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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087783
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】エッチング方法およびエッチング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023206042
(22)【出願日】2023-12-06
(31)【優先権主張番号】18/067,917
(32)【優先日】2022-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】佐古 卓司
(72)【発明者】
【氏名】野口 恭兵
(72)【発明者】
【氏名】細野 真樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 真弘
(72)【発明者】
【氏名】ジュレン アロザメナ
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004BA03
5F004BB25
5F004BB26
5F004CA02
5F004CA04
5F004DA00
5F004DA17
5F004DA20
5F004DA24
5F004DA26
5F004DB01
5F004EA28
5F004EB01
5F004EB04
(57)【要約】
【課題】基板に存在する深い凹部の側面に形成されたSiをエッチングする際に、表面ラフネスを良好にしつつエッチング後のSiの厚さを均一にできるエッチング方法およびエッチング装置を提供する。
【解決手段】基板に存在する凹部の側面に形成されたSiをエッチングするエッチング方法は、基板に対してラジカル酸化処理を施し、Siの表面に酸化膜を生成することと、酸化膜に対してガスによる化学的処理を行うことと、化学的処理により生成された反応生成物を除去することとを有し、酸化膜を形成することは、酸素含有ガスのプラズマによるラジカル処理を行う第1段階と、酸素含有ガスとエッチングガスのプラズマによりラジカル処理を行う第2段階とを有し、酸化膜を生成することと、化学的処理を行うことと、反応生成物を除去することを複数回繰り返す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に存在する凹部の側面に形成されたSiをエッチングするエッチング方法であって、
前記基板に対してラジカル酸化処理を施し、前記Siの表面に酸化膜を生成することと、
前記酸化膜に対してガスによる化学的処理を行うことと、
前記化学的処理により生成された反応生成物を除去することと、
を有し、
前記酸化膜を形成することは、酸素含有ガスのプラズマによるラジカル処理を行う第1段階と、酸素含有ガスとエッチングガスのプラズマによりラジカル処理を行う第2段階と、を有し、
前記酸化膜を生成することと、前記化学的処理を行うこと、前記反応生成物を除去することとを複数回繰り返す、エッチング方法。
【請求項2】
前記第1段階を行う際の圧力よりも前記第2段階を行う際の圧力のほうが低い、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記第1段階では前記凹部の上部のSiを酸化し、前記第2段階では前記凹部の下部のSiをエッチングしながら酸化する、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記酸素含有ガスは、Oガス単独、または、Oガスと、Hガスおよび希ガスの少なくとも1種との混合ガスである、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記エッチングガスはフッ素含有ガスを含む、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記フッ素含有ガスはNFガスである、請求項5に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記プラズマは、前記基板が配置される処理空間とは別個のプラズマ生成空間で生成されるリモートプラズマであり、前記プラズマ中のラジカルが前記基板に供給される、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記化学的処理を行うことと前記反応生成物を除去することとを複数回繰り返す、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記酸化膜を生成することと、前記化学的処理を行うこととを同一の処理容器内で実施する、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記化学的処理を行うことと、前記反応生成物を除去することとを同一の処理容器内で実施する、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項11】
前記酸化膜を生成することと、前記化学的処理を行うことと、前記反応生成物を除去することとを同一の処理容器内で実施する、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項12】
