(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088319
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】粉末フィーダー
(51)【国際特許分類】
B30B 11/00 20060101AFI20240625BHJP
B22F 3/035 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B30B11/00 F
B22F3/035 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203429
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小川 涼平
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 英直
(72)【発明者】
【氏名】中野 貴規
(72)【発明者】
【氏名】穆 仕程
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018CA14
4K018KA01
(57)【要約】
【課題】成形毎のダイスキャビティ内への原料粉末の充填量を一定にし、かつ、その充填密度を均一にして、原料粉末の安定した充填を行えるようにする。
【解決手段】粉末フィーダー10は、粉末成形プレスに際し、ダイス100上を進退し、ダイスキャビティ101内に原料粉末を充填し、上端側に原料粉末を供給する開口11bを有し、下端側が開口するフィーダーボックス11と、フィーダーボックス11の少なくとも一つの側壁を貫いてフィーダーボックス11の室11aにおいて略水平面内で進退方向に略直交する方向に延びるシャフト12と、シャフト12の外周に取り付けられ、原料粉末を撹拌する撹拌羽13と、フィーダーボックス11の外壁に取り付けられ、シャフト12を回転駆動するアクチュエーター19とを有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末成形プレスに際し、ダイス上を進退して、ダイスキャビティ内に原料粉末を充填する粉末フィーダーであって、
上端側に原料粉末を供給する開口を有し、下端側が開口するフィーダーボックスと、
前記フィーダーボックスの少なくとも一つの側壁を貫いて前記フィーダーボックスの室において略水平面内で進退方向に略直交する方向に延びるシャフトと、
前記シャフトの外周に取り付けられ、原料粉末を撹拌する撹拌羽と、
前記フィーダーボックスの外壁に取り付けられ、前記シャフトを回転駆動するアクチュエーターと
を含む粉末フィーダー。
【請求項2】
前記フィーダーボックスは、原料粉末を収容する単一の室を有し、下端側は進退方向に略直交する方向に前記ダイスキャビティの径よりも大きい幅の開口を有し、前記シャフトには前記シャフトの延びる方向に少なくとも第1撹拌羽及び第2撹拌羽が取り付けられた請求項1に記載の粉末フィーダー。
【請求項3】
前記第1撹拌羽及び前記第2撹拌羽は、前記シャフトが延びる方向に前記ダイスキャビティについて対称な位置に取り付けられた請求項2に記載の粉末フィーダー。
【請求項4】
前記フィーダーボックスは、進退方向に略直交する方向に並置された原料粉末を収容する複数の室を有し、各室の下端側は進退方向に略直交する方向に各室に対応するダイスキャビティの径より大きい幅の開口を有し、各室の前記シャフトにはそれぞれ撹拌羽が取り付けられた請求項1に記載の粉末フィーダー。
【請求項5】
前記撹拌羽は、各室において前記シャフトが延びる方向に各室に対応する前記ダイスキャビティについて対称な位置に取り付けられた請求項4に記載の粉末フィーダー。
【請求項6】
前記撹拌羽は、前記シャフトから回転方向に対称に1方向から6方向の範囲にある方向に張り出した請求項1から5のいずれか一項に記載の粉末フィーダー。
【請求項7】
前記撹拌羽は、前記シャフトに直交する平面に対して0°から30°の範囲にある角度のねじれを有する請求項1から5のいずれか一項に記載の粉末フィーダー。
【請求項8】
前記アクチュエーターは、前記撹拌羽の回転方向が所定の回転角度ごとに逆転するように回転駆動する請求項1から5のいずれか一項に記載の粉末フィーダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末成形プレスに用いられる給粉装置の粉末フィーダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉末冶金により、機械構造部品をはじめとする種々の焼結部品が製造されている。粉末冶金にあっては、主に、粉末成形プレスが利用されており、プレス成形された圧粉体を焼結し、必要に応じて後処理を施すことによって所望の焼結部品を製造している。
