(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086588
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】頭部装着型表示装置、およびメガネ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240620BHJP
G02C 11/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02C11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023186818
(22)【出願日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2022200453
(32)【優先日】2022-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 愛乃
(72)【発明者】
【氏名】平野 成伸
(72)【発明者】
【氏名】片野 泰男
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】牧 隆史
(72)【発明者】
【氏名】須藤 芳文
【テーマコード(参考)】
2H006
2H199
【Fターム(参考)】
2H006CA00
2H199CA12
2H199CA23
2H199CA24
2H199CA25
2H199CA27
2H199CA29
2H199CA30
2H199CA42
2H199CA45
2H199CA47
2H199CA93
(57)【要約】
【課題】画像を確実にユーザに視認させる頭部装着型表示装置を提供すること。
【解決手段】ユーザの頭部に装着する頭部装着型表示装置100は、画像光200を出射する光源と、画像光を反射してユーザの目1Eに導く複数の反射面132を、複数の反射面の並び方向に対して傾斜させて外側の表面に設けられた光学部材とを備えた。反射面132に対して傾斜する透過面131を反射面と交互に設けてもよい。透過面131は反射面132よりも画像光200の入射角が大きいことが好ましい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの頭部に装着する頭部装着型表示装置であって、
画像光を出射する光源と、
前記画像光を反射してユーザの目に導く複数の反射面を、前記複数の反射面の並び方向に対して傾斜させて外側の表面に設けられた光学部材とを備えた頭部装着型表示装置。
【請求項2】
前記複数の反射面のうち少なくもと2つは互いに平行である請求項1記載の頭部装着型表示装置。
【請求項3】
前記反射面の間に、反射面よりも前記画像光の入射角が大きい透過面を備えた請求項1記載の頭部装着型表示装置。
【請求項4】
前記透過面は、前記反射面よりも前記画像光の入射角が大きくなるように、前記反射面に対して傾斜する請求項3記載の頭部装着型表示装置。
【請求項5】
前記光学部材は、ユーザの視線方向にほぼ直交する方向を長手方向として配置される請求項1記載の頭部装着型表示装置。
【請求項6】
前記光学部材は、ユーザの目が正面を向いたときの視線方向にほぼ直交する方向を長手方向として配置される請求項5記載の頭部装着型表示装置。
【請求項7】
前記画像光を投射する投射レンズ系と、
前記投射レンズ系の位置を調整する調整機構と、を備えた請求項1記載の頭部装着型表示装置。
【請求項8】
前記画像光を投射する投射レンズ系と画像素子が直列であって、
画像素子の位置を調整する調整機構を備えた請求項1記載の頭部装着型表示装置。
【請求項9】
メガネに装着されるにあたり、前記光学部材が前記メガネの内側に配置される請求項1記載の頭部装着型表示装置。
【請求項10】
前記画像光を制御する制御基板を備え、
メガネに装着されるにあたり、前記制御基板が前記メガネのテンプルに取り付けられる請求項1記載の頭部装着型表示装置。
【請求項11】
前記制御基板には、スピーカーが設けられる請求項10記載の頭部装着型表示装置。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一に記載の頭部装着型表示装置が装着されたメガネ。
【請求項13】
前記光学部材は、一方のリム側に配置され、
