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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086632
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】繊維束の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/28 20060101AFI20240620BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20240620BHJP
   B29B 9/08 20060101ALI20240620BHJP
   B29B 9/14 20060101ALI20240620BHJP
   B29B 7/12 20060101ALI20240620BHJP
   B29K 307/04 20060101ALN20240620BHJP
【FI】
B29B7/28
C08J5/04
B29B9/08
B29B9/14
B29B7/12
B29K307:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023207538
(22)【出願日】2023-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2022201049
(32)【優先日】2022-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】辻川 一輝
(72)【発明者】
【氏名】石川 健
(72)【発明者】
【氏名】松井 純
【テーマコード(参考)】
4F072
4F201
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA07
4F072AA08
4F072AB10
4F072AC08
4F072AC10
4F072AC12
4F072AC13
4F072AC14
4F072AG03
4F072AL01
4F201AA21
4F201AA24
4F201AA29
4F201AA31
4F201AA39
4F201AB18
4F201AB25
4F201AC05
4F201AR09
4F201AR12
4F201AR15
4F201AR17
4F201BA02
4F201BC01
4F201BC13
4F201BC33
4F201BC37
4F201BL03
4F201BL42
4F201BL43
4F201BL44
(57)【要約】
【課題】短尺の炭素繊維を各種樹脂に混合、分散させて繊維強化樹脂組成物を得る場合、炭素繊維の取り扱いを容易にして混合、分散の工程における作業を効率的にするような炭素繊維の形態が用いられる。繊維束サイズが小さく、フィード効率が更に改善された繊維束の製造方法を提供する。
【解決手段】複数の短尺繊維と、下記式(1)で表される粘度比Rηが1より大きいバンドル化液とを混合することを含む、繊維束の製造方法。
Rη=ηy/ηz (1)
式(1)中、ηyはB型回転粘度計を用いて23℃で測定されたスピンドル回転速度が10rpmにおけるバンドル化液の粘度、ηzはB型回転粘度計を用いて23℃で測定されたスピンドル回転速度が100rpmにおけるバンドル化液の粘度である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の短尺繊維と、下記式(1)で表される粘度比Rηが1より大きいバンドル化液とを混合することを含む、繊維束の製造方法。
Rη=ηy/ηz (1)
式(1)中、ηyはB型回転粘度計を用いて23℃で測定されたスピンドル回転速度が10rpmにおけるバンドル化液の粘度、ηzはB型回転粘度計を用いて23℃で測定されたスピンドル回転速度が100rpmにおけるバンドル化液の粘度である。
【請求項2】
前記複数の短尺繊維を含む繊維綿を用いる、請求項1に記載の繊維束の製造方法。
【請求項3】
前記バンドル化液が有機バインダーを含む、請求項1に記載の繊維束の製造方法。
【請求項4】
前記有機バインダーが、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂およびフェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む、請求項3に記載の繊維束の製造方法。
【請求項5】
前記バンドル化液が液体を含む、請求項1に記載の繊維束の製造方法。
【請求項6】
前記液体が水を含む、請求項5に記載の繊維束の製造方法。
【請求項7】
前記短尺繊維が炭素繊維を含む、請求項1に記載の繊維束の製造方法。
【請求項8】
B型回転粘度計を用いて23℃で測定されたスピンドル回転速度が50rpmにおける前記バンドル化液の粘度をηxとしたとき、ηxが10mPa・s以上である、請求項1に記載の繊維束の製造方法。
【請求項9】
前記ηyが、2mPa・s以上である、請求項1に記載の繊維束の製造方法。
【請求項10】
前記ηzが、2mPa・s以上である、請求項1に記載の繊維束の製造方法。
【請求項11】
撹拌造粒機を用いて混合する、請求項1に記載の繊維束の製造方法。
【請求項12】
前記撹拌造粒機が撹拌槽を備える、請求項11に記載の繊維束の製造方法。
【請求項13】
前記撹拌槽の内部に撹拌翼が設けられている、請求項12に記載の繊維束の製造方法。
【請求項14】
前記撹拌槽がスクレーパーを備える、請求項12に記載の繊維束の製造方法。
【請求項15】
前記撹拌槽を回転させる、請求項12に記載の繊維束の製造方法。
【請求項16】
前記繊維束が長球形状またはストランド形状である、請求項1に記載の繊維束の製造方法。
【請求項17】
前記短尺繊維の平均繊維長が12~50mmである、請求項1に記載の繊維束の製造方法。
【請求項18】
前記短尺繊維の平均繊維長が2~12mmである、請求項1に記載の繊維束の製造方法。
【請求項19】
前記Rηが1.2以上2以下である、請求項1に記載の繊維束の製造方法。
【請求項20】
前記繊維束の長さが、前記繊維束に含まれる繊維の平均繊維長より長い、請求項1に記載の繊維束の製造方法。
【請求項21】
前記繊維束に含まれる液体成分を除去することを含む、請求項1に記載の繊維束の製造方法。
【請求項22】
前記バンドル化液を前記複数の短尺繊維100質量部に対して10~120質量部用いる、請求項1に記載の繊維束の製造方法。
【請求項23】
前記複数の短尺繊維の嵩密度が0.01~0.10g/cmである、請求項1に記載の繊維束の製造方法。
【請求項24】
繊維束の長さが3mm以上100mm以下となるように混合する、請求項1に記載の繊維束の製造方法。
【請求項25】
前記繊維束を前記有機バインダーの溶融温度以上に加熱すること、および前記有機バインダーの溶融温度以下に冷却することを含む、請求項3に記載の繊維束の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維束の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維は、樹脂等のマトリックスに混合、分散させて、高強度、高剛性、低比重、高電気伝導性、高耐摩耗性等の機械的ないし電気的特性を改善するための、工業的に重要な材料として様々な用途に使用されてきた。
