(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088105
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】インキ、多層フィルムを含む積層体及び包装材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240625BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203106
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】木田 智久
(72)【発明者】
【氏名】古根村 陽之介
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA29
3E086BB02
3E086BB05
3E086CA01
3E086CA28
3E086CA32
3E086CA35
3E086CA40
4F100AK04B
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK63B
4F100AK64C
4F100AK67C
4F100BA04
4F100BA07
4F100GB15
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4F100JL12C
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、植物由来の樹脂を用いてバイオマス度を高めた場合にも優れた成膜性を有する多層フィルムと印刷層との密着性に優れた積層体、及びこれらの多層フィルム又は積層体からなる包装材を提供することである。
【解決手段】 少なくとも、第一の基材層と、印刷層が積層された積層体であって、
(1)第一の基材層が、
表層(A)、中間層(B)、シール層(C)を有し、
前記表層(A)がプロピレン系樹脂を含有し、
前記中間層(B)がバイオマスポリエチレンを含有し、
前記シール層(C)がプロピレン-エチレン共重合体を含有する多層フィルムであり、
(2)印刷層がリキッド印刷インキを印刷して成る層である
ことを特徴とする、積層体及び当該積層体を備える包装材を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、第一の基材層と、印刷層が積層された積層体であって、
(1)第一の基材層が、
表層(A)、中間層(B)、シール層(C)を有し、
前記表層(A)がプロピレン系樹脂を含有し、
前記中間層(B)がバイオマスポリエチレンを含有し、
前記シール層(C)がプロピレン-エチレン共重合体を含有する
多層フィルムであり、
(2)印刷層がリキッド印刷インキを印刷して成る層である
ことを特徴とする、積層体。
【請求項2】
前記印刷層が、植物由来原料を含むリキッド印刷インキを印刷して成る層である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
印刷層が、第一の基材層の表層(A)側にある、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の積層体を用いた包装材。
【請求項5】
食品用の包装袋である請求項4に記載の包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも、第一の基材層及び印刷層が積層された積層体に関する。さらには、該積層体を備える包装材等の包装製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境・生態系・社会経済等に配慮し、持続的に発展すべき循環型社会の構築(サステナビリティ)を求める声により、バイオマス原料への世界的な需要が高まっている。特に、国内流通大手や食品メ-カ-では、COP21への対応や、持続可能な開発目標(SDGs)の一つに掲げられている「持続可能な生産消費形態を確保する」という目標にむけた取り組みとして、環境負荷低減パッケ-ジを積極推進している。従来からの環境負荷低減パッケ-ジの取り組みは「3R」(減容化、再利用、リサイクル)の推進が図られてきたが、近年では、石油資源節約の観点からも、石油由来成分を主成分とした樹脂に換えて、植物由来成分を主原料とした樹脂(以下、「植物由来の樹脂」又は「バイオマス樹脂」と呼称することがある)の採用も増加している。
【0003】
バイオマスは、植物や生物から生まれた再利用可能な有機性の資源のうち、化石資源を除いたものである。植物由来の原料から製造されるバイオマス樹脂は、植物が大気中の二酸化炭素と水とを原料として光合成反応によって生成したものであり、このような樹脂を焼却して二酸化炭素が発生しても、大気中の二酸化炭素の収支はプラス・マイナス・ゼロになる、所謂『カーボンニュートラル』という考え方がなされている。この考え方を基本に、化石資源由来の樹脂に代えて、カーボンニュートラルが可能な植物由来のバイオマス原料から製造される樹脂を様々な材料に使用する検討が、種々の分野で積極的に行われている。
【0004】
植物由来のバイオマス樹脂としては、ポリ乳酸(PLA)に代表される生分解性樹脂があるが、当該樹脂はコストや加工性面で汎用化に問題があった。一方で、汎用樹脂としては、サトウキビ由来の再生可能資源である植物由来のポリエチレンが世界的な需要の高まりをみせ、生産量の増加によりコストも汎用的になっている。環境負荷低減パッケ-ジとしては、このような汎用の植物由来の樹脂をサニタリ-や食品の包装容器や雑貨やレジ袋に使用される例が多いが、最近になり、食品包装用フィルムへの採用が広がりつつある。
【0005】
植物由来の樹脂を使用した樹脂フィルムとしては、例えば、プロピレン系樹脂を主成分とし、一部層に植物由来の樹脂を含有する多層フィルムが開示されている(特許文献1)。しかし、これまで第一の基材層及び印刷層が積層された積層体において、各層は石油由来の材料を中心に形成されているため、積層体のバイオマス度は低く、改善が求められていた。
【0006】
さらに、植物由来のバイオマス樹脂は、環境対応性は高いものの石油由来の樹脂とは異なる性質を示すことが多く、単に置き換えることができない場合があった。例えば、石油由来の樹脂を植物由来の樹脂に置き換えてフィルムを作製すると、耐衝撃性、剛性、成膜性、光沢度、曇り度等のフィルムの各種物性が損なわれる場合があった。特に、植物由来の樹脂の割合を高くすると、フィルムの物性への影響が大きくなる。そのため、第一の基材層及び印刷層が積層された積層体において、積層体の機能を維持しつつ、積層体全体のバイオマス度を上げる必要がある。
【0007】
また、特に包材の外側のみにデザイン印刷する表刷りインキで印刷する場合、インキと基材が強力に密着することが求められる。インキに環境対応のため植物由来原料を使用することも広がっており、植物由来原料を使用しつつインキの密着性を向上する検討が進められている。インキと密着性のよいフィルムにより、インキに植物由来原料を使用する、あるいはインキ中の植物由来原料の使用量を増やす取り組みの促進が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、植物由来の樹脂を用いてバイオマス度を高めた場合にも優れた成膜性を有する多層フィルムと印刷層との密着性に優れた積層体、及びこれらの多層フィルム又は積層体からなる包装材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様においては、
少なくとも、第一の基材層と、印刷層が積層された積層体であって、
(1)第一の基材層が、
表層(A)、中間層(B)、シール層(C)を有し、
前記表層(A)がプロピレン系樹脂を含有し、
前記中間層(B)がバイオマスポリエチレンを含有し、
前記シール層(C)がプロピレン-エチレン共重合体を含有する多層フィルムであり、
(2)印刷層がリキッド印刷インキを印刷して成る層である
ことを特徴とする、積層体が提供される。
【0011】
また、本発明の態様においては、前記印刷層が、植物由来原料を含むリキッド印刷インキを印刷して成る層である、前記積層体が提供される。また、印刷層が、第一の基材層の表層(A)側にある、前記積層体が提供される。
【0012】
本発明の別の態様においては、前記積層体を備える包装材が提供される。また、当該包装材は、食品用の包装材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明による積層体は、バイオマス樹脂を含む多層フィルムを使用しており、環境負荷低減に貢献できる。また、印刷層と多層フィルムによる基材層との密着性が良好であるため、外観の優れた積層体とそれを備える包装材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(言葉の定義)
本発明において、「バイオマス」とは、「再生可能な、植物由来や生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」である。またバイオマス樹脂とは、植物由来の樹脂を指す。
また、本発明において「植物由来」とは植物等を原材料とすることを意味し、「石油由来」とは、石油等化石燃料を原材料とすることを意味している。
また、本発明において、「リキッド印刷インキ」とは、グラビア印刷インキ又はフレキソ印刷インキ等の、印刷版を使用する印刷方法に適用されるリキッド状のインキを指し、好ましくはグラビア印刷インキ又はフレキソ印刷インキである。また本発明のリキッド印刷インキは活性エネルギー硬化性の成分を含んでおらず、すなわち活性エネルギー線非反応性のリキッド印刷インキである。
また、本発明において「インキ」とは全て「印刷インキ」を示す。また「部」とは全て「質量部」を示す。
【0015】
<バイオマス度>
本発明における、「バイオマス度」とは、製品に含まれる植物由来成分の製品全体量に対する割合を指す。
<積層体>
本発明の積層体は、少なくとも第一の基材層である多層フィルム及び印刷層が積層されたものであり、(1)第一の基材層が、
表層(A)、中間層(B)、シール層(C)を有し、
前記表層(A)がプロピレン系樹脂を含有し、
前記中間層(B)がバイオマスポリエチレンを含有し、
前記シール層(C)がプロピレン-エチレン共重合体を含有する多層フィルムであり、
(2)印刷層がリキッド印刷インキを印刷して成る層である
ことを特徴とする。
【0016】
本発明の積層体の、より具体的な構成としては、
(1)多層フィルム/印刷層
(2)多層フィルム/印刷層/オーバーコート層
等が挙げられるがこれに限定されない。
また、本発明の積層体は、その他の層を1つ以上含んでいても良い。当該その他の層としては、基材層、接着層、バリア層、第二の印刷層等が挙げられるが、これに限定されない。
なお、当該基材層はシーラントフィルムでもよいし、未延伸フィルムでもよいし、延伸フィルムでもよいし、金属蒸着未延伸フィルムでもよいし、金属蒸着延伸フィルムでもよいし、透明蒸着フィルムでもよい。当該基材層が複数ある場合は、当該複数の基材層は同じ組成であっても良いし、異なる組成であってもよい。また、当該接着層は複数あってもよいし、複数の接着層は同じ組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0017】
