前記ノズル基板よりも大きい外形であり、前記フレーム基板は前記液室基板よりも大きい外形である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力発生手段により容積が変化する圧力室を有する液室基板と、
前記圧力室に対応するノズルを有し、前記液室基板と接合されたノズル基板と、
前記ノズル基板が接合する側とは反対側に前記液室基板と接合されたフレーム基板と、を有する液体吐出ヘッドであって、
前記フレーム基板と前記液室基板との間の少なくとも一部にダンパが設けられており、
基板の積層方向から見た平面において、前記液室基板は前記ノズル基板よりも大きい外形であり、前記フレーム基板は前記液室基板よりも大きい外形である
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記ノズル基板、前記液室基板及び前記フレーム基板は、Siからなる
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
圧力発生手段により容積が変化する圧力室を有する液室基板と、
前記圧力室に対応するノズルを有し、前記液室基板と接合されたノズル基板と、
前記ノズル基板が接合する側とは反対側に前記液室基板と接合されたフレーム基板と、を有する液体吐出ヘッドであって、
前記ノズル基板、前記液室基板及び前記フレーム基板は、Siからなり、
基板の積層方向から見た平面において、前記液室基板は前記ノズル基板よりも大きい外形であり、前記フレーム基板は前記液室基板よりも大きい外形である
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記フレーム基板は、配線パターンが形成されていない
ことを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
基板の積層方向から見た平面において、前記ノズル基板、前記液室基板及び前記フレーム基板は長手方向と短手方向を有し、これら基板の長手方向は同一方向であり、これら基板の短手方向は同一方向であり、
前記液室基板は、長手方向のみ前記ノズル基板よりも大きい外形であり、
前記フレーム基板は、長手方向のみ前記液室基板よりも大きい外形である
ことを特徴とする請求項1又は3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
基板の積層方向から見た平面において、前記ノズル基板、前記液室基板及び前記フレーム基板は長手方向と短手方向を有し、これら基板の長手方向は同一方向であり、これら基板の短手方向は同一方向であり、
前記液室基板は、短手方向のみ前記ノズル基板よりも大きい外形であり、
前記フレーム基板は、短手方向のみ前記液室基板よりも大きい外形である
ことを特徴とする請求項1又は3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
基板の積層方向から見た平面において、前記ノズル基板、前記液室基板及び前記フレーム基板は長手方向と短手方向を有し、これら基板の長手方向は同一方向であり、これら基板の短手方向は同一方向であり、
前記液室基板は、長手方向及び短手方向において前記ノズル基板よりも大きい外形であり、
前記フレーム基板は、長手方向及び短手方向において前記液室基板よりも大きい外形である
ことを特徴とする請求項1又は3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1又は3に記載の液体吐出ヘッドを複数備える
ことを特徴とするヘッドモジュール。
【請求項9】
請求項1又は3に記載の液体吐出ヘッドを備える
ことを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項10】
請求項8に記載のヘッドモジュールを備える
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項11】
請求項9に記載の液体吐出ユニットを備える
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、ヘッドモジュール、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドでは、ノズル基板、液室基板、保持基板などを接合させた構造が知られている。
【0003】
各基板としては例えば以下のようにすることができる。ノズル基板は、液体を吐出するノズルが形成されている。液室基板は、ノズルに対応した圧力室が形成され、圧力室に圧力を印加する圧力発生手段が設けられている。保持基板は、液室基板に接合されて液室基板を保持する。液室基板には液体の流路が形成されており、必要に応じて保持基板にも液体の流路が形成される。
【0004】
従来技術では、液体の吐出性を向上させるため種々の提案がなされている。
特許文献1では、供給流路の気泡の排出性を向上させる目的で以下の構成を有する液体噴射ヘッドを開示している。共通液室から圧力室に向かう方向を第一方向とし、該第一方向と交差する方向を第二方向とし、供給流路は、第一方向及び第二方向に沿った第一断面において、入口部分にある第一幅の第一部位、及び、第二幅の第二部位を含み、第一幅は第二幅よりも狭くなっている。
【0005】
特許文献2では、小型化を図り、かつ、複数のマニホールドから噴射される液体の噴射特性のばらつきを低減することを目的として以下の構成を有する液体噴射ヘッドを開示している。特許文献2の液体噴射ヘッドは、液体を貯留する複数のマニホールドを有するヘッド本体と、ヘッド本体に液体を供給する第1分配流路及び第2分配流路が設けられた流路部材とを備え、複数のマニホールドは同じ平面上に配置され、第1分配流路及び第2分配流路と同じ平面上に配置されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、基板の面方向における多層基板の大きさが保護基板よりも大きくなっており、基板接合時などに多層基板が外部と接触して破損してしまう問題があった。また特許文献2も同様に、基板の面方向における連通板とノズルプレートの大きさが保護基板よりも大きくなっており、基板接合時などに連通板とノズルプレートが外部と接触して破損してしまう問題があった。このため従来技術では、外部との接触などにより、液体の吐出性に影響する基板の破損が生じており、歩留まりが低下するという問題が生じている。
