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特開2024-88485使用済み衛生用品の破砕方法及び破砕装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088485
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】使用済み衛生用品の破砕方法及び破砕装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/35 20220101AFI20240625BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20240625BHJP
   B02C 23/06 20060101ALI20240625BHJP
   B09B 3/30 20220101ALI20240625BHJP
   B09B 101/67 20220101ALN20240625BHJP
【FI】
B09B3/35 ZAB
B09B3/70
B02C23/06
B09B3/30
B09B101:67
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203689
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 恒
(72)【発明者】
【氏名】三好 博行
【テーマコード(参考)】
4D004
4D067
【Fターム(参考)】
4D004AA06
4D004AA07
4D004AA12
4D004BA03
4D004BA09
4D004CA04
4D004CA12
4D004CA34
4D004CB43
4D004CC03
4D004CC12
4D004DA01
4D004DA02
4D067DD08
4D067DD14
4D067GA18
4D067GA19
(57)【要約】
【課題】破砕物の引っ掛かりや詰まりを抑止し、かつ、高吸水性ポリマーの押し潰しや剪断を抑制することが可能な破砕方法及び破砕装置を提供する。
【解決手段】高吸水性ポリマーを含む使用済み衛生用品を破砕する破砕方法は、使用済み衛生用品を受入容器で受け入れて、受入容器の下方に連通された破砕装置3に、高吸水性ポリマーを不活化する不活化水溶液を供給しながら、使用済み衛生用品を破砕装置3により不活化水溶液と共に破砕する破砕工程S1を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高吸水性ポリマーを含む使用済み衛生用品を破砕する破砕方法であって、
使用済み衛生用品を受入容器で受け入れて、前記受入容器の下方に連通された破砕装置に、前記高吸水性ポリマーを不活化する不活化水溶液を供給しながら、前記使用済み衛生用品を前記破砕装置により前記不活化水溶液と共に破砕する破砕工程、
を備える、
破砕方法。
【請求項2】
前記破砕工程は、前記破砕装置に前記不活化水溶液を供給しながら、前記破砕装置で前記不活化水溶液と共に前記使用済み衛生用品を破砕しつつ、前記破砕装置から、前記破砕装置で破砕された破砕物を前記不活化水溶液と共に送出する送出工程を含む、
請求項1に記載の破砕方法。
【請求項3】
前記破砕工程は、前記破砕装置の破砕中、前記破砕装置に前記不活化水溶液を供給する供給速度と、前記破砕装置から前記破砕物及び前記不活化水溶液を送出する送出速度とが、所定範囲内で同じである、
請求項2に記載の破砕方法。
【請求項4】
前記破砕工程は、
前記不活化水溶液を、前記破砕装置の上方から前記破砕装置の破砕刃に向って供給する供給工程を含む、
請求項1又は2に記載の破砕方法。
【請求項5】
前記供給工程は、
前記不活化水溶液を、前記受入容器から前記破砕装置に移動した前記使用済み衛生用品の上方から、前記使用済み衛生用品に降り掛かるように供給する工程を含む、
請求項4に記載の破砕方法。
【請求項6】
前記破砕工程は、前記破砕装置から、前記破砕装置で破砕された破砕物を送出した後、所定時間の経過後に、前記破砕装置への前記不活化水溶液の供給を停止する停止工程を含む、
請求項1又は2に記載の破砕方法。
【請求項7】
前記破砕工程は、前記破砕装置の破砕刃に加わる負荷が、所定値以下では、前記破砕刃は正回転し、前記所定値を超えると、前記破砕刃は逆回転する工程を含む、
請求項1又は2に記載の破砕方法。
【請求項8】
前記送出工程は、前記破砕物及び前記不活化水溶液を、前記破砕装置の下方に配置され、前記破砕物及び前記不活化水溶液からパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び前記不活化水溶液を分離する分離装置へ送出する工程を含む、
請求項2に記載の破砕方法。
【請求項9】
前記分離装置は、
前記破砕物及び前記不活化水溶液を所定量だけ貯留可能であり、
前記破砕物及び前記不活化水溶液が前記所定量だけ供給されたとき、その後は、分離した前記パルプ繊維、前記高吸水性ポリマー及び前記不活化水溶液を次工程へ送出する、
請求項8に記載の破砕方法。
【請求項10】
前記分離装置は、空気抜きの配管を有する、
請求項9に記載の破砕方法。
【請求項11】
高吸水性ポリマーを含む使用済み衛生用品を破砕する破砕装置であって、
使用済み衛生用品を受け入れる受入容器の下方に連通され、前記高吸水性ポリマーを不活化する不活化水溶液が供給されつつ、前記使用済み衛生用品を前記不活化水溶液と共に破砕する破砕部、
を備える、
破砕装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み衛生用品の破砕方法及び破砕装置に関し、特に、使用済み衛生用品からリサイクル材料を製造するときに使用される使用済み衛生用品の破砕方法及び破砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済み衛生用品を破砕する方法及び装置が知られている。例えば、特許文献1には、使用済みの紙おむつ用の汚物処理装置が開示されている。この装置は、吸水状態のポリマーを有する被処理物の破砕片と、前記ポリマーの保水力を低下させる処理液とが収容される処理槽を備えており、前記処理槽内の前記破砕片と前記処理液を排出する排出口が、前記処理槽の側面に開口している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-100739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の汚物処理装置が備える多機能処理装置は、まず、破砕装置の破砕部材で紙おむつを破砕して、その破砕片を、破砕装置の下方に配置された離水処理装置の処理槽へ落下させる。次いで、その処理槽内の破砕片へ、破砕装置の破砕部材の上方に配置された第1給水部の第1ノズルから所定量の水を供給すると共に、処理槽の上部に配置された離水剤供給部から離水剤を供給する。それにより、破砕片中の高吸水性ポリマーを脱水させて、小さくする。
【0005】
しかし、この装置では、破砕装置での紙おむつの破砕時には、第1給水部の第1ノズルから破砕部材へ水を供給していない。そのため、破砕部材の隣り合う剪断刃の間にある程度のクリアランスを設けても、紙おむつの破砕中に、破砕部材に破砕片が引っ掛かったり詰まったりするおそれがある。更に、高吸水性ポリマーを離水剤で脱水する前に紙おむつを破砕するため、膨潤した状態の高吸水性ポリマーを押し潰したり、剪断したりするおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、使用済み衛生用品を破砕する方法及び装置において、当該装置における破砕物(破砕片)の引っ掛かりや詰まりを抑止し、かつ、高吸水性ポリマーの押し潰しや剪断を抑制することが可能な方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、高吸水性ポリマーを含む使用済み衛生用品を破砕する破砕方法であって、使用済み衛生用品を受入容器で受け入れて、前記受入容器の下方に連通された破砕装置に、前記高吸水性ポリマーを不活化する不活化水溶液を供給しながら、前記使用済み衛生用品を前記破砕装置により前記不活化水溶液と共に破砕する破砕工程、を備える、破砕方法、である。
【0008】
本発明の他態様は、高吸水性ポリマーを含む使用済み衛生用品を破砕する破砕装置であって、使用済み衛生用品を受け入れる受入容器の下方に連通され、前記高吸水性ポリマーを不活化する不活化水溶液が供給されつつ、前記使用済み衛生用品を前記不活化水溶液と共に破砕する破砕部、を備える、破砕装置、である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、使用済み衛生用品を破砕する方法及び装置において、当該装置における破砕物(破砕片)の引っ掛かりや詰まりを抑止し、かつ、高吸水性ポリマーの押し潰しや剪断を抑制することが可能な方法及び装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る使用済み衛生用品の構成材料の分離方法に用いられるシステムの構成例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る使用済み衛生用品の構成材料の分離方法の一例を示すフロー図である。
図3】実施形態に係る使用済み衛生用品の破砕装置、第1分離装置及び後処理装置の構成例を示す模式図である。
図4】実施形態に係る使用済み衛生用品の破砕方法(破砕工程)の一例を示すフロー図である。
図5】実施形態に係る使用済み衛生用品の第1分離方法(第1分離工程)の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態は、以下の態様に関する。
[態様1]
高吸水性ポリマーを含む使用済み衛生用品を破砕する破砕方法であって、使用済み衛生用品を受入容器で受け入れて、前記受入容器の下方に連通された破砕装置に、前記高吸水性ポリマーを不活化する不活化水溶液を供給しながら、前記使用済み衛生用品を前記破砕装置により前記不活化水溶液と共に破砕する破砕工程、を備える、破砕方法。
