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特開2024-87310ヒートシンク、冷却装置、およびヒートシンクの製造方法
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  • 特開-ヒートシンク、冷却装置、およびヒートシンクの製造方法 図1
  • 特開-ヒートシンク、冷却装置、およびヒートシンクの製造方法 図2
  • 特開-ヒートシンク、冷却装置、およびヒートシンクの製造方法 図3
  • 特開-ヒートシンク、冷却装置、およびヒートシンクの製造方法 図4
  • 特開-ヒートシンク、冷却装置、およびヒートシンクの製造方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087310
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】ヒートシンク、冷却装置、およびヒートシンクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20240624BHJP
   H01L 23/467 20060101ALI20240624BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240624BHJP
   F28F 1/16 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H01L23/46 C
H05K7/20 D
F28F1/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202063
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100173598
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 桜子
(72)【発明者】
【氏名】原田 雄太
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322BA04
5E322BB03
5F136BA04
5F136BA08
5F136BA22
5F136CA05
5F136DA21
5F136FA02
5F136FA03
5F136GA14
5F136GA18
(57)【要約】
【課題】流体を誘導して複数の方向に排出可能とする一体成形型のヒートシンクを製造する際、フィンの群が配置された面積が広い場合であっても、低コストで製造できるようにする。
【解決手段】多方向排出ヒートシンク1は、押出成形により一体成形されたベース部13および複数のフィン11と、ベース部13の一部にて削り出された複数のフィン121と、を有し、複数のフィン11は、予め定められた方向からの冷却風600を押出方向に対し平行する方向に誘導可能な形状に成形されることで溝12を形成し、複数のフィン121は、予め定められた方向からの冷却風600を、押出方向とは異なる方向に誘導可能な形状に削り出されることで溝123を形成している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形により一体成形されたベース部および複数の第1フィンと、
前記ベース部の一部にて削り出された複数の第2フィンと、
を有し、
前記複数の第1フィンは、予め定められた方向からの流体を押出方向に対し平行する方向に誘導可能な形状に成形されており、前記複数の第2フィンは、当該予め定められた方向からの当該流体を、当該押出方向とは異なる方向に誘導可能な形状に削り出されている、
ヒートシンク。
【請求項2】
前記複数の第2フィンは、前記予め定められた方向からの前記流体を、前記押出方向に対し直交する方向に誘導可能な形状に削り出されている、
請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記複数の第2フィンは、前記流体を、前記押出方向に対し平行する方向にさらに誘導可能な形状に削り出されている、
請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記複数の第1フィン、および前記複数の第2フィンは、前記予め定められた方向からの流体を受ける位置に配置されている、
