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特開2024-87682半導体製造装置、ピックアップ装置および半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087682
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】半導体製造装置、ピックアップ装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
H01L21/52 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202621
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】515085901
【氏名又は名称】ファスフォードテクノロジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】名久井 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 明
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】望月 政幸
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047FA01
5F047FA73
5F047FA79
(57)【要約】
【課題】ダイの割れ不良や欠け不良を低減することが可能な技術を提供することにある。
【解決手段】半導体製造装置は、ダイが貼付されたダイシングテープを保持するウエハ保持台と、前記ダイシングテープと接触する複数のブロックと、前記複数のブロックに独立して上下動を伝える複数の駆動軸と、前記複数の駆動軸に独立して上下動を伝える複数のプランジャ機構と、前記複数のブロックのそれぞれの高さを測定するための複数の変位計と、を有する突上げユニットと、前記突上げユニットを制御する制御部と、を備える。前記複数の変位計は、前記複数のブロックまたは前記複数の駆動軸または前記複数のプランジャ機構に設けられる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイが貼付されたダイシングテープを保持するウエハ保持台と、
前記ダイシングテープと接触する複数のブロックと、前記複数のブロックに独立して上下動を伝える複数の駆動軸と、前記複数の駆動軸に独立して上下動を伝える複数のプランジャ機構と、前記複数のブロックのそれぞれの高さを測定するための複数の変位計と、を有する突上げユニットと、
前記突上げユニットを制御する制御部と、
を備え、
前記複数の変位計は、前記複数のブロックまたは前記複数の駆動軸または前記複数のプランジャ機構に設けられる半導体製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体製造装置において、
前記突上げユニットは、前記複数のプランジャ機構のそれぞれを作動させる複数のモータと、前記複数のモータのそれぞれの回転位置を検出する複数のエンコーダと、を備える半導体製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体製造装置において、
前記制御部は、前記複数の変位計によって測定された前記複数のブロックのそれぞれの高さと、前記複数のエンコーダによって検出された前記複数のモータのそれぞれの回転位置とを比較して、前記複数のブロックを作動させるよう構成される半導体製造装置。
【請求項4】
請求項2に記載の半導体製造装置において、
前記制御部は、前記複数の変位計によって測定された前記複数のブロックのそれぞれの高さと、前記複数のエンコーダによって検出された前記複数のモータのそれぞれの回転位置を比較して、前記複数のブロックの作動異常の判断を行うよう構成される半導体製造装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項の半導体製造装置において、
前記突上げユニットは、さらに、前記駆動軸を収納し、透磁素材で構成れる外周部を有し、
前記変位計は、前記駆動軸に設けられたマグネットと、前記外周部の外側面に設けられた検知部と、を備える半導体製造装置。
【請求項6】
請求項1から4の何れか1項の半導体製造装置において、
前記変位計は、レーザ変位センサ、分光干渉式センサまたは渦電流センサである半導体製造装置。
【請求項7】
請求項2の半導体製造装置において、
前記突上げユニットは、前記複数のブロックを有する第一ユニットと、前記駆動軸を有する第二ユニットと、前記複数のプランジャ機構を有する第三ユニットと、を備える半導体製造装置。
【請求項8】
請求項2の半導体製造装置において、
前記突上げユニットは、前記複数のブロックを有する第一ユニットと、前記駆動軸の上下動を前記複数のブロックに伝える第二ユニットと、前記駆動軸および前記複数のプランジャ機構を有する第三ユニットと、を備える半導体製造装置。
【請求項9】
請求項1から4の何れか1項の半導体製造装置において、
さらに、前記複数のブロックの所定動作シーケンスにおいて、前記複数の変位計の測定結果に基づいて前記複数のブロックのそれぞれの高さの制御を行うよう構成される制御部を備え、
前記所定動作シーケンスは、前記複数のブロックのブロック毎に複数のステップで構成され、前記複数のステップの各ステップの長さはブロックの上昇または下降が終了してから次のステップにおけるブロックの上昇または下降が始まるまでの時間で設定される半導体製造装置。
【請求項10】
請求項1から4の何れか1項の半導体製造装置において、
前記制御部は、前記複数のブロックの所定動作シーケンスにおいて、前記複数のブロックの各ブロックの高さを測定し、その測定値を記録するよう構成され、
前記所定動作シーケンスは、複数のブロックのブロック毎に複数のステップで構成され、前記複数のステップの各ステップの長さは時間で設定される半導体製造装置。
【請求項11】
請求項1から4の何れか1項の半導体製造装置において、
前記制御部は、
前記複数のブロックを前記ダイシングテープに接触させないで所定動作シーケンスを行う空動作時の前記複数のブロックの高さを測定して、その測定値を記録し、
前記複数のブロックを前記ダイシングテープに接触さて前記所定動作シーケンスを行う生産時の前記複数のブロックの高さを測定し、記録した前記測定値と前記生産時の測定値との変化量を算出し、前記変化量をフィードバックして前記空動作時と同様の高さを保つように前記複数のブロックの高さの制御を行うよう構成される半導体製造装置。
【請求項12】
請求項2から4の何れか1項の半導体製造装置において、
前記モータは、さらに、当該モータの電流を得る電流センサを備え、
前記制御部は、
生産前に、負荷ごとに、前記複数のブロックを所定動作シーケンスで動かす時の前記電流センサにより検出される電流に基づいて前記複数のブロックの作動における負荷量を測定すると共に、測定した当該負荷量に対するフィードバックゲインを求め、負荷量とフィードバックゲインとの関係のテーブルを作成し、