本発明においては、積層体のバイオマス度が、2%以上であることが好ましく、3%以上60%以下であることがより好ましく、5%以上60%以下であることがさらに好ましい。バイオマス度が上記範囲であれば、石油由来プラスチックの使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。
【0018】
本発明の積層体の厚みは、10μm以上500μm以下であることが好ましく、20μm以上300μm以下であることがより好ましく、25μm以上200μm以下であることが更に好ましい。
【0019】
本発明の積層体は、第一の基材層及び印刷層以外に、オーバーコート層、バリア層、接着層、その他の基材層、第二の印刷層及び第三の印刷層等のその他の層を含んでいてもよい。当該その他の層を2層以上有する場合、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
以下、積層体を構成する各層について説明する。
【0020】
<第一の基材層>
本発明の第一の基材層は、表層(A)、中間層(B)、シール層(C)を有する多層フィルムである。
【0021】
(多層フィルムの表層(A))
本発明の第一の基材層である多層フィルムにおける表層(A)は、プロピレン系樹脂を含有する。表層(A)はリキッド印刷インキが印刷される層であり、インキとの密着性と意匠性に優れる。
【0022】
上記プロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体等を使用できる。
これらの中でも、高い剛性を得やすいことから、透明性を要求される用途の場合にはプロピレン単独重合体を好ましく使用できる。
【0023】
本発明の多層フィルムが透明フィルムである場合、当該多層フィルムにおける表層(A)を構成する樹脂が、上記プロピレン単独重合体を80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましく、実質的にプロピレン単独重合体のみで構成されていることも好ましい。
【0024】
本発明に使用するプロピレン単独重合体は、MFR(温度230℃、荷重2.16kg)が0.5g/10分以上30g/10分以下であることが好ましい。製袋時のフィルムの収縮が少なく、更にフィルムの成膜性も向上させる観点からは、4g/10分以上20g/10分以下であることが好ましく、5g/10分以上15g/10分以下であることがより好ましい。
また、当該プロピレン単独重合体は、融点が120~172℃であるものが好ましく、125~170℃であることが好ましい。MFR及び融点がこの範囲であれば、製袋時のフィルムの収縮をより少なくでき、更にフィルムの成膜性もより向上する。
【0025】
また、マット調の多層フィルムにしたい場合は、プロピレン系ブロック共重合体を含有することで、高い剛性や優れた意匠性と共に、好適な耐衝撃性、耐摩擦性を有するマット調の積層フィルムとすることができる。
【0026】
上記プロピレン系ブロック共重合体としては、プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体を使用できる。α-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル・1-ペンテン、1-オクテン等が例示でき、なかでもエチレンがマット感、耐寒性・剛性のバランスに優れているため好ましい。
【0027】
上記プロピレン系ブロック共重合体のメルトフローレート(MFR)は、成形が容易であり、また好適な耐衝撃性やマット感を得やすいことから、0.5g/10分以上であることが好ましく、1g/10分以上であることがより好ましい。また、20g/10分以下であることが好ましく、10g/10分以下であることがより好ましい。
プロピレン系ブロック共重合体の融点は、好適な製袋性を得やすいことから、155℃以上であることが好ましく、170℃以下であることが好ましい。
【0028】
表層(A)中の上記プロピレン系ブロック共重合体の含有量は、マット感や溶断強度や製袋適性のバランスで決定されるが、表層(A)に使用する樹脂成分中の70質量%以上含有することが好ましい。当該範囲とすることで、意匠性に優れた、均一性のあるマット感を得やすくなる。なかでも、耐衝撃性とマット感を高める際には80~100質量%とすることが好ましい。
【0029】
表層(A)に使用するプロピレン系ブロック共重合体は単一の共重合体を使用しても、複数の共重合体を使用してもよい。複数使用する場合には、使用するプロピレン系ブロック共重合体の含有量の総量を上記範囲とすることが好ましい。
表層(A)中に使用され、マット感や溶断強度や製袋適性とのバランスに優れたプロピレン系ブロック共重合体樹脂としては、BC8、BC7(日本ポリプロ株式会社製)、E150GK,F704V(株式会社プライムポリマー製)、PC480A、PC684S、PC380A、VB370A(サンアロマー株式会社製)等が挙げられる。
【0030】
また、表層(A)中に、プロピレン系ブロック共重合体以外の樹脂を併用する場合には、包装フィルムに使用される各種ポリオレフィン系樹脂を使用でき、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体(プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレン等)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン系樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン-アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン-メタクリル酸共重合体のアイオノマー等を使用できる。
なかでも、マット感を向上させる場合には、エチレン系樹脂を併用することが好ましく、高密度ポリエチレンを使用することがより好ましい。
【0031】
本発明に使用する表層(A)中には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記プロピレン系樹脂以外の他の成分を含有してもよい。当該他の成分としては、例えば、エチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、等が挙げられる。また、石油由来のエチレン系樹脂と併用して植物由来のエチレン系樹脂を用いてもよい。
【0032】
(多層フィルムの中間層(B))
本発明に使用する多層フィルムは、中間層(B)を含有する。当該中間層(B)は、バイオマスポリエチレンを含有する。
【0033】
上記中間層(B)に使用する上記バイオマスポリエチレンは、サトウキビ、トウモロコシ、ビート等を出発原料とする植物由来のエチレンから生成されるポリエチレン系樹脂である。当該バイオマスポリエチレンとしては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、直鎖状中密度ポリエチレン(LMDPE)、直鎖状高密度ポリエチレン(LHDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられ、これらは単独でも、2種類以上を混合して使用してもよい。これらのなかでも、特に、直鎖状低密度ポリエチレンであることが好ましい。直鎖状低密度ポリエレンとしては、密度が0.925g/cm3以下であることが好ましく、0.920g/cm3以下であることがより好ましい。使用する直鎖状低密度ポリエチレンの密度を上記範囲とすることで、好適な溶断強度と高い耐衝撃性、耐破袋性を兼備しやすくなる。
【0034】
中間層(B)に使用するバイオマスポリエチレンのMFRは、0.1~30g/10分が好ましく、0.5~20g/10分が特に好ましい。1g/10分以上とすることで、好適な成膜性を得やすくなり、20g/10分以下とすることで、好適な成形性を得やすくなる。
【0035】
中間層(B)に用いられるバイオマスポリエチレンは、石油由来の製造方法に対して、原料がサトウキビ等の植物で、モノマー生成までは異なるが、それ以外は、製造方法は同一である。製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法で製造されたものでできる。例えば、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒を用いた製造法が上げられる。
具体的には、チタン含有化合物自体又はチタン含有化合物をマグネシウム化合物等の担体に担持させたものを主触媒とし、有機アルミニウム化合物を助触媒とした触媒系で、プロピレン単独又は所望のエチレン等のα-オレフィンを添加して重合を行う方法を挙げることが出来る。この重合は、スラリー重合法、溶液重合法、気相重合法等のいずれのプロセスでもよい。
また、均一系触媒を用いてもよく、従来から用いられているバナジュウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒、あるいはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基等を1又は2個を配位子とするジルコニウム、チタン、ハフニウム等の遷移金属化合物、該配位子が幾何学的に制御された遷移金属化合物とアルミノキサンやイオン性化合物等の助触媒からなるメタロセン系触媒等の均一系触媒系も挙げることができる。メタロセン触媒は、必要により有機アルミ化合物を用いて、溶媒存在下の均一系重合のほか、スラリー重合法、気相重合法等のいずれのプロセスでもよい。
【0036】
このようなバイオマスポリエチレンの市販品としては、ブラスケム(Braskem)社製、SLL118、SLL118/21、SLL218、SLL318、SLH118、SLH218、SLH0820/30AF、SBC818、SPB208、STN7006、SEB853等が例示できる。
【0037】
さらに、上記中間層(B)は、ポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましい。
当該ポリオレフィン系樹脂としては、包装フィルムに使用される各種ポリオレフィン系樹脂を使用でき、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体、(プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-1-ヘキセンランダム共重合体等)、プロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレン等のプロピレン系樹脂(b1-2)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン系樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メチルメタアクリレ-ト共重合体(EMMA)、エチレン-エチルアクリレ-ト共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレ-ト(EMA)共重合体、エチレン-エチルアクリレ-ト-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体、更にはエチレン-アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン-メタクリル酸共重合体のアイオノマー等を使用できる。