請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項5】
押出成形により一体成形されたベース部および複数の第1フィンと、
前記ベース部の一部にて削り出された複数の第2フィンと、
前記複数の第1フィンおよび前記複数の第2フィンに対し、垂直方向または略垂直方向に流体を誘導する誘導部材と、
を有し、
前記複数の第1フィンは、前記誘導部材からの前記流体を、押出方向に対し平行する方向に誘導可能な形状に成形されており、前記複数の第2フィンは、当該流体を、当該押出方向とは異なる方向に誘導可能な形状に削り出されている、
冷却装置。
【請求項6】
ベース部および複数の第1フィンを押出成形により一体成形する成形工程と、
前記ベース部の一部にて複数の第2フィンを削り出す削出工程と、
を含み、
前記成形工程では、予め定められた方向からの流体を押出方向に対し平行する方向に誘導可能な形状に前記複数の第1フィンを成形し、
前記削出工程では、前記予め定められた方向からの前記流体を前記押出方向とは異なる方向に誘導可能な形状に前記複数の第2フィンを削り出す、
ヒートシンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンク、冷却装置、およびヒートシンクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発熱体の冷却に用いられるヒートシンクの製造方法として、押出成形、スカイブ加工等が知られている(例えば、特許文献1)。ヒートシンクには、冷却風などの流体を誘導し排出する溝を形成する複数のフィンが設けられている。ヒートシンクは、複数のフィンにより形成された溝により誘導された流体が複数の方向に排出されるように設計される場合がある。この場合、例えば、複数の方向から流体が排出されるようにスカイブ加工を施す等の手法が用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-298292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スカイブ加工を施す手法は、ヒートシンクが一体成形されているため、熱伝導のロスが抑制される。ただし、複数のフィンを削り起こす面積が広くなるに従い製造コストが高くなる。
本発明の目的は、流体を誘導して複数の方向に排出可能とする一体成形型のヒートシンクを製造する際、フィンの群が配置された面積が広い場合であっても、低コストで製造できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明は、押出成形により一体成形されたベース部および複数の第1フィンと、前記ベース部の一部にて削り出された複数の第2フィンと、を有し、前記複数の第1フィンは、予め定められた方向からの流体を押出方向に対し平行する方向に誘導可能な形状に成形されており、前記複数の第2フィンは、当該予め定められた方向からの当該流体を、当該押出方向とは異なる方向に誘導可能な形状に削り出されている、ヒートシンクである。
ここで、前記複数の第2フィンは、前記予め定められた方向からの前記流体を、前記押出方向に対し直交する方向に誘導可能な形状に削り出されていても良い。
また、前記複数の第2フィンは、前記流体を、前記押出方向に対し平行する方向にさらに誘導可能な形状に削り出されていても良い。
また、前記複数の第1フィン、および前記複数の第2フィンは、前記予め定められた方向からの流体を受ける位置に配置されていても良い。
また、かかる目的のもと完成させた本発明は、押出成形により一体成形されたベース部および複数の第1フィンと、前記ベース部の一部にて削り出された複数の第2フィンと、前記複数の第1フィンおよび前記複数の第2フィンに対し、垂直方向または略垂直方向に流体を誘導する誘導部材と、を有し、前記複数の第1フィンは、前記誘導部材からの前記流体を、押出方向に対し平行する方向に誘導可能な形状に成形されており、前記複数の第2フィンは、当該流体を、当該押出方向とは異なる方向に誘導可能な形状に削り出されている、冷却装置である。
