(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088464
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】DA変換回路
(51)【国際特許分類】
H03M 1/76 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
H03M1/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203655
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近野 暢
【テーマコード(参考)】
5J022
【Fターム(参考)】
5J022AB05
5J022BA06
5J022CF07
5J022CG01
(57)【要約】
【課題】折り返されるラダー抵抗回路を含む小型のDA変換回路の実現、又は、ラダー抵抗回路のレイアウトの自由度を高める。
【解決手段】実施形態のDA変換回路100は、入力信号Dinのディジタル値に対応する電圧を各抵抗素子R
i,jの一端に生じさせるラダー抵抗回路3と、ラダー抵抗回路3の複数のノードD
i,jの一つを第1判定ビット列Bj1の値に基づいてそれぞれが選択する第1選択回路1と、第1選択回路1のうちの一つを第2判定ビット列Bj2の値に基づいて選択する第2選択回路2と、を備えている。ラダー抵抗回路3は所定の数の抵抗素子R
i,j毎に折り返されており、第1判定ビット列Bj1は、入力信号Dinの少なくとも最上位及び最下位ビットを含み、第2判定ビット列Bj2は、入力信号Dinの最下位ビットを含まずに、入力信号Dinのうちの第1判定ビット列Bj1の構成ビット以外の全ビットを少なくとも含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号のディジタル値を変換してアナログ信号を出力するDA変換回路であって、前記DA変換回路は、
直列接続されている複数の抵抗素子を含んでいて、前記ディジタル値に対応する電圧を前記複数の抵抗素子それぞれの一端に生じさせるラダー抵抗回路と、
前記複数の抵抗素子それぞれの前記一端に繋がる複数のノードの一つを、第1判定ビット列の値に基づいてそれぞれが選択する複数の第1選択回路と、
前記複数の第1選択回路のうちの一つを第2判定ビット列の値に基づいて選択することによって前記複数のノードの一つの電圧を出力する第2選択回路と、を備え、
前記ラダー抵抗回路は第1の所定の数の前記抵抗素子毎に第1方向において折り返されていて、前記第1方向と直交する第2方向において第2の所定の数で前記抵抗素子が並んでおり、
前記第1判定ビット列は、前記入力信号のうちの少なくとも最上位ビット及び最下位ビットを含み、
前記第2判定ビット列は、前記最下位ビットを含まず、且つ、前記入力信号のうちの前記第1判定ビット列を構成するビット群以外の全てのビットを少なくとも含んでいる、DA変換回路。
【請求項2】
前記第1の所定の数は2n(nは1以上の整数)であり、
前記第2判定ビット列は、前記入力信号のうちの第2ビットから第(n+1)ビットまでの各ビットを含んでいる、請求項1記載のDA変換回路。
【請求項3】
前記複数の第1選択回路のそれぞれは、前記複数のノードのうちの、前記入力信号のディジタル値のうちの前記第2ビットから前記第(n+1)ビットまでの各ビット値が互いに同じか1の補数の関係にあるディジタル値に対応する電圧がそれぞれ生じている第3の所定の数のノードから、一つのノードを選択するように構成されている、請求項2記載のDA変換回路。
【請求項4】
前記第3の所定の数は前記第2の所定の数と同じであり、
前記複数の第1選択回路のそれぞれは、前記複数のノードのうちの、前記第2ビットから前記第(n+1)ビットまでの各ビット値が互いに同じであるディジタル値に対応する電圧がそれぞれ生じているノードから、一つのノードを選択するように構成されている、請求項3記載のDA変換回路。
【請求項5】
前記第1判定ビット列は、前記入力信号のうちの第(n+2)ビットから前記最上位ビットまでの各ビット及び前記最下位ビットを含んでいる、請求項4記載のDA変換回路。
【請求項6】
前記第2の所定の数は2m(mは1以上の整数)であり、
前記第3の所定の数は2(m+1)である、請求項3記載のDA変換回路。
【請求項7】
前記第1判定ビット列は、前記第(n+1)ビットから前記最上位ビットまでの各ビット、及び前記最下位ビットを含んでいる、請求項6記載のDA変換回路。
【請求項8】
前記第1判定ビット列は、前記入力信号のうちの第(n+2)ビットから前記最上位ビットまでの各ビット、前記第2ビット、及び前記最下位ビットを含んでいる、請求項6記載のDA変換回路。
【請求項9】
前記第2選択回路は、前記第2ビットから前記第(n+1)ビットまでの隣り合うビット同士の排他的論理和で構成されるビット長nのビット列の値に基づいて、前記複数の第1選択回路のうちの一つを選択するように構成されている、請求項6記載のDA変換回路。
【請求項10】
前記第1選択回路は、二者択一の1以上のスイッチング素子を各階層に備える階層構造を有していて、上位階層の前記スイッチング素子が下位階層の複数の前記スイッチング素子の一つを選択するように構成されており、
前記階層構造における最上位階層の前記スイッチング素子が前記第2選択回路に接続されると共に最下位階層の前記スイッチング素子が前記ラダー抵抗回路の前記ノードに接続されており、
前記階層構造における各階層の前記スイッチング素子が、前記第1判定ビット列の各ビットの値によって制御される、請求項6記載のDA変換回路。
【請求項11】
前記第1方向に沿う各行に前記第1の所定の数の前記複数の抵抗素子が配置されており、
前記複数の第1選択回路のうちの半数の第1選択回路には、前記ラダー抵抗回路の低電位端側から奇数番目の行それぞれにおいて前記ラダー抵抗回路の前記第1方向における端部から(2×k-1)番目(kは1から2(n-1)までの整数)に位置する前記抵抗素子の両端が接続されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のDA変換回路。
【請求項12】
前記複数の第1選択回路のそれぞれには、さらに、前記ラダー抵抗回路の前記低電位側から偶数番目の行それぞれにおいて前記端部から(2×k)番目に位置する前記抵抗素子の両端が接続されている、請求項11記載のDA変換回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DA変換回路(ディジタル/アナログ変換回路)に関する。
【背景技術】
【0002】
所定のビット数のディジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換回路には、入力信号のビット数に応じた数の抵抗器が直列接続されたラダー抵抗回路が多く用いられている(例えば特許文献1参照)。
図11には、そのようなラダー抵抗回路を含むNビットのDA変換回路の基本的な回路が示されている。
図11のDA変換回路1000が含むラダー抵抗回路1001は、直列接続された2
N個の抵抗器R
0~R
2
N
―1によって構成されていて基準電圧V
REFとGNDとの間に接続されている。各抵抗器同士間の各ノードには、ラダー抵抗回路1001内での分圧比に応じた大きさの電圧が生じる。ラダー抵抗回路1001と出力端Voutとの間には、階層的に接続されているスイッチを含む選択回路1002が接続されている。
【0003】
選択回路1002で最もラダー抵抗回路1001側の階層に配置されている複数のスイッチ1003は、入力信号Dinの最下位ビット(b1)の値によって制御される。スイッチ1003よりも出力端Vout側の階層のスイッチは、順に、より上位ビット(≧b2)の値によって制御され、最も出力端Vout側の階層のスイッチ1004は最上位ビット(bN)の値によって制御される。各階層に並ぶスイッチには、各スイッチを制御する入力信号Dinの各ビットの値(S1、S2、・・・SN)と、その反転値(S1r、S2r、・・・SNr)が交互に入力される。このような構成によって、入力信号Dinのディジタル値に応じて、ラダー抵抗回路1001の各抵抗器間のノードの一つが選択回路1002で選択され、そのノードの電圧が出力端Voutから出力される。このような構成のDA変換回路では、各スイッチのための制御信号を生成するデコーダを備えずに、入力信号の各ビットの値及びその反転値で直接各スイッチを制御することができる。
【0004】
図11のようなラダー抵抗回路1001を含むDA変換回路が配線基板上や半導体基板上で構成される場合、
図12に示すように、適当な数の抵抗器毎にラダー抵抗回路1001が折り返されて配置されることがある。このような配置によって、長尺のラダー抵抗回路1001を効率良く配置し得ることがある。しかし、このようにラダー抵抗回路1001が折り返して配置されると、ラダー抵抗回路1001と選択回路1002とを接続する複数の配線1005の多くを、ラダー抵抗回路1001から出力端Voutに向かう方向と交差する方向において互いにすれ違うように敷設することが必要となる。そのため、配線1005のための大きな配線領域1006が必要になることがある。