前記化学的処理を行うことと、前記反応生成物を除去することとを別個の処理容器で実施する、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項13】
前記凹部は、深さが4μm以上である、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項14】
前記凹部は、アスペクト比が60以上である、請求項13に記載のエッチング方法。
【請求項15】
前記ガスによる化学的処理は、フッ素含有ガスを含む処理ガスにより行う、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項16】
前記フッ素含有ガスを含む処理ガスは、フッ素含有ガスと、HOガスまたは還元性ガスとを含む、請求項15に記載のエッチング方法。
【請求項17】
前記フッ素含有ガスを含む処理ガスは、前記フッ素含有ガスとしてHFガスを含み、前記還元性ガスとしてNHガスを含む、請求項15に記載のエッチング方法。
【請求項18】
前記反応生成物は、前記化学的処理の後、生成されたフッ化アンモニウム系化合物である、請求項17に記載のエッチング方法。
【請求項19】
基板に存在する凹部の側面に形成されたSiをエッチングするエッチング装置であって、
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内に設けられた前記基板を載置する載置台と、
酸素含有ガスを含むガスのプラズマを生成して前記基板に対してラジカル酸化処理を行いSiの表面に酸化膜を生成するラジカル酸化機構と、
前記処理容器内に酸素含有ガスを含むガスを供給する第1のガス供給機構と、
前記処理容器内に前記酸化膜に対して化学的処理を行うガスを供給する第2のガス供給機構と、
前記載置台を温調する温調機構と、
前記処理容器内を真空排気する排気機構と、
制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記基板に対してラジカル酸化処理を施し、前記Siの表面に酸化膜を生成することと、
前記酸化膜に対してガスによる化学的処理を行うことと、
前記化学的処理により生成された反応生成物を除去することと、
が実行され、
前記酸化膜を形成することとして、酸素含有ガスのプラズマによるラジカル処理を行う第1段階と、酸素含有ガスとエッチングガスのプラズマによりラジカル処理を行う第2段階と、が実行され、かつ、前記酸化膜を生成することと、前記化学的処理を行うことと、前記反応生成物を除去することとを複数回繰り返すように、前記ラジカル酸化機構、前記第1のガス供給機構、前記第2のガス供給機構、前記温調機構、および前記排気機構を制御する、エッチング装置。
【請求項20】
前記処理容器を、上部のプラズマ生成空間および下部の処理空間に仕切る仕切部をさらに有し、前記ラジカル酸化機構は、前記プラズマ生成空間で酸素含有プラズマを生成し、前記仕切部を通過した酸素ラジカルにより前記基板にラジカル酸化処理を施す、請求項19に記載のエッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エッチング方法およびエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造過程では、シリコン(Si)をエッチングしてスリミングする工程がある。このような工程のエッチングではウエットエッチングが多用されている。例えば、特許文献1にはポリシリコンをウエットエッチングでエッチングする方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-260361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板に存在する深い凹部の側面に形成されたSiをエッチングする際に、表面ラフネスを良好にしつつエッチング後のSiの厚さを均一にできるエッチング方法およびエッチング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るエッチング方法は、基板に存在する凹部の側面に形成されたSiをエッチングするエッチング方法であって、前記基板に対してラジカル酸化処理を施し、前記Siの表面に酸化膜を生成することと、前記酸化膜に対してガスによる化学的処理を行うことと、前記化学的処理により生成された反応生成物を除去することと、を有し、前記酸化膜を形成することは、酸素含有ガスのプラズマによるラジカル処理を行う第1段階と、酸素含有ガスとエッチングガスのプラズマによりラジカル処理を行う第2段階と、を有し、前記酸化膜を生成することと、前記化学的処理を行うこと、前記反応生成物を除去することとを複数回繰り返す。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板に存在する深い凹部の側面に形成されたSiをエッチングする際に、表面ラフネスを良好にしつつエッチング後のSiの厚さを均一にできるエッチング方法およびエッチング装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係るエッチング方法の一例を示すフローチャートである。
図2】一実施形態のエッチング方法が適用される基板の構造の一例を示す断面図である。
