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特開2024-88302SiC基板及びSiCエピタキシャルウェハ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088302
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】SiC基板及びSiCエピタキシャルウェハ
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/36 20060101AFI20240625BHJP
   C30B 23/02 20060101ALI20240625BHJP
   C30B 33/02 20060101ALN20240625BHJP
【FI】
C30B29/36 A
C30B23/02
C30B33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203405
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100137017
【弁理士】
【氏名又は名称】眞島 竜一郎
(72)【発明者】
【氏名】野口 駿介
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AA03
4G077AB01
4G077AB02
4G077AB09
4G077AB10
4G077BE08
4G077DA02
4G077DA18
4G077ED02
4G077ED06
4G077FE17
4G077HA12
(57)【要約】
【課題】基板の反りを抑えつつ、デバイスへの悪影響の少ない、SiC基板及びSiCエピタキシャルウェハを提供することを目的とする。
【解決手段】本実施形態にかかるSiC基板は、SiC基板の表面に対して結晶面が第1方向に0.5°以上10°以下のオフセット角を有し、(3-3016)を回折面とするX線の反射トポグラフィーで第1測定点を確認すると転位が確認され、前記第1測定点は、前記SiC基板の外周端から5mm以上内側の測定領域の中心から前記第1方向に、前記SiC基板の半径の1/2の長さ分シフトした点であり、前記転位は、前記転位に外接し面積が最小となる長方形の長軸長を短軸長で割ったアスペクト比が5以上の第1転位と、前記アスペクト比が3未満の第2転位とを有し、前記第1測定点は、前記第1転位の密度が前記第2転位の密度より大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiC基板の表面に対して結晶面が第1方向に0.5°以上10°以下のオフセット角を有し、
(3-3016)を回折面とするX線の反射トポグラフィーで第1測定点を測定すると転位が確認され、
前記第1測定点は、前記SiC基板の外周端から5mm以上内側の測定領域の中心から前記第1方向に、前記SiC基板の半径の1/2の長さ分シフトした点であり、
前記転位は、前記転位に外接し面積が最小となる長方形の長軸長を短軸長で割ったアスペクト比が5以上の第1転位と、前記アスペクト比が3未満の第2転位とを有し、
前記第1測定点は、前記第1転位の密度が前記第2転位の密度より大きい、SiC基板。
【請求項2】
(3-3016)を回折面とするX線の反射トポグラフィーで第2測定点を測定すると転位が確認され、
前記第2測定点は、前記測定領域の中心から前記第1方向と反対方向に、前記SiC基板の半径の1/2の長さ分シフトした点であり、
前記第2測定点における前記転位の密度は、前記第1測定点における前記転位の密度より小さい、請求項1に記載のSiC基板。
【請求項3】
前記第2測定点の転位は、前記第1転位と前記第2転位とを有し、
前記第2測定点は、前記第2転位の密度が前記第1転位の密度より大きい、請求項2に記載のSiC基板。
【請求項4】
前記SiC基板の直径が140mm以上である、請求項1に記載のSiC基板。
【請求項5】
前記SiC基板の直径が190mm以上である、請求項1に記載のSiC基板。
【請求項6】
中心から半径17.5mmの円周と重なる位置にある支持面で支持した際に、
上面のうち厚み方向から見て前記支持面と重なる第1点を繋ぐ面を第1基準面とし、前記第1基準面より上方を正とした際に、BOWが40μm以下である、請求項1に記載のSiC基板。
【請求項7】
中心から半径17.5mmの円周と重なる位置にある支持面で支持した際に、
上面のうち厚み方向から見て前記支持面と重なる第1点を繋ぐ面を第1基準面とした際に、WARPが100μm以下である、請求項1に記載のSiC基板。
【請求項8】
(3-3016)を回折面とするX線の反射トポグラフィーで、第1測定点、第2測定点、第3測定点及び第4測定点を測定すると、それぞれ転位が確認され、
前記第1測定点は、SiC基板の外周端から5mm以上内側の測定領域の中心から第1方向に、前記SiC基板の半径の1/2の長さ分シフトした点であり、
前記第2測定点は、前記測定領域の中心から前記第1方向と反対方向に、前記SiC基板の半径の1/2の長さ分シフトした点であり、