【0038】
上記ポリオレフィン系樹脂のなかでも、好適な耐衝撃性を有することができる観点から、当該中間層(B)には、直鎖状低密度ポリエチレンを使用することが好ましい。
当該直鎖状低密度ポリエチレンとしては、密度が0.925g/cm3以下であることが好ましく、0.920g/cm3以下であることがより好ましい。使用する直鎖状低密度ポリエチレンの密度を上記範囲とすることで、好適な溶断強度と高い耐衝撃性、耐破袋性を兼備しやすくなる。
【0039】
本発明に使用する中間層(B)中の上記ポリオレフィン系樹脂の含有量は、その総量が中間層(B)を構成する樹脂中の80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。当該範囲とすることで、好適な機械的強度のフィルムを得やすくなる。
また、当該中間層(B)が石油由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含む場合、その含有量は当該中間層(B)を構成する樹脂中の3質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがさらに好ましい。当該直鎖状低密度ポリエチレン含有量がこの範囲であると、耐衝撃性が良好となる。なお、バイオマスポリエチレンが直鎖状低密度ポリエチレンであった場合、石油由来直鎖状低密度ポリエチレンとバイオマス直鎖状低密度ポリエチレンの合計含有量が、当該中間層(B)を構成する樹脂中の7質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であるとより好ましい。
【0040】
本発明に使用する中間層(B)は、着色顔料を含有していてもよい。当該中間層(B)に使用する着色顔料は、上記樹脂と混練できる各種の着色顔料を適宜使用できる。得られる多層フィルムを白色としたい場合には、白色顔料を使用すればよく、なかでも低コストで取扱い性に優れ、好適な白色度を付与しやすいことから、酸化チタンを好ましく使用できる。
【0041】
上記中間層(B)に着色顔料を含有させる場合、当該中間層(B)中の着色顔料の含有量は、当該中間層(B)の単位面積あたりの含有量を、1.2×10-4~10×10-4g/cm2とすることが好ましい。当該含有量とすることで、好適な白色度を付与できる。
【0042】
(シール層(C))
本発明に使用する多層フィルムは、さらにシ-ル層(C)を有する。当該シ-ル層(C)は、本発明の多層フィルムのシ-ル層(C)同士、又はその他の材質からなる容器等にヒ-トシ-ルする際に容易にシ-ル強度が得られるように設計するものであり、特に包装袋として用い、シ-ル層(C)同士をヒ-トシ-ルする場合に、適度なシ-ル強度が得られるため、プロピレン-エチレンランダム共重合体等のプロピレン-エチレン共重合体を含有する。更に、シ-ル強度を調整するためには、エチレン-α-オレフィン共重合体を併用することも可能である。
【0043】
上記プロピレン-エチレンランダム共重合体中のエチレンの含有量は0.3~10質量%であることが好ましく、0.5~6質量%であることがより好ましい。エチレンの含有量を当該範囲とすることで、好適な剛性や耐ブロッキング性を得やすく、好適な製袋適性、包装適性を実現しやすくなる。なお、エチレン含有量は、赤外吸収スペクトル法により測定される。
【0044】
上記プロピレン-エチレンランダム共重合体のMFRは、1~20g/10分が好ましく、3~7g/10分が特に好ましい。1g/10分以上とすることで、好適な成膜性を得やすくなり、20g/10分以下とすることで、好適な成形性を得やすくなる。
本発明で用いられるプロピレン-エチレンランダム共重合体の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法で製造されたものでできる。例えば、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒を用いた製造法が上げられる。
具体的には、チタン含有化合物自体又はチタン含有化合物をマグネシウム化合物等の担体に担持させたものを主触媒とし、有機アルミニウム化合物を助触媒とした触媒系で、プロピレンとエチレンを添加して重合を行う方法を挙げることが出来る。この重合は、スラリー重合法、溶液重合法、気相重合法等のいずれのプロセスでもよい。
【0045】
また、均一系触媒を用いてもよく、従来から用いられているバナジュウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒、あるいはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基等を1又は2個を配位子とするジルコニウム、チタン、ハフニウム等の遷移金属化合物、該配位子が幾何学的に制御された遷移金属化合物とアルミノキサンやイオン性化合物等の助触媒からなるメタロセン系触媒等の均一系触媒系も挙げることができる。メタロセン触媒は、必要により有機アルミ化合物を用いて、溶媒存在下の均一系重合のほか、スラリー重合法、気相重合法等のいずれのプロセスでもよい。
【0046】
本発明の多層フィルムに含まれるシール層(C)は、さらに上記プロピレン-エチレンランダム共重合体以外のその他のポリオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。当該その他のポリオレフィン系樹脂としては、表層(A)や中間層(B)において例示したポリオレフィン系樹脂が挙げられ、なかでも高密度ポリエチレンやプロピレン-α-オレフィン共重合体、(プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-1-ヘキセンランダム共重合体等)が好ましく使用できる。
【0047】
本発明に使用する多層フィルムは、当該多層フィルムの物性バランスを調整するため、中間層(B)とシール層(C)の間に、支持層(D)を設けることも好ましい。当該支持層(D)に使用できる樹脂としては、前記した中間層(B)において例示したポリオレフィン系樹脂と同様の樹脂を好ましく例示でき、当該樹脂を単独又は複数種混合して使用できる。これらのなかでも、プロピレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等を好ましく使用できる。当該支持層(D)に、植物由来のポリオレフィン系樹脂を使用することも、積層体のバイオマス度を向上できるため好ましい。
【0048】
本発明に使用する多層フィルムは、表層(A)、中間層(B)、シ-ル層(C)、及び支持層(D)以外に1又は2以上の他の層を有していてもよい。他の層は、包装フィルムに使用される各種樹脂材料を使用でき、中間層(B)とシ-ル層(C)の間に設けられることが好ましい。
【0049】
上記の各層には、必要に応じて、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤等の成分を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0050】
(多層フィルム)
本発明に使用する多層フィルム中に含有するポリエチレン系樹脂の総質量は、当該多層フィルムの質量に対して4質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。なお、当該ポリエチレン系樹脂は、石油由来樹脂も植物由来樹脂も含む。
多層フィルムにおいて植物由来の成分を多くしてバイオマス度を高めるためには、多層フィルムの質量に対して植物由来のポリエチレンの総質量を2質量%以上とすることが好ましく、3質量%以上とすることがより好ましい。
【0051】
本発明に使用する多層フィルム中に含有するプロピレン系樹脂の総質量は、当該多層フィルムの質量に対して40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、48質量%以上であることが更に好ましい。
【0052】
本発明に使用する多層フィルムは、単体でもフィルムとして充分な強度を得るために、その総厚みが20~50μmの範囲であることが好ましく、特にパン等の比較的軽量な内容物の包装用等に使用する場合には、25~40μmであることが好ましい。
【0053】
本発明に使用する多層フィルムの、表層(A)の厚みは総厚みの10~40%になるようにすることが好ましい。当該表層(A)の厚みは、好適な意匠性を得やすいことから、2~20μmとすることが好ましく、4~16μmとすることがより好ましい。
また、上記中間層(B)の厚みは総厚みの30~90%になるようにすることが好ましい。当該中間層(B)の厚みは6~45μmとすることが好ましく、10~30μmとすることがより好ましい。
さらに、シ-ル層(C)は総厚みの10~25%になるようにすることが好ましい。シ-ル層(C)の厚みは2~12.5μmとすることが好ましく、3~10μmとすることがより好ましい。
上記支持層(D)を設ける場合は、上記中間層(B)と当該支持層(D)の合計厚みが6~45μmとすることが好ましく、総厚みの30~90%とすることが好ましい。
【0054】
本発明に使用する多層フィルムの剛性は、包装材として適用した際に好適な強度を保持するために、450MPa以上であることが好ましく、500MPa以上であることがより好ましく、550MPa以上であることが更に好ましい。
さらに、当該多層フィルムの衝撃強度は、0.15J(23℃)以上であることが好ましく、0.17J(23℃)以上であることがより好ましい。衝撃強度は、多層フィルムを23℃に状態調整された恒温室内で、サンプルを6時間保持した後、直径25.4mmの球状の衝撃頭を用いてフィルムインパクト法で測定することにより求められる。
【0055】
(多層フィルムの製造方法)
本発明に使用する多層フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、表層(A)、中間層(B)及びシ-ル層(C)に用いる各樹脂又は樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィ-ドブロック法等の方法により溶融状態で(A)/(B)/(C)の順で積層させたりインフレ-ションやTダイ・チルロ-ル法等によりフィルム状に成形する共押出法が挙げられる。当該多層フィルムが支持層(D)を含む場合は、(A)/(B)/(D)/(C)の順で積層すればよい。この共押出法は、各層の厚みの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォ-マンスにも優れた共押出多層フィルムが得られるので好ましい。さらに、融点の差が大きい樹脂を併用する場合は、共押出加工時にフィルム外観が劣化する場合がある。このような劣化を抑制するためには、比較的高温で溶融押出を行うことができるTダイ・チルロ-ル法が好ましい。
【0056】
本発明に使用する多層フィルムは、上記の製造方法によって、実質的に無延伸の多層フィルムとして得られるため、真空成形による深絞り成形等の二次成形も可能となる。
【0057】
さらに、本発明に使用する多層フィルムの表層(A)と印刷インキとの接着性等を向上させるため、上記表層(A)に表面処理を施すことが好ましい。上記シ-ル層(C)面に他フィルムと貼り合わせる場合には、接着剤との密着性を向上させるために、当該シ-ル層(C)に表面処理を施すことが好ましい。このような表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理を挙げることができるが、好ましくはコロナ処理である。
