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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008707
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】作業機械の制御装置及び作業機械
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240112BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20240112BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G05B23/02 H
E02F9/20 M
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110778
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100136353
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 建吾
(72)【発明者】
【氏名】岡田 共史
(72)【発明者】
【氏名】山本 透
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
3C223
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003BA02
2D003BA04
2D003BA06
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB04
2D003FA02
2D015HA03
3C223AA22
3C223BA01
3C223BB17
3C223CC01
3C223EB02
3C223FF22
3C223FF35
3C223GG03
3C223HH02
(57)【要約】
【課題】適切な更新タイミングでモデルを更新することが可能な制御装置を得る。
【解決手段】データ処理部は、前記作業機械を制御するために前記作業機械に入力する入力データと前記作業機械から出力される出力データとの関係を規定するモデルを用いて、目標出力を得るための入力データを算出し、算出した前記入力データを前記作業機械に入力することによって前記作業機械から出力された出力データである第1出力データと、算出した前記入力データを前記モデルに入力することによって前記モデルから出力された出力データである第2出力データとの誤差を算出し、算出した前記誤差が所定のしきい値より大きい場合に前記モデルを前記入力データと前記第1出力データとの関係に応じた新たなモデルに更新する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ処理部を備え、
前記データ処理部は、
前記作業機械を制御するために前記作業機械に入力する入力データと前記作業機械から出力される出力データとの関係を規定するモデルを用いて、目標出力を得るための入力データを算出し、
算出した前記入力データを前記作業機械に入力することによって前記作業機械から出力された出力データである第1出力データと算出した前記入力データを前記モデルに入力することによって前記モデルから出力された出力データである第2出力データとの誤差を算出し、
算出した前記誤差が所定のしきい値より大きい場合に前記モデルを前記入力データと前記第1出力データとの関係に応じた新たなモデルに更新する、
作業機械の制御装置。
【請求項2】
モデル記憶部をさらに備え、
前記データ処理部は、前記モデルを更新する毎に更新後の前記新たなモデルを前記モデル記憶部に記憶させる、請求項1に記載の作業機械の制御装置。
【請求項3】
前記データ処理部は、前記モデル記憶部に蓄積されている複数のモデルを用いて、前記新たなモデルを生成する、請求項2に記載の作業機械の制御装置。
【請求項4】
前記データ処理部はさらに、前記誤差が前記しきい値より大きい場合に、前記しきい値を、前記新たなモデルに対応する新たなしきい値に更新する、請求項1に記載の作業機械の制御装置。
【請求項5】
モデル・しきい値記憶部をさらに備え、
前記データ処理部は、前記モデル及び前記しきい値を更新する毎に更新後の前記新たなモデル及び前記新たなしきい値を前記モデル・しきい値記憶部に記憶させる、請求項4に記載の作業機械の制御装置。
【請求項6】
前記データ処理部は、前記モデル・しきい値記憶部に蓄積されている複数のモデルを用いて、前記新たなモデルを生成する、請求項5に記載の作業機械の制御装置。