前記第3測定点は、前記SiC基板の外周端から5mm以上内側の測定領域の中心から前記第1方向と直交する第2方向に、前記SiC基板の半径の1/2の長さ分シフトした点であり、
前記第4測定点は、前記測定領域の中心から前記第2方向と反対方向に、前記SiC基板の半径の1/2の長さ分シフトした点であり、
前記転位は、前記転位に外接し面積が最小となる長方形の長軸長を短軸長で割ったアスペクト比が5以上の第1転位と、前記アスペクト比が3未満の第2転位とを有し、
前記第1測定点、前記第2測定点、前記第3測定点及び前記第4測定点はそれぞれ、前記第1転位の密度が前記第2転位の密度より大きい、SiC基板。
【請求項9】
請求項1に記載のSiC基板と、前記SiC基板の表面に成膜されたSiCエピタキシャル層と、を有する、SiCエピタキシャルウェハ。
【請求項10】
請求項8に記載のSiC基板と、前記SiC基板の表面に成膜されたSiCエピタキシャル層と、を有する、SiCエピタキシャルウェハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiC基板及びSiCエピタキシャルウェハに関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に比べて絶縁破壊電界が1桁大きく、バンドギャップが3倍大きい。また、炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に比べて熱伝導率が3倍程度高い等の特性を有する。そのため炭化珪素(SiC)は、パワーデバイス、高周波デバイス、高温動作デバイス等への応用が期待されている。このため、近年、上記のような半導体デバイスにSiCエピタキシャルウェハが用いられるようになっている。
【0003】
SiCエピタキシャルウェハは、SiC基板の表面にSiCエピタキシャル層を積層することで得られる。以下、SiCエピタキシャル層を積層前の基板をSiC基板と称し、SiCエピタキシャル層を積層後の基板をSiCエピタキシャルウェハと称する。SiC基板は、SiCインゴットから切り出される。
【0004】
SiC基板は、転位を含む。転位は、SiCデバイスに致命的な欠陥を引き起こすデバイスキラー欠陥となる場合がある。例えば、基底面転位(Basal plane dislocation:BPD)は、デバイスキラー欠陥の一つである。バイポーラデバイスに順電流を印加すると、BPDを起点として積層欠陥が拡張し、高抵抗な積層欠陥となる。デバイス内に生じた高抵抗部は、デバイスの信頼性を低下させる。BPDは、その近傍で少数キャリアが再結合すると積層欠陥を形成しながら拡張する性質がある。
【0005】
例えば、特許文献1には、SiC基板に含まれる転位を少なくできる炭化珪素単結晶の製造方法が記載されている。また例えば、特許文献2には、デバイスに影響の大きい部分の転位密度を下げることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-64015号公報
【特許文献2】特開2015-231950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
SiC基板は、サイズが大きくなるほど反りやすくなる。SiC基板の反りは、センサーの検出不良や吸着不良等の不良の原因となる場合がある。またSiCエピタキシャルウェハの反りは、半導体デバイスのプロセスに悪影響を及ぼす場合がある。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、基板の反りを抑えつつ、デバイスへの悪影響の少ない、SiC基板及びSiCエピタキシャルウェハを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は鋭意検討の結果、転位は欠陥の原因となりうるが、反りの原因となる応力を緩和する一因となることを見出した。そして、発明者は、転位の中でも応力緩和への寄与が大きい転位と、応力緩和への寄与が小さい転位とがあることを見出した。本開示は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0010】
(1)第1の態様にかかるSiC基板は、SiC基板の表面に対して結晶面が第1方向に0.5°以上10°以下のオフセット角を有する。このSiC基板は、(3-3016)を回折面とするX線の反射トポグラフィーで第1測定点を測定すると転位が確認される。前記第1測定点は、前記SiC基板の外周端から5mm以上内側の測定領域の中心から前記第1方向に、前記SiC基板の半径の1/2の長さ分シフトした点である。前記転位は、前記転位に外接し面積が最小となる長方形の長軸長を短軸長で割ったアスペクト比が5以上の第1転位と、前記アスペクト比が3未満の第2転位とを有する。前記第1測定点は、前記第1転位の密度が前記第2転位の密度より大きい。
【0011】