他方のリム側に配置される遮蔽部を備えた請求項12記載のメガネ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部装着型表示装置、およびメガネに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外界から入射する外光を透過する透明部材151と、映像光を反射する反射領域158を備えた反射部材154とから構成されているハーフミラー(150)を備えたヘッドマウントディスプレイが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、画像を確実にユーザに視認させる頭部装着型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1は、画像光を反射してユーザの目に導く反射面と、反射面に対して傾斜する透過面と、が外側の表面に交互に設けられた光学部材を備えた頭部装着型表示装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、画像を確実にユーザに視認させる頭部装着型表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る頭部装着型表示装置100を装着した状態を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る頭部装着型表示装置100の全体構成を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る頭部装着型表示装置100の光学ユニット120を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る頭部装着型表示装置100の光路の説明図である。
【
図5】本実施形態に係る頭部装着型表示装置100の光路の他の説明図である。
【
図6】本実施形態に係る頭部装着型表示装置100の距離関係の説明図である。
【
図7】本実施形態に係る頭部装着型表示装置100の光学ユニット120の変形例の説明図である。
【
図8】本実施形態に係る頭部装着型表示装置100の光学ユニット120の他の変形例の説明図である。
【
図9】他の実施形態に係る頭部装着型表示装置100の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の実施形態に係る頭部装着型表示装置100を装着した状態を示す図である。
【0009】
図1(a)に示すように、頭部装着型表示装置100は、メガネ10に対して装着され、ユーザ1の一方の目に画像光を入射する。これにより、メガネ10を装着するだけで、頭部装着型表示装置100もユーザ1の頭部に装着することができる。
【0010】
図1(b)に示すように、メガネ10は、左右のリム12R、12Lと、左右のレンズ14R、14Lと、ブリッジ16と、左右のテンプル18R、18Lと、右のレンズ14Rの外側に重なるように取り付けられる遮蔽部20と、を備える。
【0011】
頭部装着型表示装置100は、第1の装着部102と、第2の装着部104と、連結部106と、光学ユニット120と、制御基板140と、配線150と、を備える。
【0012】
第1の装着部102は、ブリッジ16を跨って左右のリム12R、12Lに装着され、第2の装着部104は、左のリム12Lに装着され、連結部106は、第1の装着部102、第2の装着部104、および光学ユニット120を連結する。
【0013】
光学ユニット120は、頭部装着型表示装置100がメガネ10に対して装着された状態で、左のリム12Lの内側に配置され、ユーザ1の左目に対して画像光を出射する。
【0014】
制御基板140は、光学ユニット120から出射される画像光を制御する。配線150は、FPC(Flexible printed circuits)が好適であり、光学ユニット120と制御基板140を電気的に接続し、制御基板140から光学ユニット120へ電力および画像光の制御信号を伝送する。
【0015】
また、制御基板140は、メガネ10のテンプル18Lに取り付けられる。これにより、制御基板140の重量が鼻にかからず長時間装着しても負荷にならず、通常のメガネ10から大きくはみ出すことなく、自然な見た目とすることができる。
【0016】
遮蔽部20は、後述する光学部材130(
図2参照)が設けられる側のレンズとは反対のレンズ近傍に設けられる。
