(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087402
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 1/32 20060101AFI20240624BHJP
F28F 13/18 20060101ALI20240624BHJP
F28D 1/04 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
F28F1/32 Z
F28F1/32 H
F28F13/18 B
F28F13/18 Z
F28D1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202210
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100173598
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 桜子
(72)【発明者】
【氏名】原田 雄太
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA22
3L103BB44
3L103CC17
3L103CC18
3L103CC22
3L103DD03
3L103DD61
3L103DD70
3L103DD92
(57)【要約】
【課題】フィンに付着した水を除去しやすくすることができる熱交換器等を提供する。
【解決手段】熱交換器1は、親水処理が施され、上辺101、下辺102、側辺103、および側辺104を有する複数のフィン10と、予め定められた間隔で配置された複数のフィン10を貫通し、冷媒を流通させる1以上の冷媒パイプ20と、フィン10の下辺102の少なくとも一部に接触したヒーターパイプ30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水処理が施され、上辺、下辺、および両側辺を有する複数のフィンと、
予め定められた間隔で配置された複数の前記フィンを貫通し、流体を流通させる1以上の管と、
前記フィンの下辺の少なくとも一部に接触した発熱体と、
を備える熱交換器。
【請求項2】
前記フィンの下辺は、水平ではない辺であり、1以上の端部の少なくとも1つが前記発熱体に接触している、
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記複数のフィンの下辺の水平に対する傾斜角が3乃至9度である、
請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記フィンの上辺および下辺の各々が、当該フィンの中心に向かう方向に屈折または屈曲している、
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記複数のフィン、および当該複数のフィンを貫通している前記管が、予め定められた間隔で複数の段になるように上下方向に配置されており、当該複数のフィンの形状が当該段ごとに定められている、
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記段ごとの前記複数のフィンの下辺の水平に対する傾斜角が、上段になるに従い小さくなっている、
請求項5に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記親水処理の接触角が30度未満である、
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記発熱体の発熱量が15乃至30W/mである、
請求項1に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
長手方向に沿って連続した冷媒パイプと、その冷媒パイプに装着された複数のフィンとを備える熱交換器において、フィンに付着した水が集まり落下しやすくするために、フィンの形状を工夫する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フィンの形状を工夫するのみでは、フィンに付着した水が集まり難く、また、水が集まったとしても、相応の水滴の大きさにならなければ自然落下しないため、フィンに付着した水を十分に除去することができない。
