(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086573
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】カルボキシメチルセルロースリチウム塩の製造方法およびこの方法で製造されたカルボキシメチルセルロースリチウム塩を含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
C08B 11/12 20060101AFI20240620BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240620BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240620BHJP
【FI】
C08B11/12
H01M4/62 Z
H01M4/13
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023176747
(22)【出願日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】10-2022-0177250
(32)【優先日】2022-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲曹▼ 胤植
(72)【発明者】
【氏名】趙 ▲ミン▼鎬
(72)【発明者】
【氏名】金 荷娜
(72)【発明者】
【氏名】李 柾▲ミン▼
(72)【発明者】
【氏名】李 國株
(72)【発明者】
【氏名】鄭 敬和
【テーマコード(参考)】
4C090
5H050
【Fターム(参考)】
4C090AA05
4C090BA29
4C090BB52
4C090BB92
4C090BB99
4C090CA36
4C090DA31
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA03
5H050DA11
5H050EA22
(57)【要約】
【課題】簡単な工程を用いて、高い収率を得ることが可能なカルボキシメチルセルロースリチウム塩の製造方法、およびこの方法で製造されたカルボキシメチルセルロースリチウム塩を含むリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】カルボキシメチルセルロースリチウム塩の製造方法は、セルロースと水酸化リチウムのアルカリ化反応を実施してアルカリ生成物を製造する段階、および前記アルカリ生成物と、ハロ酢酸またはこれらの塩を混合してエーテル化反応を実施する段階を含み、アミン誘導体を前記アルカリ化反応および前記エーテル化反応のうち、少なくとも一つの反応時に添加する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースと水酸化リチウムとのアルカリ化反応を実施する段階;および
前記段階で得られた生成物と、ハロ酢酸またはこれらの塩とを混合してエーテル化反応を実施する段階
を含むカルボキシメチルセルロースリチウム塩の製造方法であって、
アミン誘導体を、前記アルカリ化反応および前記エーテル化反応のうち、少なくとも一つの反応時に添加する、カルボキシメチルセルロースリチウム塩の製造方法。
【請求項2】
前記アミン誘導体は、下記化学式1または下記化学式2で表される、請求項1に記載のカルボキシメチルセルロースリチウム塩の製造方法:
【化1】
(上記化学式1中、R
1、R
2およびR
3は互いに同一であるか異なり、水素、または炭素数1~12のアルキル基もしくはハロアルキル基である)
【化2】
(上記化学式2中、R
4、R
5、R
7、R
8およびR
9は互いに同一であるか異なり、水素、または炭素数1~12のアルキル基もしくはハロアルキル基であり、
R
6は、炭素数1~12のアルキレン基であり、
W
1およびW
2は互いに同一であるか異なり炭素数1~12のアルキレン基であり、
aは0~2の整数である)。
【請求項3】
前記アミン誘導体は、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、クロロアルキルアミン、ブロモアルキルアミン、ビス(クロロアルキル)アミン、トリス(クロロアルキル)アミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミンまたはこれらの組み合わせである、請求項1に記載のカルボキシメチルセルロースリチウム塩の製造方法。
【請求項4】
前記ハロ酢酸は、クロロ酢酸、フルオロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載のカルボキシメチルセルロースリチウム塩の製造方法。
【請求項5】
前記ハロ酢酸の塩は、ハロ酢酸のリチウム塩である、請求項1に記載のカルボキシメチルセルロースリチウム塩の製造方法。
【請求項6】
前記アミン誘導体の添加量は、前記セルロース1重量部に対して0.0001重量部~100重量部である、請求項1に記載のカルボキシメチルセルロースリチウム塩の製造方法。
【請求項7】
前記ハロ酢酸またはこれらの塩は、前記セルロース1重量部に対して0.1重量部~100重量部である、請求項1に記載のカルボキシメチルセルロースリチウム塩の製造方法。
【請求項8】
前記カルボキシメチルセルロースリチウム塩の置換度は0.5以上、1.5以下である、請求項1に記載のカルボキシメチルセルロースリチウム塩の製造方法。
【請求項9】
前記アルカリ化反応は、溶媒中で実施される、請求項1に記載のカルボキシメチルセルロースリチウム塩の製造方法。
【請求項10】
前記溶媒は、水、アルコールまたはこれらの組み合わせである、請求項9に記載のカルボキシメチルセルロースリチウム塩の製造方法。
【請求項11】
請求項1~10のうちのいずれか一項の製造方法で製造されたカルボキシメチルセルロースリチウム塩を含む負極;
正極;および
電解質