【0003】
一般に、短尺の炭素繊維を各種樹脂に混合、分散させて繊維強化樹脂組成物を得る場合、炭素繊維の取り扱いを容易にして混合、分散の工程における作業を効率的にするような炭素繊維の形態が用いられる。特に、混練機や成形型などへ炭素繊維のフィードが安定且つスムーズに実行されることが求められる。その手法としては、サイジング剤等により処理して得られた連続炭素繊維束を切断していわゆるチョップドカーボンファイバーとする方法や、切断された炭素繊維を造粒して炭素繊維束とする方法が用いられる。
【0004】
炭素繊維強化熱可塑性プラスチックは、炭素繊維ペレットを熱可塑性樹脂に添加する方法で製造することができる。炭素繊維ペレットの製造方法としては、例えば短尺炭素繊維をサイジング剤の溶液または懸濁液と混合することによって炭素繊維凝集体を形成し、これをディスクペレタイザーでペレット化した後、乾燥させる方法が開示されていることにより製造(特許文献1)。これにより高い密度および流線形の形状を有する炭素繊維ペレットが得られ、炭素繊維を安定且つスムーズにフィードすることが可能となる。
【0005】
一方、原料の炭素繊維としてリサイクル繊維を用いた場合、特許文献1に記載の方法では十分なフィード効率を得ることができない。リサイクル繊維を用いて炭素繊維ペレットを得る方法としては、炭素繊維を所定の平均長に切断および/または破砕し、炭素繊維を混合器中で溶液または懸濁液と混合して凝集体にし、凝集体を傾斜回転表面と接触させることによって凝集体を濃縮し、更に凝集体を乾燥させて炭素繊維ペレットにすることを含み、切断または破砕の前に炭素繊維の熱分解を行う方法が開示されている(特許文献2)。このとき、炭素繊維ペレットの形状は特許文献2の図2に示されるように球形であり、繊維配向は見られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特表平10-503812号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第2902433号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的の一つは、繊維束サイズが小さく、フィード効率が更に改善された繊維束の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の実施形態を含む。
【0009】
[1]:複数の短尺繊維と、下記式(1)で表される粘度比Rηが1より大きいバンドル化液とを混合することを含む、繊維束の製造方法。
Rη=ηy/ηz (1)
式(1)中、ηyはB型回転粘度計を用いて23℃で測定されたスピンドル回転速度が10rpmにおけるバンドル化液の粘度、ηzはB型回転粘度計を用いて23℃で測定されたスピンドル回転速度が100rpmにおけるバンドル化液の粘度である。
[2]:前記複数の短尺繊維を含む繊維綿を用いる、[1]に記載の繊維束の製造方法。
[3]:前記バンドル化液が有機バインダーを含む、[1]または[2]に記載の繊維束の製造方法。
[4]:前記有機バインダーが、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂およびフェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む、[3]に記載の繊維束の製造方法。
[5]:前記バンドル化液が液体を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の繊維束の製造方法。
[6]:前記液体が水を含む、[5]に記載の繊維束の製造方法。
[7]:前記短尺繊維が炭素繊維を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の繊維束の製造方法。
[8]:B型回転粘度計を用いて23℃で測定されたスピンドル回転速度が50rpmにおける前記バンドル化液の粘度をηxとしたとき、ηxが10mPa・s以上である、[1]~[7]のいずれかに記載の繊維束の製造方法。
[9]:前記ηyが、2mPa・s以上である、[1]~[8]のいずれかに記載の繊維束の製造方法。
[10]:前記ηzが、2mPa・s以上である、[1]~[9]のいずれかに記載の繊維束の製造方法。
[11]:撹拌造粒機を用いて混合する、[1]~[10]のいずれかに記載の繊維束の製造方法。
[12]:前記撹拌造粒機が撹拌槽を備える、[11]に記載の繊維束の製造方法。
[13]:前記撹拌槽の内部に撹拌翼が設けられている、[12]に記載の繊維束の製造方法。
[14]:前記撹拌槽がスクレーパーを備える、[12]または[13]に記載の繊維束の製造方法。
[15]:前記撹拌槽を回転させる、[12]~[14]のいずれかに記載の繊維束の製造方法。
[16]:前記繊維束が長球形状またはストランド形状である、[1]~[15]のいずれかに記載の繊維束の製造方法。
[17]:前記短尺繊維の平均繊維長が12~50mmである、[1]~[16]のいずれかに記載の繊維束の製造方法。
[18]:前記短尺繊維の平均繊維長が2~12mmである、[1]~[16]のいずれかに記載の繊維束の製造方法。
[19]:前記Rηが1.2以上2以下である、[1]~[18]のいずれかに記載の繊維束の製造方法。
[20]:前記繊維束の長さが、前記繊維束に含まれる繊維の平均繊維長より長い、[1]~[19]のいずれかに記載の繊維束の製造方法。
[21]:前記繊維束に含まれる液体成分を除去することを含む、[1]~[20]のいずれかに記載の繊維束の製造方法。
[22]:前記バンドル化液を前記複数の短尺繊維100質量部に対して10~120質量部用いる、[1]~[21]のいずれかに記載の繊維束の製造方法。
[23]:前記複数の短尺繊維の嵩密度が0.01~0.10g/cmである、[1]~[22]のいずれかに記載の繊維束の製造方法。
[24]:繊維束の長さが3mm以上100mm以下となるように混合する、[1]~[23]のいずれかに記載の繊維束の製造方法。
[25]:前記繊維束を前記有機バインダーの溶融温度以上に加熱すること、および前記有機バインダーの溶融温度以下に冷却することを含む、[3]に記載の繊維束の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、繊維束サイズが小さい繊維束が得られる。また、サイズが小さい繊維束を簡便に製造することができる。サイズが小さい繊維束を用いることで、繊維強化樹脂組成物を製造するときの繊維束の混練機等へのフィード効率を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、撹拌造粒機の実施の形態を示す図である。図1(a)は撹拌槽の水平方向断面図、図1(b)は図1(a)のb-b線に沿う断面図である。
図2図2は、転動撹拌造粒機の実施の形態を示す内部透視斜視図である。
図3図3は、リサイクル繊維の形態例を示す写真である。
図4図4は、バージン繊維の形態例を示す写真である。
図5図5は、実施例1で得られた複数の繊維束を撮影した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
[繊維束の製造方法]
本発明の一実施形態にかかる繊維束の製造方法は、複数の短尺繊維と、下記式(1)で表される粘度比Rηが1より大きいバンドル化液とを撹拌することを含む。