本発明の目的は、フィンに付着した水を除去しやすくすることができる熱交換器等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明は、親水処理が施され、上辺、下辺、および両側辺を有する複数のフィンと、予め定められた間隔で配置された複数の前記フィンを貫通し、流体を流通させる1以上の管と、前記フィンの下辺の少なくとも一部に接触した発熱体と、を備える熱交換器である。
ここで、前記フィンの下辺は、水平ではない辺であり、1以上の端部の少なくとも1つが前記発熱体に接触していてもよい。
また、前記複数のフィンの下辺の水平に対する傾斜角が3乃至9度であってもよい。
また、前記フィンの上辺および下辺の各々が、当該フィンの中心に向かう方向に屈折または屈曲していてもよい。
また、前記複数のフィン、および当該複数のフィンを貫通している前記管が、予め定められた間隔で複数の段になるように上下方向に配置されており、当該複数のフィンの形状が当該段ごとに定められてもよい。
また、前記段ごとの前記複数のフィンの下辺の水平に対する傾斜角が、上段になるに従い小さくなっていてもよい。
また、前記親水処理の接触角が30度未満であってもよい。
また、前記発熱体の発熱量が15乃至30W/mであってもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、フィンに付着した水を除去しやすくすることができる熱交換器等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施の形態にかかる熱交換器の一部の外観構成の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1の熱交換器を構成する複数のフィンと2本の冷媒パイプからなる段を複数段形成させる方法の具体例を示す図である。
【
図3】(A)は、親水処理が施される前のフィンの一部に水が付着したときのイメージを示す拡大断面図である。(B)は、親水処理が施された後のフィンの一部に水が付着したときのイメージを示す拡大断面図である。
【
図4】(A)は、
図1の熱交換器を構成するフィンの具体例を示す図である。(B)は、
図1の熱交換器の一部を構成するフィンと、冷媒パイプと、ヒーターパイプとの位置関係を示す図である。(C)は、(B)における、フィンとヒーターパイプとが接触している部分を含む領域の拡大図である。
【
図5】(A)は、第2の実施の形態にかかる熱交換器を構成するフィンの具体例を示す図である。(B)は、第2の実施の形態にかかる熱交換器の一部を構成するフィンと、冷媒パイプと、ヒーターパイプとの位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1の実施の形態>
[熱交換器]
図1は、第1の実施の形態にかかる熱交換器1の一部の外観構成の一例を示す斜視図である。
図1に示す熱交換器1は、例えば、冷蔵庫など空気を冷却する機器等に搭載される熱交換器である。熱交換器1が搭載された機器では、ファン等により取り込まれた空気が、熱交換器1を通過することで冷却され、冷却された空気が必要とする場所に送られる。
【0009】
熱交換器1は、複数のフィン10と、複数のフィン10を貫通して複数回屈曲することで複数の段を形成する管としての冷媒パイプ20と、複数回屈曲しながら複数のフィン10に接触している発熱体としてのヒーターパイプ30とを備える。具体的には、
図1に示すように、2本の冷媒パイプ20と2本のヒーターパイプ30との各々は、複数回屈曲することで、水平方向に延びる部分と、上下方向に延びる部分とをそれぞれ形成している。
【0010】
このうち、2本の冷媒パイプ20により形成されている水平方向に延びる部分は、複数のフィン10とともに8つの段D1乃至D8を形成している。また、2本のヒーターパイプ30により形成されている水平方向に延びる部分は、段D1と段D2との間、段D4と段D5との間、段D5と段D6との間、および段D7と段D8との間に配置されている。2本のヒーターパイプ30に形成されている水平方向に延びる部分のうち、段D1と段D2との間に配置されている部分は、段D1と段D2との各々に配置されている複数のフィン10に接触している。また、段D4と段D5との間に配置されている部分は、段D4と段D5との各々に配置されている複数のフィン10に接触している。
【0011】
また、2本のヒーターパイプ30に形成されている水平方向に延びる部分のうち、段D5と段D6との間に配置されている部分は、段D5と段D6との各々に配置されている複数のフィン10に接触している。また、段D7と段D8との間に配置されている部分は、段D7と段D8との各々に配置されている複数のフィン10に接触している。なお、以下の説明において、