を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシメチルセルロースリチウム塩の製造方法およびこの方法で製造されたカルボキシメチルセルロースリチウム塩を含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、携帯電話、ノートパソコン、電気自動車など電池を使用する電子機器の急速な普及に伴って小型軽量でありながらも相対的に高容量である二次電池の需要が急速に増大している。特に、リチウム二次電池は軽量でありエネルギー密度が高いため携帯機器の駆動電源として脚光を浴びている。これにより、リチウム二次電池の性能向上のための研究開発が活発に行われている。
【0003】
カルボキシメチルセルロースは、粘度を増加させるためにリチウム二次電池に使用される代表的な高分子の一つである。カルボキシメチルセルロースは通常アルカリ塩で置換された形態で使用され、このうち、ナトリウムで置換された形態が水系に適切で、主に使用されてきた。しかし、ナトリウムが電池内で電気化学的に副反応を引き起こすことがあって、最近、ナトリウムの代わりにリチウムで置換されたカルボキシメチルセルロースを使用しようとする研究が活発に行われている。
【0004】
しかし、カルボキシメチルセルロースのリチウム塩は製造工程が複雑で経済的でない短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一実施形態は、簡単な工程を用いて、高い収率を得ることが可能なカルボキシメチルセルロースリチウム塩の製造方法を提供する。
【0006】
他の一実施形態は、前記方法で製造されたカルボキシメチルセルロースリチウム塩を含む負極、正極、および電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態は、セルロースと水酸化リチウムとのアルカリ化反応を実施してアルカリ生成物を製造する段階;および前記アルカリ生成物と、ハロ酢酸またはこれらの塩とを混合してエーテル化(etherification)反応を実施する段階を含むカルボキシメチルセルロースリチウム塩の製造方法であって、アミン誘導体を前記アルカリ化反応および前記エーテル化反応のうち、少なくとも一つの反応時に添加する、カルボキシメチルセルロースリチウム塩の製造方法を提供する。
【0008】
前記アミン誘導体は、下記化学式1または下記化学式2で表されるものであってもよい。
【化1】
(上記化学式1中、R
1、R
2およびR
3は互いに同一であるか異なり、水素、または炭素数1~12のアルキル基もしくはハロアルキル基である)
【化2】
(上記化学式2中、R
4、R
5、R
7、R
8およびR
9は互いに同一であるか異なり、水素、または炭素数1~12のアルキル基もしくはハロアルキル基であり、
R
6は、炭素数1~12のアルキレン基であり、
W
1およびW
2は互いに同一であるか異なり炭素数1~12のアルキレン基であり、
aは0~2の整数である)
【0009】
一実施形態で、前記アミン誘導体は、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、クロロアルキルアミン、ブロモアルキルアミン、ビス(クロロアルキル)アミン、トリス(クロロアルキル)アミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0010】
前記ハロ酢酸は、クロロ酢酸、フルオロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0011】
前記ハロ酢酸の塩は、ハロ酢酸のリチウム塩であってもよい。
【0012】
前記アミン誘導体の添加量は、前記セルロース1重量部に対して0.0001重量部~100重量部であってもよい。
【0013】
前記ハロ酢酸またはこれらの塩は、前記セルロース1重量部に対して0.1重量部~100重量部で使用されてもよい。
【0014】
前記カルボキシメチルセルロースリチウム塩の置換度は0.5以上、1.5以下であってもよい。
【0015】
前記アルカリ化反応は、溶媒中で実施することができる。この時、前記溶媒は、水、アルコールまたはこれらの組み合わせであってもよい。
【0016】
他の一実施形態は、前記製造方法で製造されたカルボキシメチルセルロースリチウム塩を含む負極;正極;および電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0017】
一実施形態によるカルボキシメチルセルロースリチウム塩の製造方法は、工程が簡単であり、カルボキシメチルセルロースリチウム塩を高収率で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態によるリチウム二次電池用負極を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、これは例示として提示されるものであって、これによって本発明が制限されることはなく、本発明は後述の請求項の範疇によってのみ定義されるだけである。
【0020】
“これらの組み合わせ”とは、構成要素の混合物、積層物、複合体、共重合体、合金、ブレンド、反応生成物などを意味する。
【0021】
“含む”、“備える”または“有する”などの用語は実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在するのを指定しようとするのであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解されなければならない。
【0022】
本願明細書全体で、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0023】
また、本願明細書全体で使用される用語「約」、「実質的に」などは言及された意味に固有の製造および物質許容誤差が提示される時、その数値でまたはその数値に近接した範囲を含む意味として使用され、本願の理解を助けるために正確であるか絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に用いることを防止するために使用される。
【0024】
本願明細書全体で、「Aおよび/またはB」の記載は「AまたはBまたはこれら全て」を意味する。
【0025】
