(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087555
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】フィルムの搬送方法及び搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65H 23/24 20060101AFI20240624BHJP
B65H 23/188 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B65H23/24
B65H23/188
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202442
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 大介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 龍平
(72)【発明者】
【氏名】内海 京久
【テーマコード(参考)】
3F104
3F105
【Fターム(参考)】
3F104AA03
3F104GA06
3F104GA08
3F104GA13
3F105AA04
3F105BA02
3F105CA14
3F105CA20
3F105CB05
3F105DA02
3F105DB02
(57)【要約】
【課題】フィルムに加わる張力を調整することができる、フィルムの搬送方法、及び搬送装置の提供。
【解決手段】気中から液中又は液中から気中へフィルムを搬送する搬送工程を含み、搬送工程が、気中においてフィルムの少なくとも一方の表面に液体を付与し、流すことを含む、フィルムの搬送方法、及び搬送装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気中から第1の液体中又は第1の液体中から気中へフィルムを搬送する搬送工程を含み、
前記搬送工程が、気中において前記フィルムの少なくとも一方の表面に第3の液体を付与し、流すことを含む、
フィルムの搬送方法。
【請求項2】
前記第3の液体が、液体供給部により前記フィルムに付与され、
前記液体供給部から前記フィルムに付与される前記第3の液体の流量が、前記フィルムの幅1mあたり40L/分以下である、請求項1に記載のフィルムの搬送方法。
【請求項3】
前記液体供給部から前記フィルムに付与される前記第3の液体の流量が、前記フィルムの幅1mあたり1L/分以上である、請求項2に記載のフィルムの搬送方法。
【請求項4】
前記フィルムの気中において前記第3の液体が付与された位置から、前記フィルムの搬送経路上の気中と前記第1の液体中との境界となる位置までの距離が、100mm~10,000mmである、請求項1又は請求項2に記載のフィルムの搬送方法。
【請求項5】
前記搬送工程において、前記フィルムに対して第2の液体又は気体を吹き付ける非接触式搬送部により前記フィルムを搬送し、前記非接触式搬送部により前記フィルムに加わる張力が、20N/m~120N/mに制御される、請求項1又は請求項2に記載のフィルムの搬送方法。
【請求項6】
20℃における前記第3の液体の粘度が、0.3mPa・s~11mPa・sである、請求項1又は請求項2に記載のフィルムの搬送方法。
【請求項7】
前記第3の液体の付与が、少なくともフィルムの搬送経路中間位置よりも下流において行われる、請求項1又は請求項2に記載のフィルムの搬送方法。
【請求項8】
第1の液体が充填された槽と、フィルムに対して第2の液体又は気体を吹き付けることにより、前記フィルムを気中から前記槽に充填された液体中、又は前記槽に充填された液体中から気中へ搬送する非接触式搬送部と、気中において前記フィルムの少なくとも一方の表面に第3の液体を付与し、流す液体供給部と、を備える、搬送装置。
【請求項9】
前記第1の液体が充填された槽の液面高さを調整する液面高さ制御部を備える、請求項8に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記液体供給部から前記フィルムに付与される前記第3の液体の流量を制御する流量制御部を備える、請求項8に記載の搬送装置。
【請求項11】
前記フィルムに加わる張力を測定する張力測定部を備え、前記張力測定部により測定された張力データを前記液面高さ制御部、及び前記流量制御部の少なくとも一方に伝達する、請求項9又は請求項10に記載の搬送装置。