【0058】
本発明に使用する多層フィルムのシ-ル層(C)同士を重ねてヒ-トシ-ル、あるいは表層(A)とシ-ル層(C)とを重ね合わせてヒ-トシ-ルすることにより、シ-ル層(C)を内側として形成した包装袋を作製することができる。例えば当該多層フィルム2枚を所望とする包装袋の大きさに切り出して、それらを重ねて3辺をヒ-トシ-ルして袋状にした後、ヒ-トシ-ルをしていない1辺から内容物を充填しヒ-トシ-ルして密封することで包装袋として用いることができる。さらには自動包装機によりロ-ル状のフィルムを円筒形に端部をシ-ルした後、上下をシ-ルすることにより包装袋を形成することも可能である。なお、ヒートシールや超音波シール等、シール方法は特に限定されないが、ヒートシールが好ましい。
【0059】
また、本発明に使用する多層フィルムと他のフィルムをラミネ-トして複合フィルムとして使用することもできる。他のフィルムは、表層(A)側に設けても、シ-ル層(C)側に設けてもよいが、シ-ル層(C)側にシ-ラントフィルムを設けることが好ましい。
【0060】
<印刷層>
本発明に使用する印刷層は、被印刷体に美粧性、内容物に関する様々な情報、及び機能性を付与するために、リキッド印刷インキにより所望の図柄を形成する層である。当該印刷層は、バインダー樹脂と着色剤とを含有グラビア印刷インキやフレキソ印刷インキ(以後リキッド印刷インキと称する)を印刷してなる。
【0061】
本発明に使用する印刷層は、単層であってもよいし、複数の印刷層があってもよい。印刷層が複数ある場合は、各印刷層に使用するリキッド印刷インキは同一のものであっても良いし、同一の組成で着色剤のみが違うものであっても良いし、異なる組成であっても良い。
【0062】
(リキッド印刷インキ)
本発明に使用するリキッド印刷インキは、グラビア印刷インキやフレキソ印刷インキとして使用され、有機溶剤を主溶媒とする有機溶剤型リキッド印刷インキと、水を主溶媒とする水性リキッド印刷インキとに大別される。ここでは汎用される有機溶剤型リキッド印刷インキを主に説明する。
【0063】
(有機溶剤型リキッド印刷インキ)
有機溶剤型リキッド印刷インキは、バインダー樹脂、有機溶剤媒体、分散剤、消泡剤等を添加した混合物を分散機で分散し、顔料分散体を得る。得られた顔料分散体に樹脂、必要に応じてレベリング剤等の添加剤を加え、撹拌混合することで得られる。分散機としてはグラビア、フレキソ印刷インキの製造に一般的に使用されているビーズミル、アイガーミル、サンドミル、ガンマミル、アトライター等を用いて製造される。
【0064】
上記有機溶剤型リキッド印刷インキのインキ粘度は、グラビア印刷時の粘度は、株式会社離合社製ザーンカップ#3を使用し25℃にて12 30秒の範囲であれば良く、好ましくは14 20秒である。
【0065】
インキの粘度は、使用される原材料の種類や量、バインダー樹脂、顔料、有機溶剤等を適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の顔料の粒度及び粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
【0066】
(印刷物の作成)
上記有機溶剤型リキッド印刷インキは、各種の基材と密着性に優れ、紙、合成紙、熱可塑性樹脂フィルム、プラスチック製品、鋼板等への印刷に使用することができるものであり、電子彫刻凹版等によるグラビア印刷版を用いたグラビア印刷用、又は樹脂版等によるフレキソ印刷版を用いたフレキソ印刷用のインキとして有用である。
【0067】
上記有機溶剤型リキッド印刷インキを用いてグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式から形成されるリキッド印刷インキの膜厚は、例えば5μm以下、好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0068】
(バインダー樹脂(A))
本発明に使用するリキッド印刷インキに使用するバインダー樹脂(A)としては、硝化綿、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)やセルロースアセテートブチロネート(CAB)等セルロース系樹脂等の繊維素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール樹脂、石油樹脂等を挙げることができる。
【0069】
(繊維素系樹脂)
繊維素系樹脂としては、例えばセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートその他のセルロースエステル樹脂、ニトロセルロース(硝化綿ともいう)、ヒドロキシアルキルセルロース、及びカルボキシアルキルセルロース等が挙げられる。セルロースエステル樹脂はアルキル基を有することが好ましく、当該アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していてもよい。
セルロース系樹脂としては、上記のうちセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、及びニトロセルロースが好ましい。特に好ましくはニトロセルロースである。分子量としては重量平均分子量で5,000~200,000のものが好ましく、10,000~50,000が更に好ましい。また、ガラス転移温度が120℃~180℃であるものが好ましい。
ニトロセルロース(硝化綿)は、天然セルロースと硝酸とを反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものが好ましい。
【0070】
ニトロセルロース(硝化綿)の添加量としては、リキッド印刷インキ全量に対し0.15~40質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1.0~35質量%である。
【0071】
(ポリアミド樹脂)
ポリアミド樹脂としては、例えば多塩基酸と多価アミンとを重縮合して得ることができる有機溶剤に可溶な熱可塑性ポリアミドである。特に、重合脂肪酸及び/又はダイマー酸を含有する酸成分と、脂肪族及び/又は芳香族ポリアミンの反応物を含むポリアミド樹脂であることが好ましく、更には一級及び二級モノアミンを一部含有するものが好ましい。
当該ポリアミド樹脂の原料で使用される多塩基酸としては、以下に限定されるものではないが、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、スベリン酸、グルタル酸、フマル酸、ピメリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、テレフタル酸、1、4-シクロヘキシルジカルボン酸、トリメリット酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、重合脂肪酸等が挙げられ、その中でもダイマー酸あるいは重合脂肪酸に由来する構造を主成分(ポリアミド樹脂中に50質量%以上)含有するポリアミド樹脂が好ましい。ここで、重合脂肪酸とは、不飽和脂肪酸脂肪酸の環化反応等により得られるもので、一塩基性脂肪酸、二量化重合脂肪酸(ダイマー酸)、三量化重合脂肪酸等を含むものである。なお、ダイマー酸あるいは重合脂肪酸を構成する脂肪酸は大豆油由来、パーム油由来、米糠油由来等天然油に由来するものを好適に挙げることができ、オレイン酸及びリノール酸から得られるものが好ましい。
多塩基酸には、モノカルボン酸を併用することもできる。併用されるモノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。
【0072】
多価アミンとしては、ポリアミン、一級又は二級モノアミン等挙げることができる。ポリアミド樹脂に使用されるポリアミンとしてはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルアミノプロピルアミン等の脂肪族ジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミンを挙げることができ、脂環族ポリアミンとしては、シクロヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン等を挙げることができる。また、芳香脂肪族ポリアミンとしてはキシリレンジアミン、芳香族ポリアミンとしてはフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等を挙げることができる。さらに、一級及び二級モノアミンとしては、n-ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン等を挙げることができる。
当該ポリアミド樹脂の添加量としては、リキッド印刷インキ全量に対し、0.15~40質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1.0~35質量%である。
【0073】
(ウレタン樹脂)
ウレタン樹脂としては、ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得たポリウレタン樹脂であれば特に限定されない。ポリオールとしては例えば、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のポリオールを用いることができ、1種又は2種以上を併用してもよい。例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2ブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4―ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトール等の飽和又は不飽和の低分子ポリオール類(1)、これらの低分子ポリオール類(1)と、セバシン酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸等の多価カルボン酸あるいはこれらの無水物とを脱水縮合又は重合させて得られるポリエステルポリオール類(2);環状エステル化合物、例えばポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類、を開環重合して得られるポリエステルポリオール類(3);当該低分子ポリオール類(1)等と、例えばジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等との反応によって得られるポリカーボネートポリオール類(4);ポリブタジエングリコール類(5);ビスフェノールAに酸化エチレン又は酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類(6);1分子中に1個以上のヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロプル、アクリルヒドロキシブチル等、或いはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えばアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルとを共重合することによって得られるアクリルポリオール(7)等が挙げられる。
