IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミツトヨの特許一覧

特開2024-86574スケール、電磁誘導式エンコーダ、およびスケールの製造方法
<>
  • 特開-スケール、電磁誘導式エンコーダ、およびスケールの製造方法 図1
  • 特開-スケール、電磁誘導式エンコーダ、およびスケールの製造方法 図2
  • 特開-スケール、電磁誘導式エンコーダ、およびスケールの製造方法 図3
  • 特開-スケール、電磁誘導式エンコーダ、およびスケールの製造方法 図4
  • 特開-スケール、電磁誘導式エンコーダ、およびスケールの製造方法 図5
  • 特開-スケール、電磁誘導式エンコーダ、およびスケールの製造方法 図6
  • 特開-スケール、電磁誘導式エンコーダ、およびスケールの製造方法 図7
  • 特開-スケール、電磁誘導式エンコーダ、およびスケールの製造方法 図8
  • 特開-スケール、電磁誘導式エンコーダ、およびスケールの製造方法 図9
  • 特開-スケール、電磁誘導式エンコーダ、およびスケールの製造方法 図10
  • 特開-スケール、電磁誘導式エンコーダ、およびスケールの製造方法 図11
  • 特開-スケール、電磁誘導式エンコーダ、およびスケールの製造方法 図12
  • 特開-スケール、電磁誘導式エンコーダ、およびスケールの製造方法 図13
  • 特開-スケール、電磁誘導式エンコーダ、およびスケールの製造方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086574
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】スケール、電磁誘導式エンコーダ、およびスケールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
G01D5/245 110R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023178016
(22)【出願日】2023-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2022201076
(32)【優先日】2022-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100134511
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 俊之
(72)【発明者】
【氏名】久保園 紘士
(72)【発明者】
【氏名】三宅 耕作
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA46
2F077CC02
2F077NN02
2F077NN05
2F077PP06
2F077PP10
2F077VV33
(57)【要約】
【課題】加工時間を低減することおよび環境への負荷を小さくすることを目的とする。
【解決手段】スケールは、基材と、前記基材の表面上に測定方向に沿って一定の周期で配列された、導体からなる複数のスケールパターンと、前記基材の表面上で前記複数のスケールパターンが設けられた領域以外の領域の少なくとも一部に設けられた、前記複数のスケールパターンと同じ前記導体からなる複数のダミーパターンと、を備え、前記複数のダミーパターンは、前記複数のダミーパターン内の点を中心として前記複数のダミーパターン内に形成可能な最大の円の直径が前記複数のスケールパターンの前記周期の1/4以下である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の表面上に測定方向に沿って一定の周期で配列された、導体からなる複数のスケールパターンと、
前記基材の表面上で前記複数のスケールパターンが設けられた領域以外の領域の少なくとも一部に設けられた、前記複数のスケールパターンと同じ前記導体からなる複数のダミーパターンと、を備え、
前記複数のダミーパターンは、前記複数のダミーパターン内の点を中心として前記複数のダミーパターン内に形成可能な最大の円の直径が前記複数のスケールパターンの前記周期の1/4以下である、スケール。
【請求項2】
基材と、
前記基材の表面上に測定方向に沿って並んで設けられた、導体からなる複数のスケールパターンと、
前記基材の表面上で前記複数のスケールパターンが設けられた領域以外の領域の少なくとも一部に設けられた、前記複数のスケールパターンと同じ前記導体からなる複数のダミーパターンと、を備え、
前記複数のダミーパターンは、前記複数のダミーパターン内の点を中心として前記複数のダミーパターン内に形成可能な最大の円の直径が前記複数のスケールパターンが発生する磁束と電磁結合して当該磁束の位相を検出する受信コイルの前記測定方向の幅の1/2以下である、スケール。
【請求項3】