Rη=ηy/ηz (1)
式(1)中、ηyはB型回転粘度計を用いて23℃で測定されたスピンドル回転速度が10rpmにおけるバンドル化液の粘度、ηzはB型回転粘度計を用いて23℃で測定されたスピンドル回転速度が100rpmにおけるバンドル化液の粘度である。
【0013】
<バンドル化液>
バンドル化液は、複数の短尺繊維同士を液架橋させバンドル化するものである。バンドル化液は、液体または有機バインダーを含むことが好ましく、その両方を含むことがより好ましい。バンドル化液としては、特に制限はないが、例えば、溶剤、溶剤に有機バインダーやその他成分を溶解させたもの、機械的に分散させたもの、界面活性剤により分散させたもの、加温して粘度を低下させたもの等を用いることができる。
【0014】
バンドル化液の量は、繊維束の製造に用いる原料の繊維(以下、「原料繊維」と称す場合がある。)の総量100質量部に対し、例えば10~120質量部であるが、限定するものではない。バンドル化液の量は、繊維混合物の状態を観察しながら適宜調節することができる。
【0015】
バンドル化液の粘度比Rηが1より大きいことは、スピンドルの回転速度が上がると粘度が低下する、すなわちシュードプラスチック性を有することを示している。以下で説明するバンドル化工程において、粘度比Rηが1を超えるバンドル化液は撹拌翼の近傍の高速せん断が加わる領域では液粘度が低下して短尺繊維同士の液架橋力が弱まり繊維束サイズが小さくなるように作用する。他方、粘度比Rηが1を超えるバンドル化液は撹拌翼から離れた低速せん断領域の粘度を高速せん断領域の粘度よりも高く維持する作用があるため、繊維束同士の二次凝集を抑えて繊維束サイズを小さく保つことができる。粘度比Rηは、1.1以上、1.2以上や、3以下、2以下等とすることができる。Rηは、バンドル化液の粒子濃度や高分子量成分濃度を高くするほど大きくなりやすい。なお粘度は、B型回転粘度計(例えば、ブルックフィールド製LVDV-1 Pri)を用いて測定される値である。
従来、バンドル化液の取り扱い性の観点から、粒子濃度や高分子量成分の濃度が低く調製された、すなわちRηが1以下であるバンドル化液が一般的に使用されていた。しかし上述の通り、Rηが1を超えるバンドル化液を用いることで繊維束サイズを小さく保つことができ、フィード効率が改善できることが見いだされた。
【0016】
B型回転粘度計を用いて23℃で測定されたスピンドル回転速度が50rpmにおけるバンドル化液の粘度をηxとしたとき、繊維束の形状均一性の観点から、ηxは10mPa・s以上であることが好ましく、15mPa・s以上であることがより好ましい。ηxは、8000mPa/s以下、5000mPa・s以下、2000mPa・s以下、500mPa・s、50mPa・s以下とすることができる。
ηyおよびηzは、それぞれ、繊維束の形状均一性の観点から、10mPa・s以上であることが好ましく、15mPa・s以上であることがより好ましく、20mPa・s以上であることが更に好ましい。
ηyおよびηzは、それぞれ、8000mPa・s以下、5000mPa・s以下、2000mPa・s以下、500mPa・s以下とすることができる。一方、バンドル化液の粘度ηx、ηy、ηzはそれぞれ0.1mPa・s以上、2mPa・s以上とすることができ、10mPa・s以上とすることで繊維がまとまった状態を維持しやすく、繊維束が硬くなる傾向がありフィード効率も向上する。ηy、ηx、ηzは、ηy>ηx>ηzの関係を満足することが好ましい。加温してバンドル化するときは、そのときの温度で上記粘度の範囲のバンドル化液を使用できる。
【0017】
バンドル化液の表面張力は、例えば、23℃で120mN/m以下であれば繊維間に液架橋を形成することができ、繊維の移動を容易にして繊維を配向させることが可能である。表面張力は、110mN/m以下、100mN/m以下、90mN/m以下、72mN/m以下、60mN/m以下、50mN/m以下、40mN/m以下とすることができる。一方、表面張力は10mN/m以上、15mN/m以上、20mN/m以上、30mN/m以上とすることができる。なお表面張力は、プレート法(垂直板法)により測定された値である。加温してバンドル化するときは、そのときの温度で上記張力の範囲のバンドル化液を使用できる。
【0018】
繊維束の製造方法は、例えば、次の(i)~(iii)の工程を含む。
(i)混合工程
(ii)バンドル化工程
(iii)乾燥工程
複数の短尺繊維、およびバンドル化液の混合時期は限定されないが、(i)混合工程で複数の短尺繊維、およびバンドル化液の両方を混合することが好ましい。
混合する原料の使用量は、繊維束が生成されるまでに、繊維100質量部に対して、例えば、バンドル化液は10~120質量部とすることができる。繊維束サイズを揃える観点からは、バンドル化液使用量は、繊維100質量部に対して20質量部以上が好ましく、25質量部以上がより好ましい。繊維束の形状を均一にする観点からは、バンドル化液使用量は、繊維100質量部に対して90質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましい。
【0019】
バンドル化液が液体を含む場合、液架橋を効率的に進行させる観点からは、液体使用量は、繊維100質量部に対して5質量部以上が好ましく10質量部以上がより好ましい。乾燥を容易にする観点からは、液体使用量は、繊維100質量部に対して50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましい。
バンドル化液が有機バインダーを含む場合、繊維束の形状を保持する観点からは、有機バインダー使用量は、繊維100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく1質量部以上がより好ましい。繊維束の形状を保持する観点からは、有機バインダー使用量は、繊維100質量部に対して20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
各工程の詳細を以下に説明する。
【0020】
(i)混合工程
混合工程では、繊維および他の原料を混ぜて繊維混合物を得ることができる。混合工程では一般的な解繊機を用いることができるが、限定するものではない。一例では、ヘンシェルミキサーのような撹拌造粒機に繊維と液体成分以外の原料を投入し、ドライ状態で撹拌して混合することもできる。この方法は、生成する繊維混合物を撹拌造粒機から取り出すことなく、次のバンドル化工程に進むことができる利点がある。混合工程を省略してバンドル化工程を進めてもよい。バンドル化液の構成成分をそれぞれ(i)混合工程で混合してバンドル化液としてもよいし、別途バンドル化液として準備してもよい。
【0021】
(ii)バンドル化工程
バンドル化工程では、混合工程で得た繊維混合物をさらに撹拌することで繊維束を形成する。繊維混合物を構成する繊維は、バンドル化液に含まれる液体成分の表面張力に基づく毛細管力によって凝集し、液体成分を含有する繊維束を形成する。
繊維の長さ維持の程度としては、繊維束の均一性が高まることから、原料繊維の平均繊維長Xに対する繊維束の繊維の平均繊維長Yの比(Y/X)が0.55以上であることが好ましく、0.70以上であることがより好ましく、0.80以上であることが更に好ましく、0.90以上であることが特に好ましい。この比(Y/X)は、1以下とすることができる。