【0003】
粉末成形プレスでは、一般に、ダイスと下ポンチとによって形成されるダイスキャビティ内に、給粉装置により原料粉末を充填した後に、ダイスキャビティに向けて上ポンチを下降させて、上下のポンチでダイスキャビティ内の原料粉末を圧縮することによって圧粉体を成形する。
【0004】
かかる粉末成形プレスに用いられる給粉装置は、例えば、原料粉末を貯留する高架されたホッパーと、下端側が開口する無底箱状の粉末フィーダー(以下、「フィーダー」ともいう)と、ホッパーとフィーダーとを連結するフィーダーホースとを備えている。そして、フィーダーは、ダイス上を進退可能に構成されており、ダイスと下ポンチとによって形成されるダイスキャビティに向かって前進して当該ダイスキャビティ内に原料粉末を導入し、次いで、後退しながらダイスキャビティ内に堆積した原料粉末の上面をすり切ることによって、ダイスキャビティ内に所定量の原料粉末を充填する。
【0005】
ダイスキャビティ内に原料粉末を充填する際には、成形毎の充填量を一定にし、かつ、その充填密度を均一にすることが求められ、原料粉末の充填が安定して行われないと、最終的に製造される焼結部品の品質にばらつきが生じるなどの好ましくない影響を及ぼしてしまう。このため、粉末冶金において、粉末成形プレスに用いられる給粉装置の粉末フィーダーについては、従前より種々の改良がなされている。例えば、特許文献1には、粉末フィーダーの内側に粉末フィーダーの移動方向に水平且つ垂直なシャフトを設け、その外周に固定した撹拌羽をダイス上に固定したラックと噛み合うピニオンによって駆動することによって粉末フィーダー内の原料粉末を移動方向前方に掻き均す技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された技術においては、ダイス上にラックという特定の部材を設置する必要があった。また、撹拌羽の回転角度はラックに対する粉末フィーダーの位置によって規定されるため、粉末フィーダーの移動速度に依存して撹拌羽の回転速度も変化し、撹拌羽による原料粉末の撹拌作用が一定しないことがあった。
【0008】
本発明は、上述の実情に鑑みて提案されるものであって、ダイス上に特定の部材を新たに設置する必要がなく、粉末フィーダーの移動速度にかかわらず原料粉末に一定の撹拌作用を及ぼすことができ、成形毎のダイスキャビティ内への原料粉末の充填量を一定にし、かつ、その充填密度を均一にして、原料粉末の安定した充填を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、この出願に係る粉末フィーダーは、粉末成形プレスに際し、ダイス上を進退して、ダイスキャビティ内に原料粉末を充填する粉末フィーダーであって、上端側に原料粉末を供給する開口を有し、下端側が開口するフィーダーボックスと、フィーダーボックスの少なくとも一つの側壁を貫いてフィーダーボックスの室において略水平面内で進退方向に略直交する方向に延びるシャフトと、シャフトの外周に取り付けられ、原料粉末を撹拌する撹拌羽と、フィーダーボックスの外壁に取り付けられ、シャフトを回転駆動するアクチュエーターとを含む。
【0010】
フィーダーボックスは、原料粉末を収容する単一の室を有し、下端側は進退方向に略直交する方向にダイスキャビティの径よりも大きい幅の開口を有し、シャフトにはシャフトの延びる方向に少なくとも第1撹拌羽及び第2撹拌羽が取り付けられてもよい。第1撹拌羽及び第2撹拌羽は、シャフトが延びる方向にダイスキャビティについて対称な位置に取り付けられてもよい。
【0011】
フィーダーボックスは、進退方向に略直交する方向に並置された原料粉末を収容する複数の室を有し、各室の下端側は進退方向に略直交する方向に各室に対応するダイスキャビティの径より大きい幅の開口を有し、各室のシャフトにはそれぞれ撹拌羽が取り付けられてもよい。撹拌羽は、各室においてシャフトが延びる方向に各室に対応するダイスキャビティについて対称な位置に取り付けられてもよい。
【0012】
撹拌羽は、シャフトから回転方向に対称に1方向から6方向の範囲にある方向に張り出してもよい。撹拌羽は、前記シャフトに直交する平面に対して0°から30°の範囲にある角度のねじれを有してもよい。アクチュエーターは、撹拌羽の回転方向が所定の回転角度ごとに逆転するように回転駆動してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、ダイス上に特定の部材を新たに設置する必要がなく、粉末フィーダーの移動速度にかかわらず原料粉末に一定の撹拌作用を及ぼすことができる。また、成形毎のダイスキャビティ内への原料粉末の充填量を一定にし、かつ、その充填密度を均一にして、原料粉末の安定した充填を行えるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施の形態の粉末フィーダーを略水平面で切断した断面図である。
