(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088618
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】電子顕微鏡撮像における改善された位相コントラストのための光キャビティを組み込んだ磁極片
(51)【国際特許分類】
H01J 37/141 20060101AFI20240625BHJP
H01J 37/26 20060101ALI20240625BHJP
H01J 37/295 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H01J37/141 A
H01J37/26
H01J37/295
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023213509
(22)【出願日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】18/068,769
(32)【優先日】2022-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】バルト ビッジス
(72)【発明者】
【氏名】プレアン ドナ
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA04
5C101AA15
5C101EE05
5C101EE13
5C101EE14
5C101EE16
5C101EE59
5C101EE64
5C101FF03
(57)【要約】
【課題】線量感受性試料において改善されたコントラストを与える荷電粒子顕微鏡のシステム、方法、及び構成要素を開発すること。
【解決手段】電子顕微鏡のための磁極片は、中心軸と実質的に同心である本体を含むことができる。本体は、中心軸に対して実質的に垂直な上面と、中心軸に対して実質的に垂直な下面と、上面から下面まで本体内に形成された中央開口部とを画定することができる。中央開口部は、中心軸に対して実質的に回転対称であり得る。本体は、中心軸に対して傾斜し、上面に向かってテーパ状となる側面と、側面から中央開口部まで本体に形成された複数の側方開口部とを画定することができる。複数の側方開口部は、中心軸に対して実質的に対称に配列され得る。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子顕微鏡のための磁極片であって、前記磁極片が、
中心軸と実質的に同心である本体であって、前記本体が、
前記中心軸に実質的に垂直な上面と、
前記中心軸に対して実質的に垂直な下面と、
前記本体に前記上面から前記下面まで形成された中央開口部であって、前記中心軸に対して実質的に回転対称である中央開口部と、
前記中心軸に対して傾斜し、前記上面に向かってテーパ状となる側面と、
前記本体に前記側面から前記中央開口部まで形成された複数の側方開口部と、を画定する、本体を備え、
前記複数の側方開口部が、前記中心軸に対して実質的に対称に配列されている、磁極片。
【請求項2】
前記複数の側方開口部がそれぞれ、前記上面に対して約5mm~約20mmの垂直距離で前記中央開口部と交差する、請求項1に記載の磁極片。
【請求項3】
前記複数の側方開口部のうちの側方開口部が、前記中心軸と位置合わせされた、約5mm~約15mmの垂直方向寸法によって特徴付けられる、請求項1に記載の磁極片。
【請求項4】
前記複数の側方開口部のうちの側方開口部が、前記中心軸に垂直な側方基準面に対して約10度~約45度の角度で前記中央開口部に向かってテーパ状になっている、請求項1に記載の磁極片。
【請求項5】
前記複数の側方開口部のうちの側方開口部が、床部及び天井部を画定し、
前記中心軸に平行な前記側方開口部の断面が、前記床部と前記天井部とを接続する複合曲線を画定し、
前記天井部が、約1mm~約10mmの第1の曲率半径によって特徴付けられ、
前記床部が、約1mm~約10mmの第2の曲率半径によって特徴付けられる、請求項1に記載の磁極片。
【請求項6】
前記第1の曲率半径が約1mm~約3mmであり、前記第2の曲率半径が約1mm~約5mmである、請求項5に記載の磁極片。
【請求項7】
前記中央開口部が複数のセクションを含み、前記複数のセクションの第1のセクションが約1mm~約10mmの直径によって特徴付けられ、前記複数のセクションの第2のセクションが約5mm~約50mmの直径によって特徴付けられ、前記第2のセクションが前記第1のセクションよりも広い、請求項1に記載の磁極片。
【請求項8】
前記複数のセクションのうちの第3のセクションが、約10mm~約30mmの直径によって特徴付けられ、前記第3のセクションが前記第2のセクションよりも広く、前記第2のセクションが前記第1のセクションと前記第3のセクションとの間にある、請求項7に記載の磁極片。
【請求項9】
顕微鏡システムであって、
本体を含む磁極片であって、前記本体が、中心軸に対して実質的に回転対称であり、
前記中心軸に対して実質的に垂直な上面と、
前記中心軸に対して実質的に垂直な下面と、
前記本体に前記上面から前記下面まで形成された中央開口部であって、前記中心軸に対して実質的に回転対称である中央開口部と、
前記中心軸に対して傾斜し、前記上面に向かってテーパ状となる側面と、
前記側面から前記中央開口部まで前記本体に形成された複数の側方開口部であって、前記中心軸に対して実質的に対称に配列された、複数の側方開口部と、を画定する、磁極片と、
前記中心軸と実質的に位置合わせされた電子ビームを生成するように構成された電子源と、
前記顕微鏡システムにおいて、前記電子源と前記磁極片との間の前記中心軸上の第1の位置に配置された試料ホルダと、
前記電子ビームが、前記電子源と前記試料ホルダとの間の前記中心軸上の第2の位置において前記中心軸から離れて発散するように、前記電子ビームを成形するように構成された1つ以上の電磁レンズと、を備える、顕微鏡システム。
【請求項10】
前記複数の側方開口部がそれぞれ、前記電子ビームの第1の回折面に対応する、前記上面に対する約5mm~約20mmの垂直距離で前記中央開口部と交差する、請求項9に記載の顕微鏡システム。
【請求項11】
前記複数の側方開口部のうちの側方開口部が、前記中心軸に垂直な側方基準面に対して約10度~約45度の角度で前記中央開口部に向かってテーパ状になっている、請求項9に記載の顕微鏡システム。
【請求項12】
前記複数の側方開口部のうちの側方開口部が、床部及び天井部を画定し、
前記中心軸に平行な前記側方開口部の断面が、前記床部と前記天井部とを接続する複合曲線を画定し、
前記天井部が、約1mm~約10mmの第1の曲率半径によって特徴付けられ、
前記床部が、約1mm~約10mmの第2の曲率半径によって特徴付けられる、請求項9に記載の顕微鏡システム。
【請求項13】
前記第1の曲率半径が約1mm~約3mmであり、前記第2の曲率半径が約1mm~約5mmである、請求項12に記載の顕微鏡システム。
【請求項14】
前記中央開口部が、複数のセクションを含み、前記複数のセクションの第1のセクションが約1mm~約10mmの直径によって特徴付けられ、前記複数のセクションの第2のセクションが約5mm~約50mmの直径によって特徴付けられ、前記第2のセクションが前記第1のセクションよりも広い、請求項9に記載の顕微鏡システム。
【請求項15】
前記複数のセクションのうちの第3のセクションが、約10mm~約30mmの直径によって特徴付けられ、前記第3のセクションが、前記第2のセクションよりも幅広であり、前記第2のセクションが、前記第1のセクションと前記第3のセクションとの間にある、請求項14に記載の顕微鏡システム。
【請求項16】
電子顕微鏡を使用する位相コントラスト撮像の方法であって、前記方法は、
収束電子ビームが、ビーム軸と位置合わせされ、前記ビーム軸上の回折面に向かって収束するように、前記収束電子ビームを生成することと、
前記収束電子ビームを磁極片に通過させることであって、前記磁極片が、
導電性本体であって、前記本体が、中心軸に対して実質的に回転対称であり、前記中心軸が前記ビーム軸と実質的に位置合わせされており、前記本体が、
前記中心軸に対して実質的に垂直な上面と、
前記中心軸に対して実質的に垂直な下面と、
前記本体に前記上面から前記下面まで形成された中央開口部であって、前記中心軸に対して実質的に回転対称である中央開口部と、