【請求項7】
前記第1出力データと前記第2出力データとの誤差に関する情報を表示する表示装置をさらに備える、請求項1~6のいずれか一つに記載の作業機械の制御装置。
【請求項8】
制御装置によって制御される作業機械であって、
前記制御装置は、
前記作業機械を制御するために前記作業機械に入力する入力データと前記作業機械から出力される出力データとの関係を規定するモデルを用いて、目標出力を得るための入力データを算出し、
算出した前記入力データを前記作業機械に入力することによって前記作業機械から出力された出力データである第1出力データと算出した前記入力データを前記モデルに入力することによって前記モデルから出力された出力データである第2出力データとの誤差を算出し、
算出した前記誤差が所定のしきい値より大きい場合に前記モデルを前記入力データと前記第1出力データとの関係に応じた新たなモデルに更新する、
作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の制御装置及び作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
仮想空間のモデルを用いた推定によって実空間の制御対象を高精度に制御するためには、モデルの精度が重要となる。
【0003】
特許文献1には、背景技術に係る作業機械の制御装置が開示されている。当該作業機械の制御装置は、対象物と相互作用する部位を含む作業装置を備える作業機械の自動運転装置であって、取得部、推定部、算出部、演算部、設定部、及び指令値算出部を備える。取得部は、前記部位の実位置を示す実位置データを取得する。推定部は、前記部位に発生する力を示す力データと、前記実位置データと、の関係を前記相互作用の特性を示す第1パラメータを用いて規定する第1モデルに、推定力データを入力することで、推定実位置データを推定する。算出部は、前記推定実位置データ及び前記実位置データの差分と、前記部位の目標位置を示す目標位置データと、の偏差を算出する。演算部は、前記偏差と、前記実位置を前記目標位置に一致させるための前記力データと、の関係を前記第1パラメータを用いて規定する第2モデルに、前記偏差を入力することで前記推定力データを算出する。設定部は、過去に算出された前記第1パラメータに基づいて、前記推定実位置データ及び前記推定力データに対応する第2パラメータを算出し、前記第2パラメータに基づいて前記第1パラメータを設定する。指令値算出部は、前記推定力データから前記作業機械の指令値を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-76454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
制御対象の操業条件の変化、制御対象の周囲の環境条件の変化、又は制御対象の経年劣化等に起因して、モデルと制御対象との特性等の差異が大きくなった場合に、モデルの精度が低下し、さらには制御対象の制御精度が低下する。モデルの精度が低下した場合にモデルを更新することが考えられるが、特許文献1では、モデルを更新する適切なタイミングについては検討されていない。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、適切なタイミングでモデルを更新でき、ひいてはモデルの精度を高精度に維持することが可能な、作業機械の制御装置及び作業機械を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、本発明者は、モデルの精度が低下した場合には制御対象の変化等に応じて適切なタイミングでモデルを更新することにより、モデルの精度を高精度に維持できるとの知見を得て、本発明を想到するに至った。
【0008】
本発明の第1の態様に係る作業機械の制御装置は、データ処理部を備え、前記データ処理部は、前記作業機械を制御するために前記作業機械に入力する入力データと前記作業機械から出力される出力データとの関係を規定するモデルを用いて、目標出力を得るための入力データを算出し、算出した前記入力データを前記作業機械に入力することによって前記作業機械から出力された第1出力データと算出した前記入力データを前記モデルに入力することによって前記モデルから出力された第2出力データとの誤差を算出し、算出した前記誤差が所定のしきい値より大きい場合に前記モデルを前記入力データと前記第1出力データとの関係に応じた新たなモデルに更新する。
【0009】
本態様によれば、第1出力データと第2出力データとの誤差がしきい値より大きくなった適切な更新タイミングでデータ処理部がモデルを更新することにより、モデルを高精度に維持できる。その結果、高精度に維持されたモデルを用いた推定によって、制御対象である作業機械を高精度に制御することが可能となる。