【0007】
そこで本発明は、液体の吐出性に影響する基板の破損を抑え、歩留まりを向上させることができる液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の液体吐出ヘッドは、
圧力発生手段により容積が変化する圧力室を有する液室基板と、
前記圧力室に対応するノズルを有し、前記液室基板と接合されたノズル基板と、
前記ノズル基板が接合する側とは反対側に前記液室基板と接合されたフレーム基板と、を有する液体吐出ヘッドであって、
前記フレーム基板と前記液室基板との間の少なくとも一部にダンパが設けられており、
基板の積層方向から見た平面において、前記液室基板は前記ノズル基板よりも大きい外形であり、前記フレーム基板は前記液室基板よりも大きい外形である
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液体の吐出性に影響する基板の破損を抑え、歩留まりを向上させることができる液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るヘッドモジュールの一例を示す分解斜視説明図である。
【
図2】同ヘッドモジュールのノズル面側から見た分解斜視説明図である。
【
図3】同ヘッドモジュールのヘッド、ベース部材およびカバー部材を表す分解斜視説明図である。
【
図4】本発明に係るヘッドモジュールの一例におけるヘッド短手方向に沿う断面説明図である。
【
図5】本発明の液体吐出ヘッドの一例を説明するための斜視分解概略図である。
【
図6】本発明の液体吐出ヘッドの一例を説明するための断面概略図である。
【
図7】本発明の液体吐出ヘッドの一例を説明するための断面概略図(A)及び平面概略図(B)である。
【
図8】比較例の液体吐出ヘッドを説明するための断面概略図(A)、平面概略図(B)及び欠け等を図示した平面概略図(C)である。
【
図9】本発明の液体吐出ヘッドの他の例を説明するための断面概略図である。
【
図10】本発明の液体吐出ヘッドの他の例を説明するための断面概略図である。
【
図11】本発明に係る液体を吐出する装置の一例の概略説明図である。
【
図12】同装置のヘッドユニットの一例の平面説明図である。
【
図13】液体を吐出する装置の他の例における概略図である。
【
図14】液体を吐出する装置の他の例における概略図である。
【
図15】液体吐出ユニットの一例における概略図である。
【
図16】液体吐出ユニットの他の例における概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る液体吐出ヘッド、ヘッドモジュール、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0012】
(液体吐出ヘッド及びヘッドモジュール)
本発明の液体吐出ヘッドは、
圧力発生手段により容積が変化する圧力室を有する液室基板と、
前記圧力室に対応するノズルを有し、前記液室基板と接合されたノズル基板と、
前記ノズル基板が接合する側とは反対側に前記液室基板と接合されたフレーム基板と、を有する液体吐出ヘッドであって、
前記フレーム基板と前記液室基板との間の少なくとも一部にダンパが設けられており、
基板の積層方向から見た平面において、前記液室基板は前記ノズル基板よりも大きい外形であり、前記フレーム基板は前記液室基板よりも大きい外形である
ことを特徴とする。
【0013】
本発明のヘッドモジュールは、本発明の液体吐出ヘッドを複数備えることを特徴とする。
【0014】
本発明では、液体の吐出性に影響の少ない基板を、基板の面方向における大きさを大きくすることで、液体の吐出性に影響のある基板が外部と接触することを抑えることができる。これにより、液体の吐出性に影響のある基板の破損を抑えることができ、歩留まりを向上させることができる。
【0015】
本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッド及びヘッドモジュールについて
図1から
図4を参照して説明する。
図1は一実施形態に係るヘッドモジュールのヘッド短手方向に沿う断面説明図、
図2は同ヘッドモジュールの分解斜視説明図、
図3は同ヘッドモジュールのノズル面側から見た分解斜視説明図、
図4は同ヘッドモジュールのヘッド、ベース部材及びカバー部材を表す分解斜視説明図である。
【0016】
ヘッドモジュール100は、液体を吐出する液体吐出ヘッドである複数のヘッド101と、ベース部材102と、カバー部材103と、放熱部材104と、マニホールド105と、プリント基板(PCB)106と、モジュールケース107とを備えている。
【0017】
ヘッド101は、ノズル基板10、流路基板20、振動板30、保持基板50、フレーム部材70などを備えている。ヘッド101は、本実施形態の液体吐出ヘッドの一例である。
【0018】
ノズル基板10は、ノズル11が形成されている。流路基板20は、ノズル11に通じる圧力室21などが形成されている。圧力室21は、個別液室などと称してもよい。振動板30は、圧力室21の一部を形成し、圧電素子40により振動する。保持基板50は、振動板30に積層する。フレーム部材70は、保持基板50に積層する。フレーム部材70は、共通流路部材などと称してもよい。
【0019】
流路基板20は、圧力室21とともに、圧力室21に通じる供給側個別流路22、圧力室21に通じる回収側個別流路24を形成している。流路基板20を個別流路板などと称してもよい。
【0020】
保持基板50は、供給側個別流路22に振動板30の開口31を介して通じる供給側中間個別流路51と、回収側個別流路24に振動板30の開口32を介して通じる回収側中間個別流路52とを形成している。保持基板50を中間流路板などと称してもよい。
【0021】
なお、保持基板50は、複数の基板で構成されていてもよく、本実施形態では保持基板50が第1の保持基板と第2の保持基板とで構成されている。後述しているように、本実施形態における液室基板は、流路基板20と、保持基板50の一部である第1の保持基板とを含む。本実施形態における液室基板は、ノズル基板10と接合するとともに、保持基板50の一部である第2の保持基板と接合する。