【0012】
本方法では、受入容器で受け入れた使用済み衛生用品が下方の破砕装置へ移動すると共に、その破砕装置に不活化水溶液を供給しつつ、使用済み衛生用品を不活化水溶液と共に破砕する。そのため、不活化水溶液の供給や、使用済み衛生用品の破砕に伴って生じる水溶液の流れや水溶液の潤滑的作用により、破砕装置内で破砕物が引っ掛かったり詰まったりすることを抑制できる。それに加えて、破砕のときに、使用済み衛生用品の高吸水性ポリマーが不活化水溶液で不活化され、よって、脱水され、粒径が小さくなるため、高吸水性ポリマーが押し潰されたり、剪断されたりすることを抑制できる。それにより、破砕装置における破砕物の引っ掛かりや詰まりを抑止し、かつ、高吸水性ポリマーの押し潰しや剪断を抑制することが可能となる。
【0013】
[態様2]
前記破砕工程は、前記破砕装置に前記不活化水溶液を供給しながら、前記破砕装置で前記不活化水溶液と共に前記使用済み衛生用品を破砕しつつ、前記破砕装置から、前記破砕装置で破砕された破砕物を前記不活化水溶液と共に送出する送出工程を含む、態様1に記載の破砕方法。
【0014】
本方法では、破砕装置に不活化水溶液を供給しながら、破砕装置で不活化水溶液と共に使用済み衛生用品を破砕しつつ、破砕装置から不活化水溶液及び破砕物を送出している。したがって、破砕装置内に不活化水溶液の水流を作り出している。それにより、破砕装置内の破砕物を洗い流すことができ、破砕装置内で破砕物が引っ掛かったり詰まったりすることを更により抑制できる。更に、破砕装置内に破砕物が蓄積されないので、排泄物の臭気などを抑制できる。それに加え、破砕装置内の不活化水溶液が連続的に更新されるので、高吸水性ポリマーの適切な不活化を連続的に行うことができる。それにより、高吸水性ポリマーが押し潰されたり、剪断されたりすることをより抑制できる。
【0015】
[態様3]
前記破砕工程は、前記破砕装置の破砕中、前記破砕装置に前記不活化水溶液を供給する供給速度と、前記破砕装置から前記破砕物及び前記不活化水溶液を送出する送出速度とが、所定範囲内で同じである、態様2に記載の破砕方法。
【0016】
本方法では、破砕工程が、破砕装置の破砕中、破砕装置に不活化水溶液を供給する供給速度と、破砕装置から破砕物及び不活化水溶液を送出する送出速度とが、所定範囲内で同じである。ただし、所定範囲内とは、一方が他方の0.5倍~2倍の範囲である。それにより、破砕装置内に不活化水溶液の水流を安定的に作り出すことができる。また、破砕装置3において、破砕物の滞留や、破砕対象の使用済み衛生用品の不足を抑制できる。
【0017】
[態様4]
前記破砕工程は、前記不活化水溶液を、前記破砕装置の上方から前記破砕装置の破砕刃に向って供給する供給工程を含む、態様1乃至3のいずれか一項に記載の破砕方法。
【0018】
本方法では、破砕工程が、不活化水溶液を、破砕装置の上方から破砕装置の破砕刃に向って供給する工程を含んでいる。そのため、水溶液の下降の流れ(エネルギー)により、破砕装置内で破砕物が引っ掛かったり詰まったりすることをより抑制できる。破砕装置に移動した使用済み衛生用品を破砕刃に押し付けるようにして破砕を促進できる。
【0019】
[態様5]
前記供給工程は、前記不活化水溶液を、前記受入容器から前記破砕装置に移動した前記使用済み衛生用品の上方から、前記使用済み衛生用品に降り掛かるように供給する工程を含む、態様4に記載の破砕方法。
【0020】
本方法では、破砕工程が、使用済み衛生用品の上方から、使用済み衛生用品に降り掛かるように不活化水溶液を供給する工程を含んでいる。そのため、破砕のときに、使用済み衛生用品の高吸水性ポリマーをより確実に不活化水溶液で不活化できると共に、破砕による破砕物や排泄物の飛散や臭気の拡散をより抑制することができる。
【0021】
[態様6]
前記破砕工程は、前記破砕装置から、前記破砕装置で破砕された破砕物を送出した後、所定時間の経過後に、前記破砕装置への前記不活化水溶液の供給を停止する停止工程を含む、態様1乃至5のいずれか一項に記載の破砕方法。
【0022】
本方法では、破砕装置から破砕物を送出した後、所定時間、破砕装置へ不活化水溶液を供給し続けるので、破砕装置内の破砕物や排泄物を洗い流すことができる。それにより、破砕装置内で破砕物が引っ掛かったり詰まったりしても、それらを除去できる。更に、破砕装置内の排泄物の臭気を抑制できる。
【0023】
[態様7]
前記破砕工程は、前記破砕装置の破砕刃に加わる負荷が、所定値以下では、前記破砕刃は正回転し、前記所定値を超えると、前記破砕刃は逆回転する工程を含む、態様1乃至6のいずれか一項に記載の破砕方法。
【0024】
本方法では、破砕装置の破砕刃に一定以上に負荷がかかると逆回転し、負荷が一定以下になると正転する。そのため、破砕装置内で破砕物が破砕刃の間に引っ掛かったり詰まったりしても、それらを除去できる。
【0025】
[態様8]
前記送出工程は、前記破砕物及び前記不活化水溶液を、前記破砕装置の下方に配置され、前記破砕物及び前記不活化水溶液からパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び前記不活化水溶液を分離する分離装置へ送出する工程を含む、態様2に記載の破砕方法。
【0026】
本方法では、破砕装置で破砕された破砕物及び不活化水溶液を、破砕装置の下方の分離装置へ送出し、分離装置にて分離の処理がなされる。したがって、破砕装置から分離装置へ向かって、不活化水溶液の水流を安定的に作り出すことができる。それにより、破砕装置内の不活化水溶液の水流を安定的に作り出すことができる。
【0027】
[態様9]
前記分離装置は、前記破砕物及び前記不活化水溶液を所定量だけ貯留可能であり、前記破砕物及び前記不活化水溶液が前記所定量だけ供給されたとき、その後は、分離した前記パルプ繊維、前記高吸水性ポリマー及び前記不活化水溶液を次工程へ送出する、態様8に記載の破砕方法。
【0028】
本方法では、分離装置が破砕物及び不活化水溶液を所定量だけ貯留したとき、その後は、破砕装置から送出された破砕物及び不活化水溶液を次工程へ送出する。したがって、破砕装置から分離装置を介し、その次工程へ向かって、不活化水溶液の水流を安定的に作り出すことができる。それにより、破砕装置内の不活化水溶液の水流を安定的に作り出すことができる。
【0029】
[態様10]
前記分離装置は、空気抜きの配管を有する、態様9に記載の破砕方法。
【0030】
本方法では、分離装置が空気抜きの配管を有するので、分離装置内に空気が滞留して、不活化水溶液の流れを妨げることを抑制できる。したがって、破砕装置から分離装置を介し、その次工程へ向かって、不活化水溶液の水流を安定的に作り出すことができる。それにより、破砕装置内の不活化水溶液の水流を安定的に作り出すことができる。
【0031】
[態様11]
高吸水性ポリマーを含む使用済み衛生用品を破砕する破砕装置であって、使用済み衛生用品を受け入れる受入容器の下方に連通され、前記高吸水性ポリマーを不活化する不活化水溶液が供給されつつ、前記使用済み衛生用品を前記不活化水溶液と共に破砕する破砕部、を備える、破砕装置。
【0032】
本破砕装置では、受入容器で受け入れた使用済み衛生用品が下方の破砕部へ移動すると共に、その破砕部に不活化水溶液が供給されつつ、その破砕部により使用済み衛生用品が不活化水溶液と共に破砕される。そのとき、不活化水溶液の供給や、使用済み衛生用品の破砕に伴って生じる水溶液の流れや水溶液の潤滑的作用により、破砕装置内で破砕物が引っ掛かったり詰まったりすることを抑制できる。それに加えて、破砕のときに、使用済み衛生用品の高吸水性ポリマーが不活化水溶液で不活化され、よって、脱水され、粒径が小さくなるため、高吸水性ポリマーが押し潰されたり、剪断されたりすることを抑制できる。それにより、破砕装置における破砕物の引っ掛かりや詰まりを抑止し、かつ、高吸水性ポリマーの押し潰しや剪断を抑制することが可能となる。
【0033】
以下、本実施形態に係る使用済み衛生用品の破砕方法及び破砕装置について説明する。
【0034】
ただし、使用済み衛生用品は、使用者によって使用された衛生用品であるが、使用されていない衛生用品を含んでもよい。衛生用品としては、例えば、使い捨ておむつ、尿取りパッド、失禁パッド、生理用ナプキン、使い捨てショーツ、ベッド用シート及びペット用シートのような吸収性物品が挙げられる。使用済みの衛生用品は、使用者の排泄物(例示:尿、便、経血)を吸収・保持した状態でもよく、吸収・保持していない状態でもよい。
【0035】
まず、実施形態において対象となる衛生用品の構成例について説明する。衛生用品は、表面シートと、裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配置された吸収体とを備える。衛生用品の大きさとしては、例えば、長さ約15~100cm、幅5~100cmが挙げられるが、この例に限定されるものではない。なお、衛生用品は、一般的な衛生用品が備える他の部材、例えば拡散シート、防漏壁、サイドシート、外装シート、弾性部材などを更に含んでもよい。
【0036】
表面シートの構成部材としては、例えば液透過性の不織布、液透過孔を有する合成樹脂フィルム、これらの複合シート等が挙げられる。裏面シートの構成部材としては、例えば液不透過性の不織布、液不透過性の合成樹脂フィルム、これらの複合シートが挙げられる。拡散シートの構成部材としては、例えば液透過性の不織布が挙げられる。防漏壁やサイドシートの構成部材としては、例えば撥水性の不織布が挙げられ、防漏壁はゴムのような弾性部材を含んでもよい。外装シートの構成部材としては、例えば液不透過性かつ通気性の不織布、液不透過性かつ通気性の合成樹脂フィルム、これらの複合シートが挙げられる。弾性部材の構成部材としては、例えばゴム系の合成樹脂が挙げられる。不織布の種類としては、特に制限はなく、例えばメルトブローン不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布などが挙げられる。合成樹脂フィルムの種類としては、特に制限はなく、公知のフィルム材料を用いることができる。不織布や合成樹脂フィルムの材料としては、衛生用品用として使用可能であれば特に制限はないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンタレフタレート、ポリブチレンテレタレート等のポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの不織布や合成樹脂フィルムの材料は、合成樹脂であり、プラスチック材料ということができる。本実施形態では裏面シートの構成部材を合成樹脂フィルムとし、表面シートの構成部材を不織布とする。