【0010】
本発明の第2の態様に係る作業機械の制御装置は、第1の態様において、モデル記憶部をさらに備え、前記データ処理部は、前記モデルを更新する毎に更新後の前記新たなモデルを前記モデル記憶部に記憶させる。
【0011】
本態様によれば、データ処理部によってモデルが更新される毎に更新後の新たなモデルがモデル記憶部に記憶されるため、更新が繰り返されることによって多くのモデルをモデル記憶部に蓄積することができる。
【0012】
本発明の第3の態様に係る作業機械の制御装置は、第2の態様において、前記データ処理部は、前記モデル記憶部に蓄積されている複数のモデルを用いて、前記新たなモデルを生成する。
【0013】
本態様によれば、データ処理部は、モデル記憶部に蓄積されている複数のモデルを用いて新たなモデルを生成し、モデルを更新する毎に更新後のモデルをモデル記憶部に記憶するため、更新が繰り返されるにつれてより高精度なモデルを生成することが可能となる。
【0014】
本発明の第4の態様に係る作業機械の制御装置は、データ処理部はさらに、前記誤差が前記しきい値より大きい場合に、前記しきい値を、前記新たなモデルに対応する新たなしきい値に更新する。
【0015】
本態様によれば、データ処理部は、モデルの更新とともにしきい値を更新することにより、モデル及びしきい値の更新後、新たなモデルに対応する新たなしきい値を用いて適切な判定を行うことが可能となる。
【0016】
本発明の第5の態様に係る作業機械の制御装置は、第4の態様において、モデル・しきい値記憶部をさらに備え、前記データ処理部は、前記モデル及び前記しきい値を更新する毎に更新後の前記新たなモデル及び前記新たなしきい値を前記モデル・しきい値記憶部に記憶する。
【0017】
本態様によれば、データ処理部によってモデルが更新される毎に更新後の新たなモデル及び新たなしきい値がモデル・しきい値記憶部に記憶されるため、更新が繰り返されることによって多くのモデル及びしきい値をモデル・しきい値記憶部に蓄積することができる。
【0018】
本発明の第6の態様に係る作業機械の制御装置は、第5の態様において、前記データ処理部は、前記モデル・しきい値記憶部に蓄積されている複数のモデルを用いて、前記新たなモデルを生成する。
【0019】
本態様によれば、データ処理部は、モデル・しきい値記憶部に蓄積されている複数のモデルを用いて新たなモデルを生成し、モデルを更新する毎に更新後のモデルをモデル・しきい値記憶部に記憶するため、更新が繰り返されるにつれてより高精度なモデルを生成することが可能となる。
【0020】
本発明の第7の態様に係る作業機械の制御装置は、第1~第6のいずれか一つの態様において、前記第1出力データと前記第2出力データとの誤差に関する情報を表示する表示装置をさらに備える。
【0021】
本態様によれば、第1出力データと第2出力データとの誤差に関する情報を表示装置に表示することにより、作業者、施工管理者、又は、作業機械のオペレータ、管理者、若しくはサービスマン等の作業現場の関係者は、制御対象である作業機械の特性及びその変化等を容易に把握することができる。
【0022】
本発明の第8の態様に係る作業機械は、制御装置によって制御される作業機械であって、前記制御装置は、前記作業機械を制御するために前記作業機械に入力する入力データと前記作業機械から出力される出力データとの関係を規定するモデルを用いて、目標出力を得るための入力データを算出し、算出した前記入力データを前記作業機械に入力することによって前記作業機械から出力された出力データである第1出力データと算出した前記入力データを前記モデルに入力することによって前記モデルから出力された出力データである第2出力データとの誤差を算出し、算出した前記誤差が所定のしきい値より大きい場合に前記モデルを前記入力データと前記第1出力データとの関係に応じた新たなモデルに更新する。
【0023】
本態様によれば、制御装置によって高精度に制御される作業機械を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、適切な更新タイミングでモデルを更新することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】作業システムの構成を示す図である。
図2】制御装置の構成を示す図である。
