(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087388
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】昆虫食およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23K 10/30 20160101AFI20240624BHJP
A23K 50/90 20160101ALI20240624BHJP
A23K 20/142 20160101ALI20240624BHJP
【FI】
A23K10/30
A23K50/90
A23K20/142
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202188
(22)【出願日】2022-12-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 共創の場形成支援(共創の場形成支援プログラム)「共創の場形成支援プログラム「革新的低フードロス共創拠点」に関する国立大学法人大阪大学による研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新間 秀一
(72)【発明者】
【氏名】境 慎司
(72)【発明者】
【氏名】福▲崎▼ 英一郎
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
【Fターム(参考)】
2B005EA03
2B150AA20
2B150AB02
(57)【要約】
【課題】本発明は、血圧低下作用や鎮静作用といった有効な作用を示す4-アミノ酪酸を多く含む昆虫食とその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る4-アミノ酪酸含量が多い昆虫食の製造方法は、1mg/100g以上の4-アミノ酪酸を含む飼料を昆虫に施餌する工程を含むことを特徴とする。また、本発明に係る昆虫食は、10mg/100g以上の4-アミノ酪酸を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-アミノ酪酸含量が多い昆虫食を製造するための方法であって、
1mg/100g以上の4-アミノ酪酸を含む飼料を昆虫に施餌する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記飼料が、バナナ、ナス、キュウリ、トマト、及びニンジンから選択される1以上である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記飼料を1日間以上、7日間以下施餌する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記昆虫が、ミルワーム、ジャイアントミルワーム、フェニックスワーム、コオロギ、イナゴ、及びバッタから選択される1以上の昆虫である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
更に、前記飼料を施餌した後、前記昆虫を加工する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
10mg/100g以上の4-アミノ酪酸を含むことを特徴とする昆虫食。
【請求項7】
ミルワーム、ジャイアントミルワーム、フェニックスワーム、コオロギ、イナゴ、及びバッタから選択される1以上の昆虫由来のものである請求項6に記載の昆虫食。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧低下作用や鎮静作用といった有効な作用を示す4-アミノ酪酸を多く含む昆虫食とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
4-アミノ酪酸はアミノ酸の一種であり、生体内では抑制性の神経伝達物質として働き、血圧低下作用や鎮静作用といった有効な作用を示すことが知られている。よって、4-アミノ酪酸含量を増やした食品や、食品中の4-アミノ酪酸を増加させる技術が種々開発されている。
【0003】
例えば特許文献1には、グルタミン酸から4-アミノ酪酸を生合成する酵素であるグルタミン酸デカルボキシラーゼをコードするDNA構築物を植物ゲノムに組み込むことにより、4-アミノ酪酸の産生を選択的に増す形質転換細胞の作製方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、バナナをグルタミン酸などに作用させることにより、グルタミン酸を4-アミノ酪酸に変換させた4-アミノ酪酸含有組成物が開示されている。
【0005】
特許文献3には、バナナにグルタミン酸、ピリドキサルリン酸および水を混合して、グルタミン酸を4-アミノ酪酸に変換させる、4-アミノ酪酸を多量に含有する食品素材の製造方法が記載されている。
【0006】
特許文献4には、バナナにグルタミン酸と水を混合して得られたスラリーを20℃以下で保持することにより、グルタミン酸を4-アミノ酪酸に変換させる、4-アミノ酪酸を多量に含有する食品素材の製造方法が記載されている。
【0007】
