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特開2024-87728評価方法、金属加工用銅部材および加工方法
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  • 特開-評価方法、金属加工用銅部材および加工方法 図1
  • 特開-評価方法、金属加工用銅部材および加工方法 図2
  • 特開-評価方法、金属加工用銅部材および加工方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087728
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】評価方法、金属加工用銅部材および加工方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/94 20060101AFI20240624BHJP
   B23K 1/20 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
G01N21/94
B23K1/20 H
B23K1/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202678
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100173598
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 桜子
(72)【発明者】
【氏名】小野 孝彦
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA37
2G051AB01
2G051CA04
2G051CA12
2G051CB01
2G051EB01
(57)【要約】
【課題】広い面積の部材の表面評価を非破壊で実施できる評価方法、良好な金属加工用銅部材および部材の加工方法を提供することができる。
【解決手段】洗浄後の物の表面の反射輝度を把握する工程と、把握した輝度が予め定められた明るさ以上である場合に良品であると判断する工程と、を備える評価方法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄後の物の表面の反射輝度を把握する工程と、
把握した輝度が予め定められた明るさ以上である場合に良品であると判断する工程と、
を備える評価方法。
【請求項2】
前記輝度を把握する物は、銅部材であることを特徴とする請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
前記予め定められた明るさが、標準白色板の輝度がXcd/mである入射光束に対する銅部材の反射輝度が(0.303X+95.7)cd/mであることを特徴とする請求項2に記載の評価方法。
【請求項4】
前記評価方法が、被測定物に光を照射するための光源と当該光源により反射した光を反射輝度として把握するための輝度計を備えた計測装置を用い、一辺が1mm以上2mm以下である長方形を1画素として、前記銅部材の表面を当該画素に分割し、各画素の反射輝度を求め、全ての画素の反射輝度が前記予め定められた明るさ以上である場合に良品であると判断することを特徴とする請求項3に記載の評価方法。
【請求項5】
標準白色板の輝度がXcd/mである入射光束に対する反射輝度が(0.303X+95.7)cd/m以上である、金属加工用銅部材。
【請求項6】
請求項5記載の金属加工用銅部材にはんだ材を接合する加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価方法、金属加工用銅部材および加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は酸化銅の厚みを検出する方法等に関する発明に関するものであり、「銅層と、上記銅層上に形成されている酸化銅とからなる構造の上記酸化銅の厚みを決定するための方法であって、上記構造の反射率を測定し、測定された反射率値を求めるステップと、上記測定された反射率値に基づいて上記酸化銅の厚みを決定するステップと、を含むことを特徴とする方法」が記載されている(請求項1等)。特許文献1では、エリプソメトリツールを用いて銅層を測定し、酸化銅層が厚くなる程、酸化銅層による光の吸収が大きくなり、その反射率は低くなることを利用し、酸化銅の厚みを求めている(特許文献1の[0017]段落、[0019]段落等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-62115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