本明細書で、別途の定義がない限り、粒径は粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径を意味する平均粒径(D50)を意味する。平均粒径(D50)測定は当業者に広く公知された方法で測定することができ、例えば、粒度分析器(Particle size analyzer)で測定するか、または透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope)写真または走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)写真で測定することもできる。他の方法としては、動的光散乱法(dynamic light-scattering)を用いた測定装置を用いて測定し、データ分析を実施してそれぞれの粒子サイズ範囲に対して粒子数をカウンティングした後、これから計算して平均粒径(D50)値を得ることができる。
【0026】
一実施形態によるカルボキシメチルセルロースリチウム塩の製造方法は、セルロースと水酸化リチウムとのアルカリ化反応を実施してアルカリ生成物を製造する段階、および前記アルカリ生成物と、ハロ酢酸またはこれらの塩とを混合してエーテル化反応を実施する段階を含む。この時、前記アルカリ化反応および前記エーテル化反応のうち、少なくとも一つの反応時に、アミン誘導体を添加する。
【0027】
以下で、各段階について詳しく説明する。
【0028】
まず、セルロースと水酸化リチウムのアルカリ化反応を実施する。これはセルロースと水酸化リチウムを混合して実施することができ、この混合工程は、物理的に混合して実施することもでき、超音波処理して実施することもできる。
【0029】
前記アルカリ化反応は溶媒中で実施することができる。この溶媒は、水、アルコールまたはこれらの組み合わせであってもよい。前記アルコールは、エタノール、イソプロピルアルコール、メタノール、ブタノールまたはこれらの組み合わせであってもよい。
【0030】
この時、前記水酸化リチウムの使用量は前記セルロース1重量部に対して0.01重量部~100重量部であってもよく、0.1重量部~10重量部であってもよい。水酸化リチウムの使用量が前記範囲に含まれる場合、セルロースの反応を容易にして、カルボキシメチルセルロースのリチウム塩をより高い収率で製造することができる。
【0031】
次いで、得られた生成物と、ハロ酢酸またはこれらの塩とを混合してエーテル化反応を実施する。
【0032】
一実施形態で、前記アルカリ化反応または前記エーテル化反応のうちの少なくとも一つの反応を、アミン誘導体を添加して実施することができる。例えば、セルロース、水酸化リチウムおよびアミン誘導体を混合してアルカリ化反応を実施することができ、前記生成物、ハロ酢酸またはこれらの塩、およびアミン誘導体を混合してエーテル化反応を実施することもできる。もちろん、アミン誘導体を前記アルカリ化反応および前記エーテル化反応の両方ともに使用することもできる。
【0033】
このように、製造工程でアミン誘導体を使用した場合、カルボキシメチルセルロースのリチウム塩が製造できる。
【0034】
一般にカルボキシメチルセルロースのアルカリ塩は、セルロースと水酸化アルカリ化合物とを、エタノールと水の混合物などのアルコール系溶媒に分散してアルカリ化反応させた後、ハロ酢酸またはこれらの塩とのエーテル化反応を実施して製造する。アルカリ塩がナトリウム塩である場合にはこの方法で容易に製造されるが、アルカリ塩がリチウム塩である場合には、水酸化リチウムがアルコール系溶媒に溶解度が低く、セルロースが活性化されず、よってエーテル化反応が起こらないため前記方法では製造が難しかった。よって、従来はカルボキシメチルセルロースナトリウム塩を製造した後、これを酸処理し、再び水酸化リチウムと反応させる方法でカルボキシメチルセルロースリチウム塩を製造していた。
【0035】
反面、本発明の一実施形態による製造方法では、アミン誘導体を使用して、カルボキシメチルセルロースナトリウムを製造する工程を省略し、カルボキシメチルセルロースリチウム塩を直ちに製造することができる。これは、水酸化リチウムがアルコール系溶媒に対して溶解度が低くても、アミン誘導体がエーテル化反応における触媒としての役割を果たすことができるため、アルカリ化反応またはエーテル化反応のうちのいずれの工程で使用されるかに関わらず、活性化されていないセルロースのエーテル化反応が容易に起こり得るようになるためである。
【0036】
一実施形態で、前記アミン誘導体は、下記化学式1または下記化学式2で表すことができる。
【化3】
上記化学式1中、R
1、R
2およびR
3は互いに同一であるか異なり、水素、または炭素数1~12のアルキル基もしくはハロアルキル基である。
【化4】
上記化学式2中、R
4、R
5、R
7、R
8およびR
9は互いに同一であるか異なり、水素、または炭素数1~12のアルキル基もしくはハロアルキル基であり、R
6は、炭素数1~12のアルキレン基であり、W
1およびW
2は互いに同一であるか異なり炭素数1~12のアルキレン基であり、aは0~2の整数である。
【0037】
前記化学式1または前記化学式2中、前記アルキル基は線状、分岐状または環状であってもよい。一実施形態で、R1~R9のうちの少なくとも一つは炭素数1~12のアルキル基であってもよく、他の一実施形態でR1~R9は全て炭素数1~12のアルキル基であってもよい。R1~R9のうちの少なくとも一つが炭素数1~12のアルキル基である場合、カルボキシメチルセルロースリチウム塩を製造するためのより適切な塩基性を有することができて、反応上の副反応をより効果的に抑制することができる。
【0038】
一実施形態で、前記アルキル基の炭素数は炭素数1~4であってもよい。
【0039】
一実施形態によるアミン誘導体は、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、クロロアルキルアミン、ブロモアルキルアミン、ビス(クロロアルキル)アミン、トリス(クロロアルキル)アミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、またはこれらの組み合わせであってもよい。前記ビス(クロロアルキル)アミン、トリス(クロロアルキル)アミンにおいて、アルキルはメチル、アルキル、プロピルまたはブチルであってもよい。
【0040】
一実施形態で、前記アミン誘導体の添加量は前記セルロース1重量部に対して0.0001重量部~100重量部であってもよく、0.001重量部~10重量部であってもよい。アミン誘導体の添加量が前記範囲に含まれる場合、電池用に適したリチウム置換度を有するカルボキシメチルセルロースリチウム塩を製造することができる。アミン誘導体を前記セルロース1重量部に対して、0.0001重量部未満で使用する場合にはカルボキシメチルセルロースリチウム塩を効果的に製造できない。