図3】一実施形態に係るエッチング方法の他の例を示すフローチャートである。
図4図2の構造の基板においてSi膜をエッチングした状態を示す図である。
図5】凹部の側面に形成されたSi膜をエッチングする際に、ラジカル酸化処理を1段階で行った場合のSi膜のトップ-ボトムローディングを説明するための図である。
図6】ラジカル酸化処理の第1段階で凹部の上部のSi膜が酸化された状態を模式的に示す断面図である。
図7】ラジカル酸化処理の第2段階で凹部の下部のSi膜がエッチングされた状態を模式的に示す断面図である。
図8】ラジカル酸化処理の第2段階で凹部の下部のSi膜が酸化された状態を模式的に示す断面図である。
図9】一実施形態のエッチング方法に用いる処理システムの一例を概略的に示す部分断面平面図である。
図10図9の処理システムに搭載された、一実施形態のエッチング方法を実施するエッチング装置として機能するプロセスモジュールの一例を概略的に示す断面図である。
図11】実験例において、実験1~3の条件でSi膜をエッチングした際のトップ-ボトムローディングの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態について説明する。
【0009】
<エッチング方法>
図1は、一実施形態に係るエッチング方法の一例を示すフローチャートである。
本実施形態に係るエッチング方法は、基板に存在する凹部の側面に形成されたSi膜をエッチングするものである。最初に、凹部の側面にSi膜が形成された基板に対してラジカル酸化処理を施し、Si膜の表面に酸化膜を生成する(ステップST1)。次いで、酸化膜に対しガスによる化学的処理を行う(ステップST2)。次いで、ステップST2の化学的処理により生成された反応生成物を除去する(ステップST3)。これらのステップST1~ステップST3を複数回繰り返す。これにより、基板の凹部側面に存在するSi膜を所望の量でエッチングする。
【0010】
以下、詳細に説明する。
基板の構造としては、図2に示すように、基体100の上に構造部101を有し、構造部101に凹部102が形成され、凹部の側面にSi膜103が形成されたものが例示され、Si膜103がエッチング対象となる。基板としては、基体100がシリコンのような半導体で構成される半導体ウエハが例示される。凹部102としては、ホールやトレンチが例示される。また、凹部102の深さとしては、4μm以上が例示される。さらに、凹部102のアスペクト比としては、60以上が例示される。
【0011】
構造部101の構造は特に限定されないが、例えば、3D-NAND型不揮発性半導体装置に用いられる、SiO膜とSiN膜とが交互に複数積層されてなるONON積層構造部が例示され、この場合は、凹部102としてONON積層構造部の積層方向に貫通するメモリホールが例示される。メモリホールには、多層構造のメモリ膜を介してSi膜103としてチャネルとなる結晶Si膜が形成される。
【0012】
ステップST1のラジカル酸化処理は、酸素含有プラズマを生成し、処理容器内に収容された基板に対し、酸素含有プラズマ中の酸素ラジカル(Oラジカル)を作用させ、Siの表面に酸化膜(SiO膜)を形成する処理である。このとき、酸素含有プラズマ中の主にOラジカルを基板に供給可能なように、リモートプラズマを用いることが好ましい。リモートプラズマは、基板が配置される処理空間とは別個のプラズマ生成空間で酸素含有ガスのプラズマを生成させ、プラズマを処理空間に搬送する。酸素含有プラズマ中の酸素イオン(Oイオン)は搬送中に失活しやすく、主にOラジカルが処理空間に供給される。基板に対して主にOラジカルが作用することにより、基板に対するイオンダメージを低減することができる。プラズマ源は特に限定されず、誘導結合プラズマやマイクロ波プラズマ等を用いることができる。
【0013】
ステップST1のラジカル酸化処理は、主に酸素含有ガスのプラズマによるラジカル処理を行う第1段階(サブステップST1-1)と、酸素含有ガスとエッチングガスのプラズマによりラジカル処理を行う第2段階(サブステップST1-2)とを有する。第1段階では凹部の上部のSi膜をラジカル酸化し、第2段階では凹部の下部のSi膜をエッチングしながらラジカル酸化する。
【0014】
このとき用いる酸素含有プラズマを生成するための酸素含有ガスは、Oガス単独であってもよいし、Oガスと、Hガス、および希ガスの少なくとも1種との混合ガスであってもよい。希ガスは、特に限定されないが、Arガスが好ましい。Hガスを添加することにより酸化能力を高めることができる。
【0015】
第2段階で用いるエッチングガスとしては、フッ素含有ガスを含むガスを好適に用いることができる。フッ素含有ガスのプラズマに含まれるフッ素ラジカルによりSi膜およびSi酸化膜がエッチングされる。フッ素含有ガスとしてはNFガス、SFガス、Fガス等を用いることができる。これらの中ではNFガスが好適である。第2段階で用いるエッチングガスとしては、フッ素含有ガスの他にHガス等が含まれていてもよい。
【0016】
好適な具体例としては、第1段階をOガス、Hガス、Arガスを用いて行い、第2段階をこれらにさらにNFガスを加えて行う例を挙げることができる。この場合に、Hガスは酸化処理のガスとしてもエッチングのためのガスとしても機能する。
【0017】