銅、アルミニウム等の金属部材は、加工、溶接等の操作時の加熱、発熱等により金属部材の表面に酸化物の被膜が生成する。加工、溶接等の工程後に、半導体チップ、金属積層板などの部品と、金属部材を、はんだ等の接合材を介して接合、接着する場合、酸化物被膜は金属同士の接合を阻害する。接合阻害を避けるため、通常、洗浄等により酸化物被膜を除去する。
金属部材の洗浄による酸化物被膜の除去効果を評価する方法として、酸化物被膜の厚みをエリプソメトリー、光干渉計等により測定する方法(特許文献1等)が知られている。また、はんだを使用して他の金属部材と接合する場合、はんだ材の金属部材表面での接触角により、はんだ接合性を評価する方法が考えられる。接触角が小さいほど、金属表面とはんだとの濡れ性(親和性)が大きいため、酸化物被膜が十分除去された状態を示すためである。
しかしながら、特許文献1等に記載された酸化物被膜の厚みを検出する方法は、一回の測定により検出可能な面積が光のスポットサイズに限られ、最大でも1mm×3mm程度と局所的評価に限定されるため、金属部材の接合面全体を評価するには困難があった。また、はんだ材による接触角測定方法は、評価可能な領域面積が使用するはんだ材のサイズに限られ、更に、評価時のはんだ材の温度(例:220~370℃)により金属部材の被接合面が熱変化を受ける破壊評価になるという課題があった。
本発明は、広い領域の部材の表面評価を非破壊で評価できる評価方法、優れた金属加工用銅部材およびその加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かくして本発明の具体的形態は下記のとおりである。
<1>洗浄後の物の表面の反射輝度を把握する工程と、把握した輝度が予め定められた明るさ以上である場合に良品であると判断する工程と、を備える評価方法。
<2>前記輝度を把握する物は、銅部材であることを特徴とする<1>記載の評価方法。
<3>前記予め定められた明るさが、標準白色板の輝度がXcd/mである入射光束に対する反射輝度が(0.303X+95.7)cd/mであることを特徴とする<2>記載の評価方法。
<4>前記評価方法が、被測定物に光を照射するための光源と当該光源により反射した光を反射輝度として把握するための輝度計を備えた計測装置を用い、一辺が1mm以上2mm以下である長方形を1画素として、前記銅部材の表面を当該画素に分割し、各画素の反射輝度を求め、全ての画素の反射輝度が前記予め定められた明るさ以上である場合に良品であると判断することを特徴とする<3>記載の評価方法。
<5>標準白色板の輝度がXcd/mである入射光束に対する反射輝度が(0.303X+95.7)cd/m以上である、金属加工用銅部材。
<6> <5>記載の金属加工用銅部材にはんだ材を接合する加工方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、広い領域を非破壊で評価できる評価方法、優れた金属加工用銅部材およびその加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】銅部材サンプルの反射輝度を求める方法を示す模式図である。
図2】標準白色版の輝度(横軸)と銅の反射輝度(縦軸)の関係を示す図である。
図3】実施例におけるサンプルの反射輝度とはんだ接触角を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)について説明する。
なお、本開示において、数値範囲を表す「〇〇以上〇〇以下」や「〇〇~〇〇」の記載は、特に断りのない限り、記載された上限及び下限を含む数値範囲を意味する。
実施形態にかかる評価方法は、洗浄後の物の表面の反射輝度を把握する工程と、把握した輝度が予め定められた明るさ以上である場合に良品であると判断する工程と、を備えることを特徴とする。
洗浄対象物の反射輝度測定により、洗浄度合を判断する方法は、酸化物被膜の厚みを測定する方法と比較して、対象物を破壊しない検査であり、また、輝度測定は広い面積を一度に測定できるため、非常に優れている。
【0009】
<評価対象物>
本実施形態の評価方法において、評価対象となる物は、洗浄によって酸化被膜が除去されてその後の加工等に使用しうる物質であれば、特に限定は無い。特に酸化被膜を除去した後にはんだを接合する場合の評価に適しているため、通常は金属であるが、例えば、銅、鉄、アルミニウム、銀、錫、ビスマス、亜鉛、鉛、ニッケル、マンガン、ベリリウム、コバルト、チタン、リンおよびこれらの合金のいずれかからなる部材を例示でき、特に本発明の効果を得やすい観点から銅部材が好ましい。
使用する銅部材は、通常、銅の含有比率が50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。例えば、主な成分は銅であり、残部0.1質量%以下は不可避不純物からなる銅部材であっても良い。
【0010】
<洗浄>
評価対象物は、評価の前に洗浄を行う。
この洗浄は、表面の異物を除去し、表面の酸化物被膜を除去できる方法であれば従来公知の方法を適宜選択できる。