【請求項12】
前記第1の液体と前記第3の液体とが同一であり、
前記槽内に充填された前記第1の液体を前記液体供給部に循環させる循環部を備える、請求項8又は請求項9に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの搬送方法及び搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル等の製造に使用されるフィルムは、複数の液槽を備える搬送装置を用いて搬送される。上記フィルムは、搬送経路において、気中及び液中を交互に搬送される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
搬送装置が備える液槽の数が増えると、搬送経路下流に進むにつれて、フィルムに加わる張力が増加するおそれがある。
【0005】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、フィルムに加わる張力を調整することができる、フィルムの搬送方法、及び搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 気中から第1の液体中又は第1の液体中から気中へフィルムを搬送する搬送工程を含み、
上記搬送工程が、気中において上記フィルムの少なくとも一方の表面に第3の液体を付与し、流すことを含む、
フィルムの搬送方法。
<2> 上記第3の液体が、液体供給部により上記フィルムに付与され、
上記液体供給部から上記フィルムに付与される上記第3の液体の流量が、上記フィルムの幅1mあたり40L/分以下である、上記<1>に記載のフィルムの搬送方法。
<3> 上記液体供給部から上記フィルムに付与される上記第3の液体の流量が、上記フィルムの幅1mあたり1L/分以上である、上記<2>に記載のフィルムの搬送方法。
<4> 上記フィルムの気中において上記第3の液体が付与された位置から、上記フィルムの搬送経路上の気中と上記第1の液体中との境界となる位置までの距離が、100mm~10,000mmである、上記<1>~<3>のいずれか1つに記載のフィルムの搬送方法。
<5> 上記搬送工程において、上記フィルムに対して第2の液体又は気体を吹き付ける非接触式搬送部により上記フィルムを搬送し、上記非接触式搬送部により上記フィルムに加わる張力が、20N/m~120N/mに制御される、上記<1>~<4>のいずれか1つに記載のフィルムの搬送方法。
<6> 20℃における上記第3の液体の粘度が、0.3mPa・s~11mPa・sである、上記<1>~<5>のいずれか1つに記載のフィルムの搬送方法。
<7> 上記第3の液体の付与が、少なくともフィルムの搬送経路中間位置よりも下流において行われる、上記<1>~<6>のいずれか1つに記載のフィルムの搬送方法。
<8> 第1の液体が充填された槽と、フィルムに対して第2の液体又は気体を吹き付けることにより、上記フィルムを気中から上記槽に充填された液体中、又は上記槽に充填された液体中から気中へ搬送する非接触式搬送部と、気中において上記フィルムの少なくとも一方の表面に第3の液体を付与し、流す液体供給部と、を備える、搬送装置。
<9> 上記第1の液体が充填された槽の液面高さを調整する液面高さ制御部を備える、上記<8>に記載の搬送装置。
<10> 上記液体供給部から上記フィルムに付与される上記第3の液体の流量を制御する流量制御部を備える、上記<8>又は<9>に記載の搬送装置。
<11> 上記フィルムに加わる張力を測定する張力測定部を備え、上記張力測定部により測定された張力データを上記液面高さ制御部、及び上記流量制御部の少なくとも一方に伝達する、上記<9>又は<10>に記載の搬送装置。
<12> 上記第1の液体と上記第3の液体とが同一であり、
上記槽内に充填された上記第1の液体を上記液体供給部に循環させる循環部を備える、上記<8>~<11>のいずれか1つに記載の搬送装置。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、フィルムに加わる張力を調整することができる、フィルムの搬送方法、及び搬送装置を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例において使用した本開示の搬送装置の一実施形態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0010】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数