【0041】
前記エーテル化反応で使用するハロ酢酸は、クロロ酢酸、フルオロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸であってもよい。また、前記ハロ酢酸の塩はこれらのリチウム塩であってもよい。
【0042】
前記ハロ酢酸またはこれらの塩の使用量は前記セルロース1重量部に対して0.1重量部~100重量部であってもよく、1重量部~20重量部であってもよい。前記ハロ酢酸またはこれらの塩の含量が前記範囲に含まれる場合、電池用に適したリチウム置換度を有するカルボキシメチルセルロースリチウム塩を製造することができる。
【0043】
前記リチウム置換度とは、下記で説明する置換度を意味する。
【0044】
一実施形態の製造方法で製造されたカルボキシメチルセルロースリチウム塩の置換度(degree of substitution、DS)は0.5以上、1.5以下であってもよく、0.7~1.3であってもよい。前記置換度とは、セルロース繰り返し単位(repeating unit)当りセルロースに置換された置換基の平均個数を意味する。したがって、一実施形態によるカルボキシメチルセルロースリチウム塩はセルロース繰り返し単位、即ち、単位ユニット当り3つ以下のCH2COOLiを有することができ、平均個数が0.5以上、1.5以下であってもよい。
【0045】
前記カルボキシメチルセルロースリチウム塩の重量平均分子量(Mw)は10,000g/mol~10,000,000g/molであってもよく、100,000g/mol~3,000,000g/molであってもよい。カルボキシメチルセルロースリチウム塩の重量平均分子量(Mw)が前記範囲に含まれる場合、負極製造のためのスラリータイプの組成物の製造時、適した粘度を示して工程性を向上させることができる。
【0046】
また、前記カルボキシメチルセルロースリチウム塩の粘度は1重量%濃度水溶液で、100mPas以上、5000mPas以下であってもよい。前記粘度は20℃~25℃の常温での値である。
【0047】
このようなカルボキシメチルセルロースリチウム塩はリチウム二次電池に有用に使用でき、特に、負極のための増粘剤として、またバインダーとして有用に使用することができる。
【0048】
前記負極は、負極活物質層およびこの負極活物質層を支持する電流集電体を含む。
【0049】
一実施形態によるカルボキシメチルセルロースリチウム塩は前記負極活物質層に含まれてもよい。この場合、カルボキシメチルセルロースリチウム塩の量は、前記負極活物質層全体100重量%に対して0.5重量%以上、3重量%未満であってもよい。
【0050】
前記負極活物質層は負極活物質を含み、バインダーを含むことができ、導電材をさらに含んでもよい。
【0051】
前記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質または遷移金属酸化物を含む。
【0052】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質としては、炭素系負極活物質であって、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの組み合わせを含むことができる。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状型、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛などの黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボンまたはハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0053】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnからなる群より選択される金属との合金を使用することができる。
【0054】
前記リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質としては、Si系負極活物質またはSn系負極活物質を使用することができ、前記Si系負極活物質としては、シリコン、Si-C複合体、SiOx(0<x<2)、Si-Q合金(前記Qはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Siではない)などが挙げられ、前記Sn系負極活物質としては、Sn、SnO2、Sn-R合金(前記Rはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Snではない)などが挙げられ、またこれらのうちの少なくとも一つとSiO2とを混合して使用することもできる。前記元素QおよびRとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Tl、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0055】
一実施形態で、前記Si-C複合体は、シリコン粒子およびこのシリコン粒子表面に非晶質炭素がコーティングされた形態であってもよい。例えば、前記シリコン-炭素複合体は、シリコン1次粒子で組み立てられた2次粒子およびこの2次粒子の表面に位置する非晶質炭素コーティング層を含むことができる。非晶質炭素は前記シリコン1次粒子の間にも位置していてもよく、例えばシリコン1次粒子が非晶質炭素でコーティングされていてもよい。また、前記シリコン-炭素複合体は、非晶質炭素マトリックス内にシリコン粒子が分散したコア、およびこのコアの表面をコーティングする非晶質炭素コーティング層を含むこともできる。
【0056】
前記2次粒子は、Si-C複合体中心に位置するので、これをコアと言うことができ、中心部と言うことができる。また、前記非晶質炭素コーティング層は、外郭部またはシェルと言うことができる。
【0057】
