(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088555
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/53 20060101AFI20240625BHJP
A61F 13/532 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A61F13/53 300
A61F13/532 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203795
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野本 貴志
(72)【発明者】
【氏名】木村 明寛
(72)【発明者】
【氏名】出谷 耕
(72)【発明者】
【氏名】野口 貴司
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 友美
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA01
3B200BA02
3B200BA03
3B200BA04
3B200BA09
3B200BA10
3B200BA14
3B200BB01
3B200BB03
3B200BB10
3B200BB11
3B200CA11
3B200DB02
3B200DB04
3B200DB12
(57)【要約】
【課題】着用時における快適性を向上させた吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収層(10)を備えた吸収性物品(1)であって、吸収層(10)は、複数の繊維によって形成された空隙を有する不織布、又は複数の空孔を有する高分子フォームであり、股下領域が蒸留水を吸収する前の重量を吸収前重量とし、股下領域を蒸留水に60秒間浸漬させた後、蒸留水から引き上げて90秒間ぶら下げた後の股下領域の重量を吸収後重量とし、吸収後重量から吸収前重量を減じた値を蒸留水の吸収重量としたとき、吸収重量を、吸収前重量で除した値が5以上であり、吸収層(10)を厚さ方向に3等分し、最も肌側の領域を肌側領域、最も非肌側の領域を非肌側領域、肌側領域と非肌側領域との間を中間領域としたとき、空隙又は空孔の非肌側領域の狭さが、肌側領域の狭さより狭く、股下領域のKES法における曲げヒステリシス2HBが、3.5gf・cm
2/cm以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
展開状態において、長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、
液体の吸収が可能な吸収層を備えた吸収性物品であって、
前記吸収層は、複数の繊維によって形成された空隙を有する不織布、又は複数の空孔を有する高分子フォームであり、
着用時に着用者の股下に位置する股下領域において、
前記股下領域が蒸留水を吸収する前の重量を吸収前重量とし、
前記股下領域を蒸留水に60秒間浸漬させた後、前記蒸留水から引き上げて90秒間ぶら下げた後の前記股下領域の重量を吸収後重量とし、
前記吸収後重量から前記吸収前重量を減じた値を前記蒸留水の吸収重量としたとき、
前記吸収重量を、前記吸収前重量で除した値が、5以上であり、
前記吸収層を前記厚さ方向に3等分し、最も肌側の領域を肌側領域、最も非肌側の領域を非肌側領域、前記肌側領域と前記非肌側領域との間を中間領域としたとき、
前記空隙又は前記空孔の前記非肌側領域の狭さが、前記肌側領域の狭さより狭く、
前記股下領域のKES法における曲げヒステリシス2HBが、3.5gf・cm2/cm以下である
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記肌側領域の親水性が、前記非肌側領域の親水性より低いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
少なくとも前記非肌側領域には、親水性を高めるための薬剤が設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収層の前記股下領域におけるKES法における曲げ剛性Bが、2.0gf・cm2/cm以下であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収層の厚みが、4mm以下であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収層は、変形を誘導するための変形誘導部を備えることを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収層の所定領域中の前記空隙又は前記空孔の割合を定量的に評価するための割合評価試験における前記非肌側領域の前記空隙又は前記空孔の割合が、
前記割合評価試験における前記肌側領域の前記空隙又は前記空孔の割合より小さいことを特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収層の前記股下領域のKES法における圧縮特性の直線性LCが、0.6以上であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収層の前記股下領域のKES法における圧縮レジリエンスRCが、38%以上であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収層の前記長手方向の長さを、前記吸収層の前記長手方向の長さの1.3倍の長さとなるまで伸長させるための力の大きさを測定する伸長試験において、
前記吸収層の前記伸長試験の10回目の測定による力の大きさの値を、前記吸収層の前記伸長試験の1回目の測定による力の大きさの値で除した値が、50%以上であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記吸収層の通気抵抗値が、0.32kpa・s/m以下であることを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生理用ナプキン、使い捨ておむつ、吸収パッド等の吸収性物品が知られている。例えば、特許文献1には、肌当接面側に配置される表面シートと、非肌当接面側に配置される裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配置される吸収体を有する生理用ナプキンが開示されている。特許文献1の吸収体はパルプ繊維等から形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等の生理用ナプキン等の吸収性物品は、吸収性物品として着用状態における排泄物の吸収に十分な液体の吸収量を備えつつ、着用時の着用者の身体の形状や動きに対する吸収性物品の追従性の向上や、排泄物を吸収した後の不快感の軽減など、着用時における快適性の向上が求められている。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、着用時における快適性を向上させた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、展開状態において、長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、液体の吸収が可能な吸収層を備えた吸収性物品であって、前記吸収層は、複数の繊維によって形成された空隙を有する不織布、又は複数の空孔を有する高分子フォームであり、着用時に着用者の股下に位置する股下領域において、前記股下領域が蒸留水を吸収する前の重量を吸収前重量とし、前記股下領域を蒸留水に60秒間浸漬させた後、前記蒸留水から引き上げて90秒間ぶら下げた後の前記股下領域の重量を吸収後重量とし、前記吸収後重量から前記吸収前重量を減じた値を前記蒸留水の吸収重量としたとき、前記吸収重量を、前記吸収前重量で除した値が、5以上であり、前記吸収層を前記厚さ方向に3等分し、最も肌側の領域を肌側領域、最も非肌側の領域を非肌側領域、前記肌側領域と前記非肌側領域との間を中間領域としたとき、前記空隙又は前記空孔の前記非肌側領域の狭さが、前記肌側領域の狭さより狭く、前記股下領域のKES法における曲げヒステリシス2HBが、3.5gf・cm2/cm以下であることを特徴とする吸収性物品である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、着用時における快適性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】生理用ナプキン1を肌側から見た平面図である。
【
図4】ナプキン1の吸収層10について説明する図である。
【
図5】
図5Aは、肌側層2の断面を模式的に示した図である。
図5Bは、非肌側層3の断面を模式的に示した図である。
【
図6】
図4中のB-B矢視概略断面を模式的に示した図である。
【
図7】馬血を滴下後30分経過のナプキン1を説明する図である。
【
図8】
図8Aは、ナプキン1の股下領域Mの吸収試験の測定結果を示す図である。
図8Bは、吸収層10のKES法による曲げ特性の測定結果を示す図である。
図8Cは、吸収層10のKES法による圧縮特性の測定結果を示す図である。
【
図10】空隙Zにおける狭さの評価方法の概要について説明する図である。
【
図11】吸収層10の伸長試験の測定結果を示す図である。
【
図12】第1実施形態の変形例のナプキン100を説明する図である。
【
図13】ナプキン100の肌側層2の股下領域Mの概略断面を模式的に示した図である。
【
図14】ナプキン300を肌側から見た平面図である。
【
図15】ナプキン300の構成を説明する図である。
【
図16】吸収部材33の一部を拡大して説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
(態様1)
