(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088752
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】診断装置、半導体製造装置システム、半導体装置製造システムおよび診断方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240625BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240625BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/68 R
H01L21/302 103
H01L21/205
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062447
(22)【出願日】2024-04-09
(62)【分割の表示】P 2023512208の分割
【原出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】趙 普社
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 涼次
(72)【発明者】
【氏名】角屋 誠浩
(57)【要約】
【課題】静電チャックの膜の表面状態の異常を検出する技術を提供することにある。
【解決手段】膜に静電吸着された試料が載置される試料台を備える半導体製造装置の状態が診断される診断装置において、試料に投入されるエネルギーの変化前後の温度データが取得され、取得された前記温度データを基に膜の異常が検知される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜に静電吸着された試料が載置される試料台を備える半導体製造装置の状態が診断される診断装置において、
前記試料の静電吸着前後の温度データが取得され、
前記取得された前記温度データを基に前記膜の異常が検知されることを特徴とする診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の診断装置において、
前記試料の静電吸着前における前記温度データの平均値と前記試料の静電吸着後における前記温度データの平均値との差が特徴量として求められることを特徴とする診断装置。
【請求項3】
請求項1に記載の診断装置において、
前記温度データの最大値と前記温度データの最小値との差が特徴量として求められることを特徴とする診断装置。
【請求項4】
請求項1に記載の診断装置において、
前記温度データの最大値と前記温度データの最小値との間のデータを用いて時間に対する傾きが特徴量として求められることを特徴とする診断装置。
【請求項5】
請求項1に記載の診断装置において、
予め定義された正常時の前記温度データと前記温度データとの差分が特徴量として求められることを特徴とする診断装置。
【請求項6】
請求項1に記載の診断装置において、
前記温度データの変化量もしくは前記温度データの変化速度である特徴量、前記特徴量の経時変化または前記膜の異常有無の結果がGUI画面に表示されるとともに前記膜が異常の場合のアクションが提示されることを特徴とする診断装置。
【請求項7】
膜に静電吸着された試料が載置される試料台を備える半導体製造装置の状態が診断される診断装置において、
ヒータの消費電力量が取得され、
前記取得されたヒータの消費電力量の変化データを基に前記膜の異常が検知されることを特徴とする診断装置。
【請求項8】
請求項7に記載の診断装置において、
前記ヒータの消費電力量の変化前における前記ヒータの消費電力量の平均値と前記ヒータの消費電力量の変化後における前記ヒータの消費電力量の平均値との差が特徴量として求められることを特徴とする診断装置。
【請求項9】
請求項7に記載の診断装置において、
前記ヒータの消費電力量の最大値と前記ヒータの消費電力量の最小値との差が特徴量として求められることを特徴とする診断装置。
【請求項10】
請求項7に記載の診断装置において、
前記ヒータの消費電力量の最大値と前記ヒータの消費電力量の最小値との間のデータを用いて時間に対する傾きが特徴量として求められることを特徴とする診断装置。
【請求項11】
請求項7に記載の診断装置において、
予め定義された正常時の前記ヒータの消費電力量と前記ヒータの消費電力量との差分が特徴量として求められることを特徴とする診断装置。
【請求項12】
請求項7に記載の診断装置において、
