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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086666
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】通信用電線
(51)【国際特許分類】
   H01B 11/00 20060101AFI20240620BHJP
   H01B 11/10 20060101ALI20240620BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
H01B11/00 J
H01B11/10
H01B7/18 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023210997
(22)【出願日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2022200425
(32)【優先日】2022-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 清
(72)【発明者】
【氏名】藤松 拓也
(72)【発明者】
【氏名】平岩 徹也
【テーマコード(参考)】
5G313
【Fターム(参考)】
5G313AA10
5G313AB10
5G313AC03
5G313AD07
5G313AE01
5G313AE02
(57)【要約】
【課題】対撚り線を構成する絶縁電線の位置の変動を抑える。
【解決手段】通信用電線は、導体の外周を絶縁体で被覆した絶縁電線を対撚りした対撚り線と、繊維で形成されて前記対撚り線に沿って配置され、絶縁性を有する介在物と、導電性を有し前記対撚り線の外周及び前記介在物を被覆したシールドと、前記シールドの外周を被覆する樹脂で形成されたシースと、を有し、前記介在物は、中心軸方向と直交する断面において、前記シールドより内側で充実し、前記シールドは、中心軸方向に直交する断面が円形状である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体の外周を絶縁体で被覆した絶縁電線を対撚りした対撚り線と、
繊維で形成されて前記対撚り線に沿って配置され、絶縁性を有する介在物と、
導電性を有し前記対撚り線の外周及び前記介在物を被覆したシールドと、
前記シールドの外周を被覆する樹脂で形成されたシースと、
を有し、
前記介在物は、中心軸方向と直交する断面において、前記シールドより内側で充実し、
前記シールドは、中心軸方向に直交する断面が円形状である
通信用電線。
【請求項2】
前記介在物の曲げ弾性率は、前記絶縁体の曲げ弾性率と同等又は前記絶縁体の曲げ弾性率以下である
請求項1に記載の通信用電線。
【請求項3】
中心軸方向に直交する断面において、(前記シールドの内周上の一点から中心を通って反対側の内周上まで引いた線分の長さの最小値/前記シールドの内周上の一点から中心を通って反対側の内周上まで引いた線分の長さの最大値)≧0.9である
請求項1又は請求項2に記載の通信用電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信用電線に関する。
【背景技術】
【0002】
通信に用いられるケーブルの発明として、例えば特許文献1、2に開示されたツイストペア電線がある。特許文献1に記載されているツイストペア電線は、2本のコア線がツイストしてジャケット内に配置され、柔軟性を有する合成樹脂で形成されて断面が台形である介在物がコア線とジャケットとの間に介在している。特許文献2に開示されたジャンパ線は、絶縁電線の周囲にガラス繊維の介在物が介在し、介在物を押さえる押さえテープの外周にシールド層が設けられ、シールド層の外周にシースを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-77943号公報