【0022】
以下に(i)混合工程や(ii)バンドル化工程に好適に用いられる撹拌造粒機について、図1を参照して説明する。撹拌造粒機は、図1(a)に示されるように、有底円筒形状の撹拌槽1内部の中心軸上に回転軸2を有し、この回転軸2から、複数枚(図1(a)では3枚)のプロペラ状の撹拌翼が均等間隔で放射状に延在するものが好ましい。回転軸に垂直な円盤状の撹拌翼であってもよい。起伏および突起のある円盤でもよい。撹拌翼3は、図1(b)に示すように、撹拌槽1の底面1Aに対して回転方向に傾斜して設けられている。回転方向Rに対して後面となる面3Aと撹拌槽1の底面1Aとの挟角(以下単に「傾斜角」と称す場合がある。)θは1~60゜の範囲であることが好ましい。撹拌翼3の傾斜角θが1゜以上であれば、繊維混合物を撹拌槽内で循環させながら撹拌することが可能である。撹拌翼3の傾斜角θが60゜以下であれば、撹拌翼への抵抗を抑えて装置に負荷がかからない範囲で回転速度を調整することが可能である。傾斜角θは10~50゜であることがより好ましく、20~40゜であることが更に好ましい。
図1(a)では、撹拌翼3がその長手方向の中ほどにおいて、角度αで屈曲している。撹拌翼はこのように屈曲したものに限らず、直線的な板状のものがあってもよい。撹拌翼は円弧状に屈曲したものであってもよい。
撹拌造粒機には、撹拌槽壁面に補助的な撹拌を行うためのプロペラ補助撹拌翼(チョッパー)が設けられていてもよい。撹拌造粒機の撹拌槽は、底面または側面にスクレーパーを備えるものであってもよい。撹拌槽は、撹拌翼として水平方向に回転する撹拌翼(アジテーター)と垂直方向に回転するプロペラ補助撹拌翼(チョッパー)とを有するものを用い、水平方向に回転する撹拌翼と垂直方向に回転するプロペラ補助撹拌翼とで撹拌することで、効率的な撹拌造粒を行うことができる。垂直方向に回転する補助撹拌翼は大きくなりすぎた造粒物を砕き、繊維束の大きさを均一にする役割がある。
撹拌造粒機における撹拌翼の回転条件は、撹拌翼先端(図1(a)の3a部)の周速(以下、単に「周速」と称す。)が1~20m/秒の範囲となるようにすることが好ましい。周速が1m/秒以上であれば、繊維混合物を撹拌槽内で循環させながら撹拌することが可能である。周速が20m/秒以下であれば、繊維束の形状を均一にすることが可能である。撹拌翼の周速は4~12m/秒であることがより好ましく、4~8m/秒であることが更に好ましい。チョッパーの周速は、5~30m/秒の範囲となるようにすることが好ましい。
【0023】
以下に繊維束の製造方法に好適に用いられる別の態様の撹拌造粒機について、図2を参照して説明する。
転動撹拌造粒機の一態様は、図2に示されるように、原料繊維およびバンドル化液を内部に収納して回転可能な容器40と、容器40の内部で且つ容器40の中心軸線41より偏心した位置に、中心軸線41と平行な回転軸部42とが配置されている。回転軸部42は、容器40の回転方向と逆方向に回転可能であることが好ましい。逆方向に回転することにより、撹拌翼と原料繊維との衝撃力が増し、強いせん断により短時間で繊維を引き揃えることが可能である。回転軸部42の回転方向は容器40と同一方向であってもよい。
撹拌翼の回転方向が容器の回転方向と逆方向である場合、繊維束に含まれるフィラメント数が少なく、繊維束に含まれるフィラメント数や形状の分布が均一になる傾向がある。容器の回転方向と同一方向である場合、繊維束1つに含まれるフィラメント数が多く、繊維がまとまりやすい傾向がある。
撹拌翼の回転方向が容器の回転方向と逆方向となるように撹拌した後、撹拌翼の回転方向が容器の回転方向と同一方向となるように撹拌すると、フィラメント数が少なく均一な分布の繊維束同士の液架橋が進むと考えられる。これにより、均一、且つ嵩密度の高い繊維束を得ることができる。
回転軸部42は、容器40の底板43の近傍まで延びて、繊維混合物が存在できる領域内で運動する撹拌翼44を有する。容器40の回転により繊維混合物を循環し、撹拌翼44の回転により繊維混合物にせん断を与えて繊維を引き揃えることが可能である。撹拌翼44の羽根は、撹拌造粒機で説明した態様が適用できる。例えば、撹拌翼44の底面49と撹拌槽の底板43との距離を10mm以上としてスクレーパーにより掻き上げられた原料に撹拌翼を効率よく接触させるように構成してもよい。撹拌翼44の先端46と撹拌槽の側面47との距離を10mm以上として、原料のせん断による破損を抑えるように構成してもよい。
容器40の側面にスクレーパー45を具備している。容器40の内部の側面、底面、またはその両方にスクレーパーを具備してもよい。スクレーパー45により付着した原料をかき落とすことができる。
回転条件については、容器40の周速(容器周速)は0.4~1.2m/秒の範囲とすることができる。周速が0.4m/秒以上であれば、繊維混合物を撹拌槽内で循環させながら撹拌することが可能である。一方、周速が1.2m/秒以下であれば、繊維混合物を効率よく撹拌翼やスクレーパーに接触させることができ、処理時間を短くすることが可能である。周速は0.5~1.0m/秒や0.7~0.9m/秒とすることができる。
撹拌翼44の撹拌翼先端の周速(先端周速)は1~30m/秒の範囲とすることができる。先端周速が1m/秒以上であれば、短時間で繊維を引き揃えて繊維束の密度を高めることが可能である。一方、先端周速が30m/秒以下であれば、繊維束の形状を均一にすることが可能である。撹拌翼44の周速は10~20m/秒や1~8m/秒とすることができる。
【0024】
撹拌造粒機による撹拌時間には特に制限はなく、所望の繊維束が得られる時間、撹拌を行えばよい。繊維綿を経由することでバンドル化工程にかける時間を短くすることができる。撹拌するときの温度は特に制限はなく、室温(例えば、5~40℃)で行うことができる。撹拌の影響による容器や繊維混合物の温度上昇は許容される。バンドル化するときには、生成物として束の状態(造粒された状態)を保持する段階で有機バインダーが固形となるように、有機バインダーの融点や軟化点以上の温度で撹拌して、繊維束が生成したところで冷却することもできる。
撹拌条件は、繊維が捲縮した球形のカーボンファイバーボールではなく、引き揃った状態の繊維束が得られるように調整することが好ましい。引き揃った状態の繊維束を得るには、例えば、液体の量を増加する方法、撹拌翼先端の周速を増加する方法、平均繊維長が1mmより大きい原料繊維を用いる方法が挙げられる。
造粒の完了時期は特に制限されないが、粒度分布を特定できる程度に繊維束が形成されている状態を確認できる時期であることが好ましい。
【0025】
(iii)乾燥工程
乾燥工程では、バンドル化工程で形成された繊維束を乾燥することによって、繊維束が含有するバンドル化液に含まれる液体を除去する。液体が乾燥によって蒸発しても、有機バインダーの接着によって、繊維束の形状を維持できる。乾燥は強制乾燥であってもよいし自然乾燥であってもよい。
一例では、撹拌造粒機の撹拌槽内で形成された繊維束を、撹拌槽から取り出すことなく、撹拌槽内で撹拌しながら乾燥することができる。
他の一例では、撹拌造粒機の撹拌槽内で形成された繊維束を撹拌槽から取り出し、別の場所で乾燥してもよい。別の場所は、例えば、熱風乾燥機であってもよいし、あるいは、輸送管の中や搬送ベルトの上であってもよい。