ところで、近年、世界の食料危機への対策として、高栄養価や低環境負荷の観点から、昆虫食が注目を集めている。例えば昆虫食は、牛肉に比べて、タンパク質の質量あたりに必要な餌の量が圧倒的に少なく、温室効果ガスの生産量が少ないため、環境負荷が非常に低いといえる。例えば、1kgの牛肉の製造のためには約8~10kgの飼料が必要だと言われているのに対して、1kgのコオロギ肉の製造に必要な飼料は約2kgである。また、ウシは出荷までに約30ヵ月、ブタには約6ヵ月かかるのに対して、コオロギなどの昆虫には1週間から1ヵ月ほどと、生産開始から消費までの時間が非常に短い。更に、可食部1kgの生産に必要な農地の面積は、牛肉で約200m2であるのに対して、コオロギでは約15m2である。しかも、家畜の骨などは直接食することが難しかったり、家畜の脳などの一部組織は流通が難しかったりするが、昆虫はほぼ全体が可食部であるといえる。また、昆虫食に含まれるタンパク質のアミノ酸構成は哺乳動物の肉のタンパク質のアミノ酸構成に似ているといわれており、昆虫の血糖は栄養価の高いトレハロースであり、脂肪は現代人が日常的に食べる油に近く、ビタミンやミネラルも含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2005-506034号公報
【特許文献2】特開2007-143487号公報
【特許文献3】特開2008-245527号公報
【特許文献4】特開2009-136207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、昆虫食は、高栄養価で低環境負荷の食品素材として注目されており、また、4-アミノ酪酸は、血圧低下作用や鎮静作用といった有効な作用を示すものとして知られている。
しかし、従来、4-アミノ酪酸を多く含む昆虫食は知られていなかった。4-アミノ酪酸を多く含む昆虫食であれば、高栄養価で低カロリーであるのみでなく、血圧低下作用や鎮静作用といった4-アミノ酪酸由来の有効な作用を示すものとして、非常に有用であると考えられる。
そこで本発明は、血圧低下作用や鎮静作用といった有効な作用を示す4-アミノ酪酸を多く含む昆虫食とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、家畜や昆虫などに特定の栄養素を多く与えても、その栄養素は生体内で代謝などされたり、過剰分は排出などされるため、筋肉などの組織に蓄積するとは限らないのに対して、昆虫に4-アミノ酪酸を多く含む飼料を施餌することにより、昆虫食中の4-アミノ酪酸含量を顕著に増加させ得ることを見出して、本発明を完成した。
以下、本発明を示す。
【0011】
[1] 4-アミノ酪酸含量が多い昆虫食を製造するための方法であって、
1mg/100g以上の4-アミノ酪酸を含む飼料を昆虫に施餌する工程を含むことを特徴とする方法。
[2] 前記飼料が、バナナ、ナス、キュウリ、トマト、及びニンジンから選択される1以上である前記[1]に記載の方法。
[3] 前記飼料を1日間以上、7日間以下施餌する前記[1]または[2]に記載の方法。
[4] 前記昆虫が、ミルワーム、ジャイアントミルワーム、フェニックスワーム、コオロギ、イナゴ、及びバッタから選択される1以上の昆虫である前記[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 更に、前記飼料を施餌した後、前記昆虫を加工する工程を含む前記[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 10mg/100g以上の4-アミノ酪酸を含むことを特徴とする昆虫食。
[7] ミルワーム、ジャイアントミルワーム、フェニックスワーム、コオロギ、イナゴ、及びバッタから選択される1以上の昆虫由来のものである前記[6]に記載の昆虫食。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る昆虫食は、高栄養価、低カロリー、低環境負荷といった昆虫食一般の特性を有するのみでなく、血圧低下作用や鎮静作用といった有効な作用を示す4-アミノ酪酸を豊富に含む。4-アミノ酪酸は、血管収縮作用があるノルアドレナリンを抑制することにより、血圧の上昇を抑えることができ得る。また、4-アミノ酪酸は、副交感神経を優位に働かせ、緊張やストレスを軽減するα波を上昇させることで、リラクゼーション効果が期待でき、ストレスを軽減でき得る。本発明方法によれば、有効な作用を示す4-アミノ酪酸を多く含む昆虫食を容易に製造することができる。よって本発明は、健康食として有用な、4-アミノ酪酸を多く含む昆虫食に関するものとして、産業上非常に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、バナナの施餌によるジャイアントミルワームにおける4-アミノ酪酸の含量変化を示すグラフである。
【
図2】
図2は、バナナの施餌によるミルワームにおける4-アミノ酪酸の含量変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、先ず、本発明に係る4-アミノ酪酸含量が多い昆虫食の製造方法につき説明するが、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。以下、「4-アミノ酪酸」を「GABA」と略記する。