また、かかる目的のもと完成させた本発明は、ベース部および複数の第1フィンを押出成形により一体成形する成形工程と、前記ベース部の一部にて複数の第2フィンを削り出す削出工程と、を含み、前記成形工程では、予め定められた方向からの流体を押出方向に対し平行する方向に誘導可能な形状に前記複数の第1フィンを成形し、前記削出工程では、前記予め定められた方向からの前記流体を前記押出方向とは異なる方向に誘導可能な形状に前記複数の第2フィンを削り出す、ヒートシンクの製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、流体を誘導して複数の方向に排出可能とする一体成形型のヒートシンクを製造する際、フィンの群が配置された面積が広い場合であっても、低コストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明のヒートシンクの実施の形態に係る多方向排出ヒートシンクの外観構成の一例を示す斜視図である。
図2】(A)および(B)は、図1の多方向排出ヒートシンクの製造方法の具体例を示す図である。
図3図1に示す多方向排出ヒートシンクを、発熱体に接触または近接するように配置した例を示す図である。
図4】(A)乃至(C)は、押出成形されたヒートシンクを組み合わせることで、冷却風を複数の方向に排出できるヒートシンクを製造する場合の具体例を示す図である。
図5】(A)および(B)は、押出成形された金属部材から複数のフィンを削り起こすスカイブ加工を施すことで、冷却風を複数の方向に排出できるヒートシンクを製造する場合の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[多方向排出ヒートシンクの構成]
まず、ヒートシンクについて説明する。ヒートシンクは、気体や液体といった流体との接触により冷却され、その結果として行われる熱交換により発熱体を冷却する部材である。ヒートシンクを冷却する流体が、同じ圧力でむらなく均一にヒートシンクに当たるのであれば、ヒートシンクは均一または略均一に冷却される。しかしながら、実際には、外部から取り入れた流体をヒートシンクに向けて送り出すファンの態様(例えば、位置、向き、大きさ、性能等)、フィンの態様(例えば、間隔、向き、高さ等)、フィンにより形成された溝の態様(例えば、向き、深さ等)などの影響により、フィンにより形成された溝を流れる流体の量や速度が不均一になる。このため、ヒートシンクには、冷却されやすい位置と、冷却され難い位置とができるという性質がある。
【0009】
上述のようなヒートシンクの性質を利用して、冷却されやすい位置と、冷却され難い位置とを考慮しながら、発熱体を効率良く冷却できるヒートシンクを設計する場合がある。例えば、冷却対象の発熱体の位置、向き、大きさ、性質など発熱体の態様に応じて、溝により誘導された流体が複数の方向に排出されるようにヒートシンクを設計する場合がある。
【0010】
図1は、本発明のヒートシンクの実施の形態に係る多方向排出ヒートシンク1の外観構成の一例を示す斜視図である。
多方向排出ヒートシンク1は、流体を複数の方向に排出できるヒートシンクである。多方向排出ヒートシンク1は、例えば、半導体等の発熱体に接触または近接するように配置され、発熱体を冷却する。多方向排出ヒートシンク1は、例えば、熱伝導性の良い金属で構成される。具体的には、A1100等のアルミニウム合金のA1000系、A6063等のアルミニウム合金のA6000系、ADC12等のアルミニウム合金ダイカスト、銅などの金属を採用できる。
【0011】
多方向排出ヒートシンク1は、複数のフィン11および121と、複数の溝12、122、および123と、ベース部13とを有し、これらが一体成形されたヒートシンクである。フィン11は、押出成形により成形された、押出方向に対し平行する方向に延びた平板状のフィンである。「押出方向」とは、押出成形で使用される型枠から溶融金属を押し出す方向のこという。フィン121は、押出成形された部材にスカイブ加工を施すことで形成された板状のフィンである。フィン121は、押出方向に対し逆行する方向に湾曲した形状を有する。フィン11および121は、流体である冷却風を受けて冷却され、ベース部13を介して発熱体の熱を吸収し放熱する。なお、押出成形およびスカイブ加工については後述する。
【0012】