展開状態において、長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、液体の吸収が可能な吸収層を備えた吸収性物品であって、前記吸収層は、複数の繊維によって形成された空隙を有する不織布、又は複数の空孔を有する高分子フォームであり、着用時に着用者の股下に位置する股下領域において、前記股下領域が蒸留水を吸収する前の重量を吸収前重量とし、前記股下領域を蒸留水に60秒間浸漬させた後、前記蒸留水から引き上げて90秒間ぶら下げた後の前記股下領域の重量を吸収後重量とし、前記吸収後重量から前記吸収前重量を減じた値を前記蒸留水の吸収重量としたとき、前記吸収重量を、前記吸収前重量で除した値が、5以上であり、前記吸収層を前記厚さ方向に3等分し、最も肌側の領域を肌側領域、最も非肌側の領域を非肌側領域、前記肌側領域と前記非肌側領域との間を中間領域としたとき、前記空隙又は前記空孔の前記非肌側領域の狭さが、前記肌側領域の狭さより狭く、前記股下領域のKES法における曲げヒステリシス2HBが、3.5gf・cm2/cm以下であることを特徴とする吸収性物品である。
【0010】
態様1の吸収性物品によれば、吸収重量を吸収前重量で除した値を5以上とすることで、吸収重量を吸収前重量で除した値が5より小さい場合よりも吸収性物品として十分な排泄物の吸収を可能としつつ、空隙又は空孔について、非肌側領域の狭さを肌側領域の狭さより狭くすることで、毛細管現象によって、肌側領域の肌側面で吸収した排泄物を肌側領域から非肌側領域に引き込みやすくし、非肌側領域内で拡散させて、着用者の肌から排泄物を遠ざけることで肌触りを向上させることができる。さらに、着用状態で着用者の身体や動きによって股下領域が変形した場合でも、吸収性物品の股下領域の曲げヒステリシス2HBを3.5gf・cm2/cm以下とすることで、股下領域の曲げヒステリシス 2HBを3.5gf・cm2/cmより大きくした場合よりも股下領域の回復性を良くすることができ、股下領域の変形による違和感を軽減させたり、着用者の身体や動きに追従させやすくして、着用時における快適性を向上させることができる。
【0011】
(態様2)
前記肌側領域の親水性が、前記非肌側領域の親水性より低い、態様1に記載の吸収性物品である。
【0012】
態様2の吸収性物品によれば、肌側領域の肌側から吸収した排泄物の非肌側領域への拡散を促しやすくなるため、着用状態において、排泄物を着用者の肌から非肌側に遠ざけやすくなり、着用者の肌に排泄物が当接し続ける恐れを軽減させて、着用状態における着用者の快適性を向上させることができる。
【0013】
(態様3)
少なくとも前記非肌側領域には、親水性を高めるための薬剤が設けられている、態様1又は2に記載の吸収性物品である。
【0014】
態様3の吸収性物品によれば、非肌側領域への拡散を促しやすくなるため、着用状態において、排泄物を着用者の肌から非肌側に遠ざけやすくなり、着用者の肌に排泄物が当接し続ける恐れを軽減させて、着用状態における着用者の快適性を向上させることができる。
【0015】
(態様4)
前記吸収層の前記股下領域におけるKES法における曲げ剛性Bが、2.0gf・cm2/cm以下である、態様1から3のいずれかに記載の吸収性物品である。
【0016】
態様4の吸収性物品によれば、吸収層の曲げ剛性Bが2.0gf・cm2/cmより大きい場合よりも、吸収性物品を柔軟にすることができるため、着用状態において吸収性物品を着用者の身体や動きに追従させやすくなり、着用状態の快適性を向上させることができる。
【0017】
(態様5)
前記吸収層の厚みが、4mm以下である、態様1から4のいずれかに記載の吸収性物品である。
【0018】
態様5の吸収性物品によれば、一般的に吸収層の厚みが厚いほど、吸収層が硬くなりやすいことから、吸収層の厚みを4mmより大きくした場合よりも、吸収性物品を柔軟にすることができるため、着用状態において吸収性物品を着用者の身体や動きに追従させやすくなり、着用状態の快適性を向上させることができる。
【0019】
(態様6)
前記吸収層は、変形を誘導するための変形誘導部を備える、態様1から5のいずれかに記載の吸収性物品である。
【0020】
態様6の吸収性物品によれば、変形誘導部によって吸収層を変形させやすくなるため、着用状態において吸収層を着用者の身体や動きに追従させやすくなり、着用状態の快適性を向上させることができる。
【0021】
(態様7)
前記吸収層の所定領域中の前記空隙又は前記空孔の割合を定量的に評価するための割合評価試験における前記非肌側領域の前記空隙又は前記空孔の割合が、前記割合評価試験における前記肌側領域の前記空隙又は前記空孔の割合より小さい、態様1から6のいずれかに記載の吸収性物品である。
【0022】
態様7の吸収性物品によれば、毛細管現象によって、肌側領域よりも非肌側領域に排泄物を引き込みやすくなり、肌側層の肌側から吸収した排泄物を非肌側層に拡散させやすくなるため、肌側層の表面に排泄物が残存する恐れを軽減させて、着用者の肌から排泄物を遠ざけることで、着用状態の快適性を向上させることができる。
【0023】
(態様8)
前記吸収層の前記股下領域のKES法における圧縮特性の直線性LCが、0.6以上である、態様1から7のいずれかに記載の吸収性物品である。
【0024】
態様8の吸収性物品によれば、吸収層の圧縮特性の直線性LCが0.6より小さい場合よりも、肌側層を圧縮剛くすることができるため、吸収部材の変形を軽減させることができるため、吸収部材の変形により着用者に与える違和感を軽減させたり、吸収部材から液体が漏れる恐れを軽減させたりすることができる。
【0025】
(態様9)
前記吸収層の前記股下領域のKES法における圧縮レジリエンスRCが、38%以上である、態様1から8のいずれかに記載の吸収性物品である。
【0026】
態様9の吸収性物品によれば、吸収層の圧縮レジリエンスが38%より小さい場合よりも、着用状態において、吸収層を着用者の身体や動きによって吸収層が変形した場合でも、着用状態における吸収層の形状を元に戻しやすくなるため、着用者の身体にフィットした状態にさせやすくなる。
【0027】
(態様10)
前記吸収層の前記長手方向の長さを、前記吸収層の前記長手方向の長さの1.3倍の長さとなるまで伸長させるための力の大きさを測定する伸長試験において、前記吸収層の前記伸長試験の10回目の測定による力の大きさの値を、前記吸収層の前記伸長試験の1回目の測定による力の大きさの値で除した値が、50%以上である、態様1から9のいずれかに記載の吸収性物品である。
【0028】
態様10の吸収性物品によれば、伸長試験の10回目の測定による力の大きさの値を1回目の測定による力の大きさの値で除した値が50%以上であることで、伸長試験の10回目の測定による力の大きさの値を1回目の測定による力の大きさの値で除した値が50%より小さい場合よりも、着用状態でも肌側層と非肌側層の破損を軽減させつつ、着用者の身体の形状や動きに追従しやすい吸収性物品とすることができる。
【0029】
(態様11)
前記吸収層の通気抵抗値が、0.32kpa・s/m以下である、態様1から10のいずれかに記載の吸収性物品である。
【0030】
態様11の吸収性物品によれば、通気抵抗値が0.32kpa・s/mより大きい場合よりも吸収性物品の通気性を向上させることができるため、吸収性物品の着用者の不快感を軽減させることができる。
【0031】
===実施形態===
本発明に係る吸収性物品として、生理用ナプキン(以下「ナプキン」とも呼ぶ)を例に挙げて実施形態を説明する。但し、本発明に係る吸収性物品は、大人用又は乳幼児用のパンツ型使い捨ておむつやテープ型使い捨ておむつ、生理用ショーツ、生理用ナプキン、軽失禁パッド、吸収パッド、動物用の使い捨ておむつや吸収シート、ドリップシート等であってもよい。なお、ドリップシート等の場合には、以下の実施形態の「着用状態」は、「使用状態」となり、着用者は、「使用者等」となる。以下、着用状態を「使用状態」ともいい、着用者を「使用者等」ともいう。
【0032】
===第1実施形態===
<<<生理用ナプキン1の構成>>>
図1は、生理用ナプキン1(以下「ナプキン」とも呼ぶ)を肌側から見た平面図である。
図2は、ナプキン1のA-A矢視概略断面図である。
図3は、ナプキン1の構成を説明する図である。
図3は、ナプキン1の各部材を厚さ方向に分解して示した模式図であり、各部材同士を固定する接着剤や各部材の厚み等の詳細な構成を省略して示している。ナプキン1は、互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向を有する。厚さ方向において着用者の肌に当接する側が肌側であり、その反対側が非肌側である。
図1等に示す中心線C-Cは、幅方向におけるナプキン1の中心(中央位置)を示している。
【0033】
ナプキン1は、肌側層2、非肌側層3、バックシート4、及びサイドシート5を有する。
図3等に示すように、ナプキン1は、厚さ方向において、肌側から順に、サイドシート5、肌側層2、非肌側層3、バックシート4の順で重ねられている。厚さ方向に重ねられた各部材同士は、ホットメルト接着剤等の接着剤で固定されている。
【0034】
肌側層2は、ナプキン1の幅方向の中央部において、最も肌側に位置する肌側シートであり、着用状態において、排泄口に当接して、排泄口から排出された排泄物を受け止める吸収部材である。肌側層2は、長手方向に長い略長方形状であり、長手方向の長さL2が、幅方向の長さW2より長い。肌側層2をナプキン1の着用状態における着用者の股間位置に設けることで、ナプキン1が排泄物を吸収した場合に、肌側層2が排泄物を吸収し、吸収した排泄物を非肌側層3に向けて拡散させることができる。そのため、ナプキン1から排泄物が漏れたり、排泄物が肌側層2の表面等で局所的に留まることによる着用者に与える不快感を軽減させることができる。
【0035】
非肌側層3は、厚さ方向の肌側層2とバックシート4との間に設けられた非肌側シートであり、非肌側層3は、平面視において肌側層2の大きさより一回り小さい。非肌側層3は、長手方向に長い略長方形状であり、長手方向の長さL3が、幅方向の長さW3より長い。非肌側層3は、肌側層2が吸収した排泄物を吸収し、排泄物を保持する吸収部材である。非肌側層3をナプキン1の着用状態における着用者の股間位置に設けることで、ナプキン1が排泄物を吸収した場合に、非肌側層3が排泄物を吸収し、非肌側層3内で排泄物を拡散させることができる。そのため、ナプキン1から排泄物が漏れたり、排泄物が肌側層2の表面等で局所的に留まることによる着用者に与える不快感を軽減させることができる。
【0036】
肌側層2及び非肌側層3は、それぞれ、潜在捲縮繊維2f及び潜在捲縮繊維3f(