【0015】
1.昆虫の準備工程
本工程では、次工程で本発明に係る特定飼料を与えることにより昆虫食として利用できるよう、昆虫を用意する。
【0016】
例えば、ミルワームは、コメノゴミムシダマシ(Tenebrio obscurus Fabricius)またはチャイロコメノゴミムシダマシ(T. molitor Linnaeus)の幼虫であり、ジャイアントミルワームはキマワリ(Plesiophthalmus nigrocyaneus)の幼虫であり、フェニックスワームはアメリカミズアブ(Hermetia illucens)の幼虫であるので、次工程で本発明に係る特定飼料の所定期間の施餌によりGABA含量が十分に多い昆虫が得られる程度に成長したミルワーム、ジャイアントミルワームおよびフェニックスワームであって、蛹や成虫になる前の幼虫を用意する。コオロギ科昆虫(Gryllidae)、特にヨーロッパイエコオロギ(Acheta domestics)、フタホシコオロギ(Gryllus bimaculatus)およびカマドコオロギ(Gryllodes sigillatus)は、成虫を昆虫食として利用するため、成虫を用意する。バッタ科昆虫(Acrididae)、特に、イナゴ亜科昆虫(Oxyinae)およびトノサマバッタ(Locusta migratoria)も、成虫を昆虫食として利用するため、成虫を用意する。
【0017】
2.施餌工程
本工程では、1mg/100g以上のGABAを含む飼料を昆虫に施餌する。
【0018】
前記飼料は、各昆虫に適する通常試料に、所定の割合でGABAを添加したものであってもよい。例えば、粉末状の通常試料または固形の通常試料を粉砕して粉末状にしたものに、所定量のGABAを添加し、更に水を添加してスラリー状にし、ペレット状に成形した後に乾燥したものであってもよい。但し、かかる飼料の作製には、GABAの合成や精製に要するコストの問題があり得る。そこで、対象昆虫の飼料になり得、且つ1mg/100g以上のGABAをもともと含む野菜や果物を用いてもよい。
【0019】
所定量のGABAを含む野菜や果物は、対象昆虫の飼料になり得るものを選択すればよいが、例えば、ナス、キュウリ、トマト、カラシナ、ニンジン等の野菜;および、バナナ、ブドウ、温州ミカン、オレンジ、ポンカン、清見、ユズ等の果物が挙げられる。特にバナナは、GABA含量が多くなるよう改良されたものもあり、本発明で好適に用いられる。また、野菜や果物には、単なる形の悪さや軽微ないたみ、過剰生産や市場価格調整などのために廃棄されるものや、賞味期限や消費期限の経過により廃棄されるものがある等、フードロスの問題がある。本発明では、これら野菜や果物は対象昆虫に食べさせるものであるため、市場製品でなくかかる廃棄野菜や廃棄果物を利用することができ、フードロスの問題の解決にもなる。
【0020】
前記GABA濃度は、対象昆虫に摂餌させる被験飼料から水などを使ってGABAを抽出し、クロマトグラフィ、マススペクトル、吸光光度計、免疫学的測定法、又はこれら2以上の組み合わせにより抽出試料中のGABAを定量し、測定量を被験飼料の質量(g)で除した上で100を乗ずることにより求めることができる。前記GABA濃度としては、5mg/100g以上または10mg/100g以上が好ましく、20mg/100g以上または50mg/100g以上がより好ましく、80mg/100g以上または10mg/100g以上がより更に好ましい。前記GABA濃度の上限は特に制限されないが、前記GABA濃度が過剰に高いと、味などの変化により対象昆虫の摂取量が低減することもあり得るため、500mg/100g以下または400mg/100g以下が好ましく、400mg/100g以下または200mg/100g以下がより好ましい。
【0021】
前記飼料は、不足しないよう十分量施餌すればよい。例えば、十分量を施餌しておいて、余剰飼料が腐敗しかけたら、新しい飼料に置き換えればよい。例えば対象昆虫がミルワームとジャイアントミルワームである場合、前記飼料を0.01mg/mg体重/日以上、10mg/mg体重/日以下、コオロギの場合は前記飼料を0.01mg/mg体重/日以上、10mg/mg体重/日以下施餌すればよい。
【0022】
前記飼料の施餌期間は、前記飼料の摂取量や得られた昆虫食におけるGABA濃度に応じて、予備実験などで決定すればよい。例えば、対象昆虫によっては、施餌期間によって摂取量が異なり、摂取量が昆虫食におけるGABA濃度に影響することがあるので、予備実験などにより、得られる昆虫食におけるGABA濃度が最も高くなる施餌期間を決定すればよい。一般的には、前記飼料を1日間以上、7日間以下の範囲で施餌すればよい。例えば対象昆虫がジャイアントミルワームである場合、2日間以上、4日間以下が好ましい。対象昆虫がミルワームである場合、0.5日以上、3日以下が好ましい。対象昆虫がコオロギである場合、3日以上、7日以下が好ましい。なお、かかる施餌期間は、牛肉、豚肉、鶏肉などの食肉の飼育開始から出荷までの期間に比べて顕著に短い。
【0023】
3.加工工程
本工程では、前工程2で本発明に係る特定飼料を施餌した昆虫の生体を、昆虫食にするために加工する。本工程の実施は任意であり、例えば昆虫をそのまま食する場合には、本工程は実施しなくてもよい。