【0005】
この問題を軽減する一つの手段として、
図13に示されるような回路構成が存在する。
図13のDA変換回路1100は、Nビットの入力信号Dinが入力されるDA変換回路であり、そのラダー抵抗回路1101を構成する全部で2
N個の抵抗素子Rzは、2
m行×2
n列に配置されている。すなわち、ラダー抵抗回路1101は、2
n個の抵抗素子Rz毎に行方向において折り返されている。
【0006】
DA変換回路1100は、ラダー抵抗回路1101に加えて、複数の上位ビットスイッチSu、下位ビットスイッチSd、並びに、上位ビットデコーダ1107及び下位ビットデコーダ1108を含んでいる。ラダー抵抗回路1101の各抵抗素子Rzの一端のノードDzは、破線で示されている配線束Wbzによって各上位ビットスイッチSuの一端に接続されている。配線束Wbzは、その多くが
図13では簡略化して1本の線で示されているが、実際には、代表して左端の配線束Wbzについて示されているように配線Wizの束である。個々の配線束Wbz内の各配線Wizは、同一列に並ぶ抵抗Rzのうちのいずれかの端部のノードDzと一つの上位ビットスイッチSuの一端とを独立して接続している。より詳細には、個々の配線束Wbzにおいて配線Wizは、ラダー抵抗回路1101の偶数行のノードDzだけを上位ビットスイッチSuに接続するか、奇数行のノードDzだけを上位ビットスイッチSuの一端に接続している。そのため。個々の配線束Wbzは、(2
m/2)本の配線Wizを含んでいる。
【0007】
各上位ビットスイッチSuには、上位ビットデコーダ1107から、入力信号Dinの上位(m-1)ビット(すなわち第(n+2)ビットから最上位ビットまで)の値に基づく制御信号Sguが供給される。各上位ビットスイッチSuは、制御信号Sguに基づいて、自身に接続されている(2m/2)本の配線Wizのいずれか一つ、すなわち、配線束Wbzによって接続されているラダー抵抗回路1101のノードDzのいずれか一つを選択する。
【0008】
各上位ビットスイッチSuの他端は、下位ビットスイッチSdの一端に接続され、下位ビットスイッチSdの他端は出力端Voutに接続されている。下位ビットスイッチSdには、下位ビットデコーダ1108から、入力信号Dinの下位(n+1)ビット(すなわち最下位ビットから第(n+1)ビットまで)の値に基づく制御信号Sgdが供給される。下位ビットスイッチSdは、制御信号Sgdに基づいて、複数の上位ビットスイッチSuのいずれか一つを選択する。その結果、選択された上位ビットスイッチSuを介して下位ビットスイッチSdに接続されているラダー抵抗回路1101のノードDzに生じている電圧が、出力端Voutから出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図13のDA変換回路1100では、ラダー抵抗回路1101と上位ビットスイッチSuとの間で、上位ビットスイッチSuに向かう方向と交差する方向への敷設が必要となる配線が少ないため、整然と各配線をレイアウトすることができる。しかし、上位ビットスイッチSuと下位ビットスイッチSdとの間には、行方向に並ぶ抵抗素子Rzの数に応じた本数の配線Wczが必要なため、配線Wczを配置するための配線領域1106が必要になる。具体的には、ラダー抵抗回路1101の一往復に含まれる抵抗素子Rzの数の配線Wczが必要になるため、1行に2
n個の抵抗が配置されると2
n+1本の配線Wczの配置が必要になる。例えば8ビットDA変換回路において、行方向の抵抗素子Rzの配置数n=5の場合は、64本の配線Wczの配置が必要になる。そして配線本数が多いと、上位ビットスイッチSuの大きさと下位ビットスイッチSdの大きさとの相対関係などにより、行方向への配線Wczの敷設が必要になって大きな配線領域1106が必要になることもあり得る。
【0011】
より少ない数の抵抗素子Rzが行方向に並べられる場合の配線領域1106は小さいが、行方向に多くの抵抗素子を並べることが望まれることもある。例えば、抵抗素子Rzの行方向と列方向との寸法比(アスペクト比)次第では、行方向に抵抗素子Rzを多く並べる方が、ラダー抵抗回路1101を効率よく配置できることがある。例えば、半導体集積回路装置内のDA変換回路のように抵抗素子が薄膜抵抗で構成される場合、求められる抵抗値とシート抵抗値との関係で必要なアスペクト比が決定され、その結果、行方向に多くの抵抗素子を並べる方が、レイアウトの効率上、好ましいことがある。そのような場合に、行方向に多くの抵抗素子を配置することによって大きな配線領域が必要になることは、配置効率の向上を阻害するため好ましくない。特に小型化が求められる半導体集積回路内に多ビットのDA変換回路を実装する場合には問題となり易い。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑み、
図13の例のように折り返して配置されるラダー抵抗回路を含むDA変換回路において、1行に配置される抵抗素子の数が多くても、配線領域を小さくし、もって従来よりも小型のDA変換回路を実現すること、或いは、配線領域の増大を回避しながら、1行に並べる抵抗素子の数の選択自由度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態のDA変換回路(ディジタル/アナログ変換回路)は、入力信号のディジタル値を変換してアナログ信号を出力するDA変換回路である。前記DA変換回路は、直列接続されている複数の抵抗素子を含んでいて、前記ディジタル値に対応する電圧を前記複数の抵抗素子それぞれの一端に生じさせるラダー抵抗回路と、前記複数の抵抗素子それぞれの前記一端に繋がる複数のノードの一つを、第1判定ビット列の値に基づいてそれぞれが選択する複数の第1選択回路と、前記複数の第1選択回路のうちの一つを第2判定ビット列の値に基づいて選択することによって前記複数のノードの一つの電圧を出力する第2選択回路と、を備え、前記ラダー抵抗回路は第1の所定の数の前記抵抗素子毎に第1方向において折り返されていて、前記第1方向と直交する第2方向において第2の所定の数で前記抵抗素子が並んでおり、前記第1判定ビット列は、前記入力信号のうちの少なくとも最上位ビット及び最下位ビットを含み、前記第2判定ビット列は、前記最下位ビットを含まず、且つ、前記入力信号のうちの前記第1判定ビット列を構成するビット群以外の全てのビットを少なくとも含んでいる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のDA変換回路によれば、1行に配置される抵抗素子の数が多くても、配線領域を小さくし、もって従来よりも小型のDA変換回路を実現すること、或いは、配線領域の増大を回避しながら1行に並べる抵抗素子の数の選択自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態のDA変換回路の一例を模式的に示す回路図である。
【
図2】
図1のDA変換回路におけるラダー抵抗回路の各ノードに対応するディジタル値を示す表である。
【
図3】第1実施形態のDA変換回路の具体例を示す回路図である。
【
図4】
図3のDA変換回路における各判定ビット列の値と、接続されるノード及び閉状態となるスイッチング素子との対応表である。
【
図5】
図3のDA変換回路におけるラダー抵抗回路の各ノードに対応するディジタル値を示す表である。
【
図6】第2実施形態のDA変換回路の第1の具体例を示す回路図である。
【
図7A】
図6のDA変換回路における第1判定ビット列の値と接続されるノードとの対応表である。
【
図7B】
図6のDA変換回路における第2判定ビット列の値と閉状態となるスイッチング素子との対応表である。
【
図8】第2実施形態のDA変換回路の第2の具体例を示す回路図である。
【
図9】
図8のDA変換回路における第1判定ビット列の値と接続されるノードとの対応表である。
【
図10】第2実施形態のDA変換回路の変形例を示す回路図である。
【
図11】従来のDA変換回路の一例を示す回路図である。
【
図12】
図11の従来のDA変換回路を実現する場合の問題点を模式的に示す回路図である。
【
図13】従来のDA変換回路の他の例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照しながら本発明のDA変換回路を説明する。しかし、本発明は、以下に説明される実施形態に限定されない。
【0017】
<第1実施形態>