【0037】
吸収体の構成部材としては吸収体材料、例えば、繊維状物であるパルプ繊維及び粒子状物である高吸水性ポリマーの少なくとも一方が挙げられる。繊維状物であるパルプ繊維としては、例えばセルロース系繊維が挙げられる。セルロース系繊維としては、例えば木材パルプ、架橋パルプ、非木材パルプ、再生セルロース、半合成セルロース等が挙げられる。パルプ繊維の大きさとしては、繊維の平均長径が例えば数十μmが挙げられ、20~40μmが好ましく、平均繊維長が例えば数mmが挙げられ、2~5mmが好ましい。粒子状物である高吸水性ポリマー(SuperAbsorbent Polymer:SAP)としては、例えばポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系の吸水性ポリマーが挙げられる。高吸水性ポリマーの大きさ(乾燥時)としては、平均粒径が例えば数百μmが挙げられ、200~500μmが好ましい。吸収体は液透過性シートで形成されたコアラップを含んでもよい。本実施形態では吸収体の構成材料をコアラップで包まれた繊維状物であるパルプ繊維及び粒子状物である高吸水性ポリマーとする。
【0038】
吸収体の一方の面及び他方の面は、それぞれ表面シート及び裏面シートに接着剤を介して接合されている。平面視で、表面シートのうちの、吸収体を囲むように、吸収体の外側に延出した部分(周縁部分)は、裏面シートのうちの、吸収体を囲むように、吸収体の外側に延出した部分(周縁部分)と接着剤を介して接合されている。したがって、吸収体は表面シートと裏面シートとの接合体の内部に包み込まれている。接着剤としては、特に制限はないが、例えばホットメルト型接着剤が挙げられる。ホットメルト型接着剤としては、例えばスチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-イソプレン-スチレン等のゴム系主体、又はポリエチレン等のオレフィン系主体の感圧型接着剤又は感熱型接着剤が挙げられる。
【0039】
次に、実施形態に係る使用済み衛生用品の破砕方法及び破砕装置について説明する。ここでは、先ず、その使用済み衛生用品の破砕方法及び破砕装置が適用された例として、使用済み衛生用品の構成材料(例示:プラスチック材料、パルプ繊維及び高吸水性ポリマー)の分離方法及びシステムについて説明する。本実施形態では、衛生用品は吸収性物品(使い捨ておむつ)である。
【0040】
図1は、実施形態に係る使用済み衛生用品の構成材料の分離方法に用いられるシステム1の構成例を示すブロック図である。図2は、実施形態に係る使用済み衛生用品の構成材料の分離方法の一例を示すフロー図である。図2の方法は、図1のシステム1を用いて実施され、収集袋に収容された使用済み衛生用品を、プラスチック材料、粒子状物である高吸水性ポリマー(SAP)及び繊維状物であるパルプ繊維に分離する。以下、詳細に説明する。
【0041】
図2に示すように、使用済み衛生用品の構成材料の分離方法は、破砕工程S1と、第1分離工程S2と、除塵工程S3と、第2分離工程S4と、第3分離工程S5と、酸化剤処理工程S6と、第4分離工程S7と、を具備する。
【0042】
本実施形態では、使用済み衛生用品を、再利用(リサイクル)のために外部から回収して用いる。その際、複数の使用済み衛生用品を収集袋に封入することで、排泄物や菌類や臭気が外部に漏れることを抑制している。収集袋内の個々の使用済み衛生用品は、例えば、排泄物や菌類が表側に露出せず、臭気が周囲に拡散しないように、排泄物が排泄される表面シートを内側に、丸められた状態や折り畳まれた状態で回収される。なお、使用済み衛生用品は、収集袋に封入されなくてもよいし、丸められなくてもよい。
【0043】
先ず、破砕工程S1は、使用済み衛生用品を、高吸水性ポリマーを不活化する不活化剤を含む不活化水溶液と共に破砕する工程である。破砕工程S1は、破砕装置3(例示:二軸破砕機)により実施される。不活化水溶液と共に破砕するとは、不活化水溶液と共に使用済み衛生用品を破砕装置3に供給しつつ破砕する場合、破砕装置3に貯留された不活化水溶液の中に使用済み衛生用品を入れて破砕する場合、及び、それらの組み合わせを含む。本実施形態では不活化水溶液と共に使用済み衛生用品を破砕装置3に供給しつつ使用済み衛生用品を破砕する。なお、使用済み衛生用品の構成材料の分離方法において、第1分離工程S2以降で不活化水溶液(酸性水溶液)を用いている場合、その不足が生じたときには、適宜補充する。
【0044】
本実施形態では、破砕工程S1において、使用済み衛生用品を封入した収集袋91が、受入装置2(例示:受け入れ槽、受入容器)に供給され、受入装置2の下方に連通した破砕装置3へ移動する。それと共に、不活化水溶液(例示:酸性水溶液(酸含有水溶液)が受入装置2を介して破砕装置3へ供給される。収集袋91は、破砕装置3により、不活化水溶液と共に破砕される。それにより、収集袋91内の使用済み衛生用品が、収集袋91ごと不活化水溶液中で破砕されて、破砕物が生成される。その際、不活化水溶液で高吸水性ポリマーが不活化される。破砕物は不活化水溶液と共に混合物92として、第1分離工程S2へ送られる。破砕工程S1の詳細は後述される。なお、混合物とは、固体状のものだけでなく、スラリー状のものや、液体状のものであってもよく、以下、同様である。
【0045】
次いで、第1分離工程S2は、破砕された使用済み衛生用品を、プラスチック材料を含む第1画分と、排泄物、不活化された高吸水性ポリマー、及びパルプ繊維を含む第2画分と、に分離する工程である。すなわち、第1分離工程S2では、使用済み衛生用品を分解し得られるプラスチック材料、排泄物、不活化された高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物から、プラスチック材料(を含む第1画分)と、排泄物、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維(を含む第2画分)と、が分離される。第1分離工程S2は、第1分離装置4(例示:パルパー分離機、スクリーン分離機)により実施される。
【0046】
本実施形態では、第1分離工程S2において、破砕工程S1で生成された破砕物と不活化水溶液である酸性水溶液との混合物92が、第1分離装置4であるパルパー分離機に供給される。パルパー分離機は、混合物を洗浄する洗浄槽、及び、混合物を分離するふるい槽の両方の機能を有する撹拌分離槽を備えている。なお、第1分離工程S2には、酸性水溶液として、破砕工程S1で使用されていない別の酸性水溶液を供給してもよい。
【0047】
混合物92は、パルパー分離機により、撹拌され、破砕物の汚れを除去する洗浄を施されつつ、スクリーンにより、収集袋、フィルム、不織布などを含む第1画分と、パルプ繊維、不活化された高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液などを含む第2画分とに分離される。すなわち、第2画分は、スクリーンを通過して混合物92から分離されて、混合物93としてパルパー分離機から送出される。一方、スクリーンを通過できなかった第1画分は、パルパー分離機内に残存する。このとき、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液の一部はスクリーンを通過せず、第1画分と共にスクリーン上に残存し得る。また、収集袋、フィルム、不織布分の一部は、スクリーンを通過して、混合物93に混入し得る。第1分離工程SS2の詳細は後述される。
【0048】
ただし、収集袋、フィルム、不織布などは、合成樹脂製であり、プラスチック材料ということができる。したがって、第1分離工程S2において、プラスチック材料並びに少量の残存物(パルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液)がスクリーン上の残留物(リジェクト)となり、分離されたパルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液並びに少量のプラスチック材料がスクリーンを通過した通過物(アクセプト)となり、混合物93となる。
【0049】
なお、本実施形態のように、第1分離工程S2よりも前に(破砕工程S1等で)、高吸水性ポリマーを予め不活化し、粒状にして、吸水能力を抑えている場合には、第1分離工程S2以降では、不活化水溶液(酸性水溶液)を用いず、不活化水溶液を概ね除いてから、不活化剤を含まない水(水溶液)を用いてもよい。その場合、第1分離工程S2以降の任意の工程から、不活化剤を含まない水(水溶液)を用いるようにしてもよい。それにより、不活化水溶液(及び不活化剤)の使用量を削減でき、廃水処理の負担を低減できる。
【0050】
本実施形態では、第1分離工程S2において、酸性水溶液のpHが所定の範囲内に維持されるように調整されてもよい。pHの所定の範囲とは、pHの変動が±1.0以内の範囲とする。それにより、高吸水性ポリマーの比重さ及び大きさと、パルプ繊維の比重及び大きさとの相違が、所定の範囲内になるようにできる。この場合、相違が所定の範囲内とは、例えば一方が他方の0.2~5倍の範囲内とする。それにより、パルプ繊維と高吸水性ポリマーとの相違は、比重が所定の範囲内であり、かつ、大きさが所定の範囲内である。その結果、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを、使用済み衛生用品の資材のうちのパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを除いた他の資材(主にプラスチック材料)と、大きさや比重の相違を利用して容易に分離できる。pHの調整は、第1分離装置に設置されたpHセンサ(図示されず)で測定されるpHの値に基づいて、第1分離装置に設置されたpH調節装置(図示されず)からの酸性の水溶液やアルカリ性の水溶液を用いて行うことができる。なお、後述される除塵工程S3、第2分離工程S4及び第3分離工程S5の少なくとも一つにおいても同様にpHが調整されてもよい。
