(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086760
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】多芯ケーブルアッセンブリ
(51)【国際特許分類】
H01B 11/10 20060101AFI20240621BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
H01B11/10
H01B7/00 306
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059345
(22)【出願日】2024-04-02
(62)【分割の表示】P 2022128637の分割
【原出願日】2022-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】矢口 敦郎
(72)【発明者】
【氏名】渡部 考信
(57)【要約】
【課題】複数の絶縁被覆電線を芯線として用いる多芯ケーブルを備えた多芯ケーブルアッセンブリにおいて、絶縁被覆電線の曲がり癖を低減し、端末処理の作業性を向上させる。
【解決手段】医療機器のカテーテルケーブル10として用いられ、複数の絶縁被覆電線2が撚り合わされて電線束20を構成している多芯ケーブルと、電極パッドが設けられる端末部材6と、を備えた多芯ケーブルアッセンブリ100であって、絶縁被覆電線2は、導体径が0.010mm以上0.085mm以下の金属導体線21及び金属導体線21を被覆する絶縁層22を有し、かつ長手方向に0.5%以上10.0%以下の伸び率で塑性延伸されており、塑性延伸された絶縁被覆電線2が電極パッド61に電気的に接続されている、多芯ケーブルアッセンブリ。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機器のカテーテルケーブルとして用いられ、複数の絶縁被覆電線が撚り合わされて電線束を構成している多芯ケーブルと、
電極パッドが設けられる端末部材と、
を備えた多芯ケーブルアッセンブリであって、
前記絶縁被覆電線は、
導体径が0.010mm以上0.085mm以下の金属導体線及び当該金属導体線を被覆する絶縁層を有し、かつ長手方向に0.5%以上10.0%以下の伸び率で塑性延伸されており、
該塑性延伸された前記絶縁被覆電線が前記電極パッドに電気的に接続されている、
多芯ケーブルアッセンブリ。
【請求項2】
前記金属導体線は、断面円形状の単線であり、
前記絶縁層は、熱硬化性樹脂からなる、
請求項1に記載の多芯ケーブルアッセンブリ。
【請求項3】
前記電線束の占積率は、70%以上である、
請求項1に記載の多芯ケーブルアッセンブリ。
【請求項4】
前記複数の絶縁被覆電線は、撚り込み率が0.5%以上5.0%以下である、
請求項1に記載の多芯ケーブルアッセンブリ。
【請求項5】
前記複数の絶縁被覆電線の撚り合わせ本数は、8本以上である、
請求項4に記載の多芯ケーブルアッセンブリ。
【請求項6】
前記金属導体線の物性は、引張強さが200MPa以上、かつ破断伸びが25%以上である、
請求項1に記載の多芯ケーブルアッセンブリ。
【請求項7】
前記絶縁被覆電線は、電気信号を伝送する信号線である、
請求項1に記載の多芯ケーブルアッセンブリ。
【請求項8】
前記複数の絶縁被覆電線を一括して覆うシースを有し、
前記複数の絶縁被覆電線が前記シースの端部から延出されている、
請求項1に記載の多芯ケーブルアッセンブリ。
【請求項9】
前記多芯ケーブルは、前記複数の絶縁被覆電線のうち特定の絶縁被覆電線が前記電線束の中心部もしくは外周部に常在しないように撚り合わされている、
請求項1乃至8の何れか1項に記載の多芯ケーブルアッセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の絶縁被覆電線が撚り合わされた多芯ケーブルを備えた多芯ケーブルアッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば医療機器のカテーテルケーブルとして、複数の絶縁被覆電線が撚り合わされた多芯ケーブルが用いられている。本出願人は、このような多芯ケーブルとして、特許文献1及び2に記載のものを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-219115号公報