生産時に、前記複数のブロックを所定動作シーケンスで動かす時の前記電流センサにより検出される電流に基づいて前記複数のブロックの作動における負荷量を測定し、測定した当該負荷量に対するフィードバックゲインを前記テーブルから求めて前記複数のブロックの高さの制御を行うよう構成される半導体製造装置。
【請求項13】
請求項1から4の何れか1項の半導体製造装置において、
さらに、前記ダイを吸着するコレットを有するヘッドと、
前記制御部は、前記複数のブロックの高さの測定値に基づいて前記コレットの高さの制御を行うよう構成される半導体製造装置。
【請求項14】
ダイが貼付されたダイシングテープを保持するウエハ保持台と、
前記ダイシングテープと接触する複数のブロックと、前記複数のブロックに独立して上下動を伝える複数の駆動軸と、前記複数の駆動軸に独立して上下動を伝える複数のプランジャ機構と、前記複数のブロックのそれぞれの高さを測定する複数の変位計と、を有する突上げユニットと、
を備えるピックアップ装置。
【請求項15】
ダイが貼付されたダイシングテープを保持するウエハ保持台と、前記ダイシングテープと接触する複数のブロックと前記複数のブロックに独立して上下動を伝える複数の駆動軸と前記複数の駆動軸に独立して上下動を伝える複数のプランジャ機構と前記複数のブロックのそれぞれの高さを測定する複数の変位計とを有する突上げユニットと、を備える半導体製造装置にウエハリングを搬入する工程と、
前記ウエハリングが保持するダイシングテープからダイをピックアップする工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は半導体製造装置に関し、例えば突き上げユニットを有するダイボンダに適用可能である。
【背景技術】
【0002】
ダイボンダ等の半導体製造装置は、接合材料を用いて、例えば、素子を基板または素子の上にボンド(載置して接着)する装置である。接合材料は、例えば、液状またはフィルム状の樹脂やはんだ等である。素子は、例えば、半導体チップ、MEMS(Micro Electro Mechanical System)およびガラスチップ等のダイや電子部品である。基板は、例えば、配線基板や金属薄板で形成されるリードフレーム、ガラス基板等である。
【0003】
例えば、ダイボンダによるダイボンディング工程の中には、半導体ウエハ(以下、単に、ウエハという。)から分割されたダイをダイシングテープから剥離する剥離工程がある。剥離工程では、例えば、ダイシングテープ裏面から突上げユニットによってダイを突き上げて、ウエハ供給部に保持されたダイシングテープから、1個ずつ剥離し、ピックアップヘッドまたはボンドヘッドに設けられたコレット等の吸着ノズルを使ってダイがピックアップされる。
【0004】
例えば、特開2017-224640号公報(特許文献1)によれば、ダイシングテープに貼り付けられた複数のダイのうち剥離対象のダイを突き上げてダイシングテープから剥離する際に、突上げユニットは、複数の駆動軸によって複数のブロックを上下動させることでダイの周辺からダイシングテープを剥離している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-224640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の駆動軸は複数の駆動部(例えば、プランジャ機構)によって上下動させられるので、駆動部の剛性が低い場合、負荷量によっては複数のブロックの高さ(位置)が変動することがある。あるいは、複数のブロック間の高さ(位置)にズレが生じることがある。これらのいずれかによって、ダイの割れ不良や欠け不良が発生することがある。
【0007】
本開示の課題は、ダイの割れ不良や欠け不良を低減することが可能な技術を提供することにある。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
すなわち、半導体製造装置は、ダイが貼付されたダイシングテープを保持するウエハ保持台と、前記ダイシングテープと接触する複数のブロックと、前記複数のブロックに独立して上下動を伝える複数の駆動軸と、前記複数の駆動軸に独立して上下動を伝える複数のプランジャ機構と、前記複数のブロックのそれぞれの高さを測定するための複数の変位計と、を有する突上げユニットと、前記突上げユニットを制御する制御部と、を備える。前記複数の変位計は、前記複数のブロックまたは前記複数の駆動軸または前記複数のプランジャ機構に設けられる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ダイの割れ不良や欠け不良を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は実施形態におけるダイボンダの構成例を示す概略上面図である。
図2図2図1において矢印A方向から見たときの概略構成を説明する図である。
図3図3図1に示すウエハ供給部の主要部を示す概略断面図である。
図4図4図1に示すダイボンダの制御系の概略構成を示すブロック図である。
図5図5図1に示すダイボンダを用いた半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図6図6は実施形態における突上げユニットの縦断面を示す図である。
図7図7図6に示す突上げユニットの別の縦断面を示す図である。
図8図8図6に示す第1ユニットの一部の上面図である。
図9図9図7に示すE-E線における第2ユニットの一部の断面を示す図である。
図10図10図6に示す第3ユニットの一部の上面図である。
図11図11は突上げユニットのモータとモータ制御装置を示すブロック図である。
図12図12(a)~図12(d)はRMSの突上げシーケンスの一例を示す突上げユニットの断面図である。図12(a)は第一状態を示す図であり、図12(b)は第二状態を示す図であり、図12(c)は第三状態を示す図であり、図12(d)は第四状態を示す図である。
図13図13図12(a)~図12(d)のシーケンスのブロック動作タイミングの一例を示す図である。
図14図14図13のブロック動作タイミングに対応する高さ位置制御の場合のタイムチャートレシピの一例を示す図である。
図15図15図13のブロック動作タイミングに対応する第一変形例におけるタイムチャートレシピを示す図である。
図16図16は第二変形例におけるブロック高さの制御方法を示すフローチャートである。
図17図17は第三変形例におけるブロック高さの制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態および変形例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0012】
半導体製造装置の一実施形態であるダイボンダの構成について図1から図3を用いて説明する。図1は実施形態におけるダイボンダの構成例を示す概略上面図である。図2図1において矢印A方向から見たときの概略構成を説明する図である。図3図1に示すウエハ供給部の主要部を示す概略断面図である。