溝12は、隣り合うフィン11の隙間に形成された、押出方向に対し平行する方向に延びた溝である。溝122は、隣り合うフィン121の隙間に形成された、押出方向に対し平行する方向に延びた溝である。溝123は、隣り合うフィン121の隙間に形成された、押出方向に対し直交する方向に延びた溝である。溝12、122、および123は、流体である冷却風を誘導して外部に排出する。ベース部13は、多方向排出ヒートシンク1のベースとなる部分であり、発熱体からの熱を複数のフィン11および121に伝える。ベース部13は、複数のフィン11の群と、複数のフィン121の群とが突出している面131と、発熱体からの熱を受ける面132とを有する。
【0013】
[多方向排出ヒートシンクの製造方法]
図2(A)および(B)は、図1の多方向排出ヒートシンク1の製造方法の具体例を示す図である。
図2(A)には、押出成形された金属部材10の外観構成の一例を示す斜視図が示されている。図2(B)には、スカイブ加工によりフィン121を削り起こす様子が示されている。
【0014】
多方向排出ヒートシンク1は、成形工程と削出工程を経ることにより製造される。成形工程は、押出成形により金属部材10を成形する工程である。成形工程では、金属部材10の材料となる溶融金属を耐圧性の型枠に入れ、高い圧力を加えて型枠の隙間から溶融金属を押し出し、押し出された溶融金属を冷却して固化させる。これにより、複数のフィン11の群と、複数のフィン11により形成された複数の溝12と、平板状のベース部13と、スカイブ加工の対象となる3つの凸部21および2つの凹部22とが一体成形された金属部材10が成形される。
【0015】
削出工程は、成形工程で成形された金属部材10にスカイブ加工を施す工程である。削出工程では、金属部材10の3つの凸部21にスカイブ加工を施すことで、複数のフィン121と、複数の溝122および123とが形成される。具体的には、図2(B)に示すように、治具800を用いて、金属部材10に形成されている3つの凸部21からフィン121を1枚ずつ削り起こす。このような工程を経ることで、上述の図1に示す多方向排出ヒートシンク1を製造することができる。
【0016】
図3は、図1に示す多方向排出ヒートシンク1を、発熱体701および702に接触または近接するように配置した例を示す図である。
上述の図1に示す多方向排出ヒートシンク1は、例えば、図3に示すように、発熱体701および702に接触または近接するように配置される。これにより、複数のフィン11により複数の溝12が形成された領域のベース部13が、発熱体702に接触または近接するように配置され、複数のフィン121により複数の溝122および123が形成された領域のベース部13が、発熱体701に接触または近接するように配置されることになる。
【0017】
そして、ファン60からの冷却風600が、ベース部13の面131に対し垂直または略垂直方向に当たると、複数の溝12、122、および123の各々が、ファン60からの冷却風600の少なくとも一部を誘導して外部に排出する。このようにして、ファン60からの冷却風600が複数の方向に排出される。なお、ファン60を配置する位置や向きは特に限定されず、多方向排出ヒートシンク1を構成する複数フィンにより形成される溝の向きや、冷却対象の発熱体の位置、大きさ、範囲等に応じて決定される。
【0018】
[従来のヒートシンクとの比較]
本実施の形態にかかる多方向排出ヒートシンク1は、上述のように、冷却風を複数の方向に排出することができるが、従来のヒートシンクでも冷却風を複数の方向に排出することはできる。例えば、押出成形されたヒートシンクを、溝の向きを変えて並べることでも冷却風を複数の方向に排出することができる。
【0019】
(押出成形されたヒートシンク)
図4(A)乃至(C)は、押出成形されたヒートシンクを組み合わせることで、冷却風を複数の方向に排出できるヒートシンクを製造する場合の具体例を示す図である。
図4(A)および(B)には、押出成形されたヒートシンクの具体例が示されている。
【0020】
押出成形のみでフィンの群を形成させたヒートシンクを組み合わせることで、冷却風を複数の方向に排出できるヒートシンクを製造することができる。以下、押出成形のみでフィンの群を形成させたヒートシンクのことを、「押出ヒートシンク」と呼ぶ。押出ヒートシンクのみでフィンの群を形成させたヒートシンクを組み合わせることで、冷却風を複数の方向に排出できるヒートシンクを製造する場合には、例えば、図4(A)に示す押出ヒートシンク3と、図4(B)に示す押出ヒートシンク4とを組み合わせる。
【0021】