【特許文献2】特開2017-33738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高速通信用のケーブルにおいては、例えば差動伝送路の特性インピーダンスである差動特性インピーダンスが悪化した場合、信号の反射が発生し、これにより所定の強度の信号伝送がなされないことがある。このため、差動特性インピーダンスは所定の公差内に収め、かつ極力変動が少ないことが望ましい。特許文献1に開示されたツイストペア電線では、ジャケットとコア線との間に空隙が形成されている。空隙部分は空気であり、その比誘電率は約1であるが、第1シースの比誘電率との差が比較的大きく、例えば、ツイストペア線を構成する絶縁電線の微小な位置の変動により、絶縁電線周囲の比誘電率が変動して差動特性インピーダンスに影響が出る虞がある。特許文献2に開示されたジャンパ線は、押さえテープの内側にガラス繊維の介在物が充実しているが、ガラス繊維の曲げ弾性率は絶縁電線の絶縁体よりも一般的に大きいため、例えばジャンパ線を屈曲させた場合、曲げに対する変形の挙動が絶縁電線とガラス繊維製の介在では異なることとなる。このため、介在物の断面形状が変形すると、絶縁電線の側面に介在物から圧力が加わり、ジャンパ線の径方向で絶縁電線の位置が変化し、差動特性インピーダンスに影響が出る虞がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、対撚り線を構成する絶縁電線の位置の変動を抑える技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る通信用電線は、導体の外周を絶縁体で被覆した絶縁電線を対撚りした対撚り線と、繊維で形成されて前記対撚り線に沿って配置され、絶縁性を有する介在物と、導電性を有し前記対撚り線の外周及び前記介在物を被覆したシールドと、前記シールドの外周を被覆する樹脂で形成されたシースと、を有し、前記介在物は、中心軸方向と直交する断面において、前記シールドより内側で充実し、前記シールドは、中心軸方向に直交する断面が円形状である。
【0007】
本発明の一態様に係る通信用電線においては、前記介在物の曲げ弾性率は、前記絶縁体の曲げ弾性率と同等又は前記絶縁体の曲げ弾性率以下であってもよい。
【0008】
本発明の一態様に係る通信用電線においては、中心軸方向に直交する断面において、(前記シールドの内周上の一点から中心を通って反対側の内周上まで引いた線分の長さの最小値/前記シールドの内周上の一点から中心を通って反対側の内周上まで引いた線分の長さの最大値)≧0.9であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、対撚り線を構成する絶縁電線の位置の変動を抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る通信用電線の断面図である。
図2図2は、通信用電線の構成を示す図である。
図3図3は、差動特性インピーダンスの測定結果の一例を示す図である。
図4図4は、変形例に係る複合ケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る通信用電線1の断面図である。通信用電線1の差動特性インピーダンスは、100Ω±5%の範囲であるのが好ましい。通信用電線1は、例えば自動車に配索され、配索された自動車においてイーサネット(登録商標)の規格に従った通信に用いられる。
【0013】
通信用電線1は、絶縁電線11A、絶縁電線11B、介在物12、シールド13及びシース14で構成されている。絶縁電線11Aと絶縁電線11Bは、対撚りされて対撚り線2を構成している。対撚り線2と介在物12は、シールド13で被覆されている。また、シールド13の外周は、シース14で被覆されている。
【0014】
(絶縁電線)
絶縁電線11Aと絶縁電線11Bは、導体111と絶縁被覆112で構成されている。導体111は、S撚りされた7本の素線1111で構成されている。導体111は、S撚りされた素線1111を圧縮して形成された圧縮導体であってもよい。また、導体111には必要に応じて焼鈍した導体を使用してもよい。なお、導体111は、S撚りではなくZ撚りであってもよい。導体111は、撚線の一例である。なお、撚線である導体111を構成する素線1111の本数は、7本に限定されるものではなく、他の本数であってもよい。また、導体111は、撚られたものではなく単線であってもよい。
【0015】
素線1111は、軟銅又は銅合金で形成されている。素線1111の材質は、対撚り線2の形成に際して、反力が小さく撚り合わせのピッチの変動が生じにくい軟銅が好ましい。素線1111に対しては、錫めっき等のめっき処理を施してもよい。
【0016】