【0074】
ポリイソシアネートとしては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-3,5-フェニレンジイソシアネート、1-エチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-イソプロピル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-4,6-フェニレンジイソシアネート、1,4-ジメチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、1-メチル-3,5-ジエチルベンゼンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ジエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1,3,5-トリエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、1-メチル-ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、ナフタレン-2,7-ジイソシアネート、1,1-ジナフチル-2,2’-ジイソシアネート、ビフェニル-2,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3-3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4-ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート等を用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、これらのジイソシアネート化合物は単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0075】
また鎖伸長剤を使用することもできる。鎖伸長剤としては例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン等の他、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等分子内に水酸基を有するアミン類も用いることが出来る。これらの鎖伸長剤は単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0076】
また、反応停止を目的とした末端封鎖剤として、一価の活性水素化合物を用いることもできる。かかる化合物としてはたとえば、ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類やエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類があげられる。更に、特にポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L-アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いることができる。これらの末端封鎖剤は単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
ウレタン樹脂の重量平均分子量は10,000~100,000であることが好ましく、より好ましくは15,000~80,000の範囲である。
【0077】
上記ウレタン樹脂として、特に好ましくは、炭素原子数が7以上、かつカルボキシル基を2つ以上有するポリカルボン酸と水酸基を2個以上有する化合物とを反応原料とするポリエステルポリオールを、ポリイソシアネートと反応させたウレタン樹脂(A)である。
【0078】
炭素原子数が7以上、かつカルボキシル基を2つ以上有するポリカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びこれらの酸の無水物等の芳香族ジカルボン酸やピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、トリメリット酸及びその無水物等のトリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゼンペンタカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸及びこれらの酸の無水物等を用いることが出来る。これらの多塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。中でも、セバシン酸、ダイマー酸を用いた場合、幅広い種類の各種フィルム基材への密着性が得られる点で好ましく、これらを単独で使用しても、併用してもよい。
【0079】
上記ポリエステルポリオールは、必要に応じて他の多価カルボン酸を使用してもよく、ポリエステルポリオールの製造に一般的に用いられる各種公知の多価カルボン酸を用いることができ、1種又は2種以上を併用してもよい。例えばアジピン酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸等が挙げられる。
【0080】
また、近年環境問題への地球規模の意識が高まる中、地球温暖化に影響を及ぼす石油由来原料ではなく植物等のバイオマス資源由来の原料へ注目が高まっており、これらの原料を使用することも可能である。バイオマス資源由来の多価カルボン酸としては、セバシン酸、ダイマー酸、こはく酸、無水こはく酸、アジピン酸等が挙げられる。
【0081】
上記水酸基を2個以上有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等のグリコール;2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-イソプロピル-1,4-ブタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、3,5-ヘプタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の分岐構造を有するグリコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0082】
また、多価カルボン酸同様、水酸基を2個以上有する化合物においても植物等のバイオマス資源由来の原料を使用することも可能である。バイオマス資源由来の水酸基を2個以上有する化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
【0083】
上記ポリエステルポリオールの数平均分子量としては、500~8,000の範囲であることが好ましく、800~7,000の範囲であることがより好ましく、900~6,000の範囲であることが更に好ましい。
【0084】
更に、上記ポリウレタン樹脂(A)の構成成分として、ポリエーテルポリオールをポリウレタン樹脂に対して1~40質量%の範囲で含有すればより好ましい。ポリエーテルポリオールとしては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のエーテルポリオールを用いることができ、1種又は2種以上を併用してもよい。例えば、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフラン等の重合体又は共重合体のポリエーテルポリオール類等が挙げられる。当該ポリエーテルポリオールの数平均分子量は100~3500であればより好ましい。
【0085】
本発明に使用するリキッド印刷インキ組成物で使用するポリウレタン樹脂(A)に必要に応じて使用される併用ポリオール、ポリイソシアネート化合物、鎖伸長剤、末端封鎖剤等は、前述のものをそのまま使用できる。
上記ポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、10,000~100,000の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは15,000~95,000の範囲である。
【0086】
上記ウレタン樹脂の添加量としては、リキッド印刷インキ全量に対し0.15~40質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1.0~35質量%である。
【0087】
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする重合性モノマーが共重合したものであれば特段限定されない。重合性モノマーとしては例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、iso-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、iso-ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。重合法も特に限定なく公知の塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合法等で得たものを使用することができる。
アクリル樹脂の重量平均分子量は5,000~200,000であることが好ましく、より好ましくは10,000~100,000の範囲である。
また、アクリル樹脂の添加量としては、リキッド印刷インキ全量に対し0.15~40質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1.0~35質量%である。
【0088】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂としては、アルコールとカルボン酸とを公知のエステル化重合反応を用いて反応させてなるポリエステル樹脂であれば特段限定されない。
アルコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2ブチル-1,3プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビド等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。中でも多官能アルコールが好ましい。
カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、オレイン酸、リノール酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。中でも多官能カルボン酸が好ましい。
当該ポリエステル樹脂の重量平均分子量は500~6000であることが好ましい。さらに好ましくは1400~5500である
また、当該ポリエステル樹脂の添加量としては、リキッド印刷インキ全量に対し0.15~40質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1.0~35質量%である。
【0089】
(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂)