図1には、第1実施形態のDA変換回路の一例であるDA変換回路100の回路が模式的に示されている。本実施形態のDA変換回路100は、入力信号Dinの所定のビット数のディジタル値をアナログ値に変換してアナログ信号を出力端Voutから出力する。DA変換回路100は、任意のビット数のディジタル値をアナログ値に変換し得るが、3以上のビット数のディジタル値が入力されるDA変換器として特に有益性を有している。以下の説明では、各実施形態のDA変換回路に入力されるディジタル値のビット数はN(Nは3以上の整数)で示される。
【0018】
本実施形態のDA変換回路100は、ラダー抵抗回路3と、複数の第1選択回路1と、第2選択回路2と、を含んでいる。ラダー抵抗回路3は、直列接続されている複数の抵抗素子Ri,jを含んでいる。ラダー抵抗回路3は、複数の抵抗素子Ri,jのうちの所定の数(第1の所定の数)の抵抗素子Ri,j毎に第1方向において折り返されている。そして、第1方向と直交する第2方向において所定の数(第2の所定の数)で抵抗素子Ri,jが並べられている。ラダー抵抗回路3は、抵抗素子Ri,jの一端にそれぞれが繋がっている複数のノードDi,jを有している。各ノードDi,jは、複数の配線束Wbそれぞれの中の各配線Wiによって複数の第1選択回路1のいずれか一つに接続されている。
【0019】
図1の例において第1の方向は
図1に矢印Xで示される方向(X方向)であり、以下の説明において「行方向」とも称される。また、第2の方向は
図1に矢印Yで示される方向(Y方向)であり、以下の説明において「列方向」とも称される。また、
図1の例において、第1の所定の数は2
nであり、第2の所定の数は2
mである(n、mは1以上の整数)。すなわち、複数の抵抗素子R
i,jは、行方向に2
n個、及び列方向に2
m個ずつ並べられていて、2
m行×2
n列に渡って配列されている。それぞれ1以上の整数n、mは、N=n+mを満たす整数である。従って、ラダー抵抗回路3は、2
N個の抵抗素子R
i,jを含んでいる。なお、実施形態のDA変換回路のラダー抵抗回路を構成する抵抗素子の計数においては、ラダー抵抗回路内のノードD
i,jのうち第1選択回路1と接続される二つの隣接ノード間の抵抗素子全体が一つの抵抗素子として数えられる。従って、例えば第1選択回路1と接続されるノードD
i,jのうちの隣接する二つのノード間に物理的に2以上の直列接続された抵抗素子が配置されていても、その2以上の抵抗素子は一つの抵抗素子R
i,jとして数えられる。
【0020】
ラダー抵抗回路3には、第1基準電位V
REF1と、第1基準電位V
REF1よりも低電位の第2基準電位V
REF2との差電圧V
REFが印加されている。
図1の例において第2基準電位V
REF2はGNDである。すなわち、
図1のラダー抵抗回路3の一端である低電位端31はGNDに接続されている。低電位端31と反対側のラダー抵抗回路3の高電位端32は、対GND電圧V
REFを出力する定電圧源に接続されていてもよい。しかし、実施形態のDA変換回路においてラダー抵抗回路3の低電位端31は必ずしもGNDに接続されていなくてもよく、任意の定電圧源に接続されていてもよい。
【0021】
複数の抵抗素子Ri,jは、全て、略同じ抵抗値を有する。従って、直列接続された2N個の抵抗素子Ri,jを含んでいて両端間に定電圧が印加されるラダー抵抗回路3は、入力信号Dinのディジタル値に対応する電圧(第2基準電位VREF2との差電圧)を複数の抵抗素子Ri,jそれぞれの一端に生じさせる。例えば、第2基準電位VREF2(GND)が印加される低電位端31からh番目の抵抗素子Ri,jにおける低電位端31側の一端には、入力信号Dinの2N通りのディジタル値のうちのh番目に小さいディジタル値に対応する(h-1)×VREF/2Nの電圧(対GND電圧)が生じる。なお、以下では、第2基準電位VREF2がGNDである場合を前提に、ラダー抵抗回路3の各抵抗素子Ri,jそれぞれの一端(各ノードDi,j)に生じている第2基準電位VREF2との差電圧は、単に各ノードDi,jの「電圧」とも称される。
【0022】
複数の第1選択回路1は、それぞれ、ラダー抵抗回路3において複数の抵抗素子R
i,jそれぞれの一端に繋がる複数のノードD
i,jの一つを、第1判定ビット列Bj1の値に基づいて選択するように構成されている。第1判定ビット列Bj1は、
図1に示されるように、入力信号Dinのうちの少なくとも最上位ビット(MSB)b
N及び最下位ビット(LSB)b1を含んでいる。
図1の例では、第1判定ビット列Bj1は、入力信号Dinのうちの最下位ビットb1及び第(n+2)ビットb
n+2から最上位ビットb
Nまでの各ビットを含んでいる。
図1の例において第1判定ビット列Bj1は、入力信号Dinのうちの最下位ビットb1及び第(n+2)ビットb
n+2から最上位ビットb
Nをまでの各ビットだけを含んでいてもよい。なお、nは、前述したように1以上の整数であって、行方向に並ぶ抵抗素子R
i,jの数の底2に対するべき指数である。
【0023】
第1判定ビット列Bj1は、各第1選択回路1に提供される。各第1選択回路1は、
図1では簡略化して示されているが、後に参照される
図3に示されるように複数の、例えばトランジスタなどのスイッチング素子1sを含み得る。この複数のスイッチング素子1sのいずれかが第1判定ビット列Bj1の値に応じて閉状態となることによって、第1選択回路1の第1端1aに接続された複数の配線Wiのうちの一つが第2端1bに接続される。その結果、第1選択回路1によって選択されたノードD
i,jの電圧が、第2端1bに接続された第2選択回路2の第1端2aに提供される。
【0024】
第2選択回路2は、複数の第1選択回路1のうちの一つを、第2判定ビット列Bj2の値に基づいて選択するように構成されている。複数の第1選択回路1からは、各第1選択回路1が選択したノードD
i,jの電圧が提供されている。従って、第2選択回路2は、複数の第1選択回路1のうちの一つを選択することによって、複数のノードD
i,jの一つの電圧を選択して出力端Voutから出力する。第2判定ビット列Bj2は、
図1に示されるように、入力信号Dinのうちの最下位ビットb1を含まず、且つ、入力信号Dinのうちの第1判定ビット列Bj1を構成するビット群以外の全てのビットを少なくとも含んでいる。
図1の例において第2判定ビット列Bj2は、具体的には、入力信号Dinのうちの第2ビットb2から第(n+1)ビットb
n+1までの各ビットを含んでいる。
【0025】
第2選択回路2は、
図1では簡略化して示されているが、後に参照される
図3に示されるように複数の、例えばトランジスタなどのスイッチング素子2sを含み得る。この複数のスイッチング素子2sのいずれかが第2判定ビット列Bj2の値に応じて閉状態となることによって、第1端2aに接続された複数の第1選択回路1のうちの一つが、第2端2bに接続される。その結果、選択された第1選択回路1に選択されているノードD
i,jの電圧が、第2端2bに接続された出力端Voutから出力される。
【0026】
図1のDA変換回路100は、さらに、第1デコーダ41及び第2デコーダ42を含んでいる。第1デコーダ41は、入力信号DinのNビットのディジタル信号から、第1判定ビット列Bj1の各ビットの値についての情報を示す第1制御信号Sg1を生成して、各第1選択回路1へと出力する。第1選択回路1は、第1制御信号Sg1によって示される第1判定ビット列Bj1の値に基づいて、複数のノードD
i,jの一つを選択する。例えば各第1選択回路1内のスイッチング素子1sがトランジスタである場合、第1デコーダ41は、各第1選択回路1内の複数のトランジスタのいずれか一つをオン状態にする制御信号Sg1を、第1判定ビット列Bj1の値に基づいて生成する。
【0027】
第2デコーダ42は、入力信号DinのNビットのディジタル信号から、第2判定ビット列Bj2の各ビットの値についての情報を示す第2制御信号Sg2を生成して、第2選択回路2へと出力する。第2選択回路2は、第2制御信号Sg2によって示される第2判定ビット列Bj2の値に基づいて、複数の第1選択回路1の一つを選択する。例えば各第2選択回路2内のスイッチング素子2sがトランジスタである場合、第2デコーダ42は、第2選択回路2内の複数のトランジスタのいずれか一つをオン状態にする制御信号Sg2を、第2判定ビット列Bj2の値に基づいて生成する。
【0028】
本実施形態では、前述したように、複数の第1選択回路1は、それぞれ、入力信号DinのMSB及びLSBを含む第1判定ビット列Bj1に基づいて、ラダー抵抗回路3の複数のノードD
i,jの一つを選択する。そして第2選択回路2は、少なくとも、第1判定ビット列Bj1に含まれない入力信号Dinの全てのビットを少なくとも含む第2判定ビット列Bj2に基づいて、複数の第1選択回路1の一つを選択する。そのため、
図13に示す従来のDA変換回路1100のように、単純に入力信号の特定ビット以上のビット列の値で上位ビットに関する選択を行って、その特定ビットよりも下位のビット列の値で下位ビットに関する選択を行う場合と比べて、第2選択回路2での選択肢を少なくすることができる。すなわち、特定ビットよりも上位のビットだけでなく最下位ビットの値にも基づいて第1選択回路1における複数のノードD