種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において、「工程」という語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0011】
[フィルムの搬送方法]
本開示のフィルムの搬送方法は(以下、「本搬送方法」とも記す。)、気中から第1の液体中又は第1の液体中から気中へフィルムを搬送する搬送工程を含み、上記搬送工程が、気中において上記フィルムの少なくとも一方の表面に第3の液体(以下、「特定液体」とも記す。)を付与し、流すことを含む。
【0012】
本搬送方法によれば、フィルムに加わる張力を調整することができる。上記効果が奏される理由は明らかではないが、以下のように推測される。
本搬送方法は、気中においてフィルムの少なくとも一方の表面に特定液体を付与し、流すことを含む搬送工程を含む。フィルムの表面において特定液体を流すことにより、フィルムに加わる張力を調整することができると推測される。
【0013】
(搬送工程)
フィルム表面を流す特定液体の方向は、フィルムの搬送方向であってもよく、搬送方向とは反対の方向であってもよい。フィルムに加わる張力によりフィルム表面におけるシワが発生することを抑制するという観点からは、特定液体を流す方向はフィルムの搬送方向であることが好ましい。
【0014】
フィルムの搬送経路の1つの位置においてフィルムへの特定液体の付与を行ってもよく、2つ以上の位置においてフィルムへの特定液体の付与を行ってもよい。フィルムに加わる張力を調整する観点からは、2つ以上の位置においてフィルムへの特定液体の付与を行うことが好ましく、5つ以上の位置においてフィルムへの特定液体の付与を行うことがより好ましく、7つ~12つの位置においてフィルムへの特定液体の付与を行うことが更に好ましい。
【0015】
特定液体は、液体供給部によりフィルムに付与することができる。
液体供給部としては、特定液体をカーテン状に流下させる装置、特定液体を液滴状に流下させる装置、特定液体を霧状に噴霧する装置等を使用することができる。
フィルムの幅方向全体にわたって液体を付与することができ、フィルムに加わる張力を調整することが容易であるという観点からは、液体供給部は、特定液体をカーテン状に流下させる装置であることが好ましい。特定液体をカーテン状に流下させる装置としては、例えば、スプレーイングシステム社製のカーテンノズルを使用することができる。
【0016】
液体供給部からフィルムに付与される特定液体の流量は、フィルムへのダメージ軽減の観点から、フィルムの幅1mあたり、40L/分以下であることが好ましく、30L/分以下であることがより好ましく、20L/分以下であることが更に好ましい。
フィルムに加わる張力によりフィルム表面におけるシワが発生することを抑制する観点からは、上記流量は、1L/分以上であることが好ましく、5L/分以上であることがより好ましい。
よって、上記流量は、1L/分~40L/分であることが好ましい。
なお、流量は、液体供給部の直前に流量計(面積式流量計等)を設置して実流量を測定する。また、本開示において、フィルムの幅方向とは、フィルムの搬送方向と垂直となる方向を意味する。
また、フィルムの搬送経路の2つ以上の位置においてフィルムへの特定液体の付与を行う場合、上記流量は、各液体供給部の流量であり、これらは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0017】
フィルムに加わる張力によりフィルム表面におけるシワが発生することを抑制するという観点、及び搬送の安定性を確保する観点からは、フィルムの気中において液体(特定液体)が付与された位置から、フィルムの搬送経路上の気中と液中との境界となる位置までの距離は、100mm~10,000mmであることが好ましく、300mm~3000mmであることがより好ましく、500mm~1500mmであることが更に好ましい。
本開示において、「フィルムの気中において液体(特定液体)が付与された位置から、フィルムの搬送経路上の気中と液中との境界となる位置までの距離」とは、気中において液体が付与されたフィルムの位置から、フィルムの搬送経路上の気中と液中との境界(すなわち、水面)となる位置までの距離のうち最短となるものを意味する。
【0018】
フィルムの搬送は、フィルムの搬送経路上流に配置される巻出ロール、及び搬送経路下流に配置される巻取ロールを使用することにより行うことができる。