前記ヒータの消費電力量の変化量もしくは前記ヒータの消費電力量の変化速度である特徴量、前記特徴量の経時変化または前記膜の異常有無の結果がGUI画面に表示されるとともに前記膜が異常の場合のアクションが提示されることを特徴とする診断装置。
【請求項13】
半導体製造装置がネットワークを介して接続され請求項1または請求項7に記載された診断装置を備えることを特徴とする半導体製造装置システム。
【請求項14】
請求項13に記載の半導体製造装置システムにおいて、
前記診断装置は、パーソナルコンピュータであることを特徴とする半導体製造装置システム。
【請求項15】
膜に静電吸着された試料が載置される試料台を備える半導体製造装置の状態を診断するためのアプリケーションが実装されたプラットフォームを備える半導体装置製造システムにおいて、
前記試料の静電吸着前後の温度データが取得されるステップと、
前記取得された前記温度データを基に前記膜の異常が検知されるステップと、が前記アプリケーションにより実行されることを特徴とする半導体装置製造システム。
【請求項16】
膜に静電吸着された試料が載置される試料台を備える半導体製造装置の状態を診断するためのアプリケーションが実装されたプラットフォームを備える半導体装置製造システムにおいて、
ヒータの消費電力量が取得されるステップと、
前記取得されたヒータの消費電力量の変化データを基に前記膜の異常が検知されるステップと、が前記アプリケーションにより実行されることを特徴とする半導体装置製造システム。
【請求項17】
膜に静電吸着された試料が載置される試料台を備える半導体製造装置の状態を診断する診断方法において、
前記試料の静電吸着前後の温度データを取得するステップと、
前記取得された前記温度データを基に前記膜の異常を検知するステップと、を有することを特徴とする診断方法。
【請求項18】
膜に静電吸着された試料が載置される試料台を備える半導体製造装置の状態を診断する診断方法において、
ヒータの消費電力量を取得するステップと、
前記取得されたヒータの消費電力量の変化データを基に前記膜の異常を検知するステップと、を有することを特徴とする診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、診断装置、半導体製造装置システム、半導体装置製造システムおよび診断方法に関する。特に、半導体ウェハを加工する半導体製造装置であるプラズマ処理装置の複数センサから逐次取得した時系列信号(センサ波形データ)を用いた診断装置(PHM:Prognostics and Health Management)に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理中にウェハを搭載し吸着する静電チャック(ESC:Electrostatic Chuck)の表面状態は、表面の損傷、デポ付着などの原因により次第に劣化する。それにより、ウェハの加工速度の異常やウェハの吸着異常などが発生するため、ESCの表面状態の変化を検知し、異常発生前にメンテナンスなどを行う技術が望ましい。しかし、関連センサがないため、稼働装置のESCの表面状態のリアルタイム監視は難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ESCの表面状態の異常を、ESCの表面の熱伝導率の変化により検出する。一般の装置では、特許文献1に記載した方法のように、熱伝導率の変化を温度センサデータの変化により検出する方法が提案されている。しかしながら、エッチング装置のESCにおいては温度制御システムによって、温度センサの値が一定になるため、この方法ではESCの表面の熱伝導率の変化を検出することができない。
【0005】
そこで、本開示は、静電チャックの膜の表面状態の異常を検出する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0007】
一実施の形態によれば、膜に静電吸着された試料が載置される試料台を備える半導体製造装置の状態が診断される診断装置において、試料に投入されるエネルギーの変化前後の温度データが取得され、取得された前記温度データを基に膜の異常が検知される。
【0008】
また、本開示の異常を予兆可能な診断装置は、プラズマ制御部でウェハに投入されるエネルギーを変化させ、データ収集部で温度センサからエネルギー変化前後の温度変化データを取得し、特徴量計算部で前記温度変化データの変化量または変化速度を特徴量として計算し、異常検出部で前記特徴量が閾値を越えた場合に静電チャックの表面状態が異常と判定する。
【発明の効果】
【0009】