図5参照)で構成された不織布(不織布シート)である。本実施形態の肌側層2及び非肌側層3は、潜在捲縮繊維のみ(潜在捲縮繊維が100%)で形成された不織布である。ただし、肌側層2及び非肌側層3を構成する層(不織布)が、潜在捲縮繊維に加えて、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリエステル(PETやPBT)、ポリアミド等からなる繊維、及びこれらの複合繊維の他、レーヨン、パルプ、コットン等の親水性の繊維等を用いてもよい。以下、潜在捲縮繊維2f及び潜在捲縮繊維3fを、単に「繊維2f」、「繊維3f」ともいう。
【0037】
「不織布」とは、繊維シート,ウェブ又はバットで,繊維が一方向又はランダムに配向しており,交絡,及び/又は融着,及び/又は接着によって繊維間が結合されたものである(JIS L0222:2001 不織布用語101)。つまり、不織布は、繊維を織ることなく一体化された布であり、破断強度が5[N]/25mm以上のシートである。破断強度は、周知の方法で測定することができ、例えば、以下の方法によって測定できる。最大荷重容量が50Nであるロードセルを備えた引張試験機(島津製作所株式会社製:オートグラフ、AGS-1kNG)を使用する。不織布シートの分離強度を測定する際は、一方のチャックで不織布シートの長手方向又は短手方向の一方側の先端部を把持し、他方のチャック不織布シートの他方側を把持する。引張試験機で、二つのチャックの間隔が拡がるよう、二つのチャックを一定速度(例示:100mm/min)で引っ張りつつ、2つのチャックに掛かる荷重を測定する。不織布シートが破断したときの荷重を破断強度とする。
【0038】
不織布としては、例えば、メルトブローン法により得られた不織布(メルトブローン不織布)、エレクトロスピニング法により得られた不織布(エレクトロスピニング不織布)、スパンボンド法により得られた不織布(スパンボンド不織布)、エアスルー法で製造された不織布(エアスルー不織布)、スパンレース法により製造された不織布(スパンレース不織布)、若しくはニードルパンチ法により製造された不織布(ニードルパンチ不織布)、又はこれらの不織布のうちの2種以上の不織布の積層体、若しくはこれらの不織布とそれ以外の不織布やその他の材料との積層体などが挙げられる。本実施形態の肌側層2及び非肌側層3は、それぞれ、接着剤を用いておらず、水流によって繊維同士が交絡したスパンレース不織布である。
【0039】
本実施形態のナプキン1の肌側層2の不織布シートは、下記の工程を経るスパンレース法で形成している。
(a)まず、親水性の繊維2fb(後述の非肌側領域Rdの少なくとも一部を形成する繊維2f)をカード機等により処理をしてカードウェブ等の形態を有する非肌側繊維ウェブを形成する。
(b)続いて、疎水性の繊維2fa(肌側領域Ruの少なくとも一部を形成する繊維2f)をカード機等により処理をしてカードウェブ等の形態を有する肌側繊維ウェブを、非肌側繊維ウェブを搬送しながら、非肌側繊維ウェブ上に供給し、積層して、積層ウェブを得る。
(c)積層ウェブの厚さ方向における肌側から非肌側に向かってウォータージェット等の高圧水流処理を施すことによって、各繊維層間の繊維同士及び各ウェブの繊維同士を交絡させて、積層体を得る。
(d)最後に、積層体を乾燥機に投入して、積層体を潜在捲縮性繊維の捲縮可能な温度に加熱することで、一体化した不織布シート(肌側層2)を得る。この不織布シートは、複数の繊維2fによって形成された空隙を有する。
【0040】
本実施形態のナプキン1の非肌側層3の不織布シートも肌側層2の不織布シートと同様の方法で形成している。ただし、非肌側層3の不織布シートは、疎水性の繊維を用いておらず、親水性の繊維3fのウェブをのみを積層する点が肌側層2と異なっている。
【0041】
潜在捲縮繊維2f、3fは、加熱処理により捲縮して螺旋形状を発現する繊維である。潜在捲縮性繊維には、例えば、高収縮成分と低収縮成分が並列に配置されたサイド・バイ・サイド型複合繊維や、高収縮成分を芯、低収縮成分を鞘とし、両成分の重心が一点に重ならない芯鞘型に配置された偏芯鞘型複合繊維がある。潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させると、潜在捲縮性繊維は、例えばコイル状に捲縮する。
【0042】
潜在捲縮繊維2f、3fを形成する熱収縮率又は熱膨張率の異なる複数の樹脂としては、互いに熱収縮率または熱膨張率が異なる樹脂の組み合わせであれば、特に限定なく用いられ、同系又は単一の樹脂の組み合わせや、異系の樹脂の組み合わせであってもよい。この潜在捲縮繊維を形成するための熱収縮率又は熱膨張率が異なる樹脂の組み合わせの具体例としては、例えば、ポリエステル系樹脂同士の組み合わせやポリアミド系樹脂同士の組み合わせの潜在捲縮性繊維を採用することができる。
【0043】
本実施形態の肌側層2及び非肌側層3の不織布は、ポリエステル系樹脂(単一成分の樹脂)同士の組み合わせであり、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)と変性PETとの組み合わせの潜在捲縮性繊維を用いている。なお、変性PETは、PETの構成成分であるエチレングリコールおよびテレフタル酸に、少量成分として、エチレングリコール以外のジオール成分またはテレフタル酸以外のジカルボン酸成分を共重合することにより変性されたPETである。エチレングリコール以外のジオール成分の具体例としては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど等が挙げられる。またテレフタル酸以外のジカルボン酸成分の具体例としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。そして、カード機などのウェブ形成手段でPETと変性PETとの組み合わせの潜在捲縮性繊維からなるウェブを形成し、このウェブに対してスパンレース法で繊維同士を交絡させて不織布状態とし、これを所定温度に加熱して潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させることにより、肌側層2及び非肌側層3の不織布が作製される。これによって、加熱前の不織布状態の潜在捲縮性繊維の坪量よりも、加熱後の不織布の潜在捲縮繊維の坪量の方が大きくなる。つまり、潜在捲縮性繊維の捲縮によって不織布が縮み、繊維の坪量が大きくなる。
【0044】
肌側層2及び非肌側層3は、それぞれ、液透過性を有し、液体の吸収機能、且つ液体の保持機能を有する所定の厚みを有する吸収層10である。本実施形態では、肌側層2と非肌側層3とを吸収層10として説明する。
図4は、ナプキン1の吸収層10について説明する図である。ナプキン1において、肌側層2は、着用者の肌に当接する肌側シートであり、着用状態で、まず最初に排泄物を受け止める部材で、受け止めた排泄物を肌側層2内で吸収し、且つ、非肌側に向かって透過させる部材である。非肌側層3は、肌側層2から透過された排泄物を吸収し、保持する部材である。
【0045】
図5に示すように、肌側層2及び非肌側層3は、それぞれ複数の繊維(潜在捲縮繊維)2f、3fによって形成された空隙を備える。
図5Aは肌側層2の断面を模式的に示した図であり、
図5Bは非肌側層3の断面を模式的に示した図であり、寸法等は必ずしも正確ではない。なお、肌側層2及び非肌側層3における空隙は、非連続(複数の繊維)の繊維と繊維の間における空隙であってもよく、1本の連続した繊維が湾曲したり、螺旋状となることで形成された空隙であってもよく、これらの組み合わせによる空隙であってもよい。複数の繊維2f、3fによって形成された空隙とは、肌側層2、非肌側層3のうち、複数の繊維2f、3fが設けられていない空間・領域をいう。なお、空隙には、繊維2f、3fに囲まれた空間、又は繊維によって閉じられた空間だけでなく、繊維2f、3fによって形成された空隙の少なくとも一部開かれた空間であってもよい。
【0046】
肌側層2及び非肌側層3は、それぞれ潜在捲縮繊維2f、3fを有するため、繊維2f、3fの捲縮によって繊維2f、3fと繊維2f、3fの間を縫うように、絡み合うように螺旋形状を成している。例えば、繊維2f、3fと繊維2f、3fの間の距離が捲縮によって縮まったり、距離が縮められた繊維2f、3fと繊維2f、3fの間に、別の繊維が入りこみ、さらに繊維2f、3fと繊維2f、3fの間の空隙が小さくなる。そのため、潜在捲縮繊維を含む繊維2f、3fで形成された空隙は、捲縮していない繊維で形成された一般的な不織布における複数の繊維で形成された空隙よりも小さい。
【0047】
また、肌側層2及び非肌側層3にそれぞれ設けられた潜在捲縮繊維2f、3fは、その繊維自体には液体が吸収されにくい。例えば、パルプ繊維等のような繊維では液体(排泄物)を吸収して繊維の太さが太くなるが、肌側層2及び非肌側層3の潜在捲縮繊維2f、3fは、液体と接触しても、その繊維の内側には液体を吸収しづらい。そのため、肌側層2及び非肌側層3では、着用状態において、ナプキン1が排泄物を吸収した場合でも、肌側層2と非肌側層3の潜在捲縮繊維2f、3fは、繊維自体の太さが太くなりにくい。繊維自体の太さが太くなりにくいことで、繊維2f、3fによって形成された空隙の大きさが小さくなりにくく、空隙が潰れにくくなる。このことから、肌側層2及び非肌側層3では、繊維2f、3fによって形成された空隙に液体(排泄物)を保持することができるため、肌側層2及び非肌側層3は、それぞれ、液体の透過が可能である層であるとともに、液体の吸収と保持が可能な層である。また、肌側層2及び非肌側層3は、それぞれ繊維2f、3fで形成された不織布シートであり、繊維2f、3fによって形成された空隙を有することから、通気性にも優れており、着用状態における着用者に与える蒸れや肌荒れを軽減させて、着用状態の快適性を向上させることができる。
【0048】
上述のとおり、肌側層2における潜在捲縮繊維2fは、PETと変性PETとの組み合わせの潜在捲縮性繊維であり、全域において、同じ太さの繊維を用いている。本実施形態では、潜在捲縮繊維2faの太さを2.2dtexとしている。また、肌側層2の空隙の平均狭さは104μmである。そして、肌側層2における空隙の割合(肌側層2のうち、繊維2fが設けられていない領域の割合)は、94%である。肌側層2の坪量は、約170gsmである。また、肌側層2において、肌側には疎水性の繊維を用い、非肌側には親水性の繊維を用いることが好ましい。
