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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088851
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】画像形成体の判別方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G07D 7/206 20160101AFI20240626BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240626BHJP
【FI】
G07D7/206
G06T7/00 300E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203848
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】堀内 直人
(72)【発明者】
【氏名】小川 智寿
【テーマコード(参考)】
3E041
5L096
【Fターム(参考)】
3E041AA01
3E041AA02
3E041AA03
3E041BA11
3E041BB10
3E041BC01
3E041EA04
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA04
5L096DA02
5L096EA02
5L096EA03
5L096EA43
5L096JA03
5L096JA09
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】 本発明は、観察距離で画像が変化する画像形成体を対象とした、携帯端末を活用した判別方法ならびにプログラムに関する。
【解決手段】 本発明は、画像領域内に第1画像と第2画像とが形成され、第1画像を判別するための第1比較画像と、第2画像を判別するための第2比較画像とを記憶した情報処理装置が、画像領域を撮影した撮像領域を取り込み、撮像領域から第1画像を撮影した第1観察画像と、第2画像を撮影した第2観察画像とを取得し、第1観察画像と第1比較画像とで第1照合を行い、第2観察画像と第2比較画像とで第2照合を行い、第1照合によって第1観察画像が第1比較画像に対して第1閾値以内であり、かつ、第2照合によって第2観察画像が第2比較画像に対して第2閾値以内であれば、撮像領域にある画像が画像形成体であると判別する画像形成体の判別方法。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の少なくとも一部の画像領域内に第1画像と第2画像とが形成され、前記第1画像が第1距離で視認され、前記第2画像が第2距離で視認される画像形成体の判別方法であって、
前記第1画像を判別するための第1比較画像と、前記第2画像を判別するための第2比較画像とを記憶した情報処理装置が、
前記画像領域を撮影した少なくとも一つの撮像領域を取り込み、
前記撮像領域から、前記第1画像を撮影した第1観察画像と、
前記第2画像を撮影した第2観察画像と、を取得し、
前記第1観察画像と前記第1比較画像とで第1照合を行い、
前記第2観察画像と前記第2比較画像とで第2照合を行い、
前記第1照合によって、前記第1観察画像が前記第1比較画像に対して第1閾値以内であり、かつ、前記第2照合によって、前記第2観察画像が前記第2比較画像に対して第2閾値以内であれば、前記撮像領域にある画像が前記画像形成体であると判別することを特徴とする画像形成体の判別方法。
【請求項2】
前記第1観察画像が、前記画像領域を前記第1距離から撮像して取得され、
前記第2観察画像が、前記画像領域を前記第2距離から撮像して取得されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成体の判別方法。
【請求項3】
前記第1観察画像及び前記第2観察画像が、前記画像領域を同じ距離から撮像して取得され、
前記第1観察画像及び前記第2観察画像が、前記画像領域を互いに異なる倍率で撮像するか、又は、前記画像領域を互いに異なる被写界深度で撮像して取得されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成体の判別方法。
【請求項4】
前記情報処理装置が、撮像手段を有する携帯型端末であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成体の判別方法。
【請求項5】
基材上の少なくとも一部の画像領域内に第1画像と第2画像とが形成され、前記第1画像が第1距離で視認され、前記第2画像が第2距離で視認される画像形成体の判別を実行するためのプログラムであって、
前記第1画像を判別するための第1比較画像と、前記第2画像を判別するための第2比較画像とを記憶した情報処理装置が、
前記画像領域を撮影した少なくとも一つの撮像領域を取り込むステップと、
前記撮像領域から、前記第1画像を撮影した第1観察画像と、前記第2画像を撮影した第2観察画像とを取得するステップと、
前記第1観察画像と前記第1比較画像とで第1照合を行うステップと、
前記第2観察画像と前記第2比較画像とで第2照合を行うステップと、
前記第1照合によって、前記第1観察画像が前記第1比較画像に対して第1閾値以内であり、かつ、前記第2照合によって、前記第2観察画像が前記第2比較画像に対して第2閾値以内であれば、前記撮像領域にある画像が前記画像形成体であると判別するステップと、