ステップST1の際の圧力は、40~1500mTorr(53.3~199.9Pa)が好ましく、1000~1500mTorr(133.3~199.9Pa)がより好ましい。第2段階(サブステップST1-2)は、第1段階よりも低圧で行うことが好ましく、10~30mTorrの範囲が好ましい。このように第2段階(サブステップST1-2)を低圧で行うことにより、凹部のボトム側の酸化を促進することができる。ステップST1の際の基板温度は15~120℃の範囲が好ましい。また、ステップST1の時間は、第1段階も第2段階も20~150secの範囲が好ましい。各ガスの流量は、装置に応じて適宜設定される。
【0018】
ステップST2の酸化膜に対しガスによる化学的処理を行う工程では、ガスによる化学的処理として、フッ素含有ガスを含む処理ガスを用いた化学的処理を挙げることができる。この処理により、酸化膜と処理ガスとを反応させて、加熱等により除去可能な化合物を生成させる。
【0019】
処理ガスに含まれるフッ素含有ガスとしては、フッ化水素(HF)ガス等を挙げることができ、フッ素含有ガス以外のガスとしては、HOガス、および還元性ガスを挙げることができる。還元性ガスとしては、アンモニア(NH)ガス、アミン系ガスを挙げることができる。F含有ガスと、HOガスまたは還元性ガスとを酸化膜と反応させることにより、比較的容易に除去可能な化合物を生成することができる。
【0020】
これらの中では、フッ素含有ガスとしてHFガスを用い、還元性ガスとしてNHガスを用いたものが好ましい。HFガスとNHガスとにより、従来から酸化物除去処理として知られている化学的酸化物除去処理(Chemical Oxide Removal;COR)を行うことができる。COR処理では、酸化膜の表面にHFガスとNHガスとを吸着させ、これらを酸化膜と反応させてフッ化アンモニウム系化合物であるケイフッ化アンモニウム(AFS)を生成させる。
【0021】
このようなCOR処理では、圧力が6.66~400Pa(50~3000mTorr)の範囲が好ましく、13.3~266.6Pa(100~2000mTorr)の範囲がより好ましい。また、この際の基板温度は、0~120℃の範囲が好ましく、20~100℃の範囲がより好ましい。
【0022】
ステップST2は、ステップST1と同一の処理容器内で行うことができる。同一の処理容器内で行うことによりスループットを高めることができる。もちろん、これらを別個の処理容器で行ってもよい。
【0023】
ステップST3の反応生成物を除去する工程は、基板を所望の温度にした状態で、処理容器を排気しながら処理容器内に不活性ガスを供給することにより行われる。この工程は、ステップST2のガスによる化学的処理と同一の処理容器内で行ってもよいし、別個の処理容器で行ってもよい。いずれの場合も基板温度は適宜設定すればよく、ステップST2と同じでも異なっていてもよいが、ステップST3をステップST2と同一の処理容器内で行う場合は、基板温度をステップST2と同じ温度で行うことによりスループットを高めることができる。ステップST2がCOR処理のときは、同一の処理容器内でステップST2およびステップST3を行う際の基板温度は80~120℃の範囲が好ましい。ステップST3をステップST2と別個の処理容器で行う場合は、ステップST3をステップST2よりも高い温度に加熱して反応生成物の除去を促進してもよい。ステップST3を別個の処理容器で行う場合は、ステップST2の温度をより低温にすることができる。また、図3に示すように、ステップST2とステップST3とを繰り返してもよい。
【0024】
ガス種や、温度・圧力等の条件によっては、ステップST2とステップST3とを同時に行うことができる。例えば、COR処理をAFSが分解する温度で行うことにより、ステップST2のガスによる化学的処理と、ステップST3の反応生成物を除去する工程を同時に進行させることができる。また、全ての処理が終了した後、別個の処理容器で残渣除去のための加熱処理を行ってもよい。
【0025】
ステップST1~ステップST3までを同一の処理容器で行ってもよい。この場合は、スループットを高める観点から、ステップST1~ステップST3までを同じ温度で行うことが好ましく、ステップST2がCOR処理の場合、その際の基板温度は80~120℃の範囲が好ましい。
【0026】
図2に例示される基板の場合には、ステップST1~ステップST3が行われることにより、図4に示すように、Si膜103がエッチングされてスリミングされる。
【0027】
従来行われていたSiのウエットエッチングでは、Siの結晶粒界もしくは結晶面に沿ったエッチングが進むため、表面のラフネスが悪くなる。これに対し、本実施形態では、ラジカル酸化処理によりSi表面に酸化膜を生成することと、ガスによる化学的処理を含む処理により酸化膜を除去することとを繰り返す。このとき、ラジカル酸化処理は酸素ラジカルによる表面反応であるため、結晶粒界もしくは結晶面に依存せずに薄い酸化膜が形成され、次いで、その酸化膜のみを除去するので、表面ラフネスが良好である。そして、これらを所望の回数繰り返すことにより、良好な制御性で所望の量のエッチングを行うことができる。
【0028】