フィルムの液中から気中への搬送、及び気中から液中への搬送において、フィルムに対して液体又は気体を吹き付けることによりフィルムを搬送する非接触式搬送部を使用することができる。
フィルムに対して液体を吹き付ける非接触式搬送部としては、例えば、ベルマチック社製の浮上ターンバを使用することができる。フィルムに対して気体を吹き付ける非接触式搬送部としては、例えば、ベルマチック社製のターンバを使用することができる。フィルムに対して吹き付ける液体としては、水、アルコール、有機溶剤、これらに溶質を溶かした液体等が挙げられる。上記液体は、特定液体と同一であってもよく、異なっていてもよい。
非接触式搬送部の断面形状は特に限定されるものではなく、例えば、四分円形状、半円形状等とすることができる。なお、非接触式搬送部の断面形状とは、フィルムの搬送方向に対して垂直方向からみたときの断面形状を意味する。
図1においては、四分円形状の非接触式搬送部12を示す。
上記非接触式搬送部を使用する場合、搬送安定性を確保する観点からは、非接触式搬送部によりフィルムに加わる張力が、20N/m~120N/mに制御されることが好ましく、40N/m~80N/mに制御されることがより好ましい。
上記張力は、フィルムと非接触式搬送部との間の間圧を測定し、下記式に基づいて算出する。なお、式中、Pは間圧(Pa)、Rは非接触式搬送部の半径(m)、Wはフィルム幅(m)を示す。
図1において、非接触式搬送部12の半径を符号Rで示す。
張力(N)=P・R・W
【0019】
フィルムの搬送速度は、特に限定されるものではなく、例えば、3m/分~15m/分とすることができる。
【0020】
特定液体の種類は特に限定されるものではなく、適宜変更することができる。特定液体としては、水、アルコール、有機溶剤、これらに溶質を溶かした液体等が挙げられる。
【0021】
フィルムに加わる張力によりフィルム表面におけるシワが発生することを抑制するという観点からは、20℃における特定液体の粘度は、0.3mPa・s~11mPa・sであることが好ましく、0.3mPa・s~1.5mPa・sであることがより好ましく、0.9mPa・s~1.1mPa・sであることが更に好ましい。
本開示において、粘度は、20℃において、粘度計により測定する。
【0022】
フィルムに加わる張力によりフィルム表面におけるシワが発生することを抑制するという観点からは、特定液体のフィルムへの付与は、少なくとも搬送経路中間位置よりも下流で行われることが好ましい。
本開示において、「搬送経路中間位置よりも下流」とは、フィルムの巻き出し開始地点から、フィルムの巻き取り地点までの搬送距離をXとしたとき、0.5X以上の位置を意味する。
【0023】
搬送されるフィルムが通過する液体としては、水、アルコール、有機溶剤、これらに溶質を溶かした液体等が挙げられる。これらの液体は、槽に充填され、フィルムの搬送経路上に配置することができる。
特定液体は、上記槽に流れ込むことが好ましい。
槽に充填される液体と、特定液体とは同一であっても、異なっていてもよいが、製造効率等の観点から同一であることが好ましい。
槽に充填される液体及び特定液体が同一であり、特定液体が上記槽に流れ込む場合、槽に充填される液体を循環させ、特定液体として使用してもよい。
【0024】
フィルムの材質は、用途に応じて適宜変更することが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等の樹脂製のフィルム、アルミ等の金属箔、ガラスなどを使用することができる。
【0025】
搬送工程は、液中においてフィルムの表面に付着した液体を乾燥することを含んでいてもよい。
【0026】
(巻取工程)
本搬送方法は、フィルムを巻き取る工程(以下、「巻取工程」とも記す。)を含んでいてもよい。フィルムの巻き取りは、例えば、巻取ロールを使用することにより行うことができる。
【0027】
[搬送装置]
本開示の搬送装置は(以下、「本搬送装置」とも記す。)、第1の液体が充填された槽と、フィルムに対して第2の液体又は気体を吹き付けることにより、上記フィルムを気中から上記槽に充填された液体中、又は上記槽に充填された液体中から気中へ搬送する非接触式搬送部と、気中において上記フィルムの少なくとも一方の表面に第3の液体を付与し、流す液体供給部と、を備える。
【0028】
本搬送装置は、張力測定部を備えることができる。
本搬送装置は、第1の液体が充填された槽の液面高さを調整する液面高さ制御部を備えることができる。