【0013】
ダイボンダ1は、大別して、ウエハ供給部10と、ピックアップ部20、中間ステージ部30と、ボンディング部40と、搬送部50、基板供給部60と、基板搬出部70と、制御部(制御装置)80と、を有する。Y方向がダイボンダ1の前後方向であり、X方向が左右方向であり、Z方向が上下方向である。ウエハ供給部10がダイボンダ1の前側に配置され、ボンディング部40が後側に配置される。
【0014】
ウエハ供給部10は、ウエハカセットリフタ11と、ウエハ保持台12と、突上げユニット13と、ウエハ認識カメラ14とを有する。
【0015】
ウエハカセットリフタ11は複数のウエハリングWRが格納されるウエハカセット(不図示)をウエハ搬送高さまで上下動させる。ウエハ修正シュート(不図示)はウエハカセットリフタ11から供給されるウエハリングWRのアライメントを行う。ウエハエキストラクタ(不図示)はウエハリングWRをウエハカセットから取出してウエハ保持台12に供給したり、ウエハ保持台12から取り出してウエハカセットに収納したりする。
【0016】
ウエハ保持台12は、ウエハリングWRを保持するエキスパンドリング121と、ウエハリングWRに保持されダイシングテープDTを水平に位置決めする支持リング122と、を有する。突上げユニット13は支持リング122の内側に配置される。
【0017】
ダイシングテープDT上にウエハWが接着(貼付)されており、そのウエハWは複数のダイDに分割されている。ダイシングテープDTは可視光に対して透明である。ウエハWとダイシングテープDTとの間にダイアタッチフィルム(DAF)と呼ばれるフィルム状の接着材料DFを貼り付けている。接着材料DFは加熱することで硬化する。
【0018】
ウエハ保持台12は図示しない駆動部によってXY方向に移動し、ピックアップするダイDを突上げユニット13の位置に移動させる。また、ウエハ保持台12は図示しない駆動部によってXY平面内においてウエハリングWRを回転またはXY移動させる。突上げユニット13は図示しない駆動部によって上下方向に移動する。突上げユニット13はダイシングテープDTからダイDを剥離する。ウエハ保持台12および突上げユニット13はピックアップ装置を構成する。ピックアップ装置にピックアップ部20を含めてもよい。
【0019】
ウエハ認識カメラ14はウエハWからピックアップするダイDのピックアップ位置を把握したり、ダイDの表面検査をしたりする。
【0020】
ピックアップ部20は、ピックアップヘッド21と、Y駆動部23と、を有する。ピックアップヘッド21には、剥離されたダイDを先端に吸着保持するコレット22が設けられる。ピックアップヘッド21はウエハ供給部10からダイDをピックアップし、中間ステージ31に載置する。Y駆動部23はピックアップヘッド21をY軸方向に移動させる。ピックアップ部20は、ピックアップヘッド21を昇降、回転及びX方向移動させる各駆動部(不図示)を有する。
【0021】
中間ステージ部30は、ダイDが載置される中間ステージ31と、中間ステージ31上のダイDを認識するためのステージ認識カメラ34と、を有する。中間ステージ31は載置されたダイDを吸着する吸引孔を備える。載置されたダイDは中間ステージ31に一時的に保持される。中間ステージ31はダイDが載置される載置ステージであると共に、ダイDがピックアップされるピックアップステージでもある。
【0022】
ボンディング部40は、ボンドヘッド41と、Y駆動部43と、基板認識カメラ44と、ボンドステージ46と、を有する。ボンドヘッド41にはダイDを先端に吸着保持するコレット42が設けられる。Y駆動部43はボンドヘッド41をY軸方向に移動させる。基板認識カメラ44は基板Sの位置認識マーク(図示せず)を撮像し、ボンド位置を認識する。ここで、基板Sには、最終的に一つのパッケージとなる、複数の製品エリア(以下、パッケージエリアPという。)が形成されている。位置認識マークはパッケージエリアPごとに設けられる。ボンドステージ46は、基板SにダイDが載置される際、上昇させられ、基板Sを下方から支える。ボンドステージ46は基板Sを真空吸着するための吸引口(不図示)を有し、基板Sを固定することが可能である。ボンドステージ46は基板Sを加熱する加熱部(不図示)を有する。ボンディング部40は、ボンドヘッド41を昇降、回転及びX方向移動させる各駆動部(不図示)を有する。
【0023】
このような構成によって、ボンドヘッド41は、ステージ認識カメラ34の撮像データに基づいてピックアップ位置や姿勢を補正し、中間ステージ31からダイDをピックアップする。そして、ボンドヘッド41は、基板認識カメラ44の撮像データに基づいて基板SのパッケージエリアP上にボンドし、または既に基板SのパッケージエリアPの上にボンドされたダイの上に積層する形でボンドする。
【0024】
搬送部50は、基板Sを掴み搬送する搬送爪51と、基板Sが移動する搬送レーン52と、を有する。基板Sは、搬送レーン52に設けられた搬送爪51の図示しないナットを搬送レーン52に沿って設けられた図示しないボールネジで駆動することによってX方向に移動する。このような構成によって、基板Sは、基板供給部60から搬送レーン52に沿ってボンド位置まで移動し、ボンド後、基板搬出部70まで移動して、基板搬出部70に基板Sを渡す。
【0025】
基板供給部60は、搬送治具に格納されて搬入された基板Sを搬送治具から取り出して搬送部50に供給する。基板搬出部70は、搬送部50により搬送された基板Sを搬送治具に格納する。
【0026】
次に、制御部80について図4を用いて説明する。図4図1に示すダイボンダの制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0027】
制御系8は、制御部(制御装置)80、駆動部86、信号部87、光学系88等を備える。制御部80は、大別して、主としてCPU(Central Processing Unit)で構成される制御・演算装置81と、記憶装置82と、入出力装置83と、バスライン84と、電源部85とを有する。記憶装置82は、主記憶装置82aと補助記憶装置82bとを有する。主記憶装置82aは、処理プログラムなどを記憶しているRAM(Random Access Memory)で構成されている。補助記憶装置82bは、制御に必要な制御データや画像データ等を記憶しているHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等で構成されている。
【0028】
入出力装置83は、装置状態や情報等を表示するモニタ83aと、オペレータの指示を入力するタッチパネル83bと、モニタ83aを操作するマウス83cと、光学系88からの画像データを取り込む画像取込装置83dと、を有する。入出力装置83は、さらに、モータ制御装置83eと、I/O信号制御装置83fと、を有する。モータ制御装置83eは、ウエハ供給部10のXYテーブル(図示せず)やボンドヘッドテーブルのZY駆動軸、突上げユニット13の駆動部等を制御する。I/O信号制御装置83fは、後述する変位計等の種々のセンサや照明装置などの明るさを制御するスイッチやボリューム等を含む信号部87から信号を取り込み又は制御する。光学系88には、ウエハ認識カメラ14、ステージ認識カメラ34、基板認識カメラ44が含まれる。制御・演算装置81はバスライン84を介して必要なデータを取込み、演算し、ピックアップヘッド21等の制御や、モニタ83a等に情報を送る。
