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特開2024-88147膜分離装置の散気装置の遠隔監視制御システム及び遠隔監視制御方法
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  • 特開-膜分離装置の散気装置の遠隔監視制御システム及び遠隔監視制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088147
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】膜分離装置の散気装置の遠隔監視制御システム及び遠隔監視制御方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/02 20060101AFI20240625BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20240625BHJP
   C02F 3/20 20230101ALI20240625BHJP
   B01D 65/06 20060101ALI20240625BHJP
   G01F 23/2962 20220101ALI20240625BHJP
【FI】
B01D65/02 520
C02F1/44 F
C02F3/20 D
B01D65/06
G01F23/2962
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203180
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】矢ノ根 勝行
【テーマコード(参考)】
2F014
4D006
4D029
【Fターム(参考)】
2F014FB01
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA01
4D006HA21
4D006HA41
4D006HA93
4D006JA31A
4D006JA39A
4D006JA53Z
4D006JA67Z
4D006KA16
4D006KA43
4D006KC14
4D006KC16
4D006KE06P
4D006KE21P
4D006KE21R
4D006KE24Q
4D006MA01
4D006MA02
4D006MA03
4D006MC02
4D006MC11
4D006MC22
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC33
4D006MC37
4D006MC62
4D006PA01
4D006PB08
4D006PC62
4D029AA01
4D029AB07
4D029BB08
4D029DD01
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、膜分離装置の散気装置を遠隔監視制御することで膜分離装置全
体を最適な状態で継続可能とする遠隔監視制御システムを提供することである。
【解決手段】ヘッダー付散気装置散気装置と、分離膜とを有する膜分離装置の遠隔監視制
御システムであって、前記分離膜が膜分離槽内の被処理液で浸漬され、前記ヘッダー付散
気装置が備える空気貯留部内の液面水位を検知する検知装置と、前記検知された液面水位
のデータを保管する保管装置と、前記保管された液面水位のデータに応じ、前記膜分離装
置の運転条件を制御する制御装置と、を備える、遠隔監視制御システム。。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッダー付散気装置と、分離膜とを有する膜分離装置の遠隔監視制御システムであって

前記分離膜が膜分離槽内の被処理液で浸漬され、
前記ヘッダー付散気装置が備える空気貯留部内の液面水位を検知する検知装置と、
前記検知された液面水位のデータを保管する保管装置と、
前記保管された液面水位のデータに応じ、前記膜分離装置の運転条件を制御する制御装
置と、を備える、
遠隔監視制御システム。
【請求項2】