を前記情報処理装置に実行させることを特徴とする画像形成体の判別プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、株券、有価証券、通行券、パスポート、カード等の画像形成体の判別方法、画像形成体の真偽判別方法及び画像形成体判別プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
肉眼で観察可能な画像を変化させる技術として、空間周波数を利用するものが存在する。空間周波数とは、明暗の繰返しを波(周波数)として考えたものである。人の視覚(網膜内に投影される画像)は、空間周波数の高低に対して、細かすぎる縞または粗すぎる縞が見えにくいという性質がある。
【0003】
空間周波数の特性を活用した技術の一例として、空間周波数の異なる2つの濃淡画像を合成したハイブリッドイメージ(非特許文献1参照)が存在する。ハイブリッドイメージとは、例えば、画像処理によって、第一の人物写真から低周波成分だけを抜き出した第一の画像と、第二の人物写真から高周波成分だけを抜き出した第二の画像を合成することで形成されている。
ハイブリッドイメージは、観察距離の変化によって網膜内に投影される画像の大きさが変化し、これに伴い空間周波数も変化する。したがって、ハイブリッドイメージを遠距離から観察すると、視覚の感度が低周波成分と合致し、第一の画像が視認できる。一方、近距離から観察すると、視覚の感度が高周波成分と合致することで、第二の画像が視認できる。
【0004】
肉眼で観察可能な画像を変化させる別の技術として、明るさの対比を利用する技術も存在する。明るさの対比とは、ある領域がそれよりも暗い領域に囲まれると、その領域はより明るく見え、逆にそれより明るい領域に囲まれると、その領域はより暗く見える現象である。加えて、ある色で形成された領域が、それとは異なる色の領域で囲まれたとき、囲まれた領域の色が目立って見える現象でもある。
【0005】
空間周波数の特性と明るさの対比の特性とを活用した技術の一例として、画像形成体(10)(特許文献1参照)が存在する。図12(a)は、画像形成体(10A)の一例を示す図であり、マトリクス上に配置された画素に対して、画素内部の画素と異なる色の要素の有無で近距離画像(図12(b)参照)が形成され、かつ、画素の大きさの大小で遠距離画像(図12(c)参照)が形成されている。
画像形成体(10A)は、観察距離の変化によって網膜内に投影される画像の大きさが変化し、これに伴い各々の要素における明るさの対比の効果に強弱が生じる。したがって、遠距離から観察すると、画素自体の大小に対して明るさの対比が強調され、図12(c)に示す遠距離画像(22A)が視認できる。一方、近距離から観察すると、画素内部の画素と異なる色の要素に対して明るさの対比の効果が強調され、図12(b)に示す近距離画像(21A)が視認できる。
【0006】
一方、近年では、スマートフォンに代表される携帯端末が広く一般に普及・活用されている。活用の方法についても、通話やメール、SNSによる情報交換のほかに、付属のカメラ機能で二次元コードから読み取ったアドレスを用いてホームページを閲覧する、読取結果に基づきスマートフォンの画面上に所定の3Dモデルを表示させる、などといった技術が広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-39831号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】“The Art of Hybrid Images: Two for The View of One”,Aude Oliva,Art & Perception 1(2013)65-74
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1及び特許文献1に示した技術は、肉眼かつ観察距離を変化させることが前提である。しかし、観察者の視力は、近視や遠視、乱視を含めた差異が個人差として存在するので、視力によっては画像自体を大きくしないと視認ができない、2種類の画像のうち一方しか視認できないといった視認の可否の問題、画像が切り替わって観察されるまでに腕の曲げ伸ばし以上の距離が必要になるなどといった視認距離の問題が生じてしまう。
特に、銀行券、株券、有価証券、通行券、パスポート、カード等を対象とする場合、限られた面積に縮小して配置することになるため、画像の視認の可否及び視認距離の個人差の問題が大きくなってしまう。
また、目視による確認が前提の技術であるため、単に券面上に配置しただけでは、観察者の注目を引きにくくなるとともに、観察者が観察距離を変化させるという行動を覚えていないと、当該技術を十分に活用してもらえないといった問題が存在した。
【0010】
また、携帯端末のカメラ機能で画像形成体(10)を観察しながら撮影距離を前後させることで、携帯端末のデジタル画面を通じて画像の変化を観察することは可能であるが、肉眼で観察することに変わりはなく、個人差の問題は引き続き存在した。
【0011】
本発明は、肉眼での観察以外の方法で画像形成体(10)を確実に判別できる技術として、情報処理装置(30)で画像形成体(10)を撮像して、自動的に画像領域(12)内に存在する第1画像(21)及び第2画像(22)を判別する方法を提供する。
また、券面上の画像形成体(10)の判別の有無で、当該の券面の真偽を判別する方法を提供する。