(2)上記態様にかかるSiC基板は、(3-3016)を回折面とするX線の反射トポグラフィーで第2測定点を測定すると転位が確認される。前記第2測定点は、前記測定領域の中心から前記第1方向と反対方向に、前記SiC基板の半径の1/2の長さ分シフトした点である。前記第2測定点における前記転位の密度は、前記第1測定点における前記転位の密度より小さくてもよい。
【0012】
(3)上記態様にかかるSiC基板において、前記第2測定点の転位は、前記第1転位と前記第2転位とを有してもよい。前記第2測定点は、前記第2転位の密度が前記第1転位の密度より大きくてもよい。
【0013】
(4)上記態様にかかるSiC基板は、直径が140mm以上でもよい。
【0014】
(5)上記態様にかかるSiC基板は、直径が190mm以上でもよい。
【0015】
(6)上記態様にかかるSiC基板は、中心から半径17.5mmの円周と重なる位置にある支持面で支持した際に、上面のうち厚み方向から見て前記支持面と重なる第1点を繋ぐ面を第1基準面とし、前記第1基準面より上方を正とした際に、BOWが40μm以下でもよい。
【0016】
(7)上記態様にかかるSiC基板は、中心から半径17.5mmの円周と重なる位置にある支持面で支持した際に、上面のうち厚み方向から見て前記支持面と重なる第1点を繋ぐ面を第1基準面とした際のWARPが100μm以下でもよい。
【0017】
(8)第2の態様にかかるSiC基板は、(3-3016)を回折面とするX線の反射トポグラフィーで、第1測定点、第2測定点、第3測定点及び第4測定点を測定すると、それぞれ転位が確認される。前記第1測定点は、SiC基板の外周端から5mm以上内側の測定領域の中心から第1方向に、前記SiC基板の半径の1/2の長さ分シフトした点である。前記第2測定点は、前記測定領域の中心から前記第1方向と反対方向に、前記SiC基板の半径の1/2の長さ分シフトした点である。前記第3測定点は、前記SiC基板の外周端から5mm以上内側の測定領域の中心から前記第1方向と直交する第2方向に、前記SiC基板の半径の1/2の長さ分シフトした点である。前記第4測定点は、前記測定領域の中心から前記第2方向と反対方向に、前記SiC基板の半径の1/2の長さ分シフトした点である。前記転位は、前記転位に外接し面積が最小となる長方形の長軸長を短軸長で割ったアスペクト比が5以上の第1転位と、前記アスペクト比が3未満の第2転位とを有する。前記第1測定点、前記第2測定点、前記第3測定点及び前記4測定点はそれぞれ、前記第1転位の密度が前記第2転位の密度より大きい。
【0018】
(9)第3の態様にかかるSiCエピタキシャルウェハは、上記態様にかかるSiC基板と、前記SiC基板の表面に成膜されたSiCエピタキシャル層と、を有する。
【発明の効果】
【0019】
上記態様にかかるSiC基板は、基板の反りが小さく、デバイスへの悪影響が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係るSiC基板の平面図である。
図2】本実施形態に係るSiC基板の断面図である。
図3】本実施形態に係るSiC基板の第1転位の一例である。
図4】本実施形態に係るSiC基板の第2転位の一例である。
図5】本実施形態に係るSiC基板のBOWの評価方法を説明するための断面図である。
図6】本実施形態に係るSiC基板のWARPの評価方法を説明するための断面図である。
図7】SiCインゴットの昇華法に用いられる製造装置の一例である。
図8】第1変形例に係るSiC基板の断面図である。
図9】本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハの断面図である。
図10】第1変形例に係るSiCエピタキシャルウェハの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本実施形態にかかるSiC基板等について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本実施形態の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材質、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0022】
まず方向について規定する。SiC基板の広がる面内の一方向をX方向とし、同じ面内でX方向と直交する方向をY方向とする。X方向は、例えば、結晶面10cが第1面10aに対して所定のオフセット角で傾く方向である。X方向は、第1方向の一例であり、オフセット方向と言われる場合もある。X方向は、例えば、<11-20>方向である。Y方向は、例えば、<1-100>方向である。Z方向は、SiC基板に対して垂直な方向であり、X方向及びY方向と直交する。
【0023】
図1は、本実施形態に係るSiC基板10の平面図である。図2は、本実施形態に係るSiC基板10の断面図である。図2は、図1のA-A線に沿った断面であり、SiC基板10のXZ断面である。
【0024】
SiC基板10は、結晶面10cが第1面10aに対して傾いており、結晶面10cと第1面10aとの間にオフセット角θを有する。オフセット角θは、例えば、0.5°以上10°以下である。SiC基板10は、SiCからなる。SiCの結晶構造は、4H、6H、3C、15Rのうちから選択されるいずれでもよい。SiC基板10は、n型でも、p型でも、半絶縁性基板でもよい。