前記保管された液面水位のデータを端末装置に送信する送信装置を備える、請求項1に
記載の遠隔監視制御システム。
【請求項3】
前記ヘッダー付散気装置が、前記空気貯留部にて、前記膜分離槽に空気を供給する散気
管と接続する、請求項1又は2に記載の遠隔監視制御システム。
【請求項4】
前記空気貯留部が膜分離槽内に配置され、前記空気貯留部の底部が開放されており、前
記被処理液が前記空気貯留部内に流入可能である、請求項1又は2に記載の遠隔監視制御
システム。
【請求項5】
前記検知装置は、前記空気貯留部内の上方に位置する、請求項1又は2に記載の遠隔監
視制御システム。
【請求項6】
前記検知装置は、超音波発センサーを搭載する、請求項1又は2に記載の遠隔監視制御
システム。
【請求項7】
ヘッダー付散気装置と、分離膜とを有する膜分離装置の遠隔監視制御方法であって、
前記分離膜が膜分離槽内の被処理液で浸漬され、
前記ヘッダー付散気装置が備える空気貯留部内の液面水位が、検知装置で検知され、
前記検知された液面水位のデータが、保管装置で保管され、
前記保管された液面水位のデータに応じ、前記膜分離装置の運転条件が制御装置で制御
される、遠隔監視制御方法。
【請求項8】
前記保管された液面水位のデータが、送信装置で端末装置に送信される、請求項7に記
載の遠隔監視制御方法。
【請求項9】
前記端末装置が、前記膜分離装置の運転条件を制御し得る、請求項8に記載の遠隔監視
制御方法。
【請求項10】
前記検知装置で検知された液面水位のデータが、前記保管装置で保管された正常時の液
面水位のデータに比べ、前記液面までの距離が25mm以上変化した場合、前記散気装置
へ供給する空気量を1.1~10倍へ増量させて運転する、請求項7又は8に記載の遠隔
監視制御方法。
【請求項11】
前記検知装置で検知された液面水位のデータが、前記保管装置で保管された正常時の液
面水位のデータに比べ、前記液面までの距離が25mm以上変化し、且つ、膜分離装置の
膜間差圧が5kPa以上上昇した場合は、下記工程(1)のみ、又は下記工程(1)、(
2)の順で実施する、請求項7又は8に記載の遠隔監視方法;
工程(1):前記ヘッダー付散気装置へ供給する空気量を1.1~10倍へ増量させる散
気増量運転工程
工程(2):前記ヘッダー付散気装置への空気供給を停止し、前記膜分離装置の薬品洗浄
を実施する膜洗浄工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜分離装置の散気装置を遠隔監視制御する遠隔監視制御システム、及び遠隔
監視制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下水等の排水処理施設において、生物処理等の処理槽に導入される被処理液を、
膜分離装置を用いて固液分離する膜分離活性汚泥処理法が多く採用されている。ここで、
生物処理とは、微生物の代謝作用を利用して、被処理液中の活性汚泥に含まれる有機物質
を分解する処理をいう。また、微生物の代謝を促進させるために、膜分離装置の下方に散
気装置を設けてエアレーション(曝気)を行うことで、処理槽内に酸素を供給する。この
散気装置の設置は、膜分離装置に装着された膜エレメントの洗浄も兼ねており、槽内に循
環流を発生し、汚泥と酸素とを充分に懸濁することができる。
【0003】
このような処理槽内部には膜分離装置が配設されて、被処理液の固液分離が行われてお
り、濾過された処理水は系外へと排出されている。一般的に膜分離装置における濾過は膜
間差圧によって管理される。すなわち、ポンプによって処理液を吸引し、このとき発生す
る負圧により膜分離装置外部の被処理液が膜分離装置を透過し膜分離装置に導入される。
このとき、水やイオン等の膜分離装置の膜細孔より小さい溶質は膜を透過するが、分子量
の大きなタンパク質等は膜を透過できず、ゲル化現象等を生じて膜面に付着することがあ
る。前述のエアレーションにより膜面の付着物を取り除きながら濾過を行うが、長期にわ
たり運転することにより付着物が膜面を閉塞させ、膜間差圧の上昇を引き起こし濾過作用
に不具合を発生させる。そこで、膜分離装置は一定期間ごとに洗浄や交換を余儀なくされ
る。
【0004】
