(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088511
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】冷菓被覆用チョコレート
(51)【国際特許分類】
A23G 1/32 20060101AFI20240625BHJP
A23G 1/54 20060101ALI20240625BHJP
A23G 9/48 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A23G1/32
A23G1/54
A23G9/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203730
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】397059157
【氏名又は名称】大東カカオ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大関 美波
(72)【発明者】
【氏名】寺井 悠晃
(72)【発明者】
【氏名】嶋▲崎▼ 恵里子
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB03
4B014GB04
4B014GE03
4B014GG06
4B014GG07
4B014GG11
4B014GG14
4B014GK07
4B014GL07
4B014GL10
4B014GP18
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、水分混入時の増粘が抑制された冷菓被覆用チョコレートを提供することである。
【解決手段】ショ糖エルカ酸エステル0.1~1.0重量%及びHLBが3~15のショ糖ステアリン酸エステル0.1~1.0重量%を含有する冷菓被覆用チョコレートとする。あるいは、(水添加後の粘度)÷(水添加後の粘度)の値が2.0未満である、前記冷菓被覆用チョコレートとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショ糖エルカ酸エステル0.1~1.0重量%及びHLBが3~15のショ糖ステアリン酸エステル0.1~1.0重量%を含有する冷菓被覆用チョコレート。
【請求項2】
(水添加後の粘度)÷(水添加前の粘度)の値が2.0未満である、請求項1に記載の冷菓被覆用チョコレート。
【請求項3】
請求項1ないし2のいずれか1項に記載の冷菓被覆用チョコレートによって被覆した冷菓。
【請求項4】
ショ糖エルカ酸エステル0.1~1.0重量%及びHLBが3~15のショ糖ステアリン酸エステル0.1~1.0重量%を配合する、冷菓被覆用チョコレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷菓の製造工程中に水分が混入することによるチョコレートの増粘が抑制された、冷菓被覆用チョコレートに関する。
【背景技術】
【0002】
アイスクリーム等の冷菓の製造では、風味付与や食感付与のため、冷菓をチョコレートで被覆することがよく行われている。そして、冷菓を被覆する際には、冷菓を融解したチョコレートの中にそのまま浸漬するため、冷菓から微量の水分がチョコレートに移行してしまうことは避けられない。そして、この水分移行のため、次第にチョコレートは増粘してしまい、均一な被覆が困難となり、あるいは、作業性が損なわれるという問題が生じていた。
【0003】
そこで、チョコレートの増粘抑制のために、乳化剤がよく用いられることがある。しかし、製造環境によってどの程度の水分がチョコレートに移行するかは異なり、一定量以上の水分が混入した場合にはその効果は不十分であった。想定を上回る量の水分が混入する場合もあり、より効果のある増粘抑制手段が求められていた。
【0004】
そこで、例えば、従来技術では、DE値が10~50である澱粉加水分解物、α化澱粉、難消化性デキストリン、ポリデキストロースからなる群から選ばれる1種類ないしは2種類以上を1~10重量%含有する、冷菓被覆用チョコレート類が知られている(特許文献1)。さらに、HLB5~9のショ糖脂肪酸エステルを0.05~0.5重量%含有させる、冷菓被覆用チョコレート類も知られている(特許文献1)。しかし、澱粉加水分解物、α化澱粉、難消化性デキストリン、ポリデキストロースを配合する技術では、これらを5重量%程度も配合しなければならないため、チョコレートの配合設計が制限される可能性があった。また、これらの素材は、ある程度の粒度を有する物質であるため、いずれもリファイニング(微粒化)工程の前に添加する必要があった。さらに、これらの素材はリファイナー(リファイニングを行う機械)に対する適性に欠けるため、あまり多く配合すると正常にリファイニングできないことがあった。そこで、配合自由度、製造自由度の高い、新しい増粘抑制手段が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、水分混入時の増粘が抑制された冷菓被覆用チョコレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題に対して鋭意研究した結果、意外にもチョコレート中に、特定の脂肪酸を有する2種類のショ糖脂肪酸エステルを併用することで、水分の混入による増粘が有意に抑制されることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明はすなわち、以下の態様を含み得る。