【0022】
フレーム部材70は、供給側中間個別流路51に通じる供給側共通流路71と、回収側中間個別流路52に通じる回収側共通流路72を形成している。供給側共通流路71はマニホールド105の流路151を介して供給ポート81に通じている。回収側共通流路72はマニホールド105の流路152を介して回収ポート82に通じている。フレーム部材70を共通流路部材と称してもよい。
【0023】
プリント基板106とヘッド101の圧電素子40とはフレキシブル配線部材90を介して接続され、フレキシブル配線部材90にはドライバIC91(駆動回路)が実装されている。
【0024】
本実施形態では、複数のヘッド101が間隔を空けてベース部材102に取付けられている。ヘッド101のベース部材102への取付けは、ベース部材102に設けた開口部108にヘッド101を挿入し、ベース部材102に接合固定したカバー部材103に、ヘッド101のノズル基板10の周縁部を接合して固定している。また、ヘッド101のフレーム部材70の外部に設けたフランジ部70aをベース部材102に接合して固定している。
【0025】
なお、ヘッド101とベース部材102に固定構造は限定されるものではなく、接着、カシメ、ねじ固定などで行うことができる。
【0026】
ここで、ベース部材102は線膨張係数が低い材料で形成されていることが好ましい。例えば、鉄にニッケルを添加した42alloy(アロイ)や、インバー材などを挙げることができる。本実施形態では、インバー材を使用している。これにより、ヘッド101が発熱して、ベース部材102の温度が上昇しても、ベース部材102の膨張量が少ないため、所定のノズル位置からのノズルのずれが生じにくくなり、着弾位置ずれを抑制できる。
【0027】
ノズル基板10及び流路基板20、振動板30はシリコン単結晶基板で形成し、ベース部材102の線膨張係数を略同じにしている。これにより、熱膨張によるノズル位置ずれを低減することができる。
【0028】
図5は、本実施形態における液体吐出ヘッドの基板構成を模式的に説明するための分解斜視概略図である。ただし、
図5は参考図であり、基板の大きさは本実施形態の構成を説明するものではない。
【0029】
液室基板122はノズル基板10と接合する。また液室基板122はダンパフレーム125(第2の保持基板)と接合する。液室基板122とダンパフレーム125との間には、少なくとも一部にダンパ123が設けられる。ダンパ123は、例えば圧電素子40のエネルギーを消散させて衝撃を軽減する。基板の接合方法としては、特に制限されるものではなく、適宜選択することができ、例えば接着剤を用いる方法などが挙げられる。
【0030】
本実施形態では保持基板50が第1の保持基板と第2の保持基板で構成されており、ダンパフレーム125は第2の保持基板の一例である。後述のサブフレーム121は第1の保持基板の一例である。本実施形態において、液室基板122は、サブフレーム121を含んでおり、すなわち、液室基板122は、保持基板50の一部(第1の保持基板)を含んでいる(
図6参照)。そのため、
図1においては、保持基板50の一部(第1の保持基板)と、流路基板20とを含む部分が液室基板122となる。
【0031】
上述したように、ノズル基板10は、液体を吐出するノズル11が形成されている。液室基板122は、ノズルに対応した圧力室21が形成され、圧力室に圧力を印加する圧電素子40(圧力発生手段)が設けられている。圧電素子40は、電気エネルギーを変位や力などの機械的エネルギーに変換し、液体の吐出に寄与する。
【0032】
図6は、
図4の断面説明図において、ヘッド101の要部を拡大した説明図である。
本例のヘッド101は、液室基板122と、ノズル基板10と、ダンパフレーム125と、を有する。液室基板122は、圧電素子40(圧力発生手段)により容積が変化する圧力室21を有する。ノズル基板10は、圧力室21に対応するノズル11を有し、液室基板122と接合されている。ダンパフレーム125は、ノズル基板10が接合する側とは反対側に液室基板122と接合されている。
【0033】
本実施形態における液室基板122は、1つの基板で構成されていてもよいし、複数の基板で構成されていてもよい。本例の液室基板122は、流路基板20とサブフレーム121とを含んで構成されている。サブフレーム121は、保持基板50の一部であり、第1の保持基板などとも称する。また、本例の液室基板122は、圧力発生手段の一例としての圧電素子40と、振動板30とを有している。圧電素子40により振動板30が変形することで、圧力室21の容積が変化する。
【0034】
圧力室21の容積が変化することで、ノズル11から液滴が吐出される。ノズル11は、液滴として外部に液体を吐出するための穴である。液体としては例えばインクが挙げられ、インクの液滴をインク滴などとも称する。
【0035】
サブフレーム121は、流路基板20側に、圧電素子40の駆動領域を確保するための空隙124を有している。また、サブフレーム121は、ダンパ123と接合しており、第1のダンパ室126を有している。第1のダンパ室126は、ダンパ123が振動できる空間を確保するために設けられる。
【0036】
本例では、ダンパフレーム125と液室基板122との間の少なくとも一部にダンパ123が設けられている。ダンパ123が設けられていることにより、圧電素子40の変形の際に発生するエネルギーを分散させて衝撃を軽減することができる。
【0037】
なお、ダンパフレーム125をフレーム基板と称してもよい。また、ノズル基板10、液室基板122及びダンパフレーム125をまとめてモジュール基板と称してもよい。
【0038】
本例におけるダンパフレーム125は、サブフレーム121側に、第2のダンパ室127を有している。第2のダンパ室127は、ダンパ123が振動できる空間を確保するために設けられる。
【0039】
基板の材質については、適宜選択することができ、中でもノズル基板10、液室基板122及びダンパフレーム125はSiからなることが好ましい。この場合、薄膜化や小型化などの加工がしやすくなる。液室基板122は、