本搬送装置は、流量制御部を備えることができる。
第1の液体と第3の液体とが同一である場合に、本搬送装置は、槽内に充填された第1の液体を液体供給部に循環させる循環部を更に備えることができる。
本搬送装置は、フィルムを巻き出す巻出ロール及びフィルムを巻き取る巻取ロールを備えることができる。
本搬送装置は、槽においてフィルムに付着した第1の液体を乾燥する乾燥装置を備えることができる。
本搬送装置は、搬送ロール又は搬送バーを備えることができる。
【0029】
(槽)
本搬送装置は、第1の液体が充填された槽を備える。槽の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。
槽に充填される第1の液体は、用途等に応じて適宜変更することができ、水、アルコール、有機溶剤、これらに溶質を溶かした液体等が挙げられる。本搬送装置が槽を2つ以上備える場合、各槽に充填される第1の液体は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0030】
(非接触式搬送部)
本搬送装置は、フィルムに対して第2の液体又は気体を吹き付けることにより、フィルムを気中から槽に充填された液体中、又は槽に充填された液体中から気中へ搬送する非接触式搬送部を備える。非接触式搬送部については上記したためここでは記載を省略する。
本搬送装置は、非接触式搬送部を1つ備えていてもよく、2つ以上備えていてもよい。
【0031】
(液体供給部)
本搬送装置は、フィルムに第3の液体を付与し、流す液体供給部を備える。液体供給部については、本搬送方法において記載したため、ここでは記載を省略する。
【0032】
(張力測定部)
本搬送装置は、フィルムに加わる張力を測定する張力測定部を備えていてもよい。張力測定部は、搬送経路下流に設けられることが好ましく、第1の液体が充填された槽よりも下流に配置されることがより好ましい。本搬送装置が第1の液体が充填された槽を2つ以上備える場合、張力測定部は、最も下流に配置される槽より下流に配置されることが好ましい。
張力測定部により測定された張力データは、後述する液面高さ制御部、流量制御部に伝達してもよい。
張力測定部としては、例えば、三菱電機社製のテンションメータを使用することができる。
【0033】
(液面高さ制御部)
本搬送装置は、液面高さ制御部を備えることができる。これにより、気中において液体が付与されたフィルムの位置から、フィルムの搬送経路上の気中と液中との境界となる位置までの距離を調整することができ、フィルムに加わる張力を調整することが容易となる。
一実施形態において、液面の高さは、上記張力測定部から伝達された張力データに基づいて制御される。
一実施形態において、液面高さ制御部は、槽内に配置される。一実施形態において、液面高さ制御部は、槽内に配置された栓又は栓であり、上記張力測定部から伝達された張力データに基づいて、自動的又は手動により、開閉が制御され、槽内の第1の液体の量(液面高さ)が調整される。
槽から排出される第1の液体は、後述する循環部により、液体供給部に循環させてもよい。
【0034】
(流量制御部)
本搬送装置は、液体供給部からフィルムに付与される第3の液体の流量を制御する流量制御部を備えることができる。
一実施形態において、流量は、上記張力測定部から伝達された張力データに基づいて制御される。
一実施形態において、流量制御部は、液体供給部に隣接して配置される。また、他の実施形態において、流量制御部は、液体供給部に内蔵されていてもよい。
【0035】
(循環部)
第1の液体及び第3の液体が同一である場合、本搬送装置は、槽内に充填された第1の液体を液体供給部に循環させる循環部を更に備えることができる。これにより、第3の液体の使用量を低減することができる。
【0036】
(巻出ロール及び巻取ロール)
本搬送装置は、フィルムを巻き出す巻出ロール及びフィルムを巻き取る巻取ロールを備えることができる。これらのロールは、従来公知のものを使用することができる。
一実施形態において、巻出ロールは搬送経路の最上流に配置され、巻取ロールは搬送経路の最下流に配置される。
【0037】
(乾燥装置)
本搬送装置は、槽においてフィルムに付着した第1の液体を乾燥する乾燥装置を備えることができる。
乾燥装置は、特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができる。例えば、送風装置、赤外線照射装置等が挙げられる。