図1の上下方向を単に「上下方向」と呼び、上下方向の上側を単に「上側」、上下方向の下側を単に「下側」と呼ぶ場合がある。また、
図1の左右方向を単に「左右方向」と呼び、左右方向の左側を単に「左側」、左右方向の右側を単に「右側」と呼ぶ場合がある。
【0012】
フィン10は、冷媒パイプ20との間で行われる熱交換により冷却される薄板状の部材である。フィン10は、周囲の空気との間で行われる熱交換により周囲の空気を冷却する。なお、フィン10の具体的な構成については後述する。
冷媒パイプ20は、内側にて流体である冷媒を流通させ、その冷媒との間で行われる熱交換により冷却される管である。冷媒パイプ20は、フィン10との間で行われる熱交換によりフィン10を冷却する。なお、冷媒パイプ20の具体的な構成については後述する。
【0013】
ヒーターパイプ30は、結露によりフィン10の表面に付着した水を熱により蒸発させる発熱体として機能する管である。また、ヒーターパイプ30は、フィン10に付着した霜を予め定められたタイミングで溶かす発熱体としても機能する。結露によりフィン10の表面に付着した水を蒸発させるときのヒーターパイプ30の発熱量は特に限定されないが、15乃至30W/mであることが好ましい。ヒーターパイプ30の発熱量が小さ過ぎると、水を蒸発させる時間が長くなり、発熱量が大き過ぎると、必要以上に温度が上昇してしまい、熱交換器1の省エネ性が悪化する。これに対して、ヒーターパイプ30の発熱量を15乃至30W/mとすることで、水を蒸発させる時間の短縮化と省エネ性とのバランスを図ることができる。なお、ヒーターパイプ30の具体的な構成については後述する。
【0014】
熱交換器1は、上述のように、複数のフィン10を貫通する2本の冷媒パイプ20の屈曲により形成された段D1乃至D8で構成されている。段D1乃至D8の各々には、複数のフィン10と、複数のフィン10を貫通する2本の冷媒パイプ20とが配置されている。複数のフィン10は、段ごとに群を形成している。群を構成する個々のフィン10は、冷媒パイプ20を貫通させた面が上下方向に対し平行になるように、予め定められた間隔で整然と並べられている。
【0015】
1つの群において隣り合うフィン10の間隔は特に限定されず、熱交換器1がおかれた環境や、熱交換器1の用途等に応じて決定される。このため、例えば、熱交換器1を構成する段ごとに周囲の空気の湿度が変わるような環境では、隣り合うフィン10の間隔が段ごとに異なる場合がある。具体的には、
図1に示すように、段D1乃至D6が狭く、段D7が広く、段D8がさらに広くなるように、隣り合うフィン10の間隔が決定されている場合がある。
【0016】
図1に示す熱交換器1のフィン10の間隔の構成は、例えば、周囲の空気の湿度が、段D1乃至D6よりも段D7の方が高く、段D7よりも段D8の方が高いような場合に採用され得る構成である。すなわち、周囲の空気の湿度が、段D1乃至D6よりも段D7の方が高い場合には、段D1乃至D6よりも段D7の方が、結露が生じて霜が付着しやすい。また、周囲の空気の湿度が、段D7よりも段D8の方が高い場合には、段D7よりも段D8の方が、結露が生じて霜が付着しやすい。霜が付着した場合、付着した霜の量や、隣り合うフィン10の間隔によっては、隣り合うフィン10の間に付着した水が霜になり、その結果として目詰まりを引き起こすことがある。これに対して、例えば、
図1の段D8に示すように、隣り合うフィン10の間隔を広げることで、隣り合うフィン10の間に付着した霜による目詰まりの発生を抑制できる。
【0017】
図2は、
図1の熱交換器1を構成する複数のフィン10と2本の冷媒パイプ20からなる段を複数段形成させる方法の具体例を示す図である。
熱交換器1を構成する複数のフィン10と2本の冷媒パイプ20からなる段を複数段形成させる場合には、
図2に示すように、フィン10と、冷媒パイプ20とを用意する(ステップ1)。具体的には、複数のフィン10と、2本の冷媒パイプ20とを用意する。次に、2本の冷媒パイプ20を並列に並べて、複数のフィン10を貫通させる(ステップ2)。具体的には、予めフィン10に設けられている2つの貫通孔11の各々に、2本の冷媒パイプ20の各々を通す。このとき、
図2に示すように、熱交換器1を構成する段ごとにフィン10の群が形成されるように配置する。段ごとに配置されたフィン10の群は、群同士が上下方向に予め定められた間隔を置くように配置される。なお、「予め定められた間隔」は、2本の冷媒パイプ20を屈曲させる部分の態様に応じて定められる。
【0018】