近年、膜分離装置の監視制御を遠隔で行う遠隔監視制御システムが考えられてきた。こ
の従来の遠隔監視制御システムは膜分離装置の運転制御はネットワークを介して遠隔監視
制御装置と接続されている。そして、この遠隔監視制御システムでは、遠隔監視制御装置
が、膜分離装置の運転結果を監視情報とし取得するとともに、この監視情報に基づいて各
水処理装置の遠隔監視制御を行っている。例えば、特許文献1には、膜分離装置は遠隔制
御により分離膜の膜間差圧を遠隔監視し、所定の差圧に達した時に膜洗浄装置等にて薬品
洗浄を実施し膜間差圧を回復させ運転継続することができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-231591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で開示された遠隔監視制御方法によれば、ファウリングによ
る膜閉塞の場合には有効であるが、汚泥付着(クロッギング)による膜閉塞の場合、膜差
圧で検知すると、膜閉塞がすでに進行しており、膜閉塞が発生する前の早期検知をするこ
とが困難であるという課題を有する。そのため、通常のインライン薬品洗浄でクロッギン
グを確実に除去することがほぼ不可能であるため、オフラインで膜エレメントを引き上げ
て手動で洗浄する必要がある。
【0007】
本発明は、ヘッダー付散気装置を採用し、空気貯留部内の被処理液の液面水位から散気
装置の閉塞状態を検知し、検知したデータに応じて膜分離装置の運転条件を制御する。ク
ロッギング等に起因する膜閉塞が進行する前に、ヘッダー付散気装置と分離膜の洗浄を最
適なタイミングで実行できる膜分離装置の散気装置の遠隔監視制御システム及び遠隔監視
制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、空気貯留部内の被処理液の液
面水位に応じて膜分離装置の運転条件を制御する制御装置を備える遠隔監視制御システム
及び遠隔監視制御方法を見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は以下の特徴を有する。
(請求項に合わせて補充します。)
[1]ヘッダー付散気装置と、分離膜とを有する膜分離装置の遠隔監視制御システムであ
って、前記分離膜が膜分離槽内の被処理液で浸漬され、前記ヘッダー付散気装置が備える
空気貯留部内の液面水位を検知する検知装置と、前記検知された液面水位のデータを保管
する保管装置と、前記保管された液面水位のデータに応じ、前記膜分離装置の運転条件を
制御する制御装置と、を備える、遠隔監視制御システム。
[2]前記保管された液面水位のデータを端末装置に送信する送信装置を備える、[1]
に記載の遠隔監視制御システム。
[3]前記ヘッダー付散気装置が、前記空気貯留部にて、前記膜分離槽に空気を供給する
散気管と接続する、[1]又は[2]に記載の遠隔監視制御システム。
[4]前記空気貯留部が膜分離槽内に配置され、前記空気貯留部の底部が開放されており
、前記被処理液が前記空気貯留部内に流入可能である、[1]~[3]のいずれか1項に
記載の遠隔監視制御システム。
[5]前記検知装置は、前記空気貯留部内の上方に位置する、[1]~[4]のいずれか
1項に記載の遠隔監視制御システム。
[6]前記検知装置は、超音波発センサーを搭載する、[1]~[5]のいずれか1項に
記載の遠隔監視制御システム。
[7]ヘッダー付散気装置と、分離膜とを有する膜分離装置の遠隔監視制御方法であって
、前記分離膜が膜分離槽内の被処理液で浸漬され、前記ヘッダー付散気装置が備える空気
貯留部内の液面水位が、検知装置で検知され、前記検知された液面水位のデータが、保管
装置で保管され、前記保管された液面水位のデータに応じ、前記膜分離装置の運転条件が
制御装置で制御される、遠隔監視制御方法。
[8]前記保管された液面水位のデータが、送信装置で端末装置に送信される、[7]に
記載の遠隔監視制御方法。
[9]前記端末装置が、前記膜分離装置の運転条件を制御し得る、[8]に記載の遠隔監
視制御方法。
[10]前記検知装置で検知された液面水位のデータが、前記保管装置で保管された正常