【0051】
次いで、除塵工程S3は、第1分離工程S2で分離されたパルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合物93から異物を取り除く(除塵する)工程である。除塵工程S3は、除塵装置5(例示:スクリーン分離機、サイクロン分離機、それらの組み合わせ)で実施される。
【0052】
本実施形態では、除塵工程S3は、除塵装置5により、第1分離工程S2から供給された混合物93から、分離し切れなかった他の資材(収集袋、フィルム、不織布、弾性体など)などの異物を分離する。除塵装置5として、例えば、スクリーン分離機(目開きが相対的に大)、スクリーン分離機(目開きが相対的に小)及びサイクロン分離機がこの順に配置され、混合物93から異物が順次分離される。それにより、異物の少ないパルプ繊維及び高吸水性ポリマーと酸性水溶液(排泄物を含む)との混合物94が得られる。混合物94は、第2分離工程S4へ供給される。なお、混合物93中の異物を分離する必要が無い場合(例示:含まれる異物が少ない、後の他の工程で異物を分離する)には、除塵工程S3を省略できる。
【0053】
次いで、第2分離工程S4は、除塵工程S3(又は第1分離工程S2)から供給された混合物94(又は混合物93)から、高吸水性ポリマーを分離する工程である。ここで、混合物94(又は混合物93)は、使用済み衛生用品から離解されたパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び酸性水溶液(排泄物を含む)を含んでいる。したがって、混合物94は、使用済み衛生用品から離解された繊維状物(パルプ繊維)、粒子状物(高吸水性ポリマー)及び処理液(酸性水溶液)を含む分散液ということができる。第2分離工程S4は、第2分離装置6(例示:スクリーン分離機、ドラムスクリーン分離機、又は、それらの組み合わせ)により実施される。
【0054】
本実施形態では、第2分離工程S4において、一又は複数のスクリーン分離機及び/又は一又は複数のドラムスクリーン分離機により、混合物94から、高吸水性ポリマー及び酸性水溶液と、パルプ繊維(高吸水性ポリマーが表面などに残存)及び酸性水溶液と、が分離される。それにより、高吸水性ポリマーを含む混合物95と、パルプ繊維(高吸水性ポリマーが残存)及び酸性水溶液を含む混合物96と、が得られる。そして、混合物95は、酸性水溶液を除かれ、必要に応じて殺菌、洗浄、乾燥等をされて、高吸水性ポリマーとして回収される。このようにして分離、回収された高吸水性ポリマー(SAP)は、必要に応じて再活性化され、いわゆるリサイクル高吸水性ポリマーとなる。一方、混合物96は第3分離工程S5へ供給される。
【0055】
次いで、第3分離工程S5は、第2分離工程S4から供給された混合物96から、パルプ繊維を分離する工程である。第3分離工程S5は、第3分離装置7(例示:スクリーン分離機、ドラムスクリーン分離機、スクリュープレス分離機、それらの組み合わせ)により実施される。
【0056】
本実施形態では、第3分離工程S5において、スクリーン分離機及びドラムスクリーン装置により、混合物96から、パルプ繊維(高吸水性ポリマーが表面などに残存)と、酸性水溶液と、が分離される。それにより、パルプ繊維(高吸水性ポリマーが表面などに残存)である混合物97と、酸性水溶液(図示されず)と、がそれぞれ取り出される。混合物97は酸化剤処理工程S6へ供給される。
【0057】
次いで、酸化剤処理工程S6は、第3分離工程S5から供給された混合物97(パルプ繊維及びパルプ繊維の表面などに残存する高吸水性ポリマー含む)中の高吸水性ポリマーを、酸化剤水溶液により酸化分解し、可溶化して、パルプ繊維から除去する工程である。酸化剤処理工程S6は、酸化剤処理装置8(例示:酸化剤水溶液を貯留する処理槽)により実施される。
【0058】
本実施形態では、酸化剤処理工程S6において、酸化剤としてオゾンを含む酸化剤水溶液を貯留する処理槽に、混合物97(高吸水性ポリマーを有するパルプ繊維を含む)が投入され、パルプ繊維中の高吸水性ポリマーが酸化分解され、可溶化されて、不純物の極めて少ないパルプ繊維が得られる。不純物(高吸水性ポリマーを含む)の少ないパルプ繊維は、酸化剤水溶液と共に混合物98として第4分離工程S7へ供給される。
【0059】
酸化剤処理工程S6における酸化剤の種類については、例えば、オゾン及び過酸化水素のうちの少なくとも一つが挙げられるが、本実施形態では、酸化力や殺菌力や漂白力の観点からオゾンを用いる。酸化剤水溶液中のオゾン濃度は、高吸水性ポリマーを分解することができる濃度であれば、特に限定されないが、例えば10~50質量ppmが挙げられる。濃度が低過ぎないことで、高吸水性ポリマーを完全に可溶化でき、濃度が高過ぎないことで、パルプ繊維に損傷を与えることはない。酸化剤水溶液での処理時間は、高吸水性ポリマーを分解することができる時間であれば、特に限定されないが、酸化剤水溶液中のオゾン濃度が高ければ短く、オゾン濃度が低ければ長くし、典型的には5~300分である。酸化剤水溶液中のオゾン濃度(ppm)と処理工程の処理時間(分)の積(以下「CT値」ともいう。)は、好ましくは100~15000ppm・分である。CT値が小さすぎると、高吸水性ポリマーを完全に可溶化できずパルプ繊維に高吸水性ポリマーが残留するおそれがあり、CT値が大きすぎると、パルプ繊維に損傷を与えるおそれがある
【0060】
次いで、第4分離工程S7は、酸化剤処理工程S6から供給された混合物98から、パルプ繊維を分離する工程である。第4分離工程S7は、第4分離装置9(例示:ドラムスクリーン装置、スクリュープレス装置、それらの組み合わせ)により実施される。
【0061】
本実施形態では、第4分離工程S7において、ドラムスクリーン装置及びスクリュープレス装置により、混合物96から、パルプ繊維と、酸化剤水溶液と、が分離される。それにより、パルプ繊維と、酸化剤水溶液(図示されず)と、がそれぞれ取り出される。パルプ繊維は、必要に応じて殺菌、洗浄、乾燥等をされて回収される。このようにして分離、回収されたパルプ繊維は、いわゆるリサイクルパルプ繊維となる。
【0062】
一方、後処理工程S8は、第1分離工程S2の第1画分(プラスチック材料を含む)に、洗浄及び乾燥の処理を行い、必要に応じて殺菌や脱水などの処理を行い、プラスチック材料を回収する工程である。後処理工程S8は、後処理装置10により実施される。
【0063】
本実施形態では、後処理工程S8において、後処理装置10により、第1画分が処理液(例示:水、酸性水溶液)と混合されてから、プラスチック材料を含む第3画分と、第1分離工程S2で分離し切れなかった高吸水性ポリマー及びパルプ繊維などを含有した処理液を含む第4画分と、に分離される(プラスチック分離工程)。第3画分のプラスチック材料は、殺菌(例示:オゾン水処理)、脱水及び乾燥などの処理が行われ、プラスチック材料が回収される。第4画分の処理液(高吸水性ポリマー及びパルプ繊維などを含む)は、第1分離工程S2(と破砕工程S1との間)に戻される(戻し工程)。後処理工程S8の詳細は後述される。
【0064】
次に、使用済み衛生用品の破砕方法について説明する。本実施形態では、使用済み衛生用品の破砕方法を、使用済み衛生用品を構成材料の分離方法に適用した場合について説明する。その場合、使用済み衛生用品の破砕方法は、少なくとも上記の破砕工程S1に対応している。ただし、使用済み衛生用品の破砕方法は、この例に限定されるものではない。
【0065】
まず、使用済み衛生用品の破砕方法に用いられる破砕装置3及び関連する装置について説明する。図3は、図1のシステム1に適用された、実施形態に係る使用済み衛生用品の破砕方法に用いられる破砕装置3及び関連する装置の構成例を示す模式図である。関連する装置は、使用済み吸収性物品を受け入れる受入装置2(受入容器)、第1分離工程S2を実施する第1分離装置4及び後処理工程S8を実施する後処理装置10である。
【0066】
受入装置2は、使用済み衛生用品及び/又は使用済み衛生用品を封入した収集袋を外部から受け入れる装置である。受入装置2は、槽(受け入れ槽)や容器(受入容器)に例示される。受入装置2の上部は解放されてもよく、開閉可能な蓋で覆われてもよく、本実施形態では解放されている。下部は破砕装置3に連通され、破砕装置3との境界に開閉扉(又は弁)を有してもよく、有さなくてもよく、本実施形態では、開閉扉を有さない。
【0067】
受入装置2の上部又は上方には、不活化溶液を供給する供給部(供給配管)が設けられている(図示されず)。本実施形態では、供給部は、不活化水溶液を、破砕装置3の上方から破砕装置3の破砕刃に向って供給する。受入装置2及び/又は破砕装置3に使用済み衛生用品が入っている場合には、供給部は、不活化水溶液を、受入装置2及び/又は破砕装置3の使用済み衛生用品の上方から、使用済み衛生用品に降り掛かるように供給する。
【0068】
破砕装置3は、高吸水性ポリマーを含む使用済み衛生用品を破砕する装置である。破砕装置3は、受入装置2の下方に連通され、不活化水溶液が供給されつつ、使用済み衛生用品を不活化水溶液と共に破砕する破砕部を備えている。破砕部としては、使用済み衛生用品を破砕できれば特に制限はないが、二軸破砕機(例示:二軸回転式破砕機、二軸差動式破砕機、二軸せん断式破砕機)が好ましい。使用済み衛生用品を内部に引き込みながら破砕を行うので、破砕物や不活化水溶液が飛散し難いからである。破砕装置3は、破砕部の破砕刃に加わる負荷が、所定値以下では、破砕刃は正回転し、所定値を超えると、破砕刃は逆回転するように構成されている。破砕装置3(破砕部)の下部は、配管21を介して第1分離装置4に連通され、配管21との境界に開閉扉(又は弁)を有していてもよく、有さなくてもよく、本実施形態では、開閉扉を有さない。
【0069】