【0025】
SiC基板10の平面視形状は略円形である。SiC基板10は、結晶軸の方向を把握するためのオリエンテーションフラットOFもしくはノッチを有してもよい。オリエンテーションフラットOFは、例えば、Y方向に対して直交する。
【0026】
SiC基板10の直径は、特に問わない。SiC基板10は、直径が大きいほど反りやすくなる。SiC基板10の直径は、例えば、140mm以上である。SiC基板10の直径は、例えば、149mm以上151mm以下でもよい。またSiC基板10の直径は、例えば、190mm以上でもよく、199mm以上201mm以下でもよい。SiC基板10の直径は、例えば、240mm以上でもよく、249mm以上251mm以下でもよいし、290mm以上でもよく、299mm以上301mm以下でもよい。
【0027】
SiC基板10の厚みは、特に問わない。SiC基板10は、厚みが薄いほど反りやすくなる。SiC基板10の厚みは、例えば、300μm以上650μm以下である。SiC基板10の厚みは、例えば、480μm以上520μm以下でもよく、390μm以上410μm以下でもよく、340μm以上360μm以下でもよい。SiC基板10の厚みは、例えば、SiC基板10の直径が199mm以上201mm以下のとき、480μm以上520μm以下でもよく、390μm以上410μm以下でもよく、340μm以上360μm以下でもよい。
【0028】
SiC基板10は、内部に転位を有する。転位は、結晶内部で原子の並びが乱れた部分である。転位は、例えば、貫通刃状転位(TED)、貫通らせん転位(TSD)、基底面転位(BPD)などがある。転位の種類は光学顕微鏡、電子顕微鏡(SEM)等を用いて、溶融KOHエッチングによって現れたエッチピットの形状から判別することができる。
【0029】
SiC基板10の第1測定点P1を測定すると転位が確認される。第1測定点P1は、SiC基板10の外周端から5mm以上内側の測定領域の中心Cから+X方向に、SiC基板10の半径の1/2の長さ分シフトした位置である。
【0030】
SiC基板10の外周端は、ベベル(外周端の傾斜部)を含むSiC基板10全体の最外周である。SiC基板10の外周端から5mmの範囲は、デバイス取得領域外であり、測定領域外となる。SiC基板10の外周端から5mmの範囲は、外乱等により製造条件が乱れる場合があり、結晶内の転位密度等が安定しない。中心Cは、SiC基板10の幾何中心でもある。
【0031】
第1測定点P1は、測定領域の中心Cよりオフセット下流側にある。オフセット上流側は、ステップフロー成長の起点となる側であり、この反対側となるステップフロー成長が進行する方向がオフセット下流側である。図1では、-X方向がオフセット上流側に対応し、+X方向がオフセット下流側に対応する。SiC基板10の第1測定点P1は、例えば、1辺が0.25mmの正方形の領域である。
【0032】
SiC基板10の転位は、(3-3016)を回折面とするX線の反射トポグラフィーで測定できる。無転位部のX線回折強度に対して強度差が無転位部の強度の5%以上となる部分を転位とする。X線の侵入深さは、例えば、150μm以下である。SiC基板10の転位の転位密度は、例えば、100/cm以上1000/cm未満であり、1000cm以上5000/cm未満であってもよく、5000/cm以上10000/cm以下であってもよい。転位密度は、転位の個数をカウントし、反射トポグラフィー像の面積で除することで算出できる。転位密度は、例えば、複数の測定点(例えば、2測定点、又は、4測定点)で測定された平均として求められる。
【0033】
SiC基板10は、第1転位と第2転位とを有する。第1測定点P1の反射トポグラフィー像には、第1転位と第2転位とが確認される。図3は、本実施形態に係るSiC基板の第1転位1の一例である。図4は、本実施形態に係るSiC基板の第2転位2の一例である。
【0034】
第1転位1は、アスペクト比が5以上の転位である。第1転位1のアスペクト比は、転位に外接し面積が最小となる長方形を描き、長軸長L1を短軸長W1で割って求められる。第1転位1は、例えば、成長面の滑りにより導入されるBPDである。
【0035】
第2転位2は、アスペクト比が3未満の転位である。第2転位2のアスペクト比は、転位に外接し面積が最小となる長方形を描き、長軸長L2を短軸長W2で割って求められる。第2転位2は、例えば、転位の曲がりにより導入されるBPDである。
【0036】
第1測定点P1は、第1転位1の密度が第2転位2の密度より大きい。第1転位1の密度及び第2転位2の密度は、転位密度と同様に、それぞれの転位の個数をカウントし、反射トポグラフィー像の面積で除することで算出できる。第1転位1は、第2転位2よりアスペクト比が大きく、一方向に延びる。そのため、第1転位1は、SiC基板10内において一方向に加わる応力を緩和する効果が第2転位より大きい。第1測定点P1において第1転位1の密度が第2転位2の密度より大きいと、SiC基板10内に生じる応力が緩和され、SiC基板10の反りを小さくできる。