【0049】
非肌側層3における潜在捲縮繊維3fは、全てPETと変性PETとの組み合わせの潜在捲縮性繊維であり、厚さ方向における全域に同じ太さの繊維を用いている。本実施形態の非肌側層3における潜在捲縮繊維3fの太さを2.2dtexとしている。非肌側層3の坪量は、約120gsmである。非肌側層3の繊維3fの坪量は、80gsm以上であり、且つ、200gsm以下であることが好ましい。
【0050】
非肌側層3は、周囲(低密度部DL)よりも繊維3fの密度が高い線状の高密度部DHと、高密度部DHよりも繊維3fの密度が低い低密度部DLを有する。高密度部DHは、周囲(低密度部DL)よりも厚みが薄く、且つ繊維が互いに融着されていない部分である。
【0051】
バックシート4は、非肌側層3より非肌側に配置された液不透過性のシート(外層)である。液不透過性のシートとしては、ポリエチレン(PE)の樹脂フィルム等を例示できる。サイドシート5は、肌側層2の肌側面の幅方向の両側部から外側に延出したシートである。サイドシート5としては、疎水性のエアスルー不織布や疎水性のスパンボンド不織布等を例示できる。
【0052】
また、ナプキン1は、長手方向の略中央部において、幅方向の外側に延出した一対のウィング部1wを有する。ウィング部1wは、サイドシート5とバックシート4によって形成されている。なお、ナプキン1が、必ずしもウィング部1wを備えてなくてもよい。ナプキン1がウィング部1wを備えない場合には、サイドシート5を備えていてもよく、サイドシート5を備えなくてもよい。
【0053】
また、ナプキン1は、肌側層2と非肌側層3とがその厚さ方向に窪んでいる圧搾部20を有している。圧搾部20によって、肌側層2と非肌側層3との位置を固定させたり、ナプキン1の液拡散性を向上させたりすることができる。
【0054】
圧搾部20では、周囲に比べてナプキン1の厚みが薄く、ナプキン1(肌側層2及び非肌側層3)の繊維密度が高くなっている。これらの比較は周知の方法で行うとよい。ナプキン1の厚みの比較としては、目視で比較する方法や、ミツトヨ(株)製のダイアルシックネスゲージID-C1012C又はそれと同等のものを使用し、対象部位を例えば3.0gf/cm
2で加圧して測定した値を取得して比較する方法を例示できる。ナプキン1の密度の比較としては、ナプキン1を厚さ方向に切った断面を電子顕微鏡等で拡大した画像に基づき比較する方法を例示できる。また、圧搾部20の形状は
図1に示すものに限定されない。例えば複数の点状圧搾部が離散的に配置されたものでもよい。
【0055】
<<<吸収層10について>>>
上述の通り、吸収層10は、液体の吸収機能、且つ液体の保持機能を有する所定の厚みを有したナプキン1に用いられる吸収体でもある。つまり、肌側層2は、液体の吸収を可能とし、且つ、液体の保持を可能する。非肌側層3は、液体の吸収を可能とし、液体の保持を可能とする。そして、ナプキン1では、肌側層2と非肌側層3を、厚さ方向に重ね合わせた状態で吸収体として用いる。ナプキン1の吸収層10は、潜在捲縮繊維を含む繊維2f、3fを備えた2つの不織布シートで構成されている。吸収層10は、複数の繊維2f、3fによって形成された空隙を有している。具体的には、肌側層2は、潜在捲縮繊維を備えた複数の繊維2fを有し、繊維2fによって形成された空隙を有している。非肌側層3は、潜在捲縮繊維を備えた複数の繊維3fを有し、繊維3fによって形成された空隙を有している。
【0056】
肌側層2は、厚さH2の不織布シートであり、複数の繊維2fで構成されている。非肌側層3は、厚さH3の不織布シートであり、複数の繊維3fで構成されている。つまり、吸収層10は、厚さH10(H2+H3)の2枚の不織布で構成されている。各層において、複数の繊維2f、3fによって形成された空隙で排泄物を吸収し、保持することができ、且つ、空隙によって通気性が向上する。吸収層10の通気性を向上させることで、ナプキン1の着用者の着用状態における蒸れ等の不快感を軽減させることができる。
【0057】
なお、吸収層10における繊維2f、3fは、必ずしも潜在捲縮繊維のみ(潜在捲縮繊維100%)でなくてもよい。繊維2f、3fのいずれか一方又は両方が、潜在捲縮繊維以外の繊維(例えば、パルプ繊維等の液体吸収性繊維)を含んでいてもよい。また、吸収層10が、繊維2f、3fのみでなく、高吸収性ポリマー(SAP)等を含んでもよい。
【0058】
ナプキン1の吸収層10は、それぞれ吸収機能を有する肌側層2と非肌側層3とを重ね合わされた構成である。なお、肌側層2と非肌側層3との間は、ホットメルト接着剤等の接着剤で固定されていてもよく、接着剤を設けないものであってもよい。特に、ナプキン1を厚さ方向に見て、幅方向の中央部において、肌側層2と非肌側層3との間に接着剤を設けないことで、着用状態において、接着剤によって排泄物の吸収が妨げられる恐れを軽減させることができる。
【0059】
本実施形態のナプキン1は、着用時に着用者の股下に位置する股下領域Mにおいて、所望の吸収機能を備えている。「股下領域」は、ナプキン1が着用状態において着用者の股間にあてがわれる「股間部」ともいう。ナプキン1の股下領域Mは、長手方向における中央部を含む領域であり、ウィング部1wが設けられた領域である。
【0060】
この股下領域Mについて、股下領域Mが蒸留水を吸収する前の重量を吸収前重量(a)とし、股下領域Mを蒸留水に60秒浸漬させた後、蒸留水から引き上げて90秒間ぶら下げた後の股下領域Mの重量を吸収後重量(A)としたとき、吸収後重量(A)から吸収前重量(a)を減じた値を蒸留水の吸収重量(b)としたとき(b=A-a)、吸収重量(b)を吸収前重量(a)で除した値が5以上である(b/a≧5)。
また、この股下領域Mの吸収層10の厚さ方向において、着用者の肌に当接する側が肌側、肌側の反対側が非肌側であり、
図6に示すように、吸収層10を厚さ方向に3等分して、最も肌側の領域を肌側領域Qu、最も非肌側の領域を非肌側領域Qd、肌側領域Quと非肌側領域Qdとの間を中間領域Qmとする。
図6は、
図4中のB-B矢視概略断面を模式的に示した図である。吸収層10の繊維2f、3fによって形成された空隙は、非肌側領域Qdの狭さの方が、肌側領域Quの狭さより狭い。
そして、股下領域MのKES法による曲げヒステリシス2HBが、3.5gf・cm
2/cm以下である。
【0061】
吸収重量bを吸収前重量aで除した値が大きいほど、ナプキン1は、より多くの蒸留水の吸収が可能となるため、より多くの排泄物を吸収することができる。吸収重量bを吸収前重量aで除した値を5以上とすることで、吸収重量bを吸収前重量aで除した値を5より小さい場合よりも、ナプキン1は、液体を吸収するための機能を十分に確保することができる。また、吸収した液体を吸収層10内で保持することが可能となる。
【0062】
また、繊維2f、3fによる空隙について、非肌側領域Qdの空隙の狭さが、肌側領域Quの空隙の狭さより狭いことで、毛細管現象によって、着用状態において吸収層10のうち、肌側領域Quの肌側面で受け止めた排泄物を非肌側領域Qdに向かって引き込みやすくなる。また、非肌側領域Qdに引き込まれた排泄物を非肌側領域Qd内の広い範囲に拡散させやすい。これによって、着用状態において、肌側領域Quの肌側面から吸収した排泄物を肌側領域Quの肌側面や肌側領域Qu内に留まることを軽減させて、着用者の肌に排泄物が当接し続けることによる不快感や、肌荒れを引き起こしやすくなったりする恐れを軽減させることができる。また、排泄物が一度に大量に排出された場合でも、肌側領域Quから非肌側領域Qdに向かう排泄物の拡散を促しやすくなることから、肌側領域Quの表面を伝ってナプキン1から排泄物が漏れる恐れを軽減させることができる。特に、ナプキン1のように、吸収層10が着用者の肌に当接する場合には、繊維2f、3fによる空隙について、非肌側領域Qdの狭さを肌側領域Quの狭さより狭くすることで、吸収層10内において肌側から非肌側に向かって排泄物を拡散させやすくなるため、吸収層10の肌側面に留まる排泄物を軽減させて、着用状態における着用者に与える快適性を向上させることができる。また、吸収層10において、繊維2f、3fによる空隙について、非肌側領域Qdの狭さを肌側領域Quの狭さより狭くして、肌側領域Quから非肌側領域Qdへの拡散を促すことで、非肌側領域Qdの狭さが肌側領域Quの狭さより広い場合よりも肌側領域Quの排泄物の拡散面積を狭くし、非肌側領域Qdの排泄物の拡散面積を広くすることができる。これによって、吸収層10における肌側から非肌側への排泄物の拡散を促しやすくなり、吸収層10において肌側の部分よりも非肌側の部分での排泄物の拡散を促しやすくなるため、
図7に示すように、肌側層2における排泄物の拡散領域B2よりも、非肌側層3における排泄物の拡散領域B3を広くさせやすくなる。
図7は、馬血を滴下後30分経過のナプキン1を説明する図である。
図7は、ナプキン1の長手方向の中央部且つ幅方向の中央部に、馬血を6mm滴下し、30分経過後のナプキン1の状態を説明する図である。このように、肌側層2における排泄物の拡散領域B2の面積よりも、非肌側層3における排泄物の拡散領域B3の面積の方が広いことで、ナプキン1が吸収性に優れているという印象を使用者等に印象づけやすくなる。
【0063】
さらに、曲げヒステリシス2HB値は曲げ回復性であり、曲げヒステリシス2HBは値が大きいほど、回復性が悪いことから、吸収層10の長手方向の中央部且つ幅方向の中央部におけるKES法による曲げヒステリシス2HBを3.5gf・cm2/cm以下とすることによって、吸収層10の長手方向の中央部且つ幅方向の中央部におけるKES法による曲げヒステリシス2HBを3.5gf・cm2/cmより大きくした場合よりも、着用状態において股下領域Mの回復性を良くすることができ、着用者の身体の形状や動きによる外部からの力によって吸収層10が変形した場合でも、吸収層10を元の形状に戻しやすくなり、股下領域Mの吸収層10の変形による違和感を軽減させたり、着用者の身体や動きに追従させやすくして、着用時における快適性を向上させることができる。
【0064】