時の液面水位のデータに比べ、前記液面までの距離が25mm以上変化した場合、前記散
気装置へ供給する空気量を1.1~10倍へ増量させて運転する、[7]~[9]のいず
れか1項に記載の遠隔監視制御方法。
[11]前記検知装置で検知された液面水位のデータが、前記保管装置で保管された正常
時の液面水位のデータに比べ、前記液面までの距離が25mm以上変化し、且つ、膜分離
装置の膜間差圧が5kPa以上上昇した場合は、下記工程(1)のみ、又は下記工程(1
)、(2)の順で実施する、[7]~[10]のいずれか1項に記載の遠隔監視方法;
工程(1):前記ヘッダー付散気装置へ供給する空気量を1.1~10倍へ増量させる散
気増量運転工程
工程(2):前記ヘッダー付散気装置への空気供給を停止し、前記膜分離装置の薬品洗浄
を実施する膜洗浄工程。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る膜分離装置の散気装置の遠隔監視制御システム及び遠隔監視制御方法では
、膜閉塞が発生しにくくなり、クロッギングによる膜閉塞を制御することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】膜分離装置Aの遠隔監視制御システムを示した図である。
図2】ヘッダー付散気装置の一形態例を示す立体図である
図3】ヘッダーの一形態例を示す透視図である。
図4】空気貯留部内の被処理液の液面水位と、散気穴の閉塞状況との相関関係を示す図である(実施例1)
図5】液面までの距離L及び膜間差圧で監視した結果を示す図である(実施例2)
図6】液面までの距離L及び膜間差圧で監視した結果を示す図である(比較例1)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態例について、図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、以下
の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが
できる。また、使用する図面は実施形態の一例を説明するためのものであり、実際の大き
さを表すものではない。
また、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後に記載される数値あ
るいは物理値を含む意味で用いることとする。また、上限、下限として記載した数値ある
いは物理値は、その値を含む意味で用いることとする。
【0013】
(遠隔監視制御システム)
図1は、本発明の膜分離装置Aの遠隔監視制御システムを示した図である。膜分離装置
Aは、分離膜1、ヘッダー付散気装置2、ヘッダー付散気装置2の曝気により変動する空
気貯留部内の被処理液の液面水位を検知する検知装置3、検知された液面水位のデータを
保管する保管装置4、保管された液面水位のデータを端末装置Bに送信する送信装置5、
保管された液面水位のデータに応じて膜分離装置Aの運転条件を制御する制御装置6で構
成されている。
【0014】
分離膜1は、被処理液の固液分離が行われる膜である。分離膜1は、被処理液の固液分
離が行えるものであれば、特に限定されるものではない。
分離膜1としては、例えば、精密濾過膜(MF膜)、限外濾過膜(UF膜)が挙げられ
る。
分離膜1の形状としては、例えば、中空糸膜、平膜、管状膜が挙げられ、容積ベースで
比較した場合に膜面積の高集積が可能である中空糸膜が好ましい。
【0015】
分離膜1の材質としては、特に限定されるものではない。例えば、セルロース、ポリオ
レフィン、ポリスルフォン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリエート、ポリフ
ッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン等の有機材料;ステンレス等の金属、セラミック
等の無機材料が挙げられる。分離膜1の材質は有機性排水等の被処理水の性状により適宜
選択することができる。
【0016】
図1に示していないが、膜分離装置Aには、吸引ポンプが接続され、被処理液を吸引濾