前記中心軸に対して傾斜し、前記上面に向かってテーパ状となる側面と、
前記側面から前記中央開口部まで前記本体に形成された複数の側方開口部であって、前記中心軸に対して実質的に対称に配列された複数の側方開口部と、を画定し、
前記回折面が、前記上面と前記下面との間の前記中心軸上の位置にあり、前記複数の側方開口部と位置合わせされている、導電性本体、を含む、通過させることと、を含む、方法。
【請求項17】
前記収束電子ビームが、試料から約10mm~約25mmの第1の垂直距離で前記回折面に収束し、
前記複数の側方開口部の前記側方開口部がそれぞれ、前記上面に対して約5mm~約15mmの第2の垂直距離で前記中央開口部と交差し、
前記第1の垂直距離と前記第2の垂直距離とが一致している、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の側方開口部のうちの側方開口部が、床部及び天井部を画定し、
前記中心軸に平行な前記側方開口部の断面が、前記床部と前記天井部とを接続する複合曲線を画定し、
前記天井部が、約1mm~約10mmの第1の曲率半径によって特徴付けられ、
前記床部が、約1mm~約10mmの第2の曲率半径によって特徴付けられ、前記第2の曲率半径が、前記第1の曲率半径よりも大きい、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の側方開口部のうちの側方開口部が、前記中心軸に垂直な側方基準面に対して約10度~約45度の角度で前記中央開口部に向かってテーパ状になっている、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
光キャビティであって、前記光キャビティが、2つ以上のミラーによって形成され、一対の前記ミラーが、前記中心軸に対して約45度~約90度の角度α傾斜した光軸に沿って位置合わせされる、光キャビティを前記中央開口部に導入することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、電子顕微鏡の構成要素、システム、及び方法に関する。特に、いくつかの実施形態は、電子顕微鏡画像におけるコントラストを改善するように構成された構成要素を対象とする。
【背景技術】
【0002】
生体試料の電子顕微鏡法は、有機材料を電子ビームに曝露することを含む。電子と試料との間の相互作用は、撮像及び分析に使用することができる異なるタイプの検出可能な信号を生成する。透過型電子顕微鏡(TEM)では、生物学的材料の内部構造の画像、立体構造情報、及び微生物学的プロセスのin-situ観察を含む詳細な情報を原子スケールで開発することができる。
【0003】
オングストロームから数十オングストローム程度のものなど、漸進的に小さくなる長さスケールでの生物学的材料のTEM分析は、バックグラウンド信号又は撮像アーチファクトから対象の構造を区別する際に難題をもたらす。したがって、例えば生物学的材料の低温TEM分析の分野において、電子顕微鏡画像のコントラストを改善するための構成要素、システム、及び方法を開発する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本開示の前述した態様及び多くの付随する利点が、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することでより良好に理解されるので、より容易に認識されるであろう。
【0005】
【
図1A】本開示のいくつかの実施形態による、透過型電子顕微鏡(TEM)システムを示す概略図である。
【
図1B】本開示のいくつかの実施形態による、低温試料の分析のために使用される構成要素を含む透過型電子顕微鏡の対物セクションを示す概略図である。
【
図1C】本開示のいくつかの実施形態による、電磁放射と電子ビームとの相互作用を示す概略図である。
【
図1D】本開示のいくつかの実施形態による、平行照明下の試料を示す概略図である。
【
図1E】本開示のいくつかの実施形態による、発散照明下の試料を示す概略図である。
【
図2A】従来技術による下部磁極片の断面を示す概略図である。
【
図2B】本開示のいくつかの実施形態による、下部磁極片の断面を示す概略図である。
【
図2C】本開示のいくつかの実施形態による、段階的な中央開口部を含む下部磁極片の断面を示す概略図である。
【
図3A】本開示のいくつかの実施形態による、側方開口部を含む下部磁極片を示す概略図である。
【
図3B】本開示のいくつかの実施形態による、電磁放射を磁極片の中央開口部に光学的に結合するように構成された側方開口部を含む下部磁極片を示す概略図である。
【
図3C】本開示のいくつかの実施形態による、側方開口部の断面を示す概略図である。
【
図3D】本開示のいくつかの実施形態による、中央開口部に対して実質的に対称に配置された側方開口部を含む下部磁極片を示す概略図である。
【
図4】本開示のいくつかの実施形態による、側方開口部を含む下部磁極片の中央開口部に配置された光キャビティを示す概略図である。
【
図5】本開示のいくつかの実施形態による、電子顕微鏡画像における位相コントラストを改善するための例示的なプロセスを示すブロックフロー図である。
【0006】
図面において、同様の参照番号は、別段の指定がない限り、様々な図の全体にわたって同様の部分を指す。必要に応じて図面における混乱を低減させるために、要素の全てのインスタンスが必ずしも標識されているわけではない。図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、説明される原理を図示することに重点が置かれている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
例示的な実施形態を図示及び説明してきたが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本開示において様々な変更を行うことができることが理解されるであろう。
【0008】
以下の段落では、電子顕微鏡画像のコントラストを改善するための電子顕微鏡システム、構成要素、及び方法の実施形態が提供される。本開示の実施形態は、光キャビティ又は光キャビティの構成要素を受容し、含み、及び/又は組み込むように構成された下部磁極片を組み込む透過型電子顕微鏡を含む。光キャビティは、電子ビームの第1の回折面に実質的に対応する位置で電子ビーム上に電磁放射を集中させるように構成することができる。いくつかの実施形態では、光キャビティは、電子ビームの領域を光学要素又は他の材料がない状態に保つことができる。下部磁極片は、光キャビティを収容し、EM放射が下部磁極片の外部の放射源から光キャビティに提供されることを可能にするように構成された中央開口部及び複数の側方開口部を含むことができる。その結果、例えば、生体試料の撮像において、TEM顕微鏡の撮像性能を改善することができる。
【0009】
生体試料の電子顕微鏡法は、生体材料の電子ビームへの曝露を含む。電子と試料との間の相互作用は、撮像及び分析に使用することができる異なるタイプの検出可能な信号を生成する。透過型電子顕微鏡(TEM)では、生物学的材料の内部構造の画像、生体分子の立体構造、及び微生物学的プロセスのin-situ観察を含む詳細な情報を原子スケールで開発することができる。数オングストロームから数十オングストローム程度のものなど、漸進的に小さくなる長さスケールでの生体材料のTEM分析は、生体試料によって散乱される電子の割合が比較的低いことに少なくとも部分的に起因して、対象の構造をバックグラウンド信号又は撮像アーチファクトから区別する際に難題をもたらす。少なくともこれらの理由から、例えば、放射線量に対する感度及び特徴的な低信号対ノイズ品質を示す生物学的材料の低温TEM分析の分野において、電子顕微鏡画像におけるコントラストを改善するための構成要素、システム、及び方法を開発する必要がある。
【0010】