上述のように、本実施形態のナプキン1では、肌側層2と非肌側層3の各不織布シートをスパンレース法で形成しており、それぞれ肌側から非肌側に向かって水流を当てることによって、繊維2f、繊維3fが肌側から非肌側に向かって押し込まれやすくなることで、非肌側領域Qdの空隙の狭さが肌側領域Quの空隙の狭さより狭くなる。また、吸収層10を構成する肌側層2と非肌側層3とを比べると、非肌側層3の空隙の狭さが、肌側層2の空隙の狭さよりも狭い。この各層の空隙の狭さの差は、例えば、各層に用いる繊維2f、3fの量や坪量、スパンレース法による繊維2f、3fの交絡の程度等によって設けられる。なお、非肌側領域Qdの空隙の狭さを、肌側領域Quの空隙の狭さより狭くする方法としては、これに限られない。例えば、非肌側領域Qdの繊維の太さ(繊維径)を肌側領域Quの繊維の太さ(繊維径)より細くしてもよい。また、非肌側領域Qdに用いる繊維を、肌側領域Quに用いる繊維よりも強い捲縮する性質を有する潜在捲縮繊維を用いて、非肌側領域Qdの空隙の狭さを肌側領域Quの空隙の狭さより狭くしてもよい。
【0065】
<吸収機能の測定方法>
ナプキン1の股下領域Mの吸収機能は、下記の吸収試験で測定することができる。
(1)まず、ナプキン1からバックシート4を取り除く。バックシート4は、液不透過性の部材であり、明らかに吸収機能に寄与しないため、取り除く。
(2)バックシート4を取り除いたナプキン1の股下領域Mから所定領域をサンプルとして切り出す。本実施形態のナプキン1では、サンプルは70mm×70mmの大きさである。
(3)そして、感量が0.01gの天秤でこのサンプルの重量である吸収前重量aを測定する。吸収前重量aは、サンプルが蒸留水を吸収する前の重量である。
(4)続いて、クリップでサンプルの一端を挟み、クリップの先端とサンプルとを縦方向に垂直な状態にする。
サンプルをクリップとともに、23±1℃の蒸留水(又は脱イオン水)が入れられた水槽に浸す。このとき、吸収層10の肌側面を上側となるようにする。サンプルを水中に向かって軽く押さえて、サンプルの全てが完全に蒸留水に浸漬した状態を60秒間保持する。
(5)その後、クリップを引き上げて、サンプルを蒸留水から引き上げて、水槽の水面から完全に離した状態で、クリップでサンプルを挟み、90秒間クリップからサンプルをぶら下げる。
(6)その後、クリップを除いたサンプルの質量を秤量して、吸収後のサンプルの重量である吸収後重量Aを得る。
(7)そして、吸収後重量Aから吸収前重量aを減じた値が、吸収重量bである。
(吸収重量b)=(吸収後重量A)-(吸収前重量a)
この得られた吸収重量bを吸収前重量aで除した値が5以上であることが好ましい。
吸収重量b÷吸収前重量a≧5
5つのサンプルについて、それぞれ、上述の(1)~(7)を行い、5つのサンプルの結果の平均値を測定結果とする。
【0066】
図8Aは、ナプキン1の股下領域Mの吸収試験の測定結果を示す図である。
図8Aにおける番号1~3は、それぞれ5つのサンプルの結果の平均値である。
図8Aに示すように、本実施形態のナプキン1の股下領域Mは、吸収した蒸留水の重量(吸収重量b)を、蒸留水を吸収する前の所定領域の重量で除した値が、それぞれ7より大きい。つまり、明らかに吸収重量bを吸収前重量aで除した値が5以上である。そのため、ナプキン1の吸収層10は、排泄物を吸収するための十分な吸収量を備えており、ナプキン1から排泄物が漏れる恐れを軽減させることができる。
【0067】
また、股下領域Mの吸収層10の繊維2f、3fによって形成された空隙について、非肌側領域Qdの狭さの方が、肌側領域Quの狭さより狭いことは、周知の方法で比較することができる。例えば、空隙の狭さの比較は、目視によって、その空隙の狭さや大きさが認識できる場合には、空隙の狭さの大小を比較してもよく、各領域の拡大断面写真を撮影し、その撮影した拡大断面写真によって空隙の狭さの大小を比較してもよい。さらに、より精密に空隙の狭さを比較する場合には、以下に示す狭さ評価試験によって、空隙の狭さの比較が可能である。
【0068】
<狭さ評価試験方法及び空隙割合評価試験方法>
狭さ評価試験、及び後述の空隙割合評価試験は、以下の方法で行うこともできる。
まず、ナプキン1の股下領域Mの吸収層10に対して、X線CT測定を行う。リガク社製高分解能3DX線顕微鏡nano3DXを用いて、下記の条件にて非破壊断層撮影(CT測定)を実施する。
X線源 : Cu
管電圧―管電流 : 40kV―30mA
検出器 : sCMOSカメラ(レンズ:1080)
解像度 : 2.51μm/voxel
【0069】
撮影により得られた3次元データから股下領域Mの吸収層10の測定領域(所定領域)Yを無作為に抽出して、空隙を解析する。なお、この解析のための測定領域Yは、吸収層10の面方向における任意の範囲で、厚さ方向の長さが吸収層10の厚みH10である直方体(立方体でもよい)である。
【0070】
本実施形態では、
図9に示すように、測定領域Yを厚さ方向に3等分したときの、最も下側を第1領域Y1、最も上側を第3領域Y3とし、第1領域Y1と第3領域Y3との間を第2領域Y2とする。
図9は、測定領域Yを説明する図であり、繊維2f、3fは着色(灰色)部分、空隙は着色(白色)部分、格子部分は吸収層10から無作為に抽出した測定領域の範囲を示している。第1領域Y1は吸収層10の肌側領域Qu(厚さ方向に見たときの肌側領域Quの一部)であり、第2領域Y2は吸収層10の中間領域Qm(厚さ方向に見たときの中間領域Qmの一部)であり、第3領域Y3が吸収層10の非肌側領域Qd(厚さ方向に見たときの非肌側領域Qdの一部)である。
【0071】
X線CTで得られた断層像は、X線を透過しやすい低密度(空隙)成分は黒色、X線を吸収しやすい高密度(繊維)成分は白色で表示された画像となる。この画像から各領域Y1~Y3の空隙割合及び空隙の平均狭さを算出する。
【0072】
各領域Y1~Y3の空隙割合は、X線CTで得られた断層像から、各領域Y1~Y3における空隙の体積と測定領域Yの体積とを得ることで算出することができる。例えば、第1領域Y1の空隙割合は、下記の通りである。
第1領域Y1の空隙割合=(第1領域Y1の空隙の体積)/(第1領域Y1の体積)
なお、第1領域Y1の体積は、第1領域Y1の繊維の体積と第1領域Y1の空隙の体積の和である。
【0073】
各領域Y1~Y3の空隙の狭さは、「A new method for the model―independent assessment of thickness in three-dimensional images」(T. HILDEBRAND & P. RUEGSEGGER 著、Journal of Microscopy、Vol.185,Pt1,January 1997, pp.67-75)のThicknessを空間部分に対して当てはめ、体積(空隙)の部分的な狭さの結果に基づいて、空隙狭さの分布及び空隙の平均狭さを算出する。つまり、上述の文献の定義における「Thickness」が肌側層2(各領域Y1~Y3)における「空隙の狭さ」に相当し、X線CTで得られた断層像における空隙に相当する体積部分の各部分における狭さを特定することで、空隙狭さの分布及び空隙の平均狭さを得ることができる。
【0074】
解析する各領域Y1~Y3の内部における空隙(例えば、空隙Z)の狭さの定量的な評価方法の概要について説明する。
図10は、空隙Zにおける狭さの評価方法の概要について説明する図である。例えば、
図10に示すように、空隙Zの内部の任意の点P1~P4において、その各点を含む領域内の最大の球体をそれぞれ想定し、それぞれの球体の直径D1~D4を求める処理を行う。なお、
図10を用いて4つの点(点P1~P4)の点における球体の直径D1~D4の求める処理について説明したが、実際の空隙の狭さの定量的な評価では、空隙Zの内部の多数の点Pにおける球体の直径Dを求める処理を行う処理を行う。このような処理を各領域Y1~Y3内の全ての点で行い、得られた直径の分布を算出し、平均値を求めることで、各領域Y1~Y3における空隙の平均狭さを定量的に評価することができる。
【0075】
<曲げヒステリシス2HBの測定方法>
曲げヒステリシス2HB(曲げ回復性)は、周知の方法で測定することができる。
例えば、カトーテック株式会社製の自動化曲げ試験機(KES-FB2-L)を用いて測定することができる。
まず、ナプキン1から吸収層10(肌側層2と非肌側層3)を取り出し、吸収層10の股下領域Mにおける50mm×50mmの大きさの部分をサンプルとして切り出す。
続いて、サンプルの長手方向の両端をチャックで保持する。そして、サンプルを曲率変化速度が0.1cm-1/minで、曲率がプラス側に0.5cm-1でマイナス側に0.5cm-1となる範囲で正逆両方向へ湾曲させ、それぞれの方向への曲げに要した曲げモーメントのヒステリシス曲線を得る。曲率が0.1cm-1のときの曲げモーメントのヒステリシス量を曲げヒステリシス2HBとする。
【0076】
図8Bには、本実施形態のナプキン1の股下領域Mにおける吸収層10のKES法による曲げヒステリシス2HB(gf・cm
2/cm)の測定結果を示している。
図8Bに示すように、本実施形態のナプキン1の吸収層10の長手方向の中央部且つ幅方向の中央部における曲げヒステリシス2HB(gf・cm
2/cm)は、0.8204~0.9253gf・cm
2/cmであるため、3.5gf・cm
2/cm以下であることは明らかである。ナプキン1は、着用状態において、着用者の身体の形状や着用者の動き等の外部からの力によって吸収層10が変形した場合でも、吸収層10を元の形状に戻しやすくなり、吸収層10の変形によって着用者に与える違和感や不快感を軽減させることができる。
【0077】
また、前記吸収層10の所定領域(測定領域Y)中の空隙の割合を定量的に評価するための空隙割合評価試験における非肌側領域Qdの空隙の割合が、空隙割合評価試験における肌側領域Quの空隙の割合より小さいことが好ましい。空隙割合評価試験は、上述の方法で行う。これによって、ナプキン1(吸収層10)が排泄物を吸収した際に、毛細管現象によって、肌側領域Quから、空隙の割合がより小さい非肌側領域Qdに排泄物を引き込みやすくなり、非肌側領域Qd内での排泄物の拡散を促しやすくなる。また、着用状態において、肌側領域Quに留まる排泄物を減少させて、着用者の肌から排泄物を遠ざけることで、着用者の肌に排泄物が当接することによる不快感を軽減させて、着用状態の快適性を向上させることができる。
【0078】