【0029】
ダイボンダ1を用いた半導体装置の製造工程の一部(半導体装置の製造方法)について図5を用いて説明する。図5図1に示すダイボンダを用いた半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。以下の説明において、ダイボンダ1を構成する各部の動作は制御部80により制御される。
【0030】
(ウエハ搬入工程:工程S1)
ウエハリングWRがウエハカセットリフタ11のウエハカセットに供給される。供給されたウエハリングWRがウエハ保持台12に供給される。なお、ウエハWは、予めプローバ等の検査装置により、ダイ毎に検査され、ダイの良、不良を示すウエハマップデータが生成されている。このウエハマップデータは制御部80の記憶装置に記憶される。
【0031】
(基板搬入工程:工程S2)
基板Sが格納された搬送治具が基板供給部60に供給される。基板供給部60で搬送治具から基板Sが取り出され、基板Sが搬送爪51に固定される。
【0032】
(ピックアップ工程:工程S3)
工程S1後、所望するダイDをダイシングテープDTからピックアップできるようにウエハ保持台12が動かされる。ウエハ認識カメラ14によりダイDが撮影され、撮影により取得された画像データに基づいてダイDの位置決めおよび表面検査が行われる。画像データを画像処理することによって、ダイボンダのダイ位置基準点からのウエハ保持台12上のダイDのずれ量(X、Y、θ方向)が算出されて位置決めが行われる。なお、ダイ位置基準点は、予め、ウエハ保持台12の所定の位置を装置の初期設定として保持されている。画像データを画像処理することによって、ダイDの表面検査が行われる。
【0033】
位置決めされたダイDは突上げユニット13およびピックアップヘッド21によりダイシングテープDTから剥離される。ダイシングテープDTから剥離されたダイDは、ピックアップヘッド21に設けられたコレット22に吸着、保持されて、中間ステージ31に搬送されて載置される。
【0034】
ステージ認識カメラ34により中間ステージ31の上のダイDが撮影され、撮影により取得された画像データに基づいてダイDの位置決めおよび表面検査が行われる。画像データを画像処理することによって、ダイボンダのダイ位置基準点からの中間ステージ31上のダイDのずれ量(X、Y、θ方向)が算出されて位置決めが行われる。なお、ダイ位置基準点は、予め、中間ステージ31の所定の位置を装置の初期設定として保持されている。画像データを画像処理することによって、ダイDの表面検査が行われる。
【0035】
ダイDを中間ステージ31に搬送したピックアップヘッド21はウエハ供給部10に戻される。上述した手順に従って、次のダイDがダイシングテープDTから剥離され、以後同様の手順に従ってダイシングテープDTから1個ずつダイDが剥離される。
【0036】
(ボンド工程:工程S4)
搬送部50により基板Sがボンドステージ46に搬送される。ボンドステージ46上に載置された基板Sが基板認識カメラ44により撮像され、撮影によって取得された画像データに基づいて基板Sの位置決めおよび表面検査が行われる。画像データが画像処理されることによって、ダイボンダ1の基板位置基準点からの基板Sのずれ量(X、Y、θ方向)が算出される。なお、基板位置基準点は、予め、ボンディング部40の所定の位置を装置の初期設定として保持されている。画像データが画像処理されることによって、基板Sの表面検査が行われる。
【0037】
工程S3において算出された中間ステージ31上のダイDのずれ量からボンドヘッド41の吸着位置が補正されてダイDがコレット42により吸着される。中間ステージ31からダイDを吸着したボンドヘッド41によりボンドステージ46に支持された基板Sの所定箇所にダイDがボンドされる。ここで、基板Sの所定箇所は、基板SのパッケージエリアP、または、すでに素子が載置されており、それに加える形で素子をボンドする際の領域、または、積層ボンドする素子のボンド領域である。基板認識カメラ44により基板SにボンドされたダイDが撮影され、撮影により取得された画像データに基づいてダイDが所望の位置にボンドされたかどうか等の検査が行われる。
【0038】
ダイDを基板Sにボンドしたボンドヘッド41は中間ステージ31に戻される。上述した手順に従って、次のダイDが中間ステージ31からピックアップされ、基板Sにボンドされる。これが繰り返されて基板SのすべてのパッケージエリアPにダイDがボンドされる。
【0039】
(基板搬出工程:工程S5)
ダイDがボンドされた基板Sが基板搬出部70に搬送される。基板搬出部70で搬送爪51から基板Sが取り出されて搬送治具に格納される。ダイボンダ1から基板Sが格納されている搬送治具が搬出される。
【0040】
上述したように、ダイDは、基板S上に実装され、ダイボンダ1から搬出される。その後、例えば、ダイDが実装された基板Sが格納された搬送治具がワイヤボンディング工程に搬送され、ダイDの電極はAuワイヤ等を介して基板Sの電極と電気的に接続される。そして、基板Sがモールド工程に搬送され、ダイDとAuワイヤとをモールド樹脂(図示せず)で封止することによって、半導体パッケージが完成する。
【0041】
積層ボンドする場合は、ワイヤボンディング工程に続いて、ダイDが実装された基板Sが載置格納された搬送治具がダイボンダに搬入されて基板S上に実装されたダイDの上にダイDが積層される。そして、ダイボンダから搬出された後、ワイヤボンディング工程でAuワイヤを介して基板Sの電極と電気的に接続される。第二段目より上のダイDは、上述した方法でダイシングテープDTから剥離された後、ボンディング部に搬送されてダイDの上に積層される。上記工程が所定回数繰り返された後、基板Sがモールド工程に搬送され、複数個のダイDとAuワイヤとをモールド樹脂(図示せず)で封止することによって、積層パッケージが完成する。
【0042】
次に、突上げユニット13について図6図10を用いて説明する。図6は実施形態における突上げユニットの縦断面を示す図である。図7図6に示す突上げユニットの別の縦断面を示す図である。図8図6に示す第1ユニットの一部の上面図である。図9図7に示すE-E線における第2ユニットの一部の断面を示す図である。図10図6に示す第3ユニットの一部の上面図である。
【0043】
図6に示すように、突上げユニット13は、第1ユニット131と、第1ユニット131が装着される第2ユニット132と、第2ユニット132が装着される第3ユニット133と、を備える。第2ユニット132および第3ユニット133は品種に関係なく共通な部分で、第1ユニット131は品種ごとに取替可能な部分である。第1ユニット131は治工具とも称する。
【0044】