前記シリコン粒子は、ナノシリコン粒子であってもよい。前記ナノシリコン粒子の粒径は、10nm~1,000nm、他の一実施形態によれば、20nm~900nm、20nm~800nm、20nm~500nm、20nm~300nm、20nm~150nmであってもよい。前記シリコン粒子の平均粒径が前記範囲に含まれる場合、充放電時発生する体積膨張が過度となることを抑制することができ、充放電時の粒子破砕による導電性経路(conductive path)の断絶を防止することができる。
【0058】
この時、ナノシリコンと非晶質炭素との混合比は1:99~60:40重量比であってもよい。
【0059】
一実施形態において、前記2次粒子または前記コアは結晶質炭素をさらに含むこともできる。前記シリコン-炭素複合体が結晶質炭素をさらに含む場合、Si-C複合体はシリコン1次粒子および結晶性炭素が組み立てられた2次粒子、ならびにこの2次粒子の表面に位置する非晶質炭素コーティング層を含むことができる。
【0060】
また、Si-C複合体がシリコン粒子、結晶質炭素、および非晶質炭素を含む場合、前記非晶質炭素の含量はSi-C複合体全体100重量%に対して30重量%~70重量%であってもよく、前記結晶質炭素の含量はSi-C複合体全体100重量%に対して1重量%~20重量%であってもよい。また、シリコン粒子の含量はSi-C複合体全体100重量%に対して20重量%~70重量%であってもよく、一実施形態によれば、30重量%~60重量%であってもよい。
【0061】
前記Si-C複合体の粒径は適切に調節すれば、特別に限定する必要はない。
【0062】
前記非晶質炭素が前記2次粒子の表面を囲みながら位置する場合、その厚さは適切に調節することができるが、例えば、5nm~100nm厚さで存在し得る。
【0063】
一実施形態では、Si-C複合体を第1負極活物質として含み、結晶質炭素を第2負極活物質として含んでもよい。この時、第1負極活物質と第2負極活物質の混合比は1:99~50:50の重量比であってもよい。さらに具体的には、負極活物質として前記第1負極活物質および第2負極活物質を5:95~20:80の重量比で含んでいてもよい。
【0064】
前記バインダーは負極活物質粒子を互いによく付着させ、また負極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たす。前記バインダーは水系バインダーであってもよい。
【0065】
前記水系バインダーとしては、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリレーテッドスチレン-ブタジエンゴム(ABR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコールまたはこれらの組み合わせであってもよい。
【0066】
前記水系バインダーの含量は、前記負極活物質層全体100重量%に対して0.5重量%以上、3重量%未満であってもよい。一実施形態によれば、前記カルボキシメチルセルロースリチウム塩および前記水系バインダーの全体含量が負極活物質層全体100重量%に対して1重量%~3重量%範囲に含まれてもよい。
【0067】
前記導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさない電子伝導性材料であればいかなるものでも使用可能である。導電材の例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0068】
前記電流集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0069】
一実施形態によるリチウム二次電池は、前記負極と共に、正極および電解質を含む。
【0070】
前記正極は、電流集電体およびこの電流集電体に形成される正極活物質層を含む。
【0071】
前記正極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物(リチエイテッドインターカレーション化合物)を使用することができる。具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル、およびこれらの組み合わせから選択される金属とリチウムとの複合酸化物のうちの1種以上のものを使用することができる。より具体的な例としては、下記化学式のうちのいずれか一つで表される化合物を使用することができる:LiaA1-bXbD1
2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5);LiaA1-bXbO2-c1D1
c1(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c1≦0.05);LiaE1-bXbO2-c1D1
c1(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c1≦0.05);LiaE2-bXbO4-c1D1
c1(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c1≦0.05);LiaNi1-b-cCobXcD1
α(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0<α≦2);LiaNi1-b-cCobXcO2-αTα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0<α<2);LiaNi1-b-cCobXcO2-αT2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0<α<2);LiaNi1-b-cMnbXcD1
α(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0<α≦2);LiaNi1-b-cMnbXcO2-αTα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0<α<2);LiaNi1-b-cMnbXcO2-αT2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0<α<2);LiaNibEcGdO2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1);LiaNibCocL1