本実施形態のナプキン1では、上述のように、肌側層2及び非肌側層3の各不織布シートをスパンレース法で形成しており、肌側から非肌側に向かって水流を当てることによって、繊維2f、3fが肌側から非肌側に向かって押し込まれるため、空隙割合評価試験における非肌側領域Qdの空隙の割合が、空隙割合評価試験における肌側領域Quの空隙の割合より小さくなる。なお、空隙割合評価試験における非肌側領域Qdの空隙の割合を、空隙割合評価試験における肌側領域Quの空隙の割合より小さくする方法としては、これに限られない。例えば、非肌側領域Qdの繊維の太さ(繊維径)を肌側領域Ruの繊維の太さ(繊維径)より細くしてもよい。また、非肌側領域Rdに用いる繊維を、肌側領域Ruに用いる繊維よりも強い捲縮する性質を有する潜在捲縮繊維を用いることで、空隙割合評価試験における非肌側領域Rdの空隙の割合を、空隙割合評価試験における肌側領域Ruの空隙の割合より小さくしてもよい。
【0079】
また、吸収層10の肌側領域Quの親水度が、非肌側領域Qdの親水度より低いことが好ましい。本実施形態の肌側層2は、
図5Aに示すように、大部分が疎水性の繊維2faで形成された上層2Aと、大部分が親水性の繊維2fbで形成された下層2Bを備え、非肌側層3は、
図5Bに示すように、親水性の繊維3fで形成されている。つまり、肌側層2と非肌側層3とが重ね合わされた吸収層10において、最も肌側の肌側領域Qu(上層2Aにおける繊維2fa)の親水度より、非肌側領域Qd(上層2Aより非肌側に位置する下層2B及び非肌側層3の繊維2fb、3f)の親水度の方が高い。これによって、着用状態において、肌側領域Quで吸収した排泄物が、肌側領域Quで留まる恐れを軽減させ、非肌側領域Qdに向かって引き込みやすくすることができる。また、非肌側領域Qdに到達した排泄物を非肌側領域Qd内で拡散させやすくなり、非肌側領域Qdから肌側領域Quに向かって排泄物が戻ってしまう恐れを軽減させることができる。そのため、肌側領域Quで排泄物が留まって、排泄物が着用者の肌に当接し続ける恐れを軽減させることができ、着用者の肌に排泄物が当接し続ける恐れを軽減させて、着用状態における着用者の快適性を向上させることができる。
【0080】
各領域の親水度は、水との接触角に基づいて判断される。各領域と水と接触角の測定は、以下の方法によって実行できる。
まず、測定対象の領域から、それぞれ長手方向150mm、幅方向70mmの平面視四角形形状を切り出して測定サンプル(切り出しが難しい場合は最大長さと最大幅は測定できる範囲であれば、例示の数値に限定しない)とする。そして、各測定サンプルにおける接触角の被測定面に、イオン交換水の液滴を付着させ、該液滴を録画して、その録画した画像に基づき接触角を測定する。より具体的には、測定装置として株式会社キーエンス製のマイクロスコープVHX-1000を用い、これに中倍率ズームレンズを90°に倒した状態で取り付ける。各測定サンプルを、被測定面が上向きの状態となり且つ各測定サンプルの幅方向から観察できるように、測定装置の測定ステージにセットする。そして、測定ステージにセットされた各測定サンプルの被測定面にイオン交換水3μLの液滴を付着させ、その液滴の画像を録画して測定装置に取り込む。録画され複数の画像のうち、液滴における幅方向の両端又は片端が鮮明な画像を10枚選択し、その10枚の画像それぞれについて液滴の接触角を計測し、それらの接触角の平均値を、測定対象の領域(繊維層)の接触角とする。測定環境は、20℃/50%RHとする。
【0081】
上記の方法で測定される水との接触角が小さいほど親水性が高く(疎水性が低く)、該接触角が大きいほど親水性が低い(疎水性が高い)。当該接触角が90度未満であれば親水性であり、90度以上の場合であれば疎水性である。つまり、肌側層2において、肌側領域Ru側の水との接触角が、非肌側領域Rdの水との接触角より大きい。
【0082】
本実施形態の吸収層10は、厚さ方向の最も肌側(肌側層2の上層2A)に疎水性の繊維である繊維2faを設け、上層2Aより非肌側に親水性の繊維である繊維2fb、3fを設けることで、肌側領域Quの親水度を非肌側領域Qdの親水度より低くしたが、これに限られない。例えば、吸収層10の不織布シートの全域(肌側領域Qu、中間領域Qm、非肌側領域Qd)の全てが、親水度が一定の繊維2f、3fで形成され、吸収層10(2枚の不織布シート)のうち、肌側領域Quに疎水性を高めるための薬剤(疎水剤)を塗布する加工を行ってもよく、又は、非肌側領域Qdに親水性を高めるための薬剤(親水剤)を塗布する加工を行ってもよい。肌側領域Quに疎水性を高める薬剤を用いること、又は非肌側領域Qdに親水性を高める薬剤を用いることで、肌側領域Quから非肌側領域Qdに向かって排泄物の拡散を促しやすくなる。これによって、着用状態において、排泄物を着用者の肌から非肌側に遠ざけやすくなり、着用者の肌に排泄物が当接し続ける恐れを軽減させることで、着用状態における着用者の快適性を向上させることができる。
【0083】
ナプキン1における吸収層10の股下領域MにおけるKES法による曲げ剛性Bが、2.0gf・cm2/cm以下であることが好ましい。一般的に、曲げ剛性Bは、値が大きいほど、曲げ剛い。吸収層10の股下領域MにおけるKES法による曲げ剛性Bを2.0gf・cm2/cm以下とすることで、吸収層10の股下領域Mにおける曲げ剛性Bが2.0gf・cm2/cmより大きい場合よりも、吸収層10を柔軟にすることができ、吸収層10を用いたナプキン1を柔軟にさせやすくなる。そのため、着用状態において、着用者の身体の形状や動きにナプキン1が追従しやすくなり、着用者に与える違和感を軽減させて、着用状態における快適性を向上させることができる。
【0084】
<曲げ剛性Bの測定方法>
吸収層10の股下領域Mにおける曲げ剛性B(gf・cm2/cm)は、周知の方法で測定することができる。例えば、曲げ剛性B(gf・cm2/cm)の値は、カトーテック(株)製KES-FB2-L大型曲げ測定試験機を用いて測定することができる。まず、ナプキン1から吸収層10(肌側層2と非肌側層3)を取り出し、吸収層10の股下領域Mにおける50mm×50mmの大きさの部分をサンプルとして切り出す。このサンプルにおいて吸収層10の長手方向に沿って曲げることによって測定できるように測定試験機のチャック間に固定する。最大曲率+0.5cm-1まで表側に曲げ、次に、最大曲率-0.5cm-1まで裏側に曲げた後に元に戻すことによって行う。曲げ剛性値B(gf・cm2/cm)は、表側に曲げ、曲率0.1~0.3に対する曲げモーメントの傾きと裏側に曲げ、曲率-0.1~-0.3傾きとの平均値から算出する。
【0085】
図8Bに示すように、本実施形態のナプキン1の吸収層10の股下領域Mにおける曲げ剛性B(gf・cm
2/cm)は、0.1008~1.1017gf・cm
2/cmである。このように、ナプキン1の股下領域Mにおける曲げ剛性Bが2.0gf・cm
2/cm以下であることから、股下領域Mにおける曲げ剛性Bが2.0gf・cm
2/cmより大きい場合よりも吸収層10が柔軟なものとして、ナプキン1を柔軟なものとすることができる。これによって、ナプキン1は、着用状態において、着用者の身体の形状や動きにナプキン1が追従しやすくなり、着用者に与える違和感を軽減させて、着用状態における快適性を向上させることができる。
【0086】
ナプキン1において、吸収層10(肌側層2と非肌側層3)の厚みが、4mm以下であることが好ましい。ナプキン1等の吸収性物品において、吸収層10は、特に、厚みがあり、剛性が高い部材である。吸収層10の厚みが厚いほど、吸収層10が硬くなりやすく、ナプキン1としても剛性が高くなりやすい。そのため、吸収層10の厚みを4mm以下とすることで、吸収層10の厚みが4mmより大きい場合よりも、ナプキン1の剛性を低くさせ、ナプキン1を柔軟にすることができる。これにより、着用状態において、ナプキン1を着用者の身体や動きに追従させやすくなり、着用状態における快適性を向上させることができる。
【0087】
また、吸収層10が、変形を誘導するための変形誘導部を備えていてもよい。吸収層10が変形誘導部を備えることで、変形誘導部の誘導によって吸収層を変形させやすくなるため、着用状態において、吸収層10を着用者の身体の形状や動きに追従させやすくなり、着用状態における快適性を向上させることができる。吸収層10の変形誘導部は、例えば、吸収層10を厚さ方向に圧搾した圧搾部(圧搾溝)や、吸収層10の厚みを一部又は全部薄くした凹部(溝部)やスリット、又は吸収層10における繊維の坪量を変化させた部分等の吸収層10の剛性を変化させた部分を例示することができる。
【0088】
ナプキン1の吸収層10の股下領域MにおけるKES法による圧縮特性の直線性LC(圧縮硬さ)が、0.6以上であることが好ましい。圧縮特性の直線性LC(圧縮硬さ)の値が大きいほど、圧縮剛いことを意味する。吸収層10の圧縮特性の直線性LC(圧縮硬さ)を0.6以上とすることで、圧縮特性の直線性LC(圧縮硬さ)を0.6より小さくした場合よりも、吸収層10の変形を軽減させることができる。そのため、着用状態における着用者に与える吸収層10の変形による違和感を軽減させて、着用状態の快適性を向上させることができる。また、吸収層10が変形することによって、吸収層10から排泄物が漏れる恐れを軽減させることができる。
【0089】
また、ナプキン1における吸収層10の長手方向の中央部且つ幅方向の中央部におけるKES法による圧縮レジリエンスRC(圧縮回復性)が、38%以上であることが好ましい。圧縮レジリエンスRC(圧縮回復性)の値が100%に近いほど、回復性が高いことを意味する。吸収層10の長手方向の中央部且つ幅方向の中央部におけるKES法による圧縮レジリエンスRC(圧縮回復性)を38%以上とすることで、吸収層10の長手方向の中央部且つ幅方向の中央部におけるKES法による圧縮レジリエンスRC(圧縮回復性)を38%より小さくした場合よりも、吸収層10の形状を元に戻しやすくなるため、着用状態において、ナプキン1に力が加えられて吸収層10が変形した場合であっても、ナプキン1の肌側面に皺が形成される恐れを軽減させることができる。また、着用状態における着用者に与える吸収層10の変形による違和感を軽減させ、着用者の身体にフィットさせやすくなる。
【0090】
<圧縮レジリエンスLC、圧縮レジリエンスRCの測定方法>