しかし、単に、酸素含有ガスのプラズマによるラジカル処理のみでは、凹部の深さが非常に深い場合、特に4μm以上の場合に、エッチング後の凹部側面のSi膜の厚さを均一にすることが困難となる。このような傾向は、凹部のアスペクト比が60以上の場合に顕著となる。具体的には、図5に示すように、エッチング後の凹部のボトム側においてSi膜の厚さが厚くなるトップ-ボトムローディングが生じてしまう。
【0029】
これは、凹部が深くなると、酸素ラジカルが凹部のボトム側まで到達し難く、ボトム側に到達する酸素ラジカルが少ないためと考えられる。すなわち、凹部のボトム側に到達する酸素ラジカルが少ないことにより凹部のボトム側のSi膜が酸化され難くなり、その結果、Si膜のボトム側のエッチング量が低下する。このため、エッチング後のSi膜はボトム側で厚くなってしまい、Si膜の厚さを均一にすることが困難となる。
【0030】
そこで、本実施形態では、ステップST1のラジカル酸化処理を、主に酸素含有ガスのプラズマによるラジカル処理を行う第1段階(サブステップST1-1)と、酸素含有ガスとエッチングガスのプラズマによりラジカル処理を行う第2段階(サブステップST1-2)の2段階で行う。
【0031】
このとき、第1段階では、酸素含有ガスのプラズマによるラジカル処理により、例えば図6に示すように、主にSi膜103の上部を酸化してSi酸化膜104を形成する。その後の第2段階では、Si膜の下部(ボトム側)をエッチングしながら酸化する。これにより例えば図7に示すように、上部のSi酸化膜104をマスクとしてエッチングガスのプラズマによるラジカル処理により凹部102の下部(ボトム側)のSi膜103をエッチングする。それと同時に、酸素含有ガスのプラズマによるラジカル処理により、例えば図8に示すように、凹部102の下部(ボトム側)のSi膜103を酸化する。
【0032】
このように、第2段階で凹部のボトム側のSi膜をエッチングすることにより、ボトム側のSi膜自体の膜厚を薄くするので、ステップST2およびステップST3を行った後にボトム側のSi膜の膜厚が厚くなることが抑制される。その結果、エッチング後のSi膜の厚さをトップからボトムまで均一にすることができる。
【0033】
また、第2段階の圧力を10~30mTorrと低圧にすることにより、凹部のボトム側の酸化を促進することができ、エッチング後のSi膜の均一化に有利である。
【0034】
<処理システムの一例>
次に、本実施形態のエッチング方法に用いる処理システムの一例について説明する。図9は、本実施形態のエッチング方法に用いる処理システムの一例を概略的に示す部分断面平面図である。
【0035】
図9に示すように、処理システム10は、複数の基板Wを保管し基板Wの搬入出を行う搬入出部11と、2枚の基板Wを同時に搬送する搬送室としてのトランスファモジュール12と、トランスファモジュール12から搬入された基板Wに処理を施す複数のプロセスモジュール13とを備える。各プロセスモジュール13およびトランスファモジュール12は内部が真空雰囲気に維持される。
【0036】
処理システム10では、搬入出部11に保管された基板Wをトランスファモジュール12に内蔵された搬送アーム14によって搬送し、プロセスモジュール13の内部に配置された2つのステージ15のそれぞれに1枚ずつ基板Wを載置する。次いで、処理システム10では、ステージ15に載置された各基板Wへプロセスモジュール13で処理を施した後に、処理済みの基板Wを搬送アーム14によって搬入出部11に搬出する。
【0037】
搬入出部11は、複数の基板Wを収容する容器であるFOUP16の載置台としての複数のロードポート17と、保管された基板Wを各ロードポート17に載置されたFOUP16から受け取り、または、プロセスモジュール13で処理が施された基板WをFOUP16に引き渡すローダーモジュール18と、ローダーモジュール18およびトランスファモジュール12の間において基板Wを受け渡しするために一時的に基板Wを保持する2つのロードロックモジュール19と、加熱処理が施された基板Wを冷却するクーリングストレージ20とを有する。
【0038】
ローダーモジュール18は内部が大気圧雰囲気の矩形の筐体からなり、その矩形の長辺を構成する一側面に複数のロードポート17が並設される。さらに、ローダーモジュール18は、内部においてその矩形の長手方向に移動可能な搬送アーム(図示せず)を有する。該搬送アームは各ロードポート17に載置されたFOUP16からロードロックモジュール19に基板Wを搬入し、または、ロードロックモジュール19から各FOUP16に基板Wを搬出する。
【0039】
各ロードロックモジュール19は、大気圧雰囲気の各ロードポート17に載置されたFOUP16に収容された基板Wを、内部が真空雰囲気のプロセスモジュール13に引き渡すため、基板Wを一時的に保持する。各ロードロックモジュール19は2枚の基板Wを保持するバッファープレート21を有する。また、各ロードロックモジュール19は、ローダーモジュール18に対して気密性を確保するためのゲートバルブ22aと、トランスファモジュール12に対して気密性を確保するためのゲートバルブ22bとを有する。さらに、ロードロックモジュール19には図示しないガス導入系およびガス排気系が配管によって接続され、内部が大気圧雰囲気と真空雰囲気とで切り替え可能となっている。
【0040】