図3】データ処理部が実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る作業システム1の全体構成を簡略化して示す図である。作業システム1は、作業機械11、制御装置12、及び表示装置13を備えている。作業機械11、制御装置12、及び表示装置13は、専用回線網又は公衆回線網等の任意の通信ネットワーク14を介して相互に通信可能である。
【0028】
作業機械11は、制御装置12による制御対象であり、油圧ショベル等の建設機械等である。但し、作業機械11は建設機械に限らず、また、建設機械は油圧ショベルに限らず、クレーン、解体機、ホイールローダ、又はブルドーザ等であっても良い。本実施形態では、作業機械11が油圧ショベルである場合を例にとり説明する。
【0029】
作業機械11は、アクチュエータ群21、センサ群22、機体コントローラ23、及び通信部24を備えている。アクチュエータ群21は、油圧ショベルが備えるブーム、アーム、及びバケットの各々を駆動するシリンダ等を含む。センサ群22は、ブーム、アーム、及びバケットの各々の回転角度を検出する角度センサ、又は、ブーム、アーム、及びバケットの各々の圧力を検出する圧力センサ等を含む。機体コントローラ23は、マイクロプロセッサ又はマイクロコントローラ等を用いて構成される。通信部24は、IP等の通信ネットワーク14の通信方式に対応した通信モジュールを用いて構成される。
【0030】
制御装置12は、クラウドサーバ等であり、通信ネットワーク14を介して作業機械11を制御可能である。但し、制御装置12は、通信ネットワーク14と作業機械11との間に接続されたエッジコンピュータ等であっても良い。また、制御装置12が有する機能を機体コントローラ23に実装しても良い。
【0031】
制御装置12は、データ処理部31、記憶部32、及び通信部33を備えている。データ処理部31は、CPU等のプロセッサを用いて構成される。記憶部32は、HDD、SSD、又は半導体メモリ等を用いて構成される。記憶部32には、データベース40が格納されている。記憶部32は、モデル記憶部及びモデル・しきい値記憶部として機能する。データベース40は、後述するモデル60及びしきい値のセットを複数セット含む。通信部33は、IP等の通信ネットワーク14の通信方式に対応した通信モジュールを用いて構成される。通信部33は送信部41及び受信部42を有する。
【0032】
表示装置13は、LCD又は有機EL等を用いて構成される。表示装置13は、作業機械11が作業を行う作業現場に設けられた管制室等に配置される。但し、表示装置13は作業機械11の操縦室内に配置されても良い。また、表示装置13は、作業現場の関係者が所持するポータブルの情報端末が備えるディスプレイであっても良い。情報端末には、スマートフォン、タブレット、又はラップトップ型のPC等が含まれる。作業現場の関係者には、作業者、施工管理者、作業機械11のオペレータ、作業機械11を管理する管理者、又は作業機械11をメンテナンスするサービスマン等が含まれる。
【0033】
図2は、制御装置12の構成を簡略化して示す図である。データ処理部31は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体から読み出したプログラムをプロセッサが実行することによって実現される機能として、取得部50、算出部51、推定部52、演算部53、判定部54、更新部55、及び解析部56を備えている。
【0034】
算出部51及び推定部52は、同一のモデル60を保持している。モデル60は、作業機械11の動作を制御するために作業機械11に入力する入力データD2と、入力データD2に基づく作業に応じて作業機械11から出力される出力データD4との関係を規定するモデルである。入力データD2は、アクチュエータ群21の各アクチュエータの駆動量を規定するための掘削力又は掘削軌跡等の作業指令に関するデータである。出力データD4は、センサ群22の各センサによって検出された角度値又は圧力値等の機体データである。
【0035】
算出部51は、モデル予測制御、PID(Proportional-Integral-Differential)制御、又は内部モデル制御等の任意のモデルベースト制御によって、自身が保持しているモデル60を用いて出力データD4に関する目標出力D1を得るための入力データD2を算出する。
【0036】
取得部50は、作業機械11から通信ネットワーク14及び受信部42を介して第1出力データD4を取得する。第1出力データD4は、算出部51によって算出された入力データD2が送信部41から通信ネットワーク14を介して作業機械11に入力されることによって、作業機械11から出力された出力データである。
【0037】