【特許文献2】特開平10-134649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、医療機器の高度化により、カテーテルケーブルの芯線の本数が多くなる傾向にある一方で、被検者の負担軽減等の観点からケーブル外径の細径化が求められている。このため、芯線として、導体径が例えば0.1mm未満の極細のものが用いられるようになってきている。しかし、このような極細の芯線を用いると、芯線に曲がり癖がつきやすく、ケーブル端部において各芯線が不規則に曲がってしまい、端末処理の作業性が著しく低下してしまう場合があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の絶縁被覆電線を芯線として用いる多芯ケーブルを備えた多芯ケーブルアッセンブリにおいて、絶縁被覆電線の曲がり癖を低減し、以って端末処理の作業性を向上させることが可能な多芯ケーブルアッセンブリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、医療機器のカテーテルケーブルとして用いられ、複数の絶縁被覆電線が撚り合わされて電線束を構成している多芯ケーブルと、電極パッドが設けられる端末部材と、を備えた多芯ケーブルアッセンブリであって、前記絶縁被覆電線は、導体径が0.010mm以上0.085mm以下の金属導体線及び当該金属導体線を被覆する絶縁層を有し、かつ長手方向に0.5%以上10.0%以下の伸び率で塑性延伸されており、該塑性延伸された前記絶縁被覆電線が前記電極パッドに電気的に接続されている、多芯ケーブルアッセンブリを提供する。
【0007】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、上記の多芯ケーブルは、前記複数の絶縁被覆電線のうち特定の絶縁被覆電線が前記電線束の中心部もしくは外周部に常在しないように撚り合わされている、多芯ケーブルアッセンブリを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る多芯ケーブルアッセンブリによれば、複数の絶縁被覆電線の曲がり癖が低減され、多芯ケーブルの端末処理の作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は、本発明の実施の形態に係る多芯ケーブルがカテーテルケーブルとして用いられた多電極カテーテルの使用状態を示す説明図である。(b)は、カテーテルケーブルの断面図である。
【
図2】(a)は、複数の絶縁被覆電線が基板に接続される前のカテーテルケーブルの端部を示す説明図である。(b)は、カテーテルケーブルの複数の絶縁被覆電線が基板に接続された状態を示す説明図である。
【
図3】金属導体線が長手方向に塑性延伸されていない場合のカテーテルケーブルの端部における複数の絶縁被覆電線の一例を比較例として示す説明図である。
【
図4】(a)は、
図3のA部を拡大して示す説明図である。(b)は、(a)のB-B線における絶縁被覆電線の断面図である。
【
図5】複数の絶縁被覆電線を撚り合わせて電線束を製造するための製造装置の構成例を示す説明図である。
【
図6】実施例に係るカテーテルケーブルを示す写真である。
【
図7】塑性延伸されていない複数の絶縁被覆電線、及び複数の絶縁被覆電線の外周に巻き付けられたバインドテープを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
図1(a)は、本発明の実施の形態に係る多芯ケーブルがカテーテルケーブル10として用いられた多電極カテーテル1の使用状態を示す説明図である。この多電極カテーテル1は、本実施の形態に係る多芯ケーブルが用いられた医療器具の一例である。
図1(b)は、カテーテルケーブル10の断面図である。
【0011】
多電極カテーテル1は、カテーテルケーブル10と、医師等のオペレータが操作するハンドル11とを有している。カテーテルケーブル10は、長手方向の一方の端部がハンドル11内に収容され、長手方向の他方の端部が検査や治療の対象者Pの人体内に挿入されている。
図1(a)では、対象者Pの人体内に挿入された部分のカテーテルケーブル10を破線で示している。
【0012】
図1(b)に示すように、カテーテルケーブル10は、複数の絶縁被覆電線2と、複数の絶縁被覆電線2の外周に巻きつけられたバインドテープ3と、バインドテープ3の外周に配置されたシールド導体4と、シールド導体4の外周に配置された管状のシース5とを有している。複数の絶縁被覆電線2は、撚り合わされて電線束20を構成している。絶縁被覆電線2は、電気信号を伝送する信号線である。シース5は、例えばPFA(四フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体)等のフッ素樹脂からなり、バインドテープ3及びシールド導体4と共に複数の絶縁被覆電線2を一括して覆っている。
【0013】
本実施の形態では、カテーテルケーブル10が25本の絶縁被覆電線2を有しており、これらの絶縁被覆電線2のうち特定の絶縁被覆電線2が電線束20の中心部もしくは外周部に常在しないように撚り合わされている。ただし、カテーテルケーブル10における絶縁被覆電線2の本数はこれに限らず、例えば8本以上であればよい。
【0014】