トランスファモジュール12は未処理の基板Wを搬入出部11からプロセスモジュール13に搬入し、処理済みの基板Wをプロセスモジュール13から搬入出部11に搬出する。トランスファモジュール12は内部が真空雰囲気の矩形の筐体からなり、2枚の基板Wを保持して移動する2つの搬送アーム14と、各搬送アーム14を回転可能に支持する回転台23と、回転台23を搭載した回転載置台24と、回転載置台24をトランスファモジュール12の長手方向に移動可能に案内する案内レール25とを含む。また、トランスファモジュール12は、ゲートバルブ22b、さらに後述する各ゲートバルブ26を介して、搬入出部11のロードロックモジュール19、および、各プロセスモジュール13へ接続される。トランスファモジュール12では、搬送アーム14が、ロードロックモジュール19から2枚の基板Wを各プロセスモジュール13へ搬送し、処理が施された2枚の基板Wを各プロセスモジュール13から他のプロセスモジュール13やロードロックモジュール19に搬出する。
【0041】
処理システム10において、各プロセスモジュール13はエッチング対象部であるSi膜のエッチングを行うためのものである。プロセスモジュール13は、上記ステップST1~ST3を一括して行うものであってよいし、ステップST1およびステップST2を行うものと、ステップST3を行うものを別個に含んでいてもよい。
【0042】
処理システム10は、制御部27を有している。制御部27は、処理システム10の各構成要素の動作を制御するCPUを有する主制御部と、入力装置(キーボード、マウス等)、出力装置(プリンタ等)、表示装置(ディスプレイ等)、記憶装置(記憶媒体)を有している。制御部27の主制御部は、例えば、記憶装置に内蔵された記憶媒体、または記憶装置にセットされた記憶媒体に記憶された処理レシピに基づいて、処理システム10に所定の動作を実行させる。
【0043】
<エッチング装置>
次に、上記処理システム10に搭載された、本実施形態のエッチング方法を実施するエッチング装置として機能するプロセスモジュール13の一例について説明する。図10は、図9の処理システムにおいて、エッチング装置として機能するプロセスモジュール13の一例を概略的に示す断面図である。
【0044】
図10に示すように、エッチング装置として機能するプロセスモジュール13は、基板Wを収容する密閉構造の処理容器28を備える。処理容器28は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、上端が開放され、処理容器28の上端は天井部となる蓋体29で閉塞されている。処理容器28の側壁部28aには基板Wの搬出入口30が設けられ、当該搬出入口30は上述したゲートバルブ26によって開閉可能とされる。
【0045】
また、処理容器28の内部の底部には、上述したように、基板Wをそれぞれ1枚ずつ水平状態で載置する2つのステージ15(一方のみ図示されている)が配置されている。ステージ15は略円柱状を呈し、基板Wを直接載置する載置プレート34と、載置プレート34を支持するベースブロック35とを有する。載置プレート34の内部には基板Wを温調する温調機構36が設けられている。温調機構36は、例えば、温調媒体が循環する管路(図示せず)を有し、当該管路内を流れる温調媒体と基板Wの熱交換を行うことによって基板Wの温調を行う。制御温度が高温の場合は、温調機構36はヒーターであってもよく、温調媒体が循環する管路とヒーターの両方を設けてもよい。また、ステージ15には基板Wを処理容器28の内部へ搬出入する際に用いる複数の昇降ピン(図示せず)が載置プレート34の上面に対して突没可能に設けられている。
【0046】
処理容器28の内部は仕切板37によって上方のプラズマ生成空間Pと、下方の処理空間Sに仕切られる。仕切板37は、プラズマ生成空間Pにおいて誘導結合プラズマが生成される際にプラズマ中のイオンのプラズマ生成空間Pから処理空間Sへの透過を抑制する、いわゆるイオントラップとして機能する。プラズマ生成空間Pはプラズマが生成される空間であり、処理空間Sは基板Wにラジカル処理によるエッチングが施される空間である。処理容器28の外部には、第1のガス供給部61と第2のガス供給部62とが設けられている。
【0047】
第1のガス供給部61は、Oガス、Hガス、フッ素含有ガスであるNFガス、希ガス(例えばArガス)をプラズマ生成空間Pに供給する。これらのガスは、プラズマ生成空間Pでプラズマ化される。なお、希ガスはプラズマ生成ガスとして機能するが、圧力調整ガスやパージガス等としても機能する。
【0048】
第2のガス供給部62は、化学的処理に用いる処理ガス、例えば上述したようなHFガスとNHガス、および、調圧ガス、パージガスまたは希釈ガス等として用いられる希ガスを処理空間Sに供給する。
【0049】
処理容器28の底部には排気機構39が接続されている。排気機構39は真空ポンプを有し、処理空間Sの内部の排気を行う。
【0050】
仕切板37の下には、基板Wに対向するように遮熱板48が設けられている。遮熱板48は、プラズマ生成空間Pでのプラズマ生成を繰り返すことにより仕切板37に熱が蓄積されるため、その熱が処理空間Sにおけるラジカル分布に影響を与えることを抑制するためのものである。遮熱板48は、仕切板37よりも大きく形成され、周縁部を構成するフランジ部48aは処理容器28の側壁部28aに埋設されている。なお、フランジ部48aには冷却機構50、例えば、冷媒流路、チラーやペルチェ素子が埋設されている。
【0051】