推定部52は、算出部51から入力された入力データD2を、自身が保持しているモデル60に入力することによって、第2出力データD3を推定する。第2出力データD3は、入力データD2をモデル60に入力することによってモデル60から出力された出力データである。
【0038】
演算部53は、取得部50によって取得された第1出力データD4と、推定部52によって推定された第2出力データD3との誤差を算出し、その誤差を示すデータD5を判定部54に入力する。演算部53は、例えば、第1出力データD4から第2出力データD3を減算することによって得られた値の絶対値を、前記誤差として算出する。
【0039】
判定部54は、演算部53によって算出された誤差が所定のしきい値より大きいか否かを判定し、その判定結果を示すデータD6を更新部55に入力する。
【0040】
更新部55は、判定部54によって誤差がしきい値より大きいと判定された場合に、入力データD2及び第1出力データD4に応じた新たなモデル60を生成する。また、更新部55は、新たなモデル60を生成するとともに、新たなモデル60に対応する新たなしきい値を算出する。更新部55は、新たなモデル60及び新たなしきい値を互いに対応付けて記憶部32に記憶する。記憶部32は、新たなモデル60及び新たなしきい値のセットをデータベース40に追加する。更新部55は、算出部51及び推定部52が保持しているモデル60をデータD7によって新たなモデル60に更新し、判定部54が保持しているしきい値をデータD8によって新たなしきい値に更新する。更新部55によるモデル60及びしきい値の更新処理については、後述の実施例で詳細に説明する。
【0041】
解析部56には、入力データD2、第1出力データD4、及び第2出力データD3が入力される。解析部56は、第1出力データD4と第2出力データD3との比較結果を含む情報を示す画像を生成し、その画像の画像データD10を送信部41に入力する。当該比較結果を含む情報には、例えば、第1出力データD4と第2出力データD3との誤差に関する情報が含まれる。送信部41は、入力された画像データD10を、通信ネットワーク14を介して表示装置13に送信する。表示装置13は、受信した画像データD10に基づいて、第1出力データD4と第2出力データD3との比較結果を含む情報を示す画像を表示する。なお、当該画像には、当該比較結果に加えて、作業機械11の現在の環境条件又はその変化を示す情報を含めても良い。また、当該画像には、当該比較結果に加えて、経年劣化等に起因する作業機械11の現在の特性、特性の変化予測、又はメンテナンス時期を示す情報を含めても良い。また、当該画像には、当該比較結果に加えて、作業機械11による作業の進捗状況又は作業計画を示す情報を含めても良い。制御装置12が画像データD10を生成して当該画像データD10を表示装置13に送信することにより、表示装置13は、受信した画像データD10に基づいて画像を表示するだけで良く、誤差の演算等の処理が不要となる。従って、表示装置13の処理負荷を軽減できるため、処理能力にかかわらず様々な表示装置13によって画像を表示することが可能となる。
【0042】
なお、制御装置12は、画像データD10に代えて数値データを表示装置13に送信しても良い。数値データには、画像データD10の生成に使用したデータと同様のデータが含まれる。表示装置13は、受信した数値データに基づいて画像データD10を生成し、当該画像データD10に基づいて画像を表示する。数値データを送信することにより、画像データD10を送信する場合と比較して通信データ量を削減できる。その結果、通信ネットワーク14の通信容量は圧迫されないため、制御装置12と表示装置13との通信が制御装置12と作業機械11との通信の妨げとなる事態を回避できる。
【0043】
図3は、データ処理部31が実行する処理を示すフローチャートである。データ処理部31は、この処理を所定のサンプリング周期で繰り返し実行する。
【0044】
まずステップS1において算出部51は、自身が保持しているモデル60を用いて、出力データD4に関する目標出力D1を得るための入力データD2を算出する。算出部51は、算出した入力データD2を送信部41に入力する。送信部41は、算出部51から入力された入力データD2を、通信ネットワーク14を介して作業機械11に送信する。受信部42は、入力データD2が入力されることによって作業機械11から出力された出力データD4を、通信ネットワーク14を介して受信する。
【0045】
次にステップS2において取得部50は、作業機械11から通信ネットワーク14を介して受信部42が受信した出力データD4を、第1出力データD4として受信部42から取得する。
【0046】
次にステップS3において推定部52は、算出部51から入力された入力データD2を、自身が保持しているモデル60に入力することによって、第2出力データD3を推定する。