乾燥機を用いる場合は、50~150℃で1~5時間程度行うことができる。乾燥設備としては、例えば、箱型乾燥機、ベルトコンベア乾燥機、トンネル乾燥機、固定タンク撹拌乾燥機、ドラム回転乾燥機、ロータリーキルン、流動層乾燥機、撹拌熱風乾燥機、気流乾燥機、赤外線乾燥機、マイクロ波乾燥機、真空乾燥機が挙げられる。
繊維束を有機バインダーの溶融温度以上に加熱し、溶融温度以下に冷却することで、繊維束を硬くしてフィード効率を向上させることもできる。
【0026】
その他の工程として、分級工程やチョップ工程を経てもよい。
分級工程は、(i)~(iii)のいずれの工程でも導入できるが、(iii)の後に導入することで複数の繊維束の均一性を高めることができる。
分級に用いる篩は、例えば、振動機構と、振動機構に結合された容器と、容器の内部空間を区画する篩網とを備える構成とすることができる。篩網は繊維束を所望の大きさに篩い分けできるように網目形状や目開きを調整する。
繊維束が長球形状の場合には、網目形状は長方形あるいは菱形であることが好ましい。網目形状は、正方形や円形であってもよい。
チョップ工程は、(i)の前に導入することが好ましく、例えばバージン繊維からなる連続繊維束をロータリーカッターを用いて、繊維方向に所定の間隔で切断することによりチョップド繊維束とする。
連続繊維束の束サイズ(束を構成する繊維フィラメントの数)は、例えば10K以上100K以下とすることができる。ここで「K」は1000を表す記号で、例えば、1Kは1000を意味し、10Kは10000を意味する。連続繊維束の束サイズは、生産効率の観点からは、好ましくは24K以上、より好ましくは36K以上、更に好ましくは48K以上である。例えば、24K以上100K以下であってよく、36K以上100K以下であってよく、48K以上100K以下であってよい。
チョップド繊維束の繊維長は、限定するものではないが、例えば3mm以上であり、5mm以上または10mm以上であってもよく、また、例えば60mm以下であり、50mm以下、40mm以下、30mm以下または20mm以下であってもよい。
チョップド繊維束は、水やサイジング剤などを含有する場合には、水やサイジング剤などを溶剤や熱分解によって除去し、乾燥された繊維綿とすることが好ましい。
【0027】
<繊維>
原料繊維は、複数の短尺繊維を含む。効率的にバンドル化できるため繊維綿を用いることが好ましい。繊維綿を用いることで、モノフィラメントに分離されている状態からバンドル化することができるため、効率的に均一な繊維束が得られやすい。
繊維の種類としては、無機繊維や有機繊維がある。無機繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ステンレス繊維等が挙げられる。有機繊維としては、化学繊維、天然繊維が挙げられる。
化学繊維としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリ乳酸繊維等のポリエステル系繊維;ナイロン6繊維、ナイロン66繊維等のポリアミド系繊維;ポリアクリル系繊維;ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン系繊維;ポリフェニレンサルファイド繊維;ポリカーボネート繊維等が挙げられる。天然繊維としては、綿(コットン)、麻、ケナフ、バンブーコットン、バンブーレーヨン、レーヨン等の植物繊維、ウール、シルク等の動物繊維が挙げられる。
これらの繊維のうち、特に繊維強化樹脂組成物としての製造に有用で、比強度及び比弾性率が高い繊維強化樹脂組成物を提供可能であることから、少なくとも炭素繊維を用いることが好ましい。比強度及び比弾性率の観点では、原料繊維に占める炭素繊維の割合は70質量%以上が好ましく、90~100質量%であることがより好ましい。
【0028】
原料繊維は、バージン繊維に限らず、リサイクル繊維であってもよい。図3はリサイクル繊維の形態の例を示す。リサイクル繊維は、モノフィラメントがランダムに重なった繊維綿となっている。図4はバージン繊維の形態の例を示す。バージン繊維は、繊維が引き揃えられた繊維束のかたまりとなっている。
原料繊維には、サイジング剤やFRPのマトリックス樹脂が付着していてもよい。炭素繊維等の原料繊維の樹脂残渣量は、例えば0.01~10%の範囲である。
先に説明した繊維束の製造方法を経ることで、原料繊維がリサイクル繊維を含んでいても、繊維を切断することなく、長さを保ったまま繊維が引き揃っており、サイズが制御された繊維束を製造することができる。リサイクル繊維としては、熱、亜臨界流体または超臨界流体を用いてマトリックスを分解させて得られる繊維や、繊維基材の端材を切断して得られる繊維などが挙げられる。リサイクル繊維は綿状となるまで、マトリックスを完全に除去することができる。除去し切れない樹脂残渣がある場合には、酸化性雰囲気下で熱処理することにより除去してもよい。
繊維束に含まれる繊維は、一部または全てが熱劣化した繊維であってもよい。熱劣化した炭素繊維を例にすると、CFRPの廃材から回収されたリサイクル炭素繊維であり、マトリックス樹脂を熱分解させて除去する過程で熱劣化したものである。
原料繊維は、短尺繊維(不連続繊維)が複数本集合したものであり、綿状であることが好ましい。綿状であることにより、乾燥状態でモノフィラメントに分離されているため、濡れて繊維に一定の配向ができている場合に配向を解すようなエネルギーが不要であり、繊維束のサイズ制御を効率的に実行し得る。
原料繊維には、引き揃っている繊維群が含まれてもよいが、例えば原料の50質量%以上は繊維綿であることが好ましい。
短尺繊維は、連続した繊維の束を切断して得てもよいし、不連続である形態の繊維を用いてもよい。連続した繊維は、トウでもよいし、プリプレグや成形体等から取り出した繊維であってもよい。例えば、熱によりマトリックスを分解させて得られるリサイクル繊維は、加熱直後は乾燥した綿状の繊維の状態である。撹拌造粒機を使用することで、繊維リサイクルの工程から繊維の形態を変更することなく繊維が引き揃った繊維束を得ることができる。
撹拌造粒機等で撹拌する前に原料繊維を解繊してもよい。例えば、繊維処理剤を撹拌槽に投入する前に、撹拌槽内で液体を含まない繊維を撹拌翼によって撹拌することで原料繊維を解繊する。撹拌翼の回転による作用で樹脂炭化物などの付着物で結合した繊維を解してより小さい単位の繊維とすることで、繊維処理剤を加えた後の撹拌翼による撹拌で繊維を引き揃えやすくできる。同時に、繊維束の均一性を向上させることができる。
【0029】
原料繊維の繊維径については特に制限はないが、例えば3μm~100μmの範囲であり、炭素繊維の場合、5μm~15μmが入手しやすい。原料繊維の嵩密度は、例えば0.01~0.90g/cmの範囲である。原料繊維の嵩密度が0.01~0.10g/cmであれば、原料繊維より嵩密度が大きい繊維束に変換しやすい。例えば、0.01~0.10g/cmの範囲のものは繊維綿が挙げられる。
原料繊維の繊維長は、均一にバンドル化する観点からは、好ましくは100mm以下、より好ましくは60mm以下、更に好ましくは50mm以下であり、20mm以下や12mm以下であってもよい。
繊維束に含まれる繊維長は、成形体に用いた場合の強度の観点から、好ましくは1mm以上であり、より好ましくは2mm以上である。繊維が繊維長1mm未満の繊維を含有しないか、5wt%未満の含有量で含有してもよい。
押出成形に用いる繊維強化樹脂組成物(ペレット)に使用する場合、原料繊維の平均繊維長は2~12mmであることが好ましい。