図1では、光学部材130が左のレンズ14L側に配置されることを想定しているため、遮蔽部20を右のレンズ14R側に設けている。遮蔽部20の右のレンズ14Rに対する位置は、光学部材130の左のレンズ14Lに対する位置に対応する。当該位置に遮蔽部20を設けることで、光学部材130が設けられた左目側のみで実空間と虚像を見ることになる。これにより、実空間と虚像とが重畳した状態をより鮮明に視認することができる。なお、遮蔽部20の幅等のサイズは、図示されたものと異なっていてもよい。また、遮蔽部20は、必ずしも設けていなくてもよい。
【0017】
以上において、メガネ10は、一般的な矯正メガネ、サングラス、保護メガネ、ゴーグル等を含み、頭部装着型表示装置100は、メガネ10の構成部品に含まれていてもよい。
【0018】
図2は、本実施形態に係る頭部装着型表示装置100の全体構成を示す図である。
【0019】
光学ユニット120は、表示素子122と、ミラー124と、投射レンズ系126と、調整機構128と、光学部材130と、を備え、制御基板140は、スピーカー142を備える。
【0020】
表示素子122は、画像光を出射するデバイスであり、有機LED(OLED:Organic Light Emitting Diode)や透過型液晶表示素子が好適であるが、他にも種々の表示方式のものが適用できる。例えば、表示素子122として、DMD(Digital Micromirror Device)が適用可能である。
【0021】
また、表示素子122として、TFT(Thin Film Transistor)やLCOS(Liquid Crystal On Silicon)が適用可能である。さらに、表示素子122として、MEMS(Micro Electro MechanicalSystems)が適用可能である。
【0022】
表示素子122は、光源を必要とするLCOSやDMDなどを用いた場合、照明光を射出して表示素子122の画像表示面を照明するための光源を備える。光源は、種々のものが適用でき、例えばLED(Light Emitting Diode)、半導体レーザ(Laser Diode:LD)、放電ランプなどを用いることができる。
【0023】
ミラー124は、表示素子122から出射された画像光を反射して投射レンズ系126に導き、投射レンズ系126は、複数の光学レンズや絞りなどから構成され、入射した画像光を拡大して平行光として出射する。ここで、投射レンズ系126から出射される画像光は、完全な平行光でなくてもよい。
【0024】
光学部材130は、投射レンズ系126から出射された画像光を外側の表面で直接反射してユーザ1の左目に導くとともに、環境光を透過してユーザ1の左目に導く。これにより、ユーザ1は、画像光が示す虚像を、周囲の環境に重畳された画像として認識することができる。
【0025】
また、光学部材130は、メガネ10の右のレンズ14Rの内側に重なるように配置される。これにより、メガネ10の外側に光学部材130を配置する場合に比べて、自然な見た目となるとともに、度付きレンズに起因する画像の歪みや、サングラスなどの遮光グラスに起因して画像が暗くなることも防止される。
図1(b)に示した遮蔽部20の幅方向のサイズは、光学部材130の幅方向のサイズよりも小さいことが好ましい。
【0026】
そして、光学部材130は、目1Eから近く配置されるため、小型化と広画角化を両立することができる。さらに、光学部材130は、長手方向にスライド可能に構成されてもよく、目1Eに当たらないように、フィルム等で覆われていてもよい。
【0027】
調整機構128は、ミラー124と光学部材130の間の画像光の光路における、投射レンズ系126の位置を調整する。これにより、画像光の結像位置を調整し、周囲の環境における画像が重畳される位置を調整することができる。
【0028】
図3は、本実施形態に係る頭部装着型表示装置100の光学ユニット120を示す図である。
【0029】
図3(a)は、光学ユニット120の側面図を示し、
図3(b)は、光学ユニット120の斜視図を示す。
【0030】
光学ユニット120は、表示素子122、ミラー124、および光学部材130が位置決め固定された光学系筐体125を備え、投射レンズ系126は、調整機構128を操作することにより移動可能なように、光学系筐体125に保持される。
【0031】
図3(b)に示すように、光学部材130の外側(投射レンズ系126側)の表面には、環境光を透過してユーザ1の目に導く複数の透過面131と、画像光を直接反射してユーザ1の目に導く複数の反射面132が、交互に配置されている。
【0032】
図4は、本実施形態に係る頭部装着型表示装置100の光路の説明図である。