【0047】
次にステップS4において演算部53は、取得部50によって取得された第1出力データD4と、推定部52によって推定された第2出力データD3との誤差を算出し、その誤差を示すデータD5を判定部54に入力する。
【0048】
次にステップS5において判定部54は、演算部53によって算出された誤差が、自身が保持している所定のしきい値より大きいか否かを判定し、その判定結果を示すデータD6を更新部55に入力する。
【0049】
誤差がしきい値より大きいと判定部54によって判定された場合(ステップS5:YES)は、次にステップS6において更新部55は、入力データD2及び第1出力データD4に応じた新たなモデル60と、新たなモデル60に対応する新たなしきい値とを算出する。
【0050】
次にステップS7において更新部55は、算出部51及び推定部52が保持しているモデル60をデータD7によって新たなモデル60に更新し、判定部54が保持しているしきい値をデータD8によって新たなしきい値に更新する。また、更新部55は、データD7,D8を記憶部32に入力することにより、新たなモデル60及び新たなしきい値を互いに対応付けて記憶部32に記憶する。記憶部32は、新たなモデル60及び新たなしきい値のセットをデータベース40に追加する。
【0051】
誤差がしきい値以下であると判定部54によって判定された場合(ステップS5:NO)は、ステップS6,S7が実行されることなく処理が終了する。
【0052】
<実施例>
システム出力y(t)は、式(1)で示される。y(t)は、作業機械11から出力される出力データD4に相当する。
【0053】
【数1】
【0054】
ここで、h(・)は非線形関数を示し、φ(t-1)は情報ベクトルを示す。
【0055】
φ(t-1)は、式(2)で定義される。
【0056】
【数2】
【0057】
ここで、u(t)は制御入力であり、n及びnはそれぞれシステム出力及び制御入力の次数である。u(t)は、作業機械11への入力データD2に相当する。非線形システムは、局所的には線形システムとして記述でき、式(3)で表される。
【0058】
【数3】
【0059】
ここで、A(z-1,t)及びB(z-1,t)は、離散時間非線形システムを記述する多項式である。また、ξ(t)は、平均がゼロで分散がσの白色ガウスノイズを示す。A(z-1,t)及びB(z-1,t)は、それぞれ式(4)及び式(5)のように定式化される。
【0060】
【数4】
【0061】
【数5】
【0062】
制御入力u(t)は、式(6)で定義される。
【0063】
【数6】
【0064】
ここで、Δu(t)は入力変化量を示す。
【0065】
式(4)及び式(5)は、推定パラメータとして式(7)及び式(8)のように書き直される。
【0066】
【数7】
【0067】
【数8】
【0068】
式(3)は、状態空間モデルとして以下のように定式化される。
【0069】
【数9】
【0070】
【数10】
【0071】
【数11】
【0072】
【数12】
【0073】
【数13】
【0074】
【数14】
【0075】
【数15】
【0076】
【数16】
【0077】
【数17】
【0078】
【数18】
ここで、
【0079】
【数45】
【0080】
式(9)及び式(10)の状態空間モデルを用いた評価関数Jを次式で定義する。
【0081】
【数19】
【0082】
【数20】
【0083】
【数21】
【0084】
【数22】
【0085】
【数23】
【0086】
【数24】
【0087】
ここで、yはNステップ先の予測出力を示し、rはNステップ先の目標値を示し、uはNステップ先の予測入力を示す。yは式(9)及び式(10)の状態空間モデルを利用して再帰的に計算できる。uは、N≦Nとし、NからNのステップ先まで一定と仮定する。N及びNは、それぞれ予測ホライズン及び制御ホライズンである。w及びwは重み係数であり、I及びIは単位行列である。
【0088】
【数46】
【0089】
次に、制約付き二次計画問題を解くことで、Δuは式(25)で得られる。
【0090】
【数25】
但し、
【0091】
【数26】
【0092】
【数27】
【0093】
である。ここで、umax及びuminはそれぞれu(t)の最大値及び最小値であり、Δumax及びΔuminはそれぞれΔu(t)の最大値及び最小値である。Δu(t)は、式(28)で示すようにΔuの最初の要素を使用して取得される。
【0094】
【数28】
【0095】
従って、算出部51は、式(6)及び式(28)を用いて、入力データD2に相当する制御入力u(t)を算出する。
【0096】