同様の技術的課題が、微生物試料の荷電粒子顕微鏡法の分野に存在する。典型的には、生体試料(例えば、タンパク質粒子、細胞又は細胞片、ウイルス粒子、細菌由来材料など)は、凍結(例えば、液体窒素温度)によって調製され、その後、低温条件を維持するように構成された試料ホルダ内に配置される。生体試料が典型的に構成される有機材料は、(例えば、鉄、金などのようなより重い元素とは対照的に)入射電子の比較的小さな部分を散乱させる。結果として、バックグラウンド情報は典型的に重要であり、生体試料のTEM画像におけるコントラストを制限する。同様に、結晶回折パターン(例えば、半導体又は金属結晶材料の位相構造を同定するために使用される)などの無機材料において決まって使用される電子ビーム微量分析は、比較的弱い信号対バックグラウンド情報によって阻害される。暗視野TEM及びゼルニケ位相コントラストTEMモードを含むがこれらに限定されない手法を使用して、バックグラウンド照明の相対割合を低減し、TEM画像内の散乱電子からの相対信号を増加させることができる。
【0011】
光学顕微鏡法の分野では、比較的小さな割合の入射光子を散乱させる微生物試料の分解画像は、位相コントラスト顕微鏡法の使用によって改善することができる。位相コントラスト顕微鏡法の動作原理は、試料によって散乱された光子と散乱せずに試料を通過した光子とを区別することである。この文脈において、散乱とは、散乱光子の位相シフトをもたらす、光子と試料の原子との間の相互作用を指す。光学要素(例えば、コンデンサリングスリット(condenser annulus)、位相シフトリング、及びフィルタリング要素)の導入は、位相コントラスト顕微鏡が、非散乱光子を選択的に位相シフト及び減衰させ、生体試料の画像におけるコントラストをすることを可能にする。光子光学系とは対照的に、類似の光学要素は、TEMなどの荷電粒子光学系には利用できない。少なくともこの理由のために、電子波の散乱部分又は電子波の非散乱部分のいずれかに制御された位相シフトを生成することは、線量感受性試料の撮像を損なう重要な技術的課題を提示する。
【0012】
電磁放射を使用して、TEM内で生成された電子ビームを操作することができる。
図1Cを参照してより詳細に説明するように、誘導コンプトン散乱は、電磁放射(例えば、連続波レーザ、パルスレーザ、X線など)への曝露によって電子ビーム内に誘導することができる。この曝露の結果として、電子は位相シフトを受けることができる。例示的な実施形態では、連続波レーザを共振光キャビティ内に向けることができる。この原理は、位相コントラストTEMを達成するために使用することができるが、その用途は、少なくとも部分的には、光キャビティのサイズが制約されるため、及び電子ビームに近接して利用可能な空間が制限されるため、制限される。
【0013】
主に軽元素から構成されるナノ構造材料のコントラストを増加させる1つの手法は、試料に入射する前に電子ビームの焦点を外し、回折面の位置で適切な強度の電子ビームにEM放射を印加し、それによってコンプトン散乱を刺激することである。この照明モードは、以下の段落では「発散照明」と呼ばれ、
図1Eを参照して説明される。このような技術は、例えば、規則的な構造を含むカーボンナノチューブ及び有機結晶における層間間隔の可視化及び測定を可能にする。発散照明下では、電子ビームの第1の回折面は、
図1Bを参照してより詳細に説明されるように、TEMの対物セクションの一部を形成する下部磁極片の上面と下面との間の途中の点で生じ、これにより、高強度EM放射の焦点領域が、対物セクションの他の構成要素(例えば、試料ホルダ、対物開口部、低温ボックス、及び低温シールド)から離れて、下部磁極片の中央開口部内の電子ビームの回折面と位置合わせされることが可能になる。
【0014】
下部磁極片の本体内への光キャビティの統合は、重要な技術的課題を提示する。例えば、下部磁極片の中央開口部の内外への光学部品の移動を容易にするために本体内に形成された開口部は、磁極片材料の磁気飽和が生じるレンズコイルの閾値最大アンペア回数を下げることができる。別の例では、開口部の形状、位置、及び向きは、第1の回折面の位置、及び下部磁極片の中心軸に対する光キャビティの角度によって制約される。更に別の例では、下部磁極片の中央開口部のサイズは、電気機械的位置合わせ構成要素を含めることによって制約され得るが、対物セクション及びTEMのライナーチューブの真空完全性を維持することに関する問題を導入し得る。このようにして、光キャビティを受け入れるように下部磁極片を構成することは、真空システム統合などの他の用途に使用されない下部磁極片に対する複数の構造的修正を含む。
【0015】
図1Aは、本開示のいくつかの実施形態による、例示的な透過型電子顕微鏡(TEM)システム100を示す概略図である。以下の説明では、例示的なTEMシステム100の内部構成要素及び機能の詳細は、簡略化のため、及び
図5を参照してより詳細に説明されるように、TEM画像におけるコントラストを増強するために
図2A~
図4を参照してより詳細に説明されるように構成された、
図1B~
図1Eを参照してより詳細に説明されるような様々な構成要素に説明を集中させるために省略される。例示的なTEMシステム100は、電子銃セクションと、対物セクション120を含むTEMカラムと、撮像セクションとを含む。本開示は、対物セクション120に焦点を当てる。要するに、電子銃セクションは、電子ビームが形成され、真空を通してTEMカラム内に伝導されるように、高電圧電界放出源又は他の放出電子源を含むことができる電子源を励起するように構成された電子機器を含む。
【0016】
TEMカラムは、電子ビームの特性を制御するための電磁レンズ125及び複数の開口部を含む、ビーム形成のための構成要素を含む。TEMカラム構成要素は、とりわけ、コンデンサレンズ、対物レンズ、投影レンズ、並びに対応する開口部を含む。撮像セクションは、試料分析で使用するための画像、スペクトル、及び他のデータを生成するように構成された1つ以上のタイプの検出器、センサ、スクリーン、及び/又は光学系を含む。例えば、撮像セクションは、とりわけ、シンチレータスクリーン、双眼鏡、走査透過型電子顕微鏡(STEM)検出器(単数又は複数)、カメラ(単数又は複数)、電子エネルギー損失分光法(EELS)検出器を含むことができる。
【0017】
図1Bは、本開示のいくつかの実施形態による、低温試料の分析に使用される構成要素を含む透過型電子顕微鏡の例示的な対物セクション120を示す概略図である。
図1Bは、電子ビームと相互作用するTEM100の構成要素の説明に焦点を当てるために、真空エンクロージャなど、
図1Aに示す対物セクションのいくつかの要素を省略している。例示的な対物セクション120は、上部磁極片、下部磁極片、試料ホルダ、及び対物開口部を含む。場合によっては、対物セクションはまた、低温シールドなどの低温試料の撮像及び/又は分析に使用するための構成要素を含む。同様に、TEM100は、自動試料ローダを含むことによって、複数の試料の自動連続分析用に構成することができる。
【0018】
本開示の文脈では、上部磁極片と下部磁極片との間に光キャビティを組み込むために利用可能な体積は、横方向寸法「R」及び垂直方向寸法「Z」によって制限され、「横方向」は、ビーム軸Aに実質的に垂直な方向を指し、「垂直」は、ビーム軸Aに実質的に平行な方向を指す。「実質的に」という用語は、ビーム軸Aに対して横方向に向けられた構成要素間又は垂直に向けられた構成要素間の角度の偏差が本開示の範囲内で生じ得ることを示すために使用される。
【0019】
コントラストを改善するために、1つの可能な手法は、下部磁極片と試料ホルダとの間に光キャビティを導入することである。下部磁極片と試料ホルダとの間に光学部品及び/又は保持装置が存在する場合、寸法R及びZは、光キャビティを導入するための上部磁極片と下部磁極片との間の利用可能な体積を画定する。垂直方向寸法Zは、約3mm~約25mmであり得、異なる垂直方向寸法が、異なるタイプの分析に使用される。横方向寸法Rは、約10mm~約15mmであり得るが、場合によっては、光学部品及び/又は保持構成要素は、光学システムの複雑性の増加を犠牲にして、体積の外側に配置されることができる。いくつかのシステムでは、試料ホルダは、垂直方向寸法Zに対して実質的に中心に置かれる。したがって、試料ホルダと下部磁極片との間の光キャビティに利用可能な垂直空間は、約2mm~約4mmであり得る。電子ビームのために確保された水平空間は、光学部品がない状態に保たれるべきR寸法における1mm~5mmの横方向距離を意味する。低温TEM用途では、空間制約がより大きく、垂直方向寸法Zの空間が1.5mm以下に制限される(例えば、場合によっては、空間が利用可能でない)。このようにして、空間の制限により、試料ホルダと下部磁極片との間の光キャビティの使用が妨げられる。或いは、光キャビティは、