図4(A)に示す押出ヒートシンク3は、押出方向に対し平行する方向に延びた1以上の溝32が、複数のフィン31により形成されたヒートシンクである。また、図4(B)に示す押出ヒートシンク4は、押出方向に対し平行する方向に延びた1以上の溝42が、複数のフィン41により形成されたヒートシンクである。押出ヒートシンク3と、押出ヒートシンク4とを、溝32の向きと溝42の向きとが直交するように組み合わせることで、冷却風を複数の方向に排出できるヒートシンクを製造することができる。
【0022】
図4(C)には、図4(A)および(B)の各々に示す押出ヒートシンク3と押出ヒートシンク4との組み合わせである、冷却風を複数の方向に排出できるヒートシンクの具体例が示されている。図4(C)に示すように、押出ヒートシンクを2つ組み合わせたヒートシンクを発熱体700に接触または近接するように配置する。そして、押出ヒートシンク3および4の各々の複数のフィン31および41の群に対し、ファン60からの冷却風600を当てる。すると、押出ヒートシンク3に形成されている複数の溝32と、押出ヒートシンク4に形成されている複数の溝42との各々が、ファン60からの冷却風600の少なくとも一部を誘導して外部に排出する。このようにして、ファン60からの冷却風600が複数の方向に排出される。
【0023】
図4(A)乃至(C)に示すように、押出ヒートシンクの組み合わせを用いる場合、一度製造した型枠を継続して使用できるという押出成形のメリットを享受できる。すなわち、フィンの形状が同一であるヒートシンクの大量生産が可能となり、製造コストを安くすることができる。ただし、押出ヒートシンクを製造する際、押出方向とは異なる方向に流体を誘導し排出する溝を形成させることができないため、溝の設計上の自由度は低くなる。また、組み合わされた押出ヒートシンクが一体成形されていないため、押出ヒートシンク間の熱伝導にロスが生じる。なお、組み合わされた押出ヒートシンクを溶接等により接合することもできるが、この場合であっても、一体成形されたヒートシンクに比べて熱伝導率は低くなる。
【0024】
(スカイブ加工されたヒートシンク)
図5(A)および(B)は、押出成形された金属部材50から複数のフィン151を削り起こすスカイブ加工を施すことで、冷却風を複数の方向に排出できるヒートシンクを製造する場合の具体例を示す図である。
【0025】
図5(A)には、押出成形されたヒートシンクの具体例が示されている。スカイブ加工は、上述のように、ベースとなる金属部材から複数のフィンを削り起こすことで、冷却風を誘導する溝を形成させるものである。金属部材にスカイブ加工を施すことで、冷却風を複数の方向に排出できるヒートシンクを製造することができる。以下、スカイブ加工を施すことでフィンの群が形成されたヒートシンクのことを、「スカイブヒートシンク」と呼ぶ。
【0026】
冷却風を複数の方向に排出できるスカイブヒートシンクを製造する場合には、まず、ベースとなる金属部材を用意する。図5(A)には、押出方向に対し平行する方向に延びた3つの凸部51と2つの凹部52との各々が押出成形された金属部材50が示されている。なお、図5(A)に示す金属部材50は押出成形されたものであるが、押出成形されていないものであっても良い。
【0027】
次に、金属部材50から複数のフィンを削り起こす。なお、複数のフィンを削り起こすスカイブ加工は、上述の図2(B)に示す例と同様であり、説明を省略する。これにより、冷却風を誘導して複数の方向に排出する溝が形成されたスカイブヒートシンクを製造することができる。
【0028】
図5(B)には、冷却風を複数の方向に排出できるスカイブヒートシンク5の具体例が示されている。
スカイブヒートシンク5は、押出方向に対し直交する方向に延びた複数のフィン151と、押出方向に対し平行する方向に延びた複数の溝152と、押出方向に対し直交する方向に延びた複数の溝153とを有する。溝152および153は、流体である冷却風を誘導して外部に排出する。
【0029】
図5(B)示すように、スカイブヒートシンク5を発熱体700に接触または近接するように配置し、スカイブヒートシンク5の複数のフィン151の群に対し、ファン60からの冷却風600が当てる。すると、スカイブヒートシンク5の複数の溝152および153の各々が、ファン60からの冷却風600の少なくとも一部を誘導して外部に排出する。このようにして、ファン60からの冷却風600が複数の方向に排出される。
【0030】