評価対象物として銅部材を使用する場合、ケトン、エーテル、アルコール、炭化水素などの有機溶媒で洗浄する方法が可能である。また、脂肪族低級メルカプタンを有効成分とする洗浄剤;酢酸、クエン酸等の有機酸;特開2014-51575号公報記載の組成物、特開平3-223482号公報記載の酸洗浄液等を洗浄に使用することができる。銅部材を溶解せずに酸化銅の被膜を除去でき、かつ、洗浄後の廃液から金属成分を除去して洗浄剤を再生できる観点から、脂肪族低級メルカプタンを有効成分とする洗浄剤が好ましい。
【0011】
以下、脂肪族低級メルカプタンを有効成分とする洗浄剤について説明する。
脂肪族低級メルカプタンとしては、例えばチオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリコール酸モノエタノールアミン、チオグリコール酸ジエタノールアミン、チオグリコール酸トリエタノールアミン等のチオグリコール酸誘導体、チオリンゴ酸モノエタノールアミン、チオリンゴ酸ジエタノールアミン、チオリンゴ酸トリエタノールアミン等のチオリンゴ酸誘導体、チオ乳酸などが挙げられる。これらの脂肪族低級メルカプタンは、被処理面の酸化銅を除去するための有効成分として作用する。
脂肪族低級メルカプタンを含有する洗浄剤は、水を溶媒として使用することが適している。水を溶媒とする場合、洗浄剤のpHは通常、6.0~9.0であり、好ましくは7.5~8.5であり、最も好ましくは8.0~8.5である。
【0012】
上記洗浄剤には、界面活性剤が含まれていても良い。界面活性剤としては、非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、非イオン系界面活性剤が好ましい。
非イオン系界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシアルキレンラウリルエーテル、フッ素系、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、特殊エーテル、高級脂肪酸アルキロールアミドなどが挙げられる。
洗浄剤に含まれる界面活性剤の含有量は、0.05~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましく、0.05~1質量%が最も好ましい。上記洗浄剤には、脂肪族低級メルカプタンの臭気を緩和するため、必要に応じて、香料が含まれていても良い。また、着色剤が含まれていてもよい。着色剤を含む場合には、使用程度に応じた洗浄剤の変色程度を把握しやすくなり、再生処理に適した時期を認識し易くなる。
【0013】
洗浄後、洗浄剤を除去する。
有機溶媒によって洗浄する場合は、有機溶媒を乾燥して除去することも可能である。しかし、前記脂肪族低級メルカプタンを有効成分とする洗浄剤の場合は、水洗が好ましい。また、上記本実施形態の銅部材を半導体部品などの絶縁性が必要な用途に使用する場合は、洗浄する水として例えば、電気伝導度0.1mS/m以下等の用途に適した電気伝導度が低いイオン交換水を使用することが好ましい。また、洗浄時に超音波振動を併用することも好ましい。
水洗後、部材を適宜乾燥する。例えば、130℃以下の乾燥炉内での乾燥、熱風乾燥等が可能である。
洗浄において、洗浄剤、洗浄温度、洗浄時間、水洗、乾燥等の条件を適宜選択し、被洗浄物である銅部材表面の反射輝度を好ましい値とする。
【0014】
<反射輝度測定>
洗浄後の部材表面の反射輝度を把握するために測定を行う。
本実施形態では、標準白色板からの輝度が特定の値になる入射光束における、銅部材表面の反射輝度を求める。計測装置は、少なくとも、被測定物に光を照射するための光源と当該光源により反射した光を反射輝度として把握するための輝度計を備える。使用できる市販の装置としては、「イメージングカメラシステム(外観検査装置) 」コニカミノルタ株式会社製が挙げられる。
銅部材表面の反射輝度は、測定する部材において、後の工程ではんだ材を接合する面全体について、各一辺が1mm以上2mm以下である長方形を1画素として、銅部材表面を分割し、画素(長方形)毎の反射輝度を求め、全ての画素の反射輝度が所定の明るさ以上である場合に、銅部材を良品であると判断する。
すなわち、画素の中で最小の反射輝度を示す画素の反射輝度を、その部材の反射輝度とする。そのため、銅部材表面の全体では良品より輝度が高くても、一つの画素でも、所定の明るさ以下である場合は、不良品と判断される。
【0015】
サンプルの反射輝度を求める方法を、模式図の図1を使用して説明する。図1の(a)は良品として評価されるサンプルの一部分の模式図、(b)は不良品として評価されるサンプルの一部分の模式図である。(a)および(b)における各正方形が画素であり、例えば一辺1.5mmの正方形であり、(a)および(b)それぞれが、各サンプル内の合計25個の画素部分を示している。反射輝度は、次の工程ではんだ材の接合など、次の工程に用いる銅部材の表面部分を対象として、測定する。