次に、フィン10を貫通した状態の冷媒パイプ20に治具50を挿入し、2本の冷媒パイプ20を拡管する(ステップ3)。これにより、冷媒パイプ20が貫通した状態の貫通孔11に形成された隙間が埋まり、2本の冷媒パイプ20に複数のフィン10が固定される。次に、複数のフィン10が固定された状態の2本の冷媒パイプ20を複数回屈曲させながら、各段を形成させる(ステップ4)。具体的には、フィン10の群が固定されていない複数の部分について、いわゆる蛇行曲げを行う。これにより、フィン10の上下方向の向きが各段で反転することになる。以上のような工程を経ることで、
図1に示す熱交換器1を製造することができる。
【0019】
(フィンの構成)
図1に戻り、段D1乃至D8の各々に配置されたフィン10は、上辺101、下辺102、側辺103、側辺104、面105、および面106を有する薄板状の部材である。フィン10は、熱伝導性の良い金属で構成される。具体的には、フィン10は、例えば、A1100等のアルミニウム合金のA1000系、A6063等のアルミニウム合金のA6000系、ADC12等のアルミニウム合金ダイカスト、銅などの金属で構成される。
【0020】
フィン10は、冷媒パイプ20に固定されており、冷媒パイプ20との間の熱交換により冷却される。冷媒パイプ20により冷却されたフィン10は、周囲の空気との間の熱交換により周囲の空気を冷却する。熱交換器1が搭載された機器は、冷却運転と除霜運転とを行う。冷却運転は、フィン10の周囲の空気を冷却するための運転であり、除霜運転は、フィン10に付着した霜を除去したり、フィン10に付着した水を蒸発させたりするための運転である。
【0021】
冷却運転時にフィン10の周囲の空気が冷却され、空気中の水蒸気が凝縮すると、フィン10の表面に結露が生じることがある。その後、冷却運転から除霜運転に切り替わると、冷凍サイクルが止まり、結露によりフィン10に付着していた水が、重力により下辺102の両端部のいずれかに集まる。すると、下辺102の両端部のいずれかに集まった水が、ヒーターパイプ30の熱により蒸発する。本実施の形態では、フィン10に付着した水が下辺102の両端部のいずれかに集まりやすくするために、フィン10の表面処理および形状について、以下のような工夫が施されている。
【0022】
(フィンの表面処理)
フィン10には、付着した水が下辺102の両端部のいずれかに集まりやすくするための表面処理が施されている。具体的には、フィン10の表面には、水がなじみやすくするための処理(以下、「親水処理」と呼ぶ。)が施されている。フィン10の表面に親水処理が施されると親水性が高くなる。このため、フィン10に水が付着すると、その水は薄く濡れ広がり、一体化が促進される。フィン10の表面で一体化した水は、重力により下辺102の両端部のいずれかに集まりやすくなる。なお、親水処理の手法は特に限定されず、状況に合わせて、例えば、ベーマイト処理、親水性塗装、プラズマ処理などが用いられる。
【0023】
親水処理は、フィン10の表面のすべてに施してもよいし、一部にのみ施してもよい。すなわち、フィン10の上辺101、下辺102、側辺103、側辺104、面105、および面106のすべてに親水処理を施してもよいし、このうち一部にのみ施してもよい。フィン10の表面のうち一部にのみ親水処理を施す場合には、例えば、フィン10の表面のうち、水が付着しやすい箇所と下辺102とを含む領域にのみ親水処理を施してもよい。親水処理を施す場所を一部に限定することでコストを抑えることができる。
【0024】
図3(A)は、親水処理が施される前のフィン10の一部に水100が付着したときのイメージを示す拡大断面図である。
図3(B)は、親水処理が施された後のフィン10の一部に水100が付着したときのイメージを示す拡大断面図である。なお、
図3(A)および(B)では、フィン10の面105が上側を向き、面106が下側を向いているが、これは、親水処理の効果をイメージしやすくするためのものである。実際には、面105および106は、上述の
図1に示すように、上下方向に対し平行になるように配置されるものとする。
【0025】
親水処理が施される前のフィン10と、親水処理が施された後のフィン10とを比較すると、フィン10に付着した水100の態様に違いが表れる。具体的には、
図3(A)および(B)に示すように、フィン10に付着した水100の大きさや形状に違いが表れる。
【0026】
親水処理が施される前のフィン10の表面は、親水処理が施された後のフィン10の表面よりも親水性が低くなる。このため、親水処理が施される前のフィン10の面105に付着した水100は、例えば、
図3(A)に示すように、小さな粒の状態でフィン10の表面に存在する。
【0027】