絶縁被覆112は、誘電率が低い樹脂であるのが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリプロピレン、EVA(エチレン酢酸ビニル)又はフッ素樹脂であるのが好ましい。本実施例では、絶縁被覆112は、ポリプロピレンをベースとし、難燃剤や酸化防止材を添加したハロゲンフリー材で形成されている。絶縁被覆112の厚さは、通信用電線1の差動特性インピーダンスが100Ω±5%となるように形成される。絶縁被覆112の硬さについては、通信用電線1が自動車に配索されて温度が上昇したときに塑性変形を起こさない程度の硬さであるのが好ましい。なお、絶縁電線11Bは、絶縁電線11Aと同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0017】
(対撚り線)
図2は、通信用電線1の構成を示す図である。対撚り線2は、絶縁電線11Aと絶縁電線11Bをダブルツイストバンチャー型の撚線機で対撚りした撚線である。本実施形態では、対撚り線2は、絶縁電線11Aと絶縁電線11BがZ撚りで撚られており、撚り方向がS撚りである導体111とは撚り方向が逆となっている。なお、導体111の撚り方向がZ撚りである場合、絶縁電線11Aと絶縁電線11BはS撚りとしてもよい。また、導体111の撚り方向と対撚り線2の撚り方向は、逆方向であるのが好ましいが、同じ方向であってもよい。
【0018】
ところで、絶縁電線11Aと絶縁電線11Bとを撚り合わせる場合、単に撚り合わせると絶縁電線11Aと絶縁電線11Bのそれぞれが捻じれた状態で撚り合わされてしまい、この捻じれが撚りを解く力が働くため、対撚り線2がばらけやすくなる。
【0019】
したがって本実施形態では、絶縁電線11Aと絶縁電線11Bとを撚り合わせながら、その撚り合わせの回転方向とは逆の回転方向(すなわち、撚り合わせによる絶縁電線11Aの捻じれと絶縁電線11Bの捻じれを緩和する回転方向)に、絶縁電線11Aと絶縁電線11Bのそれぞれをひねって回転させるという、いわゆる撚り返しを施して、捻じれを防止している。
【0020】
ここで、撚り合わせの回転角Xと撚り返しの回転角Yとの比Y/Xを、撚り返し率と称する。すなわち絶縁電線11Aと絶縁電線11Bに撚り返しが全く施されておらず、絶縁電線11Aと絶縁電線11Bが捩じれたままの状態では、撚り返し率の値は0%であり、撚り返しが施され、絶縁電線11A自体の捻じれと絶縁電線11B自体の捩じれが全くない状態では撚り返し率の値は100%である。本実施形態では、対撚り線2の撚り返し率は、100%としている。撚り返し率を100%とすることにより、絶縁電線11Aと絶縁電線11Bがばらけにくくなっている。なお、撚り返し率の値は100%に限定されるものではなく、100%±10%の範囲であればよい。
【0021】
(介在物)
介在物12は、対撚り線2の保護や対撚り線2の対撚りの安定化、対撚り線2と周囲環境との距離の確保、通信用電線1の断面形状の安定化、シールド13とシース14の外周の形状の維持に寄与するものである。介在物12は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンテレフタレート等の絶縁性を有する合成樹脂からなるヤーンである。なお、介在物12は、絶縁性を有する綿糸又は麻糸で形成されていてもよい。介在物12は、介在物12の外側に位置するシールド13とシース14の外周の形状を円形に維持する。介在物12は、通信用電線1の中心軸方向と直交する断面において、対撚り線2とシールド13との間で空間が生じないよう充実している。介在物12は、曲げ弾性率が絶縁被覆112の曲げ弾性率と同等又は絶縁被覆112の曲げ弾性率以下であるのが好ましく、絶縁被覆112と材質が同じであるのがより好ましい。シールド13より内側に配置された介在物12によれば、対撚り線2がシールド13より内側で位置決めされるため、絶縁電線11Aと絶縁電線11Bの位置の変動が抑えられ、差動特性インピーダンスの変動を抑制することができる。また、介在物12の曲げ弾性率を絶縁被覆112の曲げ弾性率と同等又は絶縁被覆112の曲げ弾性率以下とすることにより、曲げられても絶縁被覆112から介在物12への圧力が抑えられるため、絶縁電線11Aと絶縁電線11Bの位置の変動が抑えられ、差動特性インピーダンスの変動を抑制することができる。
【0022】
(シールド)