【0037】
SiC基板10の第2測定点P2を測定しても転位が確認される。第2測定点P2は、SiC基板10の外周端から5mm以上内側の測定領域の中心Cから-X方向に、SiC基板10の半径の1/2の長さ分シフトした位置である。
【0038】
第2測定点P2における転位の密度は、例えば、第1測定点P1における転位の密度より小さい。第2測定点P2における転位密度は、例えば、1000/cm以上であり、第1測定点P1における転位密度は、例えば、2000/cm以上である。
【0039】
SiC基板10のオフセット下流側は、オフセット上流側より応力が残留しやすくなる場合がある。SiCインゴットの成長面を凸面となるように結晶成長を行うと、オフセット下流側に応力が集中するためである。SiC基板10は、SiCインゴットを切り出すことで得られる。応力が残留しやすいオフセット下流側に位置する第1測定点P1に、オフセット上流側に位置する第2測定点P2より多くの転位を導入すると、SiC基板10内の応力をより解消できる。またオフセット上流側の転位は、結晶成長時に下流側に至る場合がある。オフセット上流側の転位が少ないと、SiC基板10が高品質になる。
【0040】
第2測定点P2の反射トポグラフィー像にも、第1転位と第2転位とが確認される。第2測定点P2において、第1転位の密度が第2転位の密度より大きくてもよく、第2転位の密度が第1転位の密度より大きくてもよい。例えば、第2測定点P2における第2転位の密度は、第1転位の密度より大きい。第2転位は成長条件によらず種結晶から引き継がれて導入されることが多い。これに対して、第1転位は成長条件により低減させることができる。例えば、成長時にSiCインゴットの径方向の温度勾配を小さくすることで、第1転位を低減できる。第2転位の密度の比率が第1転位の密度の比率より相対的に高いと全体の転位数は抑制され、SiC基板10はより高品質になる。
【0041】
またSiC基板10は、第3測定点P3、第4測定点P4及び中心Cからなる群から選択されるいずれの位置で測定しても転位が確認される。第3測定点P3は、SiC基板10の外周端から5mm以上内側の測定領域の中心CからY方向に、SiC基板10の半径の1/2の長さ分シフトした位置である。第4測定点P4は、SiC基板10の外周端から5mm以上内側の測定領域の中心Cから-Y方向に、SiC基板10の半径の1/2の長さ分シフトした位置である。
【0042】
第3測定点P3、第4測定点P4及び中心Cのいずれの位置の反射トポグラフィー像でも、第1転位1と第2転位2とが確認される。それぞれの測定点において、第1転位1の密度は、第2転位2の密度より大きいことが好ましい。またSiC基板10の中心Cよりオフセット下流側(+X方向)の測定領域のいずれの位置においても、第1転位1の密度は、第2転位2の密度より大きいことが好ましい。
【0043】
SiC基板10は、中心Cから半径17.5mmの円周と重なる位置にある支持面5で支持した際に、BOWが40μm以下であり、好ましくはBOWが20μm以下であり、より好ましくはBOWが10μm以下である。またSiC基板10は、中心Cから半径17.5mmの円周と重なる位置にある支持面5で支持した際に、好ましくはBOWが-40μm以上であり、より好ましくはBOWが-20μm以上であり、さらに好ましくはBOWが-10μm以上である。またSiC基板10は、中心Cから半径17.5mmの円周と重なる位置にある支持面5で支持した際に、好ましくはBOWが-40μm以上40μm以下であり、より好ましくはBOWが-20μm以上20μm以下であり、さらに好ましくはBOWが-10μm以上10μm以下である。BOWが上記範囲を満たすと、搬送エラーを低減できる。搬送エラーは、例えば、センサーの検出不良、吸着不良、他部材との接触等である。
【0044】
図5は、本実施形態にかかるSiC基板10を支持面5で支持した場合のBOWの評価方法を説明するための断面図である。図5に示すように、SiC基板10を支持面5で支持すると、SiC基板10の中心Cは最外周より平坦面Fから離れた位置にある。図5に示すSiC基板10は、支持面5で支持することで、上に凸にたわんでいる。SiC基板10は、支持面5で支持した際に、下に凸となってもよい。上に凸の場合、BOWは正となり、下に凸の場合、BOWは負となる。
【0045】
BOWは、ウェハの中心Cの高さを測定しており、この高さは3点基準平面に対する符号付き距離で規定される。3点基準平面より上の場合はプラス、下の場合はマイナスとなる。基準平面を第1基準面Sr1と称する。第1基準面Sr1は、第1面10aのうち厚み方向から見て支持面5と重なる第1点6を繋ぐ面である。第1点6は、例えば、厚み方向から見て、支持面5と重なる部分である。第1点6は、支持面5が複数の場合は、複数ある。例えば、第1基準面Sr1は、複数の第1点6を繋ぐ面である。BOWは、第1面10aの中心Cの第1基準面Sr1に対する高さ方向の位置として求められる。BOWの絶対値は、中心Cを通り第1基準面Sr1(平坦面F)と平行な第1面S1と3点基準平面(第1基準面Sr1)との距離として求められる。