dGeO2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0≦e≦0.1);LiaNiGbO2(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiaCoGbO2(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiaMn1-bGbO2(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiaMn2GbO4(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiaMn1-gGgPO4(0.90≦a≦1.8、0≦g≦0.5);QO2;QS2;LiQS2;V2O5;LiV2O5;LiZO2;LiNiVO4;Li(3-f)J2(PO4)3(0≦f≦2);Li(3-f)Fe2(PO4)3(0≦f≦2);LiaFePO4(0.90≦a≦1.8)。
【0072】
前記化学式において、AはNi、Co、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;XはAl、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;D1はO、F、S、P、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;EはCo、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;TはF、S、P、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;GはAl、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;QはTi、Mo、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;ZはCr、V、Fe、Sc、Y、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;JはV、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;L1はMn、Alおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0073】
もちろんこの化合物の表面にコーティング層を有するものを使用することもでき、または前記化合物とコーティング層を有する化合物とを混合して使用することもできる。このコーティング層はコーティング元素のオキシド、コーティング元素のヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、およびコーティング元素のヒドロキシカーボネートからなる群より選択される少なくとも一つのコーティング元素化合物を含むことができる。これらコーティング層を成す化合物は非晶質または結晶質であってもよい。前記コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはこれらの混合物を使用することができる。コーティング層形成工程では、前記化合物にこのような元素を使用して正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えば、スプレーコーティング、浸漬法など)でコーティングすることができればいかなるコーティング方法を使用してもよく、これについては当該分野に従事する者によく理解できる内容であるので、詳しい説明は省略する。
【0074】
前記正極で、前記正極活物質の含量は、正極活物質層全体重量に対して90重量%~98重量%であってもよい。
【0075】
一実施形態において、前記正極活物質層は、バインダーおよび導電材をさらに含むことができる。この時、前記バインダーおよび導電材の含量は、正極活物質層全体重量に対してそれぞれ1重量%~5重量%であってもよい。
【0076】
前記バインダーは正極活物質粒子を互いによく付着させ、また正極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たす。バインダーの代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド、カルボキシル化されたポリビニルクロリド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンゴム、アクリレーテッドスチレン-ブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0077】
前記導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさない電子伝導性材料であればいかなるものでも使用可能である。導電材の例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料が挙げられる。
【0078】
前記電流集電体としてはAlを使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0079】
前記電解液は、非水性有機溶媒およびリチウム塩を含む。
【0080】
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割を果たす。
【0081】
前記非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非プロトン性溶媒を使用することができる。
【0082】