静電チャックの表面状態の異常検知の精度を向上することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1に係る故障診断装置の構成の例を示す図である。
【
図2】
図1のエッチング装置の電極構成の例を示す図である。
【
図3】実施例1に係るセンサデータの例を示す図である。
【
図4】実施例1に係る特徴量計算と異常判定の処理フローの例を示す図である。
【
図5】特徴量F1、F2、F3の計算例を示す図である。
【
図7】実施例1に係る異常判定の例を示す図である。
【
図8】実施例2に係るウェハチャック(Wafer Chucking)動作の例を示す図である。
【
図9】実施例1に係る診断結果表示の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態は、プラズマ処理装置の診断装置である。その実施形態の例として、診断装置は、プロセッサとメモリを備えた一般的なパーソナルコンピュータであって、プログラムにしたがって処理するソフトウェアの実装であってもよいし、一般的なコンピュータではなく専用のハードウェアの実装であってもよい。
【0012】
また、コンピュータに専用のハードウェアを組み込み、ソフトウェアの実装とハードウェアの実装を組み合せて実装してもよい。診断装置は、外部接続されてもよいし、他のデータ処理と兼用されるモジュールとして外部接続されてもよい。以下、実施形態について図面を用いて説明する。
【実施例0013】
図1に示す半導体製造装置システム10は、故障診断装置(FDE、単に、診断装置ということもある)100と、エッチング装置(PEE)200を含む。故障診断装置100とエッチング装置200とは、ネットワーク回線NWにより接続されている。エッチング装置200は、この例では、半導体製造装置としてのプラズマ処理装置である。
【0014】
故障診断装置(FDE)100は、データ収集部(DCD)101、特徴量計算部(FCP)102、異常検出部(ADD)103を有し、エッチング装置200とネットワーク回線NWにより繋がっている。エッチング装置200には、本発明と関連するプラズマ(Plasma)制御部(PCD)201、チャンバ(CHA:Chamber)202を含む。故障診断装置100は、エッチング装置200から処理プロセスの時にセンサで測定した時系列データ(これからセンサデータと呼ぶ)204を、ネットワーク回線NWを介して受信し、その受信したセンサデータ204を分析し、分析結果RSを出力する。
【0015】
プラズマ制御部201では、チャンバ202の中で試料としてのウェハ203に投入されるエネルギーを制御する。チャンバ202では、ウェハ203に対して設定されたプロセス条件で加工を行い、この過程のセンサデータ204をリアルタイムでデータ収集部101に送信する。データ収集部101は、受信したセンサデータ204からエネルギーと温度センサのデータを抽出し、特徴量計算部102に送信する。特徴量計算部102は、センサデータ204から前記エネルギー変化前後の温度変化データを取得し、温度変化データの変化量または温度変化データの変化速度を特徴量として計算する。異常検出部103は、計算した前記特徴量の経時変化を分析し、異常があるかどうかの分析結果RSを出力する。
【0016】
図2は上記チャンバ202の構成の例を示す。チャンバ202内には、プラズマ処理中にウェハ203を搭載し静電吸着する静電チャック(ESC:Electrostatic Chuck)205を含む試料台が設けられている。試料台には、ESC205を構成する膜210に静電吸着されたウェハ203が載置されることになる。ウェハ203を加工するときは、ESC205の温度をプロセス設定条件の通りに制御し、ウェハ203をESC205の上に移動し、ウェハ203の上の空間でプラズマPLAを生成する。本発明は、ESC205の膜210の表面状態がウェハ203とESC205の間の熱伝導率THCと関連するため、この熱伝導率THCの変化を監視することで、ESC205の膜210の表面状態の異常を検出することが目的である。
【0017】
ESC205の温度の制御は、複数のヒータ206と温度センサ207を用いたフィードバック温度制御システムで行う。フィードバック温度制御システムは、温度センサ207の温度が設定条件の温度より高い場合にヒータパワーを減少し、温度センサ207の温度が設定条件の温度より低い場合にヒータパワーを増加するように制御する。そのため、プロセス中で温度センサ207のセンサ値(検出された温度値)がほとんど一定になる。熱源などに変化があるとき、温度センサ207のセンサ値は一時的に変化するが、フィードバック温度制御システムによる温度制御が動作するために、温度センサ207の温度は設定条件の温度に戻る。