【0046】
本実施形態に係るSiC基板10は、上記の支持面で支持した場合のWARPが100μm以下であることが好ましく、WARPが60μm以下であることがより好ましく、WARPが30μm以下であることがさらに好ましく、WARPが20μm以下であることが特に好ましい。
【0047】
図6は、本実施形態にかかるSiC基板10のWARPの評価方法を説明するための断面図である。
【0048】
WARPは、3点基準平面から第1面10aの最高点hpと最低点lpまでの距離の合計であり、常に正の値となる。WARPは、例えば、最高点hpを通り3点基準平面(第1基準面Sr1)(平坦面F)と平行な第2面S2と、最低点lpを通り3点基準平面(第1基準面Sr1)(平坦面F)と平行な第3面S3と、の距離として求められる。最高点hpは中心Cと一致する場合があり、この場合、第1面S1と第2面S2とは一致する。WARPが大きいほど、SiC基板10は変形していると判断される。
【0049】
次いで、SiC基板10の製造方法について説明する。SiC基板10は、SiCインゴットを所定の厚みでスライスすることで得られる。例えば、SiC基板10の主面が(0001)面に対して0.5°以上10°以下のオフセット角を有するように、SiCインゴットをスライスする。
【0050】
SiCインゴットは、例えば、昇華法で作製される。図7は、SiCインゴットの昇華法に用いられる製造装置の一例である。製造装置20は、坩堝21と台座22とヒータ23とを有する。台座22には種結晶25が貼り付けられ、坩堝21内の種結晶25と対向する位置に原料26が配置される。SiCインゴット27は、種結晶25上に結晶成長する。SiCインゴット27は、原料26から昇華したSiCガスが、種結晶25の表面で再結晶することで得られる。
【0051】
種結晶25には、結晶格子の曲率半径が130m以上の種結晶を用いる。結晶格子の曲率半径が所定値以上の種結晶25は、格子の反りが小さい。そのため、結晶格子の曲率半径が所定値以上の種結晶25を用いると、結晶成長時に種結晶の格子の反りに起因した基底面転位が導入されにくい。第2転位は、種結晶の格子の反りに起因して生じることが多いことから、当該種結晶25から結晶成長したSiCインゴット27内には、第1転位が相対的に導入されやすい。
【0052】
SiCインゴット27を作製する際において、原料26の温度は、例えば、2000℃以上2500℃以下とし、種結晶25の温度は、例えば、1900℃以上2400℃以下とする。またSiCインゴット27の成膜面の温度が以下の式(1)の関係を満たすように、SiCインゴット27を結晶成長する。SiCインゴット27の温度は、ヒータ23の配置、出力等を調整することで調整できる。
【0053】
(「端部平均温度」-「成長面中心温度」)/「結晶半径」>0.7℃/cm…(1)
「端部平均温度」は、SiCインゴット27の成長面を平面視した際の外周の平均温度である。「成長面中心温度」は、SiCインゴット27の成長面を平面視した際の中心の温度である。
【0054】
式(1)の関係を満たすと、SiCインゴットの成長面の中心と外周端とで結晶成長速度が異なる。その結果、SiCインゴット27内に第1転位1を第2転位2より選択的に導入できる。
【0055】
SiCインゴット27の結晶成長中に、坩堝21を0.1rpm以上10rpm以下の速度で回転させてもよい。坩堝21内は、He、Ar等の不活性ガスで充填されている。坩堝21内の圧力は、例えば、0.1torr以上100torr以下である。
【0056】
またSiCインゴット27を作製した後に、SiCインゴット27をアニールする。アニールは、最高温度が1500℃以上となるように行う。アニールは、SiCインゴット27の径方向に温度勾配をつけて行う。SiCインゴット27のオフセット上流側の径方向の温度勾配は0.7℃/cm未満とし、SiCインゴット27のオフセット下流側の径方向の温度勾配は0.7℃/cm以上とする。アニールは、例えば、30分以上行う。上記の条件でアニールを行うと、SiCインゴット27内に第1転位1を第2転位2より選択的に導入できる。
【0057】
ついで、作製したSiCインゴット27をスライスし、その表面をたとえばCMP(Chemical Mechanical Polishing)など研磨処理をすることで、SiC基板10が得られる。SiC基板10の表面の粗さは、たとえば、2乗平均平方根粗さ(RMS)が1nmよりも小さいことが好ましい。SiCインゴット27を上記の条件で作製することで、SiC基板10の第1測定点p1における第1転位1の密度が第2転位2の密度より大きくなる。
【0058】
上述のように、本実施形態に係るSiC基板10は、反りにくい。これは、従来欠陥の原因となるとして低減することが求められている転位をSiC基板10に意図的に導入したためである。またSiC基板10に導入する転位を第1転位1とすることで、より効果的にSiC基板10にかかる応力を緩和することができる。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0060】