図1E~
図4を参照してより詳細に説明されるように、下部極自体に導入され得る。
【0020】
図1Cは、本開示のいくつかの実施形態による、例示的な光キャビティ140を示す概略図である。いくつかの実施形態では、例示的な光キャビティ140は、
図1のTEM100などの電子顕微鏡の下部磁極片に組み込まれるように構成される。いくつかの実施形態では、電磁(EM)放射150と電子ビーム155との相互作用は、光キャビティ140内で再循環されるEM放射150の焦点領域に電子ビーム155を通過させることによって誘発される。そのために、光キャビティ140は、同心球面キャビティ、ほぼ同心のキャビティ、共焦点キャビティ、平面キャビティ、ほぼ平面のキャビティ、又は他の構成を一緒に形成する2つ以上のミラー145を含むことができる。光キャビティ140は、電子ビーム155の位置(例えば、ビーム軸Aの位置)にEM放射を集中させるように構成することができる。例えば、EM放射150強度の焦点領域が実質的に電子ビーム155の位置で生じるように、ミラー145を位置合わせし、横方向距離143を設定することによって、光キャビティ140内の強め合う干渉を誘発することができる。例示的な例では、10Wのレーザを光キャビティ140に導入することができ、そこで、約100kWの電力でビーム軸Aの周りの焦点領域に集中させることができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、EM放射150は、紫外範囲、可視範囲、及び/又は赤外範囲の光子を含むことができる。EM放射150は、レーザエネルギーのビームとして光キャビティ140に提供され得る。例えば、EM放射150は、正弦波電力信号として示される連続波レーザであり得る。例示的な例では、EM放射150は、1064nmの波長で光子を放出するように構成されたNd:YAGレーザ源又はCO2レーザ源で生成することができる。別の例では、EM放射150は、532nmの周波数倍増光子を含むことができる。
【0022】
図1Bを参照して説明したように、電子ビーム155が光キャビティ140を妨げられずに通過するための空間を維持することは、ミラー145の構造、間隔、及び向きに機能的制約を課すことができる。垂直方向寸法Zにおける光キャビティ140のサイズ141及び横方向寸法Rにおける光キャビティ140の長さ143は、ミラー145、ミラー145間の間隔、及びミラー145を所定の位置に保持するために使用される保持装置を含む。このようにして、光キャビティ140のサイズを試料ホルダと下部磁極片との間の空間と比較して、光キャビティ140を下部磁極片の外部に導入することができるか否かを判定することができる。更に、低温ボックス及び低温シールドも同じ領域に配置され、利用可能な空間を更に低減する。
【0023】
典型的なTEMシステム(例えば、
図1AのTEM100)では、試料ホルダと下部磁極片との間の距離は、約5mm~約11mmとすることができ、そのうち、試料ステージの構成要素、対物開口部、及び低温顕微鏡のための構成要素は、試料面の下約3mm~約4mmも占有することができる。光キャビティ140が安定しており、電子ビーム155の周囲の領域を光学部品がない状態に保つために、ミラー145は、幅(例えば、直径)が約2mm~約10mmであり得る。保持装置を含むことにより、光キャビティの垂直方向のサイズを10mm以上も増加させることができる。サイズ141を利用可能な空間と比較することによって、光キャビティ140が大きすぎて試料ホルダと下部磁極片との間に導入できないことが分かる。
【0024】
光学的考慮事項に少なくとも部分的に基づいて、光キャビティ140は、電子ビーム155に対して約45度~約90度の角度αで向けられた光軸157を画定することができ、角度αは、その部分範囲、端数、及び補間を含む。光キャビティ140を角度αに向けることにより、位相シフトに対する定在波パターンの変調効果を低減することができる。このようにして、位相シフトは、電子がEM波150を通過する軸157に沿った位置に対して無視できるほどの感度を示すか、又は感度を示さない可能性がある。いくつかの実施形態では、ミラー145間に生じる定在波格子は、光軸157と位置合わせされない中心軸によって特徴付けられる。場合によっては、αは、ビーム軸Aと格子の中心軸との間の角度に少なくとも部分的に基づいて決定することができる。いくつかの実施形態では、αは、約45度、約50度、約55度、約60度、約65度、約70度、約75度、約80度、約85度、又は約90度の角度であり得、それらの端数及び補間を含む。幾何学的考慮事項に少なくとも部分的に基づいて、光キャビティ140の性能は、50度を超える角度αによって損なわれ得る。そのために、約40度を超えると、電子ビーム155の領域を光学部品から離して維持するために使用される光キャビティ140の長さ143は、光キャビティ140のサイズ141を光キャビティ140のために利用可能な空間よりも大きくするか、又は光キャビティ140のより小さい開口部数を犠牲にして、実用的でない可能性がある。追加的に又は代替的に、例えば、EM放射150がミラー145のうちの1つ以上を介して光キャビティ140内に導入される場合、光キャビティ140内へのエネルギー伝達は、EM放射150(例えば、レーザビーム)を適切な点及び角度で対物セクション内に結合することに関連する課題に少なくとも部分的に起因して、比較的高い角度で損なわれる可能性がある。
【0025】
有利なことに、電子ビーム155の経路に光キャビティ140を導入することにより、生体試料又は放射線量に敏感な他の試料のTEM画像のコントラストを改善することができる。特定の物理的現象又は機構に束縛されるものではないが、電子ビーム155は、散乱部分と非散乱部分とを含むことができ、散乱部分は試料と衝突し(例えば、弾性相互作用及び/又は非弾性相互作用)、非散乱部分は衝突せずに試料を通過した。相互作用の例としては、吸収、反射、偏向、イオン化などが挙げられ、これらはTEM画像におけるバックグラウンドからの偏差として記録される。例えば、明視野TEMにおいて、電子を散乱した試料の領域は、電子を散乱しなかった試料の領域よりも暗く見える可能性がある。このようにして、一般的に低い散乱確率によって特徴付けられる試料は、比較的高い割合の非散乱電子と比較的低い割合の散乱電子とを含む可能性があり、その結果、画像コントラストが低くなる。
【0026】
光キャビティ140内でのEM放射150との相互作用は、EM放射150を通過している電子波155の非散乱部分の位相シフトをもたらすことができ(例えば、約0radから約π/2radへの位相シフトを誘発する)、これは、電子顕微鏡画像の位相コントラスト増強を生成することができる。
【0027】
図1Dは、本開示のいくつかの実施形態による、平行照明下の試料を示す概略図である。これに関連して、平行照明は、
図1の例示的なTEM100などのTEMにおける画像生成の技術を指し、実質的に平行な電子ビームが試料面を通過する。電子を吸収、反射、及び/又は散乱する試料の領域は、通常、画像において暗く見え、他の領域は明るく見え、電磁レンズは、画像がTEMの撮像セクション内の検出器表面上に投影され得るようにビームを成形する。
図1D~
図1Eでは、電磁レンズは固体光学レンズとして示されているが、電磁レンズは、光子光学系におけるような屈折を通してではなく、電磁場の印加を通して荷電粒子に作用することが理解される。
【0028】
平行照明では、後焦点面及び第1の回折面は、下部磁極片と試料面との間で一致する。
図1Cを参照して説明したEM放射を使用してコントラスト増強を組み込むために、光キャビティ140を後焦点面に位置決めすることができる。しかしながら、
図1Bを参照してより詳細に説明されるように、光キャビティ140のために利用可能な空間は、典型的には、対物セクション120の他の要素の中でもとりわけ、試料ホルダ又はローダ、対物開口部、及び/又は低温シールドの構成要素によって占有される。そのために、光キャビティ140のサイズに対する制約は、光学部品の導入を重要な構造的課題にする。
【0029】