【
図2】本実施の形態の粉末フィーダーを進退方向を含む略鉛直面で切断した断面図である。
【
図3】シャフトに取り付けられた撹拌羽を示す図である。
【
図6】他の実施の形態の粉末フィーダーを略水平面で切断した断面図である。
【
図7】実施例1の成形体の評価方法について説明する図である。
【
図8】実施例1の第1分割体から第4分割体の最大最小密度差を示すグラフである。
【
図9】実施例2の第1成形体から第4成形体の重量を示すグラフである。
【
図10】実施例2の第1成形体から第4成形体の全長ばらつきを示すグラフである。
【
図11】比較例3の第1成形体から第4成形体の重量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、粉末フィーダーの実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態の粉末フィーダー10を略水平面で切断した断面図である。
図2は、本実施の形態の粉末フィーダー10を進退方向を含む略鉛直面で切断した断面図である。
図1は
図2における切断面I-Iで切断したものであり、
図2は
図1における切断面II-IIで切断したものである。
【0016】
粉末フィーダー10は、フィーダーボックス11を有し、フィーダーボックス11は、略直方体の箱型の形状を有し、原料粉末を収容する単一の室11aを形成し、上端側に原料粉末を供給するための開口11bを有し、下端側が開口している。また、粉末フィーダー10は、フィーダーボックス11の少なくとも一つの側壁を貫いてフィーダーボックス11の室11aにおいて略水平面内で進退方向に略直交する方向に延びるシャフト12と、シャフト12の外周に取り付けられ、原料粉末を撹拌する撹拌羽13と、フィーダーボックス11の外壁に取り付けられ、シャフト12を回転駆動するアクチュエーター19とを有している。フィーダーボックス11の下端側は、進退方向に略直交する方向にダイスキャビティ101の径Dよりも大きな幅Wで開口している。
【0017】
図3は、シャフト12に取り付けられた撹拌羽13を示す図である。
図3(a)は上面図、
図3(b)は右側面図、
図3(c)は斜視図である。フィーダーボックス11の室11aにおいて、シャフト12の外周には、ダイスキャビティ101に対して対称な位置に、アクチュエーター19からシャフト12が延びる方向に、第1撹拌羽13
1及び第2撹拌羽13
2が順に取り付けられている。第1撹拌羽13
1及び第2撹拌羽13
2は、それぞれ4枚の羽から構成され、シャフト12の周りに回転対称な所定の角度に取り付けられている。第1撹拌羽13
1と第2撹拌羽13
2との間隔dは、ダイスキャビティ101の径Dに対して0.7倍から1.5倍の範囲にあってもよい。また、第1撹拌羽13
1及び第2撹拌羽13
2とダイス100の上面との間隔Tは、0.5mmから5mmの範囲にあってもよい。
【0018】
粉末フィーダー10において、フィーダーボックス11の上端側の開口11bには高架されたホッパーに貯留された原料粉末をフィーダーボックス11の室11aに供給するフィーダーホースが接続され、原料粉末はフィーダーホースを通じてフィーダーボックス11の室11aに落下供給される。フィーダーボックス11の室11aに収容された原料粉末は、第1撹拌羽131及び第2撹拌羽132によって撹拌される。
【0019】
アクチュエーター19は、シャフト12を介して第1撹拌羽131及び第2撹拌羽132が所定の回転角度ごとに回転方向を逆転するように回転駆動する。このため、第1撹拌羽131及び第2撹拌羽132は、室11aに収容された原料粉末を進退方向に均一に撹拌することができる。前記所定の回転角度は、例えば150°~210°の間にあってもよい。また、第1撹拌羽131及び第2撹拌羽132はシャフト12上にダイスキャビティ101について対称な位置に取り付けられている。このため、室11aに収容された原料粉末を略水平面内で進退方向に略直交する方向に均一に撹拌することができる。
【0020】
このような粉末フィーダー10は、粉末成形プレスに際し、駆動機構21によって、ダイス100上を進退して、ダイス100と下ポンチ102とによって形成されるダイスキャビティ101内に原料粉末を充填する。待機状態において、粉末フィーダー10の室11aには、高架されたホッパーからフィーダーホースを通じて原料粉末が落下供給され、第1撹拌羽131及び第2撹拌羽132によって撹拌されながら原料粉末が蓄積されていく。原料粉末は、第1撹拌羽131及び第2撹拌羽132によって進退方向及び略水平面内で進退方向に略直交方向に均一に撹拌される。
【0021】