これに対して、親水処理が施された後のフィン10の表面は、親水処理が施される前のフィン10の表面よりも親水性が高くなる。このため、親水処理が施された後のフィン10の面105に付着した水100は、例えば、
図3(B)に示すように、薄く濡れ広がった状態でフィン10の表面に存在する。
【0028】
ここで、
図3(A)および(B)に示すように、親水処理が施される前のフィン10の面105に付着した水100の接触角の大きさを示す値をθ1とし、親水処理が施された後のフィン10の面105に付着した水100の接触角の大きさを示す値をθ2とした場合について説明する。この場合、θ1の値とθ2の値とを比較すると、θ1>θ2になる。θ2の値は特に限定されないが、30度未満であることが好ましい。θ2の値が30度未満になるようにフィン10の表面に親水処理が施されると、フィン10の面105に付着した水100が濡れ広がりやすくなる。その結果、フィン10の面105に付着した水100の一体化が促進される。
【0029】
(フィンの形状)
図4(A)は、
図1の熱交換器1を構成するフィン10の具体例を示す図である。
図4(B)は、
図1の熱交換器1を構成するフィン10と、冷媒パイプ20と、ヒーターパイプ30との位置関係を示す図である。
図4(C)は、
図4(B)における、フィン10とヒーターパイプ30とが接触している部分を含む領域F1の拡大図である。
【0030】
図4(A)に示すように、フィン10の中心部から右寄りの位置と、フィン10の中心部から左寄りの位置には、2本の冷媒パイプ20を通すための貫通孔11が左右対称に2つ設けられている。フィン10の上辺101および下辺102は、フィン10の中心に向かう方向に上下対称かつ左右対称に屈折しており、水平に対し同じ傾斜角が設けられている。また、上辺101および下辺102の各々の両端部には、窪み12が左右対称に設けられている。側辺103および104の形状は直線であり、側辺103と側辺104とは平行である。このため、フィン10の形状は、全体として上下対称かつ左右対称になっている。
【0031】
フィン10の下辺102の両端部に左右対称に設けられた窪み12は、
図4(B)および(C)に示すように、ヒーターパイプ30と接触する部分であり、ヒーターパイプ30の形状に合わせて嵌合可能な形状になっている。このため、フィン10の下辺102とヒーターパイプ30とが接触している部分の面積は、窪み12が設けられていない場合に比べて広くなる。その結果、フィン10の下辺102に集められた水に対しヒーターパイプ30の熱が伝わりやすくなるので、効率良く水を蒸発させることができる。
【0032】
図4(A)に示すように、フィン10の下辺102は、フィン10の中心に向かう方向に左右対称に屈折した形状になっている。これにより、フィン10に付着した水が下辺102の両端部のいずれかに集まりやすくなる。下辺102の傾斜角の大きさは特に限定されないが、下辺102の水平に対する傾斜角の大きさを示す値をθ3とした場合、θ3の値は、3乃至9度であることが好ましい。θ3の値が3度よりも小さいと、水がフィン10の下辺102を伝わって流れ難くなるため、下辺102の両端部に集まり難くなる。また、θ3の値が9度よりも大きいと、その分フィン10の面積が小さくなるため、冷却性能が落ちる。これに対して、フィン10の下辺102の水平に対する傾斜角を3乃至9度とすることで、水の流れやすさと冷却性能とのバランスを図ることができる。
【0033】
上述のように、フィン10の形状は、上下対称かつ左右対称の形状になっている。このため、フィン10の上辺101も、下辺102と同様に、フィン10の中心の方向に向かって同じ態様で屈折し、同じ態様の傾斜角が設けられている。このように、フィン10の形状を上下対称かつ左右対称とすることで、以下のようなメリットを享受できる。
【0034】
すなわち、上述の
図2に示すステップ2の工程では、フィン10に2本の冷媒パイプ20を貫通させるが、その際、フィン10の上下方向や左右方向を考慮することなくフィン10を配置することができる。また、
図2に示すステップ4の工程では、フィン10の上下方向の向きを段ごとに反転させるが、その際、異なる段のフィン10が互いに干渉することなく、予め定められた間隔で上下方向に整然と複数の段を配置することができる。
【0035】
上述の
図1に示すように、熱交換器1では、2本の冷媒パイプ20に固定されたフィン10が、2本の冷媒パイプ20とともに段を形成している。そして、2本のヒーターパイプ30が、フィン10に接触するように配置されている。具体的には、