過して固液分離することにより処理水を得る。分離膜1と吸引ポンプの間には圧力計が備
えられることにより、分離膜1の膜間差圧を測定し、保管装置4へ送信し保管される。
膜分離装置Aは、分離膜1とヘッダー付散気装置2の洗浄を行うための洗浄ポンプ、洗
浄用水タンク、洗浄用薬液タンクを備える。ここで、洗浄する際に、洗浄用水と洗浄用薬
液の割合を調整して洗浄することが可能である。
【0017】
ヘッダー付散気装置2は、被処理液への給気が行われる装置である。ヘッダー付散気装
置2は、被処理液への給気が行えるものであれば、特に限定されるものではない。
例えば、図1に示すように、ブロワーがヘッダー付散気装置2の横に設けられてもよい
。ブロワーとヘッダー付散気装置2との間に、圧力計と流量計を備えてもよい。これらを
備えた場合、ブロワーからの吐出圧力と送風される空気量を測定することができる。この
圧力計と流量計で得られたデータはそれぞれ保管装置4へ送信し保管される。
【0018】
保管装置4は、検知装置3から送信された液面水位に関するデータを保管する装置であ
る。保管装置4はデータを保管できるものであれば、特に限定されるものではない。
保管装置4としては、例えば、メモリー、ハードディスク、コンピューターが挙げられ
る。
【0019】
送信装置5は、保管装置4で保管されたデータを送信する装置である。送信装置5はデ
ータを送信できるものであれば、特に限定されるものではない。
送信装置5としては、例えば、無線通信、電話回線、専用回線、広域LAN又はインタ
ーネットが挙げられる。
【0020】
制御装置6は、保管された液面水位のデータに応じて膜分離装置Aの運転条件を制御す
る装置である。制御装置6は、膜分離装置Aの運転条件を制御できるものであれば、特に
限定されるものではない。
制御装置6としては、例えば、演算処理機能、画面表示機能、制御の信号を発信する機
能を有するコンピューターが挙げられる。
【0021】
端末装置Bは、送信装置5から送信されたデータを受信する装置である。端末装
置Bは遠地に置かれてもよく、現地に置かれてもよい。端末装置Bは、データを受信でき
る機能、画面表示機能、制御の信号を発信する機能を有するものであれば、特に限定され
るものではない。
端末装置Bは、膜分離装置Aの運転条件を手動で制御し得るものが好ましく、例えば、
コンピューター、携帯電話が挙げられる。
【0022】
図2は、ヘッダー付散気装置の一形態例を示す立体図である。
図3は、ヘッダーの一形態例を示す透視図である。
図2図3に示すように、ヘッダー付散気装置2において、ヘッダー21は、空気貯留
部212と、空気貯留部212内に空気を送り込む給気部211と、空気貯留部212内
の空気を散気装置へと送り出す送気部213とを備える。送気部213はさらに散気管2
2と接続し、被処理液へ送気する。
図3に示すように、空気貯留部内に、被処理液の液面水位を検知する検知装置3が設け
られている。また、ヘッダー21の底部は開放されており、膜分離槽内の被処理液はヘッ
ダー21の底部を通じて、空気貯留部212内に流入可能である。
これより、空気貯留部212内の被処理液の液面水位を検知すれば、ヘッダー付散気装
置2の液面水位がわかる。
【0023】
(検知装置)
検知装置3は、空気貯留部内の被処理液の液面水位を検知する装置である。検知装置3
は、被処理液の液面水位の変化を検知できるものであれば、特に限定されるものではない

検知装置3としては、例えば、超音波センサー、電波式、圧力式、フロート式、差圧式
、画像取り込み式が挙げられる。
【0024】
検知装置3は固定機構により、空気貯留部内に固定される。固定機構は検知装置3を固
定できるものであれば、特に限定されるものではない。
固定機構としては、例えば、固定座にネジ固定する方式が挙げられる。
空気貯留部内の被処理液の液面水位を検知しやすくするため、検知装置3は空気貯留部
の頂部または壁側面に固定することが好ましい。
【0025】
検知装置3は移動機構により、水平または上下移動されてもよい。また、検知装置3は
回転機構により、検知装置3の検知角度が調整されてもよい。
【0026】