i,jの一つの選択が行われるので、第1選択回路1は、特定ビットよりも上位のビットに関する選択だけを行う場合と比べて2倍の選択肢から一つのノードD
i,jを選択することができる。そのため、第2選択回路2がその中から一つを選択すべき選択肢(具体的には複数の第1選択回路1)の数を少なく、基本的には半減することができる。
【0029】
第2選択回路2での選択肢の数が少ないので、第1選択回路1と第2選択回路2との間の配線Wcを少なくすることができる。例えば、
図13のような従来のDA変換回路の配線Wczの数に比べて、配線Wcの数を、例え抵抗素子R
i,jと抵抗素子Rz(
図13参照)の行方向に並ぶ数(=2
n)が同じであっても半分にすることができる。そのため、配線Wcに必要な配線領域を小さくすることができる。従って、本実施形態によれば、従来よりも小型のDA変換回路を実現し得ると考えられる。また、配線領域の増大を回避しながら、1行に並べる抵抗素子数の選択の自由度を高めることができると考えられる。
【0030】
基本的には、上記の通り、本実施形態におけるラダー抵抗回路と同じ配列で並ぶラダー抵抗回路を有する従来のDA変換回路に比べて二つの選択回路間の配線が半減する。従って、より多ビットのディジタル信号が入力されるDA変換回路であるほど、本実施形態によって、大きな効果が得られと考えられる。
【0031】
本実施形態では、換言すると、入力信号Dinの特定ビットよりも下位側のビットに関する選択の一部を、上位ビットに関する選択を行う第1選択回路1が担うことによって第2選択回路2での選択肢を削減している。ここで、個々の第1選択回路1が、
図13に示される従来のDA変換回路1100の個々の上位ビットスイッチSuよりも多くの選択肢から一つのノードD
i,jを選択するので、ラダー抵抗回路3と個々の第1選択回路1との間の配線Wiの数は増加する。しかし、配線Wiの総数は、ラダー抵抗回路3の複数のノードD
i,jの数と同じであり、複数のノードD
i,jの数は、入力信号のビット数Nによって2
Nで定まる。従って、本実施形態において、ラダー抵抗回路3と第1選択回路1との間の配線Wiの総数は、従来に比べて変化せず、二つの選択回路間の配線Wcの数だけを削減することができる。
【0032】
<ラダー抵抗回路のノードと第1選択回路との接続>
上記のような第1選択回路1による入力信号DinのLSBに関する選択は、以下に説明されるように、個々の第1選択回路1に接続するノードD
i,jの適切な選択によって可能となる。以下の説明では、ラダー抵抗回路3の行方向における低電位端31が位置する側の端部(
図1においてラダー抵抗回路3の左端、以下では「端部E1」とも称される)からi番目の列に並ぶ抵抗素子R
i,jは、第i列の抵抗素子R
i,jとも称される。なお、iは1以上、2
n以下の整数である。また、ラダー抵抗回路3において、電気的に低電位端31側からj番目(jは1以上、2
m以下の整数)の行に並ぶ抵抗素子R
i,jは、第j行の抵抗素子R
i,jとも称される。なお「電気的に低電位端31側」は、低電位端31までの抵抗値が、反対側の比較対象よりも低い側、を意味する。さらに、第i列の抵抗素子R
i,jの行方向における低電位端31側の一端に繋がるノードD
i,jは、第i列のノードとも称され、第j行の抵抗素子R
i,jに繋がるノードD
i,jは、第j行のノードD
i,jとも称される。そして(第i列、第j行)に位置する抵抗素子R
i,j及びノードD
i,jは、その配置位置を簡便に示すために、「R
i,j」又は「D
i,j」のi及びjに具体的な数値を入れて示されることがある。例えば、抵抗素子R
2,1は、(第2列、第1行)に位置する抵抗素子R
i,jを意味する。
【0033】
図1に示されるように、複数の第1選択回路1は、それぞれ、二つの配線束Wbによってラダー抵抗回路3の所定のノードD
i,jに接続されている。幾つかの配線束Wbは
図1では簡略化して1本の線で示されているが、実際には、先に参照した
図13と同様に配線Wiの束である。代表して端部E1側の四つの配線束Wbについて、個々の配線Wiが示されている。個々の配線束Wb内の各配線Wiは、同一列に並ぶノードD
i,jの一つと一つの第1選択回路1とを独立して接続している。
【0034】
より詳細には、端部E1の最も近くの配線束Wb内の各配線Wiは、(第1列、第1行)、(第1列、第3行)、(第1列、第5行)、・・・、及び(第1列、第(2m-1)行)のノードDi,jそれぞれを、行方向において端部E1側から1番目の第1選択回路1に接続している。そして、行方向において端部E1から2番目の配線束Wb内の各配線Wiは、ノードD2,1、ノードD2,3、ノードD2,5、及びノードD2,2
m
-1それぞれを、行方向において端部E1から1番目の第1選択回路1に接続している。すなわち、端部E1から1番目及び2番目の配線束Wb内の各配線Wiは、奇数行のノードDi,jを端部E1から1番目の第1選択回路1に接続している。
【0035】
これに対して、行方向において端部E1から3番目の配線束Wb内の各配線Wiは、ノードD2,2、ノードD2,4、ノードD2,6、及びノードD2,2
mそれぞれを、行方向において端部E1側から2番目の第1選択回路1に接続している。さらに、端部E1から4番目の配線束Wb内の各配線Wiは、ノードD3,2、ノードD3,4、ノードD3,6、及びノードD3,2
mそれぞれを端部E1から2番目の第1選択回路1に接続している。すなわち、端部E1から3番目及び4番目の配線束Wb内の各配線Wiは、偶数行のノードDi,jを端部E1から2番目の第1選択回路1に接続している。
【0036】
図1では簡略化して示されている他の配線束Wb内の各配線も、端部E1側の四つの配線束Wb内の配線Wiと同様に、各ノードD
i,jを複数の第1選択回路1のいずれか一つに接続している。従って、個々の第1選択回路1には、個々の配線束Wbによって、列方向に並ぶ抵抗素子R
i,jの数2
mの半分の数のノードD
i,jが接続され、一対の配線束Wbによって、全部で2
m個のノードD
i,jが個々の第1選択回路1に接続されている。
【0037】
<入力信号のディジタル値とラダー抵抗回路内のノードとの対応>
図1に加えて
図2を参照して、入力信号Dinのディジタル値と、個々の第1選択回路1に接続される一群のノードD
i,jとの関係を説明する。
図2には、各ノードD
i,jに生じる電圧に対応する入力信号Dinのディジタル値“0*0000*000”~“1*1111*111”が示されている。各ディジタル値の“*”には、任意のビット長のビット列が存在してもよく、ビット列が存在しなくてもよい。
図2には、ディジタル値が、少なくとも8ビットのビット長を有するように示されているが、入力信号は任意のビット長を有し得る。
図2に示されるディジタル値の二つの“*”のうちの右側の“*”の左隣のビットは、第nビットである。
【0038】
図2では、横方向に、抵抗素子R
i,jの列番号i=1~2
n、及びノードD
i,jの列番号i=1~(2
n+1)が割り振られ、縦方向に抵抗素子R
i,j及びノードD
i,jに共通の行番号j=1~2
mが割り振られている。列番号iの列と行番号jの行とが交差するマス目に示されているディジタル値が、第i列、第j行のノードD
i,jに生じる電圧に対応するディジタル値である。換言すると、各ノードD
i,jには、そのノードD
i,jを示すマス目に示されているディジタル値に対応する電圧が生じる。入力信号Dinの「ディジタル値に対応する電圧を出力するノード」は、単に「ディジタル値に対応するノード」とも称され、各「ノードに生じる電圧に対応するディジタル値」は、単に各「ノードに対応するディジタル値」とも称される。
【0039】
なお、抵抗素子Ri,jの「a端」は各抵抗素子Ri,jにおけるラダー抵抗回路3の端部E1側の一端を意味し、「b端」はその反対側の一端を意味する。各抵抗素子Ri,jのb端は、隣接する抵抗素子Ri,jのa端とノードDi,jで繋がっているため、それらb端とa端とに跨るマス目に一つのディジタル値が示されている。そしてそのように隣接する抵抗素子Ri,jに跨る各列のノードDi,jに対応するディジタル値は、奇数行のノードDi,jについて左寄りに、偶数行のノードDi,jについて右寄りに記載されている。
【0040】
図2に示されるような入力信号Dinのディジタル値に対応する電圧が生じる各ノードD
i,jを有するラダー抵抗回路3から、
図1に示されるように配線Wiが引き出されて各ノードD
i,jが各第1選択回路1に接続される。そのため、各第1選択回路1において、入力信号DinのLSBを含む第1判定ビット列Bj1に基づいて、適切なノードD
i,jを選択することができる。
【0041】
すなわち、例えば、ラダー抵抗回路3の端部E1から行方向において1番目の第1選択回路1には、
図2において一点鎖線で囲まれるグループG1のディジタル値に対応する電圧が生じるノードD
i,jが接続される。グループG1内のディジタル値は、“