図5(B)に示すスカイブヒートシンク5は、上述の図4(C)に示す押出ヒートシンクの組み合わせのように、複数の押出ヒートシンクを並べて配置したものではなく、押出成形およびスカイブ加工により一体成形されたヒートシンクである。このため、図4(C)に示す押出ヒートシンクの組み合わせよりも熱伝導のロスを抑制できる。また、スカイブ加工の場合、フィンを削り起こす向きを自由に決定できるため、複数のフィンにより形成される溝の設計上の自由度が高くなる。しかしながら、図5(B)に示すスカイブヒートシンク5の場合、金属部材50の凸部51からフィン151を削り起こす必要があるため、フィン151を削り起こす面積が広くなるに従い製造コストが高くなる。
【0031】
以上のように、冷却風を複数の方向に排出できるヒートシンクを製造する方法として、押出ヒートシンクを組み合わせる場合と、スカイブヒートシンクを製造する場合とがある。しかしながら、押出ヒートシンクを組み合わせる場合、製造コストが抑制されるが、ヒートシンク間の熱伝導にロスが生じるという課題がある。また、スカイブヒートシンクを製造した場合、熱伝導のロスが抑制されるが、スカイブ加工の対象となる面積が広くなるに従い製造コストが高くなるという課題がある。
【0032】
これに対して、本実施の形態にかかる多方向排出ヒートシンク1は、図4(C)に示すような、押出ヒートシンクを組み合わせたものではなく、押出成形およびスカイブ加工により一体成形されたヒートシンクである。このため、押出ヒートシンクを組み合わせたものよりも熱伝導のロスを抑制できる。
【0033】
また、本実施の形態にかかる多方向排出ヒートシンク1は、図5(B)に示すスカイブヒートシンク5と異なり、複数のフィン11の群と、複数の溝12とが、低コストで製作可能な押出ヒートシンクの領域を構成する。そして、この押出ヒートシンクの領域が、多方向排出ヒートシンク1の約半分の領域を占める。このため、例えば、多方向排出ヒートシンク1を構成する複数のフィンのすべてがスカイブ加工により形成される場合よりも、製造コストが抑制される。このように、多方向排出ヒートシンク1は、押出ヒートシンクの製造コスト面のメリットと、スカイブヒートシンクの熱伝導面のメリットとの両方を享受可能なヒートシンクである。
【0034】
以上まとめると、本発明が適用される多方向排出ヒートシンク1は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
すなわち、本発明が適用される多方向排出ヒートシンク1は、押出成形により一体成形されたベース部13および複数の第1フィン(フィン11)と、ベース部13の一部にて削り出された複数の第2フィン(フィン121)と、を有し、複数の第1フィンは、予め定められた方向からの流体(冷却風600)を押出方向に対し平行する方向に誘導可能な形状に成形されており、複数の第2フィンは、予め定められた方向からの流体を、押出方向とは異なる方向に誘導可能な形状(例えば、溝123を形成する形状)に削り出されているヒートシンクである。
【0035】
多方向排出ヒートシンク1は、スカイブ加工のみの場合よりも流体を誘導する方向の自由度が低いが製造コストがかからない押出成形による第1フィンと、押出成形よりも製造コストが高くなるが流体を誘導する方向の自由度が高いスカイブ加工による第2フィンと、ベース部とが一体成形されたヒートシンクである。これにより、一体成形されたヒートシンクにて流体を複数方向に排出することができるので、押出成形とスカイブ加工との各々の利点を生かしつつ、かつ、熱の伝わりを良くすることができる。その結果、流体を誘導して複数の方向に排出可能とする一体成形型のヒートシンクを製造する際、フィンの群が配置された面積が広い場合であっても、低コストで製造できるようにすることができる。
【0036】
ここで、複数の第2フィン(フィン121)は、予め定められた方向からの流体(冷却風600)を、押出方向に対し直交する方向に誘導可能な形状(例えば、溝123を形成する形状)に削り出されていても良い。
これにより、複数の第2フィンにより形成される1以上の溝が、押出方向に対し直交する方向に流体を誘導するので、1つのヒートシンクで押出方向およびこれと直交する方向に流体を誘導できる。
【0037】
また、複数の第2フィン(フィン121)は、流体を、押出方向に対し平行する方向にさらに誘導可能な形状(例えば、溝122を形成する形状)に削り出されていても良い。