【0018】
上記現象により温度変化データを取得し、その温度変化データを用いて上記熱伝導率THCの変化を推定することができる。例えば、プラズマPLAのパワーを変えると、プラズマPLAからウェハ203に投入されるエネルギー(プラズマ入熱)209の量が変化し、温度センサ207のセンサ値が設定条件値から一時的に離れて戻る。この過程の温度変化データから温度の変化速度を算出し、もし速度がいつもより早ければ、熱伝導率THCが高くなったことが分かる。
【0019】
図3は上記センサデータの例を示す。
図3の(a)はプラズマPLAのプラズマパワー(Plasma Power)の時間変化を示すセンサデータの一例であり、縦軸はプラズマパワーであり、横軸は時間(TT)である。
図3の(b)は温度センサ207の温度センサ値(Sensor Temperature 01)の時間変化を示すセンサデータの一例であり、縦軸は温度センサ値であり、横軸は時間(TT)である。
図3の(c)は0.1秒の間隔で収集されるセンサデータの一例を示す表である。タイムスタンプ(Timestamp)は0.1秒の間隔であり、センサデータは、この例では、プラズマPLAのパワー(Plasma Power)、温度センサ値(Sensor Temperature 01)、ヒータ206のパワー(Heater Power 01)などが例示的に示される。
【0020】
図3の(a)に示すように、プラズマPLAのプラズマパワー(Plasma Power)は一旦減少し、そして増加するように設定している。
図3の(b)に示すように、プラズマPLAのプラズマパワーの減少に対し、温度センサ値(Sensor Temperature 01)は減少して増加する。プラズマパワーの増加に対し、温度センサ207の温度センサ値は増加して減少する。センサデータは0.1秒の間隔で収集されており、
図3の(c)の表に示すように保存したり、送信したりする。
【0021】
図4で特徴量計算の処理フローを説明する。
図4は、実施例に係る特徴量計算と異常判定の処理フローの例を示す図である。
図4の処理フローは、半導体製造装置の状態を診断するためのアプリケーションが実装されたプラットフォームを備える半導体装置製造システムにおいて、アプリケーションにより実行される処理フローである。
【0022】
ステップS40:
まずは、ESC205の膜210に静電吸着された試料(ウェハ)203が載置される試料台を備える半導体製造装置200において、プラズマパワーを制御することで、ウェハ203に投入されるエネルギーを変化させる。ここは、元のプロセス処理条件にあるプラズマパワー変化の部分を利用することができるが、故障診断専用の処理条件を元プロセス処理条件に追加してもよい。
【0023】
ステップS41:
そして、ステップS40で実施したエネルギー変化前後(エネルギー変化前とエネルギー変化後)のセンサデータ(T)を収集する。例えば、エネルギー変化前の5秒から、エネルギー変化後20秒までの20秒間の時間範囲のセンサデータ(T)を収集する。つまり、ESC205の膜210に静電吸着された試料203が載置される試料台を備える半導体製造装置200の状態が診断される診断装置100において、試料203に投入されるエネルギーの変化前後のセンサデータ(以下、温度データということもある)Tが取得される。そして、取得された温度データTを基にESC205の膜210の異常が診断装置100により検知される。
【0024】
ステップS42:
ここからはデータTを用いて特徴量F1を計算する。エネルギー変化前のデータT1を抽出する。例えば、データTの最初の10個データをデータ(T1)として取る。エネルギー変化後のデータT2を抽出する。例えば、データTの最後の10個データをデータ(T2)として取る。そして、エネルギー変化前のデータ(T1)とエネルギー変化後のデータ(T2)に対して、それぞれに平均値(MEAN(T1)、MEAN(T2))を算出する。
【0025】
ステップS43:
そして、式1で特徴量F1を算出する。
【0026】
F1=MEAN(T1)-MEAN(T2) 式1
式1により、T1平均値とT2平均値との差(特徴量F1)が算出される。つまり、エネルギーの変化前における温度データ(T1)の平均値とエネルギーの変化後における温度データ(T2)の平均値との差が特徴量F1として求められる。
【0027】
ステップS44:
つぎに、データTの最大値(TMAX)と最小値(TMIN)とを取得する。
【0028】
ステップS45:
そして、式2で特徴量F2を算出する。
【0029】
F2=TMAX-TMIN 式2