0*0000*00
0”、“
0*0000*00
1”、“
0*0100*00
0”、“
0*0100*00
1”、“
0*1000*00
0”、“
0*1000*00
1”、“
1*1100*00
0”、“
1*1100*00
1”である。これらのディジタル値の間では、第1判定ビット列Bj1が含むLSB及び第(n+2)ビット~MSBまでのビット列において全て同一のものは存在しない。従って、端部E1から1番目の第1選択回路1は、第1判定ビット列Bj1に基づいて、入力信号DinのLSB及び第(n+2)ビット~MSBまでのビット列に関して、入力信号Dinのディジタル値に対応しているノードD
i,jを適切に選択することができる。
【0042】
同様に、例えば、ラダー抵抗回路3の端部E1から行方向において2番目の第1選択回路1には、
図2において一点鎖線で囲まれるグループG2のディジタル値に対応する電圧が生じるノードD
i,jが接続される。グループG2内のディジタル値は、“
0*0011*11
1”、“
0*0011*11
0”、“
0*0111*11
1”、“
0*0111*11
0”、“
0*1011*11
1”、“
0*1011*11
0”、“
1*1111*11
1”、“
1*1111*11
0”である。これらのディジタル値の間でも、LSB及び第(n+2)ビット~MSBまでのビット列において全て同一のものは存在しない。従って、端部E1から2番目の第1選択回路1も、入力信号DinのLSB及び第(n+2)ビット~MSBまでのビット列に関して、入力信号Dinのディジタル値に対応しているノードD
i,jを適切に選択することができる。
【0043】
同様に、他の全ての第1選択回路1が、それぞれに接続されているノードD
i,jのうちから、入力信号DinのLSB及び第(n+2)ビット~MSBまでのビット列に関して、入力信号Dinのディジタル値に対応するノードD
i,jを選択することができる。すなわち、
図1においてラダー抵抗回路3の端部E1から3番目及び4番目の第1選択回路1は、それぞれ、
図2に示されるグループG3及びG4内のディジタル値に対応するノードD
i,jの一群から一つのノードD
i,jを選択する。また、
図1においてラダー抵抗回路3の端部E1と反対側の端部から1番目、2番目、及び3番目の第1選択回路1は、それぞれ、
図2に示されるグループG7、G6、及びG5内のディジタル値に対応するノードD
i,jの一群から一つのノードD
i,jを選択する。例えば、入力信号Dinのディジタル値が“0*0011*101”であり、そのため第1判定ビット列Bj1が“0*001”であることを第1制御信号Sg1が示していると、グループG1~G7それぞれにおいて、第(n+2)ビット~MSB及びLSBについて“0*00-----1”を有するディジタル値に対応する、
図2に符号Dxで示されるノードが選択される。
【0044】
複数の第1選択回路1のそれぞれは、グループG1、G2内の上記のディジタル値のように、入力信号Dinのディジタル値のうちの第2ビットから第(n+1)ビットまでの各ビットの値が互いに同じであるディジタル値に対応する一群のノードDi,jと接続されている。各第1選択回路1は、このように第2判定ビット列Bj2に含まれる各ビットの値が互いに同じであるディジタル値に対応する一群のノードDi,jから一つのノードDi,jを選択する。
【0045】
個々の第1選択回路1に接続されるノードD
i,jの一群には、所定の数(第3の所定の数)のノードD
i,jが含まれる。前述したように、
図1の例において個々の第1選択回路1には、全部で、列方向に並ぶ抵抗素子R
i,jの数2
mと同じ数のノードD
i,jが接続されている。従って、個々の第1選択回路1は、ラダー抵抗回路3の行数であって、列方向に並ぶ抵抗素子R
i,jの数(第2の所定の数)と同じ数のノードD
i,jから一つのノードD
i,jを選択するように構成されている。
【0046】
一方、個々の第1選択回路1によってその中から一つのノードDi,jが選択されるグループG1~G7内のディジタル値の第2ビットから第(n+1)ビットまでの各ビットの値は、グループG1~G7同士の間では互いに異なっている。従って、複数の第1選択回路1それぞれで選択されるノードDi,jと対応するディジタル値は、第2ビットから第(n+1)ビットまでの各ビットの値について、互いに異なっている。
【0047】
なお、抵抗素子Ri,jとの接続に関して、個々の第1選択回路1には、ラダー抵抗回路3の同一列に並ぶ抵抗素子Ri,jのうちの、奇数行に位置する各抵抗素子Ri,jの両端、又は、偶数行に並ぶ各抵抗素子Ri,jの両端が接続されている。そのため、第1選択回路1において、入力信号Dinのディジタル値の最下位ビットに関する選択を行うことができる。より詳細には、複数の第1選択回路1の半数の各第1選択回路1には、ラダー抵抗回路3の低電位端31側から奇数番目の行それぞれにおいてラダー抵抗回路3の端部E1から行方向において奇数番目に位置する抵抗素子Ri,jの両端が接続されている。そして複数の第1選択回路1の残りの半数の各第1選択回路1には、低電位端31側から偶数番目の行それぞれにおいて端部E1から行方向において偶数番目に位置する抵抗素子Ri,jの両端が接続されている。
【0048】
図1に例示されるような態様でラダー抵抗回路3から配線Wiによって各ノードD
i,jが引き出されて第1選択回路1に接続されているので、個々の第1選択回路1において、入力信号DinのLSBについての選択も行うことができる。また、
図1及び
図2の例では、各ノードD
i,jは、それぞれが対応するディジタル値の第(n+1)ビットからLSBまでのビット列に関して、ラダー抵抗回路3の端部E1側から、“00*000”、“00*001”、11*111”、11*110”、00*010”、00*011”、11*101”、11*100”、・・・、10*011”、10*010”、01*110”、01*111”、10*001”、10*000”という順番で引き出されている。このような、ラダー抵抗回路3の端部E1からの順番で各ノードD
i,jが引き出されているので、個々の第1選択回路1と、その第1選択回路1の選択肢となるべきノードD
i,jとを接続する配線Wiを、配線束Wb間で行方向において交差させることなく整然と配置することができる。そのため、小さな配線領域に、配線Wi乃至配線束Wbを配置し得ることがある。
【0049】
一方、第2選択回路2は、上記のようにそれぞれがラダー抵抗回路3内の一つのノードD
i,jを選択している複数の第1選択回路1の一つを第2判定ビット列Bj2の値に基づいて選択する。前述したように、複数の第1選択回路1は、それぞれ、第2ビットから第(n+1)ビットまでの各ビットの値について互いに異なるディジタル値に対応するノードD
i,jを選択する。例えば、
図1においてラダー抵抗回路3の端部E1から1番目、2番目、3番目、及び4番目の第1選択回路1は、
図2に示されるように、第2ビットから第(n+1)ビットまでの各ビットの値が“00*00”、“11*11”、“00*01”、又は“11*10”であるグループG1、G2、G3、及びG4内のディジタル値に対応するノードD
i,jの一つを選択する。同様に、
図1において端部E1と反対側の端部から1番目、2番目、及び3番目の第1選択回路1は、第2ビットから第(n+1)ビットまでの各ビットの値が“10*00”、“01*11”、又は“10*01”であるグループG7、G6、及びG5内のディジタル値に対応するノードD
i,jの一つを選択する。
【0050】
このように複数の第1選択回路1それぞれが、第2判定ビット列Bj2に含まれる各ビットについて互いに異なる値を有するディジタル値に対応するノードD
i,jを選択するので、第2判定ビット列Bj2に基づく第2選択回路2による一つの第1選択回路1の選択が可能になる。そして、入力信号Dinに対応する電圧が出力端Voutから出力される。例えば、入力信号Dinのディジタル値が“0*1000*010”であり、そのため第2判定ビット列Bj2が“00*01”であることを第2制御信号Sg2が示していると、第2選択回路2は、
図1において端部E1から3番目の第1選択回路1を選択する。この場合、端部E1から3番目の第1選択回路1では、第(n+2)ビット~MSB及びLSBについて“0*10-----0”を有するディジタル値に対応する、
図2に符号D
3,5で示されるノードが選択されている。そのため、出力端Voutからは、ディジタル値“0*1000*010”に対応するノードD
3,5の電圧が出力される。このように、入力信号Dinのディジタル値に対応する電圧が適切に出力される。
【0051】
<第1実施形態の具体例>
本実施形態のDA変換回路をより具現化した例について、6ビットのDA変換回路を例に、
図3を参照しながら説明する。
図3には、本実施形態のDA変換回路の具体例であるDA変換回路101が示されている。なお、DA変換回路101について、