図1Eは、本開示のいくつかの実施形態による、発散照明下の試料を示す概略図である。いくつかの実施形態では、構造的制約は、発散照明下でTEMを動作させることによって対処される。これに関連して、発散照明とは、試料が拡大ビームによって照明されるように試料面の上流で電子ビーム155を集束させることを指す。図示のように、対物レンズは、電子ビーム155を集中させるように作用し、定在波の中央波腹の1つ以上が、下部磁極片170の上面167と下面169との間の途中の回折面165上に生じる。このようにして、光キャビティ140を収容するために、1つ以上の側方開口部175を下部磁極片170に形成することができる。回折面165の位置は、コンデンサレンズの強度又はTEM100の他の動作パラメータに少なくとも部分的に基づいて変化し得る。そのために、回折面165は、ビーム軸A上の、試料面に対して、約10mm~約30mmの位置に形成することができ、部分範囲、端数、及びそれらの補間を含む。例えば、回折面165は、試料面に対して、約10mm、約11mm、約12mm、約13mm、約14mm、約15mm、約16mm、約17mm、約18mm、約19mm、約20mm、約21mm、約22mm、約23mm、約24mm、約25mm、約26mm、約27mm、約28mm、約29mm、又は約30mm(それらの端数及び補間を含む)のビーム軸A上の位置に形成することができる。
【0030】
回折面165における光キャビティ140の挿入を容易にするために、側方開口部175の垂直方向寸法180は、回折面165と重なり合うことができる。以下の段落でより詳細に説明するように、下部磁極片170の態様は、光キャビティ140の中央波腹が発散照明下で電子ビーム155の回折面165と実質的に一致するように光キャビティ140を導入するように構成される。場合によっては、発散照明下で動作することは、光学性能のいくつかの側面に影響を及ぼし得る。そうではあるが、非等方性倍率、画像歪み、及び軸外コマ収差などの影響は、画像のソフトウェア補正によって対処することができ、又はそれらが画質に影響を及ぼさない場合には無視することができる。
【0031】
図2Aは、従来技術による下部磁極片の断面を示す概略図である。従来技術のTEMシステムにおいて、下部磁極片は、典型的には、
図1Eを参照して説明したような側方開口部175を含まない。代わりに、従来技術の下部磁極片は、典型的には、TEMのビーム軸Aと位置合わせされた中央開口部に対して回転対称である固体本体を含む。いくつかのTEMシステムでは、従来技術の下部磁極片は、(環境TEMシステムにおけるように)真空システムの導管として機能するために、又は「高コントラスト開口部」と呼ばれる対物開口部と同様のビーム開口部構成要素の導入を容易にするために、追加の開口部を組み込む。真空導管の文脈では、真空構成要素との結合、並びに追加の開口部の向き及び/又は位置は、回折面165における光キャビティ140の導入を容易にしない。例えば、追加の開口部は、真空システムと機械的かつ流体的に結合され、光キャビティ140の導入を妨げる。同様に、高コントラスト開口部は生体試料の画像のコントラストを高めるために使用することができるが、高コントラスト開口部は回折面に挿入されない。
【0032】
図2Bは、本開示のいくつかの実施形態による、例示的な下部磁極片200の断面を示す概略図である。例示的な下部磁極片200は、
図1Aの例示的なTEMシステム100に組み込むことができる
図1Eの下部磁極片170の一例である。例示的な下部磁極片200は、本体220の上面210と下面215との間に配置された複数の側方開口部205を含む。例示的な下部磁極片200は、中心軸Bと同心の中央開口部225を更に含み、
図3A~
図3Dを参照してより詳細に説明するように、中心軸Bに対して側方開口部205が実質的に対称に配列される(例えば、回転対称である)。
図2Bに示すように、側方開口部205は、本体220の側面221から中央開口部225まで本体220に形成される。側面221は、中心軸Bに対して傾斜しており、上面210に向かってテーパ状になっている。
【0033】
このようにして、側方開口部205は、垂直方向寸法180によって特徴付けることができる。
図2Bに示すように、垂直方向寸法180は、中心軸Bからの半径方向距離とともに変化することができる。例えば、垂直方向寸法180は、中心軸Bからの距離の増加とともに増加するように示されている。いくつかの実施形態では、垂直方向寸法180は、中心軸Bからの半径方向距離から実質的に独立している。回折面165の位置における中央開口部225へのEM放射150の光結合を容易にするために、中央開口部225との交点における側方開口部(単数又は複数)205の垂直方向寸法180は、
図3B及び
図4を参照してより詳細に説明されるように、回折面165の位置の範囲と重なり合うことができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、中央開口部225は、複数のセクションを含むことによって光キャビティ140の1つ以上の構成要素を一体化するように構成され、複数のセクションにわたって、中央開口部225は、上面210における第1の幅230から上面210の下流の位置における(例えば、下面215における)第2の幅231まで拡大する。
図2Bに示される例示的な下部磁極片200において、中央開口部225は、第1のセクション235及び第2のセクション240を画定し、中央開口部225は、第1のセクション235における第1の幅230に実質的に等しい幅と、下面215において第1の幅230から第2の幅231まで増加する軸方向に変化する幅とを有する。このようにして、中央開口部225は上面210に向かってテーパ状になっている。第2の幅231は、約3mm~約50mmとすることができ、これらの部分範囲、端数、及び補間を含む。例えば、第2の幅231は、約3mm、約5mm、約10mm、約15mm、約20mm、約25mm、約30mm、約35mm、約40mm、約45mm、又は約50mm(それらの端数及び補間を含む)であり得る。第2の幅231は、下部磁極片200の磁気飽和挙動と、光学部品を収容し、電子ビーム155の周囲の領域をクリアに保つために使用される空間とに少なくとも部分的に基づいて決定することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、中央開口部225は、中心軸Bに対して実質的に対称である。本体220は、TEM100の対物セクション120において電磁レンズを使用する手法として、磁場を伝導する材料(例えば、比較的高い透磁率によって特徴付けられる)から形成することができる。
【0036】
図2Cは、本開示のいくつかの実施形態による、段階的な中央開口部225を含む例示的な下部磁極片245の断面を示す概略図である。例示的な下部磁極片245は、4つのセクション、すなわち、第1のセクション235、第2のセクション240、第3のセクション241、及び第4のセクション243を含む。上面210から下面215に向かって距離が増加するにつれて、各漸進的セクションの幅は、第1の幅230から第2の幅250へ、次いで第3の幅255へと増加する。
図2Cに示される幾何学的形状は、縮尺通りにはされておらず、中央開口部225の構造的特徴を示すために提供されていることに留意されたい。そのために、第3のセクション241は、中心軸Bに対して上面210と下面215との間に中間面260を画定することができる。いくつかの実施形態では、中間面260は、例えば、金属ガスケット又はエラストマーOリングを介して、ライナーチューブ、フランジアダプタなどのTEMシステム100の対応する構成要素と真空気密シールを形成するように構成された溝、隆起、ナイフエッジ、又は他の表面特徴261を含むことができる。フランジアダプタは、第1の表面で中間面260と接合し、第2の表面上でライナーチューブと接合するように構成することができる。そのために、例示的な下部磁極片245は、フランジアダプタを介してライナーチューブと機械的に結合するように構成することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、第2のセクション240の第2の幅250は、実質的に一定とすることができ、第1の幅230より広く、第3の幅255より狭くすることができる。第3の幅255は、約5mm~約100mmとすることができ、これらの部分範囲、端数、及び補間を含む。例えば、第2の幅231は、約5mm、約10mm、約15mm、約20mm、約25mm、約30mm、約35mm、約40mm、約45mm、又は約50mm、約55mm、又は約60mm、約65mm、又は約70mm、約75mm、約80mm、約85mm、約90mm、約95mm、約100mm(これらの端数及び補間を含む)であり得る。第3の幅255は、下部磁極片245を変形させることなく真空気密シールを形成することに関与する構造的制約に少なくとも部分的に基づいて決定することができ、より大きな幅は対物セクション120内で利用可能な垂直空間によって制限される。例えば、下部磁極片245の歪み変形を低減するために、より大きい第3の幅255は、より大きい第3のセクション241に対応することができ、これはまた、対物セクション120の電磁特性(例えば、対物レンズ性能)に影響を及ぼすことができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、第4のセクション243は、第1のセクション235に向かってテーパ状であり得、第2の幅250以下であり得る第4のセクション243と第2のセクション240との接合部における幅を有する。このようにして、