前記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などを使用することができる。前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、デカノリド(decanolide)、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などを使用することができる。前記エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどを使用することができる。また、前記ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどを使用することができる。また、前記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどを使用することができ、前記非プロトン性溶媒としては、R-CN(Rは炭素数2~20の直鎖状、分岐状、または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン(sulfolane)類などを使用することができる。
【0083】
前記有機溶媒は、単独でまたは一つ以上混合して使用することができ、一つ以上混合して使用する場合の混合比率は目的とする電池性能によって適切に調節することができ、これは当該分野に従事する者には広く理解されるはずである。
【0084】
また、前記カーボネート系溶媒の場合、環状(cyclic)カーボネートと鎖状(chain)カーボネートとを混合して使用することが好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを約1:1~約1:9の体積比で混合して使用する場合に電解液の性能が優れる。
【0085】
前記有機溶媒は、前記カーボネート系溶媒に芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含んでもよい。この時、前記カーボネート系溶媒と芳香族炭化水素系有機溶媒とを、約1:1~約30:1の体積比で混合することができる。
【0086】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒としては、下記化学式3の芳香族炭化水素系化合物を使用することができる。
【化5】
(上記化学式3中、R
9~R
14は互いに同一であるか異なり、水素、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、ハロアルキル基およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである。)
【0087】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒の具体的な例としては、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン、1,2,3-トリフルオロベンゼン、1,2,4-トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2-ジヨードベンゼン、1,3-ジヨードベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1,2,3-トリヨードベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、2,3-ジフルオロトルエン、2,4-ジフルオロトルエン、2,5-ジフルオロトルエン、2,3,4-トリフルオロトルエン、2,3,5-トリフルオロトルエン、クロロトルエン、2,3-ジクロロトルエン、2,4-ジクロロトルエン、2,5-ジクロロトルエン、2,3,4-トリクロロトルエン、2,3,5-トリクロロトルエン、ヨードトルエン、2,3-ジヨードトルエン、2,4-ジヨードトルエン、2,5-ジヨードトルエン、2,3,4-トリヨードトルエン、2,3,5-トリヨードトルエン、キシレン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである。
【0088】
前記電解質は、電池寿命を向上させるためにビニルエチルカーボネート、ビニレンカーボネートまたは下記化学式4のエチレンカーボネート系化合物を寿命向上添加剤としてさらに含んでもよい。
【化6】
【0089】
(上記化学式4中、R15およびR16は互いに同一であるか異なり、水素、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO2)およびフッ素化された炭素数1~5のアルキル基からなる群より選択され、前記R15とR16のうちの少なくとも一つはハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO2)およびフッ素化された炭素数1~5のアルキル基からなる群より選択されるか、但し、R15およびR16が全て水素ではない。)
【0090】
前記エチレンカーボネート系化合物の代表的な例としては、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネートまたはフルオロエチレンカーボネートなどが挙げられる。このような寿命向上添加剤をさらに使用する場合、その使用量は適切に調節することができる。
【0091】
前記リチウム塩は、有機溶媒に溶解されて、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。このようなリチウム塩の代表的な例は、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiN(SO2C2F5)2、Li(CF3SO2)2N、LiN(SO3C2F5)2、Li(FSO2)2N(リチウムビスフルオロスルホニルイミド(lithium bis(fluorosulfonyl)imide;LiFSI)、LiC4F9SO3、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、LiPO2F2、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)(ここで、xおよびyは自然数であり、例えば1~20の整数である)、リチウムジフルオロビスオキサラトホスフェート(lithium difluoro(bisoxalato) phosphate)、LiCl、LiI、LiB(C2O4)2(リチウムビスオキサラトボレート(lithium bis(oxalato) borate;LiBOB)、およびリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)からなる群より選択される一つまたは二つ以上を支持(supporting)電解塩として含む。リチウム塩の濃度は0.1M~2.0M範囲内で使用することがよい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれれば、電解質が適切な伝導度および粘度を有するので優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動できる。