反射輝度は、画素毎に求める。そして、図1の(a)において、例えば、Aを付した画素の輝度がサンプル中の最も大きい反射輝度で855cd/m、Bを付した画素の輝度がサンプル中で最も小さい反射輝度で676cd/m、他の画素はAとBの間の反射輝度であるとすると、(a)のサンプルの反射輝度は、画素Bの反射輝度676cd/mと判断する。また、(b)において、Cを付した画素の輝度がサンプル中の最も大きい反射輝度で802cd/m、Dを付した画素の輝度がサンプル中で最も小さい反射輝度で519cd/m、他の画素はCとDの間の反射輝度であるとすると、(b)のサンプルの反射輝度は画素Dの519cd/mと判断する。
なお、標準白色板に光を照射する照明の光強度が変化し、この変化に伴って標準白色板の輝度が変化し、さらに銅部材表面の反射輝度が変化した場合の、標準白色板の輝度―銅(部材表面)の反射輝度の関係を求めた。具体的には、銅部材サンプルを固定し、照明の光強度を変更することによって標準白色板の輝度を変えた際の、銅部材の反射輝度を測定した。結果を表1、図2に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
図2中の直線は、上記測定値から最小二乗法により求めた一次式である、具体的な式は次の通りである。
銅の反射輝度(単位:cd/m)=0.303X+95.7
式中、Xは標準白色板の輝度(入射光束)であり、単位はcd/mである。Xは特に制限は無いが、銅部材の反射輝度の測定しやすさから、1000cd/m以上が好ましく、特に1100~1550cd/mが実用的である。標準白色板の材質は必要な輝度が得られれば限定はされないが、好ましい例としては、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム粉末を押し固めたセラミックス材やフッ素樹脂が挙げられる。
銅の反射輝度が上記式の右辺の0.303X+95.7以上である時に、銅は十分に洗浄され、酸化銅被膜が除去されてはんだ材の接合に適すると判断できる。すなわち、標準白色板の輝度(入射光束)が1400cd/mの場合は銅部材の反射輝度は520cd/m以上、標準白色板の輝度(入射光束)が1500cd/mの場合は銅部材の反射輝度は550.2cd/m以上の場合に、良品と判断される。
従って、銅の反射輝度は、0.303X+95.7より明るい時に、洗浄が十分であり、良品と判断できる。
銅部材表面の銅酸化膜被膜は、銅部材を洗浄後、次の加工を行うまでの時間において、温度、湿度、表面に接触している気体等の条件によっては、影響を受け、経時変化を生じて銅の酸化が進むこともありうる。通常は、1か月程度保管しても、酸化膜生成の度合いは1%程度であるが、本実施形態での反射輝度の把握は、好ましくは、次の加工を行う段階を評価するため、例えば加工を実施する数日前以内(3日前等)に測定をすることが好ましい。
【0018】
<加工>
良品と判断された銅部材は、金属加工用の銅部材として使用でき、次いで加工がおこなわれる。特には、はんだ材を用いて、他の金属と接合される。本実施形態の良品と判断された評価対象物は、実施例に記載するようにはんだ材の接触角が低く、つまり、はんだ材との親和性に優れるため、はんだ材の接合に適している。
はんだ材として使用されるはんだ合金は、特に限定されず、鉛を含む共晶はんだ、鉛フリーはんだ等を用いることができる。共晶はんだとしては、Sn-Pb系、Sn-Pb-Si系、Sn-Pb-Ag系のはんだが挙げられる。また、鉛フリーはんだとしては、Sn-Ag-Cu系、Sn-Cu系、Sn-Zn-Bi系のはんだが挙げられる。鉛フリーはんだとしては、これらのはんだに、さらに、ニッケル、ゲルマニウム、コバルト、シリコン等が添加されたものを用いてもよい。
【0019】
本実施形態の銅部材の用途は、特に限定されない。例えば、銅部材をヒートシンクとして用いる場合、はんだ材を介して、半導体モジュールの絶縁性基板と接合することができる。絶縁性基板は、全体として半導体素子とヒートシンクとを絶縁する物が使用される。
絶縁性基板としては、セラミックからなる絶縁層の一方の面および他方の面に、銅からなる配線層および伝熱層を接合したDCB(Direct Copper Bond)基板や、セラミック基板からなる絶縁層の両面にアルミニウムからなる配線層および伝熱層を接合したDAB(Direct Aluminum Bond)基板が例示される。前記絶縁層としては、例えばアルミナ(Al)、窒化ケイ素(Si)、窒化アルミニウム(AlN)等からなるセラミック基板を用いることができる。その結果、ヒートシンク(銅部材)―はんだ材―絶縁性基板の順に接合された構造体が製造される。
はんだによる接合は、例えばはんだ材を融点以上の温度、例えば、220~370℃にて溶融して銅部材上に配置し、続いて接合する絶縁性基板を配置すること、又は、銅部材と絶縁性基板を所定の位置に配置し、その間にはんだ材を流入して実施される。
その他の用途として、パワー半導体デバイス用の金属回路基板、リードフレーム、多層プリント配線板等が挙げられる。
【0020】
本発明は、以上の実施形態に限らず、本発明の思想内であれば、他の実施形態も可能である。