【0033】
図4(a)は、ユーザ1の目1Eが正面を向いたときの画像光の光路を示している。光学部材130は、ユーザ1の視線1L上で、左のリム12L側に重なり合うように、視線1Lに直交する方向を長手方向として配置されている。
【0034】
この状態で、表示素子122が出射された画像光200は、光学部材130により直接反射され、ユーザ1の目1Eに導かれる。ここで、ミラー124、および投射レンズ系126の図示は省略しているが、画像光200は、投射レンズ系126により平行光で光学部材130に入射する。図中の画像光200は、表示素子122の中心画素からの光束を示している。
【0035】
図4(b)は、光学部材130の拡大図である。光学部材130の外側の表面には、複数の透過面131A~131Cと、複数の反射面132A~132Bが、交互に配置されており、透過面131は、反射面132よりも画像光200の入射角が大きくなるように、反射面132に対して傾斜している。
【0036】
すなわち、透過面131A~131Cの法線方向は、視線1Lの方向とほぼ一致するが、反射面132A~132Bの法線135の方向は、透過面131の法線方向よりも画像光200の入射側を向いている。
【0037】
頭部装着型表示装置100は、
図4(a)および
図4(b)に示した光学部材130を備えることにより、ユーザ1は、画像光が示す虚像を、周囲の環境に重畳された画像として認識することができる。
【0038】
図4(c)は、比較例に係るユーザ1の目1Eが正面を向いたときの画像光の光路を示している。本比較例では、
図4(a)および
図4(b)に示した光学部材130の代わりとして、ハーフミラー230を採用している。ハーフミラー230は、ユーザ1の視線1L上で、左のリム12L側に重なり合うように、視線1Lに直交する方向から傾斜する方向を長手方向として配置されている。ここで、ハーフミラー230のユーザ1に対向する面には、法線235の方向が一定の反射面が連続的に形成されている。
【0039】
図4(c)に示した比較例においても、ユーザ1は、画像光が示す虚像を、周囲の環境に重畳された画像として認識することができるが、ハーフミラー230が、視線1Lの方向において、長さL分の空間を占有しているため、ユーザ1の目1Eと干渉するおそれがあった。
【0040】
これを回避するために、
図4(a)に示した光学部材130と同様に、ハーフミラー230を、視線1Lに直交する方向を長手方向として配置しようとすると、今度は、表示素子122および表示素子122から出射される画像光がユーザ1と干渉して、ハーフミラー230に到達できなくなる 以上説明したように、
図4(a)および
図4(b)に示す頭部装着型表示装置100は、画像光200を直接反射してユーザ1の目1Eに導く反射面132と、反射面132に対して傾斜する透過面131と、が外側の表面に交互に設けられた光学部材130を備えることにより、ユーザ1の目1Eに干渉するおそれを低減して、メガネ10とユーザ1の目1Eの間の狭い空間に配置可能であるとともに、画像を確実にユーザ1に視認させることができる。
【0041】
図4(d)は、
図4(a)の配置の光学部材130の構成の変形例の説明図である。この変形例に係る光学部材130は
図4(b)に図示の例の透過面131の配置位置が異なる。具体的には、
図4(b)の透過面131は表示素子122から遠い透過面131ほど、視線L1方の位置がユーザ1の目1Eよりに位置している。これに対し、
図4(d)における透過面131は同一面上に位置する。この
図4(d)の例においても、複数の反射面132のうち少なくもと2つは互いに平行に配置されることがこのましい。図示の例では全てが互いに平行である。
【0042】
図5は、本実施形態に係る頭部装着型表示装置100の光路の他の説明図である。
【0043】
図5(a)は、ユーザ1の目1Eが正面から傾斜した方向を向いたときの画像光の光路を示している。光学部材130は、ユーザ1の視線1L上で、左のリム12L側に重なり合うように、視線1Lに直交する方向に近い方向を長手方向として配置されている。
【0044】
この状態で、表示素子122が出射された画像光200は、光学部材130により直接反射され、ユーザ1の目1Eに導かれる。ここで、ミラー124、および投射レンズ系126の図示は省略しているが、画像光200は、投射レンズ系126により平行光で光学部材130に入射する。図中の画像光200は、表示素子122の中心画素からの光束を示している。