図6に示すように流路基板20、サブフレーム121の複数の基板を含むように構成しても良い。液室基板122が複数の基板を含む場合、液室基板122に含まれる少なくとも1つの基板がSiからなることが好ましい。
図6示す例では、液室基板122に含まれる流路基板20とサブフレーム121とのいずれか一方がSiからなることが好ましく、さらに両方がSiからなることがより好ましい。流路基板20及びサブフレーム121をSiで構成することで、半導体加工技術であるフォトリソグラフィーにより圧力室11等の流路を微細に加工できるので、液室基板122を小型にすることができる。
【0040】
液室基板122は、
図6に示す通り流路基板20とサブフレーム121との間に振動板30、圧電素子40を含んでも良い。
図6に示す構成では、液室基板122を構成する基板であるサブフレーム121と流路基板20との少なくとも一方がSiからなればよく、振動板30や圧電素子40はSiである必要はない。液室基板122の構造を維持する基板となる部材がSiであることが好ましい。
【0041】
液室基板122に含まれるサブフレーム121及び流路基板20は、その基材となる部分がSiからなる、すなわちSiを主成分とすることが好ましい。ここで、「Siからなる」とは、基板の構造を維持する基材となる部分の主成分がSiであることを意味し、Siに少量の添加物、例えばリンやホウ素などのドーパントを加えた単結晶シリコンウェハが例示できる。また、流路基板20およびサブフレーム121は、その表面に保護膜を形成しても良い。保護膜は、酸化ケイ素、窒化珪素、酸化タンタルなどの金属酸化物や金属窒化物などの無機物の膜でもよく、樹脂等の有機物の膜でも良い。これらの保護膜は、流路基板20とサブフレーム121の基材であるSiがインク等の液体に接触して溶出することを防ぐことができる。
【0042】
ノズル基板10は、その基材となる部分がSiからなる、すなわちSiを主成分とすることが好ましい。ここで、「Siからなる」とは、基板の構造を維持する基材となる部分の主成分がSiであることを意味し、Siに少量の添加物、例えばリンやホウ素などのドーパントを加えた単結晶シリコンウェハが例示できる。また、ノズル基板は、その表面に保護膜を形成しても良い。保護膜は、酸化ケイ素、窒化珪素、酸化タンタルなどの金属酸化物や金属窒化物などの無機物の膜でもよく、樹脂等の有機物の膜でも良い。また、ノズル基板10の液室基板122が接合される面とは反対側の面に撥水性を有する撥水膜を形成または撥水処理を施してもよい。ノズル基板10のこれらの保護膜や撥水膜は、基材であるSiがインク等の液体に接触して溶出することを防ぐことができる。
【0043】
前述の通り、本発明で基板がSiからなるとは、その基板を構成する基材となる部分の主成分がSiであることを含む。ここで、基板を構成する基材とは、その基板の構造を維持する主要な部材を意味する。
【0044】
図7は、本実施形態の液体吐出ヘッドの一例を模式的に説明するための図である。
図7(A)は本例の液体吐出ヘッドの要部断面概略図であり、説明のため、圧電素子、流路、圧力室などの図示を省略している。
図7(B)は本例の液体吐出ヘッドの要部平面概略図であり、基板の積層方向から見た平面図である。
図7(B)ではノズルなどの図示を省略している。
【0045】
本例の液体吐出ヘッドは、
図7(B)に示すように、基板の積層方向から見た平面において、液室基板122はノズル基板10よりも大きい外形であり、ダンパフレーム125は液室基板122よりも大きい外形である。換言すると、基板の積層方向においてダンパフレーム125が最も大きくなるとも表現でき、その他にも、基板の積層方向においてダンパフレーム125が最も最外周になるとも表現できる。
【0046】
本例では、欠け、傷、ひび割れの影響が少ないダンパフレーム125が平面において最も大きい。本例では、各基板の平面における大小関係が、ノズル基板10<液室基板122<ダンパフレーム125の順になるようにサイズを調整している。ノズルの方向に向かって基板の面積が小さくなるようにしている。このようにサイズを調整することで、ダンパフレーム125が最外周になるようにしている。なお、ここでいう平面は、基板の面方向に該当する。
【0047】
ダンパフレーム125が平面において液室基板122よりも大きいことにより、例えば基板接合時に液室基板122が外部と接触することを防止でき、外部との接触によって液室基板122に欠け、傷、ひび割れが生じることを防止できる。このため、歩留まりの低下を防止することができる。外部との接触としては、例えば基板と治具との接触の他、基板搬送時の接触などが挙げられ、これらの接触は設計上のミスの他、人為的なミスによっても生じる可能性がある。
【0048】
また、ダンパフレーム125が平面においてノズル基板10よりも大きいことにより、例えば基板接合時にノズル基板10が外部と接触することを防止でき、外部との接触によってノズル基板10に欠け、傷、ひび割れが生じることを防止できる。このため、歩留まりの低下を防止することができる。
【0049】
また、液室基板122が平面においてノズル基板10よりも大きいことにより、ノズル基板10の割れを防止できる。
【0050】
ダンパフレーム125が欠け、傷、ひび割れの影響が少ない理由としては、例えば、他の基板に比べて単純な構造であるからともいえる。これは、ダンパフレーム125が他の基板に比べて、液体の吐出性に影響を与えるような重要なパターンを持っていないともいえる。そのため、ダンパフレーム125は、外部との接触などが生じたとしても、液室基板122やノズル基板10に比べて液体の吐出性に与える影響が少ない。
【0051】
本例におけるダンパフレーム125は、共通流路やダンパ室が形成されているが、個別流路、圧力室、圧電素子、ノズルが形成されていないため、外部との接触によって液体の吐出性に与える影響が他の基板と比べて小さい。例えば、圧力室が形成されている液室基板122において、基板に欠け、傷、ひび割れが生じると、圧力室の歪みなどが生じ、液体の吐出性が悪くなる。その他にも例えばノズルが形成されているノズル基板10において、基板に欠け、傷、ひび割れが生じると、ノズルにおける液体の吐出性が悪くなる。