【0092】
リチウム二次電池の種類によって正極と負極の間にセパレータが存在することもある。このようなセパレータとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライドまたはこれらの2層以上の多層膜を使用することができ、ポリエチレン/ポリプロピレン2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレン3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層セパレータなどのような混合多層膜を使用することができるのはもちろんである。
【0093】
図1に本発明の一実施形態によるリチウム二次電池の分解斜視図を示した。一実施形態によるリチウム二次電池は角型であることを例として説明するが、本発明がこれに制限されるわけではなく、円筒型、パウチ型など多様な形態の電池に適用できる。
【0094】
図1を参照すれば、一実施形態によるリチウム二次電池100は、正極10と負極20の間にセパレータ30を介して巻き取られた電極組立体40と、前記電極組立体40が内蔵されるケース50を含むことができる。前記正極10、前記負極20、および前記セパレータ30は電解液(図示せず)に含浸されていてもよい。
【0095】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。そのような下記の実施例は本発明の一実施形態に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるのではない。
【実施例0096】
(実施例1)
機械式攪拌機を使用して、水溶媒中で、セルロースと水酸化リチウムとを混合して、アルカリ化反応を実施してアルカリ生成物を製造した。
【0097】
前記アルカリ生成物にクロロ酢酸およびトリエチルアミンを添加してエーテル化反応を実施した。
【0098】
前記工程で、セルロース、クロロ酢酸、およびトリエチルアミンの重量比は1:1:5になるように使用した。また、前記水酸化リチウムの使用量は、前記セルロース1重量部に対して5重量部であった。
【0099】
この工程で、置換度0.5のカルボキシメチルセルロースリチウム塩が製造された(収率:98%)。製造された生成物1重量%水溶液の粘度(25℃)は5000mPasであり、カルボキシメチルセルロースリチウム塩の重量平均分子量(Mw)は100,000g/mol~1,000,000g/molであった。
【0100】
(実施例2)
セルロース、クロロ酢酸、およびトリエチルアミンの重量比を1:2:5になるように変更したことを除いては前記実施例1と同一に実施して、置換度0.9のカルボキシメチルセルロースリチウム塩を製造した(収率:98%)。
【0101】
製造された生成物1重量%水溶液の粘度(25℃)は3000mPasであり、カルボキシメチルセルロースリチウム塩の重量平均分子量(Mw)は100,000g/mol~1,000,000g/molであった。
【0102】
(実施例3)
セルロース、クロロ酢酸、およびトリエチルアミンの重量比を1:5:5になるように変更したことを除いては前記実施例1と同一に実施して、置換度1.2のカルボキシメチルセルロースリチウム塩を製造した(収率:94%)。
【0103】
製造された生成物1重量%水溶液の粘度(25℃)は1500mPasであり、カルボキシメチルセルロースリチウム塩の重量平均分子量(Mw)は100,000g/mol~1,000,000g/molであった。
【0104】
(実施例4)
セルロース、クロロ酢酸、およびトリエチルアミンの重量比を1:5:10になるように変更したことを除いては前記実施例1と同一に実施して、置換度1.5のカルボキシメチルセルロースリチウム塩を製造した(収率:91%)。
【0105】
製造された生成物1重量%水溶液の粘度(25℃)は100mPasであり、カルボキシメチルセルロースリチウム塩の重量平均分子量(Mw)は100,000g/mol~1,000,000g/molであった。
【0106】
(比較例1)
機械式攪拌機を使用して、セルロースと水酸化リチウムとを混合して、アルカリ化反応を実施してアルカリ生成物を製造した。
【0107】
前記アルカリ生成物にクロロ酢酸を添加してエーテル化反応を実施して、置換度0.4のカルボキシメチルセルロースリチウム塩を製造した(収率:5%)。
【0108】
前記工程で、セルロースおよびクロロ酢酸の重量比は1:10になるように使用した。製造されたカルボキシメチルセルロースリチウム塩は水に対する溶解度が過度に低くて、粘度測定が不可能であった。
【0109】
実験例1)置換度測定
前記実施例1~4および前記比較例1によって製造されたカルボキシメチルセルロースリチウム塩のリチウム置換度をICP(Inductively-coupled plasma)分析を通じて測定して、その結果を下記表1に示した。
【0110】
実験例2)リチウム含量測定
前記実施例1~4および前記比較例1によって製造されたカルボキシメチルセルロースリチウム塩に含まれているリチウム含量をICP分析を通じて測定した。その結果を下記表1に示した。
【0111】
前記実施例1~4および前記比較例1のセルロース、クロロ酢酸(CA)、およびトリエチルアミン(TEA)の重量比、収率および粘度も下記表1に整理して示した。
【0112】
【0113】
上記表1に示したように、アミン誘導体を使用してカルボキシメチルセルロースリチウム塩を製造した実施例1~4の場合、適切な置換度を有するカルボキシメチルセルロースリチウム塩が高収率で製造されたことが分かる。反面、アミン誘導体を使用しなかった比較例1の場合、置換度が低いカルボキシメチルセルロースリチウム塩が非常に低い収率で製造された。
【0114】
以上を通じて本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属するのは当然である。