【0045】
図5(b)は、光学部材130の拡大図である。
図4(b)と同様に、光学部材130の外側の表面には、複数の透過面131A~131Cと、複数の反射面132A~132Bが、交互に配置されており、透過面131は、反射面132よりも画像光200の入射角が大きくなるように、反射面132に対して傾斜している。
【0046】
すなわち、透過面131A~131Cの法線方向は、視線1Lの方向とほぼ一致するが、反射面132A~132Bの法線135の方向は、透過面131の法線方向よりも画像光200の入射側を向いている。
【0047】
頭部装着型表示装置100は、
図5(a)および
図5(b)に示した光学部材130を備えることにより、ユーザ1は、視線1Lを正面に向けた場合には、周囲の環境のみを視認し、視線1Lを正面から図の左方にずらしてチラ見した場合には、画像光が示す虚像を、周囲の環境に重畳された画像として認識することができる。
【0048】
図5(c)は、比較例に係るユーザ1の目1Eが正面を向いたときの画像光の光路を示している。本比較例では、
図5(a)および
図5(b)に示した光学部材130の代わりとして、ハーフミラー230を採用している。平面ミラー330は、ユーザ1の視線1L上で、左のリム12L側に重なり合うように、視線1Lに直交する方向から傾斜する方向を長手方向として配置されている。ここで、平面ミラー330のユーザ1に対向する面には、法線335の方向が一定の反射面が連続的に形成されている。
【0049】
図5(c)に示した比較例においても、ユーザ1は、視線1Lを正面に向けた場合には、周囲の環境のみを視認し、視線1Lを正面から図の左方にずらしてチラ見した場合には、画像光が示す虚像を、周囲の環境に重畳された画像として認識することができるが、図示したように、表示素子122および表示素子122から出射される画像光がユーザ1と干渉して、平面ミラー330に到達できなくなる。
【0050】
これを回避するために、平面ミラー330を、正面方向に直交する方向を長手方向として配置しようとすると、平面ミラー330の長手方向における両端部で光路長が大きく異なってしまい、画像光が示す画像が歪んでしまう。
【0051】
以上説明したように、
図5(a)および
図5(b)に示す頭部装着型表示装置100は、画像光200を直接反射してユーザ1の目1Eに導く反射面132と、反射面132に対して傾斜する透過面131と、が外側の表面に交互に設けられた光学部材130を備えることにより、画像を確実にユーザ1に視認させることができる。
【0052】
本実施形態における光学部材130のように、反射面132と透過面131が交互に設けられた部材は、目から離すと離散したミラーの線が見え、1つの画像として認識しづらくなる可能性がある。また、目に近すぎても物理的に瞬きの妨げになる可能性がある。よって、投射レンズ系126、反射面132、及び目1Eの距離関係を調節することで、1つの画像として認識しやすく、且つ瞬きの妨げとならない頭部装着型表示装置を実現する。また、反射面132の角度の調整によっても1つの画像として認識しやすく、且つ瞬きの妨げとならない頭部装着型表示装置を実現する。
【0053】
図6は距離関係や角度の調整要素の説明図である。図中の符号は次のとおりである。ユーザ1の目1Eが正面を向いたときの視線1L、ユーザの目1Eの瞳への入射角:Θ1、ミラーの角度(光学部材130の反射面132の角度):Θ2、投射レンズ126の径:Φ、瞳中心から投射レンズ126までの距離:A、反射面132と目1Eの正面を向いたときの視線L1方向の距離:B、投射レンズ径:Φ、反射面132から目1Eまでの画像光の光路長:D1、投射レンズ126から反射面132までの画像光の光路長:D2。ここで、上記Θ2はユーザ1の目1Eが正面を向いたときの視線1Lと直交する線との間の角度である。
【0054】
なお、
図6における目1Eはユーザの右目であり、
図1に示すメガネ10と異なり、右側のレンズ14Rに光学部材130を配置する光学ユニット120の上方から見た説明図である。
【0055】
反射面132と目1Eの正面を向いたときの視線L1方向の距離Bは、20mm以内であることが好ましい。また、12mm以内であることが更に好ましい。これは、一般的なメガネレンズと瞳の距離(頂点間距離)は12mm程度であり、サングラスやゴーグル、オーバーグラスなどでも20mm位であることに基づく。
【0056】