処理容器28の天井部となる蓋体29は、例えば、円形の石英板から形成され、誘電体窓として構成される。蓋体29の上には、処理容器28のプラズマ生成空間Pに誘導結合プラズマを生成するための環状のRFアンテナ40が形成され、RFアンテナ40は整合器41を介して高周波電源42に接続されている。高周波電源42は、誘導結合の高周波放電によるプラズマの生成に適した所定の周波数(例えば13.56MHz以上)の高周波電力を所定の出力値で出力する。整合器41は、高周波電源42側のインピーダンスと負荷(RFアンテナ40やプラズマ)側のインピーダンスの整合をとるためのリアクタンス可変の整合回路(図示せず)を有する。
【0052】
なお、加熱処理のみを実施するプロセスモジュールを設ける場合は、上記構成のプロセスモジュールからプラズマ生成機構および仕切り板を除いた構成のものを用いる。
【0053】
上記処理システム10により、上記実施形態に係るエッチング方法を実施する際には、最初に、ローダーモジュール18の搬送アームによりFOUP16から、例えば図2に示された構造を有する基板Wを取り出し、ロードロックモジュール19に搬入する。ロードロックモジュール19を真空引きした後、ロードロックモジュール19内の基板Wをトランスファモジュール12の搬送アーム14により、エッチング装置として機能するプロセスモジュール13に搬入する。そして、エッチング装置として機能するプロセスモジュール13で、上述したステップST1~ステップST3に相当する処理を以下のようにして実施する。
【0054】
このとき、プロセスモジュール13のステージ15の温度は、予め、温調機構36により所望の基板温度に温調しておく。例えば、上述したステップST1~ステップST3までを同一の処理容器で行う場合の好ましい基板温度である80~120℃に温調しておく。この状態で、ステージ15上に載置された基板Wを所定時間、例えば120sec保持し、ウエハ温度を所定温度に安定化させる。
【0055】
次に、処理容器28内をパージした後、処理容器28内の圧力を、好ましくは40~1500mTorr(53.3~199.9Pa)、より好ましくは1000~1500mTorr(133.3~199.9Pa)とし、酸素含有プラズマを生成してステップST1のラジカル酸化処理を行う。
【0056】
ラジカル酸化処理を行うに際しては、まず、第1段階として、第1のガス供給部61からプラズマ生成空間Pへ酸素含有ガスを供給するとともに、RFアンテナ40に高周波電力を供給して誘導結合プラズマを生成する。プラズマ生成空間Pで生成されたプラズマは、仕切板37を介して処理空間Sに搬送される。この際に、仕切板37で酸素イオンが失活し、プラズマの中の主にOラジカルが選択的に処理空間Sに導入される。このOラジカルにより、基板Wの凹部側面に形成されたSi膜の上部がラジカル酸化され、酸化膜が生成される。
【0057】
次に、第2段階として、第1のガス供給部61からプラズマ生成空間Pへ酸素含有ガスおよびエッチングガスであるフッ素含有ガスを供給するとともに、RFアンテナ40に高周波電力を供給して誘導結合プラズマを生成する。プラズマ生成空間Pで生成されたプラズマは、仕切板37を介して処理空間Sに搬送され、酸素イオンおよびフッ素イオンは仕切板37で失活し、プラズマの中のOラジカルおよびFラジカルが選択的に処理空間Sに導入される。Fラジカルにより、基板Wの凹部側面の上部のSi酸化膜をマスクとして凹部の下部(ボトム側)のSi膜がエッチングされるとともに、Oラジカルにより、凹部の下部(ボトム側)のSi膜を酸化する。第2段階の圧力を10~30mTorrと低圧にすることにより、凹部のボトム側の酸化を促進することができる。
【0058】
このとき、酸素含有ガスとしては、Oガス単独でもよいし、Oガスに、Hガスを添加してもよい。また、さらにArガス等の希ガスを供給してもよい。また、エッチングガスであるフッ素含有ガスとしては、NFガスを用いることができ、Hガスを添加してもよい。
【0059】
ガス流量については、Oガス流量:20~200sccmが好ましい。また、Hガス、希ガス(Arガス)を供給する場合には、それぞれ200sccm以下、30~200sccmが好ましい。また、フッ素含有ガスであるNFガスの流量は、0.1~5sccmが好ましい。プラズマ生成パワーについては400~800Wが好ましい。
【0060】
以上のようなラジカル酸化処理の後、処理容器28内をパージし、酸化膜に対し、ステップST2のガスによる化学的処理を行う。このとき、処理容器28内の圧力を、好ましくは100~1500mTorr(13.3~200Pa)の範囲とし、温調機構36によりステージ15(基板W)の温度を80~120℃の温度に保持したまま、第2のガス供給部62からフッ素含有ガスを含む処理ガス、例えば、HFガスおよびNHガスを処理容器28の処理空間Sに供給する。これにより、処理ガスが酸化膜と反応して分解しやすい反応生成物が生成される。例えばHFガスおよびNHガスが基板Wに吸着し、これらが酸化膜と反応し、フッ化アンモニウム系化合物であるAFSを生成する。
【0061】
HFガスおよびNHガスを用いた場合のガス流量は、好ましくは、HFガス流量:50~100sccm、NHガス流量:300~400sccm、不活性ガス(Arガス)流量:200~400sccmとする。
【0062】