【0052】
ダンパフレーム125が液室基板122よりも大きいことにより、例えば基板接合時に外部と接触する場合、ダンパフレーム125が液室基板122とノズル基板10よりも先に外部と接触することになる。このため、ダンパフレーム125が液室基板122とノズル基板10を保護する役割も担うことになる。ダンパフレーム125が外部と接触したとしても、他の基板に比べて液体の流れ、液体の吐出性等に与える影響が少なく、歩留まりの低下を防止することができる。
【0053】
図8は、本発明に含まれない比較例を説明するための図である。
図8(A)は
図7(A)と同様の断面概略図であり、
図8(B)及び(C)は
図7(B)と同様の平面概略図である。なお、
図8(C)は、本比較例において液室基板122に欠け、傷、ひび割れが生じた場合の例を説明するための図である。
【0054】
図8(A)及び(B)に示されるように、基板の積層方向の平面において、基板の大小関係が、ノズル基板10<液室基板122=ダンパフレーム125となっている。すなわち、液室基板122とダンパフレーム125の平面における大きさが同じになっている。そのため、液室基板122が最外周に露出する構造になっている。このため、例えば液室基板122の側面が露出してむき出しの状態になっている。
【0055】
本比較例の場合、例えば基板接合時に、液室基板122が外部と接触してしまい、これにより液室基板122に欠け、傷、ひび割れが生じてしまう。このため、歩留まりが低下してしまう。
図8(C)では、欠けを符号128a、128bで表しており、傷、ひび割れを符号129で表している。液室基板122に欠け128a、128bや傷、ひび割れ129が生じると、液体の流れ、液体の吐出性等に影響が生じ、歩留まりが低下する。
【0056】
本実施形態において、基板の積層方向の平面における基板の大きさは、適宜変更することができる。
図7(B)に示す例では、基板の長手方向と短手方向の両方において、ダンパフレーム125(フレーム基板)が他の基板よりも大きくなっている。
すなわち、本例では、基板の積層方向から見た平面において、前記ノズル基板、前記液室基板及び前記フレーム基板は長手方向と短手方向を有し、これら基板の長手方向は同一方向であり、これら基板の短手方向は同一方向であり、前記液室基板は、長手方向及び短手方向において前記ノズル基板よりも大きい外形であり、前記フレーム基板は、長手方向及び短手方向において前記液室基板よりも大きい外形である。
【0057】
このように基板の長手方向と短手方向の両方において、ダンパフレーム125が他の基板よりも大きくなっていることにより、液室基板122及びノズル基板10が外部と接触することを防止しやすくなる。本例では、液室基板122及びノズル基板10の四隅が外部と接触しにくくなり、歩留まりをより低下させることができる。基板の四隅は欠けが生じやすいため、本例では欠けを防止しやすくなる。
【0058】
本実施形態において、他の例を以下に示す。
図9は、他の例を説明するための図であり、基板の積層方向における他の平面概略図である。図示するように、長手方向のみダンパフレーム125(フレーム基板)が他の基板よりも大きくなっている。短手方向では、ダンパフレーム125は液室基板122及びノズル基板10と同じ大きさになっている。
【0059】
すなわち、本例では、基板の積層方向から見た平面において、前記ノズル基板、前記液室基板及び前記フレーム基板は長手方向と短手方向を有し、これら基板の長手方向は同一方向であり、これら基板の短手方向は同一方向であり、前記液室基板は、長手方向のみ前記ノズル基板よりも大きい外形であり、前記フレーム基板は、長手方向のみ前記液室基板よりも大きい外形である。
本例では、基板の積層方向から見た平面において、長手方向のみ基板の大小関係が、ノズル基板10<液室基板122<ダンパフレーム125になっている。
【0060】
本例においても、液室基板122及びノズル基板10が外部と接触して破損するリスクを低減することができる。一方で本例では、長手方向のみダンパフレーム125が他の基板よりも大きくなっているので、
図7(B)に示す例と比べて、ダンパフレーム125の拡大を最小限に抑えることができる。このため、部品のコストが増えることを抑制できる。本実施形態では、製造工程で使用する治具や装置に応じて、基板が接触するリスクが高い位置がある場合には、その部分に限定してダンパフレーム125のサイズを拡大するように適宜設計することができる。
【0061】
図10は、上記とは異なる他の例を説明するための図であり、基板の積層方向における他の平面概略図である。図示するように、短手方向のみダンパフレーム125(フレーム基板)が他の基板よりも大きくなっている。長手方向では、ダンパフレーム125は液室基板122及びノズル基板10と同じ大きさになっている。
【0062】
すなわち、本例では、基板の積層方向から見た平面において、前記ノズル基板、前記液室基板及び前記フレーム基板は長手方向と短手方向を有し、これら基板の長手方向は同一方向であり、これら基板の短手方向は同一方向であり、前記液室基板は、短手方向のみ前記ノズル基板よりも大きい外形であり、前記フレーム基板は、短手方向のみ前記液室基板よりも大きい外形である。
本例では、基板の積層方向から見た平面において、短手方向のみ基板の大小関係が、ノズル基板10<液室基板122<ダンパフレーム125になっている。
【0063】
本例においても、液室基板122及びノズル基板10が外部と接触して破損するリスクを低減することができる。一方で本例では、短手方向のみダンパフレーム125が他の基板よりも大きくなっているので、
図7(B)に示す例と比べて、ダンパフレーム125の拡大を最小限に抑えることができる。このため、部品のコストが増えることを抑制できる。本実施形態では、製造工程で使用する治具や装置に応じて、基板が接触するリスクが高い位置がある場合には、その部分に限定してダンパフレーム125のサイズを拡大するように適宜設計することができる。
【0064】
(液体吐出ヘッドの他の実施形態)
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