前記基材の裏面を覆って設けられた第1導体膜を備える、請求項1または2に記載のスケール。
【請求項4】
前記基材の表面上に前記複数のスケールパターンおよび前記複数のダミーパターンの厚さの1/2以下の厚さを有する第2導体膜を備え、
前記複数のスケールパターンおよび前記複数のダミーパターンは前記第2導体膜上に設けられる、請求項1または2に記載のスケール。
【請求項5】
前記複数のダミーパターンは、矩形状パターン、円形状パターン、三角形状パターン、五角形以上の多角形状パターン、および三角波状パターンのうち少なくとも1つのパターンを含む、請求項1または2に記載のスケール。
【請求項6】
請求項1または2に記載のスケールと、
前記スケールに対して、前記測定方向に相対移動可能な検出ヘッドと、を備え、
前記検出ヘッドは、磁束を発生する送信コイルを備え、
前記スケールの前記複数のスケールパターンは、前記送信コイルが発生する磁束と電磁結合し、前記測定方向に変化する磁束を発生し、
前記検出ヘッドは、前記複数のスケールパターンが発生する磁束と電磁結合して当該磁束の位相を検出する受信コイルを備える電磁誘導式エンコーダ。
【請求項7】
基材の表面上に、測定方向に沿って一定の周期で配列された、導体からなる複数のスケールパターンを形成する工程と、
前記基材の表面上で前記複数のスケールパターンが設けられた領域以外の領域の少なくとも一部に、前記複数のスケールパターンと同じ前記導体からなる複数のダミーパターンを形成する工程と、を備え、
前記複数のダミーパターンを形成する工程は、前記複数のダミーパターン内の点を中心として前記複数のダミーパターン内に形成可能な最大の円の直径が前記複数のスケールパターンの前記周期の1/4以下となる前記複数のダミーパターンを形成する、スケールの製造方法。
【請求項8】
スケールと、前記スケールに対して測定方向に相対移動可能であり、前記スケールが発生する磁束と電磁結合して当該磁束の位相を検出する受信コイルを含む検出ヘッドと、を備える電磁誘導式エンコーダに用いられる前記スケールの製造方法であって、
基材の表面上に、前記測定方向に沿って並んだ、導体からなる複数のスケールパターンを形成する工程と、
前記基材の表面上で前記複数のスケールパターンが設けられた領域以外の領域の少なくとも一部に、前記複数のスケールパターンと同じ前記導体からなる複数のダミーパターンを形成する工程と、を備え、
前記複数のダミーパターンを形成する工程は、前記複数のダミーパターン内の点を中心として前記複数のダミーパターン内に形成可能な最大の円の直径が前記受信コイルの前記測定方向の幅の1/2以下となる前記複数のダミーパターンを形成する、スケールの製造方法。
【請求項9】
前記基材の表面上に導体膜を形成する工程を備え、
前記複数のスケールパターンを形成する工程および前記複数のダミーパターンを形成する工程は、前記導体膜をレーザ加工またはエッチング加工することで前記複数のスケールパターンおよび前記複数のダミーパターンを形成する、請求項7または8に記載のスケールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スケール、電磁誘導式エンコーダ、およびスケールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光源から出射されスケールを介した光を受光部で受光する光電式エンコーダが知られている(例えば特許文献1)。また、スケールと検出ヘッドとの間の電磁結合を利用した電磁誘導式エンコーダも知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-058138号公報
【特許文献2】特開2019-196969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スケールは、基材と、基材上に設けられたスケールパターンと、を有する。スケールパターンは、一般的に、基材上に設けられた導体膜をパターニングすることで形成される。パターニングの際に、導体膜を除去する量が多いと、加工時間が長くなることおよび/または環境への負荷が大きくなることが生じてしまう。
【0005】
1つの側面では、本発明は、加工時間を低減することおよび環境への負荷を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、本発明に係るスケールは、基材と、前記基材の表面上に測定方向に沿って一定の周期で配列された、導体からなる複数のスケールパターンと、前記基材の表面上で前記複数のスケールパターンが設けられた領域以外の領域の少なくとも一部に設けられた、前記複数のスケールパターンと同じ前記導体からなる複数のダミーパターンと、を備え、前記複数のダミーパターンは、前記複数のダミーパターン内の点を中心として前記複数のダミーパターン内に形成可能な最大の円の直径が前記複数のスケールパターンの前記周期の1/4以下である。
【0007】