プレス成形に用いる繊維強化樹脂材料(プリプレグ)に使用する場合、原料繊維の平均繊維長は12~50mmであることが好ましく、プリプレグ製造時に繊維束を散布して均一に堆積させやすくする観点から12~30mmであることがより好ましい。
原料繊維の繊維長が上記下限以上であれば、繊維強化樹脂組成物の強度を十分に高めることができ、かつ、繊維配向を高度に制御することが可能である。原料繊維の平均繊維長が上記上限以下であれば、繊維束を製造する際の装置への絡まりを抑えて生産効率を高めることができ、かつ、繊維束の形状を均一に制御することが可能である。
平均繊維長は、加重平均繊維長を採用する。平均繊維長は、後述の実施例の項に記載の方法で測定することができる。顕微鏡観察により撮影した画像をimageJなどの画像処理ソフトを用いて2値化処理を行い、平均繊維長を算出することもできる。
【0030】
<有機バインダー>
有機バインダーは、繊維同士を互いに結着させることができる有機物であれば特に制限されない。有機バインダーの材料の好適例は、市販されている一般的な繊維束でサイジングに使用されている樹脂である。言い換えれば、サイジング剤の成分樹脂といってもよい。
サイジング剤の成分樹脂としては、未ケン化のポリ酢酸ビニル、部分ケン化PVA、完全ケン化PVA、変性PVA(イタコン酸変性、フタール酸変性、アクリル酸変性等)等のポリビニルアルコール(PVA);酢酸ビニルとエチレン、マレイン酸、クロトン酸、またはアクリル酸との共重合体;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;コーンスターチ、可溶性澱粉等の澱粉誘導体;ポリアクリル酸ソータ、ポリアクリルアマイド等のアクリル系重合体;ゴムラテックス、エポキシ樹脂、ポリウレタンが挙げられる。
有機バインダーの例としては、ABS樹脂、塩化ビニリデン系ラテックス、塩化ビニル樹脂、ブタジエン樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール、ナイロン6,ナイロン66等のポリアミド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリサルホン、ポリビニルエーテル、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン、(メタ)アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂、概熱可塑性樹脂の共重合体、該熱可塑性樹脂の前駆体および単量体、該熱可塑性樹脂の変性物;エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、メラミン樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性樹脂、該熱硬化性樹脂の共重合体、該熱硬化性樹脂の前駆体および単量体、該熱硬化性樹脂の変性物;スチレン・ブタジエンラテックス、ブタジエンラテックス、ネオプレン・ブタジエンラテックス、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム等の合成ゴム挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機バインダーは、混合のしやすさと繊維強化樹脂組成物に用いた場合の繊維との接着性の観点から、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン樹脂の群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
有機バインダーには上記の樹脂に加えて、界面活性剤が配合されてもよい。界面活性剤としては、例えば、アルキルエーテルカルボン酸塩等の陰イオン界面活性剤、脂肪族4級アンモニウム塩、イミダゾリニウム塩等の陽イオン界面活性剤、カルボキンベタイン型等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0031】
<液体>
液体を用いることにより繊維同士の液架橋を形成し、バンドル化することができる。室温で繊維同士の液架橋を形成することができる観点から、室温(25℃)において液体であることが好ましい。
液体としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンセン、トルエン、スチレン等の炭化水素類等の有機溶媒、および水が挙げられる。製造過程で防爆設備が不要となる観点からは、水が好ましい。
【0032】
[繊維束]
先に説明した製造方法により得られた繊維束は、複数の短尺繊維と、有機バインダーを製造に使用する場合には有機バインダーとを含み、長球形状またはストランド形状を有することが好ましい。繊維束中の短尺繊維は、引き揃えられて繊維束を形成していることが好ましい。また繊維束の表面に存在する繊維は、長球形状の輪郭に沿って湾曲して配向していることが好ましい。
先に説明した繊維束の製造方法によれば、複数の短尺繊維が束をなすように凝集することによって繊維束が形成されるため、繊維束を構成する繊維の先端の位置が不揃いとなる。
射出成形やペレットの原料に用いる場合の繊維束の形状は、混練機へのフィード効率の観点から長球形状が好ましい。SMCに用いる場合の繊維束の形状は、成形体としたときの強度の観点からストランド形状が好ましい。繊維束に含まれる短尺繊維の繊維長が長いほどストランド形状になりやすい。
【0033】
繊維束の長さは、3mm以上、6mm以上、12mm以上、20mm以上、50mm以上、70mm以上であり得る。繊維束の長さは、100mm以下、70mm以下、50mm以下、40mm以下、25mm以下、12mm以下、6mm以下であり得る。
繊維束の長さは、実施例に記載の方法で求めることができる。
繊維束を射出成形やペレットの原料に用いる場合の繊維束の長さは、3mm~12mmであることが好ましい。
繊維束をプレス成形やSMCの原料に用いる場合の繊維束の長さは、12mm以上50mm以下であることが好ましい。
繊維束の最も太い部分の直径は、0.1mm~10mmとすることができ、断面形状は、例えば、円形、楕円形等であってよい。
成形体としたときの強度の観点から、繊維束の長さは、繊維束中の短尺繊維の平均繊維長より長いことが好ましい。
繊維束の長さと繊維束に含まれる短尺繊維の平均繊維長の比(繊維束の長さ/繊維束に含まれる短尺繊維の平均繊維長)は、フィード効率の観点から、1.1~5.0が好ましい。特にフィーダーがホッパーを備えたスクリューフィーダーのときに、供給口に詰まることなく一定量を安定的に供給しやすいことから、1.1~2.5がより好ましい。
繊維束が長球形状の場合、最も太い部分の直径が2mm~7mmであることが好ましい。
また繊維束の長軸(繊維束の長さとしてもよい)の長さは繊維束に含まれる短尺繊維の平均繊維長より長く、3mm~18mmであることが好ましい。その比(繊維束の長軸の長さ/繊維束に含まれる短尺繊維の平均繊維長)は1.1~5.0であることが好ましい。
SMCに用いる場合の繊維束の形状は、ストランド状の場合、最も太い部分の直径が2mm~10mmであることが好ましい。
また繊維束の長軸の長さは繊維束に含まれる短尺繊維の平均繊維長より長く、12mm~150mmであることが好ましい。その比(繊維束の長軸の長さ/平均繊維長)は1.1~3.0、であることが好ましい。