(1)ショ糖エルカ酸エステル0.1~1.0重量%及びHLBが3~15のショ糖ステアリン酸エステル0.1~1.0重量%を含有する冷菓被覆用チョコレート。
(2)(水添加後の粘度)÷(水添加前の粘度)の値が2.0未満である、(1)に記載の冷菓被覆用チョコレート。
(3)(1)ないし(2)に記載の冷菓被覆用チョコレートによって被覆した冷菓。
(4)ショ糖エルカ酸エステル0.1~1.0重量%及びHLBが3~15のショ糖ステアリン酸エステル0.1~1.0重量%を配合する、冷菓被覆用チョコレートの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冷菓をチョコレートで被覆する工程において、増粘による作業性の低下や目付量のバラつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例の冷菓被覆用チョコレートの配合及び評価結果に関する表である。
【
図2】実施例の冷菓被覆用チョコレートの配合及び評価結果に関する表である。
【
図3】実施例の冷菓被覆用チョコレートの配合及び評価結果に関する表である。
【
図4】実施例の冷菓被覆用チョコレートの配合及び評価結果に関する表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0012】
本発明における「冷菓被覆用チョコレート」とは、規約(「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」)ないし法規上の制約を受けるものではなく、ココアバター以外の動植物油脂を使用した各種チョコレートおよび油脂加工食品、チョコレート製品を包含する。チョコレートの調製は従来公知のチョコレートの製造方法で調製することができ、本発明の実施の形態のチョコレートは、例えば、油脂、カカオ成分、糖質、乳製品、乳化剤等を原料として、混合工程、微粒化工程(リファイニング)、精練工程(コンチング)、冷却工程等を経て製造することができる。また、本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくは微粒化工程を経て製造される。
【0013】
本発明の「冷菓被覆用チョコレート」に用いる油脂原料は特に限定されないが、大豆油、綿実油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、菜種油、米ぬか油、ゴマ油、カポック油、ヤシ油、パーム核油等の各種の植物油脂及びそれらの硬化油、分別油、エステル交換油等の加工油脂が例示でき、これらを適宜組み合わせて使用することができる。なお、当該冷菓被覆用チョコレート中の油分は任意であるが、好ましくは50~75重量%、より好ましくは55~70重量%、さらに好ましくは57~65重量%となるように配合する。このように油分を多くすることで、水分移行による増粘の影響を少なくすることができる。
【0014】
本発明の「冷菓」とは、冷凍温度域で喫食される菓子類であれば、特に限定されないが、代表的には「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」、いわゆる「乳等省令」で規定される、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、厚生省告示「食品、添加物等の規格基準」で規定される氷菓が挙げられる。
【0015】
本発明の冷菓被覆用チョコレートは、ショ糖エルカ酸エステル0.1~1.0重量%およびHLB値が3~15のショ糖ステアリン酸エステル0.1~1.0重量%を含有することが特徴である。ショ糖エルカ酸エステルについては、好ましくは、0.2~0.9重量%、より好ましくは0.3~0.8重量%、さらに好ましくは、0.4~0.7重量%含有する。また、HLB値が3~15のショ糖ステアリン酸エステルについては、好ましくは、0.2~0.9重量%、より好ましくは0.3~0.8重量%、さらに好ましくは、0.4~0.7重量%含有する。いずれの場合も、0.1重量%以上であると本発明の効果が十分に得られ、1.0重量%以下であると、食感や風味を損なうことがない。そして、これらを適量配合することで、具体的には、例えば、1.0重量%相当の水を添加して撹拌した後の粘度が、水添加前と比較して2.0倍以下に抑制されることを確認した。本発明においてはこれを「増粘倍率」として算出している。この範囲の増粘であれば実際の冷菓被覆工程において作業性の低下は見られなくなる。
【0016】
本発明の「ショ糖エルカ酸エステル」は、市販のものを用いることができる。例えば、例えば、リョートーシュガーエステルER-190及びリョートーシュガーエステルER-290(共に三菱ケミカル株式会社製)が挙げられる。ショ糖エルカ酸エステルとしてはHLBが0~3のものを用い、HLBが1~2がより好ましい。