1つの態様では、本発明に係るスケールは、基材と、前記基材の表面上に測定方向に沿って並んで設けられた、導体からなる複数のスケールパターンと、前記基材の表面上で前記複数のスケールパターンが設けられた領域以外の領域の少なくとも一部に設けられた、前記複数のスケールパターンと同じ前記導体からなる複数のダミーパターンと、を備え、前記複数のダミーパターンは、前記複数のダミーパターン内の点を中心として前記複数のダミーパターン内に形成可能な最大の円の直径が前記複数のスケールパターンが発生する磁束と電磁結合して当該磁束の位相を検出する受信コイルの前記測定方向の幅の1/2以下である。
【0008】
上記スケールにおいて、前記基材の裏面を覆って設けられた第1導体膜を備えていてもよい。
【0009】
上記スケールにおいて、前記基材の表面上に前記複数のスケールパターンおよび前記複数のダミーパターンの厚さの1/2以下の厚さを有する第2導体膜を備え、前記複数のスケールパターンおよび前記複数のダミーパターンは前記第2導体膜上に設けられていてもよい。
【0010】
上記スケールにおいて、前記複数のダミーパターンは、矩形状パターン、円形状パターン、三角形状パターン、五角形以上の多角形状パターン、および三角波状パターンのうち少なくとも1つのパターンを含んでいてもよい。
【0011】
1つの態様では、本発明に係る電磁誘導式エンコーダは、上記いずれかのスケールと、前記スケールに対して、前記測定方向に相対移動可能な検出ヘッドと、を備え、前記検出ヘッドは、磁束を発生する送信コイルを備え、前記スケールの前記複数のスケールパターンは、前記送信コイルが発生する磁束と電磁結合し、前記測定方向に変化する磁束を発生し、前記検出ヘッドは、前記複数のスケールパターンが発生する磁束と電磁結合して当該磁束の位相を検出する受信コイルを備える。
【0012】
1つの態様では、本発明に係るスケールの製造方法は、基材の表面上に、測定方向に沿って一定の周期で配列された、導体からなる複数のスケールパターンを形成する工程と、前記基材の表面上で前記複数のスケールパターンが設けられた領域以外の領域の少なくとも一部に、前記複数のスケールパターンと同じ前記導体からなる複数のダミーパターンを形成する工程と、を備え、前記複数のダミーパターンを形成する工程は、前記複数のダミーパターン内の点を中心として前記複数のダミーパターン内に形成可能な最大の円の直径が前記複数のスケールパターンの前記周期の1/4以下となる前記複数のダミーパターンを形成する。
【0013】
1つの態様では、本発明に係るスケールの製造方法は、スケールと、前記スケールに対して測定方向に相対移動可能であり、前記スケールが発生する磁束と電磁結合して当該磁束の位相を検出する受信コイルを含む検出ヘッドと、を備える電磁誘導式エンコーダに用いられる前記スケールの製造方法であって、基材の表面上に、前記測定方向に沿って並んだ、導体からなる複数のスケールパターンを形成する工程と、前記基材の表面上で前記複数のスケールパターンが設けられた領域以外の領域の少なくとも一部に、前記複数のスケールパターンと同じ前記導体からなる複数のダミーパターンを形成する工程と、を備え、前記複数のダミーパターンを形成する工程は、前記複数のダミーパターン内の点を中心として前記複数のダミーパターン内に形成可能な最大の円の直径が前記受信コイルの前記測定方向の幅の1/2以下となる前記複数のダミーパターンを形成する。
【0014】
上記スケールの製造方法において、前記基材の表面上に導体膜を形成する工程を備え、前記複数のスケールパターンを形成する工程および前記複数のダミーパターンを形成する工程は、前記導体膜をレーザ加工またはエッチング加工することで前記複数のスケールパターンおよび前記複数のダミーパターンを形成してもよい。
【発明の効果】
【0015】
加工時間を低減することおよび環境への負荷を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a)は、第1実施形態に係るスケールを備えた電磁誘導式エンコーダの構成を例示する図、図1(b)は、検出される正弦波信号を例示する図である。
図2図2は、電磁誘導式エンコーダの検出ヘッドに備わる送信コイルおよび受信コイルを例示する図である。
図3図3は、第1実施形態に係るスケールを例示する平面図である。
図4図4は、第1実施形態におけるダミーパターンを例示する平面図である。
図5図5(a)から図5(d)は、第1実施形態に係るスケールの製造方法を例示する図である。
図6図6は、比較例に係るスケールを例示する平面図である。
図7図7(a)および図7(b)は、第1実施形態の変形例1および変形例2に係るスケールを例示する平面図である。
図8図8は、第1実施形態の変形例3に係るスケールを例示する平面図である。
図9図9(a)は、第2実施形態に係るスケールを例示する平面図、図9(b)は、図9(a)のA-A断面図である。