シールド13は、樹脂金属テープを対撚り線2及び介在物12に対してらせん巻きすることにより形成されている。樹脂金属テープは、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂テープと銅又はアルミニウムなどの導電性を有する金属層とが積層されたテープである。樹脂金属テープは、樹脂テープが対撚り線2及び介在物12に接し、金属層が外側となるようにして対撚り線2及び介在物12に巻かれる。樹脂金属テープは、幅方向の一部が重なるように対撚り線2及び介在物12にらせん状に巻かれるのが好ましいが、らせん状に限定されるものではなく、例えば縦添え巻きであってもよい。なお、シールド13は、導体の素線を筒状に編みこんだ編組により形成されていてもよい。また、シールド13は、細径の複数の導体を隙間が生じないようにらせん巻きとした構成としてもよい。また、シールド13は、ドレイン線であってもよい。ドレイン線は、単線又は撚線であり、例えば、導電性を有するアルミニウム、銅等の金属、又はこれらの金属を含む合金を用いて形成されている。なお、ドレイン線は、めっき処理が施されていてもよい。ドレイン線の本数は、適宜変更することが可能である。
【0023】
(シース)
シース14は、対撚り線2の保護や対撚り線2の対撚りの安定化、対撚り線2と周囲環境との距離の確保に寄与するものである。シース14は、シールド13の外周を被覆している。シース14は、ポリオレフィン、ポリエチレン、又はフッ素樹脂で形成されている。シース14は、通信用電線1の軸方向と直交する断面において、外周の形状が円形である。
【0024】
本実施形態においては、通信用電線1の中心軸方向に直交する断面が円形状であり、シールド13の内周は、内周上の一点から中心を通って反対側の内周まで引いた線分の長さの最小値(c)と最大値(d)について、c/d≧0.9であるのが好ましい。
【0025】
(実施例)
通信用電線1について、介在物12の材質を替えて実施例1、2を作製して差動特性インピーダンスの変動幅を評価した。また、実施例1、2との比較のため、比較例1-3を作製した。表1に実施例1-3及び比較例1-3の構成と評価結果を示す。なお、シース14の材質は、いずれもポリエチレンとし、厚さは0.4mmとした。また、シールド13の厚さは0.05mmとした。
【0026】
実施例1は、導体111のサイズをASTM規格のB258で規定されるAWG(American Wire Gauge)サイズでAWG26(断面積0.13mm相当)とし、絶縁被覆112の外径が0.95mmであり、対撚り線2の対撚りピッチPが9mmである。また、実施例1は、介在物12が直径約0.1mmの繊維を束ねたポリプロピレンのヤーンとなっている。実施例2は、約110テックスの綿糸を束ねたものを介在物12とし、導体111のサイズ、絶縁被覆112の外径、対撚り線2の対撚りピッチPは実施例1と同じである。
【0027】
比較例1は、通信用電線1から介在物12を除いた構成である。比較例1は、導体111のサイズをAWG26(断面積0.13mm相当)とし、絶縁被覆112の外径が1.3mmであり、対撚り線2の対撚りピッチPが9mmである。比較例2は、直径約0.5mmのポリエチレンの紐を介在物12とし、導体111のサイズ、絶縁被覆112の外径、対撚り線2の対撚りピッチPは実施例1と同じである。比較例3は、直径約0.5mmのガラス繊維を介在物12とし、導体111のサイズ、絶縁被覆112の外径、対撚り線2の対撚りピッチPは実施例1と同じである。
【0028】
なお、差動特性インピーダンスの変動幅は、OPEN Allianceで規定された「Channel and Components Requirements for 1000BASE-T1 Link Segment Type A (STP)」に従ってTDR法(Time Domain Reflectometry)により測定した。TDR法は、測定対象にパルス信号を入力し、反射波をオシロスコープにて捉えることによりインピーダンスを測定する方法である。差動特性インピーダンスの測定については、キーサイト・テクノロジー株式会社のE5071C ENAベクトル・ネットワーク・アナライザを用いて測定した。
【0029】