図4(B)に示すように、段D4と段D5との間に配置されている2本のヒーターパイプ30は、段D4に配置された複数のフィン10の下辺102と、段D5に配置された複数のフィン10の上辺101とに接触している。また、段D5と段D6との間に配置されている2本のヒーターパイプ30は、段D5に配置された複数のフィン10の下辺102と、段D6に配置された複数のフィン10の上辺101とに接触している。これに対して、段D3と段D4との間、および段D6と段D7との間には、ヒーターパイプ30が配置されていない。
【0036】
このような構成により、例えば、段D4に配置された複数のフィン10に付着した水は、下辺102の両端部に集まり、段D4と段D5との間に配置されている2本のヒーターパイプ30の熱により蒸発する。また、段D5に配置された複数のフィン10に付着した水は、下辺102の両端部に集まり、段D5と段D6との間に配置されている2本のヒーターパイプ30の熱により蒸発する。
【0037】
これに対して、例えば、段D3に配置された複数のフィン10のように、下辺102が2本のヒーターパイプ30に接触していないフィンに付着した水は、下辺102の両端部に集まり、水滴として落下する場合がある。この場合、落下した水滴は、段D3の下の段である段D4に配置されたフィン10に付着する。段D4に配置されたフィン10は、上述のように、下辺102が2本のヒーターパイプ30に接触している。このため、段D4に配置されたフィン10に付着した水は、下辺102の両端部に集まり、ヒーターパイプ30の熱により蒸発する。
【0038】
以上まとめると、本発明が適用される熱交換器1は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
すなわち、本発明が適用される熱交換器1は、親水処理が施され、上辺101、下辺102、および両側辺(側辺103および104)を有する複数のフィン10と、予め定められた間隔で配置された複数のフィン10を貫通し、流体(例えば、冷媒)を流通させる1以上の管(冷媒パイプ20)と、フィン10の下辺102の少なくとも一部に接触した発熱体(ヒーターパイプ30)と、を備える。
【0039】
親水処理により水100が一体化しやすいため、水100がフィン10の下辺102に集まりやすい。また、フィン10の下辺102に集まった水100は、発熱体によって効率良く蒸発する。これにより、フィン10に付着した水100を除去しやすくすることができる。
【0040】
ここで、フィン10の下辺102は、水平ではない辺であり、1以上の端部の少なくとも1つが前記発熱体に接触していてもよい。
これにより、フィン10の下辺102が水平でないため、発熱体に接触しているフィン10の端部(下辺102の両端部)に水が集まるようにすることができる。また、フィン10の端部に集まった水100は、発熱体によってさらに効率良く蒸発する。
【0041】
また、複数のフィン10の下辺102の水平に対する傾斜角が3乃至9度であってもよい。
フィン10の下辺102の水平に対する傾斜角が小さ過ぎると、水100がフィン10の下辺102を流れ難くなり、フィン10の下辺102の水平に対する傾斜角が大き過ぎると、その分フィン10の面積が小さくなり冷却性能が落ちる。これに対して、フィン10の下辺102の水平に対する傾斜角を3乃至9度とすることで、水100の流れやすさと冷却性能とのバランスを図ることができる。
【0042】
また、フィン10の上辺101および下辺102の各々が、フィン10の中心に向かう方向に屈折または屈曲していてもよい。
これにより、フィン10の上下方向を考慮する必要がなくなる。また、フィン10の上下方向の向きを段ごとに反転させたとしても、異なる段のフィン10同士が互いに干渉することなく、予め定められた段の間隔で整然と並べることができる。
【0043】
また、親水処理の接触角が30度未満であってもよい。
親水処理の接触角が大きいと(例えば、
図3(A)に示す接触角の大きさを示す値がθ1)、フィン10に付着した水が広がり難くなる。これに対して、親水処理の接触角が30度未満とすることで(例えば、
図3(B)に示す接触角の大きさを示す値がθ2)、フィン10に付着した水100が広がりやすくなる。
【0044】
また、発熱体(ヒーターパイプ30)の発熱量が15乃至30W/mであってもよい。
発熱体の発熱量が小さ過ぎると、水100を蒸発させる時間が長くなる。これに対して、発熱体の発熱量が大き過ぎると、温度が上昇し過ぎて省エネ性が悪化する。発熱体の発熱量を15乃至30W/mとすることで、水を蒸発させる時間の短縮化と省エネ性とのバランスを図ることができる。
【0045】
<第2の実施の形態>