図10図10(a)は、第3実施形態に係るスケールを例示する平面図、図10(b)は、図10(a)のA-A断面図である。
図11図11は、第4実施形態に係るスケールを例示する平面図である。
図12図12(a)は、第5実施形態に係るスケールを例示する平面図、図12(b)は、第5実施形態におけるダミーパターンを例示する平面図である。
図13図13(a)から図13(e)は、ダミーパターンの他の形状を例示する平面図である。
図14図14は、第6実施形態に係るスケールを例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1(a)は、第1実施形態に係るスケール100を備えた電磁誘導式エンコーダ1000の構成を例示する図である。図1(a)では、図の明瞭化のために、スケールパターン12およびダミーパターン14にハッチングを付している。図1(a)で例示するように、電磁誘導式エンコーダ1000は、測定方向に相対移動するスケール100と検出ヘッド30とを有する。スケール100と検出ヘッド30は、それぞれ略平板形状を有し、所定の隙間を介して対向配置されている。また、電磁誘導式エンコーダ1000は、送信信号生成部40および変位量測定部50等を備えている。図1(a)において、X軸は検出ヘッド30の変位方向(測定方向)を表している。スケール100が構成する平面において、X軸と直交する方向をY軸とする。スケール100を構成する基材10の厚さ方向をZ軸とする。
【0019】
検出ヘッド30には、送信コイル32および受信コイル34等が設けられている。送信コイル32は、X軸方向に長さ方向を有する矩形コイルを構成している。図1(a)で例示するように、受信コイル34は送信コイル32の内側に配置されている。受信コイル34の形状については後述する。
【0020】
スケール100においては、基材10の表面上に、導体からなる複数のスケールパターン12が、X軸方向に沿って、周期λで配列されている。周期λは、X軸方向において、2つの隣接するスケールパターン12の中心同士の間隔に相当する。スケールパターン12は、例えば孔が無い板状の導体パターンである。スケールパターン12は、送信コイル32と電磁結合するとともに、受信コイル34と電磁結合する。
【0021】
基材10の表面上であって複数のスケールパターン12が設けられていない領域の少なくとも一部に、導体からなる複数のダミーパターン14が設けられている。複数のダミーパターン14の詳細については後述する。
【0022】
送信信号生成部40は、単相交流の送信信号を生成し、送信コイル32に供給する。この場合、送信コイル32に磁束が発生する。それにより、複数のスケールパターン12に起電流が発生する。複数のスケールパターン12は、送信コイル32が発生する磁束と電磁結合することで、X軸方向に所定の空間周期で変化する磁束を発生する。スケールパターン12が発生する磁束は、受信コイル34に起電流を生じさせる。検出ヘッド30の変位量に応じて、スケールパターン12と受信コイル34との間の電磁結合が変化する。それにより、図1(b)で例示するように、周期λと同じ周期の正弦波信号が得られる。したがって、受信コイル34は、複数のスケールパターン12が発生する磁束の位相を検出する。
【0023】
変位量測定部50は、この正弦波信号を電気的に内挿することによって最小分解能のデジタル量として用いることができ、検出ヘッド30の変位量を測定する。なお、図1(b)において、横軸は検出ヘッド30の変位量を表し、縦軸は受信コイル34の出力電圧を表す。
【0024】
互いに電磁結合する送信コイル32、受信コイル34、およびスケールパターン12が1つのトラックを構成する。図1(a)で例示するように、電磁誘導式エンコーダ1000では、第1トラックTr_Aと第2トラックTr_Bを備えているとする。第1トラックTr_Aと第2トラックTr_Bは、Y軸方向において所定の間隔を空けて配列されている。トラック間で、周期λが異なっている。それにより、電磁誘導式エンコーダ1000は、アブソリュート(ABS)式エンコーダとして機能する。
【0025】
図2は、電磁誘導式エンコーダ1000の検出ヘッド30に備わる送信コイル32および受信コイル34を例示する図である。図2で例示するように、受信コイル34は矩形コイルを構成する送信コイル32の内側に配置されている。受信コイル34は、例えば円形コイルである。受信コイル34のX軸方向の幅をWとする。この幅Wは、受信コイル34の測定方向における幅である。なお、受信コイル34は、その他の構成をしている場合でもよい。例えば、受信コイル34は、X軸のマイナス方向に向かって正弦波状に進み、折り返し、X軸のプラス方向に向かって正弦波状に進む形状を各々有する第1コイルと第2コイルとにより構成される場合でもよい。この場合、受信コイル34の測定方向の幅は、第1コイルおよび第2コイルの1つの円環部のX軸方向の幅となる。
【0026】