本実施形態では、破砕装置3(破砕部)は、不活化水溶液と共に使用済み衛生用品を破砕しつつ、破砕装置3から、破砕装置3で破砕された破砕物を不活化水溶液と共に送出する。したがって、破砕装置3は、受入装置2から不活化水溶液と共に使用済み衛生用品を受け入れる工程、破砕部で不活化水溶液と共に使用済み衛生用品を破砕する工程、及び、破砕部から破砕物を不活化水溶液と共に送出する工程を連続的に行う。破砕物は不活化水溶液と共に第1分離装置4に送出される。なお、不活化水溶液と共に使用済み衛生用品が供給されるとき、破砕装置3(破砕部)には不活化水溶液が予め貯留されていない。別の実施形態では、不活化水溶液と共に使用済み衛生用品が供給されるとき、破砕装置3(破砕部)には不活化水溶液が予め貯留されている。使用済み衛生用品の破砕中には、破砕装置3(破砕部)には不活化水溶液が貯留された状態であってもよいし、貯留された状態でなくてもよい。本実施形態では、使用済み衛生用品の破砕中には、破砕装置3(破砕部)には不活化水溶液がほとんど貯留されない状態である。
【0070】
第1分離装置4は、破砕装置3から送出された破砕物を含む不活化水溶液から、プラスチック材料(第1画分)と、パルプ繊維、高吸水性ポリマー及び不活化水溶液(第2画分)と、を分離する装置である。第1分離装置4としては、破砕物を含む不活化水溶液から第1画分第2画分とを分離できれば特に制限はないが、パルパー分離機が好ましい。
【0071】
本実施形態では、第1分離装置4は、破砕装置3の下方に配置され、配管21を介して破砕装置3に接続され、破砕装置3から破砕物を含む不活化水溶液を供給される。また、第1分離装置4は、側方(アクセプト側)に接続された配管22を介して次の工程(例示:除塵工程S3)の装置(例示:除塵装置5)に接続され、その配管22を介して、当該次の工程に、第2画分を供給する。一方、第1分離装置4は、下方(リジェクト側)に接続された配管23及び配管24を介して、別の次の工程(例示:後処理工程S8)の装置(例示:後処理装置10)に接続され、それら配管23及び配管24を介して、当該他の次の工程に、第1画分(不活化水溶液を含む場合あり)を供給する。
【0072】
本実施形態では、第1分離装置4は、破砕物を含む不活化水溶液を、所定量だけ貯留することが可能である。第1分離装置4は、破砕物を含む不活化水溶液を供給されつつ、不活化水溶液を攪拌し、破砕物を構成材料に離解させる。そして、破砕物を含む不活化水溶液を所定量だけ貯留すると、その後は、破砕物(離解された構成材料)を含む不活化水溶液がスクリーンで分離されることで得られる第2画分(アクセプト)を、配管22を介して次工程の装置へ送出する。その後、スクリーンで分離されずに残存する第1画分(リジェクト)を、配管23及び配管24を介して他の別の次工程の装置へ送出する。なお、攪拌し、離解している間に、破砕物を含む不活化水溶液が所定量を超えた場合には、超えた分に相当する量だけ、破砕物を含む不活化水溶液をスクリーンで分離して、分離された第2画分を、配管22を介して次工程の装置へ送出する。
【0073】
本実施形態では、第1分離装置4として、第1分離装置4-1及び第1分離装置4-2の二台が並列に設けられている。第1分離装置4-1は配管21が途中で分岐した配管21-1を介して、一方、第1分離装置4-2は配管21が途中で分岐した配管21-2を介して、それぞれ破砕装置3に接続されている。更に、第1分離装置4-1は配管22-1を介して、一方、第1分離装置4-2は配管22-2を介して、それぞれ除塵装置5に接続されている。更に、第1分離装置4-1は配管23-1及び配管24を介して、第1分離装置4-2は配管23-2及び配管24を介して、それぞれ後処理装置10に接続されている。
【0074】
配管21の途中に設けられた弁(例示:三方弁、図示されず)の開閉により、破砕装置3から送出された破砕物を含む不活化水溶液は、第1分離装置4-1及び第1分離装置4-2のうちのいずれか一方に供給される。ここで、第1分離装置4-1及び第1分離装置4-2の各々は、破砕物を含む不活化水溶液を所定量だけ貯留可能である。そして、第1分離装置4-1及び第1分離装置4-2のいずれか一方(例示:第1分離装置4-1)に、破砕物を含む不活化水溶液が予め設定された量(所定量以上の特定量でも可)だけ供給されたとき、破砕装置3からの破砕物を含む不活化水溶液の供給が停止される。そして、破砕物を含む不活化水溶液の供給先が変更されて、その後は、他方(例示:第1分離装置4-2)に、破砕物を含む不活化水溶液が供給され、貯留されるようになる。
【0075】
第1分離装置4(4-1又は4-2)では、不活化水溶液が供給され、貯留されつつ、不活化水溶液からスクリーンで分離された第2画分が、配管22(22-1又は22-2)を介して、除塵装置5へ連続的又は断続的に送出される。更に、第1分離装置(4-1又は4-2)では、分離された第1画分が、第2画分の送出中、及び/又は、その後に、配管23(23-1又は23-2)及び配管24を介して、後処理装置10へ連続的又は断続的に他の別の次工程の装置へ送出される。
【0076】
配管22(22-1及び22-2)は、途中でa及びbに分岐し、いずれも次工程の装置に接続されている。a側の配管22(22-1及び22-2)は、第1分離装置4(4-1及び4-2)における所定量の不活化水溶液の液面の位置よりも、鉛直方向に僅かに高い位置を経由し、鉛直方向に低い位置の次工程の装置に接続されている。一方、b側の配管22(22-1及び22-2)は、第1分離装置4における所定量の不活化水溶液の液面の位置よりも、鉛直方向に低い位置を経由し、鉛直方向に低い位置の次工程の装置に接続されている。
【0077】
第1分離装置4(4-1又は4-2)に破砕物を含む不活化水溶液が供給されるとき、当初は、a側の配管22(22-1又は22-2)が液流通可能な状態(例示:図示されない弁の開放による)であり、b側の配管22(22-1又は22-2)が液流通不可能な状態(例示:図示されない弁の閉止による)である。破砕物を含む不活化水溶液が第1分離装置4(4-1又は4-2)に貯留されてゆき、その液面が所定量の液面を超えると、所定量を超えた分に相当する量の、破砕物を含む不活化水溶液がスクリーンで分離されることで得られる第2画分が、a側の配管22(22-1又は22-2)を流れる。
【0078】
次いで、第1分離装置4(4-1又は4-2)への破砕装置3からの破砕物を含む不活化水溶液の供給が停止されると、第1分離装置4(4-1又は4-2)のb側の配管22(22-1又は22-2)が液流通可能な状態になり、第1分離装置4(4-1又は4-2)の第2画分がb側の配管22(22-1又は22-2)を流れる。それにより、第1分離装置4(4-1又は4-2)内の破砕物を含む不活化水溶液がスクリーン分離されて得られた第2画分が、全てb側の配管22(22-1又は22-2)を介して除塵装置5へ供給される。
【0079】
すなわち、破砕装置3からの破砕物を含む不活化水溶液の供給が停止されるまで、a側の配管22(22-1又は22-2)を流通可能、b側の配管22(22-1又は22-2)を流通不可能にしている。それにより、第1分離装置4(4-1又は4-2)での不活化水溶液のオーバーフローを抑制しつつ、攪拌及び離解を十分に行うことができる。
【0080】
ただし、第1分離装置4-1及び第1分離装置4-2のいずれか一方から他方へ破砕物を含む不活化水溶液の供給先を変更するタイミングである、供給される破砕物を含む不活化水溶液の量が予め設定された量に達したとき、は、例えば、次のように設定する。すなわち、破砕装置3に供給される使用済み衛生用品及び不活化水溶液の量を、予め設定された量ずつに区切るようにする。そして、区切られた一回分の使用済み衛生用品及び不活化水溶液を第1分離装置4に供給するごとに、破砕物を含む不活化水溶液の供給先を変更する。あるいは、破砕装置3から送出される破砕物を含む不活化水溶液の流量又は重量をセンサで測定し、積算流量又は積算重量が予め設定された値に達するごとに、破砕物を含む不活化水溶液の供給先を変更する。
【0081】
第1分離装置4(4-1又は4-2)は、第2画分が送出され、第1分離装置4(4-1又は4-2)内の不活化水溶液の液面が所定の低い位置に達したことが検知されて、第1分離装置4(4-1又は4-2)の下方のベントの扉を開放する。そして、第1分離装置4(4-1又は4-2)の第1画分(プラスチック材料を含む)を、配管23(23-1又は23-2)及び配管24を介して、後処理装置10へ送出する(落下させる)。なお、所定の低い位置は、所定量の液面の位置より低い位置であり、本実施形態では、実質的に液量ゼロの位置である。
【0082】
ただし、第1分離装置4(4-1又は4-2)における破砕物を含む不活化水溶液の液面が所定の低い位置に達することの検知は、第1分離装置4(4-1又は4-2)に設置されたセンサP(P-1又はP-2)により行う。そのようなセンサとしては、水圧センサや液面レベルセンサが例示される。
【0083】
本実施形態では、並列接続された二台の第1分離装置4(4-1及び4-2)が第1分離工程S2を交互に実施するが、並列接続された三台以上の複数の第1分離装置4が順番に又は適当な組み合わせで実施してもよい。
【0084】
本実施形態では、第1分離装置4(4-1及び4-2)は、空気抜きの配管(図示されず)を有する。空気抜きの配管は、例えば、第1分離装置4の上部(上面)に配置され、第1分離装置4内の破砕物を含む不活化水溶液の液面よりも上側の空間の気体を外部へ脱がすように構成されている。
【0085】
次いで、後処理装置10は、第1画分を水で洗浄又は酸性水溶液で処理しつつ、第1画分に物理的衝撃を加えて、第1画分を、プラスチック材料と、第1分離工程S2で分離し切れずに第1画分に残存していた排泄物、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維と、に分離する装置である。
【0086】