【0017】
さらに、本発明の冷菓被覆用チョコレートには、「HLBが3~15のショ糖ステアリン酸エステル」が併用される。市販されているHLBが3~15のショ糖ステアリン酸エステルとしては、例えば、シュガーエステルS-1570,シュガーエステルS-770、及びシュガーエステルS-370(共に三菱ケミカル株式会社製)が挙げられる。さらに、HLBは、3~9が好ましく、3~7がより好ましく、3~5がさらに好ましい。HLBが3以上であれば増粘抑制効果が得られるが、HLB値が高い乳化剤をチョコレートに配合すると撹拌時に生じた気泡を保持しやすい傾向があり、冷菓被覆時に気泡が多いと均一な被覆が困難になるためHLB3~5が好ましい。
【0018】
本発明の冷菓被覆用チョコレートは、好ましくは糖質を含有する。なお、本発明で糖質とは、炭水化物から食物繊維を除いたもののことである。糖質の具体例は、糖類、糖アルコール(マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、ラクチトール、マンニトール、還元水飴等)、でんぷん、オリゴ糖、デキストリン等である。また、本発明で、糖類は、単糖類、二糖類(ブドウ糖、果糖、ガラクトース、砂糖(ショ糖)、乳糖、麦芽糖等)のことである。また、本発明で糖質は、糖質そのものであり、その他の原材料(例えば、粉乳等)に含まれる糖質は含めない。
本発明の冷菓被覆用チョコレートの製造に使用される糖質は、好ましくは糖類であり、より好ましくは砂糖、乳糖である。
本発明の冷菓被覆用チョコレートは、糖質を好ましくは20~50重量%含有し、より好ましくは25~45重量%含有し、さらに好ましくは30~40重量%含有する。
【0019】
本発明の冷菓被覆用チョコレートは、好ましくはカカオ成分を含有する。なお、本発明でカカオ成分とは、カカオ豆から得られるカカオ原料のうち、油脂以外の固形分含むカカオ原料のことである。カカオ成分の具体例は、カカオマス、ココアパウダー等である。
本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用されるカカオ成分は、好ましくはカカオマス、ココアパウダーである。
本発明の冷菓被覆用チョコレートは、カカオ成分を好ましくは0~20重量%含有し、より好ましくは0~15重量%含有し、さらに好ましくは1~13重量%含有する。
【0020】
本発明の冷菓被覆用チョコレートは、好ましくは粉乳を含有する。粉乳の具体例は、脱脂粉乳、全脂粉乳等である。本発明の冷菓被覆用チョコレートの製造に使用される粉乳は、好ましくは脱脂粉乳、全脂粉乳である。
本発明の冷菓被覆用チョコレートは、粉乳を好ましくは0~15重量%含有し、より好ましくは0~10重量%含有し、さらに好ましくは0~5重量%含有する。
【0021】
本発明の冷菓被覆用チョコレートは、好ましくはその他の乳化剤(ショ糖エルカ酸エステル、HLBが3~15のショ糖ステアリン酸エステル以外の乳化剤)を含有する。その他の乳化剤の具体例は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等である。本発明の冷菓被覆用チョコレートの製造に使用されるその他の乳化剤は、好ましくはレシチンである。
本発明の冷菓被覆用チョコレートは、その他の乳化剤を好ましくは0.1~1.0重量%、より好ましくは0.2~0.8重量%、さらに好ましくは、0.3~0.6重量%含有する。
【0022】
本発明の冷菓被覆用チョコレートは、その他にも、チョコレートに一般的に配合される原料を使用することができる。具体的には、例えば、大豆粉、大豆蛋白、果実加工品、野菜加工品、抹茶粉末、コーヒー粉末等の各種粉末、ガム類、澱粉類、酸化防止剤、着色料、香料、食塩等を使用することができる。
【0023】
本発明において、水分混入時の増粘が抑制されているかについては、一定量の水を添加したときの増粘倍率で評価することができ、増粘倍率は(水添加後の粘度)÷(水添加前の粘度)で算出することができる。
本発明の冷菓被覆用チョコレートは、(水添加後の粘度)÷(水添加前の粘度)が好ましくは2.0未満である。なお、本発明において、「水添加前の粘度」は水を添加する前の40℃におけるチョコレートの粘度のことであり、「水添加後の粘度」はチョコレートに1.0重量%相当量の水を添加した後の40℃におけるチョコレートの粘度のことである。また、本発明において、粘度は、BM型粘度計、2号ロータ、30rpmで測定したときの粘度である。
【実施例0024】
以下に実施例および比較例を記載し、本発明をより詳細に説明するが、これに限定されない。また、特に注釈がない限り、例中の%及び部は重量基準を意味する。
【0025】
<
図1:ショ糖ステアリン酸エステルのHLBの特定>
(チョコレートの調製)
図1に示す配合に従い、混合工程、微粒化工程(リファイニング)、精練工程(コンチング)等を経てすべての原材料を均一に混合し、チョコレートを調製した。ショ糖エルカ酸エステルおよびショ糖ステアリン酸エステルは調製後のチョコレートに添加し、撹拌して均一に混合した。なおショ糖ステアリン酸エステルの投入タイミングは微粒化工程の前であっても後であっても同等の効果が得られるため、精練工程終了後に限定されない。また、図中の原材料はそれぞれ以下を用いた。