図5(A)は、第2の実施の形態にかかる熱交換器2を構成するフィン60の具体例を示す図である。
図5(B)は、第2の実施の形態にかかる熱交換器2の一部を構成するフィン60と、冷媒パイプ20と、ヒーターパイプ30との位置関係を示す図である。
【0046】
第2の実施の形態にかかる熱交換器2のうち、冷媒パイプ20およびヒーターパイプ30の構成は、上述の第1の実施の形態にかかる熱交換器1の構成と同様であり、説明を省略する。また、第2の実施の形態にかかる熱交換器2のうち、フィン60の構成は、表面に施された親水処理、2本の冷媒パイプ20を通すための貫通孔61、および材質など、基本的には第1の実施の形態にかかる熱交換器1を構成するフィン10と同様である。ただし、フィン10とフィン60とでは形状が異なる。
【0047】
すなわち、上述の第1の実施の形態にかかる熱交換器1を構成するフィン10は、例えば、
図4(A)に示すように、上辺101、下辺102、側辺103、および側辺104を有する薄板状の部材であり、上辺101および下辺102がフィン10の中心に向かう方向に、上下対称かつ左右対称に屈折している。これにより、フィン10の形状は、上下対称かつ左右対称になっている。これに対して、第2の実施の形態にかかる熱交換器2を構成するフィン60は、例えば、
図5(A)に示すように、水平方向に延びる直線を有する上辺601と、傾斜角が設けられた下辺602と、水平方向に対し直交する方向に延びる側辺603および604とを有する。
【0048】
図5(A)に示すフィン60の上辺601の両端には、窪み62が左右均等に設けられており、下辺602の両端には、形状の異なる窪み62がそれぞれ設けられている。また、下辺602には、付着した水が右側から左側に流れやすくするための傾斜角が設けられており、水平に対する傾斜角の大きさを示す値はθ6になっている。θ6の値は特に限定されないが、θ6の値が大きくなるに従い、フィン60に付着した水が下辺602の左側の端部の窪み62付近に集まりやすくなる。このような構成により、
図5(A)に示すフィン60の全体の形状は、上下非対称かつ左右非対称の台形状になっている。
【0049】
ただし、第2の実施の形態にかかる熱交換器2を構成するフィン60は、段ごとに異なる形状に設計される。このため、
図5(A)に示すフィン60は一例に過ぎず、例えば、上辺601の端部や下辺602の端部に窪み62が設けられていないフィン60が段ごとに設計されてもよい。また、フィン60の下辺602に設けられた傾斜角の大きさが段ごとに変化するように設計してもよい。例えば、熱交換器2がおかれた環境によっては、熱交換器2を構成する段が上段になるに従い周囲の空気の湿度が下がることがある。この場合、段が下段になるに従いフィン60の表面に結露が生じやすくなり、付着する水の量が増えることがある。このため、段が下段になるに従いフィン60の下辺602の傾斜角が大きくなるように設計してもよい。
【0050】
具体的には、熱交換器2を構成する複数の段のうち、段D4乃至D6の各々に配置された複数のフィン60の下辺602の傾斜角の大きさを、
図5(B)に示すように段ごとに変化させてもよい。すなわち、段D4乃至D6の各々に配置された複数のフィン60の下辺602の水平に対する傾斜角の大きさを示す値をθ5乃至θ7の各々とした場合に、θ5<θ6<θ7になるように設計してもよい。なお、
図5(B)の段D5に配置されているフィン60は、
図5(A)に例示されたフィン60と同一であり、下辺602の傾斜角の大きさを示す値がθ6になっている。
【0051】
このような構成にすることにより、段D4乃至D6の順で下辺602の水平に対する傾斜角の大きさが大きくなるので、複数のフィン60に付着した水の下辺602の流れやすさも、段D4乃至D6の順で高くなる。このように、結露の発生頻度や発生量に合わせて、フィン60の下辺602の傾斜角の大きさを段ごとに変えることができる。
【0052】
以上まとめると、本発明が適用される熱交換器2は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
すなわち、本発明が適用される熱交換器2は、親水処理が施され、上辺601、下辺602、および両側辺(側辺603および604)を有する複数のフィン60と、予め定められた間隔で配置された複数のフィン60を貫通し、流体(例えば、冷媒)を流通させる1以上の管(冷媒パイプ20)と、フィン60の下辺602の少なくとも一部に接触した発熱体(ヒーターパイプ30)と、を備える。
【0053】