絶縁被覆電線2は、良導電性の金属からなる金属導体線21、及び金属導体線21を被覆する絶縁層22を有している。金属導体線21は、断面円形状の単線であり、例えば銅又は銅合金、もしくはアルミニウム又はアルミニウム合金からなる。より具体的には、無酸素銅や低酸素銅を金属導体線21の材料として好適に用いることができる。金属導体線21の導体径D21は、0.010mm以上0.085mm以下である。
【0015】
絶縁層22は、例えばポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、又はポリイミド等の熱硬化性樹脂からなる。本実施の形態では、絶縁被覆電線2がエナメル線であり、硬化する前の液状の樹脂材料を金属導体線21の外周に塗布した後に加熱によって硬化させることにより、絶縁層22が形成されている。
【0016】
多電極カテーテル1は、ハンドル11から導出されたコンソールケーブル12によって不図示のコンソールに接続されている。コンソールは、マイクロプロセッサやメモリ等を備えた情報処理装置であり、複数の絶縁被覆電線2を介して対象者Pの人体から送られる信号を増幅し、増幅した信号によって得られる対象者Pの体内の状態をディスプレイに表示するための画像信号を出力する。ハンドル11には、複数の絶縁被覆電線2が接続された複数のパッドを有する基板が収容されている。対象者Pの人体から送られる信号は、この基板によって中継され、コンソールケーブル12によってコンソールに送られる。
【0017】
図2(a)は、複数の絶縁被覆電線2がハンドル11内の基板6に接続される前のカテーテルケーブル10のケーブル端部を示す説明図である。
図2(b)は、複数の絶縁被覆電線2が基板6に接続された状態を示す説明図である。
【0018】
基板6は、カテーテルケーブル10の端部において複数の絶縁被覆電線2が接続された端末部材の一態様である。カテーテルケーブル10及び基板6は、多芯ケーブルアッセンブリ100を構成する。カテーテルケーブル10は、その長手方向の端部においてシース5が所定の長さにわたって除去され、複数の絶縁被覆電線2がシース5の端部から延出されている。バインドテープ3及びシールド導体4は、シース5の端部付近で切断されて除去されている。
【0019】
基板6は、FPC(フレキシブルプリント基板)であり、可撓性を有する板状の基材60の表面60aに、複数の電極パッド61、及び複数の電極パッド61のそれぞれから延びる複数の配線パターン62が設けられている。絶縁被覆電線2は、電極パッド61に接続される先端部において絶縁層22が除去されて金属導体線21が露出し、金属導体線21が電極パッド61に電気的に接続されている。電極パッド61は、基材60に対して垂直な方向から見た形状が長方形状であり、その長辺方向に沿って金属導体線21が電極パッド61上に延在する。
【0020】
電極パッド61への金属導体線21の接続作業は、例えば拡大鏡下又は顕微鏡下で、作業者の手作業によって行われる。
図2(b)では、金属導体線21が半田63によって電極パッド61に接続された場合を図示しているが、これに限らず、導電性接着剤によって金属導体線21を電極パッド61に溶接してもよい。また、例えば超音波によって金属導体線21を電極パッド61に溶接してもよい。
【0021】
電極パッド61への金属導体線21の接続作業時には、シース5から延出された絶縁被覆電線2のうねりが少ないことが作業性の観点で望ましい。ここで、「うねり」とは、絶縁被覆電線2に発生している曲がり癖がケーブル端部のシース5を除去することによって解放され、絶縁被覆電線2が不規則に曲がりくねることをいう。絶縁被覆電線2のうねりが大きいと、接続作業時に電極パッド61の長辺方向に沿って金属導体線21を配置することが難しく、隣り合う電極パッド61との短絡等が発生しやすくなってしまう。
【0022】
本実施の形態では、絶縁被覆電線2の曲がり癖を低減し、シース5から延出された部分の絶縁被覆電線2のうねりを抑制するために、複数の絶縁被覆電線2のそれぞれが長手方向に塑性延伸されている。この塑性延伸による絶縁被覆電線2の伸び率は、0.5%以上10.0%以下である。伸び率が0.5%未満であると、絶縁被覆電線2の曲がり癖を低減する効果が小さく、伸び率が10.0%を超えると、金属導体線21に断線が発生しやすくなるためである。絶縁被覆電線2の伸び率は、塑性延伸前の絶縁被覆電線2の単位長さをL1とし、この単位長さL1の部分の塑性延伸後の長さをL2としたとき、L2/L1の演算式により求められる。
【0023】
絶縁被覆電線2を塑性延伸させることにより絶縁被覆電線2の曲がり癖を低減できるとの知見は、本発明者らの実験によって得られたものである。つまり、金属導体線21の導体径が細く、例えば0.1mm以下である場合には、カテーテルケーブル10の製造時に不可避的に発生する引張応力によって金属導体線21の外周面の一部に伸びが生じてしまうと、この伸びが発生した部分が円弧の外周側となるように絶縁被覆電線2が湾曲してしまう。しかし、絶縁被覆電線2の全体を長手方向に塑性延伸させることにより、金属導体線21の外周面の各部における伸びのばらつき度合が小さくなり、絶縁被覆電線2の曲がり癖が低減される。