図1のDA変換回路100に関して既に説明した事項と同様の事項についての説明は省略される。また、
図1のDA変換回路100の構成要素と同様の構成要素については、
図1に付されている符号と同じ符号が
図3に付されるか適宜省略され、当該構成要素についての繰り返しとなる説明は省略される。
【0052】
図3のDA変換回路101において、ラダー抵抗回路3を構成する抵抗素子R
1,1~R
8,8は、8行×8列に渡って配置されている。すなわち、行方向に並ぶ抵抗素子R
1,1~R
8,8の数(第1の所定の数)の底2に対するべき指数nは3であり、列方向に並ぶ抵抗素子R
1,1~R
8,8の数(第2の所定の数)の底2に対するべき指数mも3である。DA変換回路101は、行方向に並ぶ抵抗素子R
1,1~R
8,8の数と同じ8個の第1選択回路11~18を含んでいる。
【0053】
各第1選択回路には、ラダー抵抗回路3内の、列方向に並ぶ抵抗素子R1,1~R8,8の数と同じ8個の各ノードが、8本の配線Wiによって接続されている。第1選択回路11、13、15、17は、それぞれ、ラダー抵抗回路3の低電位端31側から奇数番目の行の各ノードに接続されている8個のスイッチング素子1s1を備えている。第1選択回路12、14、16、18は、それぞれ、ラダー抵抗回路3の低電位端31側から偶数番目の行の各ノードに接続されている8個のスイッチング素子1s2を備えている。また、DA変換回路101に備えられている第2選択回路2は、第1選択回路11~18の数と同じ8個のスイッチング素子2s1~2s8を含んでいる。
【0054】
例えば、第1選択回路11のスイッチング素子1s1それぞれの一端は、ラダー抵抗回路3のノードD1,1、ノードD1,3、ノードD2,5、及びノードD2,7などに接続されている。また、第1選択回路14のスイッチング素子1s2それぞれの一端は、ラダー抵抗回路3のノードD4,2、ノードD4,4、ノードD5,6、及びノードD5,8などに接続されている。
【0055】
8個のスイッチング素子1s1及び8個のスイッチング素子1s2それぞれの他端は、それぞれが属する第1選択回路11~18の中で連結されて、第2選択回路2のスイッチング素子2s1~2s8のいずれかの一端に接続されている。スイッチング素子2s1~2s8の他端は、互いに連結されて出力端Voutに接続されている。スイッチング素子1s1、1s2、並びにスイッチング素子2s1~2s8は、例えば、MOSFETやバイポーラトランジスタなどのトランジスタであり得る。第1選択回路11~18及び第2選択回路2は、スイッチング素子が集積されたマルチプレクサであってもよい。
【0056】
第1選択回路11~18それぞれには、第1デコーダ41から第1制御信号Sg1が入力される。第1選択回路11~18それぞれのスイッチング素子1s1、1s2は、第1制御信号Sg1が示す第1判定ビット列Bj1の情報に基づいて閉状態へと制御される。
図3の例において、第1判定ビット列Bj1は、入力信号Dinの第1ビット(LSB)b1、第5ビットb5、及び第6ビットb6からなる。なお、
図3では、第1制御信号Sg1が、破線で示される8本の配線L1によって並列に第1選択回路11~18のスイッチング素子1s1、1s2それぞれに個別に入力されるように描かれているが、第1制御信号Sg1は、1本の配線によって第1選択回路11~18それぞれに供給されてもよい。
【0057】
第2選択回路2には、第2デコーダ42から第2制御信号Sg2が入力される。第2選択回路2のスイッチング素子2s1~2s8は、それぞれ、第2制御信号Sg2が示す第2判定ビット列Bj2の情報に基づいて閉状態へと制御される。
図3の例において第2判定ビット列Bj2は、入力信号Dinの第2ビットb2、第3ビットb3、及び第4ビットb4からなる。
【0058】
図4には、DA変換回路101における第1判定ビット列Bj1の各ビット(b6、b5、b1)の値の組み合わせと、各第1選択回路においてその値の組み合わせに応じて、第1選択回路11~18を介して第2選択回路2に接続されるノードの列数及び行数との対応表が示されている。例えば、第1判定ビット列Bj1の値が、ビットb6、b5、b1の順に“111”である場合、偶数列に並んでいて第7行及び第8行に位置するノード(例えばノードD
2,7など)が、第1選択回路11~18のいずれかを介して第2選択回路2に接続される。
【0059】
図4には、さらにDA変換回路101における第2判定ビット列Bj2の各ビット(b4、b3、b2)の値の組み合わせと、第2選択回路2においてその値の組み合わせに応じて閉状態となる対象スイッチとの対応表が示されている。例えば、第2判定ビット列Bj2の値が、ビットb4、b3、b2の順に“000”である場合、スイッチング素子2s1が閉状態となり、第1選択回路11が出力端Voutに接続される。
【0060】
図5には、先に参照した
図2と同様の方法で、DA変化回路101のラダー抵抗回路3の各ノードD
i,jに生じる電圧に対応する入力信号Dinのディジタル値が示されている。
図4の対応表に示されるように第1選択回路1のスイッチング素子1s1、1s2、及び第2選択回路2のスイッチング素子2s1が閉状態へと制御されることにより、
図5に示されるディジタル値に対応する電圧が出力端Voutから出力される。
【0061】
例えば、入力信号Dinのディジタル値が“110010”である場合、第1判定ビット列Bj1は“110”であるため、第1選択回路11~18において、奇数列、第7行又は第8行に位置する、ノードD
1,7、ノードD
3,7、ノードD
3,8、ノードD
5,7、ノードD
5,8、ノードD
7,7、ノードD
7,8、及びノードD
9,8が選択される。そして、第2選択回路2では、第2判定ビット列Bj2が“001”であるためスイッチング素子2s3が閉状態となって第1選択回路13が選択される。第1選択回路13では、ノードD
3,7が選択されているので、ノードD
3,7の電圧が出力Voutから出力される。
図5に示されるようにノードD
3,7の電圧はディジタル値“110010”に対応しているので、入力信号Dinの値に応じた適切な電圧が出力される。
【0062】
<第2実施形態>
図6を参照して、第2実施形態のDA変換回路について説明する。
図6には、本実施形態のDA変換回路の第1の具体例であるDA変換回路102が示されている。DA変換回路102は、
図3のDA変換回路101と同様に、6ビットのDA変換回路であり、
図3のDA変換回路101のラダー抵抗回路3と同じ構成のラダー抵抗回路3を備えている。すなわち、DA変換回路102が備えるラダー抵抗回路3の複数の抵抗素子R
1,1~R
8,8は、8行×8列に渡って配置されている。従って、DA変換回路102においても、行方向に並ぶ抵抗素子R
1,1~R
8,8の数(第1の所定の数)の底2に対するべき指数nは3であり、列方向に並ぶ抵抗素子R
1,1~R
8,8の数(第2の所定の数)の底2に対するべき指数mも3である。なお、DA変換回路102について、
図1のDA変換回路100又は
図3のDA変換回路101に関して既に説明した事項と同様の事項についての説明は省略される。また、
図1のDA変換回路100又は
図3のDA変換回路101の構成要素と同様の構成要素については、
図1又は
図3に付されている符号と同じ符号が
図6に付されるか適宜省略され、当該構成要素についての繰り返しとなる説明は省略される。後に説明されるDA変換回路103(
図8参照)、及びDA変換回路104(
図10参照)についても同様である。
【0063】
DA変換回路102は、行方向に並ぶ抵抗素子R
1,1~R
8,8の数8個の半分の数である4個の第1選択回路11~14を含んでいる。そのため、第2選択回路2は、第1選択回路11~14の数と同じ4個のスイッチング素子2s1~2s4を備えている。さらにDA変換回路102では、第1選択回路11~14は、それぞれ、入力信号Dinのディジタル値の第1ビット(LSB)b1、第4ビットb4、第5ビットb5、及び第6ビット(MSB)b6からなる第1判定ビット列Bj1に基づいて、ラダー抵抗回路3内のノードD
1,1~D
8,8のうちの一つを選択するように構成されている。すなわち、各第1選択回路での選択の基準となる第1判定ビット列Bj1は、入力信号Dinのディジタル値の第(n+1)ビットから最上位ビットまでの各ビット及び最下位ビットを含んでいる。
図6の例において第1判定ビット列Bj1は、第(n+1)ビットから最上位ビットまでの各ビット及び最下位ビットだけを含んでいてもよい。
【0064】
一方、第2選択回路2は、
図3の例と同様に、入力信号Dinの第2ビットb2から第4ビット(すなわち第(n+1)ビット)までの各ビットを含む第2判定ビット列Bj2に基づいて第1選択回路11~14の一つを選択する。
【0065】
図6の例のDA変換回路102では、
図3のDA変換回路101のラダー抵抗回路3の行方向に並ぶ抵抗素子R
1,1~R
8,8の数と同数の抵抗素子が行方向に配置されている。しかし、第1判定ビット列Bj1が、