移動機構と回転機構は異なる機構でもよく、同じ機構でもよい。
移動機構と回転機構を設けることで、検知装置3は、指定された全領域または一部の領
域における空気貯留部内の被処理液の液面水位と、検知装置3との距離Lを検知すること
が可能である。
【0027】
(遠隔監視制御方法)
本実施の形態の膜分離装置のヘッダー付散気装置の遠隔監視制御システムで処理する被
処理液は、特に制限されるものではないが、例えば、下水等の排水、工場廃水が挙げられ
る。
【0028】
本実施の形態の膜分離装置のヘッダー付散気装置の遠隔監視制御装置を用い、遠隔監視
制御方法について説明する。
【0029】
検知装置3により、空気貯留部内の被処理液の液面の水位変化を検知し、数字化するこ
とが可能である。
【0030】
ヘッダー付散気装置2の曝気により、空気貯留部内の被処理液の液面が変動する。初期
水位データ、例えば、被処理液の液面と検知装置3までの距離(初期値L)は事前に保
管装置4で保管される。膜分離装置Aの運転開始後、運転時の液面水位のデータ(運転時
距離L)を検知装置3により検知し始める。
被処理液の液面水位を基準として検知した場合、被処理液の液面水位の最高点から検知
装置3までの距離は、運転時距離Lとする。
初期値Lと運転時距離Lの差ΔL(ΔL=L-L)の変化により、膜分離装置Aの
散気条件又は膜洗浄工程を制御する。ここで、膜洗浄工程の制御には、膜洗浄タイミング
と膜洗浄モードが含まれればよい。
【0031】
具体的に、特定の空気供給量において、空気貯留部212内の被処理液の液面水位と、
散気穴221の閉塞状況との相関関係を予め確かめる。ここで、相関関係とは、特定の空
気供給量の条件下で、散気穴の閉塞状況と、空気貯留部212内の圧力の上昇による被処
理液の液面水位の低下との関係である。
その後、実機運転する際に、空気貯留部212内の被処理液の液面水位を検知できれば
、予め取得した相関関係を利用し、散気穴221の閉塞状況を推測できる。そうすると、
膜閉塞を進行させないよう、散気増量運転工程(工程1)、又は、散気増量運転工程(工
程1)と膜洗浄工程(工程2)の実行を遠距離で制御する。
【0032】
図3に示すように、空気貯留部212内の被処理液の液面と検知装置3までの距離Lを
検知する。
検知装置3で検知された液面水位のデータが、保管装置で保管された正常時の液面水位
のデータ(初期値)に比べ、25mm以上(ΔL≧25mm)変化した場合、散気増量運
転工程を実行する(工程1)。
【0033】
検知装置3で検知された液面水位のデータが、保管装置で保管された正常時の液面水位
のデータに比べ、25mm以上(ΔL≧25mm)変化し、且つ、膜分離装置の膜間差圧
が5kPa以上上昇した場合、工程1を実行し、改善できていなようであれば、膜洗浄工
程を実行する(工程2)。
【0034】
(工程1:散気増量運転工程)
ヘッダー付散気装置2の散気増量運転方法としては、吸引ポンプ並びにブロワーを起動
する操作を行ってもよい。ヘッダー付散気装置2へ供給する空気量を1.1~10倍へ増
量させることが好ましく、1.5~5.0倍に増量させることがより好ましく、2.0~
4.0倍に増量することがさらに好ましい。
当然、風量レンジは広い方が好ましいのであるが、省エネとイニシャルコスト(風量レ
ンジを広く取るためには空気貯留部(チャンバー)を水深方向へ長くする必要があり、材
料が増えることになる)から10倍以下の大きさにとどめている。
また、一台のブロワーで数台の膜モジュールへ供給してもよい。例えば、閉塞した膜モ
ジュールへの供給量を増やすために他の膜モジュールへの供給を停止して制御することが
可能である。
【0035】
(工程2:膜洗浄工程)
分離膜1の洗浄は、インライン洗浄であることが好ましい。
分離膜1のインライン洗浄の通液条件は、洗浄効率の観点から、0.1~10L/m
/minの流速で、10分~12時間通液することが好ましく、2~8L/m/min
の流速で、30分間通液する条件で実施することがより好ましい。洗浄効率及び運転効率
の観点から、通液後はそのまま1~24時間保持することが好ましい。
【0036】
使用する洗浄水は、特に限定されないが、例えば、各種アルカリ、酸、界面活性剤の溶