式2により、温度データTの最大値と最小値との差(特徴量F2)が算出される。つまり、温度データTの最大値と最小値の差が特徴量F2として求められる。
ステップS46:
つぎに、データTの最大値(TMAX)の時刻(L1)とデータTの最小値(TMIN)の時刻(L2)を取得する。
【0030】
ステップS47:
時刻L1と時刻L2の間のデータTの時間に対する傾きを特徴量F3として算出する。つまり、温度データTの最大値(TMAX)と温度データTの最小値(TMIN)との間のデータを用いて時間(L1、L2)に対する傾きが特徴量F3として求められる。
【0031】
ステップS48:
この処理の前にデータTの正常波形データを準備する。この正常波形データは、過去の正常処理プロセスのセンサデータから同じ計算条件で抽出した過去データTである。式3で特徴量F4を算出する。
【0032】
F4=MEAN(各時刻のデータTと正常波形データの差) 式3
式3により、温度データTと事前定義の正常波形データの差分(特徴量F4)が算出される。つまり、予め定義された正常時の温度データの正常波形データと温度データTの波形データとの差分が特徴量F4として求められる。
【0033】
ステップS49:
以上の計算により、特徴量F1、F2、F3、F4の計算が完了する。特徴量(F1、F2、F3、F4)の経時変化をモニタし、所定の閾値を超える場合に異常と判定する。計算の時に、ノイズ低減などの目的で、特徴量計算方法に一般的な統計処理方法を追加してもよい。また、プラズマパワー変化のパターンにより、上記最大値と最小値の代わりに、極大値と極小値が複数取れる場合に、特徴量の数を増やしてもよい。
【0034】
図5は特徴量F1、F2、F3の例を示す。プラズマパワーが2回変化したが、データTは、最初のエネルギー変化の時刻TFの5秒前から最後のエネルギー変化の時刻TEの20秒後までのエネルギー変化前後の区間TPのデータである。データTの最初10個データを用いてT1平均(MEAN(T1))を計算し、最後の10個データを用いてT2平均(MEAN(T2))を計算し、特徴量F1を計算できる。そして、データTの最大値L1と最小値L2と、最大値L1と最小値L2の間のデータTを用いて、特徴量F2と特徴量F3を計算できる。
【0035】
図6は特徴量F4の例を示す。
図5の例と同じ方法でデータT(61)を取得する。そして、正常波形データ60とデータT(61)の差分である特徴量F4を計算できる。
【0036】
図7は異常判定の例を示す図である。
図7の(a)は、特徴量F1の経時変化をモニタの例であり、縦軸が特徴量F1の値、横軸がエッチング処理の累積時間CT(または、処理したウェハの枚数N):CT(or N)を示す。
図7の(b)は、特徴量F2の経時変化をモニタの例であり、縦軸が特徴量F2の値、横軸がエッチング処理の累積時間CT(または、処理したウェハの枚数N)を示す。
図7の(c)は、特徴量F3の経時変化をモニタの例であり、縦軸が特徴量F3の値、横軸がエッチング処理の累積時間CT(または、処理したウェハの枚数N)を示す。
図7の(d)は、特徴量F4の経時変化をモニタの例であり、縦軸が特徴量F4の値、横軸がエッチング処理の累積時間CT(または、処理したウェハの枚数N)を示す。
【0037】
図7に示すように、異常の判定は特徴量の時系列を分析して行う。例えば、特徴量F3に対して、上と下の2つの閾値TH1、TH2があり、特徴量F3の値がいずれかの閾値TH1、TH2を越えると特徴量F3の異常と判定する。つまり、特徴量F3が、閾値TH1、TH2の間の範囲を越えると特徴量F3の異常と判定する(つまり、TH1とTH2の間の範囲から外れると(F3>TH1、または、TH2>F3の場合)、特徴量F3の異常と判定する)。特徴量F4のほうは1つの閾値TH3があるため、この閾値TH3を越えると特徴量F4の異常と判定する(つまり、F4>TH3の場合、特徴量F4の異常と判定する)。全体として、特徴量F1、F2、F3、F4のいずれかが異常になると、装置の異常発生と判定する。しかし、特徴量と故障の関連性を考慮し、2つ以上の特徴量に異常があるときに、エッチング装置200の異常発生と判定するようにしてもよい。
【0038】
また、ESC205は、複数のゾーンがあるタイプがある。
図7の(e)には4つのゾーン(第1ゾーンZ1,第2ゾーンZ2,第3ゾーンZ3,第4ゾーンZ4)があるESC205を示している。
図4の特徴量(F1-F4)の計算と異常判定の処理フローは、例えば、ESC205の第1ゾーンZ1の特徴量(F1-F4)の計算と異常判定の処理フローを示している。各ゾーンZ1,Z2,Z3,Z4のそれぞれに
図4の特徴量(F1-F4)の計算と異常判定の処理フローを用いて、各ゾーンZ1,Z2,Z3,Z4の特徴量(F1-F4)を計算し、異常判定を行うことができる。