図8は、第1変形例に係るSiC基板11の断面図である。SiC基板11の平面図は、図1に示すSiC基板10の平面図と同一である。
【0061】
SiC基板11は、結晶面11cが第1面11aに対して傾いていない。結晶面11cと第1面11aとの間のオフセット角θは0°である。なお、オフセット角は、厳密に0°である場合に限られない。オフセット角θが0.1°未満であれば、オフセット角θが0°とほぼ同等であり、オフセット角θは0.1°未満でもよい。SiC基板11は、結晶面11cがオフセット角θを有さない点を除き、SiC基板10と同様である。
【0062】
SiC基板11は、内部に転位を有する。SiC基板11は、第1転位1と第2転位2とを有する。SiC基板11は、第1測定点P1、第2測定点P2、第3測定点P3及び第4測定点P4のそれぞれにおいて、第1転位1の密度が第2転位2の密度より大きい。SiC基板11の中心Cを(3-3016)を回折面とするX線の反射トポグラフィーで測定すると転位が確認される。第1変形例に係るSiC基板11は、SiC基板10と同様に、反りにくい。
【0063】
図8のSiC基板11の場合、中心Cがオフセット上流に位置し、中心Cから外周側に向かうほどオフセット下流となる。そのため、第1測定点P1、第2測定点P2、第3測定点P3及び第4測定点P4は、中心Cよりオフセット下流に位置する。
【0064】
SiC基板11は、SiCインゴットをスライスすることで得られる。SiC基板11が切り出されるSiCインゴットの結晶成長時において、結晶中央部はオフセット上流に位置し、結晶中央部から半径の1/2だけシフトした点は、結晶中央部よりオフセット下流側に位置する。そのため、第1実施形態と同様に、オフセット上流側とオフセット下流側との間に温度勾配をつけて、SiCインゴットの結晶成長を行う。
【0065】
温度勾配は、図7の成長装置において、種結晶25と対向する位置に、円板状の断熱部材を設置することで実現できる。種結晶25と対向する位置に円板状の断熱材を設置すると、部分的にフラットな温度分布を作ることができる。例えば、断熱材の位置及び大きさを調整することで、SiCインゴット27の中心近傍の径方向の温度勾配を0.7℃/cm未満とし、SiCインゴット27においてオフセット下流側に位置する結晶中央部から半径の1/2だけシフトした点における径方向の温度勾配を0.7℃/cm以上とすることができる。
【0066】
断熱部材の径は例えば種結晶25の直径の1/2で良く、断熱材と種結晶25との距離は例えば80mmで良い。また、成長後は、上記構成(所定の断熱材を所定の位置に配置)でアニールすることで、SiCインゴットの中心近傍の径方向の温度勾配を0.7℃/cm未満とし、SiCインゴット27のオフセット下流側に位置する結晶中央部から半径の1/2だけシフトした点における径方向の温度勾配を0.7℃/cm以上とすることができる。SiC基板11が切り出されるSiCインゴットを上記の条件で作製することで、SiC基板11の第1測定点p1、第2測定点p2、第3測定点p3、第4測定点p4のそれぞれにおける第1転位1の密度が第2転位2の密度より大きくなる。
【0067】
SiC基板11の中心Cにおける転位の密度は、例えば、第1測定点P1、第2測定点P2、第3測定点P3及び第4測定点P4における転位の密度より小さい。中心Cにおける転位密度は、例えば、1000/cm以上であり、第1測定点P1、第2測定点P2、第3測定点P3及び第4測定点P4における転位密度は、例えば、2000/cm以上である。
【0068】
SiC基板11の中心Cにおいて、第1転位の密度が第2転位の密度より大きくてもよく、第2転位の密度が第1転位の密度より大きくてもよい。例えば、SiC基板11の中心Cにおける第2転位の密度は、第1転位の密度より大きい。
【0069】
また図9は、本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハ30の断面図である。SiCエピタキシャルウェハ30は、SiC基板10とSiCエピタキシャル層15とを有する。SiCエピタキシャルウェハ30は、SiC基板10の第1面10aにSiCエピタキシャル層15を成膜することで作製できる。SiCエピタキシャルウェハ30の直径は、SiC基板10の直径と略同一である。
【0070】
SiCエピタキシャルウェハ30は、SiCデバイスに用いることができる。SiCデバイスは、例えば、ダイオード、ショットキーバリアダイオード(SBD)、電界効果型トランジスタ(FET)、絶縁ゲート電界効果トランジスタ(MOSFET)、接合型電界効果電界トランジスタ(JFET)、金属半導体電界効果トランジスタ(MESFET)等である。またSiCデバイスは、LED、自動車、電車等のパワーコンディショナーとして用いることができる。
【0071】
ここでは、一例として、SiC基板10上にSiCエピタキシャル層15を有するSiCエピタキシャルウェハ30を示したが、図10に示すように、SiC基板11上にSiCエピタキシャル層15を有するSiCエピタキシャルウェハ31としてもよい。