これにより、押出方向に対し平行する方向に流体を誘導するための溝を第2フィンに設ける際、押出成形を利用するので、溝を形成するフィンをすべてスカイブ加工で削り起こすよりも製造コストを抑えることができる。
【0038】
また、複数の第1フィン(フィン11)、および複数の第2フィン(フィン121)は、予め定められた方向からの流体を受ける位置に配置されていても良い。
これにより、ベース部13の面131に第1フィンと第2フィンとが存在するので、面131に向けて流体を誘導することで、流体を複数方向に排出することができる。
【0039】
また、かかる目的のもと完成させた冷却装置は、押出成形により一体成形されたベース部13および複数の第1フィン(フィン11)と、ベース部13の一部にて削り出された複数の第2フィン(フィン121)と、複数の第1フィンおよび複数の第2フィンに対し、垂直方向または略垂直方向に流体を誘導する誘導部材(ファン60)と、を有し、複数の第1フィンは、誘導部材からの流体(冷却風600)を、押出方向に対し平行する方向に誘導可能な形状(例えば、溝12を形成する形状)に成形されており、複数の第2フィンは、流体を、押出方向とは異なる方向に誘導可能な形状(例えば、溝123を形成する形状)に削り出されている、冷却装置である。
これにより、誘導部材が、ベース部のうち第1フィンおよび第2フィンに対し垂直方向に流体を誘導するので、流体を多方向に排出できる冷却装置を提供できる。
【0040】
また、本発明が適用される多方向排出ヒートシンク1の製造方法は、ベース部13および複数の第1フィン(フィン11)を押出成形により一体成形する成形工程と、ベース部13の一部にて複数の第2フィン(フィン121)を削り出す削出工程と、を含み、成形工程では、予め定められた方向からの流体(冷却風600)を押出方向に対し平行する方向に誘導可能な形状(例えば、溝12を形成する形状)に複数の第1フィンを成形し、削出工程では、予め定められた方向からの流体を押出方向とは異なる方向に誘導可能な形状(例えば、溝123を形成する形状)に複数の第2フィンを削り出す、ヒートシンクの製造方法である。
【0041】
スカイブ加工のみの場合よりも流体を誘導する方向の自由度が低いが、製造コストがかからない押出成形による第1フィンと、押出成形よりも製造コストが高くなるが、流体を誘導する方向の自由度が高いスカイブ加工による第2フィンと、ベース部とがヒートシンクとして一体成形される。これにより、一体成形されたヒートシンクにて流体を複数方向に排出することができるので、押出成形とスカイブ加工との各々の利点を生かしつつ、かつ、熱の伝わりを良くすることができる。その結果、流体を誘導して複数の方向に排出可能とする一体成形型のヒートシンクを製造する際、フィンの群が配置された面積が広い場合であっても、低コストで製造できるようにすることができる。
【0042】
<他の実施の形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限るものではない。例えば、図1に示す多方向排出ヒートシンク1の構成や、図2(A)および(B)に示す多方向排出ヒートシンク1の製造方法は、いずれも本発明の目的を達成するための例示に過ぎず、特に限定されない。また、本発明による効果も、上述の実施の形態に記載されたものに限定されない。
【0043】
また、図1に示す多方向排出ヒートシンク1は、押出成形されたフィンの群と、押出成形およびスカイブ加工により形成されたフィンの群がそれぞれ1つの領域を構成するように配置されたヒートシンクであるが、これに限定されない。押出成形されたフィンの群と、押出成形およびスカイブ加工により形成されたフィンの群との各々が、2つ以上の領域を構成するように配置されていても良い。
【0044】
また、上述の実施の形態では、複数のフィンが一列に並ぶようにスカイブ加工が施されているが、一例に過ぎない。予め定められた方向からの流体を押出方向とは異なる方向に誘導できれば良いので、例えば、複数のフィン121が千鳥状に配置されるようにスカイブ加工が施されてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…多方向排出ヒートシンク、10…金属部材、11、121…フィン、12、122、123…溝、13…ベース部、60…ファン、600…冷却風、701、702…発熱体
図1
図2
図3
図4
図5