液が挙げられる。なかでも、洗浄効率の観点から、有機物除去に効果のある次亜塩素酸ナ
トリウム溶液と、無機物除去に効果のあるクエン酸溶液との洗浄の組み合わせ洗浄が好ま
しい。洗浄液濃度は、0.05~10%で実施することが好ましく、次亜塩素酸ナトリウ
ム溶液は0.3%、クエン酸溶液は2%で洗浄することがより好ましい。
【0037】
<作用機序>
検知装置3により、空気貯留部212内の被処理液の液面水位を検知することで、ヘッ
ダー付散気装置2の詰まり具合に検知することが可能である。通常、膜閉塞(膜間差圧上
昇)が発生する前に、ヘッダー付散気装置2に変化がある。そのため、ヘッダー付散気装
置2の詰まり具合により、膜分離装置Aの運転条件を制御することで、膜閉塞が進行する
前(膜間差圧が上昇する前)に、ヘッダー付散気装置2と分離膜1の洗浄を最適なタイミ
ングで実行できる。
その結果、膜閉塞を予防できるとともに、クロッギングによる膜閉塞を抑制することが
可能である。
【実施例0038】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない
限りこれらの実施例により限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
ヘッダー付散気装置2として、SUS+樹脂製の散気管(三菱ケミカル社製、FSタイ
プ)を用いた。
検知装置3として、超音波センサー(オムロン社製、4PA-LL200)を用いた。
【0040】
ヘッダー付散気装置2への空気供給量は、50~125m/hr.で、使用する膜エレ
メントの数量により適宜設定する。ここで、空気量の単位「m/hr.」は膜分離装置投
影面積あたりの空気量を示す。つまり、50m/hr.は膜分離装置投影面積1mあた
りに50m/hr.の空気量を供給する意味である。
検知装置3は、150~1000mmの範囲内で検知可能である。
【0041】
図3に示すように、検知装置3は、空気貯留部212内の被処理液の液面水位、つまり
、検知装置3は液面までの距離Lを検知する。
【0042】
図4は、異なる空気量を供給した時の、空気貯留部212内の被処理液の液面水位と、
散気穴の閉塞状況との相関関係を示す図である。
具体的には、空気供給量は25m/hr.及び50m/hr.として設定した。当該空
気供給量において、散気穴221閉塞数をそれぞれ0~5とした場合の、被処理液の液面
までの距離L0~L5を表示した。
【0043】
空気供給量を50m/hr.で設定した場合、散気穴221閉塞数が0の場合、L
148mmであり、散気穴221閉塞数が1の場合(20%閉塞)、L1は25mm上昇
して173mmであり、散気穴221閉塞数が2の場合(40%閉塞)、L2は約52m
m上昇して225mmまで上昇した。
散気穴221閉塞数が3以上の場合、空気貯留部212の下部より空気が流出したため
、空気貯留部212内の圧力はこれ以上上昇しなかった。よって、L3~L5は約225
mmで維持している。
【0044】
空気供給量を25m/hr.で設定した場合、使用する検知装置3の測定範囲外となる
ため、目視により測定した結果を示す。上述と同様の手法で、当該空気供給量において、
散気穴221閉塞数を0~2とした場合の被処理液の液面までの距離を測定した。
その結果、空気貯留部212の下部より空気が流出しないうちに、散気穴221閉塞数
が1の場合(20%閉塞)、被処理液液面までの距離Lは、5mm上昇し105mmであ
った。散気穴221閉塞数が2の場合(40%閉塞)、被処理液液面までの距離Lは、3
5mm上昇し135mmであった。散気穴221閉塞数が3の場合(60%閉塞)、被処
理液液面までの距離Lは225mmまで上昇した。
散気穴221閉塞数が4以上の場合、空気貯留部212の下部より空気が流出したため
、空気貯留部212内の圧力はこれ以上上昇しなかった。よって、L4とL5は約225
mmで維持している。
【0045】
(実施例2)
図1~3に示した装置を用いて、運転フラックス0.8m/d、空気供給量50m/h
r.、曝気風量1m/min、MLSS10,000mg/L条件下において硝化液循