図6から図8に示すように、第1ユニット131は、四つのブロックA1~A4を有するブロック部1311と、ドーム1312と、変換機構1313と、周辺ダイの吸引機構1314と、ドームの吸引機構1315と、を有する。ドーム1312は上部に開口を有し、ブロックA1~A4はその開口を通して上下運動する。なお、第1ユニット131が四つのブロックA1~A4で構成される場合を説明するが、本実施形態では六つまでのブロックで構成することが可能である。
【0045】
変換機構1313は、第2ユニット132の同心円状の四つのブロックB1~B4の上下運動を同心四角状の四つのブロックA1~A4の上下運動に変換する。四つのブロックA1~A4は独立に上下運動が可能である。同心四角状のブロックA1~A4の平面形状はダイDの形状に合うように構成される。ダイサイズが大きい場合や剥離制御を細かくしたい場合は、同心四角状のブロックの数は4つよりも多く構成される。これは、第3ユニット133の複数の出力部および第2ユニット132の同心円状のブロックが互いに独立に上下動する(上下動しない)ことにより可能となっている。四つのブロックA1~A4の突上げ速度、突上げ量をプログラマブルに設定可能である。
【0046】
吸引機構1314はドーム1312の上面に設けられる吸引孔と連通し真空ポンプに接続される。吸引機構1314はブロックA1~A4の間隙と連通し真空ポンプに接続される。
【0047】
図6図7および図9に示すように、第2ユニット132は、円管状のブロックB1~B6と、変換機構1323と、マグネットMG1~MG6と、それらを覆う外周部(ドーム)1322と、外周部1322の外面側に設けられる検知部KC1~KC6と、を有する。外周部1322は透磁素材で構成される。この構成により、ブロックB1~B6の高さを測定することが可能である。ブロックB1~B6または変換機構1323とブロックA1~A6との相対的な高さおよび測定したブロックB1~B6または変換機構1323の高さに基づいてブロックA1~A6の高さを求める(測定する)ことが可能になる。マグネットMG1~MG6および検知部KC1~KC6によって六つのマグネットセンサ(変位計)が構成される。なお、変位計は、各ブロックの平坦度を測定するものではなく、ブロックの相対的位置関係を把握できればよいので、変位計としてマグネットセンサ等のそれほど高くない精度のセンサであればよい。
【0048】
変換機構1323は、第3ユニット133の円周上に配置されるピンC1~C6の上下運動を同心円状の六つのブロックB1~B6の上下運動に変換する。変換機構1323の下部においては、各ブロックB1~B6は外周部1322に隣接する部分を有する。各ブロックB1~B6の外周部1322に隣接する部分にマグネットMG1~MG6が取り付けられる。変換機構1323の上部においては、ブロックB6は最外周に位置し、ブロックB5はブロックB6に隣接して内側に位置し、ブロックB4はブロックB5に隣接して内側に位置し、ブロックB3はブロックB4に隣接して内側に位置し、ブロックB2はブロックB3に隣接して内側に位置し、ブロックB1はブロックB2に隣接して最内側に位置する。六つのブロックB1~B6は独立に上下運動が可能である。ブロックB1~B6または変換機構1323を駆動軸という。なお、ブロックB1~B6と変換機構1323は一体的に形成されているが、これに限定されるものではない。
【0049】
図6図7および図10に示すように、第3ユニット133は中央部1330と6つの周辺部1331~1336とを備える。中央部1330の上部に円筒状の出力部1330aを備える。出力部1330aは上面の円周上に等間隔に配置され独立して上下する六つのピンC1~C6を有する。周辺部1331~1336はそれぞれピンC1~C6を互いに独立に駆動可能である。周辺部1331~1336はそれぞれモータM1~M6を備え、中央部1330にはモータの回転をカムまたはリンクによって上下動に変換するプランジャ機構P1~P6を備える。プランジャ機構P1~P6はピンC1~C6に上下動を与える。なお、モータM2、M5およびプランジャ機構P2、P5は図示されていない。
【0050】
ピンC1~C6にマグネットMG1~MG6を設け、出力部1330aまたは第2ユニット132の外周部1322の外面側に検知部KC1~KC6を設けてもよい。この場合、ピンC1~C6を駆動軸という。これにより、ピンC1~C6の高さを測定することが可能である。ピンC1~C6とブロックA1~A6との相対的な高さおよび測定したピンC1~C6の高さに基づいてブロックA1~A6の高さを求める(測定する)ことが可能になる。
【0051】
モータM1~M6の構成例について図11を用いて説明する。図11は突上げユニットのモータとモータ制御装置を示すブロック図である。
【0052】
モータM1~M6には、例えばACサーボモータまたはαステップのパルスモータ(通常時はオープンループ制御を行い、過負荷時はクローズドループ制御を行うハイブリッド制御のステッピングモータ)が使用される。モータM1~M6は、それぞれ回転角速度を検出するエンコーダ(ENC)Maおよびモータ電流を得る電流センサ(CS)Mbを備える。
【0053】
ここで、第1ユニット131は四つのブロックA1~A4しか有さないので、第2ユニット132のブロックB5,B6、第3ユニット133のピンC5,C6、プランジャ機構P5,P6、モータM5,M6、マグネットMG5,MG6および検知部KC5,KC6は使用されない。
【0054】
突上げユニット13は、例えば、ブロックA1~A4を同時に突上げ、その後さらに、ブロックA1~A3を同時に突上げ、その後さらに、ブロックA1,A2を同時に突上げ、その後さらに、ブロックA1を突上げてピラミッド状にする動作を行うことが可能である。突上げユニット13は、ブロックA1~A4を同時に突上げてからブロックA4、ブロックA3、ブロックA2の順に下げる動作を行うことが可能である。本開示では、前者をMS(Multi Step)動作、後者をRMS(Reverse Multi Step)動作という。
【0055】
RMS動作について図12(a)~図12(d)を用いて説明する。図12(a)~図12(d)はRMSの突上げシーケンスの一例を示す突上げユニットの断面図であり、図12(a)は第一状態を示す図であり、図12(b)は第二状態を示す図であり、図12(c)は第三状態を示す図であり、図12(d)は第四状態を示す図である。
【0056】
ピックアップ動作はダイシングテープDT上の目的とするダイDが突上げユニット13とコレット22に位置決めされるところから開始する。位置決めが完了すると突上げユニット13の図示していない吸引孔および間隙を介して真空引きすることによって、ダイシングテープDTが突上げユニット13の上面に吸着される。このとき、ブロックA1~A4の上面はドーム1312の上面と同一の高さ(初期位置)にある。その状態で真空供給源から真空が供給され、コレット22がダイDのデバイス面に向けて真空引きしながら降下し、着地する。
【0057】
その後、図12(a)に示すように、ブロックA1~A4が同時に所定の高さまで一定の速度で上昇して第一状態になる。コレット22はブロックA1~A4に連動して(高さに同期して)上昇するよう制御される。よって、ダイDはコレット22とブロックA1~A4に挟まれたまま上昇する。ダイシングテープDTの周辺部は突上げユニット13の周辺であるドーム1312に真空吸着されたままなので、ダイDの周辺で張力が生じる。その結果、ダイD周辺でダイシングテープDTの剥離が開始されることになる。