図3の例のDA変換回路101における第1判定ビット列Bj1が含むビット列に加えて、第(n+1)ビットも含んでいる。そのため、
図6の例において各第1選択回路は、
図3の例の各第1選択回路の選択肢の数の倍の数の選択肢から、ノードD
1,1~D
9,8のうちの一つを選択することができる。そのため、第2選択回路2での選択肢を、
図3の例に比べて半分にすることができる。すなわち、各第1選択回路と第2選択回路2との間の配線を半分にすることができる。そのため、この配線に必要な配線領域をさらに小さくすることができ、従って、従来よりもさらに小型のDA変換回路が得られると考えられる。また、配線領域の増大を回避しながら、1行に並べる抵抗素子数の選択の自由度をさらに高めることができると考えられる。
【0066】
各第1選択回路には、ラダー抵抗回路3内の、列方向に並ぶ抵抗素子R
1,1~R
8,8の数8個の2倍である16個の各ノードが、16本の配線Wiによって接続されている。第1選択回路11~14は、それぞれ、ラダー抵抗回路3の低電位端31側から奇数番目の行の各ノードに接続されている8個のスイッチング素子1s1、及び、低電位端31側から偶数番目の行の各ノードに接続されている8個のスイッチング素子1s2を備えている。各第1選択回路に備えられているスイッチング素子1s1及びスイッチング素子1s2は、それぞれ、
図3の例のスイッチング素子1s1及びスイッチング素子1s2に接続されているラダー抵抗回路3の各ノードと同じノードに接続されている。
【0067】
また、第1選択回路11~14それぞれには、ラダー抵抗回路3の同一列に並ぶ抵抗素子のうちの奇数行に位置する各抵抗素子の両端、及び、同一列に並ぶ抵抗素子のうちの偶数行に位置する各抵抗素子の両端が接続されている。より詳細には、第1選択回路11~14のそれぞれには、ラダー抵抗回路3の低電位端31側から奇数番目の行それぞれにおいてラダー抵抗回路3の端部E1から行方向において奇数番目に位置する抵抗素子の両端が接続されている。さらに、第1選択回路11~14のそれぞれには、低電位端31側から偶数番目の行それぞれにおいて端部E1から行方向において偶数番目に位置する抵抗素子の両端が接続されている。ここで、行方向において端部E1から奇数番目は、端部E1から(2×k-1)番目(kは1から2(n-1)までの整数)であり、偶数番目は、端部E1から(2×k)番目である。すなわち各第1選択回路には、ラダー抵抗回路3において隣り合う列に並んでいる抵抗素子のうちの一方の列の偶数行に位置する各抵抗素子の両端及び他方の列の奇数行に位置する抵抗素子の両端が接続されている。
【0068】
DA変換回路102のラダー抵抗回路3は、
図3のDA変換回路101のラダー抵抗回路3と同じ構成を有している。そのためDA変換回路102のノードD
1,1~D
8,8には、
図4において各ノードD
i,jについて示されるディジタル値に対応する電圧と同じ電圧が生じる。
図6に示される回路図から明らかなように、
図6の第1選択回路11~14には、それぞれ、
図5において一点鎖線でそれぞれ囲まれているグループG1、G2、G3、G4のディジタル値に対応する電圧が生じるノードD
i,jが接続される。
【0069】
図4から明らかなように、第1選択回路11~14のそれぞれは、ノードD
i,jのうちの、入力信号Dinのディジタル値のうちの第2ビットから第4ビット(すなわち第(n+1)ビット)までの各ビット値が互いに同じか1の補数の関係にあるディジタル値に対応する一群のノードD
i,jと接続されている。このようにDA変換回路102では、各第1選択回路は、第2判定ビット列Bj2に含まれる各ビットの値が互いに同じであるか1の補数の関係にあるディジタル値に対応する所定の数(第3の所定の数)のノードD
i,jから一つのノードD
i,jを選択する。
図4及び
図6から明らかなように、第1選択回路11~14は、それぞれ、16個、すなわち、2
(m+1)個である第3の所定の数のノードD
i,jから一つのノードD
i,jを選択するように構成されている。
【0070】
図7Aには、DA変換回路102における第1判定ビット列Bj1の各ビット(b6、b5、b4、b1)の値の組み合わせと、その値の組み合わせに応じて、第1選択回路11~14によって第2選択回路2に接続されるノードの列数と行数との対応表が、
図4と同様の方法で示されている。例えば、第1判定ビット列Bj1の値が、ビットb6、b5、b4、b1の順に“1101”である場合、偶数列に並んでいて第7行に位置するノードが第2選択回路2に接続される。
【0071】
一方、
図6の例では、第2選択回路2は、全部で四つだけの第1選択回路11~14の一つを選択する。ここで、
図4に示されるように各第1選択回路によって選択されるグループG1~グループG4それぞれの間には、第2ビット及び第3ビットの値について同一のディジタル値も存在する。そのため、入力信号Dinの各ビットのうちの第1判定ビット列Bj1に含まれない第2、第3ビットだけでは、第1選択回路11~14のうちの一つを選択することができない。そこで、DA変換回路102では、前述したように、第4ビットb4(すなわち第(n+1)ビット)も用いて、全部で3ビットである第2判定ビット列Bj2に基づいて、第2選択回路2が第1選択回路11~14の一つを選択する。
【0072】
そのため、
図6に示されるDA変換回路102は、さらに、第2判定ビット列Bj2の隣り合うビット同士の排他的論理和を算出する演算素子5を備えている。第2選択回路2のスイッチング素子2s1~2s4は、それぞれ、演算素子5の演算結果に基づいて閉状態へと制御される。すなわち、DA変換回路102において第2選択回路2は、第2ビットから第(n+1)ビットまでの隣り合うビット同士の排他的論理和で構成されるビット長nのビット列の値に基づいて第1選択回路11~14のうちの一つを選択するように構成されている。
【0073】
図7Bには、第2判定ビット列Bj2の各ビット(b4、b3、b2)の値の組み合わせと、その組み合わせにおける隣り合うビット間での排他的論理和の演算結果と、その演算結果に応じて閉状態となる対象スイッチとの対応表が示されている。例えば、第2判定ビット列Bj2が“000”又は“111”の場合は、スイッチング素子2s1が閉状態となって第1選択回路11が選択され、第2判定ビット列Bj2が“001”又は“110”の場合は、スイッチング素子2s2が閉状態となって第1選択回路12が選択される。また、第2判定ビット列Bj2が“010”又は“101”の場合は、スイッチング素子2s3が閉状態となって第1選択回路13が選択され、第2判定ビット列Bj2が“011”又は“100”の場合は、スイッチング素子2s4が閉状態となって第1選択回路14が選択される。前述したように、各第1選択回路が、第2判定ビット列Bj2に含まれる各ビットの値が互いに同じであるか1の補数の関係にあるディジタル値に対応するノードから一つのノードを選択するので、このような第2選択回路2での選択が可能である。
【0074】
例えば、入力信号Dinのディジタル値が“001100”である場合、第1判定ビット列Bj1は“0010”であるため、
図6の第1選択回路11~14によって、奇数列、第2行に位置するノードD
3,2、ノードD
5,2、ノードD
7,2、及びノードD
9,2が選択される。そして、第2選択回路2では、第2判定ビット列Bj2が“110”であるためスイッチング素子2s2が閉状態となって第1選択回路12が選択される。第1選択回路12では、ノードD
5,2が選択されているので、ノードD
5,2の電圧が出力Voutから出力される。
図5に示されるようにノードD
5,2の電圧はディジタル値“001100”に対応しているので、入力信号Dinの値に応じた適切な電圧が出力される。
【0075】
<第2実施形態の第2の具体例>
図8には、第2実施形態のDA変換回路の第2の具体例であるDA変換回路103の回路図が示されている。DA変換回路103では、第1選択回路11~14は、それぞれ、入力信号Dinのディジタル値の第1ビット(LSB)b1、第2ビットb2、第5ビットb5、及び第6ビット(MSB)b6からなる第1判定ビット列Bj1に基づいて、ラダー抵抗回路3内のノードD
1,1~D
9,8のうちの一つを選択するように構成されている。すなわち第1判定ビット列Bj1は、入力信号Dinのディジタル値の第(n+2)ビットから最上位ビットまでの各ビット、第2ビット、及び最下位ビットを含んでいる。
図6の例において第1判定ビット列Bj1は、第(n+2)ビットから最上位ビットまでの各ビット、第2ビット、及び最下位ビットだけを含んでいてもよい。
【0076】
このように第1判定ビット列Bj1が
図6のDA変換回路102と異なるので、DA変換回路103では、第1選択回路12及び第1選択回路14それぞれのスイッチング素子1s1、1s2を閉状態にする第1判定ビット列Bj1の値が、
図6のDA変換回路102と異なっている。以上の点を除いて、DA変換回路103は、