【0024】
図3は、金属導体線21が長手方向に塑性延伸されていない場合の絶縁被覆電線2の一例を比較例として示す説明図である。
図4(a)は、
図3のA部を拡大して示す説明図である。
図4(b)は、
図4(a)のB-B線における絶縁被覆電線2の断面図である。
図4(a)では、絶縁層22を仮想線で示し、金属導体線21を実線で示している。また、
図4(a)及び(b)では、金属導体線21の一部において引張応力による伸びが発生した部分210をクロスハッチングで示している。
【0025】
図4(a)及び(b)に示すように、金属導体線21の中心軸線C1を中心とする周方向の一部に伸びが発生すると、この伸びが発生した部分210が円弧の外周側となるように絶縁被覆電線2が湾曲してしまう。これに対し、金属導体線21を中心軸線C1に沿って長手方向に塑性延伸させると、中心軸線C1を中心とする周方向の全体が伸び、伸びのばらつき度合が小さくなることによって絶縁被覆電線2の曲がり癖が低減される。
【0026】
本実施の形態では、絶縁被覆電線2を長手方向に0.5%以上10.0%以下の伸び率で塑性延伸させるため、金属導体線21の材料としては、JIS C 3002に準拠した引張強さが200MPa以上、かつ破断伸びが25%以上である物性のものを用いるとよい。このような物性の金属材料を金属導体線21に用いることにより、絶縁被覆電線2を長手方向に塑性延伸しても、金属導体線21に破断等が生じることを防ぐことができる。
【0027】
本実施の形態では、後述するカテーテルケーブル10の製造方法により、複数の絶縁被覆電線2を塑性延伸する。複数の絶縁被覆電線2の望ましい撚り込み率は、0.5%以上5.0%以下である。撚り込み率Kは、絶縁被覆電線2の撚りピッチをPとし、電線束20のピッチダイヤメータをDとしたとき、下記式によって求められる。ここで、ピッチダイヤメータDは、カテーテルケーブル10の長手方向直交断面における電線束20の最外層の複数の絶縁被覆電線2の中心点を通る円(
図1(b)に示す円C2)の直径である。
【数1】
【0028】
また、電線束20の占積率は、一般的な多芯ケーブルの占積率よりも高い、70%以上であることが望ましい。電線束20の占積率が70%以上となるように複数の絶縁被覆電線2を撚り合わせて塑性延伸させることで、適度な塑性伸びを絶縁被覆電線2に生じさせることができる。ここで、占積率は、
図1(b)に示す断面において、電線束20を包含する外接円の面積に対して、複数の絶縁被覆電線2の断面積の総和が占める割合である。
【0029】
なお、絶縁被覆電線2の伸び率は、上記のように塑性延伸の前後の絶縁被覆電線2の長さの違いによって算出することができるが、塑性延伸の前後の絶縁被覆電線2の長さあたりの電気抵抗の違いによっても求めることができる。絶縁被覆電線2が伸ばされることによって金属導体線21の断面積が小さくなり、電気抵抗が増すためである。
【0030】
図5は、複数の絶縁被覆電線2を撚り合わせて電線束20を製造するための製造装置7の構成例を示す説明図である。製造装置7は、複数の絶縁被覆電線2を螺旋状に撚り合わせる撚り線機71と、撚り線機71に供給される複数の絶縁被覆電線2がそれぞれ巻き付けられた複数のサプライリール70と、複数の絶縁被覆電線2が撚り合わされた電線束20を撚り線機71から引き取る引き取り装置72と、撚り線機71と引き取り装置72との間に配置された延線車73と、複数の絶縁被覆電線2が塑性延伸された電線束20を巻き取る巻取機74とを有している。
【0031】
複数の絶縁被覆電線2は、引き取り装置72と延線車73との間で発生する張力によって塑性領域で長手方向に引き延ばされ、撚り合わされた電線束20の状態で巻取機74によって巻き取りドラム75に巻き取られる。その後、電線束20の外周にバインドテープ3を巻き付け、バインドテープ3の外周にシールド導体4を配置し、さらにシールド導体4の外周にシース5を押出成形によって形成することで、カテーテルケーブル10が得られる。絶縁被覆電線2の伸び率は、例えば延線車73の回転抵抗力の増減によって調整可能である。
【0032】
なお、撚り線機71と引き取り装置72との間に延線車73を配置しなくても絶縁被覆電線2を所定の伸び率で塑性延伸することができる場合には、延線車73を省略してもよい。また、延線車73に替えて、撚り線機71に供給される複数の絶縁被覆電線2に張力を付与して塑性延伸させるための複数の延線車を、サプライリール70と撚り線機71との間に配置してもよい。
【0033】
表1は、一実施例に係るカテーテルケーブル10の諸元を示す諸元表である。
【表1】