環型のMBR試験を行った。
分離膜として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)中空糸精密濾過膜モジュール(三菱
ケミカル製、50M0800FS)を用いた。それ以外は、実施例1の装置と同様である
【0046】
検知装置3と被処理液の液面までの距離の初期値Lは200mmに設定し、リアルタ
イムで液面までの距離Lを検知装置3により測定した。その結果を図5に示す。
また、膜間差圧で監視した結果も図5に示す。
【0047】
図5に示すように、運転開始7日目のf点で液面までの距離Lが、初期水位設定値20
0mmから25mm増え、225mmとなった。図4に示した相関関係によると、散気穴
221閉塞数が約20%となったことがわかった。
ここでは、膜分離装置Aを全停止させ、曝気風量を2倍の2m/minへ増加させ、
30分間の曝気単独運転を行った。その後、曝気風量を通常運転である1m/minへ
戻し通常運転を再開した。液面までの距離Lは初期値200mmへ戻り、散気管詰まりが
解消した。
その後、膜分離装置を引き上げて点検したところ、閉塞した散気装置上方位置の分離膜
1に、ファウリングやクロッギングは観察されなかった。
【0048】
一方、運転開始7日目の膜間差圧を確認したところ、膜間差圧の初期値5kPaから微
増するしかなく、著しく上昇していない。膜間差圧のみで監視した場合、膜間差圧が微増
すれば、わざわざ膜分離装置Aを全停止させ、散気増量運転工程または膜洗浄工程を行う
ことはしない。このため、ファウリングやクロッギングによる分離膜1の閉塞が進行しや
すいと考えられる。
【0049】
また、図5に示すように、運転開始14日目のg点で液面までの距離Lが、初期水位設
定値200mmから40mm増え、240mmとなり、膜間差圧も初期値5kPaから1
0kPa上昇し、15kPaとなった。図4に示した相関関係によると、散気穴221閉
塞数が約20~40%となったことがわかった。
ここでは、膜分離装置Aを全停止させ、7日目と同様の散気増量運転工程を行った後に
、曝気を停止し、分離膜1に対する膜洗浄工程を行った。膜洗浄工程としては、分離膜1
の2次側より、次亜塩素酸ナトリウム0.3%溶液を用い、2L/m/minかつ30
分通液するメンテンナンスクリーニングを行った。膜洗浄工程後、通常運転へ戻して確認
したところ、液面までの距離Lは初期値200mmへ戻り、散気管詰まりが解消し、膜間
差圧も初期圧レベルに回復したことから運転を継続した。
その後、膜分離装置を引き上げて点検したところ、閉塞した散気装置上方位置の分離膜
1に、ファウリングやクロッギングは観察されなかった。
【0050】
(実施例3)
図6に示すように、運転開始7日目のh点で液面までの距離Lが、初期水位設定値20
0mmから25mm増えて225mmとなった。ここでは、膜分離装置Aを全停止させ、
曝気風量を2倍の2m/minへ増加させ、30分間の曝気単独運転を行った。その後
、曝気風量を通常運転である1m/minへ戻し通常運転を再開した。液面までの距離
Lは初期値200mmへ戻り、散気管詰まりが解消した。
【0051】
(比較例1)
図6に示すように、運転開始14日目のi点で液面までの距離Lが、初期水位設定値2
00mmから40mm増え、240mmとなり、膜間差圧も初期値5kPaから10kP
a上昇し、15kPaとなった。しかし、ここでは、散気増量運転工程または膜洗浄工程
を実施せず、継続運転したところ、膜間差圧が更に上昇した。運転開始16日目のj点で
、膜間差圧が38kPaを超えたところで、装置を全停止した。
その後、膜分離装置を引き上げて点検したところ、閉塞した散気装置上方位置の分離膜
1には多量の汚泥が付着しクロッギングが観察された。
【符号の説明】
【0052】
膜分離装置A
端末装置B
1 分離膜
2 ヘッダー付散気装置
21 ヘッダー
211 給気部
212 空気貯留部(チャンバー)
213 送気部
22 散気管
221 散気穴
3 検知装置
4 保管装置
5 送信装置
6 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6