以上のような化学的処理の後、処理容器28内をパージし、ステップST3の反応生成物の除去処理を行う。ここでは、例えばフッ化アンモニウム系化合物であるAFSの除去処理を行う。AFSの除去は、温調機構36によりステージ15(基板W)の温度を80~120℃の温度に保持したままの状態で、処理容器28を排気しながら処理容器28内に不活性ガスを供給し、AFSを昇華させる。
【0063】
この反応生成物除去処理は、ラジカル酸化処理およびガスによる化学的処理と別個の装置の処理容器内で行ってもよい。この場合は、反応生成物除去処理をラジカル酸化処理およびガスによる化学的処理よりも高い温度、例えば300℃程度まで加熱してもよいため、ラジカル酸化処理およびガスによる化学的処理をより低温化することができる。
【0064】
以上のラジカル酸化処理、ガスによる化学的処理、および反応生成物の加熱除去処理を複数回繰り返し、所望の厚さでSi膜をエッチングする。このようにラジカル酸化処理を行って酸化膜を生成し、その後、ガスによる化学的処理および反応生成物の除去処理を行うので、良好な表面ラフネスでSi膜のエッチングを行うことができ、制御性も良好である。また、ラジカル酸化処理を第1段階および第2段階の2段階とすることで、基板の凹部の下部(ボトム側)のSi膜をエッチングしつつ酸化処理を行うことができるので、深い凹部であっても、エッチング後の凹部側面のSi膜の厚さを均一にすることができる。
【0065】
<実験例>
次に、実験例について説明する。
ここでは、図2に示す構造を有する基板に対して、図9、10に示す装置によりSi膜のエッチングを実施した。基板は、凹部として、深さが4μm以上、アスペクト比が60以上のホールを有し、ホールの側面に厚さ10nmのSi膜が形成されたものとした。
【0066】
この基板に対し、図10で示したエッチング装置を用いてSi膜のエッチングを行った。エッチングに際しては、本実施形態に従って、最初に2段階のラジカル酸化処理を行い、その後、Si酸化膜の除去処理である化学的処理を行い、さらに反応生成物除去処理を行った(実験1)。これらの条件を以下に示す。
【0067】
1.ラジカル酸化処理
・第1段階
圧力:50~100mTorr
温度:80~120℃
ガス流量:20~200sccm
Arガス流量:30~200sccm
時間:20~150sec
・第2段階
圧力:10~30mTorr
温度:80~120℃
ガス流量:20~200sccm
Arガス流量:30~200sccm
NFガス流量:0.1~5sccm
ガス流量:200sccm以下
時間:20~150sec
2.化学的処理
圧力:100~1500mTorr
温度:80~120℃
HFガス流量:50~100sccm
NHガス流量:300~400sccm
Arガス流量:200~400sccm
ガス流量:10~2000sccm
時間:60~300sec
3.反応生成物除去処理
温度:80~120℃
圧力:10~5000mTorr(1.33~667Pa)
ガス流量:10~2000sccm
【0068】
また、上記条件のうち、ラジカル酸化処理の第1段階および第2段階の条件を以下のように変更し、その後、実験1と同じ条件で化学的処理および生成物除去処理を行った(実験2)。
・第1段階
圧力:1000~1500mTorr
温度:80~120℃
ガス流量:20~200sccm
Arガス流量:30~200sccm
時間:20~150sec
・第2段階
圧力:10~30mTorr
温度:80~120℃
ガス流量:20~200sccm
Arガス流量:30~200sccm
NFガス流量:0.1~5sccm
ガス流量:200sccm以下
時間:20~150sec
【0069】
また、比較のため、ラジカル酸化処理を行わず、化学的処理および反応生成物除去処理を行った(実験3)。
【0070】
その結果、図11に示すように、実験3では、エッチング後のSi膜のトップ-ボトムローディングが4.3nmと大きな値となったが、ラジカル酸化処理を2段階で行った実験1ではSi膜のトップ-ボトムローディングが2.4nmに改善された。また、ラジカル酸化処理を2段階で行い、さらに条件をチューニングした実験2では、Si膜のトップ-ボトムローディングが0.4nmとなり、エッチング後のSi膜の厚さ均一性が極めて高いものとなった。
【0071】
<他の適用>
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0072】
例えば、上記実施形態の装置は例示に過ぎず、種々の構成の装置を用いることができる。また、被処理基板として半導体ウエハを用いた場合について示したが、半導体ウエハに限らず、LCD(液晶ディスプレイ)用基板に代表されるFPD(フラットパネルディスプレイ)基板や、セラミックス基板等の他の基板であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
13 プロセスモジュール(エッチング装置)
15 ステージ
28 処理容器
37 仕切板
39 排気機構
40 RFアンテナ
42 高周波電源
61 第1のガス供給部
62 第2のガス供給部
100 基体
101 構造部
102 凹部
103 Si膜
P プラズマ生成空間
S 処理空間
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11