ここで、塑性延伸されていない複数の絶縁被覆電線2が撚り合わされた場合の電線束20の長さ当たりの1本の金属導体線21の電気抵抗は、塑性延伸前の金属導体線21の電気抵抗に対して撚り込み率に応じた係数(1+撚り込み率(%)÷100)を乗じることにより求められる。絶縁被覆電線2の伸び率(%)は、塑性延伸された複数の絶縁被覆電線2が撚り合わされた場合の1本の金属導体線21の長さあたりの電気抵抗を、塑性延伸されていない複数の絶縁被覆電線2が撚り合わされた場合の1本の金属導体線21の長さあたりの電気抵抗によって除した商から1を引き、さらに100を乗じることにより求められる。
【0034】
図6は、上記の諸元を有する実施例に係るカテーテルケーブル10を示す写真である。
図6では、カテーテルケーブル10の端部のシース5を除去し、シース5の端部から露出したバインドテープ3及びシールド導体4を電線束20から外し、さらに電線束20の先端部における複数の絶縁被覆電線2の撚りをほぐした状態を示している。
【0035】
図7は、塑性延伸されていない複数の絶縁被覆電線8、及び複数の絶縁被覆電線8の外周に巻き付けられたバインドテープ9を示す写真である。複数の絶縁被覆電線8は、バインドテープ9の内側で撚り合わされており、電線束80となっている。電線束80における絶縁被覆電線8の本数は上記の実施例と異なっている。
【0036】
図6と
図7の比較から明らかなように、
図6に示す実施例に係るカテーテルケーブル10では、複数の絶縁被覆電線2のうねりが端末処理の作業上問題とならない程度に十分に抑制されている。
【0037】
(実施の形態の効果)
以上説明した実施の形態によれば、複数の絶縁被覆電線2のそれぞれを長手方向に塑性延伸することによって各絶縁被覆電線2の曲がり癖が低減される。これにより、カテーテルケーブル10の端末処理の作業性が向上する。
【0038】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0039】
[1]金属導体線(21)及び当該金属導体線(21)を被覆する絶縁層(22)を有する複数の絶縁被覆電線(2)を備え、前記複数の絶縁被覆電線(2)が撚り合わされた多芯ケーブル(カテーテルケーブル10)であって、前記複数の絶縁被覆電線(2)のそれぞれが長手方向に0.5%以上10.0%以下の伸び率で塑性延伸されている、多芯ケーブル(10)。
【0040】
[2]前記複数の絶縁被覆電線(2)は、前記金属導体線(21)が断面円形状の単線であり、前記絶縁層(22)が熱硬化性樹脂からなる、上記[1]に記載の多芯ケーブル(10)。
【0041】
[3]前記複数の絶縁被覆電線(2)は、前記金属導体線(21)の導体径が0.010mm以上0.085mm以下である、上記[2]に記載の多芯ケーブル(10)。
【0042】
[4]前記複数の絶縁被覆電線(2)の占積率が70%以上である、上記[1]に記載の多芯ケーブル(10)。
【0043】
[5]前記複数の絶縁被覆電線(2)は、撚り込み率が0.5%以上5.0%以下である、上記[1]に記載の多芯ケーブル(10)。
【0044】
[6]前記複数の絶縁被覆電線(2)の撚り合わせ本数が8本以上である、上記[5]に記載の多芯ケーブル(10)。
【0045】
[7]前記金属導体線(21)の物性が、引張強さが200MPa以上、かつ破断伸びが25%以上である、上記[1]に記載の多芯ケーブル(10)。
【0046】
[8]前記複数の絶縁被覆電線(2)が電気信号を伝送する信号線である、上記[1]に記載の多芯ケーブル(10)。
【0047】
[9]前記複数の絶縁被覆電線(2)を一括して覆うシース(5)を有し、ケーブル端部において前記複数の絶縁被覆電線(2)が前記シース(5)から延出されている、上記[1]に記載の多芯ケーブル(10)。
【0048】
[10]上記[1]乃至[9]の何れかに記載の多芯ケーブル(10)と、前記多芯ケーブル(10)の端部において前記複数の絶縁被覆電線(2)が接続された端末部材(基板6)と、を備えた多芯ケーブルアッセンブリ(100)。
【0049】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0050】
また、本発明は、適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記の実施の形態では、複数の絶縁被覆電線2が接続される端末部材が基板6である場合を例にとって説明したが、端末部材としてコネクタを用いてもよく、IC等の電子部品を用いてもよい。また、本発明の多芯ケーブルは、医療用のカテーテルケーブル10に限らず、様々な用途に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
10…カテーテルケーブル(多芯ケーブル) 100…多芯ケーブルアッセンブリ
2…絶縁被覆電線 21…金属導体線
22…絶縁層 5…シース
6…基板(端末部材)