【0039】
つまり、膜210に静電吸着された試料203が載置される試料台を備える半導体製造装置200の状態を診断する診断方法は、試料203に投入されるエネルギーの変化前後の温度データを取得する工程と、取得された温度データを基に膜210の異常を検知する工程と、を有するように構成される。
【0040】
また、
図1の半導体製造装置システム10は、半導体装置製造システムと言い換えることができる。ここで、半導体装置製造システムは、半導体製造装置200がネットワークNWを介して接続され、膜210に静電吸着された試料203が載置される試料台を備える半導体製造装置200の状態を診断するためのアプリケーションが実装されたプラットフォームを備える。そして、試料203に投入されるエネルギーの変化前後の温度データが取得されるステップと、取得された温度データを基に膜210の異常が検知されるステップと、がアプリケーションにより実行される、様に構成されている。
【0041】
特徴量のリスト、計算結果、異常診断結果などはGUI(Graphic User Interface)で表示することができる。例えば、診断装置100は、特徴量のリスト、計算結果、異常診断結果などはGUI(Graphic User Interface)で表示する表示画面を有する。あるいは、診断装置100が出力する分析結果RSがネットワーク回線を介してサーバに送信されるような場合において、サーバに特徴量のリスト、計算結果、異常診断結果などはGUI(Graphic User Interface)で表示する表示画面が設けられてもよい。
【0042】
図9にGUI画面の例を示す。
図9のGUI画面90には、ESC故障診断画面(ESC Fault Diagnostic screen)の一例が描かれている。GUI画面90において、半導体製造装置200の装置ID(Device ID)91、開始時間(Start Time)92、終了時間(End Time)93で診断する半導体製造装置200の装置データ(温度データT)を選択できる。特徴量リスト(Feature-LIST)94で、診断に使う特徴量(Feature:F1、F2,F3、F4)、ゾーン(Zone:1=Z1、2=Z2、3=Z3、4=Z4)、パラメータ値(Para)、閾値(TH)を設定することができる。異常判定(Anomaly Judgment)の区域95に、計算した各特徴量(F1-F4)の経時変化を表示する。異常と判定した場合に、アラーム(Alarm)区域96に異常がある特徴量(この例では、F4)を提示する。アクション(Action)97には、その異常の対策として、メンテナンス実施やプロセス条件調整などの作業を提示する。つまり、温度データの変化量または温度データの変化速度である特徴量(F1,F2,F3,F4)、特徴量(F1,F2,F3,F4)の経時変化または膜210の異常有無の結果がGUI画面90に表示され、膜210が異常の場合には、GUI画面90に膜210が異常の場合のアクションが提示される。
【0043】
実施例1によれば、静電チャック205の膜210の表面状態の異常を検出する技術が提供できる。これにより、静電チャック205の膜210の表面状態の異常の検知の精度を向上する。
実施例2では、プラズマ入熱の代わりに、ウェハチャック80(ウェハ203をESC205の上に置く)を利用する場合の処理について説明する。説明がない部分は実施例1と同じである。つまり、実施例1と同一の部分については重複する説明を省略する。
つまり、ウェハチャック80の前に、温度制御により温度センサ値とヒータパワー値が一定にある。ウェハチャック80の時に、ウェハ203の温度がESC205より低いため、ESC205の温度が低くなる。温度制御システムはESC205の温度変化を検知し、ヒータ206のヒータパワーを上げる。ウェハ203の温度がESC205の温度と同じようになったら、ヒータ206のヒータパワー値がだんだん元の値に戻る。
つまり、実施例2では、試料203に投入されるエネルギーの変化前後の温度データに代えて、ヒータ206の消費電力量が取得され、取得されたヒータ206の消費電力の変化データを基に膜210の異常が検知される。
変形例として、試料203に投入されるエネルギーの変化前後の温度データに代えて、試料203の静電吸着前後のESC205の温度データが取得され、取得された試料203の静電吸着前後のESC205の温度データを基に膜203の異常が検知されるように構成してもよい。
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。