更新部55がモデルの更新を行う条件は、式(29)及び式(30)で定義される。
【0097】
【数29】
【0098】
【数30】
【0099】
ここで、e(t)はモデル化誤差を示し、t(t)は判定部54が保持するしきい値を示し、y(t)は第1出力データD4に相当する制御出力を示し、y^(t)は第2出力データD3に相当するモデル出力を示す。制御出力及びモデル出力は、それぞれ式(9)及び式(10)によって計算される。モデル化誤差e(t)は、符号を無視するために絶対値として定義される。
【0100】
非線形システムをモデル化する場合、モデル化誤差は各動作点周りで局所的に線形化できると仮定する。局所的に線形化された各動作点周りのモデル化誤差の大きさは、動作点毎に異なる。このように、非線形システムでは各モデルによってモデル化誤差の大きさが異なるため、各モデルに適したしきい値を設定することが望ましい。更新部55は、モデル化誤差の平均μth及び標準偏差σthに基づいて、式(31)を用いてしきい値t(t)を算出する。
【0101】
【数31】
【0102】
式(31)は、エラー分布のほとんどがしきい値を下回っていることを意味する。これは、モデル化誤差の許容範囲を表す。更新部55は、モデルごとに式(31)のしきい値を算出する。
【0103】
式(3)は、次のように書き直して、データベース40を定義することができる。
【0104】
【数32】
【0105】
【数33】
【0106】
【数34】
【0107】
式(32)から、モデル60に相当するシステムパラメータθ(t)は次のように定義される。
【0108】
【数35】
【0109】
【数36】
【0110】
ここで、f(・)は線形関数であり、ψ(t)は実際の測定データで構成されるベクトルを示す。システムパラメータθ(t)を計算するために、クエリφ(t)及びデータベース40に格納されるシステムパラメータのデータセットθ(j)は次のように定義される。
【0111】
【数37】
【0112】
【数38】
【0113】
式(9)及び式(10)の状態空間モデルのシステムパラメータの推定ルール、及び、式(29)のアラームフィルタのしきい値t(t)の計算ルールは、以下の3つのステップで構成される。
(ステップ1)初期データベースの生成
【0114】
入出力データを用いて式(3)のシステムパラメータを同定し、データセットθ(j)として構築される。さらに、式(31)のモデル化誤差のしきい値t(j)が、θ(j)を用いて取得される。次に、θ(j)及びt(j)が初期データベースΘ(j)として格納される。初期データベースΘ(j)は式(39)で定義される。
【0115】
【数39】
【0116】
ここで、Nは初期データベースのデータセット数を示す。これにより、モデル60及びしきい値のデータセットを複数セット含むデータベース40が、初期データベースとして構築され、記憶部32に格納される。
【0117】
(ステップ2)システムパラメータの計算
【0118】
更新部55は、クエリφ(t)とデータセットθ(j)との間の距離を、式(40)を用いて計算する。
【0119】
【数40】
【0120】
ここで、N(t)はクエリφ(t)が取得されたときのデータベース40のデータセット数を示し、iは各データセットのi番目の要素を示す。次に、更新部55は、データベース40に含まれる複数のデータセットを、式(40)で示す距離に応じて昇順で配列し、k個の隣接データを選択する。更新部55は、選択したk個の隣接データを用いた線形加重平均によって、新たなモデル60に相当するシステムパラメータθnew(t)、及び、新たなしきい値thnew(t)を、以下のようにして算出する。
【0121】
【数41】
【0122】
【数42】
【0123】
【数43】
【0124】
ここで、nは、距離に応じて重みの差を顕著にする設計パラメータを示す。システムパラメータθnew(t)は、式(9)及び式(10)の状態空間モデルに適用される。更新部55は、システムパラメータθnew(t)及びしきい値thnew(t)を、新たなデータセットとしてデータベース40に追加する。
(ステップ3)冗長データの削除
【0125】
データベースの記憶容量及びモデリングの計算コストを考慮すると、データベースから冗長データを削除することが望ましい。更新部55は、式(44)の条件を見たすデータセットをデータベース40から選択し、削除する。
【0126】
【数44】
【0127】
ここで、βは、削除対象のデータセットを選択するための設計パラメータを示し、βの値は試行錯誤によって決定される。複数のデータセットが式(44)に対応する場合は、更新部55は最近傍のデータセットを削除する。
【0128】
<変形例>