【0058】
続いて、図12(b)に示すように、ブロックA4がドーム1312の上面よりも下の所定の高さに一定の速度で下降して第二状態になる。ブロックA4がドーム1312の上面よりも下がることにより、ダイシングテープDTの支えがなくなり、ダイシングテープDTの張力によりダイシングテープDTの剥離が進行する。
【0059】
続いて、図12(c)に示すように、ブロックA3がドーム1312の上面よりも下の所定の高さに一定の速度で下降して第三状態になる。ブロックA3がドーム1312の上面よりも下がることにより、ダイシングテープDTの支えがなくなり、ダイシングテープDTの張力によりダイシングテープDTの剥離がさらに進行する。
【0060】
続いて、図12(d)に示すように、ブロックA2がドーム1312の上面よりも下の所定の高さに一定の速度で下降して第四状態になる。ブロックA2がドーム1312の上面よりも下がることにより、ダイシングテープDTの支えがなくなり、ダイシングテープDTの張力によりダイシングテープDTの剥離がさらに進行する。
【0061】
その後、コレット22を上方に引き上げる。また、第四状態から所定時間後ブロックA2~A4が一定の速度で上昇し、ブロックA1が一定の速度で下降し初期位置に戻る。これにより、ダイDをダイシングテープDTから剥がす作業が完了する。
【0062】
次に、RMSの動作の設定方法および制御について説明する。タイムチャートレシピには、例えば、突上げユニット13の各ブロックA1,A2,A3,A4の動作をブロック毎およびステップ毎にステップの時間、ブロックの上昇または下降の速度、ブロックの高さ(位置)が設定される。時間制御の場合はステップの時間が設定され、位置制御の場合はブロックの高さが設定される。制御部80は、タイムチャートレシピに基づいてピンC1~C4およびブロックB1~B4を介して各ブロックA1~A4をそれぞれ駆動するモータM1~M4を制御する。
【0063】
設定項目の異なる複数のタイムチャートレシピを用意しておき、オペレータは、GUI(Graphical User Interface)によって複数のタイムチャートレシピから一つのタイムチャートレシピを選択し、選択したタイムチャートレシピの項目に設定値を入力する。または、オペレータは、予め設定値が入力されたタイムチャートレシピを外部機器からダイボンダ等の半導体製造装置にデータ通信したり、外部記憶装置から半導体製造装置にインストールしたりする。ここで、外部記憶装置は、例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリである。また、制御部80は検知部KC1~KC4により検知したブロックA1~A4のそれぞれの高さに基づいてリアルタイムにタイムチャートレシピを書換えて突上げユニット13に指示して突上げ動作の変更が可能である。
【0064】
タイムチャートレシピの一例について図13および図14を用いて説明する。図13はRMS動作におけるブロック動作タイミング例を示す図である。図14図13のブロック動作タイミングに対応する高さ位置制御の場合のタイムチャートレシピの一例を示す図である。図13の横軸は時間(t)であり、縦軸は突上げ高さ(h)である。
【0065】
図14に示すタイムチャートレシピは、各ブロックの動作を指示したブロック位置(高さ)に到達したことを優先として各ステップを終了し、各ブロック間の処理時間の調整に動作時間差(時間差またはインターバル時間)を入力して各ブロック動作を実行する。言い換えると、時間差は各ブロックの上昇または下降が終了してから次のステップの開始する時間である。ブロックの上昇または下降の終了は変位計の測定値とタイムチャートレシピで設定されたブロックの位置(高さ)との比較によって判断される。これにより、各ブロックの動作をステップ毎に確実に実施した上で、他のブロックとの動作の同期も取って動作させることができる。
【0066】
(1)ブロックA4
制御部80はブロックA4を第一ステップの始まりからs1の速度でh1の高さまで上昇させ、h1の高さで状態を維持する。ここで、図13に示すように、ブロックA4がh1に到達する時間をt1とすると、t1=h1/s1である。ブロックA1の第一ステップ(STEP1)は図12(a)の第一状態に対応する。第一ステップ(STEP1)における時間差、すなわち、ブロックA4の上昇終了後、第二ステップ(STEP2)を開始するまでの時間(待機時間)はt2である。
【0067】
制御部80はブロックA4を第二ステップ(STEP2)の始まりからs2の速度で-h2の高さまで下降させ、-h2の高さで状態を維持する。ここで、図13に示すように、ブロックA1が所定の高さ(-h2)に到達する時間をt3とすると、t3=(h1+h2)/s2である。ブロックA1の第二ステップ(STEP2)は図12(b)の第二状態から第四状態に対応する。第二ステップ(STEP2)における時間差は、すなわち、ブロックA1の下降終了後、第三ステップ(STEP3)を開始するまでの時間は(t4+t5+t6)である。
【0068】
制御部80はブロックA4を第三ステップ(STEP3)の始まりからs3の速度で初期位置(高さが0)まで上昇させる。ここで、ブロックA1が初期位置に到達する時間をt8とすると、t8=h2/s3である。第三ステップ(STEP3)における時間差は、すなわち、ブロックA4の上昇終了後、第四ステップ(STEP4)を開始するまでの時間はt9である。
【0069】
(2)ブロックA3
制御部80はブロックA3を第一ステップ(STEP1)の始まりからs1の速度でh1の高さまで上昇させ、h1の高さで状態を維持する。ブロックA2の第一ステップ(STEP1)は図12(a)の第一状態および図12(b)の第二状態に対応する。第一ステップ(STEP1)における時間差、すなわち、ブロックA3の上昇終了後、第二ステップ(STEP2)を開始するまでの時間は(t2+t10)である。
【0070】
制御部80はブロックA3を第二ステップの始まりからs2の速度で-h2の高さまで下降させ、-h2の高さで状態を維持する。ブロックA3の第二ステップ(STEP2)は図12(c)の第三状態および図12(d)の第四状態に対応する。第二ステップ(STEP2)における時間差は、すなわち、ブロックA3の下降終了後、第三ステップ(STEP3)を開始するまでの時間は(t5+t6)である。
【0071】
制御部80はブロックA3を第三ステップ(STEP3)の始まりからs3の速度で初期位置(高さが0)まで上昇させる。第三ステップ(STEP3)における時間差は、すなわち、ブロックA3の上昇終了後、第四ステップ(STEP4)を開始するまでの時間はt9である。
【0072】
(3)ブロックA2