図3は、第1実施形態に係るスケール100を例示する平面図である。図3に例示するように、第1実施形態のスケール100は、基材10と、基材10の表面上に設けられた複数のスケールパターン12a、12bと、基材10の表面上であってスケールパターン12a、12bが設けられていない領域に設けられた複数のダミーパターン14と、を有する。
【0027】
基材10は、例えばポリカーボネート、ガラス等の絶縁性の基材である。基材10は、樹脂基材であってもよいし、樹脂基材以外の絶縁基材であってもよい。片面または両面に金属膜を有する積層基板が用いられる場合、基材10はガラスエポキシ樹脂で形成されてもよいし、プリプレグであってもよい。
【0028】
スケールパターン12aとスケールパターン12bは、例えばアルミニウム、銅、銀、または金等の同じ導体により形成され、同じ厚さを有する。複数のスケールパターン12a、12bは、孔が無い板状の導体パターンである。複数のスケールパターン12aは、X軸方向に沿って、周期λで配列されている。複数のスケールパターン12bは、X軸方向に沿って、周期λより長い周期λで配列されている。複数のスケールパターン12aは第1トラックTr_Aを形成し、複数のスケールパターン12bは第2トラックTr_Bを形成する。
【0029】
ダミーパターン14は、スケールパターン12a、12bと同じ導体により形成され、スケールパターン12a、12bと同じ厚さを有する。ダミーパターン14は、孔が無い板状の導体パターンであって、例えば平面視においてY軸方向に長い矩形形状をしている。複数のダミーパターン14には、X軸方向および/またはY軸方向の長さが異なる矩形パターンが含まれていてもよい。ダミーパターン14の幅Xは、複数のスケールパターン12aの周期λおよび複数のスケールパターン12bの周期λのうち短い方の周期λの1/4以下の大きさとなっている。
【0030】
基材10の表面のうち複数のスケールパターン12a、12bおよび複数のダミーパターン14が設けられていない領域では基材10の表面が露出している。
【0031】
図4は、第1実施形態におけるダミーパターン14を例示する平面図である。図4に例示するように、ダミーパターン14内の点20を中心として直径を大きくしていったときにダミーパターン14の外形の辺に接する円であって最も大きな円22の直径Dは、ダミーパターン14の幅Xと同じ大きさであり、λ/4以下である。
【0032】
なお、隣接するダミーパターン14の間隔Hの大きさに特に制限はない。しかしながら、スケールパターン12a、12bおよびダミーパターン14を形成する際の導体膜の除去量を少なく抑える点から、間隔Hは、円22の直径Dより小さい場合が好ましく、直径Dの1/2以下がより好ましく、直径Dの1/4以下が更に好ましい。
【0033】
[製造方法]
図5(a)から図5(d)は、第1実施形態に係るスケール100の製造方法を例示する図である。図5(a)および図5(b)は、スケール100の製造方法を例示する平面図、図5(c)および図5(d)は、図5(a)および図5(b)のA-A断面図である。図5(a)および図5(c)に例示するように、基材10の表面上に、例えばスパッタリング法、蒸着法、めっき法、ペースト印刷、または金属箔の貼り付け等によって、アルミニウム、銅、銀、または金等の導体膜60を形成する。図5(b)および図5(d)に例示するように、例えばレーザ加工、または、フォトリソグラフィ法およびエッチング法によるエッチング加工等を用いて導体膜60をパターニングする。これにより、基材10の表面上に、複数のスケールパターン12a、12bと複数のダミーパターン14とが形成される。これにより、第1実施形態のスケール100が形成される。
【0034】
[比較例]
図6は、比較例に係るスケール700を例示する平面図である。図6に例示するように、比較例のスケール700では、基材10の表面上に複数のスケールパターン12a、12bが設けられているが、ダミーパターンは設けられていない。したがって、基材10の表面のうち複数のスケールパターン12a、12bが設けられていない領域では基材10の表面が露出している。
【0035】
比較例のスケール700は、第1実施形態に係るスケール100と同様、基材10の表面上に導体膜60を成膜した後、導体膜60を例えばレーザ加工またはエッチング加工によりパターニングすることで複数のスケールパターン12a、12bを形成する。
【0036】
比較例では、複数のスケールパターン12a、12bを形成する領域以外の領域における導体膜60をレーザ加工またはエッチング加工により除去する。この場合、レーザ加工またはエッチング加工により除去する導体膜60の量が多くなり、レーザ加工の場合では加工時間が長くなること、エッチング加工の場合では廃液の量が多くなり環境への負荷が大きくなることが生じてしまう。
【0037】