図3は、差動特性インピーダンスの測定結果の一例を示す図である。図3(a)に示すグラフの横軸は反射波が戻るまでの時間であり、縦軸はインピーダンス値である。反射波が戻るまでの時間は、測定対象の長さに依存することから、図3(b)に示すグラフのように横軸を通信用電線1の長さとし、縦軸をインピーダンス値に置き換えた場合、測定対象の任意の位置でのインピーダンス値を知ることができる。例えば、100Mbps以上の伝送速度の高速通信においては、例えば、所定の0.5m~1.5mの長さの範囲で差動特性インピーダンスが100Ω±5%であることが求められる。
【0030】
【表1】

【0031】
表1に示すように、介在物12を備えていない比較例1は、差動特性インピーダンスの変動幅が±9Ωとなっている。また、介在物12がポリエチレンの紐である比較例2と、介在物12がガラス繊維である比較例3は、差動特性インピーダンスの変動幅が±6Ωとなっている。これに対し、実施例1、2は、差動特性インピーダンスの変動幅が±5Ωの範囲内であり、比較例1より差動特性インピーダンスの変動幅が抑えられている。特に介在物12がポリプロピレンのヤーンである実施例1では、差動特性インピーダンスの変動幅が±4Ωであり、実施例2より差動特性インピーダンスの変動幅が抑えられている。また、屈曲させたときの差動特性インピーダンスの変動については、介在物12がガラス繊維である比較例3は大きくなっているが、実施例1、2は変動が小さく抑えられている。
【0032】
通信用電線1を上記実施例の構成とすることで、シールド13の断面形状を略円形に保つことができ、差動特性インピーダンスの変動を抑制することができる。また、通信用電線1を上記実施例の構成とすることで、対撚り線2の周囲の空間が少なくなるため、導体111の周囲の比誘電率の変動の影響が少なく、差動特性インピーダンスの変動を抑制することができる。
【0033】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。上述した各実施形態及び各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0034】
上述した実施形態においては、絶縁被覆112は内部に空間があるパイプ型であるが、導体111との間に空間が生じない充実型であってもよい。
【0035】
上述した実施形態においては、シールド13は通信用電線1の半径方向に1層の構成であるが、二層以上の構成であってもよい。
【0036】
通信用電線1は、自動車以外で例えば移動体における通信に用いられてもよい。
【0037】
通信用電線1は、例えば電力の伝送と光信号の伝送が可能な複合ケーブルに用いられてもよい。図4は、変形例に係る複合ケーブル3の断面図である。複合ケーブル3は、電力の伝送と光信号の伝送が可能なケーブルであり、図4に示すように、少なくとも1本の第1線状体31(図4では2本)、少なくとも1本の第2線状体32(図4では1本)、外被33及び閉鎖部34を有する。外被33は、絶縁性を有する樹脂材料で形成されており、第1線状体31の外周面を被覆し、第1線状体31が埋め込まれている。外被33は、収納部36と隙間35を有する。収納部36は、外被33の内部に長手方向に沿って形成されている断面が円形の空間である。収納部36は、第1線状体31に沿って2本の第1線状体31の間に形成されている。隙間35は、収納部36と外被33の外側とを繋ぐ隙間であり、複合ケーブル3の長手方向に沿って収納部36の上側に形成されている。閉鎖部34は、例えば、一方の面に粘着性を有する帯状のポリ塩化ビニルテープである。閉鎖部34は、隙間35に沿って外被33の上側に貼り付けられ、隙間35の上側(外被33の外面側)を閉鎖する。第1線状体31は、例えば光ファイバ心線である。第2線状体32を通信用電線1Aとした場合、第2線状体32は、外被33を曲げて変形させて隙間35を広げ、広げられて幅が変化した隙間35から収納部36へ挿入される。閉鎖部34は、第2線状体32が収納部36挿入された後に隙間35に沿って外被33に貼り付けられ、隙間35を閉鎖する。第2線状体32の外径と収納部36の内径を略同じ径とした場合、第2線状体32が収納部36に略隙間なく収まるため、第2線状体32が動くのを抑えることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 通信用電線
2 対撚り線
3 複合ケーブル
11A、11B 絶縁電線
12 介在物
13 シールド
14 シース
111 導体
112 絶縁被覆
1111 素線
図1
図2
図3
図4