塩化ビニル系樹脂としては塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂が汎用的であり好ましい。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合したものであれば、特段限定されない。分子量としては重量平均分子量で5,000~100,000のものが好ましく、10,000~70,000が更に好ましい。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の固形分100質量%中、酢酸ビニルモノマー由来の構造は1~30質量%が好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は70~95質量%であることが好ましい。この場合有機溶剤への溶解性が向上、更に基材への密着性、被膜物性、耐擦傷性等が良好となる。
また有機溶剤への溶解性の観点からビニルアルコール構造由来の水酸基を含むものも好ましい。水酸基価としては20~200mgKOH/gであることが好ましい。また、ガラス転移温度は50℃~90℃であることが好ましい。
また塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の添加量としては、インキ全量に対し0.15~40質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1.0~35質量%である。
【0090】
(ロジン系樹脂)
ロジン系樹脂は、ロジン骨格を有する樹脂であれば特に限定されないが、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンエステル、ロジンフェノール、重合ロジン等が好ましい。軟化点(環球法による)が90~200℃であることが好ましい。
【0091】
バインダー樹脂は、中でも、繊維素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ブチラール樹脂が好ましい。特にバインダー樹脂を少なくとも二種の樹脂を含有することが好ましい。
好ましくは、ウレタン系樹脂/塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂/繊維素系樹脂、ポリアミド系樹脂/繊維素系樹脂、アクリル系樹脂/繊維素系樹脂、塩化ビニル系樹脂/繊維素系樹脂から選ばれる組み合わせであり、バインダー樹脂(A)100質量%中、二種の樹脂が合計で80~100質量%含むことが好ましく、さらに好ましくは90~100質量%であることが最も好ましい。
【0092】
更に、ウレタン系樹脂/塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂/繊維素系樹脂、ポリアミド系樹脂/繊維素系樹脂、アクリル系樹脂/繊維素系樹脂は、塩化ビニル系樹脂/繊維素系樹脂は、それぞれ質量比で95/5~20/80であることが好ましい。より好ましくは質量比で90/10~50/50である。この組み合わせにより、インキやコーティング剤に所望される基本性能である耐摩擦性、耐ブロッキング性、耐熱性、耐油等に優れる。
【0093】
(硬化剤)
また、バインダー樹脂(A)に硬化剤を併用してもよい。硬化剤としては有機溶剤系のグラビア印刷インキで汎用の硬化剤を使用すればよいが、最もよく使用されるのはイソシアネート系の硬化剤である。
イソシアネート化合物の添加量としては、硬化効率の観点からリキッド印刷インキ固形分に対し0.3質量%~10.0質量%の範囲が好ましく、1.0質量%~7.0質量%であればより好ましい。
【0094】
バインダー樹脂(A)は、リキッド印刷インキに対して0.15~50質量%の範囲であることが好ましく、1~40質量%の範囲で使用することが最も好ましい。
【0095】
(有機溶剤)
本発明に使用するリキッド印刷インキに使用する有機溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系有機溶剤、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。これらを単独又は2種以上を混合しても用いることができる。
【0096】
尚、印刷時の作業衛生性と包装材料の有害性の両面から、酢酸エチル、酢酸プロピル、イソプロパノール、ノルマルプロパノール等を使用し、トルエン等の芳香族溶剤やメチルエチルケトン等のケトン系溶剤を使用しないことがより好ましい。
【0097】
(着色剤)
本発明に使用するリキッド印刷インキは着色剤を含み、美粧性等を付与する目的でデザイン印刷等に用いる着色剤を含むリキッド印刷インキとして使用することができる。着色剤としては、一般のインキ、塗料、及び記録剤等に使用されている無機顔料、有機顔料及び染料を挙げることができ、顔料が好ましい。有機顔料としては、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系等の顔料が挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。また未酸性処理顔料、酸性処理顔料のいずれも使用することができる。以下に有機顔料として好ましいものの具体的な例を挙げる。
【0098】
黒色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7、C.I.ピグメントブラック9、C.I.ピグメントブラック20等が挙げられる。
【0099】
藍色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:5、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー17:1、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー24:1、C.I.ピグメントブルー25、C.I.ピグメントブルー26、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー61、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー63、C.I.ピグメントブルー64、C.I.ピグメントブルー75、C.I.ピグメントブルー79、C.I.ピグメントブルー80等が挙げられる。
【0100】
緑色顔料としては、例えばC.I.ピグメントグリーン1、C.I.ピグメントグリーン4、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン8、C.I.ピグメントグリーン10、C.I.ピグメントグリーン36等が挙げられる。
【0101】
赤色顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド4、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド8、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド10、C.I.ピグメントレッド11、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド17、C.I.ピグメントレッド18、C.I.ピグメントレッド19、C.I.ピグメントレッド20、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド31、C.I.ピグメントレッド32、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド41、C.I.ピグメントレッド43、C.I.ピグメントレッド46、C.I.ピグメントレッド48、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド48:5、C.I.ピグメントレッド48:6、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド49:1、C.I.ピグメントレッド49:2、C.I.ピグメントレッド49:3、C.I.ピグメントレッド52、C.I.ピグメントレッド52:1、C.I.ピグメントレッド52:2、C.I.ピグメントレッド53、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド53:2、C.I.ピグメントレッド53:3、C.I.ピグメントレッド54、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド58、C.I.ピグメントレッド58:1、C.I.ピグメントレッド58:2、C.I.ピグメントレッド58:3、C.I.ピグメントレッド58:4、C.I.ピグメントレッド60:1、C.I.ピグメントレッド63、C.I.ピグメントレッド63:1、C.I.ピグメントレッド63:2、C.I.ピグメントレッド63:3、C.I.ピグメントレッド64:1、C.I.ピグメントレッド68、C.I.ピグメントレッド68、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド83、C.I.ピグメントレッド88、C.I.ピグメントレッド89、C.I.ピグメントレッド95、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド119、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド136、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド147、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド164、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド169、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド171、C.I.ピグメントレッド172、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド181、C.I.ピグメントレッド182、C.I.ピグメントレッド183、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド188、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド193、C.I.ピグメントレッド194、C.I.ピグメントレッド200、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド208、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド210、C.I.ピグメントレッド211、C.I.ピグメントレッド213、C.I.ピグメントレッド214、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド223、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド226、C.I.ピグメントレッド237、C.I.ピグメントレッド238、C.I.ピグメントレッド239、C.I.ピグメントレッド240、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントレッド247、C.I.ピグメントレッド248、C.I.ピグメントレッド251、C.I.ピグメントレッド253、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド256、C.I.ピグメントレッド257、C.I.ピグメントレッド258、C.I.ピグメントレッド260、C.I.ピグメントレッド262、C.I.ピグメントレッド263、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド266、C.I.ピグメントレッド268、C.I.ピグメントレッド269、C.I.ピグメントレッド270、C.I.ピグメントレッド271、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントレッド279、等が挙げられる。