上記実施形態では、基板の積層方向において最外周になるフレーム基板がダンパフレーム125である構成とした。本発明は、フレーム基板がダンパフレーム125である場合に限られず、接合する基板の中で最も欠け、傷、ひび割れによる影響が少ない基板の平面の大きさが大きくなるようにすればよい。このようにすることで、外部との接触によって欠け、傷、ひび割れが生じる基板を保護することができ、歩留まりの低下を防止することができる。
【0065】
欠け、傷、ひび割れによる影響が少ない基板としては、外部と接触しても、液体の吐出性に与える影響が少ない基板が挙げられる。このような基板としては、フレーム基板が適しており、フレーム基板は、他の基板に比べて、液体の吐出性に影響を与えるような重要なパターンを持っていない基板である。フレーム基板としては、例えば、接着剤の逃げ穴のようなパターンのみを有するような基板が挙げられる。
【0066】
本実施形態の液体吐出ヘッドは、
圧力発生手段により容積が変化する圧力室を有する液室基板と、
前記圧力室に対応するノズルを有し、前記液室基板と接合されたノズル基板と、
前記ノズル基板が接合する側とは反対側に前記液室基板と接合されたフレーム基板と、を有する液体吐出ヘッドであって、
前記ノズル基板、前記液室基板及び前記フレーム基板は、Siからなり、
基板の積層方向から見た平面において、前記液室基板は前記ノズル基板よりも大きい外形であり、前記フレーム基板は前記液室基板よりも大きい外形である
ことを特徴とする。
本実施形態においても、上記実施形態と同様に、液体の吐出性に影響する基板の破損を抑え、歩留まりを向上させることができる。
【0067】
本実施形態におけるフレーム基板は、ダンパ室を有している必要はないが、Siで形成されていることを必須の要件としている。Siで形成されたフレーム基板としている理由は、例えば、MEMS部品を対象にして検討した際に、Siで形成されたフレーム基板がヘッド作製時などにおける外部との接触において、液体の吐出に与える影響が少ないと考えたからである。また、上記実施形態でも説明したように、Siで形成された基板である場合、薄膜化や小型化などの加工がしやすくなる。
【0068】
フレーム基板の材質としては、単結晶Siのシリコンウェハを用いることが好ましい。シリコンウェハを用いる場合は、基板の主成分がSiであればよく、リンやホウ素などの添加物やドーパントを微量に添加しても良い。また、フレーム基板、その表面に保護膜を形成しても良い。保護膜は、酸化ケイ素、窒化珪素、酸化タンタルなどの金属酸化物や金属窒化物などの無機物の膜でもよく、樹脂等の有機物の膜でも良い。これらの保護膜は、流路基板20とサブフレーム121の基材であるSiがインク等の液体に接触して溶出することを防ぐことができる。つまり、フレーム基板の、その基材となる部分がSiを主成分としていればよい。
【0069】
また、本実施形態におけるフレーム基板は、金属部材が含まれない基板であることが好ましく、このような基板としては、配線パターンが形成されていない基板が挙げられる。配線パターンが形成されていないことにより、外部と接触しても、液体の吐出に影響が生じにくくなる。ここで、配線パターンとは、液室基板に含まれる圧電素子に接続し電気信号を伝達する配線などが例示できる。前述の通り、フレーム基板の表面に形成される酸化ケイ素、窒化珪素、酸化タンタルなどの金属酸化物や金属窒化物は、金属部材に該当しない。
【0070】
前述の通り、本発明でフレーム基板がSiからなるとは、その基板を構成する基材となる部分の主成分がSiであることを含む。ここで、フレーム基板を構成する基材とは、その基板の構造を維持する主要な部材を意味する。
【0071】
なお、本実施形態においても、上記
図1~
図7、
図9、
図10の構成を適宜適用することができる。例えば、
図7、
図9、
図10で説明した長手方向や短手方向の規定は、本実施形態においても適用できる。
【0072】
(液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置)
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について
図11及び
図12を参照して説明する。
図11は同装置の概略説明図、
図12は同装置のヘッドユニットの一例の平面説明図である。
【0073】
この液体を吐出する装置である印刷装置500は、連続体510を搬入する搬入手段501と、搬入手段501から搬入された連続体510を印刷手段505に案内搬送する案内搬送手段503と、連続体510に対して液体を吐出して画像を形成する印刷を行う印刷手段505と、連続体510を乾燥する乾燥手段507と、連続体510を搬出する搬出手段509などを備えている。
【0074】
連続体510は搬入手段501の元巻きローラ511から送り出され、搬入手段501、案内搬送手段503、乾燥手段507、搬出手段509の各ローラによって案内、搬送されて、搬出手段509の巻取りローラ591にて巻き取られる。
【0075】
この連続体510は、印刷手段505において、搬送ガイド部材559上をヘッドユニット550に対向して搬送され、ヘッドユニット550から吐出される液体によって画像が印刷される。
【0076】
ここで、ヘッドユニット550には、
図12に示すように、本発明に係る二つのヘッドモジュール100A、100Bを共通ベース部材552に備えている。
【0077】
そして、ヘッドモジュール100の搬送方向と直交する方向におけるヘッド101の並び方向をヘッド配列方向とするとき、ヘッドモジュール100Aのヘッド列1A1,1A2で同じ色の液体を吐出する。同様に、ヘッドモジュール100Aのヘッド列1B1、1B2を組とし、ヘッドモジュール100Bのヘッド列1C1、1C2を組とし、ヘッド列1D1、1D2を組として、それぞれ所要の色の液体を吐出する。
【0078】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の他の例について
図13及び
図14を参照して説明する。
図13は同装置の要部平面説明図、
図14は同装置の要部側面説明図である。
【0079】