なお、以上の説明では、更新部55は、データベース40から選択したk個の隣接データを用いた線形加重平均によって新たなモデル60を算出したが、この手法には限定されない。更新部55は、式(40)の距離が最も近い一つのモデル60をデータベース40から選択して、現在保持しているモデル60をその選択したモデル60によって更新しても良い。あるいは、更新部55は、データベース40からモデル60を選択するのではなく、直近数周期分の時系列の入力データD2及び出力データD4を保持しておき、これらのデータを用いてシステム同定を行った結果に基づいて新たなモデル60を算出しても良い。
【0129】
<適用例>
制御装置12は、作業機械11の環境条件の変化を捉え、現在の環境条件に合致したモデル60に更新することができる。この場合、出力データD4は地形又は土質等を示す環境データであり、入力データD2は作業機械11への作業指令データである。
【0130】
制御装置12は、経年劣化等に起因する作業機械11の機体又は部品の特性の変化を捉え、現在の機体又は部品の特性を表すモデル60に更新することができる。この場合、出力データD4は機体又は部品の劣化度等の特性を示すデータであり、入力データD2は作業機械11への作業指令データである。さらに、制御装置12は、モデル60の更新の推移を解析することによって経年劣化の進行度合いを捉え、機体又は部品を交換又はメンテナンスするタイミングを決定することができる。
【0131】
制御装置12は、一又は複数の作業機械11による作業量の時系列データの変化を捉え、作業現場の作業進捗予測を表すモデルを更新することができる。この場合、モデルへの入力データは作業機械11の掘削土量の時系列データ、又は、作業環境の地形変化の時系列データであり、モデルからの出力データは作業現場からの排出土量等の作業量を示すデータである。
【0132】
制御装置12は、作業機械11の燃費の時系列データの変化を捉え、作業機械11の燃料残量予測を表すモデルを更新することができる。この場合、モデルへの入力データは作業機械11の燃費の時系列データ、及び、作業機械11のエンジン回転数のデータであり、モデルからの出力データは作業機械11の燃料残量又は燃料消費量の時間推移を示すデータである。
【0133】
制御装置12は、作業機械11又は作業現場から得られるデータの変化を捉え、施工計画に用いる機体モデル又は環境モデルを更新することができる。この場合、モデルへの入力データは、作業機械11の姿勢あるいは掘削力を示すデータ、又は、作業現場の土質データ、地形データ、もしくは建設物の点群データ等である。モデルからの出力データは、作業機械11の動作軌跡又は作業計画を示すデータである。
【0134】
<まとめ>
本実施形態に係る制御装置12によれば、更新部55は、判定部54によって誤差がしきい値より大きいと判定された場合に、現在のモデル60を、入力データD2と第1出力データD4との関係に応じた新たなモデル60に更新する。これにより、誤差がしきい値より大きくなった適切な更新タイミングで、モデル60を更新することができる。その結果、高い精度が維持されたモデル60を用いた推定によって、制御対象である作業機械11を高精度に制御することが可能となる。
【0135】
また、本実施形態に係る制御装置12によれば、更新前後のモデル60が記憶部32に記憶されるため、更新が繰り返されることによって多くのモデル60を記憶部32に蓄積することができる。
【0136】
また、本実施形態に係る制御装置12によれば、更新部55がモデル60の更新とともにしきい値を更新することにより、モデル60及びしきい値の更新後、判定部54は新たなモデル60に対応する新たなしきい値を用いて適切な判定を行うことが可能となる。
【0137】
また、本実施形態に係る制御装置12によれば、更新前後のモデル60及びしきい値が記憶部32に記憶されるため、更新が繰り返されることによって、対応付けられた多くのモデル60及びしきい値を記憶部32に蓄積することができる。
【0138】
また、本実施形態に係る制御装置12によれば、第1出力データD4と第2出力データD3との比較結果を含む情報を可視化して表示装置13に表示することにより、作業者、施工管理者、又は、作業機械のオペレータ、管理者、若しくはサービスマン等の作業現場の関係者は、制御対象である作業機械11の特性及びその変化等を容易に把握することができる。
【符号の説明】
【0139】
1 作業システム
11 作業機械
12 制御装置
13 表示装置
31 データ処理部
32 記憶部
40 データベース
50 取得部
51 算出部
52 推定部
53 演算部
54 判定部
55 更新部
56 解析部
図1
図2
図3