圧縮レジリエンスLC(圧縮硬さ)及び圧縮レジリエンスRC(圧縮回復性)は、周知の方法で測定することができる。例えば、カトーテック(株)製の自動化圧縮試験機 KES‐FB3 AUTO‐Aを用いて、測定することができる。
まず、ナプキン1から吸収層10(肌側層2と非肌側層3とを重ねた状態)を取り出し、吸収層10の股下領域Mにおける50mm×50mmの大きさの部分をサンプルとして切り出す。
所定領域を面積200mm2の円形平面状の端子を有する鋼板間で各サンプルを圧縮し、圧縮速度50sec/mm、圧縮最大荷重を50gf/cm2としてサンプルの圧縮特性を測定する。
回復過程についても同一速度で圧縮特性を測定し、測定から得られた圧縮特性曲線の直線性LCと、圧縮回復率RC[%]、圧縮仕事量WC[gf・cm/cm2]を求める。
【0091】
図8Cは、KES法による圧縮特性の測定結果を示す図である。
図8Cに示すように、本実施形態のナプキン1の吸収層10の股下領域Mにおける圧縮特性の直線性LCは、0.609~0.653であるため、0.6以上である。このように、本実施形態のナプキン1の吸収層10は、圧縮特性の直線性LCが0.6より小さい場合よりも、変形を軽減させることができ、着用状態において着用者に与える吸収層10の変形による違和感を軽減させることができる。
【0092】
圧縮レジリエンスRCについても、
図8Cに示すように、本実施形態のナプキン1の吸収層10の股下領域Mにおける圧縮レジリエンスRCは、38.80~40.18%であり、38%より大きいことは明らかである。ナプキン1の吸収層10は、圧縮レジリエンスRCを38%より小さくした場合よりも、着用状態における吸収層10の変形による違和感を軽減させつつ、通気性を向上させることができるため、着用状態における快適性を向上させることができる。
【0093】
さらに、吸収層10(肌側層2と非肌側層3とを重ねた状態)を所定長さだけ伸長させるための力の大きさを測定する伸長試験において、吸収層10の伸長試験の10回目の測定による力の大きさの値を、吸収層10の伸長試験の1回目の測定による力の大きさの値で除した値が、55%以上であることが好ましい。伸長試験の10回目の測定による力の大きさの値を1回目の測定による力の大きさの値で除した値が55%以上であることで、着用状態でも吸収層10の破損を軽減させつつ、伸長試験の10回目の測定による力の大きさの値を1回目の測定による力の大きさの値で除した値が55%より小さい場合よりも、繰り返し吸収層10に力が加えられて伸長された場合でも所定の応力を維持することができるため、吸収層10を備えたナプキン1は、着用者の身体の形状や動きに追従しやすくすることができる。つまり、このような吸収層10を備えたナプキン1は、着用状態において外部から吸収層10に対して力を加えられる状態で、吸収層10が破損しづらくさせつつ、吸収層10が着用者の身体の形状や動きに馴染みやすいナプキン1とすることができる。
【0094】
<伸長試験の測定方法>
伸長試験は、(株)島津製作所製:オートグラフ型引張試験機、例えば形式AG-1KNIを用いたサイクル試験にて測定できる。具体的な測定方法は、以下の通りである。
まず、対象とするナプキン1から測定対象域である吸収層10(肌側層2と非肌側層3とを重ねた状態)を取り出し、試料を用意する。切り出した試料を、チャック間距離100mmとして、吸収層10を試験機のチャックに固定する。次いで、試料を長手方向に、100mm/分の速度でチャック間距離100mmの130%、つまり、チャック間距離130mmまで伸長させその後、100mm/分の速度で、チャック間距離100mmの位置まで戻す。この時の力の大きさ(N)の最大値を1回目の伸長試験の測定結果値(1回目の測定による力の大きさの値)とする。
続いて、チャック間距離100mmの状態の資料を長手方向に、100mm/分の速度でチャック間距離100mmの130%、つまり、チャック間距離130mmまで伸長させその後、100mm/分の速度で、チャック間距離100mmの位置まで戻す。この時の力の大きさ(N)の最大値を2回目の伸長試験の測定結果値(2回目の測定による力の大きさの値)とする。同様に伸長試験を行い、3回目~10回目の測定結果値を得る。
そして、10回目の測定結果値(10回目の測定による力の大きさの値)を、1回目の測定結果値(1回目の測定による力の大きさの値)で除した値を算出する。
【0095】
図11は、吸収層10の伸長試験の測定結果を示す図である。ナプキン1の吸収層10伸長試験の測定結果(力の大きさ)は、
図11に示す通りであり、ナプキン1の吸収層10の10回目の伸長試験の測定結果(力の大きさ)は、15.270Nである。ナプキン1の吸収層10の10回目の伸長試験の測定結果(力の大きさ)は、15.270Nである。伸長試験の10回目の測定による力の大きさの値(15.270[N])を1回目の測定による力の大きさの値(20.967[N])で除した値が、15.270[N]/20.967[N]=0.7283であり、55%以上であることは明らかである。ナプキン1の吸収層10は、10回目の測定結果でも0Nより大きい値であることで、着用状態に外部からの力が加えられた場合でも吸収層10の破損や破断を軽減させることができる。また、伸長試験の10回目の測定による力の大きさの値を1回目の測定による力の大きさの値で除した値が55%より小さい場合よりも、吸収層10が着用者の身体や動きに馴染みやすくなり、着用者に快適な着用感を与えやすくなる。
【0096】
この吸収層10について、通気抵抗値が、0.32kpa・s/m以下であることが好ましい。ナプキン1の吸収層10の通気抵抗値を0.32kpa・s/m以下とすることで、通気抵抗値が0.32kpa・s/mより大きい場合よりもナプキン1の通気性を向上させることができるため、ナプキン1の着用者の蒸れ等の不快感を軽減させることができる。
【0097】
吸収層10の通気抵抗値の測定は、周知の方法で行うことができる。例えば、股下領域Mの吸収層10を所定の大きさ(例えば、直径70mm×70mmの円形に切り出してサンプルとする。そして、カトーテック社製通気性試験機(KES―F8)又はそれと同等の通気試験機を用いて、標準通気速度を2cm/sに設定し、サンプルの通気抵抗値を測定する。かかる測定を複数回(例えば、5回)行い、その平均値を吸収層10の通気抵抗値とすることができる。
【0098】
図12は、第1実施形態の変形例のナプキン100を説明する図である。
図12示すナプキン100のように、吸収層10(吸収体)である肌側層2とバックシート4のみからなるナプキン100であってもよい。なお、ナプキン1はサイドシート5を備えたが、ナプキン100のように、必ずしもサイドシート5を備えなくてもよい。
【0099】
ナプキン100の肌側層2は、着用者の肌に当接する部材であり、且つ、繊維2fから形成された空隙に液体(排泄物)を保持することができる吸収部材である。バックシート4は、上述と同様に、液体不透過性のシートである。
【0100】
ナプキン100の肌側層2(吸収層10)は、液体の吸収を可能とし、且つ、液体を保持することを可能とする層である。
図13は、肌側層2の股下領域Mの概略断面を模式的に示した図である。肌側層2は、潜在捲縮繊維のみ(潜在捲縮繊維100%)の繊維2fで形成された不織布シートである。肌側層2は、複数の繊維2fによって形成された空隙を有する。
【0101】
この肌側層2を有するナプキン100の股下領域Mにおいて、所望の吸収機能を備えている。「股下領域」は、着用状態において着用者の股下に位置する領域であり、ナプキン100の股下領域Mは、長手方向における中央部である。例えば、ウィング部1wを有しないナプキン100では、ナプキン100の長手方向における長さH100を3等分したときの中央の領域を股下領域Mとすることができる。
【0102】
ナプキン100の股下領域Mについて、股下領域Mが蒸留水を吸収する前の重量を吸収前重量(a)とし、股下領域Mを蒸留水に60秒浸漬させた後、蒸留水から引き上げて90秒間ぶら下げた後の股下領域Mの重量を吸収後重量(A)としたとき、吸収後重量(A)から吸収前重量(a)を減じた値を蒸留水の吸収重量(b)としたとき(b=A-a)、吸収重量(b)を吸収前重量(a)で除した値が5以上である(b/a≧5)。
また、この股下領域Mの吸収層10の厚さ方向において、着用者の肌に当接する側が肌側、肌側の反対側が非肌側であり、
図13に示すように、吸収層10(肌側層2)を厚さ方向に3等分して、最も肌側の領域を肌側領域Ru、最も非肌側の領域を非肌側領域Rd、肌側領域Ruと非肌側領域Rdとの間を中間領域Rmとする。肌側層2の繊維2fによって形成された空隙は、非肌側領域Rdの狭さの方が、肌側領域Ruの狭さより狭い。
そして、股下領域MのKES法による曲げヒステリシス2HBが、3.5gf・cm
2/cm以下である。
【0103】
吸収重量bを吸収前重量aで除した値が大きいほど、ナプキン100はより多くの蒸留水の吸収が可能となるため、より多くの排泄物を吸収することができる。吸収重量bを吸収前重量aで除した値を5以上とすることで、吸収重量bを吸収前重量aで除した値を5より小さい場合よりも、ナプキン100は液体を吸収するための機能を十分に確保することができる。また、吸収した液体を肌側層2内で保持することが可能となる。
【0104】
また、繊維2fによる空隙について、非肌側領域Rdの空隙の狭さが、肌側領域Ruの空隙の狭さより狭いことで、着用状態において、毛細管現象によって、肌側層2のうち、肌側領域Ruの肌側面で受け止めた排泄物を非肌側領域Rdに向かって引き込みやすくなる。また、非肌側領域Rdに引き込まれた排泄物を非肌側領域Rd内の広い範囲に拡散させやすい。これによって、肌側領域Ruの肌側面から吸収した排泄物を肌側領域Ruの肌側面や肌側領域Ru内に留まることを軽減させて、着用者の肌に排泄物が当接し続けることによる不快感や、肌荒れを引き起こしやすくなったりする恐れを軽減させることができる。また、排泄物が一度に大量に排出された場合でも、肌側領域Ruから非肌側領域Rdに向かう排泄物の拡散を促しやすくなることから、肌側領域Ruの表面を伝ってナプキン100から排泄物が漏れる恐れを軽減させることができる。
【0105】