制御部80はブロックA2を第一ステップの始まりからs1の速度でh1の高さまで上昇させ、h1の高さで状態を維持する。ブロックA3の第一ステップ(STEP1)は図12(a)の第一状態、図12(b)の第二状態および図12(c)の第三状態に対応する。第一ステップ(STEP1)における時間差、すなわち、ブロックA2の上昇終了後、第二ステップ(STEP2)を開始するまでの時間は(t2+t10+t11)である。
【0073】
制御部80はブロックA2を第二ステップの始まりからs2の速度で-h2の高さまで下降させ、-h2の高さで状態を維持する。ブロックA2の第二ステップ(STEP2)は図12(d)の第四状態に対応する。第二ステップ(STEP2)における時間差は、すなわち、ブロックA2の下降終了後、第三ステップ(STEP3)を開始するまでの時間はt6である。
【0074】
制御部80はブロックA2を第三ステップ(STEP3)の始まりからs3の速度で初期位置(高さが0)まで上昇させる。第三ステップ(STEP3)における時間差は、すなわち、ブロックA2の上昇終了後、第四ステップ(STEP4)を開始するまでの時間はt9である。
【0075】
(4)ブロックA1
制御部80はブロックA1を第一ステップの始まりからs1の速度でh1の高さまで上昇させ、h1の高さで状態を維持する。ブロックA1の第一ステップ(STEP1)は図12(a)の第一状態、図12(b)の第二状態、図12(c)の第三状態および図12(d)の第四状態に対応する。第一ステップ(STEP1)における時間差、すなわち、ブロックA1の上昇終了後、第二ステップ(STEP2)を開始するまでの時間は(t2+t10+t11+t12)である。
【0076】
制御部80はブロックA1を第二ステップの始まりからs4の速度で初期位置(高さが0)まで下降させる。ここで、ブロックA1が初期位置に到達する時間をt9とすると、t9=h1/s4である。第二ステップ(STEP2)における時間差は、すなわち、ブロックA4の下降終了後、第三ステップ(STEP3)を開始するまでの時間は0である。
【0077】
上述したタイムチャートレシピは、各ブロックの動作を指示したブロック位置(高さ)に到達したことを優先として各ステップを終了する。変位計によって各ブロックの高さを個別に測定し、変位計の測定結果(ブロック位置)に基づいて各ブロックの高さ制御を行う。これにより、負荷等の影響でモータ動作に遅延等が発生した場合でも、少なくともブロックの位置(高さ)、動作順序は必ず再現させることが可能となる。
【0078】
実施形態によれば、下記の少なくとも一つの効果を得る。
【0079】
(a)機構剛性が低い場合、ダイシングテープ、ダイシングテープ上のダイの数やダイサイズ、使用治工具(第1ユニット131)の種類等によってプランジャ機構に加わる荷重が変化することでプランジャ機構に撓みが発生する。撓みにより駆動軸の高さ変動や複数の駆動軸間の高さ変動(位置ズレ)が生じることがある。しかし、変位計で駆動軸の高さを測定してブロックの位置ズレを補正することにより、機構剛性をある程度低くしながら突上げ高さ精度を確保することが可能となる。
【0080】
(b)機構剛性を低くすることが可能であるので、突上げユニットの小型化または軽量化が可能となる。
【0081】
(c)変位計により各ブロックの高さを個別に測定することが可能であるので、複数の駆動軸による複数のブロック間の相対動作の再現性を確保することが可能になる。
【0082】
(d)変位計により突き上げ動作の異常を装置稼働中に常時監視することが可能であるので、不具合を未然に防止することが可能になる。
【0083】
(e)上記(a)~(d)により、ピックアップ精度、信頼度が向上し、ダイの割れ、欠け不良を低減することが可能になる。
【0084】
<変形例>
以下、実施形態の代表的な変形例について、幾つか例示する。以下の変形例の説明において、上述の実施形態にて説明されているものと同様の構成および機能を有する部分に対しては、上述の実施形態と同様の符号が用いられ得るものとする。そして、かかる部分の説明については、技術的に矛盾しない範囲内において、上述の実施形態における説明が適宜援用され得るものとする。また、上述の実施例の一部、および、複数の変形例の全部または一部が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
【0085】
(第一変形例)
第一変形例におけるタイムチャートレシピについて図13および図15を用いて説明する。図15図13のブロック動作タイミングに対応する第一変形例におけるタイムチャートレシピを示す図である。
【0086】
実施形態におけるタイムチャートレシピでは、次のステップの開始は各ステップにおけるブロックの高さで設定しているが、第一変形例におけるタイムチャートレシピでは各ステップの長さを時間で設定する。実施形態におけるタイムチャートレシピは、各ブロックの動作を指示したブロック位置(高さ)に到達したことを優先として各ステップを終了する。しかし、第一変形例におけるタイムチャートレシピでは各ブロックの動作を指示した時間になったことを優先してステップを終了する。第一変形例におけるタイムチャートレシピの「速度」および「高さ(位置)」は実施形態におけるタイムチャートレシピと同様である。
【0087】
図15に示すタイムチャートレシピに設定する「時間」について説明する。
【0088】
(1)ブロックA4
第一ステップ(STEP1)の時間は(t1+t2)である。第二ステップ(STEP2)の時間は(t3+t4+t5+t6)である。第三ステップ(STEP3)の時間は(t8+t9)である。
【0089】
(2)ブロックA3
第一ステップ(STEP1)の時間は(t1+t2+t10)である。第二ステップ(STEP2)の時間は(t3-t10+t4+t5+t6)である。第三ステップ(STEP3)の時間は(t8+t9)である。
【0090】
(3)ブロックA2
第一ステップ(STEP1)の時間は(t1+t2+t10+t11)である。第二ステップ(STEP2)の時間は(t3+t4+t5-t10-t11+t6)である。第三ステップ(STEP3)の時間は(t8+t9)である。
【0091】
(4)ブロックA1
第一ステップ(STEP1)の時間は、(t1+t2+t10+t11+t12)である。第二ステップ(STEP2)の時間はt7である。
【0092】
第一変形例におけるタイムチャートレシピでは各ブロックの動作を指示した時間になったことを優先してステップを終了する。各ブロックの実際の高さがタイムチャートレシピで設定された高さと異なることがある。そこで、変位計によって各ブロックの高さを個別に測定しその測定値を記録する。変位計によりブロックの高さを測定するので、突き上げ動作の異常を装置稼働中に常時監視することが可能である。これにより、不具合を未然に防止することが可能になる。
【0093】
(第二変形例)
第二変形例におけるブロック高さの制御方法について図16を用いて説明する。図16は第二変形例におけるブロック高さの制御方法を示すフローチャートである。
【0094】
(ステップS11)
生産前に、制御部80は、ブロックA1~A4をダイシングテープDTに接触させないで、生産時と同じタイムチャートレシピ、例えば、図14に示すタイムチャートレシピで規定される動作シーケンスを行う。これを空動作時の所定動作シーケンスという。制御部80は、所定動作シーケンスの各ステップにおいてブロックA1~A4の高さを測定し、その測定値を記録する。