これに対し、第1実施形態によれば、図3のように、基材10の表面のうち複数のスケールパターン12a、12bが設けられた領域以外の領域に、スケールパターン12a、12bと同じ導体からなる複数のダミーパターン14が設けられている。このため、図5(b)および図5(d)において、導体膜60をレーザ加工またはエッチング加工して複数のスケールパターン12a、12bと複数のダミーパターン14とを形成する際に、導体膜60を除去する量が少なくなる。よって、加工時間を短くすることおよび環境への負荷を小さくすることができる。環境への負荷が小さくなるのは、エッチング加工によって形成する場合では、エッチング面積が減る事でエッチング液の使用量が減るためである。エッチング液の使用量が減るため、コストダウンを図ることもできる。また、エッチング液を繰り返し使用してスケール100を製造する場合では、導体膜60を除去する量が少なくなることで、エッチング液中の反応生成物濃度の変動が小さくなるため、エッチング条件の変動が緩やかになって加工バラツキを小さくすることができる。また、レーザ加工によって形成する場合では、粉塵として廃棄される導体の量を減らすことができる。よって、導体膜60の除去の際に生じるデブリ等がスケールパターン12a、12bに付着することが抑制されるため、スケール100に欠陥が生じにくくなる。また、ダミーパターン14は、図4のように、ダミーパターン14内の点20を中心としてダミーパターン14内に形成可能な最大の円22の直径Dがスケールパターン12aの周期λの1/4以下かつスケールパターン12bの周期λの1/4以下になっている。これにより、ダミーパターン14内に誘導起電流を発生させにくくすることができる。よって、基材10の表面上にダミーパターン14を設けたとしても、スケール100と検出ヘッド30との間の電磁結合を利用した測定への影響を抑えることができる。導体膜60を除去する量が少なくなるよう、ダミーパターン14は、基材10の表面のうちスケールパターン12a、12bが設けられていない領域の40%以上の領域に設けられている場合が好ましく、50%以上の領域に設けられている場合がより好ましく、60%以上の領域に設けられている場合が更に好ましく、70%以上の領域に設けられている場合がより更に好ましい。また、ダミーパターン14内に誘導起電流が生じにくくなるよう、円22の直径Dは周期λおよび周期λの1/5以下が好ましく、1/8以下がより好ましく、1/10以下が更に好ましい。
【0038】
[変形例]
図7(a)および図7(b)は、第1実施形態の変形例1および変形例2に係るスケール110および120を例示する平面図である。図8は、第1実施形態の変形例3に係るスケール130を例示する平面図である。
【0039】
第1実施形態のスケール100では、図3に例示したように、複数のダミーパターン14はY軸方向に長い矩形形状をしていた。これに対し、変形例1のスケール110では、図7(a)に例示するように、複数のダミーパターン14の大部分はX軸方向に長い矩形形状をし、一部はY軸方向に長い矩形形状をしている。このように、ダミーパターン14の長手方向の向きに制約はない。ダミーパターン14の長手方向の向きは、X軸方向およびY軸方向に対して斜めに傾いていてもよい。
【0040】
図7(b)に例示するように、変形例2のスケール120では、複数のダミーパターン14の一部はT字状およびL字状の分岐部を有する。このように、ダミーパターン14は分岐部を有する形状をしていてもよい。また、ダミーパターン14は、曲線部を有する形状をしていてもよい。
【0041】
図8に例示するように、変形例3のスケール130では、第1トラックTr_Aおよび第2トラックTr_Bには、ダミーパターン14が設けられていない。ダミーパターン14は、第1トラックTr_Aと第2トラックTr_Bの間の領域、第1トラックTr_Aに対して第2トラックTr_Bとは反対側に位置する領域、第2トラックTr_Bに対して第1トラックTr_Aとは反対側に位置する領域に設けられている。このように、ダミーパターン14はスケールパターン12a、12bが設けられた領域以外の領域の一部分にのみ設けられていてもよい。
【0042】
(第2実施形態)
図9(a)は、第2実施形態に係るスケール200を例示する平面図、図9(b)は、図9(a)のA-A断面図である。図9(a)および図9(b)に例示するように、第2実施形態のスケール200では、基材10の裏面を覆って導体膜70が設けられている。導体膜70は、基材10の裏面全面に設けられている。導体膜70は、例えばスケールパターン12a、12bおよびダミーパターン14と同じ導体からなる膜である。その他の構成は、第1実施形態のスケール100と同じであるため説明を省略する。
【0043】