次いで、駆動機構21によって粉末フィーダー10をダイスキャビティ101に向けて前進させる。フィーダーボックス11の下端側の開口が、ダイスキャビティ101上に到達すると、ダイスキャビティ101内に原料粉末が導入される。このとき、原料粉末は、フィーダーボックス11の室11aにおいて回転する第1撹拌羽131及び第2撹拌羽132によって撹拌され、原料粉末にせん断面を形成しつつ、ダイスキャビティ101直上にある原料粉末を均一に流動させることができるため、ダイスキャビティ101内の空気と原料粉末との円滑な置換が可能となる。さらに、粉末フィーダー10の前進時に慣性力によって原料粉末が粉末フィーダー10内の後方に圧縮されて偏りが生じてしまったとしても、撹拌によって、その偏析を崩すことも可能である。
【0022】
その後、駆動機構21によって粉末フィーダー10を後退させ、フィーダーボックス11によってダイスキャビティ101内に堆積した原料粉末の上面をすり切る。これによって、ダイスキャビティ101内には所定量の原料粉末が充填される。
【0023】
以上のように、本実施の形態の粉末フィーダー10によると、成形毎のダイスキャビティ101内への原料粉末の充填量を一定にし、かつ、その充填密度を均一にして、原料粉末の安定した充填を行うことができる。また、ダイス100上に特定の部材を新たに設置する必要がなく、粉末フィーダー10の移動速度にかかわらず原料粉末に一定の撹拌作用を及ぼすことができる。
【0024】
図4は、撹拌羽13の他の態様を示す図である。
図4(a)は上面図、
図4(b)は右側面図、
図4(c)は斜視図である。
図4に示した撹拌羽13は、
図3に示した撹拌羽13とは、第1撹拌羽13
1及び第2撹拌羽13
2はそれぞれ4枚の羽から構成され、シャフト12の周りに回転対称な所定の角度に取り付けられている点で一致しているが、第1撹拌羽13
1及び第2撹拌羽13
2を構成する羽がシャフト12に直交する平面に対して角度θのねじれを有している点で相違している。角度θは、0°から30°の範囲にあってもよい。このようなねじれを有することによって、第1撹拌羽13
1及び第2撹拌羽13
2を回転させたときに原料粉末にシャフト12が延びる方向に沿った移動を促すことができ、原料粉末の撹拌を促進することができる。
【0025】
図5は、撹拌羽13のさらに他の態様を示す図である。
図5(a)の撹拌羽13は、第1撹拌羽13
1及び第2撹拌羽13
2はそれぞれ3枚の羽から構成され、シャフト12の周りに回転対称な所定の角度に取り付けられている。
図5(b)の撹拌羽13は、第1撹拌羽13
1及び第2撹拌羽13
2はそれぞれ6枚の羽から構成され、シャフト12の周りに回転対称な所定の角度に取り付けられている。このように、第1撹拌羽13
1及び第2撹拌羽13
2の枚数は、1枚から6枚の間で適切に設定してもよい。
図5(c)の撹拌羽は、シャフト12が延びる方向にシャフト12を挟んで反対方向に延びる2枚の羽からなる第1撹拌羽13
1から第5撹拌羽13
5が、隣接する撹拌羽とは羽の延びる方向が90°をなすように略等間隔に取り付けられている。撹拌羽13には、第1撹拌羽13
1及び第2撹拌羽13
2に限らず、このような第1撹拌羽13
1から第5撹拌羽13
5を採用してもよい。
【0026】
図6は、他の実施の形態の粉末フィーダー10を示す断面図である。この断面図は、
図1と同様に、他の実施の形態の粉末フィーダー10を適切な略水平面で切断したものである。他の実施の形態の粉末フィーダー10を略鉛直面で切断した断面図は、
図2と同様である。
【0027】
他の実施の形態の粉末フィーダー10は、略直方体の箱を並置した形状を有し、略水平面内で進行方向に略直交する方向に原料粉末を収容する第1室11a1から第4室11a4の4個の室11aが並置されて形成されたフィーダーボックス11を有している。フィーダーボックス11の第1室11a1から第4室11a4の各室は下端側が開口している。第1室11a1及び第2室11a2は上端側に原料粉末を供給するための開口11bを共有している。第3室11a3及び第4室11a4も上端側に原料粉末を供給するための開口11bを共有している。
【0028】
他の実施の形態の粉末フィーダー10は、フィーダーボックス11の側壁を貫いて略水平面内で進退方向に略直交する方向に第1室11a1から第4室11a4に延びるシャフト12と、第1室11a1から第4室11a4の各室においてシャフト12の外周に取り付けられ、原料粉末を撹拌する撹拌羽13と、フィーダーボックス11の外壁に取り付けられ、シャフト12を回転駆動するアクチュエーター19とを有している。第1室11a1から第4室11a4の各室の下端側は進退方向に略直交する方向にダイスキャビティ101の径Dよりも大きな幅Wで開口している。
【0029】