【0034】
繊維束に含まれる短尺繊維は、成形体の補強材等として機能する。
繊維束に含まれるフィラメント数は、例えば8000以上800000以下とすることができる。
繊維束の長軸の中心部の方が長軸の末端部よりフィラメント数が多いことで長球形状をなすことができる。
【0035】
繊維束に含まれる全ての短尺繊維において、成形時の流動性の観点から、繊維長は好ましくは60mm以下、より好ましくは40mm以下、更に好ましくは30mm以下であり、20mm以下や12mm以下であってもよい。繊維束に含まれる繊維長は、成形体に用いた場合の強度の観点から、好ましくは1mm以上であり、より好ましくは2mm以上である。繊維が繊維長1mm未満の繊維を含有しないか、5wt%未満の含有量で含有してもよい。
均一にバンドル化する観点からは、平均繊維長は1~80mmであることが好ましく、2~50mmであることがより好ましい。
短尺繊維の平均繊維長は、押出成形に用いる繊維強化樹脂組成物(ペレット)に使用する場合は2~12mmであることが好ましい。
短尺繊維の平均繊維長は、プレス成形に用いる繊維強化樹脂組成物(プリプレグ)に使用する場合は12~50mmであることが好ましい。
平均繊維長は、加重平均繊維長を採用する。顕微鏡観察により撮影した画像をImageJなどの画像処理ソフトを用いて2値化処理を行い、繊維長を算出することもできる。
繊維束を同等の繊維長を有する繊維のみから構成することで、製造ロット間での繊維束の品質のバラツキを抑えることができる。
繊維束を構成する複数の短尺繊維間において、繊維長の最大値と最小値の差は好ましくは5mm以内、より好ましくは4mm以内、更に好ましくは3mm以内である。
【0036】
繊維束の嵩密度は、例えば0.03~0.7g/cmとすることができる。用いた原料繊維により異なるが、繊維束の輸送効率の観点から、嵩密度は0.1g/cm以上が好ましく、0.2g/cm以上が特に好ましい。繊維含有量が少ない成形体の用途であれば、嵩密度は、0.1g/cm以上0.3g/cm未満としてもよい。強度が求められる成形体の用途であれば、嵩密度は、0.3g/cm~0.6g/cmとしてもよい。一度にフィードできる量を増加可能であることから、いずれの場合であっても、嵩密度は0.15g/cm以上が好ましく、0.2g/cm以上が特に好ましい。
繊維束の嵩密度は、JISZ2512およびJISR1628に準じて測定される。
繊維束の安息角は、60°以下が好ましく、50°以下がより好ましい。繊維束の安息角は、10°以上とすることができる。
繊維束の安息角は、φ95mmの水平に保持された円板上に高さ100mmの位置から繊維束200gを自然落下させ、10秒経過した後の繊維束の堆積高さを計測し、円板の半径をR、堆積高さをTとして、安息角θ=tan-1(T/R)で求めることができる。
【0037】
繊維の種類としては、先に<繊維>で説明した繊維を適用することができる。比強度および比弾性率の観点では、繊維束中の全繊維に占める炭素繊維の質量含有率は70質量%以上が好ましく、70~100質量%であることがより好ましく、90~100質量%であることが更に好ましい。
【0038】
有機バインダーは、先に<有機バインダー>で説明した有機バインダーを適用することができる。有機バインダーを含有することで繊維同士を結着し、繊維束製造の形状を保持できる。
【0039】
繊維束中の繊維の質量含有率は、例えば10~99質量%とすることができる。繊維束中の繊維の体積含有率は、例えば、7~99体積%とすることができる。
ペレット製造に使用する場合は、繊維束中の繊維質量含有率は、例えば80~99質量%とすることができる。
繊維束をそのまま成形型等に投入して成形に利用する場合は、繊維束中の繊維質量含有率は、例えば10~70質量%とすることができる。
繊維束中の有機バインダーの質量含有率は、例えば0.1~90質量%とすることができ、繊維束の形状を保持する観点から、0.5~20質量%が好ましい。
繊維束中の液体の質量含有率は、例えば5質量%以下や、1質量%以下とすることができ、繊維束が液体を含まないように乾燥してもよい。
繊維束の水分含有率(質量)は、成形材料に用いる観点からは5質量%以下や1質量%以下とすることが好ましい。
【0040】
[用途]
先に説明した繊維束の製造方法により製造された繊維束、特に炭素繊維繊維束は、強化繊維として、各種のプリプレグ(ランダム、一方向)、ペレット、スタンパブルシートなどの繊維強化樹脂組成物や成形材料に用いることができる。
繊維束を、成形するための中間材料として用いる場合、繊維束を複数、互いに融着させてなる成形体とすることができる。
繊維束を、ペレットに含まれる繊維材料として用いる場合、繊維束を複数、溶融混錬させることによりペレットが製造できる。
ペレットの製造方法としては、例えば、複数の繊維束を樹脂などの他の成分を添加することなくそのまま溶融混錬する方法、熱可塑性樹脂および繊維束をドライブレンドした後に溶融混練する方法、溶融状態の熱可塑性樹に繊維束を供給して混練する方法等が挙げられる。
溶融混練は、単軸押出機、二軸押出機等の押出機を用いる。押出機に取り付けられるホッパーに先に説明した繊維束を投入することでホッパーからニーディングゾーンへ繊維束がフィードされるときに、繊維のブリッジを抑制することができる利点を有する。
繊維束はペレットのように、射出成形の原料として直接用いることもできる。
【実施例0041】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0042】
[撹拌造粒機]
以下の実施例および比較例において、図2に示すような転動撹拌造粒機を使用した。
【0043】
[測定・評価方法]
各種の測定・評価方法は以下の通りとした。
【0044】
<表面張力>
バンドル化液の23℃での表面張力を、自動表面張力計(協和界面科学:CBVP-A3、プレート法)を用いて測定した。
【0045】
<粘度ηx、ηy、ηz>
バンドル化液の23℃での粘度を、B型回転粘度計(ブルックフィールド:LVDV-1 Pri、スピンドルS61)を用いて、スピンドルの回転速度を10rpm、50rpm、100rpmにして測定した。10rpmにおける粘度をηy、100rpmにおける粘度をηz、50rpmにおける粘度をηxとした。
【0046】
<繊維束の長さ>
繊維束を白色板上に配置して、白色板と反対の鉛直方向から撮影して得られた画像を画像解析ソフト、ImageJ(Wayne Rasband)を用いて二値化し、繊維束のフェレ径を計測した。60個以上の繊維束のフェレ径を平均し、繊維束の長さとした。
【0047】
<繊維束の嵩密度>
φ50mmの容器に複数の繊維束を100mL入れ、3cmの高さから10回タッピングし繊維集合体を沈着させ、その体積と重量から嵩密度を算出した。JISZ2512およびJISR1628に準じて測定した。
【0048】
<繊維束の長さの標準偏差および変動係数CV>
平均繊維束長と同様の手法で60個以上の繊維束のフェレ径を計測し、フェレ径の平均μと標準偏差σを求めた。下記式の通り、標準偏差σを平均μで除して変動係数CVを求めた。
CV=σ/μ
【0049】
[実施例1]