第2実施形態によれば、基材10の裏面を覆って導体膜70(第1導体膜)が設けられている。基材10の裏面に導体膜70が設けられている場合、基材10の表面にスケールパターン12a、12bとダミーパターン14とが設けられることで、スケールパターン12a、12bのみが設けられる場合に比べて、基材10の表裏面における導体膜の体積の差が小さくなる。よって、基材10の表裏面の導体膜の応力差により生じる基材10の反りを小さくすることができ、スケールパターン12a、12bのピッチ精度を良好にすることができる。基材10の反りを抑制する点から、スケールパターン12a、12bおよびダミーパターン14と、導体膜70と、は同じ導体により形成される場合が好ましい。また、導体膜70の厚さT1は、スケールパターン12a、12bおよびダミーパターン14の厚さT2の0.9倍以上1.1倍以下の場合が好ましく、0.95倍以上1.05倍以下の場合がより好ましく、0.98倍以上1.02倍以下の場合が更に好ましい。
【0044】
(第3実施形態)
図10(a)は、第3実施形態に係るスケール300を例示する平面図、図10(b)は、図10(a)のA-A断面図である。図10(a)および図10(b)に例示するように、第3実施形態のスケール300では、基材10の表面上に導体膜72が設けられている。複数のスケールパターン12a、12bと複数のダミーパターン14とは導体膜72上に設けられている。導体膜72の厚さT3は、スケールパターン12a、12bおよびダミーパターン14の厚さT2の1/2以下である。その他の構成は、第1実施形態のスケール100と同じであるため説明を省略する。
【0045】
第3実施形態によれば、基材10の表面上にスケールパターン12a、12bおよびダミーパターン14の厚さT2の1/2以下の厚さT3を有する導体膜72(第2導体膜)が設けられている。複数のスケールパターン12a、12bおよび複数のダミーパターン14は導体膜72上に設けられている。これにより、導体膜をレーザ加工またはエッチング加工して複数のスケールパターン12a、12bと複数のダミーパターン14とを形成する際に、除去する導体膜の量が少なくなる。よって、加工時間を短くすることおよび環境への負荷を小さくすることができる。また、導体膜72の厚さT3がスケールパターン12a、12bおよびダミーパターン14の厚さT1の1/2以下であることで、導体膜72内に誘導起電流が発生しにくくなる。導体膜72内に誘導起電流が発生しにくくなる点から、導体膜72の厚さT3は、スケールパターン12a、12bおよびダミーパターン14の厚さT2の1/3以下が好ましく、1/4以下がより好ましく、1/5以下が更に好ましい。
【0046】
(第4実施形態)
図11は、第4実施形態に係るスケール400を例示する平面図である。図11に例示するように、第4実施形態のスケール400では、孔が無い板状の導体パターンであるスケールパターン12a、12bの代わりに、閉じられた閉ループコイル形状の導体パターンであるスケールパターン12c、12dが設けられている。ダミーパターン14は、スケールパターン12c、12dの閉ループコイル形状の内側にも設けられている。その他の構成は、第1実施形態のスケール100と同じであるため説明を省略する。
【0047】
基材10の表面上に設けられるスケールパターンは、第1実施形態から第3実施形態のスケールパターン12a、12bように孔が無い板状の導体パターンでもよいし、第4実施形態のスケールパターン12c、12dように閉じられた閉ループコイル形状の導体パターンでもよい。
【0048】
(第5実施形態)
図12(a)は、第5実施形態に係るスケール500を例示する平面図、図12(b)は、第5実施形態におけるダミーパターン14を例示する平面図である。図12(a)に例示するように、第5実施形態のスケール500では、複数のスケールパターン12aは、X軸方向に沿って並んで設けられているが、周期的に配列されてはいない。複数のスケールパターン12aには、X軸方向の長さが異なるスケールパターン12aが含まれている。同様に、複数のスケールパターン12bは、X軸方向に沿って並んで設けられているが、周期的に配列されてはいない。複数のスケールパターン12bには、X軸方向の長さが異なるスケールパターン12bが含まれている。
【0049】
図12(b)に例示するように、ダミーパターン14内の点20を中心として直径を大きくしていったときにダミーパターン14の外形の辺に接する円であって最も大きな円22の直径Dは、受信コイル34のX軸方向(測定方向)の幅W(図2参照)の1/2以下である。つまり、ダミーパターン14の幅Xは、受信コイル34のX軸方向の幅Wの1/2以下である。その他の構成は第1実施形態のスケール100と同じであるため説明を省略する。
【0050】
第5実施形態によれば、図12(a)のように、基材10の表面のうち複数のスケールパターン12a、12bが設けられた領域以外の領域に、スケールパターン12a、12bと同じ導体からなる複数のダミーパターン14が設けられている。このため、第1実施形態と同じく、加工時間を短くすることおよび環境への負荷を小さくすることができる。また、ダミーパターン14は、図12(b)のように、ダミーパターン14内の点20を中心としてダミーパターン14内に形成可能な最大の円22の直径Dが受信コイル34のX軸方向(測定方向)の幅Wの1/2以下になっている。この場合でも、ダミーパターン14内に誘導起電流を発生しにくくできるため、スケール500と検出ヘッド30との間の電磁結合を利用した測定への影響を抑えることができる。ダミーパターン14内に誘導起電流が発生しにくくなるために、円22の直径Dは受信コイル34の幅Wの1/3以下が好ましく、1/4以下がより好ましく、1/5以下が更に好ましい。