フィーダーボックス11の第1室11a1から第4室11a4の各室において、シャフト12の外周には、ダイスキャビティ101に対して対称な位置に、撹拌羽13に取り付けられている。第1室11a1から第4室11a4の各室における撹拌羽13は、それぞれ4枚の羽から構成され、シャフト12の周りに回転対称な所定の角度に取り付けられている。
【0030】
アクチュエーター19は、シャフト12を介して第1室11a1から第4室11a4の各室における撹拌羽13が所定の回転角度ごとに回転方向を逆転するように回転駆動する。このため、撹拌羽13は、第1室11a1から第4室11a4の各室に収容された原料粉末を略水平面内で進退方向に略直交する方向に均一に撹拌することができる。また、撹拌羽13はシャフト12上にダイスキャビティ101について対称な位置に取り付けられている。このため、撹拌羽13は、第1室11a1から第4室11a4の各室に収容された原料粉末を略水平面内で進退方向に略直交する方向に均一に撹拌することができる。
【0031】
他の実施の形態の粉末フィーダー10は、粉末成形プレスに際し、駆動機構21によって、ダイス100上を進退して、ダイス100と下ポンチ102とによって形成されるダイスキャビティ101内に原料粉末を充填する。待機状態において、粉末フィーダー10の第1室11a1から第4室11a4の各室には、高架されたホッパーからフィーダーホースを通じて原料粉末が落下供給され、撹拌羽13によって撹拌されながら原料粉末が蓄積されていく。第1室11a1から第4室11a4の各室において、原料粉末は、撹拌羽13によって進退方向及び略水平面内で進退方向に略直交方向に均一に撹拌される。
【0032】
次いで、駆動機構21によって粉末フィーダー10をダイスキャビティ101に向けて前進させる。フィーダーボックス11の下端側の開口が、ダイスキャビティ101上に到達すると、ダイスキャビティ101内に原料粉末が導入される。このとき、原料粉末は、フィーダーボックス11の第1室11a1から第4室11a4の各室において回転する撹拌羽13によって撹拌され、原料粉末にせん断面を形成しつつ、ダイスキャビティ101直上にある原料粉末を均一に流動させることができるため、ダイスキャビティ101内の空気と原料粉末との円滑な置換が可能となる。さらに、粉末フィーダー10の前進時に慣性力によって原料粉末が第1室11a1から第4室11a4の各室において後方に圧縮されて偏りが生じてしまったとしても、撹拌によって、その偏析を崩すことも可能である。
【0033】
その後、駆動機構21によって粉末フィーダー10を後退させ、フィーダーボックス11によってダイスキャビティ101内に堆積した原料粉末の上面をすり切る。これによって、ダイスキャビティ101内には所定量の原料粉末が充填される。
【0034】
以上のように、他の実施の形態の粉末フィーダー10によっても、成形毎のダイスキャビティ101内への原料粉末の充填量を一定にし、かつ、その充填密度を均一にして、原料粉末の安定した充填を行うことができる。また、ダイス100上に特定の部材を新たに設置する必要がなく、粉末フィーダー10の移動速度にかかわらず原料粉末に一定の撹拌作用を及ぼすことができる。
【実施例0035】
実施例1では、
図1及び
図2に示した本実施の形態の粉末フィーダー10を用いてダイス100のダイスキャビティ101に充填した後、上ポンチと下ポンチ102とで圧縮して形成した成形体を評価する。
【0036】
図7は、成形体の評価方法を説明する図である。
図7(a)は、評価する成形体200を示す斜視図である。成形体200は、所定の外径及び内径並びに高さを有する管状の形状を有している。
図7(b)は、成形体200を分割する態様を示す上面図である。作業者側を手前、プレス側を向かい側として、管状の成形体の軸を通り、互いに直交する鉛直面によって、4つに分割する。以下では、便宜上、分割された成形体200を第1分割体200a、第2分割体200b、第3分割体200c及び第4分割体200dと称することにする。
【0037】
図8は、実施例1の第1分割体200aから第4分割体200dの最大最小密度差を示すグラフである。
図8には、後述する比較例1及び比較例2の最大最小密度差も併せて記載した。実施例1の最大最小密度差は、比較例1及び比較例2のいずれよりも小さくなることが観察された。
【0038】
(比較例1)
比較例1は、鉛直方向に延びるシャフトの外周に取り付けられた撹拌羽を回転させて原料粉末を撹拌したものである。他の条件は、実施例1と同様である。
図8の第1分割体200aから第4分割体200dの最大最小密度差を示すグラフにおいて、比較例1は、実施例1よりもわずかに大きな値であった。
【0039】
(比較例2)
比較例2は、撹拌なしである。他の条件は、実施例1と同様である。
図8の第1分割体200aから第4分割体200dの最大最小密度差を示すグラフにおいて、比較例2は、実施例1及び比較例1よりも大きな値であった。