【0102】
紫色顔料としては、例えばC.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット2、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット3:1、C.I.ピグメントバイオレット3:3、C.I.ピグメントバイオレット5:1、C.I.ピグメントバイオレット13、C.I.ピグメントバイオレット19(γ型、β型)、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット25、C.I.ピグメントバイオレット27、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントバイオレット31、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット36、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントバイオレット38、C.I.ピグメントバイオレット42、C.I.ピグメントバイオレット50、等が挙げられる。
【0103】
黄色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー42、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー65、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー86、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー120、ピグメントイエロー125、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー137、C.I.ピグメント、イエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー148、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185及びC.I.ピグメントイエロー213等が挙げられる。
【0104】
橙色顔料としては、例えばC.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ37、C.I.ピグメントオオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントレンジ55、C.I.ピグメントオレンジ59、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ71、又はC.I.ピグメントオレンジ74等が挙げられる。
【0105】
茶色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、又はC.I.ピグメントブラウン26等が挙げられる。
【0106】
中でも、好ましい顔料として、黒色顔料としてC.I.ピグメントブラック7、
藍色顔料としてC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、
緑色顔料としてC.I.ピグメントグリーン7、
赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、
紫色顔料としてC.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、
黄色顔料としてC.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー139、
橙色顔料としてC.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ64、
等が挙げられ、これらの群から選ばれる少なくとも一種又は二種以上を使用することが好ましい。
【0107】
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、リトボン、アンチモンホワイト、石膏等の白色無機顔料が挙げられる。無機顔料の中では酸化チタンの使用が特に好ましい。酸化チタンは白色を呈し、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましく、印刷性能の観点から該酸化チタンはシリカ及び/又はアルミナ処理を施されているものが好ましい。
【0108】
白色以外の無機顔料としては、例えば、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、ジルコンが挙げられ、アルミニウムは粉末又はペースト状であるが、取扱い性及び安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィング又はノンリーフィングを使用するかは輝度感及び濃度の点から適宜選択される。
【0109】
上記顔料は、リキッド印刷インキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちリキッド印刷インキ総質量に対して1~60質量%、リキッド印刷インキ中の固形分重量比では10~90質量%の割合で含まれることが好ましい。また、これらの顔料は単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0110】
有機溶剤型リキッド印刷インキでは更に必要に応じて、ワックス、キレート系架橋剤、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤等も含むこともできる。
【0111】
(バイオマスリキッド印刷インキ)
本発明に使用するリキッド印刷インキにおいて、持続的に発展すべき循環型社会の構築(サステナビリティ)を考慮し、植物由来原料を使用したリキッド印刷インキを使用することが好ましい。
植物由来原料としては例えば、セルロースアセテートプロピオネート樹脂や硝化綿等の繊維素系樹脂や、大豆油由来、パーム油由来、米糠油由来等天然油に由来するダイマー酸あるいは重合脂肪酸を使用したポリアミド樹脂や、ポリカルボン酸として、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、グルタル酸、リンゴ酸等、ポリオールとして、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンチレングリコール、1,10-ドデカンジオール、ダイマージオール、イソソルビド等、ポリイソシアネートとして、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、ダイマージイソシアネート等の植物由来原料から合成したバイオマスポリウレタンや、ロジン樹脂等が挙げられる。
【0112】
バイオマスリキッド印刷インキとしては市販品を利用することもできる。市販品としては、一般社団法人日本有機資源協会に記載のインキ等が使用できる。
【0113】
<その他の層>
(オーバーコート層)
本発明の積層体は、光沢感や耐擦傷性、耐熱性を向上するために、印刷層にさらにオーバーコート層を設けても良い。オーバーコート層を形成するためのオーバーコート剤としては特に制限されないが、上記印刷層に使用したインキ組成物と同様の組成であって、着色を目的とした顔料を含まないインキ組成物(体質顔料は含んでいてもよい)や、活性エネルギー線硬化型のインキであってもよい。また、当該オーバーコート剤としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂コーティング剤であってもよい。
【0114】
上記オーバーコート剤は市販品を利用することもできる。
【0115】
サステナビリティを考慮し、オーバーコート剤としても、植物由来原料を含むことが好ましい。このようなオーバーコート剤としては、バイオマス認定商品として市販されているものを使用できる。具体的には、一般社団法人日本有機資源協会に記載のニス等が使用できる。
【0116】
(その他の基材層)
本発明の積層体は、さらにその他の基材層を設けても良い。当該その他の基材層は特に限定されず、第一の基材層と同様の多層フィルムでもよいし、第一の基材層と異なる多層フィルムでもよいし、シーラントフィルムでもよいし、その他、普通紙、コート紙といった紙基材や、未延伸フィルム及び延伸フィルムといったプラスチックフィルムでもよいし、不織布等であってもよいが、熱可塑性樹脂により形成されたものであることが好ましい。また、ヒートシール機能を有するシーラントフィルムであることが好ましい。
【0117】
上記プラスチックフィルムとしては、OPPフィルム、PETフィルム、ナイロンフィルム(以後Nyフィルムともいう場合がある)等が挙げられる。また、プラスチックフィルムとしてガスバリア性や、後述する印刷層を設ける際のインキ受容性の向上等を目的としたコーティングが施されたものを用いてもよい。コーティングが施されたプラスチックフィルムの市販品としては、K-OPPフィルムやK-PETフィルム等が挙げられる。
また、上記シーラントフィルムとしては、CPPフィルム、LLDPEフィルム等が挙げられる。
【0118】
また、本発明に使用する第二の基材層は、バイオマスポリオレフィンにより形成されていてもよい。当該バイオマスポリオレフィンとは、原料であるモノマーとして植物由来のオレフィンを用いたポリオレフィン樹脂を指す。当該原料モノマーは、石油由来のモノマーを含んでいてもよく、植物由来のモノマーを100%含むものでなくてもよい。
【0119】
上記バイオマスポリオレフィンとしては、市販品を使用することもできる。市販品としては、ブラスケム(Braskem)社製、SGM9450F、SLL118、SLL118/21、SLL218、SLL318、SLH118、SLH218、SLH0820等が例示できる。
【0120】
(バリア層)
本発明の積層体は、酸素ガス及び水蒸気等の透過を阻止するガスバリア性や、可視光及び紫外線等の透過を阻止する遮光性を、付与ないし向上させるため、バリア層をさらに備えてもよい。当該バリア層は、金属蒸着膜又は金属箔で構成されていることが好ましい。蒸着層の種類としては、ガスバリア性を付与できるものであれば特に限定されない。現在包装用に広く用いられている金属蒸着、又は金属酸化物蒸着が好適に例示される。金属蒸着としては各種金属が例示できるが、特に安価で広く用いられているアルミニウムが好ましい。また、バリア層として、透明蒸着フィルムを使用してもよい。
【0121】