投射レンズ径Φは、メガネレンズの内側に設置するため10mm以下であることが好ましい。また投射レンズ126の位置は、瞳中心から投射レンズ126までの距離Aが45mm以内であることが好ましい。これにより、投射レンズ126を顔幅に収まる位置で設置することができる。
【0057】
反射部材(ミラー)の位置は、瞳から離れすぎると画像の視認性が低下するため、反射面132から目1Eまでの画像光の光路長D1が25mm以内が好ましい。また、反射部材(ミラー)は、反射する光の瞳への入射角Θ1が-10度~60度となるよう設けることが好ましい。また、この入射角Θ1が0度~30度となるよう設けることが更に好ましい。
【0058】
上述の範囲内に反射部材(ミラー)のミラー角度Θ2を調整することで、眼の正面に光学部材130を配置でき、重畳画像の表示可能な範囲が広がる。同時に、ミラー角度Θ2を、投射レンズ126を顔に干渉しない位置に配置することが可能になり、画像の視認性向上と頭部装着型表示装置全体の小型化の両立が実現できる。なお、このときのミラー角度Θ2は、10度~55度が好ましく、15度~45度が更に好ましい。
【0059】
本実施形態の光学部材130の場合は、光学部材130を眼鏡に平行に近く設置でき、かつ投射光学系(光学ユニット120)は顔に干渉しない。一方、光学部材130の代わりに一枚のハーフミラーを用いる場合、ハーフミラーの配置位置が投射光学系が顔に干渉しない位置では、瞳に対してミラーの先端が迫るため好ましくない。また、光学部材130の代わりに一枚のハーフミラーを用いた場合(
図4(c))、ハーフミラーの配置位置が眼鏡に平行に近い位置のとき、投射光学系が顔に干渉する。
【0060】
光学部材130を眼鏡レンズに対して平行に近く配置した場合の構成において行った実験例を示す。反射面132から目1Eまでの画像光の光路長D1は10~25mmの間で調整、投射レンズ126から反射面132までの画像光の光路長D2は30mm以内で調整した。光学部材130としては後述する
図9に示す形状のものを用いた。
【0061】
(実験例1)
瞳への入射角Θ1が60度、ミラー角度Θ2を10度で配置したとき、反射面132から目1Eまでの画像光の光路長D1が22mmで反射面132と目1Eの正面を向いたときの視線L1方向の距離Bは11mmで設置でき、投射レンズ径Φは9mmで顔に干渉せず、映像を視認することができた。文字は視認しづらい。
【0062】
(実験例2)
瞳への入射角Θ1が0度、ミラー角度Θ2を45度で配置したとき、反射面132から目1Eまでの画像光の光路長D1が10mmで、反射面132と目1Eの正面を向いたときの視線L1方向の距離Bは10mmで設置でき、投射レンズ径Φは7mmで顔に干渉せず、映像、文字を視認することができた。
【0063】
(実験例3)
瞳への入射角Θ1が30度、ミラー角度Θ2を15度で配置したとき、反射面132から目1Eまでの画像光の光路長D1が12mm、投射レンズ126から反射面132までの画像光の光路長D2が30mmのとき投射レンズ径Φは7mmで顔に干渉せず、反射面132と目1Eの正面を向いたときの視線L1方向の距離Bは10mmで設置され、映像を視認することができた。
【0064】
(実験例4)
瞳への入射角Θ1が30度、ミラー角度Θ2を0度で配置したとき、投射レンズ位置が顔に干渉してしまい、映像を視認することが出来なかった。
【0065】
(実験例5)
瞳への入射角Θ1が-10度(投射レンズ126と瞳の距離Aより遠い側)、ミラー角度Θ2を55度で配置したとき、反射面132から目1Eまでの画像光の光路長D1は11mm、投射レンズ系を、投射レンズ126から反射面132までの画像光の光路長D2が40mmの位置に設置しても投射レンズ径Φは9mmで顔に干渉せず配置し、映像を視認することができた。
【0066】
(実験例6)
瞳への入射角Θ1が-30度(投射レンズ126と瞳の距離Aより遠い側)、ミラー角度Θ2を50度で配置したとき、投射レンズ系を、投射レンズ126から反射面132までの画像光の光路長D2が40mmの位置に設置、投射レンズ径Φは9mmで干渉せずに配置できたが、視野闘争が起きて視認し難かった。
【0067】
図7は光学ユニット120の変形例の説明図である。
図2及び
図3の光学ユニット120は表示素子122の画像光200をミラー124で一度反射してから投射レンズ126に入れていた。その構成で視度調整は、調整機構128を用い、投射レンズ126を反射部材に対して近づけたり遠ざけたりする方向に125の筐体中でスライドさせて行った。
【0068】