炭素繊維として、バージン炭素繊維(商品名:パイロフィルチョップドファイバーTR03CM、三菱ケミカル社製、フィラメント数15K、カット長3.1mm、嵩密度0.706g/cm)を用いた。まず、この炭素繊維4200gを撹拌造粒機(商品名:インテンシブミキサーR05T、日本アイリッヒ社製、装置容積:40リットル、ロータタイプ:スター型)に投入し、1分間撹拌して解繊させた。
次いで、水315gと分散液1(商品名:セポルジョンNE205N、ポリアミドエラストマー、住友精化社製、固形分濃度40質量%)315gを混合したバンドル化液1を得た。バンドル化液1の23℃における表面張力および粘度を表1に示す。
バンドル化液1を撹拌造粒機に投入し、撹拌翼280rpm(撹拌翼の周速:4m/秒)、混合パン29rpm(回転容器の周速:0.8m/秒)の速度で6分間撹拌して造粒した。
この造粒物を120℃の箱型乾燥機で2時間乾燥させて、図5に示すような長球形状を有する複数の炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束における平均繊維束の長さ(平均繊維束長)、炭素繊維束の嵩密度、繊維束長の変動係数を表1に示す。
[実施例2]
炭素繊維の量を2000gに変更した以外は、実施例1と同様に開繊させた。
次いで、水150gと分散液2(商品名:セポルジョンG515、オレフィン樹脂エマルジョン、住友精化社製、固形分濃度40質量%)150gを混合したバンドル化液2を得た。バンドル化液2の23℃における表面張力および粘度を表1に示す。
バンドル化液1をバンドル化液2に変更した以外は、実施例1と同様に造粒した。
この造粒物を120℃の箱型乾燥機で2時間乾燥させて、長球形状の複数の炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束における平均繊維束長、炭素繊維束の嵩密度、繊維束長の変動係数を表1に示す。
[実施例3]
実施例1と同様に炭素繊維を開繊させた。
次いで、水140gと分散液3(ポリアミド樹脂乳化物、固形分濃度30質量%)490gを混合したバンドル化液3を得た。バンドル化液3の23℃における表面張力および粘度を表1に示す。
バンドル化液1をバンドル化液3に変更した以外は、実施例1と同様に造粒した。
この造粒物を120℃の箱型乾燥機で2時間乾燥させて、長球形状の複数の炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束における平均繊維束長、炭素繊維束の嵩密度、繊維束長の変動係数を表1に示す。
[比較例1]
実施例1と同様に炭素繊維を開繊させた。
次いで、水を使用せず、分散液4(ポリアミド樹脂乳化物、固形分濃度20質量%)630gからなるバンドル化液4を得た。バンドル化液4の23℃における表面張力および粘度を表1に示す。
バンドル化液1をバンドル化液4に変更した以外は、実施例1と同様に造粒した。
この造粒物を120℃の箱型乾燥機で2時間乾燥させて、ストランド形状の複数の炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束における平均繊維束長、炭素繊維束の嵩密度、繊維束長の変動係数を表1に示す。
[比較例2]
実施例1と同様に炭素繊維を開繊させた。
次いで、水315gと分散液5(ポリアミド樹脂溶液、固形分濃度20質量%)315gを混合したバンドル化液5を得た。バンドル化液5の23℃における表面張力および粘度を表1に示す。
バンドル化液1をバンドル化液5に変更した以外は、実施例1と同様に造粒した。
この造粒物を120℃の箱型乾燥機で2時間乾燥させて、ストランド形状の複数の炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束における平均繊維束長、炭素繊維束の嵩密度、繊維束長の変動係数を表1に示す。
[実施例4]
炭素繊維として、バージン炭素繊維(商品名:パイロフィルチョップドファイバーTR03CM、三菱ケミカル社製、フィラメント数15K、カット長6mm、嵩密度0.706g/cm)2000gを用いた以外は、実施例1と同様に開繊させた。
バンドル化液1をバンドル化液2に変更した以外は、実施例1と同様に造粒した。
この造粒物を120℃の箱型乾燥機で2時間乾燥させて、長球形状の複数の炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束における平均繊維束長、炭素繊維束の嵩密度、繊維束長の変動係数を表1に示す。
[実施例5]
実施例4と同様に炭素繊維を開繊させた。
次いで、水150gと分散液6(商品名:エポクロス2035E、ポリマーエマルジョン、日本触媒社製、固形分濃度40質量%)150gを混合したバンドル化液6を得た。バンドル化液6の23℃における表面張力および粘度を表1に示す。
バンドル化液1をバンドル化液6に変更した以外は、実施例1と同様に造粒した。
この造粒物を120℃の箱型乾燥機で2時間乾燥させて、長球形状の複数の炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束における平均繊維束長、炭素繊維束の嵩密度、繊維束長の変動係数を表1に示す。
[実施例6]
実施例4と同様に炭素繊維を開繊させた。
次いで、水150gと分散液7(商品名:フェノールレジンPR-56367、フェノール樹脂溶液、住友ベークライト社製、固形分濃度40質量%)150gを混合したバンドル化液7を得た。バンドル化液7の23℃における表面張力および粘度を表1に示す。
バンドル化液1をバンドル化液7に変更した以外は、実施例1と同様に造粒した。
この造粒物を120℃の箱型乾燥機で2時間乾燥させて、長球形状の複数の炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束における平均繊維束長、炭素繊維束の嵩密度、繊維束長の変動係数を表1に示す。
[比較例3]
炭素繊維の量を3200gに変更した以外は、実施例4と同様に開繊させた。
次いで、水240gと分散液8(商品名:ケミチレンUA-10、ポリウレタンエマルジョン、三洋化成工業社製、固形分濃度40質量%)240gを混合したバンドル化液8を得た。バンドル化液8の23℃における表面張力および粘度を表1に示す。
バンドル化液1をバンドル化液8に変更した以外は、実施例1と同様に造粒した。
この造粒物を120℃の箱型乾燥機で2時間乾燥させて、長球形状の複数の炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束における平均繊維束長、炭素繊維束の嵩密度、繊維束長の変動係数を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1の結果から明らかなように、Rηが1より大きいバンドル化液を用いた実施例1~3は、Rηが1以下であるバンドル化液を用いた比較例1~2と比較して平均繊維束長が短い繊維束が得られた。
繊維長が異なる原料繊維を用いた場合も同様に、Rηが1より大きいバンドル化液を用いた実施例4~6は、Rηが1以下であるバンドル化液を用いた比較例3と比較して平均繊維束長が短い繊維束が得られた。
また、ηx、ηyおよびηzが規定値よりも大きいバンドル化液を用いた実施例1~4は、繊維束長の変動係数CVが小さく、繊維束の形状均一性に優れていた。
【符号の説明】
【0052】
1 撹拌槽
2 回転軸
3 撹拌翼
40 容器
42 回転軸部
44 撹拌翼
45 スクレーパー
図1
図2
図3
図4
図5