【0072】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【実施例0073】
「実施例1」
まずSiCインゴットを昇華法で作製した。種結晶は、結晶格子の曲率半径が130m以上のものを用い、結晶成長面が(0001)面に対して4°のオフセット角を有するものを用いた。実施例1では、SiCインゴットを成長する際に、SiCインゴットの成長面の温度が式(1)を満たすように行った。具体的には、(「端部平均温度」-「成長面中心温度」)/「結晶半径」=1.1℃/cmとなるように、SiCインゴットを成長させた。端部平均温度は、4つの端部の平均温度である。4つの測定点のうちの第1端部は、成長面中心からオフセット下流方向にある成長面の端部である。他の3つの端部のそれぞれは、中心を軸に第1端部から90度、180度、270度回転させた位置にある。成長面中心と端部平均温度を測定する4つの端部は同じ高さ位置となるようにして、温度を求めた。
【0074】
次いで、作製後のSiCインゴットをアニールした。SiCインゴットのオフセット上流側の径方向の温度勾配は0.5℃/cmとし、SiCインゴットのオフセット下流側の径方向の温度勾配は1.5℃/cmとした。SiCインゴットのオフセット上流側の径方向の温度勾配は、中心からオフセット上流方向にあるSiCインゴットの上流端部温度と中心温度との差分を、SiCインゴットの結晶半径で割って求められる。SiCインゴットのオフセット下流側の径方向の温度勾配は、中心からオフセット下流方向にあるSiCインゴットの下流端部温度と中心温度との差分を、SiCインゴットの結晶半径で割って求められる。
【0075】
作製したSiCインゴットを厚さ600μmにスライスし、その表面をCMP研磨し、仕上がり厚が500μm±20μmになるように実施例1のSiC基板を作製した。SiC基板の厚みは500μmであった。SiC基板の直径は200mmであった。SiC基板の第1測定点及び第2測定点の転位密度を求めた。また実施例1のSiC基板のBow及びWarpを測定した。
【0076】
次いで、実施例1のSiC基板を所定の搬送路で搬送して、搬送エラー率を求めた。搬送路の高さは2mmであり、搬送ロボットの厚みは1.5mmとした。搬送のストローク幅は50μmとした。搬送のストローク幅は、SiC基板を浮かして搬送する際に、搬送方向と直交する上下方向におけるSiC基板の移動幅を意味する。実施例1のウェハは、搬送エラー率が0%であった。
【0077】
「実施例2~4」
実施例2~4では、SiCインゴットの成長時の温度条件及びアニール時の温度条件を変更した点が実施例1と異なる。その他の条件は、実施例1と同様にして、同様の評価を行った。
【0078】
「比較例1」
比較例1では、SiCインゴットの成長時の温度条件及びアニール時の温度条件を変更した点が実施例1と異なる。その他の条件は、実施例1と同様にして、同様の評価を行った。
【0079】
「比較例2,3」
比較例2,3では、種結晶に結晶格子の曲率半径が130m以上のものを用いなかった点と、SiCインゴットの成長時の温度条件を変更し、SiCインゴットをアニールしなかった点が実施例1と異なる。その他の条件は、実施例1と同様にして、同様の評価を行った。
【0080】
実施例1~4及び比較例1~3のSiCインゴットの成長条件及びアニール条件を以下の表1にまとめた。表1において、成長温度勾配は、(「端部平均温度」-「成長面中心温度」)/「結晶半径」で求められ、上流温度勾配は、(「上流端部温度」-「中心温度」)/「結晶半径」で求められ、下流温度勾配は、(「下流端部温度」-「中心温度」)/「結晶半径」で求められる。
【0081】
【表1】
【0082】
また実施例1~4及び比較例1~3の評価結果を以下の表2にまとめた。表2における比率は、第1転位密度と第2転位密度の比率であり、「第1転位密度」:「第2転位密度」で表す。
【0083】
【表2】
【0084】
実施例1~4は、第1測定点における第1転位の密度が第2転位の密度より大きく、搬送エラー率が低かった。これに対し、比較例1~3は、第1測定点における第1転位の密度が第2転位の密度より小さく、搬送エラー率が高かった。これは、実施例1~4は、第1転位によってSiC基板の反りが抑制されたためと考えられる。実施例1~4のSiC基板の反りが抑制されていることは、実施例1~4のBow及びWarpが比較例1~3のBow及びWarpよりも小さいことからも確認できる。
【符号の説明】
【0085】
1…第1転位、2…第2転位、5…支持面、6…第1点、10,11…SiC基板、15…SiCエピタキシャル層、20…製造装置、21…坩堝、22…台座、23…ヒータ、25…種結晶、26…原料、27…SiCインゴット、P1…第1測定点、P2…第2測定点、P3…第3測定点、P4…第4測定点、C…中心、10a,11a…第1面、10c,11c…結晶面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10