図7の光学ユニット120は表示素子122と投射レンズ126が同軸に配置し、表示素子122からの光をミラーで反射せずに直接投射レンズ126に入れる。そして、視度調整のための調整機構128は、
図2及び
図3の光学ユニット120におけると同様に、投射レンズ126を光軸方向に光学系筐体125の中でスライドさせる。
【0069】
図8は光学ユニット120他の変形例の説明図である。この光学ユニット120は、調整機構128が
図7の光学ユニット120と異なる。投射レンズ126と光学部材130の位置(距離)は固定されていて、視度調整は、表示素子122を投射レンズ126に対して近づけたり遠ざけたりスライドさせて行う。このため、表示素子122を保持する保持部材が調整機構128として光学系筐体125に対しスライド可能に取り付けられている。
図8の光学ユニット120もユーザ1の左のレンズ14Rの内側に光学部材130を配置するものである。
【0070】
以上の実施形態における光学部材130の反射面132は、全反射のミラーでも、ハーフミラーでもよい。ハーフミラーの場合は、全反射の反射面とは異なり、反射面が視界を完全に遮るのではないため反射面を介しても外界を視認することが可能である。全反射のミラーでも、反射面と透過面が交互に設けられているので、透過面を介して外界を視認することが可能であり、AR重畳ができる(シースルー効果)。反射面132の大きさ(
図4(b)などにおける一つの反射面の左右方向の幅)は、可視光波長より広く、1μm以上、好ましくは可視光波長の10倍以上である。
【0071】
また、以上の実施形態は、光学部材130が、反射面132と透過面131が交互に設けられた部材であるが、本発明は、透過面131が存在せず、複数の反射面132のみからなる光学部材を備えたものにも適用できる。反射面は、全反射のミラーでも、ハーフミラーでも良い。全反射のミラーで構成する場合には、外界は視認できないが、複数の反射面から反射される画像光の画像を確実に視認させる頭部装着型表示装置を実現できる。反射面をハーフミラーで構成する場合は外界を視認することが可能であり、AR重畳ができる(シースルー効果)。
【0072】
図9は透過面131が存在せず、複数の反射面132のみからなる光学部材130の構成例の説明図である。複数の反射面132A~132Eが備えられ、隣合う反射面132の間に連結面134A~134Dが形成される。複数の反射面の少なくとも2つは互いに平行である。図示の例では全ての反射面132が互いに平行である。そして、複数の連結面134も互いに平行である。
【0073】
仮に、図中、左から1つ目の反射面132Aよりも右側の反射面132B~132Eを、連結面134に平行な方向134Lで図中下側にずらすと、左側の1つ目の反射面132Aに平行な直線132L上に並べることができる。この連結面134に平行な方向134Lが、反射面132から反射光を目1Eに導く方向になるように光学部材130などの配置を設定すれば、134Lの方向からみたときに複数の反射面132が連続し、画像光による画像の視認性がよくなる。
【0074】
図示の例は
図4(a)と同様の配置を前提としたものであり、図中上方の直線状の面がユーザ1の目1Eが正面を向いたときの視線1Lに垂直になるように配置することもできる。また、
図9の例における連結面134A~134Dを透過面とし、反射面と透過面が交互に設けられている光学部材130としてもよい。
【0075】
●まとめ●
[第1態様] 以上説明したように、本発明の一実施形態に係るユーザの頭部に装着する頭部装着型表示装置100は、画像光200を出射する光源と、画像光200を反射してユーザ1の目1Eに導く複数の反射面132を、前記複数の反射面の並び方向に対して傾斜させて外側の表面に設けられた光学部材130とを備える。
【0076】
これにより、画像光の画像を確実にユーザ1に視認させることができる。複数の反射面が光学部材の外側の表面に設けられていることから、回折格子を用いて反射することで一次波や二次波など高次の光を用いるものとは異なり、0次の光を反射し、明るい画像を得ることができる。導波路を用いて光を導いて導波路の端部の反射部で光を射出するものとは異なり、導波路内での光減衰も回避可能である。
【0077】
[第2態様]
第1態様において、前記複数の反射面のうち少なくもと2つは互いに平行である。
【0078】
[第3態様]
第1態様又は第2態様において、前記反射面の間に、反射面よりも前記画像光の入射角が大きい透過面を備える。
【0079】