図6のDA変換回路102と同様の構成を有している。
【0077】
図9には、DA変換回路103における第1判定ビット列Bj1の各ビット(b6、b5、b2、b1)の値の組み合わせと、その値の組み合わせに応じて、第1選択回路11~14によって第2選択回路2に接続されるノードの列数と行数との対応表が示されている。例えば、第1判定ビット列Bj1の値が、ビットb6、b5、b2、b1の順に“1101”である場合、
図8に示されるノードD
2,7、D
4,8、D
6,7、D
8,8が第2選択回路2に接続される。なお、第2選択回路2において第2判定ビット列Bj2に応じて閉状態となるスイッチング素子2s1~2s4は、第1の具体例と同じであり、
図7Bに示されている。
【0078】
例えば、入力信号Dinのディジタル値が“001100”である場合、第1判定ビット列Bj1は“0000”であるため、
図8の第1選択回路11~14によって、ノードD
1,1、ノードD
5,2、ノードD
5,1、及びノードD
9,2が選択される。そして、第2選択回路2では、第2判定ビット列Bj2が“110”であるためスイッチング素子2s2が閉状態となって第1選択回路12が選択される。第1選択回路12では、ノードD
5,2が選択されているので、ノードD
5,2の電圧が出力Voutから出力される。
図5に示されるようにノードD
5,2の電圧はディジタル値“001100”に対応しているので、入力信号Dinの値に応じた適切な電圧が出力される。
【0079】
<第2実施形態の変形例>
図10には、第2実施形態のDA変換回路の変形例であるDA変換回路104の回路図が示されている。DA変換回路104は、
図6のDA変換回路102のラダー抵抗回路3と同じ構成のラダー抵抗回路3を備えている。すなわち、DA変換回路104においても、行方向に並ぶ抵抗素子R
1,1~R
8,8の数の底2に対するべき指数nは3である。またDA変換回路104の第1選択回路11~14は、
図6のDA変換回路102と同様に、入力信号Dinのディジタル値の第1ビット(LSB)b1、第4ビットb4(すなわち第(n+1)ビット)、第5ビットb5、及び第6ビット(MSB)b6からなる第1判定ビット列Bj1に基づいて、ラダー抵抗回路3内のノードD
1,1~D
9,8のうちの一つを選択するように構成されている。第2選択回路2も、
図6のDA変換回路102の第2選択回路2と同様の構成を有している。しかし、第1選択回路11~14それぞれの構成が、
図6のDA変換回路102のものと異なっている。
【0080】
DA変換回路104において、第1選択回路11~14は、それぞれ、下位階層側の第1層La1~上位階層側の第4層La4を含んでいて、各階層に1以上のスイッチング素子1s3を備える階層構造を有している。第1層La1が最もラダー抵抗回路3側に位置する最下位階層であり、第4層La4が最も第2選択回路2側に位置する最上位階層である。スイッチング素子1s3は、
図10に示されるように、第1端に二つの端子及びその反対の第2端に一つの端子を有していて、制御信号の論理に応じて第1端側の二つの端子のいずれか一方を第2端側の一つの端子に接続する二者択一(例えば単極双投式)のスイッチング素子である。スイッチング素子1s3は、例えば、並列接続された二つのトランジスタとインバータとによって構成され得る。
【0081】
最上位階層である第4層La4のスイッチング素子1s3の第2端側の一つの端子が第2選択回路2に接続されている。一方、最下位階層である第1層La1のスイッチング素子1s3の第1端側の二つの端子が、それぞれ、ラダー抵抗回路3のノードD1,1~D9,8のいずれか一つに接続されている。
【0082】
第1層La1~第3層La3の各階層において、スイッチング素子1s3の第2端の一つの端子が、1層上位側の階層のスイッチング素子1s3の第1端の二つの端子の一方に接続されている。すなわち、上位階層のスイッチング素子1s3が下位階層の複数のスイッチング素子1s3の一つを選択するように構成されている。
【0083】
そして第1選択回路11~14では、第1層La1~第4層La4の各階層のスイッチング素子1s3が、第1判定ビット列Bj1の各ビットの値によって制御される。具体的には、最下位層である第1層La1に並ぶスイッチング素子1s3は、第1判定ビット列Bj1が含む、入力信号Dinの第5ビット(第(n+2)ビット)b5の値によって制御される。また、第2層La2及び第3層La3に並ぶスイッチング素子1s3は、それぞれ、入力信号Dinの第6ビット(MSBであって第(n+3)ビット)b6及び第1ビット(LSB)b1の値によってそれぞれ制御される。そして最上位階層である第4層La4に並ぶスイッチング素子1s3は、入力信号Dinの第4ビット(第n+1ビット)b4の値によって制御される。例えば、第1判定ビット列Bj1の第4ビット、第5ビット及び第6ビットの値が“1”であると、
図10の第4層La4、第1層La1、及び第2層La2のスイッチング素子1s3それぞれにおいて、第1端側の二つの端子のうちの右側の端子が第2端側の端子に接続される。また、第1判定ビット列Bj1の第1ビットの値が“1”であると、第1選択回路11~14それぞれにおいて第3層La3に位置する二つのうちで左側のスイッチング素子1s3では第1端側の二つの端子のうちの右側の端子が、そして右側のスイッチング素子1s3では第1端側の二つの端子のうちの左側の端子が、それぞれ、第2端側の端子に接続される。
【0084】
第1判定ビット列Bj1を構成する各ビットの値に基づいて各階層のスイッチング素子1s3が制御されることによって、第1選択回路11~14全体で、ラダー抵抗回路3内の四つのノードが第2選択回路2のスイッチング素子2s1~2s4のいずれかに接続される。DA変換回路104における第1判定ビット列Bj1の各ビットの値の組み合わせと、その値の組み合わせに応じて第2選択回路2に接続されるノードの列数と行数との対応は、先に参照した
図9の対応表に示される通りである。また、第2選択回路2において第2判定ビット列Bj2に応じて閉状態となるスイッチング素子2s1~2s4は、
図6のDA変換回路102のものと同じであり、
図7Bに示されている。従って、DA変換回路103について前述したように、入力信号Dinのディジタル値に応じた適切な電圧が出力端Voutから出力される。
【0085】
図10のDA変換回路104では、入力信号Dinの各ビットのうちの第1判定ビット列Bj1を構成するビットの信号で、デコーダを介さずに直接第1選択回路11~14の各スイッチング素子1s3を制御できることがある。また、ラダー抵抗回路3に直接接続されるスイッチング素子1s3の制御信号(
図10の例において第5ビットのビット値)が共通なので、配線が集中しがちなラダー抵抗回路3付近の配線を単純化できることがある。なお、
図10に示される変形例は、6ビットに限らず任意のビット数のDA変開回路に適用できる。その場合、第1判定ビット列Bj1のビット数と同じ数の階層を有する第1選択回路1を構成し、下位階層(ラダー抵抗回路3側)から、第(n+2)ビット~MSB、LSB、第(n+1)ビットの順で、各階層のスイッチング素子1s3を制御することによって、適切に入力信号Dinを適切に変換することができる。
【0086】
また、
図10に示される変形例のような構成の第1選択回路11~14は、
図8の例のように、入力信号Dinのディジタル値の第(n+2)ビットから最上位ビットまでの各ビット、第2ビット、及び最下位ビットを含む第1判定ビット列Bj1に基づいてノードD
1,1~D
9,8のうちの一つを選択する第1選択回路11~14としても適用可能である。その場合、第4層La4に並ぶスイッチング素子1s3は、入力信号Dinの第2ビットb2の値によって制御される。この第2ビットb2の値が“1”であると、第1選択回路11、13それぞれを構成する第4層La4のスイッチング素子1s3では第1端側の二つの端子のうちの右側の端子が第2端側の端子に接続され、そして第1選択回路12、14それぞれを構成する第4層La4のスイッチング素子1s3では第1端側の二つの端子のうちの左側の端子が第2端側の端子に接続される。
【0087】
本発明によれば、折り返して配置されるラダー抵抗回路を含むDA変換回路において、ラダー抵抗回路の1行に配置される抵抗素子の数が多くても、配線領域の小さい多ビットのDA変換回路を実現することができる。また、配線領域の増大を回避しながら、1行に並べる抵抗素子の数の選択自由度を高めることができる。
【符号の説明】
【0088】
100~104 DA変換回路
1、11~18 第1選択回路
1s、1s1~1s3 スイッチング素子
2 第2選択回路
2s、2s1~2s8 スイッチング素子
3 ラダー抵抗回路
31 低電位端
5 演算素子
Bj1 第1判定ビット列
Bj2 第2判定ビット列
Din 入力信号
Di,j、Dz ノード
E1 ラダー抵抗回路の第1方向における端部
Ri,j、Rz 抵抗素子