例えば、実施例では平面状のサンプルを用いたが、表面の反射輝度の測定が可能であれば、立体形状、曲面形状等も可能である。また、実施形態では、はんだ材を接合することを中心に説明したが、はんだ材を使用せず、他の金属部材と直接接合等を行うことも可能である。
本発明により、洗浄後の物の表面の反射輝度を把握することにより、対象物を破壊せず、かつ、広い面積の洗浄状態を容易に把握できるため、非常に優れた判断方法を提供することができる。本発明の評価方法を用い、好ましい洗浄方法を得ることにより、次の加工に良好に使用できる、金属加工用銅部材を提供することができる。更に、良好な金属加工用銅部材を用い、はんだ材を接合する加工方法を提供することができる。
【実施例0021】
以下、実施例により本発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。以下の説明において、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0022】
〔実施例〕
<銅部材の洗浄、水洗および乾燥>
縦52mm、横36mm、厚さ1mmの無酸素銅(C1020)板からなる銅部材サンプルを10枚用意した。銅等の酸化被膜除去用の洗浄剤「エスクリーン S-800」(佐々木化学薬品株式会社製)を表2記載の濃度に希釈した液をサンプル毎に200ml用意し、サンプルを25℃にて表2記載の時間浸漬した。
次いで、水洗として、電気伝導度0.1mS/m以下のイオン交換水をサンプル毎に200ml準備し、この交換水にサンプルを浸漬させ、超音波振動(400W、40MHz)を2分間行った。超音波振動終了後、イオン交換水を交換した。この操作を繰り返し、超音波振動操作を合計3回実施した。終了後のイオン交換水の電気伝導度は各サンプルについていずれも0.5mS/m以下であった。
次いで、サンプルに付着したイオン交換水を、空気圧0.4MPa以上のエアーブローイングで30秒以上吹き飛ばし、またはエアーブローイングを行わずに、その後、表2記載の乾燥温度の乾燥炉中で20分間乾燥し、評価対象の洗浄後の銅部材サンプル1~10を得た。
サンプル毎の洗浄条件(洗浄有無、洗浄剤濃度、洗浄剤への浸漬時間)、エアーブローイング有無、乾燥温度を表2にまとめて記載する。
【0023】
<銅部材評価>
洗浄後の銅部材サンプル1~10について、反射輝度とはんだ接触角の評価を行った。
[反射輝度]
下記の外観検査装置を使用し、洗浄後の銅部材サンプル1~10に対して、標準白色板の輝度が1500cd/mとなる入射光束を照射した際に、各サンプル面から反射した反射輝度(単位cd/m)を測定した。反射輝度は、測定時に銅部材サンプルの洗浄面全体を1.7mm×1.7mmの画素に分割し、画素毎の反射輝度を求め、サンプル内の最も反射輝度が低い画素の反射輝度を、当該サンプルの反射輝度とした。なお、使用した標準白色板はセラミックス材から形成されたものである。
「イメージングカメラシステム(外観検査装置) 」コニカミノルタ株式会社製
以下の装置から構成される。
・イメージング輝度計:IR-PMY29(Radiant Vision Systems社製)
・レンズ:EL-0100(Radiant Vision Systems社製)
・照明1―ドーム照明:HPD2-250SW(シーシーエス株式会社製)
・照明2―同軸落射照明:LFV3―70SW(シーシーエス株式会社製)
・イメージングソフトウェア:True Test(Radiant Vision Systems社製)
【0024】
[はんだ接触角]
銅部材サンプルの洗浄を行った面に対して、鉛フリーはんだM31 φ1mmボール球状(千住金属工業株式会社製)を用い、JIS Z 3198-3に記載されているはんだ濡れ広がり試験法に基づきはんだ接触角を求めた。
銅部材サンプルの反射輝度とはんだ接触角を表2に記載し、各銅部材サンプル1~10のはんだ接触角を縦軸、銅部材表面の反射輝度を横軸に示したグラフを図3に記載する。
【0025】
【表2】
出願人の経験では、金属部材表面でのはんだ接触角は小さいほど、洗浄による金属部材表面の酸化被膜は除去の程度は大きく、はんだ接合に適している状態である。特に接触角50度程度より小さい場合に適している。表2および図3の結果から、銅部材表面の反射輝度測定によって、輝度が高いほど、はんだ接触角が低い。はんだ接触角が低いことからは、酸化銅の被膜が除去されていると評価でき、その結果、加工する場合に良品と判断される。特にはんだ接触角が50度より低い、サンプル4~10は良品と判断できる。
但し、図3からサンプル3と4は、反射輝度はその差が10.5cd/mと近い数値であるのに対して、はんだ接触角の差は約60度と極めて大きい。反射輝度500cd/m前後において、サンプルの酸化銅被膜の除去の程度(酸化膜の厚み)が大きく変化すると推測されるため、実際の加工に用いる銅部材の反射輝度は550cd/m以上が好ましく、さらには600cd/m以上がより好ましい。
【符号の説明】
【0026】
1~10…銅部材サンプル
図1
図2
図3