これにより、画像光が示す像を、周囲の環境に重畳された画像として確実にユーザ1に視認させることができる。
【0080】
[第4態様]
第3態様において、透過面131は、反射面132よりも画像光200の入射角が大きくなるように、反射面132に対して傾斜する。
【0081】
[第5態様]
第1態様~第4態様の何れかにおいて、光学部材130は、ユーザ1の視線1Lの方向にほぼ直交する方向を長手方向として配置される。これにより、光学部材130長手方向における両端部で光路長が大きく異なってしまうことに起因して画像光が示す画像が歪むことが防止され、画像を確実にユーザ1に視認させることができる。
【0082】
[第6態様]
第5態様において、光学部材130は、ユーザ1の目1Eが正面を向いたときの視線1Lの方向にほぼ直交する方向を長手方向として配置される。
【0083】
これにより、頭部装着型表示装置100は、ユーザ1の目1Eに干渉するおそれを低減して、ユーザ1の目1Eの前における占有空間を低減するとともに、画像を確実にユーザ1に視認させることができる。この結果、光学部材130は、メガネ10とユーザ1の目1Eの間の狭い空間に配置可能である。
【0084】
[第7態様]
第1態様~第6態様の何れかにおいて、頭部装着型表示装置100は、画像光200を投射する投射レンズ系126と、投射レンズ系126の位置を調整する調整機構128と、を備える。これにより、画像光の結像位置を調整し、周囲の環境における画像が重畳される位置を調整することができる。
【0085】
[第8態様]
第1態様~第7態様の何れかにおいて、前記画像光を投射する投射レンズ系と画像素子が直列であって、画像素子の位置を調整する調整機構を備えた。
【0086】
[第9態様]
第1態様~第8態様の何れかにおいて、頭部装着型表示装置100は、メガネ10に装着される。これにより、メガネ10を装着するだけで、頭部装着型表示装置100もユーザ1の頭部に装着することができる。メガネ10は、一般的な矯正メガネ、サングラス、保護メガネ、ゴーグル等を含む。
【0087】
しかも、メガネに装着されるにあたり、光学部材130は、メガネ10の内側に配置される。これにより、メガネ10の外側に光学部材130を配置する場合に比べて、自然な見た目となるとともに、度付きレンズに起因する画像の歪みや、サングラスなどの遮光グラスに起因して画像が暗くなることも防止される。
【0088】
そして、光学部材130は、目1Eから近く配置されるため、小型化と広画角化を両立することができる。さらに、光学部材130は、長手方向にスライド可能に構成されてもよく、目1Eに当たらないように、フィルム等で覆われていてもよい。
【0089】
[第10態様]
第1態様~第9態様の何れかにおいて、頭部装着型表示装置100は、画像光200を制御する制御基板140を備え、メガネに装着されるにあたり、制御基板140は、メガネ10のテンプル18Lに取り付けられる。
【0090】
これにより、制御基板140の重量が鼻にかからず長時間装着しても負荷にならず、通常のメガネ10から大きくはみ出すことなく、自然な見た目とすることができる。
【0091】
[第11態様]
第1態様~第10態様の何れかにおいて、制御基板140には、スピーカー142が設けられる。これにより、耳元で音が聞きやすくなる。
【0092】
[第12態様]
本発明の一実施形態に係るメガネ10は、第1態様~第11態様の何れか一に記載の頭部装着型表示装置100が装着される。
【0093】
[第13態様]
第12態様において、光学部材130は、一方のリム12L側に重なるように配置され、他方のリム12R側に重なるように配置される遮蔽部20を備える。
【0094】
これにより、他方のリム12R側の視野に起因する視野倒錯を防止し、一方のリム12L側の視野のみで、画像光の画像として確実にユーザ1に視認させることができる。
【符号の説明】
【0095】
1 ユーザ
1E 目
1L 視線
10 メガネ
12R、12L リム
14R、14L レンズ
16 ブリッジ
18R、18L テンプル
20 遮蔽部
100 頭部装着型表示装置
102 第1の装着部
104 第2の装着部
106 連結部
120 光学ユニット
122 表示素子
124 ミラー
125 光学系筐体
126 投射レンズ系
128 調整機構
130 光学部材
131A~131C 透過面
132A、132B 反射面
134 連結面
135 垂線
140 制御基板
142 スピーカー
150 配線
200 画像光
230 ハーフミラー
330 平面ミラー