後処理装置10は、横倒しの円筒形状を有する円筒部10aと、円筒部10aの内部に設けられた複数の羽根(図示されず)と、横倒しの円筒部10aの上側の外周面に設けられた複数の開口部を有する処理液供給部10cと、横倒しの円筒部10aの下側の外周面に設けられたスクリーン10f(ふるい)と、スクリーン10fからのアクセプトを受ける貯水タンク10dと、を備える。円筒部10aは、その中心軸の方向における一端側に混合物を供給する供給部10e、他端側に混合物を排出する排出部10bを有する。複数の羽根車は、円筒部10aの中心軸と同軸に設けられた軸部材の外周面に、その中心軸の方向に沿って間隔を空けて並んで配置されている。複数の羽根車は、軸部材を中心として回転しつつ、円筒部10aの一端側から他端側へ空気の流れを生じさせるように、羽の向きを調整されている。複数の処理液供給部10cは、円筒部10aの中心軸の方向に沿って間隔を空けて並んでいて、処理液を円筒部10aの上方から下方へ向かって噴射する。処理液供給部10cは、処理液をスプレー状に噴射することが好ましい。スクリーン10f(ふるい)の個々の開口の大きさは、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーが通過可能、かつ、プラスチック材料が通過困難な大きさである。
【0087】
次に、使用済み衛生用品の破砕方法(破砕工程)について説明する。図4は、図2の分離方法に適用された、実施形態に係る使用済み衛生用品の破砕方法(破砕工程)の一例を示すフロー図である。図4の方法は、図3の破砕装置3を用いて実施され、使用済み衛生用品を破砕して破砕物を生成する。以下、詳細に説明する。
【0088】
破砕工程S1(使用済み衛生用品の破砕方法)は、上記のように使用済み衛生用品を受入容器(受入装置2)で受け入れて、受入容器の下方に連通された破砕装置3(破砕部)に、高吸水性ポリマーを不活化する不活化水溶液を供給しながら、使用済み衛生用品を破砕装置3(破砕部)により不活化水溶液と共に破砕する。
【0089】
図4に示すように、破砕工程S1は、衛生用品破砕工程S12、を備え、本実施形態では、更に、供給工程S11と、送出工程S13と、停止工程S14と、を備える。
【0090】
まず、供給工程S11は、不活化水溶液を、破砕装置3の上方から破砕装置3に向って供給する工程である。
【0091】
本実施形態では、供給工程S11において、破砕装置3の破砕部(図示されず)の上部が解放され、破砕部の破砕刃が露出している。その露出された破砕刃へ向かって、受入装置2の上部又は上方に設けられた、不活化溶液を供給する供給部(図示されず)から、不活化水溶液が供給される。その場合、破砕部の上部に何もなければ、不活化水溶液の大部分は破砕刃に直接降り掛かるので、不活化水溶液により破砕刃が洗浄され易くなる。
【0092】
本実施形態では、供給工程S11は、不活化水溶液を、受入装置2から破砕装置3に移動した使用済み衛生用品の上方から供給する工程を含んでいる。
【0093】
本実施形態では、供給工程S11において、受入装置2を介して、破砕装置3の破砕部に使用済み吸収性物品(又はそれを内包する収集袋)が供給される。そのとき、破砕部の上部、すなわち破砕部の破砕刃の一部又は全部が使用済み吸収性物品で覆われる。その場合、破砕刃に向って供給される不活化水溶液は、使用済み衛生用品の上方から使用済み衛生用品に降り掛かるように供給されるので、使用済み衛生用品は不活化水溶液と共に破砕され易くなる。不活化水溶液と共に使用済み衛生用品が供給されるとき、破砕部には不活化水溶液が予め貯留されていない。ただし、不活化水溶液と使用済み衛生用品を破砕部に供給するときに少しの時間差があり、破砕部に少量の不活化水溶液が予め貯留されていてもよい。
【0094】
次いで、衛生用品破砕工程S12は、破砕装置3の破砕部に不活化水溶液を供給しながら、破砕装置3で不活化水溶液と共に使用済み衛生用品を破砕する工程である。
【0095】
本実施形態では、衛生用品破砕工程S12において、不活化水溶液が使用済み衛生用品の上方から使用済み衛生用品に降り掛かるように供給されると共に、使用済み吸収性物品(又はそれを内包する収集袋)が破砕装置3の破砕部に供給される。そして、破砕装置3の破砕部により、不活化水溶液と共に使用済み衛生用品が破砕される。
【0096】
次いで、送出工程S13は、破砕装置3に不活化水溶液が供給されつつ、破砕装置3で不活化水溶液と共に使用済み衛生用品が破砕されながら、それらと並行して、破砕装置3から、衛生用品破砕工程S12で破砕された破砕物を不活化水溶液と共に送出する工程である。
【0097】
本実施形態では、送出工程S13において、破砕装置3の破砕部で不活化水溶液と共に使用済み衛生用品が破砕されつつ、破砕部から送出された破砕物及び不活化水溶液は、配管21-1及び配管21-2のいずれか一方を介して、第1分離装置4-1及び第1分離装置4-2のいずれか一方へ送出される。
【0098】
ここで、破砕装置3の破砕中、破砕装置3に不活化水溶液を供給する供給速度と、破砕装置3から破砕物及び不活化水溶液を送出する送出速度とが、所定範囲内で同じであことが好ましい。ただし、所定範囲とは、供給速度及び送出速度のうちの一方が他方の0.5~2.0倍の範囲にあることをいう。それにより、破砕装置3内に不活化水溶液の水流を安定的に作り出すことができる。また、破砕装置3において、破砕物の滞留や、破砕対象の使用済み衛生用品の不足を抑制できる。
【0099】
本実施形態では、破砕工程S1において、破砕装置3の破砕部により、不活化水溶液と共に使用済み衛生用品が破砕されつつ、破砕部から、破砕部で破砕された破砕物が不活化水溶液と共に送出される。したがって、破砕部では、受入装置2から不活化水溶液と共に使用済み衛生用品が供給されることと、不活化水溶液と共に使用済み衛生用品が破砕されることと、不活化水溶液と共に破砕物が送出されることと、が連続的に行われる。
【0100】
次いで、停止工程S14は、破砕装置3から破砕物を送出した後、所定時間の経過後に、破砕装置3への不活化水溶液の供給を停止する工程である。その後、破砕装置3が停止される。
【0101】
本実施形態では、停止工程S14において、破砕装置3の破砕部から破砕物が送出された後、破砕物がほとんどない破砕部に、所定時間(例示:5分間)の間、不活化水溶液が降り掛けられる。それにより、残存する破砕物の送出が促進されると共に、破砕部(破砕刃を含む)が洗浄・殺菌される。
【0102】
ここで、破砕工程S1では、破砕物の大きさが概ね1~150mm、好ましくは5~100mmとなるように、使用済み衛生用品が破砕されることが好ましい。1mm以上にすると、パルプ繊維及び高吸水性ポリマー以外の他の資材(例示:フィルム、不織布、弾性体など)が大きく切断されて、後続の工程でそれら資材とパルプ繊維及び高吸水性ポリマーとを分離し易くできる。150mm以下にすると、使用済みの衛生用品の各資材同士が絡み難くなるので、大きめの資材同士が離解し易くなるほか、それら資材同士に挟持されたパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを分離し易くできる。
【0103】
使用済み衛生用品を不活化水溶液と共に粉砕処理すると、使用済み衛生用品に含まれていた高吸水性ポリマーは、不活化し、脱水して、小粒径になる。そのため、後続の工程において高吸水性ポリマーの取り扱い(分離や回収)が容易になり、処理の効率が向上する。不活化剤としては、無機酸及び有機酸の水溶液、すなわち酸性水溶液を用いることが好ましい。酸性水溶液を用いると、石灰や塩化カルシウムのような水溶液を用いる場合と比較して、プラスチック材料や高吸水性ポリマーやパルプ繊維などに灰分や塩素を残留し難くでき、不活化の程度(粒径や比重の大きさ)をpHで調整し易くできる。なお、不活化水溶液として、公知の多価金属イオンを供給可能な多価金属イオン供給源を含む水溶液で不活化してもよい。
【0104】
有機酸としては、例えば、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、アスコルビン酸、等が挙げられ、クエン酸が好ましい。クエン酸は、キレート効果により、排泄物中の金属イオン等をトラップして除去可能であり、かつ、洗浄効果により、汚れ成分を除去可能である。一方、無機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸が挙げられ、硫酸が好ましい。硫酸は、塩素を含まず、よってプラスチック材料などに塩素が残留し難く、低コストである。
【0105】
酸性水溶液のpHとしては1.0~4.0が好ましい。pHを1.0以上にすると、設備が腐食し難く、排水処理時の中和処理に必要なアルカリ薬品も低減でき、pHを4.0以下にすると、高吸水性ポリマーを十分に小さくでき、殺菌能力も高められる。pHは水温により変化するため、本発明におけるpHは、水溶液温度20℃で測定したpHをいうものとする。
【0106】
有機酸水溶液の有機酸濃度は、特に限定されないが、有機酸がクエン酸の場合は、0.5質量%以上4質量%以下が好ましい。無機酸水溶液の無機酸濃度は、特に限定されないが、無機酸が硫酸の場合は、0.1質量%以上2.0質量%以下が好ましい。本実施形態では、不活化水溶液として、無機酸の硫酸(希硫酸)の水溶液、すなわち酸性水溶液(酸含有水溶液)を用いた場合について説明する。
【0107】
このように、破砕工程S1では、使用済み衛生用品における各構成部材が、概ね所定の大きさに破砕される。その際、破砕時に生じる熱及び/又は酸性水溶液の熱などにより、各構成部材同士の接着剤(例えば、ホットメルト接着剤)の接合力を低下させて、各構成部材を互いに容易に離解させることも可能である。
【0108】
なお、酸性水溶液を加熱すること(温度:70~95℃)で、使用済み衛生用品の構成部材間の接合に使用されている接着剤(例えば、ホットメルト接着剤)を軟化させ、接着剤の接合力を低下できる。それにより、自然に又は小さな衝撃で構成部材同士を容易に離解させることができる。使用済み衛生用品をより殺菌(消毒)することも可能となる。
【0109】
次に、使用済み衛生用品の第1分離方法(第1分離工程)について説明する。図5は、図2の分離方法に適用された、実施形態に係る使用済み衛生用品の第1分離方法(第1分離工程)の一例を示すフロー図である。図5の方法は、図3の第1分離装置4を用いて実施され、使用済み衛生用品の破砕物を含む不活化水溶液を、プラスチック材料と、パルプ繊維、高吸水性ポリマー及び不活化水溶液と、に分離する。以下、詳細に説明する。