【0051】
第1実施形態から第5実施形態では、ダミーパターン14は平面視で矩形形状をしている場合を例に示したが、この場合に限られる訳ではない。図13(a)から図13(e)は、ダミーパターン14の他の形状を例示する平面図である。図13(a)に例示するように、ダミーパターン14は、円形状の導体パターンである場合でもよい、図13(b)に例示するように、ダミーパターン14は、隣接する六角形等の多角形状の導体パターンが接続導体パターンにより接続された形状をしていてもよい。図13(c)に例示するように、ダミーパターン14は、正方形状の導体パターンである場合でもよい。図13(d)に例示するように、ダミーパターン14は、三角形状の導体パターンである場合でもよい。図13(e)に例示するように、ダミーパターン14は、三角波形状の導体パターンである場合でもよい。また、ダミーパターン14は、これら矩形状パターン、円形状パターン、三角形状パターン、五角形以上の多角形状パターン、および三角波状パターンの少なくとも1つのパターンを含む場合でもよい。
【0052】
図13(a)から図13(e)のように、ダミーパターン14は、様々な形状の導体パターンの場合でもよい。しかしながら、いずれの場合であっても、ダミーパターン14に誘導起電流が発生することを抑制するために、ダミーパターン14内の点20を中心としてダミーパターン14内に形成可能な最大の円22の直径がスケールパターンの周期の1/4以下であることが求められる。もしくは、ダミーパターン14内の点20を中心としてダミーパターン14内に形成可能な最大の円22の直径が受信コイル34の測定方向の幅の1/2以下であることが求められる。
【0053】
(第6実施形態)
図14は、第6実施形態に係るスケール600を例示する平面図である。図14に例示するように、第6実施形態のスケール600は、ロータリーエンコーダに用いられるスケールであり、基材10の表面上に周方向に一定の周期で複数のスケールパターン12が配列されている。基材10の表面上で複数のスケールパターン12が設けられた領域以外の領域の少なくとも一部に複数のダミーパターン14が設けられている。第6実施形態では、基材10の周方向が測定方向となる。その他の構成は第1実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0054】
第1実施形態から第5実施形態では、リニアエンコーダに用いられるスケールの場合を例に示した。しかしながら、この場合に限られず、第6実施形態のように、ロータリーエンコーダに用いられるスケールの場合でもよいし、円弧エンコーダ等のその他のエンコーダに用いられるスケールの場合でもよい。
【0055】
第1実施形態から第6実施形態では、図5(a)から図5(d)に示したように、基材10上に導体膜60を成膜した後、導体膜60をレーザ加工またはエッチング加工によってパターニングすることで、スケールパターンおよびダミーパターンを形成する場合を例に示した。しかしながら、この場合に限られず、スケールパターンおよびダミーパターンは、印刷法、めっき法、またはリフトオフ法によって形成する場合でもよい。この場合でも、第2実施形態のように基材10の反りを小さくするとの効果が得られる。
【0056】
図1(a)では、第1実施形態のスケール100を備える電磁誘導式エンコーダ1000を例に示したが、電磁誘導式エンコーダ1000は、第1実施形態のスケール100の代わりに、第1実施形態の変形例1から変形例3および第2実施形態から第6実施形態のスケールのいずれかを備える場合でもよい。
【0057】
以上、本願発明の実施形態について詳述したが、本願発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本願発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 基材
12、12a、12b、12c、12d スケールパターン
14 ダミーパターン
20 点
22 円
30 検出ヘッド
32 送信コイル
34 受信コイル
36 第1受信コイル
38 第2受信コイル
40 送信信号生成部
50 変位量測定部
60 導体膜
70 導体膜
72 導体膜
100、110、120、130、200、300、400、500、600、700 スケール
1000 電磁誘導式エンコーダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14