【0024】
例えば、本工程において、殺菌、ウイルスの除去、殺寄生虫などのために、熱湯で30秒間以上、10分間以下程度加熱処理してもよい。また、加熱乾燥や凍結乾燥してもよい。更に、例えば粉末状に粉砕してもよい。得られた粉末などは、栄養価の改善などのために、他の食材に混合してもよい。
【0025】
本発明に係る前記製造方法により製造された昆虫食は、高栄養価で且つ低カロリーであり、農地面積、飼料量、温室効果ガスの排出量の少なさ等、低環境負荷であり、しかも非可食部分がほとんど無い等、昆虫食由来の特性を有する。その上、血圧低下作用や鎮静作用といった有効な作用を示すGABAを多く含む。具体的には、本発明に係る昆虫食は、GABAを1mg/100g以上含む。当該GABA濃度としては、5mg/100g以上、10mg/100g以上、20mg/100g以上または50mg/100g以上が好ましく、80mg/100g以上、100mg/100g以上または150mg/100g以上がより好ましく、200mg/100g以上、300mg/100g以上または500mg/100g以上がより更に好ましい。前記GABA濃度の上限は特に制限されないが、前記GABA濃度が過剰に高いと、GABA由来の副作用が生じる可能性があり得るため、前記GABA濃度としては1g/100g以下が好ましい。本発明に係る昆虫食におけるGABA濃度も、摂取する形態の昆虫食試料や昆虫食製品試料から水などを使ってGABAを抽出し、クロマトグラフィ、マススペクトル、吸光光度計、免疫学的測定法、又はこれら2以上の組み合わせにより抽出試料中のGABAを定量し、測定量を被験試料の質量(g)で除した上で100を乗ずることにより求めることができる。
【実施例0026】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0027】
実施例1
ジャイアントミルワーム(Plesiophthalmus nigrocyaneus)3匹、又はミルワーム(Tenebrio molitor Linnaeus)3匹を、1日間絶食させた後、GABA含量が比較的多いエクアドル産バナナを、皮をむいて制限無く与えた。但し、腐敗の兆候が認められたバナナは、新鮮なものに交換した。
バナナ施餌開始から1日後、3日後または5日後に半日間絶食させることにより糞を排出させた後、マルチビーズショッカーで、各昆虫を2,500rpmで5秒間、2回粉砕した。粉砕により得られた粉末を10mg量り取った。この際、水分で粘性が発生しないように液体窒素に浸しながら計量した。得られた粉末試料に、メタノール(700μL)、H
2O(100μL)、内部標準(IS)としてd4-DL-Alaの20mol/mL50%メタノール溶液(20μL)を添加した。得られた混合試料をボルテックスミキサーで10秒間撹拌した後、10,000rpm、4℃で10分間遠心分離した。新しいマイクロチューブに、H
2O(180μL)、得られた上清(360μL)、クロロホルム(360μL)をこの順で添加した。ボルテックスミキサーで再度10秒間撹拌した後、10,000rpm、4℃で10分間遠心分離した。上清(50μL)を新しいマイクロチューブに移し、アセトニトリル:メタノール:H
2O=80:15:5(容量比)の混合溶媒で5倍に希釈した。ボルテックスミキサーで希釈液を10秒間撹拌した後、10,000rpm、4℃で10分間遠心分離した。得られた試料(100μL)をインサート入りバイアルに移し替え、分析カラムとしてクラウンエーテル型キラルカラム(「CROWNPAK CR-I(+),Lot:CRIPCA-SK010」ダイセル社製)を用い、移動相してアセトニトリル:メタノール:H
2O:トリフルオロ酢酸=80:15:5:0.5(容量比)の混合溶媒を用い、更にトリプル四重極型質量分析計(「LCMS8060」島津製作所社製)を用い、液体クロマトグラフ質量分析計で分析し、GABAのピーク面積から、GABA含量の相対値を求めた。ジャイアントミルワームの結果を
図1に、ミルワームの結果を
図2に示す。図中、「*」~「***」は、それぞれボンフェローニ多重比較検定においてp<0.05、0.02および0.005で有意差があることを示し、「ns」は有意差が無いことを示す。
【0028】
図1に示される結果の通り、ジャイアントミルワームにバナナを与えた場合には、3日目にGABA含量が有意に増加し、3日目と5日目には有意差はなかった。
また、
図2に示される結果の通り、ミルワームにバナナを与えた場合には、1日目からGABA含量が有意に増加したが、その後、バナナを継続的に施餌してもGABA含量は徐々に減少した。
以上の結果より、GABA含量の多いバナナを昆虫に施餌することにより、GABA含量を有意に増加させることが可能であることが明らかとなった。
【0029】
また、摂餌状況を観察すると、昆虫の種類により、高GABA餌をよく食べる時期とあまり食べない時期があるようであった。例えばミルワームの場合、最初はバナナをよく食べるものの、その摂餌量は次第に減少した。かかる摂餌状況は、
図2に示されるGABA含量に反映されている。
よって、昆虫や飼料の種類によって、GABA含量を最大限に高められる高GABA餌の施餌期間は異なるため、最適な高GABA餌施餌期間は、予備実験などにより決定するのがよいことが分かった。