【0110】
第1分離工程S2(使用済み衛生用品の第1分離方法)は、上記のように破砕工程S1から供給される使用済み衛生用品の破砕物を含む不活化水溶液を、プラスチック材料を含む第1画分と、排泄物、不活化された高吸水性ポリマー、パルプ繊維及び不活化水溶液を含む第2画分と、に分離する。
【0111】
第1分離装置4が一台の場合には、図5において、第1分離工程S2は、破砕物等供給工程S21と、破砕物等分離工程S22と、第2画分送出工程S24と、第1画分送出工程S25と、を備える。それらの工程はその順に実施され、切替工程S23及び切替工程S26はない。
【0112】
本実施形態では、第1分離装置4が二台(第1分離装置4-1及び第1分離装置4-2)であり、その場合には、第1分離工程S2は、それぞれの装置において、破砕物等供給工程S21と、破砕物等分離工程S22と、切替工程S23と、第2画分送出工程S24と、第1画分送出工程S25と、切替工程S26と、を備える。
【0113】
まず、第1分離装置4-1が、破砕物等供給工程S21及び破砕物等分離工程S22を実施する。その後、切替工程S23及び切替工程S26により、第1分離装置4-2が、破砕物等供給工程S21及び破砕物等分離工程S22を実施する一方で、第1分離装置4-1が、第2画分送出工程S24及び第1画分送出工程S25を実施する。その後、切替工程S26及び切替工程S23により、第1分離装置4-1が、再び、破砕物等供給工程S21及び破砕物等分離工程S22を実施する一方で、第1分離装置4-2が、第2画分送出工程S24及び第1画分送出工程S25を実施する。以下、同様である。以下、各工程について説明する。
【0114】
まず、破砕物等供給工程S21は、破砕装置3から不活化水溶液と共に送出された使用済み衛生用品の破砕物を、第1分離装置4へ供給する工程である。
【0115】
本実施形態では、破砕物等供給工程S21において、例えば、破砕装置3から不活化水溶液と共に送出された使用済み衛生用品の破砕物が、配管21-1(又は21-2)を介して第1分離装置4-1(又は4-2)へ供給される。使用済み衛生用品の破砕物は不活化水溶液と共に第1分離装置4-1(又は4-2)に貯留される。この場合、不活化水溶液と共に送出された使用済み衛生用品の破砕物は、第1分離装置4-2(又は4-1)へは供給されない。このとき、配管22-1(又は22-2)は、a側の流路が設定されており、第1分離装置4-1(又は4-2)内の破砕物を含む不活化水溶液が所定量よりも多くならないようしている。
【0116】
次いで、破砕物等分離工程S22は、使用済み衛生用品の破砕物及び不活化水溶液を、プラスチック材料(及び不活化水溶液)を含む第1画分と、排泄物、不活化された高吸水性ポリマー、及びパルプ繊維材料(及び不活化水溶液)を含む第2画分と、に分離する工程である。
【0117】
本実施形態では、破砕物等分離工程S22において、第1分離装置4-1(又は4-2)のパルパー分離機により、第1分離装置4-1(又は4-2)内で、使用済み衛生用品の破砕物を含む不活化水溶液が貯留されつつ、破砕物が攪拌され、構成材料に離解される。そして、破砕物(離解された構成材料)を含む不活化水溶液がスクリーンで分離されて、排泄物、不活化された高吸水性ポリマー、パルプ繊維材料、及び不活化水溶液を含む第2画分がアクセプトとなり、a側の配管22-1(又は22-2)へ送出される。この段階では、第1画分(リジェクト)となるプラスチック材料は、第1分離装置4-1(又は4-2)に残存している。なお、破砕物等分離工程S22の一部又は全部は、破砕物等供給工程S21と同時に行われてもよい。
【0118】
切替工程S23は、第1分離装置4-1(又は4-2)が、破砕物等供給工程S21及び破砕物等分離工程S22の実施を、もう一方の装置(第1分離装置4-2(又は4-1))へ移管する工程である。言い換えると、切替工程S23は、破砕装置3から送出される使用済み衛生用品の破砕物を含む不活化水溶液の供給先が、第1分離装置4-1(又は4-2)から第1分離装置4-2(又は4-1)へ変更される工程である。
【0119】
本実施形態では、切替工程S23は、破砕装置3から第1分離装置4-1(又は4-2)に供給される破砕物を含む不活化水溶液の量が、予め設定された量に到達したときに実行される。切替工程S23では、それまで破砕装置3から送出された使用済み衛生用品の破砕物を含む不活化水溶液は、配管21-1(又は21-2)を介して第1分離装置4-1(又は4-2)へ供給されていたが、配管21の途中に設けられた弁の切り替えにより、配管21-2(又は21-1)を介して第1分離装置4-2(又は4-1)へ供給されるようになる。
【0120】
第2画分送出工程S24は、破砕物等分離工程S22(第1分離装置4)で得られた排泄物、不活化された高吸水性ポリマー、及びパルプ繊維材料(及び不活化水溶液)を含む第2画分を、次工程(例示:除塵工程S3)の装置(例示:除塵装置5)へ送出する。
【0121】
本実施形態では、切替工程S23と同時に、又は、その後、第2画分送出工程S24において、a側の配管22-1(又は22-2)からb側の配管22-1(又は22-2)へ変更される。そして、第1分離装置4-1(又は4-2)から送出される第2画分が、配管22-1(又は22-2)のb側の流路を経由して、除塵工程S3の除塵装置5へ連続的又は断続的に送出される。なお、第2画分送出工程S24の一部又は全部は、破砕物等分離工程S22と同時に行われてもよい。
【0122】
第1画分送出工程S25は、破砕物等分離工程S22(第1分離装置4)で得られたプラスチック材料(及び不活化水溶液)を含む第1画分を、他の別の次工程(例示:後処理工程S8)の装置(例示:後処理装置10)へ送出する。
【0123】
本実施形態では、第1画分送出工程S25において、第1分離装置4-1(又は4-2)と配管23-1(又は23-2)とが連通される。具体的には、第1分離装置4-1(又は4-2)から第1分離装置4-2(又は4-1)への不活化水溶液の供給先の変更後、第1分離装置4-1(又は4-2)内の不活化水溶液の液面が所定の低い位置に達したことを検知して、第1分離装置4-1(又は4-2)の下方のベントの扉を開放する。それにより、第1分離装置4-1(又は4-2)と配管23-1(又は23-2)とが連通する。このとき、第1分離装置4-1(又は4-2)から、第2画分(アクセプト)がb側の配管22-1を介して除塵工程S3へ送出されたことにより、第1分離装置4-1(又は4-2)には、第1画分(リジェクト)だけが残存している。そして、その第1分離装置4-1(又は4-2)内の第1画分が、配管23-1(又は23-2)及び配管24を経由して、後処理工程S8の後処理装置10へ連続的又は断続的に送出される。なお、第1画分送出工程S25の一部又は全部は、第2画分送出工程S24と同時に行われてもよい。
【0124】
切替工程S26は、第1分離装置4-2(又は4-1)が、破砕物等供給工程S21及び破砕物等分離工程S22の実施を、もう一方の装置(第1分離装置4-1(又は4-2))から移管される工程である。言い換えると、切替工程S26は、破砕装置3から送出される使用済み衛生用品の破砕物及び不活化水溶液の供給先が、第1分離装置4-2(又は4-1)から第1分離装置4-1(又は4-2)へ変更される工程である。
【0125】
本実施形態では、切替工程S26は、破砕装置3から第1分離装置4-2(又は4-1)に供給される破砕物を含む不活化水溶液の量が、予め設定された量に到達したときに実行される。切替工程S26では、それまで破砕装置3から送出された使用済み衛生用品の破砕物を含む不活化水溶液は、配管21-2(又は21-1)を介して第1分離装置4-2(又は4-1)へ供給されていたが、配管21の途中に設けられた弁の切り替えにより、配管21-1(又は21-2)を介して第1分離装置4-1(又は4-2)へ供給されるようになる。
【0126】
切替工程S23及び切替工程S26を設けることにより、第1画分送出工程S25、すなわち、第1分離装置4-1,4-2から第1画分を排出するとき、共に排出される不活化水溶液の量を低減できる。それにより、使用済み衛生用品の構成材料の分離方法において、除塵工程S3以降で生じ得る不活化水溶液(酸性水溶液)の不足を抑制できる。
【0127】
次に、使用済み衛生用品の第1画分(プラスチック材料を含む)の後処理方法(後処理工程)について説明する。
【0128】
後処理工程S8は、第1画分(プラスチック材料を含む)を処理液で処理して、プラスチック材料を含む第3画分と、第1分離工程S2で分離し切れずに残存する排泄物、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の少なくとも一つ並びに処理液を含む第4画分と、に分離するプラスチック分離工程と、第4画分を、第1分離工程S2(と破砕工程S1との間)に供給する戻し工程と、を備える。ただし、第1画分を処理する処理液の供給量や処理液中の処理剤の濃度は、破砕工程S1で破砕される使用済み衛生用品の種類(例示:高吸水性ポリマーとパルプ繊維との比)などに基づいて設定し得る。
【0129】
本実施形態では、第1分離工程S2の第1画分が、後処理装置10に、供給部10eを介して供給される。そして、第1画分は、円筒部10a内の空気中で、処理液供給部10cの複数の開口部の各々から処理液を噴射され、回転する複数の羽根で攪拌され、複数の羽根との衝突により物理的衝撃を加えられつつ、円筒部10aの一端側から他端側へ移動(流動)する。その間、第1画分のプラスチック材料は、噴射される処理液により、汚れが洗い流され、及び/又は、殺菌や漂白を施される。それと共に、プラスチック材料中のパルプ繊維及び高吸水性ポリマーなどは、物理的衝撃や処理液による洗い流しなどで、プラスチック材料から取り除かれる。処理液が不活化水溶液の場合には、プラスチック材料中の高吸水性ポリマーは、処理液による不活化の更なる進行及び物理的衝撃などでプラスチック材料からより容易に取り除かれる(プラスチック分離工程)。
【0130】