親水処理により水100が一体化しやすいため、水100がフィン60の下辺602に集まりやすい。また、フィン60の下辺602に集まった水100は、発熱体によって効率良く蒸発する。これにより、フィン60に付着した水100を除去しやすくすることができる。
【0054】
ここで、フィン60の下辺602は、水平ではない辺であり、1以上の端部の少なくとも1つが前記発熱体に接触していてもよい。
これにより、フィン60の下辺602が水平でないため、発熱体に接触しているフィン60の端部(例えば、
図5(A)の下辺602の左側の端部)に水が集まるようにすることができる。また、フィン60の端部に集まった水100は、発熱体によってさらに効率良く蒸発する。
【0055】
また、複数のフィン60、および複数のフィン60を貫通している管(冷媒パイプ20)が、予め定められた間隔で複数の段になるように上下方向に配置されており、複数のフィン60の形状が段ごとに定められていてもよい。
これにより、熱交換器2の段ごとの特性(例えば、湿度など)に合わせて、フィン60の形状を段ごとに変えることができる。
【0056】
また、段ごとの複数のフィン60の下辺602の水平に対する傾斜角が、上段になるに従い小さくなっていてもよい。
これにより、熱交換器2の段が上段になるに従い湿度が低くなる場合など、結露の発生頻度や発生量に合わせて、フィン60の下辺602の傾斜角を変えることができる。
【0057】
また、親水処理の接触角が30度未満であってもよい。
親水処理の接触角が大きいと(例えば、
図3(A)に示す接触角の大きさを示す値がθ1)、フィン60に付着した水が広がり難くなる。これに対して、親水処理の接触角が30度未満とすることで(例えば、
図3(B)に示す接触角の大きさを示す値がθ2)、フィン60に付着した水100が広がりやすくなる。
【0058】
また、発熱体(ヒーターパイプ30)の発熱量が15乃至30W/mであってもよい。
発熱体の発熱量が小さ過ぎると、水100を蒸発させる時間が長くなる。これに対して、発熱体の発熱量が大き過ぎると、温度が上昇し過ぎて省エネ性が悪化する。発熱体の発熱量を15乃至30W/mとすることで、水を蒸発させる時間の短縮化と省エネ性とのバランスを図ることができる。
【0059】
<他の実施の形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限るものではない。例えば、
図1に示す熱交換器1の構成、
図2に示す熱交換器1の製造方法、
図4(A)乃至(C)に示す熱交換器1のフィン10、冷媒パイプ20、およびヒーターパイプ30の構成、ならびに
図5(A)および(B)に示す熱交換器2のフィン60、冷媒パイプ20、およびヒーターパイプ30の構成は、いずれも本発明の目的を達成するための例示に過ぎず、特に限定されない。また、本発明による効果も、上述の実施の形態に記載されたものに限定されない。
【0060】
また、
図1に示す熱交換器1は、段D1乃至D8の8段で構成されているが、熱交換器1の段数は特に限定されず、n段(nは1以上の整数値)で構成することができる。
【0061】
また、
図1に示す熱交換器1の2本のヒーターパイプ30は、一部の段に配置された複数のフィン10の上辺101や下辺102に接触するように複数回屈曲し、いわゆる蛇行曲げによって4つの段を形成しているが、これに限定されない。例えば、段D1乃至D8の各々に配置された複数のフィン10の下辺102に接触するように8つの段を形成してもよい。この場合、熱交換器1を構成するすべてのフィン10の下辺102に2本のヒーターパイプ30を接触させることができるので、より効率良く水を蒸発させることができる。
【0062】
また、上述のフィン10の上辺101および下辺102の各々は、フィン10の中心に向かう方向に屈折した形状であるが、これに限定されない。例えば、上辺101および下辺102の各々は、フィン10の中心に向かう方向に屈曲した形状であってもよい。例えば、上辺101および下辺102の各々は、フィン10の中心に向かう方向に弧を描くように湾曲した形状であってもよい。
【0063】
また、上述の実施の形態では、フィン10(または、フィン60)の下辺102(または、下辺602)に設けられた窪みと、ヒーターパイプ30とが接触する構成となっているが、これに限定されない。フィン10(または、フィン60)の下辺102(または、下辺602)に設けられた窪みと、ヒーターパイプ30とが近接している構成であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1、2…熱交換器、10、60…フィン、20…冷媒パイプ、30…ヒーターパイプ、101、601…上辺、102、602…下辺、105、106…面