【0095】
(ステップS12)
生産時に、制御部80は、図12(a)~図12(d)に示すようにブロックA1~A4をダイシングテープDTに接触さて、例えば図14に示すタイムチャートレシピで規定される動作シーケンスを行う。これを生産時の所定動作シーケンスという。制御部80は、所定動作シーケンスの各ステップにおいてブロックA1~A4の高さを測定する。
【0096】
(ステップS13)
制御部80は、空動作時のブロックA1~A4の高さの測定値と生産時のブロックA1~A4の測定値との変化量を算出する。
【0097】
(ステップS14)
制御部80は、変化量をフィードバックしてブロックA1~A4の高さの制御を行う。これにより、生産時のブロックA1~A4の高さを空動作時のブロックA1~A4の高さと同様の高さにすることが可能である。
【0098】
(第三変形例)
第三変形例におけるモータの負荷量に基づく制御について図17を用いて説明する。図17は第三変形例におけるブロック高さの制御方法を示すフローチャートである。
【0099】
モータ制御装置(MC)83eは、変位計による測定値、モータM1~M4の指令値(CV)、モータM1~M4のそれぞれに設けられるエンコーダMaにより検出されるモータM1~M4毎の回転角度に基づいてモータM1~M4の指令値(CV)を補正(例えば、加算)する。
【0100】
言い換えると、複数の変位計によって測定された複数のブロックA1~A4のそれぞれの高さと複数のエンコーダMaによって検出されたモータM1~M4の回転位置とを比較して、複数のブロックA1~A4が作動される。なお、複数の変位計によって測定された複数のブロックA1~A4のそれぞれの高さと複数のエンコーダMaによって検出されたモータM1~M4の回転位置とを比較して、複数のブロックA1~A4の作動異常の判断が行われるようにしてもよい。
【0101】
変位計によってブロックの高さを測定し、変位計の測定結果に基づいてブロックの高さを制御(フィードバック制御)する例を説明したが、負荷量に応じて最適なフィードバックゲインが異なることがある。例えば、ダイシングテープに貼付されているダイの数(ピックアップされずダイシングテープに残っている数)によって、モータの負荷量が変化する。よって、さらに、モータの負荷量を測定するようにしてもよい。
【0102】
(ステップS21)
生産前において、モータ制御装置83eは、生産時と同じタイムチャートレシピ、例えば、図14に示すタイムチャートレシピで規定される所定動作シーケンスに従って突上げユニット13のブロックA1~A4をモータM1~M4により作動させる。
【0103】
そして、モータM1~M4に設けられたエンコーダMaにより検出されるモータM1~M4の回転角度毎に、電流センサMbにより検出される電流(モータM1~M4が受ける負荷に基づくモータ電流)から、モータ制御装置83eによりトルク値(負荷量)を測定する。測定した負荷量とこの負荷量に対応するフィードバックゲインを記憶装置に格納しておく。負荷を変えて、上記の処理を繰り返し、負荷量とフィードバックゲインの関係のテーブルを作成する。
【0104】
(ステップS22)
生産時において、モータ制御装置83eは、所定動作シーケンスに従って突上げユニット13のブロックA1~A4をモータM1~M4により作動させる。
【0105】
そして、モータM1~M4に設けられたエンコーダMaにより検出されるモータM1~M4の回転角度毎に、電流センサMbにより検出される電流(モータM1~M4が受ける負荷に基づくモータ電流)から、モータ制御装置83eによりトルク値(負荷量)を測定する。
【0106】
(ステップS23)
制御部80は、測定した負荷量に対するフィードバックゲインをテーブルから取得してブロックA1~A4の高さを制御する。これにより、負荷量に応じた最適なフィードバックゲインで制御することが可能である。
【0107】
また、変位計の値、モータの負荷量、モータの指令値を生産中に常時監視するようにしてもよい。これにより、機構の不具合やダイシングテープの粘度などの特性変化を早期に発見することが可能であり、アラートを表示したり突上げ量の指令値を修正したりする。
【0108】
以上、本開示者らによってなされた開示を実施形態および変形例に基づき具体的に説明したが、本開示は、上記実施形態および変形例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0109】
例えば、実施形態では、変位計としてマグネットセンサを例に説明したが、これに限定されるものではなく、高精度を要求する場合、レーザ変位センサや分光干渉式センサ、コストを優先し、精度が比較的低くてよい場合は、渦電流センサを用いてもよい。
【0110】
また、実施形態では、変位計を駆動軸としてのブロックB1~B6、変換機構1323またはピンC1~C6に設けてブロック高さを測定する例を説明したが、変位計をブロックA1~A6またはプランジャ機構P1~P6に設けてもよい。
【0111】
また、実施形態では、ブロック数は四個の例を説明したが、ダイサイズに応じてブロック数が三個以下や五個以上であってもよい。
【0112】
また、実施形態では、突上げユニットの複数のブロックは同心四角状のものについて説明したが、同心円形状や同心楕円形状のものであってもよいし、四角状ブロックを平行に並べて構成してもよい。
【0113】
また、実施形態では、ダイアタッチフィルムを用いる例を説明したが、基板に接着剤を塗布するプリフォーム部を設けてダイアタッチフィルムを用いなくてもよい。
【0114】
また、実施形態では、ウエハ供給部からダイをピックアップヘッドでピックアップして中間ステージに載置し、中間ステージに載置されたダイをボンディングヘッドで基板にボンディングするダイボンダについて説明した。しかし、これに限定されるものではなく、ダイ供給部からダイをピックアップするダイボンディング装置に適用可能である。
【0115】
例えば、中間ステージとピックアップヘッドがなく、ウエハ供給部のダイをボンディングヘッドで基板にボンディングするダイボンダにも適用可能である。
【0116】
また、中間ステージがなく、ウエハ供給部からダイをピックアップしダイピックアップヘッドを上に回転してダイをボンディングヘッドに受け渡しボンディングヘッドで基板にボンディングするフリップチップボンダに適用可能である。
【0117】
実施形態では、ダイボンダを例に説明したが、ピックアップしたダイをトレイに載置する半導体製造装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0118】
1・・・ダイボンダ(半導体製造装置)
12・・・ウエハ保持台
13・・・突上げユニット
A1~A4・・・ブロック
B1~B4・・・ブロック(駆動軸)
1323・・・変換機構(駆動軸)
C1~C4・・・ピン(駆動軸)
P1~P4・・・プランジャ機構
80・・・制御部
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