そして、プラスチック材料から取り除かれたパルプ繊維や高吸水性ポリマーを含む処理液(第4画分)は、円筒部10aの下側のスクリーン10fを通過して貯水タンク10dへ送出される。そして、貯水タンク10dのパルプ繊維や高吸水性ポリマーを含む処理液は、配管25及び配管26を介して第1分離装置4(第1分離工程S2)に供給される(戻し工程)。その場合、第1分離装置4-1(又は4-2)に破砕物を含む不活化す溶液が供給されている場合には、配管25及び配管26-1(又は26-2)を介して第1分離装置4-1(又は4-2)に供給される。それにより、パルプ繊維や高吸水性ポリマーの回収率が向上する。
【0131】
一方、パルプ繊維や高吸水性ポリマーなどを除去されたプラスチック材料(第3画分)は、スクリーン10fを通過せずに、円筒部10aの他端側の排出部10bから排出される。すなわち、第1分離工程S2で分離されずに残存していた高吸水性ポリマー及びパルプ繊維がプラスチック材料から分離されて、不純物の低減されたプラスチック材料が生成されて、回収される。
【0132】
処理液としては、例えば、上述された不活化水溶液が挙げられ、好ましくは、酸性水溶液が挙げられる。酸性水溶液の供給量としては、所望の機能を実現できる供給量であれば特に限定されないが、例えば、プラスチック材料の重量に対する酸性水溶液の重量が、5~100倍が挙げられ、10~50倍が好ましい。酸性水溶液の供給速度としては、所望の機能を実現できる供給速度であれば特に限定されないが、例えば、50~500cm/分が挙げられ、80~200cm/分が好ましい。供給量や供給速度が小さいと所望の効果を得難く、大きいと機器や材料などを損傷するおそれがある。
【0133】
プラスチック分離工程では、好ましい態様として、酸性水溶液が第1画分へ噴射される。噴射の勢いにより、プラスチック材料に付着している残存していた高吸水性ポリマー及びパルプ繊維などを洗い落とすことができる。また、噴射で酸性水溶液が細かくなるので、プラスチック材料の細部に残存している高吸水性ポリマーにまで酸性水溶液を到達し易くすることができる。また、酸性水溶液にプラスチック材料を浸漬する場合と比較して、プラスチック材料の表面へ常にフレッシュな酸性水溶液を供給でき、酸性水溶液の効果のバラツキを抑制することができる。
【0134】
プラスチック分離工程では、第1画分を処理液(例示:不活化水溶液)で処理せずに、第1画分に物理的衝撃を加えて、分離を行ってもよい。あるいは、プラスチック分離工程では、処理液の代わりに、水や、不活化剤を含まない水溶液(以下、単に「水」ともいう。)を第1画分に噴射等してもよい。
【0135】
以上のようにして、後処理工程S8におけるプラスチック分離工程及び戻し工程が実施される。
【0136】
なお、本実施形態では、使用済み衛生用品の破砕方法は、使用済み衛生用品の構成材料の分離方法における破砕工程S1に適用されているが、使用済み衛生用品を提供されれば、単独の破砕方法として実施してもよく、他の前工程や後工程を追加して実施してもよい。また、本実施形態では、使用済み衛生用品の第1分離方法は、使用済み衛生用品の構成材料の分離方法における第1分離工程S2に適用されているが、破砕物を含む水溶液を提供されれば、単独の第1分離方法として実施してもよく、他の前工程や後工程を追加して実施してもよい。
【0137】
本実施形態では、破砕工程S1において、受入容器で受け入れた使用済み衛生用品が下方の破砕装置3へ移動すると共に、その破砕装置3に不活化水溶液を供給しつつ、使用済み衛生用品を不活化水溶液と共に破砕する。そのため、不活化水溶液の供給や、使用済み衛生用品の破砕に伴って生じる水溶液の流れや水溶液の潤滑的作用により、破砕装置3内で破砕物が引っ掛かったり詰まったりすることを抑制できる。それに加えて、破砕のときに、使用済み衛生用品の高吸水性ポリマーが不活化水溶液で不活化され、よって、脱水され、粒径が小さくなるため、高吸水性ポリマーが押し潰されたり、剪断されたりすることを抑制できる。それにより、破砕装置3における破砕物の引っ掛かりや詰まりを抑止し、かつ、高吸水性ポリマーの押し潰しや剪断を抑制することが可能となる。
【0138】
本実施形態の好ましい態様では、破砕工程S1において、破砕装置3に不活化水溶液を供給しながら、破砕装置3で不活化水溶液と共に使用済み衛生用品を破砕しつつ、破砕装置3から不活化水溶液及び破砕物を送出している。したがって、破砕装置3内に不活化水溶液の水流を作り出している。それにより、破砕装置3内の破砕物を洗い流すことができ、破砕装置3内で破砕物が引っ掛かったり詰まったりすることを更により抑制できる。更に、破砕装置3内に破砕物が蓄積されないので、排泄物の臭気などを抑制できる。それに加え、破砕装置3内の不活化水溶液が連続的に更新されるので、高吸水性ポリマーの適切な不活化を連続的に行うことができる。それにより、高吸水性ポリマーが押し潰されたり、剪断されたりすることをより抑制できる。
【0139】
本実施形態の好ましい態様では、破砕工程S1において、破砕装置3の破砕中、破砕装置3に不活化水溶液を供給する供給速度と、破砕装置3から破砕物及び不活化水溶液を送出する送出速度とが、所定範囲内で同じである。ただし、所定範囲内とは、一方が他方の0.5倍~2倍の範囲である。それにより、破砕装置内に不活化水溶液の水流を安定的に作り出すことができる。また、破砕装置3において、破砕物の滞留や、破砕対象の使用済み衛生用品の不足を抑制できる。
【0140】
本実施形態の好ましい態様では、破砕工程S1が、不活化水溶液を、破砕装置3の上方から破砕装置3の破砕刃に向って供給する工程を含んでいる。そのため、水溶液の下降の流れ(エネルギー)により、破砕装置3内で破砕物が引っ掛かったり詰まったりすることをより抑制できる。破砕装置3に移動した使用済み衛生用品を破砕刃に押し付けるようにして破砕を促進できる。
【0141】
本実施形態の好ましい態様では、破砕工程S1が、使用済み衛生用品の上方から、使用済み衛生用品に降り掛かるように不活化水溶液を供給する工程を含んでいる。そのため、破砕のときに、使用済み衛生用品の高吸水性ポリマーをより確実に不活化水溶液で不活化できると共に、破砕による破砕物や排泄物の飛散や臭気の拡散をより抑制することができる。
【0142】
本実施形態の好ましい態様では、破砕工程S1において、破砕装置3から破砕物を排出した後、所定時間、破砕装置3へ不活化水溶液を供給し続けるので、破砕装置3内の破砕物や排泄物を洗い流すことができる。それにより、破砕装置3内で破砕物が引っ掛かったり詰まったりしても、それらを除去できる。更に、破砕装置3内の排泄物の臭気を抑制できる。
【0143】
本実施形態の好ましい態様では、破砕装置3は、破砕刃に加わる負荷が、所定値以下では、破砕刃は正回転し、所定値を超えると、破砕刃は逆回転する機能を有している。そのため、破砕装置3内で破砕物が破砕刃の間に引っ掛かったり詰まったりしても、それらを除去できる。
【0144】
本実施形態の好ましい態様では、破砕装置3で破砕された破砕物及び不活化水溶液を、破砕装置3の下方の第1分離装置4へ送出し、第1分離装置4にて分離の処理がなされる。したがって、破砕装置3から第1分離装置4へ向かって、不活化水溶液の水流を安定的に作り出すことができる。それにより、破砕装置3内の不活化水溶液の水流を安定的に作り出すことができる。
【0145】
本実施形態の好ましい態様では、第1分離装置4は、破砕物及び不活化水溶液を所定量だけ供給され、貯留したとき、その後は、破砕装置3から送出された破砕物及び不活化水溶液の量の、分離されたパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び不活化水溶液を次工程へ送出する。したがって、破砕装置3から第1分離装置4を介し、その次工程へ向かって、不活化水溶液の水流を安定的に作り出すことができる。それにより、破砕装置3内の不活化水溶液の水流を安定的に作り出すことができる。
【0146】
本実施形態の好ましい態様では、第1分離装置4が空気抜きの配管を有するので、第1分離装置4内に空気が滞留して、不活化水溶液の流れを妨げることを抑制できる。したがって、破砕装置3から第1分離装置4を介し、その次工程へ向かって、不活化水溶液の水流を安定的に作り出すことができる。それにより、破砕装置3内の不活化水溶液の水流を安定的に作り出すことができる。
【0147】
本実施形態の好ましい態様では、破砕装置3では、受入容器で受け入れた使用済み衛生用品が下方の破砕部へ移動すると共に、その破砕部に不活化水溶液が供給されつつ、その破砕部により使用済み衛生用品が不活化水溶液と共に破砕される。そのとき、不活化水溶液の供給や、使用済み衛生用品の破砕に伴って生じる水溶液の流れや水溶液の潤滑的作用により、破砕装置3内で破砕物が引っ掛かったり詰まったりすることを抑制できる。それに加えて、破砕のときに、使用済み衛生用品の高吸水性ポリマーが不活化水溶液で不活化され、よって、脱水され、粒径が小さくなるため、高吸水性ポリマーが押し潰されたり、剪断されたりすることを抑制できる。それにより、破砕装置における破砕物の引っ掛かりや詰まりを抑止し、かつ、高吸水性ポリマーの押し潰しや剪断を抑制することが可能となる。
【0148】
本実施形態の別の態様では、では、第1分離工程S2において、分離し切れずに第1画分のプラスチック材料に残存していたパルプ繊維や高吸水性ポリマーを、後処理工程S8において、処理液(例示:不活化水溶液)で処理する。それにより、プラスチック材料に付着していたパルプ繊維や高吸水性ポリマーを、プラスチック材料から剥がして分離することができる。
【0149】
そして、その分離されたパルプ繊維や高吸水性ポリマーを含む処理液を第1分離工程S2へ戻している。それにより、プラスチック材料から剥がされ分離されたパルプ繊維や高吸水性ポリマーを、第1分離工程S2で第2画分として回収することができ、その後工程でのパルプ繊維や高吸水性ポリマーの回収率を高めることができる。
【0150】
本発明の衛生用品は、上述した各実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組合せや変更等が可能である。
【符号の説明】
【0151】
3 破砕装置
4 第1分離装置
S1 破砕工程
S2 第1分離工程
図1
図2
図3
図4
図5