さらに、肌側層2(吸収層10)の長手方向の中央部且つ幅方向の中央部におけるKES法による曲げヒステリシス2HBを3.5gf・cm2/cm以下とすることによって、肌側層2の長手方向の中央部且つ幅方向の中央部におけるKES法による曲げヒステリシス2HBを3.5gf・cm2/cmより大きくした場合よりも、着用状態において股下領域Mの回復性を良くすることができ、着用者の身体の形状や動きによる外部からの力によって肌側層2が変形した場合でも、肌側層2を元の形状に戻しやすくなり、股下領域Mの肌側層2の変形による違和感を軽減させたり、着用者の身体や動きに追従させやすくして、着用時における快適性を向上させることができる。
【0106】
ナプキン100の肌側層2の不織布シートは、上述のスパンレース法で形成しており、その形成過程において、肌側から非肌側に向かって水流を当てることによって、繊維2fが肌側から非肌側に向かって押し込まれやすくなることで、非肌側領域Rdの空隙の狭さを肌側領域Ruの空隙の狭さより狭くしたが、これに限られない。例えば、非肌側領域Rdの繊維の太さ(繊維径)を肌側領域Ruの繊維の太さ(繊維径)より細くしてもよい。また、非肌側領域Rdに用いる繊維を、肌側領域Ruに用いる繊維よりも強い捲縮する性質を有する潜在捲縮繊維を用いて、非肌側領域Rdの空隙の狭さを肌側領域Ruの空隙の狭さより狭くしてもよい。
【0107】
なお、吸収機能の測定、空隙の狭さの比較、KES法における曲げヒステリシスHBの測定は、それぞれ上述の測定方法で行うことができる。
【0108】
===第2実施形態===
<<<生理用ナプキン300の構成>>>
図14は、生理用ナプキン300(以下「ナプキン300」とも呼ぶ)を肌側から見た平面図である。
図15は、ナプキン300の構成を説明する図である。
図15は、ナプキン300の各部材を厚さ方向に分解して示した模式図であり、各部材同士を固定する接着剤や各部材の厚み等の詳細な構成を省略して示している。また、上述のナプキン1の構成のいくつかは、以下のナプキン300にも適用できる。
【0109】
ナプキン300は、互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向を有する。長手方向において、着用者の下腹部に当接する側を前側とし、着用者の臀部に当接する側を後側とする。厚さ方向において着用者の肌に当接する側が肌側であり、その反対側が非肌側である。
図14に示す中心線C-Cは、幅方向におけるナプキン300の中心を示し、中心線CLは、長手方向におけるナプキン300の中心を示す。本実施形態のナプキン300の外形は長手方向に対称であり(中心線CLに対して対称)、幅方向に対称である(中心線C-Cに対して対称)。
【0110】
ナプキン300は、
図14及び
図15に示すように、最も肌側に位置するトップシート31、セカンドシート32、液体の吸収が可能な吸収部材33、最も非肌側に位置するバックシート34を有する。厚さ方向に互いに隣接する各資材はホットメルト等の接着剤で接合されている。
【0111】
トップシート31は、吸収部材33より肌側に位置する液体透過性のシートである。トップシート31としては、綿、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等の合成繊維からなる織物や不織布、貫通孔を有する熱可塑性フィルム又は合成樹脂フィルム、ハイドロ発泡体化熱可塑フィルムのような発泡体からなる高分子材料等の柔軟なシートを例示できる。
【0112】
セカンドシート32は、吸収部材33より肌側に位置し、トップシート31より非肌側に位置するシートである。セカンドシート32としては、ポリエステル、ポリプロピレン、又はポリエチレンを含む合成繊維の不織布又は織物、綿又はセルロースを含む天然繊維、若しくはこれらの繊維の混合物等を例示できる。
【0113】
バックシート34は、吸収部材33より非肌側に位置するシートである。バックシート34としては、ポリエチレン又はポリプロプレンの樹脂フィルム、又はフィルムコートされた織物又は不織布等の液不透過性のシートを例示できる。
【0114】
吸収部材33は、液体の吸収機能、且つ液体の保持機能を備えた所定の厚みを有する吸収体(吸収層)である。吸収部材33は、液体の吸収が可能な高分子フォームである。高分子フォームは、互いに連通する複数の空孔hを有する親水性の柔軟な非イオン性ポリマー発泡体構造を有するポリマー発泡体材料である。
図16は、吸収部材33の一部を拡大して説明する模式図である。この吸収部材33の空孔hに液体(排泄物)が入り込むことで、吸収部材33が液体を吸収し、液体を保持した状態とすることができる。
【0115】
吸収部材33を構成する高分子フォームは、油相成分と水相成分を特定の比率で、且つ、特定の条件で重合し、その後脱水処理を施すことで形成される。油性成分は、重合して固体発泡体構造を形成するアタクチックアモルファスポリマーを形成することができるイソデシルアクリレート等の1官能性モノマーと、スチレン及びエチルスチレン等のスチレンに基づく1官能性コモノマーを例示することができ、油性成分には、ジビニルベンゼン等の多官能性架橋、乳化剤が含まれる。水相成分は、アルカリ金属の塩化物等の水溶性電解質を例示することができ、水相成分には、重合開始剤が含まれる。
【0116】
この吸収部材33を有するナプキン300の股下領域Mにおいて、所望の吸収機能を備えている。「股下領域」は、着用状態において着用者の股下に位置する領域であり、ナプキン300の股下領域Mは、長手方向における中央部である。例えば、本実施形態のナプキン300のように、ウィング部1wを有しない場合は、ナプキン300の長手方向における長さH300を3等分したときの中央の領域を股下領域Mとすることができる。なお、ウィング部を有する場合には、長手方向において、ウィング部と重なる領域を股下領域とする。
【0117】
ナプキン300の股下領域Mについて、股下領域Mが蒸留水を吸収する前の重量を吸収前重量(a)とし、股下領域Mを蒸留水に60秒浸漬させた後、蒸留水から引き上げて90秒間ぶら下げた後の股下領域Mの重量を吸収後重量(A)としたとき、吸収後重量(A)から吸収前重量(a)を減じた値を蒸留水の吸収重量(b)としたとき(b=A-a)、吸収重量(b)を吸収前重量(a)で除した値が5以上である(b/a≧5)。
また、この股下領域Mの吸収部材33の厚さ方向において、着用者の肌に当接する側が肌側、肌側の反対側が非肌側であり、吸収部材33を厚さ方向に3等分して、最も肌側の領域を肌側領域、最も非肌側の領域を非肌側領域、肌側領域と非肌側領域との間を中間領域とする。吸収部材33の空孔hは、非肌側領域の狭さの方が、肌側領域の狭さより狭い。
そして、股下領域MのKES法による曲げヒステリシス2HBが、3.5gf・cm2/cm以下である。
【0118】
吸収重量bを吸収前重量aで除した値が大きいほど、ナプキン300は、より多くの蒸留水の吸収が可能となるため、より多くの排泄物を吸収することができる。吸収重量bを吸収前重量aで除した値を5以上とすることで、吸収重量bを吸収前重量aで除した値を5より小さい場合よりも、ナプキン300は、液体を吸収するための機能を十分に確保することができる。
【0119】
また、吸収部材33の空孔hについて、非肌側領域の空孔hの狭さが、肌側領域の空孔hの狭さより狭いことで、着用状態において、毛細管現象によって、吸収部材33のうち、肌側領域の肌側面で受け止めた排泄物を非肌側領域に向かって引き込みやすくなる。また、非肌側領域に引き込まれた排泄物を非肌側領域内の広い範囲に拡散させやすい。これによって、肌側領域の肌側面から吸収した排泄物を肌側領域の肌側面や肌側領域内に留まることを軽減させて、着用者の肌に排泄物が当接し続けることによる不快感や、肌荒れを引き起こしやすくなったりする恐れを軽減させることができる。また、排泄物が一度に大量に排出された場合でも、肌側領域から非肌側領域に向かう排泄物の拡散を促しやすくなることから、肌側領域の表面を伝ってナプキン300から排泄物が漏れる恐れを軽減させることができる。
【0120】
さらに、吸収部材33の長手方向の中央部且つ幅方向の中央部におけるKES法による曲げヒステリシス2HBを3.5gf・cm2/cm以下とすることによって、吸収部材33の長手方向の中央部且つ幅方向の中央部におけるKES法による曲げヒステリシス2HBを3.5gf・cm2/cmより大きくした場合よりも、着用状態において股下領域Mの回復性を良くすることができ、着用者の身体の形状や動きによる外部からの力によって吸収部材33が変形した場合でも、吸収部材33を元の形状に戻しやすくなり、股下領域Mの吸収部材33の変形による違和感を軽減させたり、着用者の身体や動きに追従させやすくして、着用時における快適性を向上させることができる。
【0121】
なお、空孔hの狭さの比較は、第1実施形態における空隙の狭さの比較と同様の方法で行うことができる。また、吸収機能の測定、KES法における曲げヒステリシスHBの測定は、それぞれ上述の測定方法で行うことができる。
【0122】
ナプキン300は、この構成に限られない。例えば、セカンドシート32を備えない構成であってもよく、ナプキン300がウィング部、サイドシート、圧搾部、スリット、防漏壁部等を備える構成であってもよい。また、吸収部材33が、2層以上の吸収体を備える多層吸収体(高分子フォームを2層以上重ねた構成)であってもよい。例えば、吸収部材33が2層の吸収体を備えた構成の場合には、肌側に位置する吸収体(高分子フォーム)の空孔hの狭さ(大きさ)より、非肌側に位置する吸収体(高分子フォーム)の空孔hの狭さ(大きさ)の方を小さくすることで、毛細管現象によって、吸収部材33において、肌側から非肌側に向かって排泄物(液体)を移動させやすくなる。
【0123】
===その他の実施形態===
上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0124】
1、100、300 ナプキン(生理用ナプキン、吸収性物品)、
1w ウィング部、
2 肌側層、
2f 潜在捲縮繊維(繊維)、
3 非肌側層、
3f 潜在捲縮繊維(繊維)、
4 バックシート、
5 サイドシート、
10 吸収層、
20 圧搾部、
31 トップシート、
32 セカンドシート(吸収性コア)、
33 吸収部材(吸収層)、
34 バックシート、
DH 高密度部、
DL 低密度部、
M 股下領域、
Ru 肌側領域(吸収側領域)、
Rm 中間領域、
Rd 非肌側領域(非吸収側領域)