・ショ糖エルカ酸エステル(HLB2):三菱ケミカル株式会社製「シュガーエステルER-290」
・ショ糖ステアリン酸エステル(HLB15):三菱ケミカル株式会社製「シュガーエステルS-1570」
・ショ糖ステアリン酸エステル(HLB7):三菱ケミカル株式会社製「シュガーエステルS-770」
・ショ糖ステアリン酸エステル(HLB3):三菱ケミカル株式会社製「シュガーエステルS-370」
・ショ糖ステアリン酸エステル(HLB2):三菱ケミカル株式会社製「シュガーエステルS-270」
・ショ糖ステアリン酸エステル(HLB0):三菱ケミカル株式会社製「シュガーエステルS-070」
【0026】
(増粘テスト)
冷菓被覆工程中の微量の水分混入による粘度変化の評価系として、以下を設定した。
チョコレートを加温融解し、薬さじを用いて撹拌しながら品温を40℃に調整し、まずここで水添加前の粘度を測定した(条件:BM型粘度計、2号ロータ、30rpm:以降注釈がない限り同じ)。続いてここに1.0重量%相当量の水を一度に添加し、同様に薬さじを用いて撹拌しながら品温を40℃に調整し、水添加後の粘度を測定した。
【0027】
(評価基準)
増粘倍率=(水添加後の粘度)÷(水添加前の粘度)として算出し、2.0未満である場合を合格(〇)と評価した。他方、2.0以上である場合は、不合格(×)と評価した。
【0028】
(結果)
図1に示す通り、ショ糖エルカ酸エステルにHLBが3~15のショ糖ステアリン酸エステルを組合せることによって(実施例1~3)、HLBが0又は2のショ糖ステアリン酸エステルを組み合わせた場合と比べて(比較例1~2)、水分混入時の増粘が有意に抑制できることがわかった。
【0029】
<
図2、
図3:乳化剤の組み合わせ>
(チョコレートの調製)
図2、
図3に示す配合に従い、混合工程、微粒化工程(リファイニング)、精練工程(コンチング)等を経てすべての原材料を均一に混合し、チョコレートを調製した。ショ糖エルカ酸エステルおよびショ糖ステアリン酸エステル等の乳化剤は調製後のチョコレートに添加し、撹拌して均一に混合した。なおショ糖ステアリン酸エステルの投入タイミングは微粒化工程の前であっても後であっても同等の効果が得られるため、精練工程終了後に限定されない。また、図中の原材料はそれぞれ以下を用いた。
・ショ糖エルカ酸エステル(HLB2):三菱ケミカル株式会社製「シュガーエステルER-290」
・ショ糖ステアリン酸エステル(HLB3):三菱ケミカル株式会社製「シュガーエステルS-370」
・ポリグリセロールリシノレート(HLB測定不可):理研ビタミン株式会社製「ポエムPR-400」
・ソルビタントリベヘネート(HLB2.5):理研ビタミン株式会社製「ポエムB-150」
・ソルビタントリステアレート(HLB2.1):花王株式会社製「エマゾールS-30V」
・ショ糖べへニン酸エステル(HLB3):三菱ケミカル株式会社製「シュガーエステルB-370」
【0030】
増粘テスト及び評価基準は、
図1のときと同じ条件で行った。
【0031】
(結果)
図2、
図3に示す通り、ショ糖エルカ酸エステルとHLBが3~15のショ糖ステアリン酸エステルとの組み合せのみが、水分混入時の増粘を有意に抑制できることがわかった。他方、HLBが3~15のショ糖ステアリン酸エステルを他の乳化剤に代えて実験したところ、水分混入時の増粘を有意に抑制することができなかった(比較例3~5及び12)。特に、同じ種類であるショ糖脂肪酸エステルを用いた場合であっても、脂肪酸の種類を変えてしまうと、水分混入時の増粘を有意に抑制することができないことから、本発明の特定の乳化剤の組み合わせのみに、所望の効果のあることがわかった(比較例12)。なお、必須の構成であるショ糖エルカ酸エステルを外した乳化剤の組み合わせもいくつか試してみたが、本発明と同等の効果を奏することはなかった(比較例6~11)。
【0032】
<
図4:乳化剤の添加量>
(チョコレートの調製)
図4に示す配合に従い、
図2と同じ方法で調整した。なお図中の原材料はそれぞれ以下を用いた。
・ショ糖エルカ酸エステル(HLB2):三菱ケミカル株式会社製「シュガーエステルER-290」
・ショ糖ステアリン酸エステル(HLB3):三菱ケミカル株式会社製「シュガーエステルS-370」
【0033】
増粘テスト及び評価基準は、
図1のときと同じ条件で行った。
【0034】
(結果)
図4に示す通り、ショ糖エルカ酸エステルを0.1~1.0重量%、HLBが3~15のショ糖ステアリン酸エステルを0.1~1.0重量%含有させた場合に、水分混入時の増粘を有意に抑制できることが明らかになった(実施例5~7)。他方、ショ糖エルカ酸エステル、HLBが3~15のショ糖ステアリン酸エステルのいずれか又は両方を含有させない場合は、水分混入時の増粘を有意に抑制することができなかった(比較例13~15)。また、ショ糖エルカ酸エステルおよびショ糖エルカ酸エステルの含有量が少ない場合においても、水分混入時の増粘を有意に抑制することができなかった(比較例16)。