一実施形態において、乾燥装置は、第1の液体が充填された槽の上方に配置される。
【0038】
(搬送ロール及び搬送バー)
本搬送装置は、搬送ロール及び搬送バーの少なくとも一方を備えていてもよい。搬送ロール及び搬送バーは、フィルムの搬送方向を制御することができるものである。搬送ロール及び搬送バーは、従来公知のものを使用することができる。
【実施例0039】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0040】
(実施例1)
図1に示す搬送装置を用意した。
搬送装置10は、水が充填された槽11と、フィルムに対し気体を吹き付けることにより、フィルムを搬送する非接触式搬送部12と、フィルムに対し水を付与し、流す液体供給部13と、フィルムに対し水を吹き付けることにより、フィルムを搬送する非接触式搬送部14と、張力測定部16を備える搬送ロール15と、を備える。
なお、槽11は21個用意し、液体供給部13は、気中から槽11の液中へフィルムを搬送する非接触式搬送部12の下流に設置した。
また、フィルムとしては、厚さ38μm、幅500mmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その搬送速度は10m/分とした。
また、20℃における水の粘度は、1.0mPa・sであった。
また、液体供給部からフィルムに付与される水の流量(表1中においては、「流量」と記す。)は、フィルムの幅1mあたり10L/分とした。
また、気中において水が付与されたフィルムの位置から、フィルムの搬送経路上の気中と液中との境界となる位置までの距離は、
図1中において、符号Hで示し、表1中においては、「流下長」と記す。
また、搬送装置10は、液面高さ制御部、流量制御部及び循環部を備え、
図1において、液面高さ制御部は符号17、循環部は符号18で示す。流量制御部は、液体供給部に内蔵されており図示しない。なお、
図1において、液面高さ制御部は、槽内に配置された自動的に開閉する栓であり、栓より排出された水は、循環部18により、液体供給部に循環される。
【0041】
(実施例2)
下流側から3つの液体供給部を残し、その他の液体供給部は除去した以外は、実施例1と同様にして、フィルムを搬送し、巻き取った。
【0042】
(実施例3)
下流側から6つの液体供給部を残し、その他の液体供給部は除去した以外は、実施例1と同様にして、フィルムを搬送し、巻き取った。
【0043】
(実施例4)
下流側から4つの液体供給部を残し、その他の液体供給部は除去し、且つ各液体供給部の流量を表1にように変更した以外は、実施例1と同様にして、フィルムを搬送し、巻き取った。
【0044】
(実施例5)
下流側から4つの液体供給部を残し、その他の液体供給部は除去し、且つ各液体供給部の流量を表1にように変更した以外は、実施例1と同様にして、フィルムを搬送し、巻き取った。
【0045】
(比較例1)
液体供給部を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、フィルムを搬送し、巻き取った。
【0046】
<フィルムに加わる張力の測定>
図1に示す搬送装置10が備える2つの張力測定部16により、上流及び下流のそれぞれにおいて、フィルムに加わる張力を測定し、表1にまとめた。
【0047】
<シワ抑制性評価>
搬送後のフィルム表面を目視により観察し、下記評価基準に基づいて、評価した。評価結果を表1にまとめた。
(評価基準)
A:フィルム表面においてシワの発生が観察されなかった、又は観察されたが極めて僅かであった。
B:フィルム表面においてシワの発生が少し観察されたが、実用上問題のない範囲であった。
C:フィルム表面においてシワの発生が観察されたが、実用上問題のない範囲であった。
D:フィルム表面においてシワの発生が多く観察され、実用上問題があった。
【0048】
【0049】
表1にまとめた結果から、気中においてフィルムの少なくとも一方の表面に液体を付与し、流した実施例のフィルムの搬送方法は、液体を付与しなかった比較例のフィルムの搬送方法に比べ、フィルムに加わる張力を低減することができ、シワの発生を抑制することができていることが分かる。
10:搬送装置、11:槽、12、14:非接触式搬送部、13:液体供給部、15:搬送ロール、16:張力測定部、17:液面高さ制御部、18:循環部、H:フィルムの気中において水が付与された位置から、フィルムの搬送経路上の気中と液中との境界となる位置までの距離、R:非接触式搬送部の半径