蒸着方法としては特に制限はなく、物理的蒸着法である真空蒸着法、スパッタリング方、イオンプレーティング法や、化学的蒸着法であるCVD法が例示できる。蒸着層の厚みは蒸着層単独でも一定のガスバリア機能が発現できれば特に制限はない。厚みの好ましい範囲は蒸着する金属や金属酸化物の種類により異なるが、0.05~70nmが好ましく、0.1~70nmがより好ましく、3~70nmがより好ましく、5~60nmであることがさらに好ましい。
【0122】
上記金属蒸着フィルムとしては、CPPフィルムにアルミニウム等の金属蒸着を施したVM-CPPフィルム、OPPフィルムにアルミニウム等の金属蒸着を施したVM-OPPフィルムを用いることができる。また、上記透明蒸着フィルムとしては、OPPフィルム、PETフィルム、ナイロンフィルム等にシリカやアルミナ蒸着を施したフィルムが挙げられる。シリカやアルミナの無機蒸着層の保護等を目的として、蒸着層上にコーティングが施されたフィルムを用いてもよい。
【0123】
また、本発明の積層体は、バリア層を2層以上有してもよい。バリア層を2層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0124】
(接着層)
本発明の積層体は、その他の層として、接着層をさらに備えていてもよい。接着層は、積層体を構成するいずれか2層、例えば、第一の基材層とその他の基材層とを接着する機能を有する。当該接着層は、ポリオール組成物とポリイソシアネート組成物との2液硬化型接着剤の硬化塗膜であることが好ましいが、これに限定されない。
【0125】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体の製造方法は特に限定されず、例えば、多層フィルムの表層(A)側に、電子彫刻凹版等によるグラビア印刷版を用いたグラビア印刷又は樹脂版等によるフレキソ印刷版を用いたフレキソ印刷等の公知の印刷方法により、印刷層を積層して製造することができる。印刷層は当該表層(A)側表面の全面に積層しても良いし、当該表層(A)側表面の一部だけに積層してもよい。
また、その他の層の積層には、例えば、ドライラミネ-ション、ウェットラミネ-ション、ノンソルベントラミネ-ション、押出ラミネ-ション等の公知の方法を用いて接着層及び第二の基材層やバリア層を積層して製造することができる。加えて、公知の印刷方法によりさらにオーバーコート層を積層して製造することもできる。その他の層の積層と、印刷層の積層の順序は特に限定されず、例えば多層フィルムに印刷層を積層してからドライラミネーションにより第二の基材層を積層してもよいし、多層フィルムにドライラミネーションにより第二の基材層を積層してから、印刷層を積層してもよい。
【0126】
本発明の積層体は、多層フィルムと印刷層であるインキとの密着性に優れる。そのため、多層フィルムからインキが剥がれにくく、良好な外観を得ることができる。
【0127】
本発明の積層体には、力学機能、化学機能、電気機能、磁気機能、摩擦/磨耗/潤滑を制御する滑り機能、光学機能、熱機能、生体適合性等の機能の付与のため、二次加工を施すこともできる。二次加工の例としては、表面処理(コロナ放電処理、帯電防止処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング等)、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工等が挙げられる。また、本発明の積層体に、ラミネート加工(ドライラミネートや押出ラミネート)、製袋加工、及びその他の後処理加工を施して、成型品を製造することもできる。
【0128】
<包装材>
本発明の積層体は、包装材として利用できる。当該包装材としては、食品、薬品、工業部品、雑貨、雑誌等の用途に用いる包装袋、容器、容器の蓋材等が挙げられる。
【0129】
上記包装体は、本発明に使用する多層フィルムのシ-ル層(C)同士を重ねてヒ-トシ-ル、あるいは印刷層がなく露出した表層(A)とシ-ル層(C)とを重ね合わせてヒ-トシ-ルすることにより、当該多層フィルムのシ-ル層(C)を内側として形成した包装袋を作製することができる。例えば当該多層フィルム2枚を所望とする包装袋の大きさに切り出して、それらを重ねて3辺をヒ-トシ-ルして袋状にした後、ヒ-トシ-ルをしていない1辺から内容物を充填しヒ-トシ-ルして密封することで包装袋として用いることができる。さらには自動包装機によりロ-ル状のフィルムを円筒形に端部をシ-ルした後、上下をシ-ルすることにより包装袋を形成することも可能である。
【実施例0130】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0131】
(多層フィルム(1)の製造)
表層(A)として、プロピレン-エチレンブロック共重合体(密度:0.90g/cm3、MFR:5g/10分間)100部を用い、中間層(B)として、プロピレン系ブロック共重合体(密度:0.90g/cm3、MFR:6g/10分間)65部、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社SLH218密度:0.916g/cm3、MFR:2.3g/10分間)22部、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.905g/cm3、MFR:3g/10分間)13部からなる混合物を用い、シール層(C)として、プロピレン-エチレン共重合体(密度:0.90g/cm3、MFR:5g/10分間)70部、1-ブテン-プロピレン共重合体(密度:0.90g/cm3、MFR:4g/10分間)30部から混合物を用いて、表層(A)と中間層(B)とシ-ル層(C)の平均厚みが6:11:3となるように共押出して、厚み30μmの3層フィルムとした。このフィルムの表層(A)側に、表面エネルギーが35mN/mになるようにコロナ放電処理を施し、多層フィルム(1)を製造した。
【0132】
(多層フィルム(2)の製造)
表層(A)として、プロピレン単独共重合体(密度:0.90g/cm3、MFR:9g/10分間)100部を用い、中間層(B)として、プロピレン単独共重合体(密度:0.90g/cm3、MFR:6g/10分間)85部、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社SLH218密度:0.916g/cm3、MFR:2.3g/10分間)8.5部、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.905g/cm3、MFR:3g/10分間)4.5部、高密度ポリエチレン(密度:0.955g/cm3、MFR:18g/10分間)2.0部からなる混合物を用い、シール層(C)として、プロピレン-エチレン共重合体(密度:0.90g/cm3、MFR:5g/10分間)100部を用いて、表層(A)と中間層(B)とシ-ル層(C)の平均厚みが3:14:3となるように共押出して、厚み30μmの3層フィルムとした。このフィルムの表層(A)側に、表面エネルギーが35mN/mになるようにコロナ放電処理を施し、多層フィルム(2)を製造した。
【0133】
(多層フィルム(3)の製造)
表層(A)として、プロピレン単独共重合体(密度:0.90g/cm3、MFR:7g/10分間)100部を用い、中間層(B)として、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社SLH218密度:0.916g/cm3、MFR:2.3g/10分間)50部、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.905g/cm3、MFR:4g/10分間)50部からなる混合物を用い、シール層(C)として、プロピレン-エチレン共重合体(密度:0.90g/cm3、MFR:7g/10分間)60部、プロピレン・エチレン・ブテン三元共重合体(密度:0.90g/cm3、MFR:4g/10分間)30部とエチレン・ブテン共重合体(密度:0.90g/cm3、MFR:4g/10分間)10部の混合物を用いて、表層(A)と中間層(B)とシ-ル層(C)の平均厚みが7:10:3となるように共押出して、厚み30μmの3層フィルムとした。このフィルムの表層(A)側に、表面エネルギーが35mN/mになるようにコロナ放電処理を施し、多層フィルム(3)を製造した。
【0134】
<実施例1>
多層フィルム(1)の表層(A)上に、リキッド印刷インキのグロッサBM藍(DICグラフィックス株式会社製)を印刷してなる印刷層を形成して、実施例1の積層体を得た。
【0135】
<実施例2>
リキッド印刷インキをライジン藍(DICグラフィックス株式会社製)に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2の積層体を得た。
【0136】
<実施例3>
リキッド印刷インキをアルティマNT藍(DICグラフィックス株式会社製)に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例3の積層体を得た。
【0137】
<実施例4>
多層フィルム(1)を多層フィルム(2)に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例4の積層体を得た。
【0138】
<実施例5>
多層フィルム(1)を多層フィルム(2)に変更した以外は実施例2と同様にして、実施例5の積層体を得た。
【0139】
<実施例6>
多層フィルム(1)を多層フィルム(2)に変更した以外は実施例3と同様にして、実施例6の積層体を得た。
【0140】
<実施例7>
多層フィルム(1)を多層フィルム(3)に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例7の積層体を得た。
【0141】
<実施例8>
多層フィルム(1)を多層フィルム(3)に変更した以外は実施例2と同様にして、実施例8の積層体を得た。
【0142】
<実施例9>
多層フィルム(1)を多層フィルム(3)に変更した以外は実施例3と同様にして、実施例9の積層体を得た。
【0143】
<インキ密着性の評価方法>
実施例1~9の積層体の印刷面にセロファンテープ(ニチバン株式会社製)を貼り付けた後、素早くテープを引き剥がし、印刷面の状態を目視評価した。評価4以上が実用範囲である。
(評価基準)
5:印刷皮膜がフィルムから全く剥離しない。
4:印刷皮膜の面積比率として、20%未満がフィルムから剥離する。
3:印刷皮膜の面積比率として、20%以上、50%未満がフィルムから剥離する。
2:印刷皮膜の面積比率として、50%以上、80%未満がフィルムから剥離する。
1:印刷面の面積比率として、80%以上がフィルムから剥離する。
【0144】
実施例1~9の積層体の構成及びインキ密着性の評価結果を表1に示す。
【0145】
【0146】
実施例7~9の積層体の構成及びインキ密着性の評価結果を表2に示す。
【0147】
【0148】
表1及び2に記載の印刷層に使用した製品は以下である。
アルティマNT507原色藍YDICグラフィックス株式会社製
ライジン507原色藍DICグラフィックス株式会社製
グロッサ507原色藍S2DICグラフィックス株式会社製
【0149】
本発明の積層体である実施例1~9の積層体は、インキ密着性に優れていた。さらに、各層に植物由来原料を多く使用しており、積層体全体のバイオマス度が高い。