この装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0080】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド404及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズル11からなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。液体吐出ヘッド404は、例えば上述のヘッド101を用いることができる。
【0081】
液体吐出ヘッド404の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド404に供給するための供給機構494により、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
【0082】
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成される。液体カートリッジ450はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって、液体カートリッジ450から液体が送液される。
【0083】
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0084】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0085】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0086】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0087】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド404のノズル面(ノズル11が形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0088】
主走査移動機構493、供給機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0089】
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0090】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド404を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0091】
このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0092】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について
図15を参照して説明する。
図15は同ユニットの要部平面説明図である。
【0093】
この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。
【0094】
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0095】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について
図16を参照して説明する。
図16は同ユニットの正面説明図である。
【0096】
この液体吐出ユニットは、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド404と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0097】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0098】
本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0099】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0100】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0101】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0102】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0103】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、壁紙や床材などの建材、衣料用のテキスタイルなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0104】
また、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、又は、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液なども含まれる。
【0105】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0106】
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0107】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0108】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0109】
例えば、液体吐出ユニットとして、
図14で示した液体吐出ユニット440のように、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0110】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0111】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、
図15で示したように、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0112】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0113】
また、液体吐出ユニットとして、
図16で示したように、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。
【0114】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0115】
また、「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば、上記実施形態で説明したような圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい。)以外にも、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものでもよい。
【0116】
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0117】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>圧力発生手段により容積が変化する圧力室を有する液室基板と、
前記圧力室に対応するノズルを有し、前記液室基板と接合されたノズル基板と、
前記ノズル基板が接合する側とは反対側に前記液室基板と接合されたフレーム基板と、を有する液体吐出ヘッドであって、
前記フレーム基板と前記液室基板との間の少なくとも一部にダンパが設けられており、
基板の積層方向から見た平面において、前記液室基板は前記ノズル基板よりも大きい外形であり、前記フレーム基板は前記液室基板よりも大きい外形である
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
<2>前記ノズル基板、前記液室基板及び前記フレーム基板は、Siからなる
ことを特徴とする<1>に記載の液体吐出ヘッド。
<3>圧力発生手段により容積が変化する圧力室を有する液室基板と、
前記圧力室に対応するノズルを有し、前記液室基板と接合されたノズル基板と、
前記ノズル基板が接合する側とは反対側に前記液室基板と接合されたフレーム基板と、を有する液体吐出ヘッドであって、
前記ノズル基板、前記液室基板及び前記フレーム基板は、Siからなり、
基板の積層方向から見た平面において、前記液室基板は前記ノズル基板よりも大きい外形であり、前記フレーム基板は前記液室基板よりも大きい外形である
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
<4>前記フレーム基板は、配線パターンが形成されていない
ことを特徴とする<3>に記載の液体吐出ヘッド。
<5>基板の積層方向から見た平面において、前記ノズル基板、前記液室基板及び前記フレーム基板は長手方向と短手方向を有し、これら基板の長手方向は同一方向であり、これら基板の短手方向は同一方向であり、
前記液室基板は、長手方向のみ前記ノズル基板よりも大きい外形であり、
前記フレーム基板は、長手方向のみ前記液室基板よりも大きい外形である
ことを特徴とする<1>から<4>のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
<6>基板の積層方向から見た平面において、前記ノズル基板、前記液室基板及び前記フレーム基板は長手方向と短手方向を有し、これら基板の長手方向は同一方向であり、これら基板の短手方向は同一方向であり、
前記液室基板は、短手方向のみ前記ノズル基板よりも大きい外形であり、
前記フレーム基板は、短手方向のみ前記液室基板よりも大きい外形である
ことを特徴とする<1>から<4>のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
<7>基板の積層方向から見た平面において、前記ノズル基板、前記液室基板及び前記フレーム基板は長手方向と短手方向を有し、これら基板の長手方向は同一方向であり、これら基板の短手方向は同一方向であり、
前記液室基板は、長手方向及び短手方向において前記ノズル基板よりも大きい外形であり、
前記フレーム基板は、長手方向及び短手方向において前記液室基板よりも大きい外形である
ことを特徴とする<1>から<4>のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
<8><1>から<7>のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを複数備える
ことを特徴とするヘッドモジュール。
<9><1>から<7>のいずれかのいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備える
ことを特徴とする液体吐出ユニット。
<10><8>に記載のヘッドモジュールを備える
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
<11><9>に記載の液体吐出ユニットを備える
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【符号の説明】
【0118】
10 ノズル基板
11 ノズル
20 流路基板
21 圧力室
22 供給側個別流路
24 回収側個別流路
30 振動板
31 振動板開口
40 圧電素子
50 保持基板
51 供給側中間個別流路
52 回収側中間個別流路
70 フレーム部材
71 供給側共通流路
72 回収側共通流路
81 供給ポート
82 回収ポート
90 フレキシブル配線
91 ドライバIC
100 ヘッドモジュール
101 ヘッド
102 ベース部材
103 ノズルカバー
105 マニホールド
106 プリント基板
107 モジュールケース
121 サブフレーム
122 液室基板
123 ダンパ
125 ダンパフレーム
128 欠け
129 傷、ひび割れ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0119】
【特許文献1】特開2019-217706号公報
【特許文献2】特開2015-174387号公報