図2B~
図2Cの磁極片200及び245は、光キャビティ140及びEM放射150の中央開口部225への導入を容易にする側方開口部205を含むように構成することができる。更に、中央開口部は、追加の空間を占有する光キャビティ140を位置合わせ及び/又は動作させるために使用される光学システムの構成要素を組み込むことができ、光キャビティ140が存在しない間、下部磁極片200及び245内に留まることができる。このようにして、光キャビティ140のサイズ141及び長さ143は、側方開口部205を通って中央開口部225内に延在する格納式部材内に位置合わせ構成要素及び較正構成要素を組み込むシステムに対して低減され得る。
【0039】
図3Aは、本開示のいくつかの実施形態による、複数の側方開口部205を含む例示的な下部磁極片300を示す概略図である。例示的な下部磁極片300は、側面221と、側面221から中央開口部225まで本体220を貫通して形成された側方開口部205とに説明を集中させるために、部分断面で示されている。このようにして、例示的な下部磁極片300は、
図1Eの下部磁極片170並びに
図2B~2Cの下部磁極片200及び245の一例である。例示的な下部磁極片300の図示された実施形態では、中心軸Bに対して実質的に対称である4つの側方開口部205が、側面221に形成される。本開示の文脈では、中心軸Bに対して側方開口部205が実質的に対称な配置は、少なくとも部分的には、側方開口部205が本体220とは異なる電界誘電率によって特徴付けられるので、機能的考慮事項である。このようにして、非対称配置は、電子ビーム155を形成するために使用される電磁レンズの動作に干渉する可能性があり、それによって、収差、撮像アーチファクト、又はTEM撮像及び微量分析における解像度の低下をもたらす。逆に、回転対称は収差を誘発する可能性があり、側方開口部205のサイズ、形状、及び向きを、性能考慮事項によって機能的に制約させる。
【0040】
図3Bは、本開示のいくつかの実施形態による、電磁放射を磁極片300の中央開口部225に光学的に結合するように構成された側方開口部205を含む例示的な下部磁極片300を示す概略図である。例示的な下部磁極片300は、1つ以上のモダリティのEM放射(例えば、
図1EのEM放射150)を中央開口部225内に光学的に結合するように構成された側方開口部205を含むことができる。
図3Bの図示された実施形態では、側方開口部205は、側方開口部205の1つの位置において第1のEM放射150-1を中央開口部225の中及び/又は外に結合するように構造化され、また、側方開口部205の第2の位置において第2のEM放射150-2を中央開口部225の中及び/又は外に結合するように構成される。第1のEM放射150-1は第1の直径305によって特徴付けられ、第2のEM放射150-2は第2の直径310によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、第2の直径310は、第1の直径305と等しいか又はそれより広い。この文脈において、「直径」という用語は、パワー、フラックスなどが閾値(例えば、レイリービーム幅、半値全幅など)未満である位置に起因する「幅」を有するビームを説明するために使用される。いくつかの実施形態では、第1のEM放射150-1及び第2のEM放射150-2は、実質的に等しいエネルギー特性(例えば、中心波長、エネルギー分布関数など)を有する。例えば、光キャビティ140は、第2の直径310を介して内部結合された単一波長水平共振器と、第1の直径305を介して内部結合された単一波長傾斜キャビティと、第1の直径305及び第2の直径310を介してEM放射を結合する単一波長多重ミラー光キャビティ140とを含むことができる。
【0041】
図4Bを参照してより詳細に説明されるように、側方開口部205は、中央開口部225に向かってテーパ状であり得る。いくつかの実施形態では、側方開口部(単数又は複数)205は、それぞれ下面215及び上面210に近接する側方開口部(単数又は複数)205の内面の領域に対応する床部315及び天井部320を画定する。
図3Cを参照してより詳細に説明されるように、床部315及び/又は天井部320は、曲面であるか、又はそれを含むことができる。このようにして、上面210に最も近い天井部320の線及び下面215に最も近い床部315の線は、角度βと幾何学的に同様の角度又は角度βより大きい角度を画定することができる。いくつかの実施形態では、床部315は中心軸Bに対して実質的に垂直であり、天井部320は中央開口部225に向かって傾斜している。いくつかの実施形態では、天井部320及び床部315の両方が、中央開口部225に向かってテーパ状になっている。
【0042】
図3Cは、本開示のいくつかの実施形態による、例示的な側方開口部205の断面325を示す概略図である。いくつかの実施形態では、断面325は、複合曲線の形状をとる側方開口部205の外周330を画定し、床部315及び天井部320は、実質的に直線のセグメントによって接合される実質的に円形のセグメントである。このようにして、側方開口部205は、2つの実質的に円筒形の空き空間領域を架橋する本体220内の空き空間領域を含むことができる。いくつかの実施形態では、天井部320は、第1の直径335を有する実質的に円形の外周の一部に対応する。したがって、天井部320は、約1mm~約10mmの第1の曲率半径(例えば、第1の直径335の半分)によって特徴付けることができ、これらの部分範囲、端数、及び補間を含む。例えば、第1の曲率半径は、約1mm、約2mm、約3mm、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、約10mm、又はそれ以上であり得、それらの端数又は補間を含む。いくつかの実施形態では、第1の曲率半径は、第1の直径305と実質的に等しいか、又は第1の直径305より大きい。したがって、側方開口部(単数又は複数)205は、本体220によって吸収又は反射される第1のEM放射150-1の割合を低減しながら、第1のEM放射150-1を(例えば、光キャビティ140を介して)中央開口部225の中及び/又は外に結合するように構成され得る。部分範囲の例として、第2の曲率半径は、いくつかの実施形態では、約1mm~約3mmであり得、約2mm~約6mmの第1の直径335に対応する。
【0043】
いくつかの実施形態では、床部315は、第2の直径340を有する実質的に円形の外周の一部に対応する。したがって、床部315は、約1mm~約10mmの第2の曲率半径(例えば、第2の直径340の半分)によって特徴付けることができ、これらの部分範囲、端数、及び補間を含む。第1の曲率半径と同様に、第2の曲率半径は、約1mm、約2mm、約3mm、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、約10mm、又はそれ以上であり得、それらの端数又は補間を含む。いくつかの実施形態では、第2の曲率半径は、第2の直径310と実質的に等しいか、又は第2の直径310よりも大きい。したがって、側方開口部(単数又は複数)205は、本体220によって吸収又は反射される第2のEM放射150-2の割合を低減しながら、(例えば、
図4Bを参照して説明したように、光キャビティ140を介して、又は追加のミラー145を介して)第2のEM放射150-2を中央開口部225の中及び/又は外に結合するように構成され得る。部分範囲の例として、第2の曲率半径は、いくつかの実施形態では、約1mm~約5mmであり得、約2mm~約10mmの第2の直径340に対応する。
【0044】
垂直方向寸法180は、約5mm~約20mmとすることができ、それらの端数、部分範囲、及び補間を含む。
図1Eを参照してより詳細に説明されるように、側方開口部(単数又は複数)205は、
図1Dを参照して説明される技術の一部として中央開口部に導入される光キャビティ140を収容するように構成される。そのために、側方開口部(単数又は複数)205は、中央開口部225に向かってテーパ状にすることができ、垂直方向寸法180は、中央開口部225からの距離が増加するにつれて増加する。いくつかの実施形態において、中央開口部225との交点における垂直方向寸法180は、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、約10mm、約11mm、約12mm、約13mm、約14mm、約15mm、約16mm、約17mm、約18mm、約19mm、約20mm、又はそれ以上であり、それらの端数及び補間を含む。
【0045】
図3Dは、本開示のいくつかの実施形態による、中央開口部225に対して実質的に対称に配置された側方開口部205を含む例示的な下部磁極片300を示す概略図である。いくつかの実施形態では、例示的な下部磁極片300は、中心軸Bに対して回転対称パターンで配置された2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上の開口部を含む。例えば、4つの側方開口部205の配置は、隣接する側方開口部205間の90度の相対角度、及び対向する側方開口部205間の180度の相対角度によって特徴付けることができる。同様に、3つの側方開口部に対して、隣接する側方開口部205は、120度の相対角度で分離され得、5つの側方開口部205に対して、72度の口径比で分離され得る。このようにして、隣接する側方開口部205は、360度の比及び側方開口部205の数から決定することができる。側方開口部205の配置の対称性と同様に、側方開口部205の数は、TEM100の対物セクションにおける電磁レンズの性能に対する側方開口部の影響に少なくとも部分的に基づいて、機能的考慮事項である。例えば、3つの側方開口部205を使用することは、例示的な下部磁極片300の近傍における電磁場の飽和を低減することができるが、例えば、磁極片からEM放射を出力結合するために使用されるように、対向する側部から中央開口部へのアクセスを提供するなど、幾何学的考慮事項を導入することもできる。
【0046】
図4は、本開示のいくつかの実施形態による、側方開口部205を含む下部磁極片400の中央開口部225内に配置された光キャビティ140を示す概略図である。この図では、保持装置、位置合わせアクチュエータ、制御電子機器などの光キャビティ140の構成要素は、下部磁極片400の構造的態様に説明を集中させるために省略されている。例えば、側方開口部205が下部磁極片400に形成されて、発散照明下で動作するときに電子ビーム155によって形成される回折面165と光キャビティ140との位置合わせに対応する。そのために、側方開口部(単数又は複数)は、約5mm~約20mmの、上面210から回折面165までの垂直距離405に対応する中心軸B上の位置に重なることができ、これは、それらの部分範囲、端数、及び補間を含む。いくつかの実施形態では、垂直距離405は、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、約10mm、約11mm、約12mm、約13mm、約14mm、約15mm、約16mm、約17mm、約18mm、約19mm、又は約20mmであり、これらの端数及び補間を含む。第2の垂直距離410は、
図1Eを参照して説明されるように、発散照明下での試料面と回折面165との間の分離を表す(例えば、約10mm~約30mm)。したがって、第2の距離410と距離405との間の差は、
図1Bを参照してより詳細に説明されるように、垂直間隔Zの半分に対応することができる。
【0047】
光子ビームなどのEM放射150は、1つ以上のミラー145を介して光キャビティ140に結合され得る。図示の実施形態では、
図3Bの第1のEM放射150-1に対応するEM放射150は、EM放射150を順方向に透過させ、EM放射150を逆方向に反射するように構成された第1のミラー145-1に結合される。このようにして、ミラー145及びミラー基板の材料及び物理的特性に起因する様々な損失機構にもかかわらず、光キャビティに結合されたEM放射150は、光キャビティ140内に捕捉される。光キャビティ140は、電子ビーム(例えば、
図1Dの位相シフトビーム162)の位相シフトをもたらす光学条件を回折面165において生成する第2のミラー145-2を含むことができる。そのために、光キャビティ140は、2つ以上のミラー145を含むことができる。別の例では、各ミラーは、光キャビティのサイズ141及び長さ143を低減する手法として、EM放射150を成形するそれぞれの曲率半径を有することができる。第2のミラー145-2におけるEM放射150のビームの直径は、第1のミラー145-1に結合されるEM放射150のビームの直径よりも狭く、広く、又は等しくすることができる。
【0048】
図1Cを参照してより詳細に説明されるように、第1のミラー145-1及び第2のミラー145-2は、中心軸Bに対して角度αだけ向けられ得る。
図1Cを参照してより詳細に説明するように、角度αは、ビーム軸Aに対して所与の角度だけ向けられた格子縞パターンを生じさせる角度に少なくとも部分的に基づいて決定することができる。いくつかの実施形態では、例えば、ミラーが、ミラー間の実質的に中心に置かれ、光軸157に対して実質的に垂直に位置合わせされた格子縞パターンを生成するように構成される場合、格子縞の角度位置合わせ及び角度αは等しくてもよい。
【0049】
EM放射150を第1のミラー145-1に結合することを容易にするために、又は第1のミラー145-1及び/又は光キャビティ140の他の要素を中央開口部225に収容するために、側方開口部(単数又は複数)205は、中心軸Bに垂直な平面に対して、角度βに実質的に等しいか又はそれより大きい角度で、中央開口部225に向かってテーパ状になり得る。いくつかの実施形態では、テーパ角は角度β未満であり、例えば、側方開口部(単数又は複数)205の垂直方向寸法180は、本体220による干渉なしに光キャビティ140及び入射EM放射150を収容するのに十分な大きさである。しかしながら、側方開口部205の構造には、磁極片の磁気飽和の閾値によって制約が課されることが理解される。
【0050】
図5は、本開示のいくつかの実施形態による、電子顕微鏡画像における位相コントラストを改善するための例示的なプロセス500を示すブロックフロー図である。例示的なプロセス500の1つ以上の動作は、特徴付けシステム、ネットワークインフラストラクチャ、データベース、及びユーザインターフェースデバイスを含むがこれらに限定されない追加のシステムと通信するコンピュータシステムによって実行され得る。いくつかの実施形態では、
図5を参照して説明される動作の少なくともサブセットは、自動的に(例えば、人間の関与を伴わずに)、又は半自動的に(例えば、人間の開始又は限定された人間の介入を伴って)実行される。例示的な実施例では、電子ビーム155を生成及び成形するための動作は、自動的に実行することができ、TEMシステム100は、電子ビーム155の特性を、人間のユーザによって指定することができる設定点又はその付近に維持するように構成される。別の例示的な例では、人間のユーザは、TEM100の動作を平行照明モードから発散照明モードに自動的に変更し、光キャビティ140を中央開口部225内に自動的に拡張するか、又は既に存在するキャビティを適切な動作条件にするTEM100のサブシステムを(例えば、ブラウザ又はソフトウェアアプリケーション、及び/又は押しボタン制御パネルなどのユーザ端末を介して提示される対話型ユーザ環境を介して)起動することによって、本明細書に記載の技術を使用して位相コントラスト撮像を開始することができる。そのために、例示的なプロセス500は一連の動作として説明されるが、動作のうちの少なくともいくつかは、省略され、繰り返され、及び/又は並べ替えられ得ることが理解される。いくつかの実施形態では、追加の動作が、説明を明確にするために省略されている例示的なプロセス500の動作に先行及び/又は後続する。例えば、電子源の較正、電子ビーム155の位置合わせ及び収差補正などのための動作である。
【0051】
いくつかの実施形態において、例示的なプロセス500は、
図4A~
図4Bを参照してより詳細に説明されるように、動作505において、光キャビティ140を中央開口部225に導入することを含む。光キャビティ140を導入することは、光キャビティ140を担持するアーム、保持構造、位置合わせ機構などを作動させて、光キャビティ140を中央開口部225内の位置に移動させることなど、1つ以上のサブプロセスを含むことができる。中央開口部225内の光キャビティ140の位置は、
図1Eを参照してより詳細に説明されるように、回折面165の中心軸B上の垂直位置に対応する。TEMシステム100の保持構造、位置合わせ機構、又は他の構成要素は、中心軸Bに対して角度αだけ傾斜した光軸157に沿って位置合わせされた構成で一対のミラーを保持することができる。
【0052】
例示的なプロセス500は、動作505を省略することができる。例えば、光キャビティ140は、光キャビティ140の1つ以上の構成要素が中央開口部225内に配置される場合のように、ビーム軸Aの周りのクリアランスを維持するように構成することができる。例示的な実施例では、ミラー145及び/又は保持装置を中央開口部225内に配置することができ、それにより、光キャビティ140は、例示的なプロセス500の複数回の反復にわたって、一般にTEM100の動作中などに、中央開口部225内に留まることができる。いくつかの実施形態では、光キャビティ140は、例示的なプロセス500の開始前に既に中央開口部225内に存在することができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、例示的なプロセス500は、動作510において、収束電子ビーム155を生成することを含む。動作510は、試料が発散照明下で曝露されるように、試料面の上流に発散ビームを生成するための他の動作に続くことができる。このようにして、回折面に向かって収束するように電子ビーム155に印加される力を、試料面の下流に印加することができる。
図1Eを参照してより詳細に説明するように、収束電子ビーム155は、ビーム軸Aと位置合わせされ、回折面165に向かって収束する。回折面165は、上面210と下面215との間の中心軸B上の位置で中心軸Bと交差し、複数の側方開口部205と位置合わせされる。収束電子ビーム155を生成することは、TEMカラム内の1つ以上の電磁レンズ125(例えば、コンデンサレンズ)を使用して電子ビーム155に電磁力を印加することを含むことができ、動作515において、収束電子ビームが磁極片を通過することに従って、中央波腹(又は干渉縞)のうちの1つを下部磁極片(例えば、
図2Bの例示的な下部磁極片200、
図2Cの例示的な下部磁極片245、
図3A~
図3Bの例示的な下部磁極片300、
図4Aの例示的な下部磁極片400、又は
図4Bの例示的な下部磁極片450)の中央開口部225内の位置にシフトさせる。
【0054】
先行する説明では、様々な実施形態について説明した。説明の目的で、実施形態の完全な理解を提供するために、具体的な構成及び詳細が記載されている。しかしながら、実施形態は、具体的な詳細がなくても実施され得ることが当業者には明らかであろう。更には、説明される実施形態を不明瞭にしないように、周知の特徴が省略又は簡略化されている場合がある。本明細書に記載の例示的な実施形態は、電子顕微鏡システム、特にTEMシステムを中心としているが、これらは非限定的な例示的な実施形態を意味する。本開示の実施形態は、そのような材料に限定されず、むしろ、原子スケールでの材料の撮像、微量分析、及び/又は処理に広範囲の粒子を適用することができる荷電粒子ビームシステムに対処することを意図している。そのような粒子は、TEMシステム、SEMシステム、STEMシステム、イオンビームシステム、及び/又は粒子加速器システムにおける電子又はイオンを含んでもよいが、それらに限定されない。
【0055】
本開示のいくつかの実施形態は、1つ以上のデータプロセッサ及び/又は論理回路を含むシステムを含む。いくつかの実施形態では、システムは、命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含み、命令は、1つ以上のデータプロセッサで実行されると、1つ以上のデータプロセッサに、本明細書で開示される1つ以上の方法の一部若しくは全部、及び/又は1つ以上のプロセス若しくはワークフローの一部若しくは全部を実施させる。本開示のいくつかの実施形態は、1つ以上のデータプロセッサに、本明細書に開示された1つ以上の方法の一部若しくは全部及び/又は1つ以上のプロセスの一部若しくは全部を実行させるように構成された命令を含む、非一時的機械可読記憶媒体で有形に具現化されたコンピュータプログラム製品を含む。
【0056】
使用されている用語及び表現は、限定の用語としてではなく説明の用語として使用され、そのような用語及び表現を使用するに際して、示され説明される特徴又はその一部分のいかなる同等物も除外する意図はないが、請求される範囲内で様々な修正が可能であることが理解される。したがって、本開示は、具体的な実施形態及び任意選択の特徴を含むが、本明細書で開示される概念の修正及び変形が、当業者によってなされることが可能であり、そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲内にあると見なされることが理解されるべきである。
【0057】
用語が明示的な定義なしに使用される場合、その用語が荷電粒子顕微鏡システムの分野又は他の関連分野における特別な意味及び/又は特定の意味を有しない限り、その単語の通常の意味が意図されることを理解されたい。「約」又は「実質的に」という用語は、記載された特性又は数値からの逸脱を示すために使用され、逸脱は、記載されている構造の対応する機能、特性、又は属性への影響が殆どない又は全く有さない。寸法パラメータが別の寸法パラメータと 「実質的に等しい」と記載されている図示の例では、「実質的に」という用語は、比較される2つの寸法が製造公差などの許容限度内で等しくない可能性があることを反映することを意図している。同様に、整列方向又は角度方向などの幾何学的パラメータが、「約」垂直、「実質的に」垂直、又は「実質的に」平行として説明される場合、「約」又は「実質的に」という用語は、整列方向又は角度方向が、許容限度内で、厳密に述べられた条件と異なり得る(例えば、厳密に垂直ではない)ことを反映することが意図される。一例では、下部磁極片200の中心軸Bは電子ビーム155と 「実質的に整列」することができ、これは電子ビーム155の方向に影響を及ぼす物理現象(例えば、ビームドリフト)から生じる正確な位置合わせからの逸脱を含むことができる。直径、長さ、幅などの寸法値について、「約」という用語は、記述される値から最大で±10%の偏差を説明するものと理解することができる。例えば、「約10mm」の寸法は、9mm~11mmの寸法を説明することができる。
【0058】
本明細書は、例示的な実施形態を提供するものであり、本開示の範囲、適用可能性、又は構成を限定することを意図するものではない。むしろ、例示的な実施形態に続く説明は、当業者に、様々な実施形態を実現することを可能にする説明を提供する。添付の特許請求の範囲に記述されている趣旨及び範囲から逸脱することなく、要素の機能及び構成に様々な変更を加えることができることを理解されたい。
【0059】
実施形態の完全な理解を提供するために、具体的な詳細が本明細書で与えられる。しかしながら、実施形態は、これらの具体的な詳細なしで実施され得ることが理解されるであろう。実施形態を不必要な詳細で不明瞭にしないために、例えば、本開示の具体的なシステム構成要素、システム、プロセス、及び他の要素が、概略図の形態で示され得る、又は図から省略され得る。その他の場合、周知の回路、プロセス、構成要素、構造、及び/又は技術が、不必要な詳細なしに示され得る。
【外国語明細書】