さらに、上記の画像形成体(10)の判別、画像形成体(10)を活用した券面の真偽判別を実行するプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、基材上の少なくとも一部の画像領域内に第1画像と第2画像とが形成され、前記第1画像が第1距離で視認され、前記第2画像が第2距離で視認される画像形成体の判別方法であって、
前記第1画像を判別するための第1比較画像と、前記第2画像を判別するための第2比較画像とを記憶した情報処理装置が、
前記画像領域を撮影した少なくとも一つの撮像領域を取り込み、
前記撮像領域から、前記第1画像を撮影した第1観察画像と、
前記第2画像を撮影した第2観察画像と、を取得し、
前記第1観察画像と前記第1比較画像とで第1照合を行い、
前記第2観察画像と前記第2比較画像とで第2照合を行い、
前記第1照合によって、前記第1観察画像が前記第1比較画像に対して第1閾値以内であり、かつ、前記第2照合によって、前記第2観察画像が前記第2比較画像に対して第2閾値以内であれば、前記撮像領域にある画像が前記画像形成体であると判別することを特徴とする画像形成体の判別方法である。
【0013】
また、本発明は、前記第1観察画像が、前記画像領域を前記第1距離から撮像して取得され、前記第2観察画像が、前記画像領域を前記第2距離から撮像して取得されることを特徴とする画像形成体の判別方法である。
【0014】
また、本発明は、前記第1観察画像及び前記第2観察画像が、前記画像領域を同じ距離から撮像して取得され、前記第1観察画像及び前記第2観察画像が、前記画像領域を互いに異なる倍率で撮像するか、又は、前記画像領域を互いに異なる被写界深度で撮像して取得されることを特徴とする画像形成体の判別方法である。
【0015】
また、本発明は、前記情報処理装置が、撮像手段を有する携帯型端末であることを特徴とする画像形成体の判別方法である。
【0016】
また、本発明は、基材上の少なくとも一部の画像領域内に第1画像と第2画像とが形成され、前記第1画像が第1距離で視認され、前記第2画像が第2距離で視認される画像形成体の判別を実行するためのプログラムであって、
前記第1画像を判別するための第1比較画像と、前記第2画像を判別するための第2比較画像とを記憶した情報処理装置が、
前記画像領域を撮影した少なくとも一つの撮像領域を取り込むステップと、
前記撮像領域から、前記第1画像を撮影した第1観察画像と、前記第2画像を撮影した第2観察画像とを取得するステップと、
前記第1観察画像と前記第1比較画像とで第1照合を行うステップと、
前記第2観察画像と前記第2比較画像とで第2照合を行うステップと、
前記第1照合によって、前記第1観察画像が前記第1比較画像に対して第1閾値以内であり、かつ、前記第2照合によって、前記第2観察画像が前記第2比較画像に対して第2閾値以内であれば、前記撮像領域にある画像が前記画像形成体であると判別するステップと、
を前記情報処理装置に実行させることを特徴とする画像形成体の判別プログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、情報処理装置(30)を用いることで、肉眼での観察以外の方法で画像形成体(10)を確実に判別できる。したがって、銀行券、株券、有価証券、通行券、パスポート、カード等を対象とした画像形成体(10)の活用が容易となる。
また、本発明は、情報処理装置(30)を用いて券面上を撮像することで実施できるので、観察者が画像形成体(10)の活用方法を記憶する必要がなく、画像形成体(10)の観察の難易度を引き下げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の判別の対象となる画像形成体(10)の一例を示す図
図2】本発明の判別の対象となる画像形成体(10)における第1画像(21)及び第2画像(22)の効果の一例を示す図
図3】本発明の第1の実施の形態における、情報処理装置(30)が画像形成体(10)から画像領域(12)を含む撮像領域(50)を取り込む一例を示す図
図4】情報処理装置(30)の内部構成の一例を示す図
図5】画像領域(12)の撮像距離(L)が異なる場合を示す図
図6】画像領域(12)の撮像距離(L)が等しい場合を示す図
図7】画像処理によって第1観察画像(51)及び第2観察画像(52)を取得する一例を示す図
図8】互いに異なる倍率によって第1観察画像(51)及び第2観察画像(52)を取得する一例を示す図
図9】互いに異なる被写界深度によって第1観察画像(51)及び第2観察画像(52)を取得する一例を示す図
図10】画像領域(12)を第1距離(L1)及び第2距離(L2)でそれぞれ撮像して実施する、画像形成体(10)判別プログラムのフロー図
図11】画像領域(12)を1つの撮像距離(L)で撮像して実施する、画像形成体(10)判別プログラムのフロー図
図12】従来の画像形成体(10A)の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる発明を実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている技術の範囲内であれば、その他いろいろな実施の形態が含まれる。
【0020】
図1は、本発明で判別の対象となる画像形成体(10)の一例を示す。図1に示すように、本発明における画像形成体(10)は、基材(11)の少なくとも一部に画像領域(12)を有する。このとき、基材(11)の材質には、上質紙やコート紙等の紙材、フィルム等の薄膜又はプラスチック等の板材を含めた平坦面を有する材質が用いられ、画像領域(12)には、第1画像(21)及び第2画像(22)が個別に又は重複して形成されている。なお、後述する画像領域(12)の撮像を容易にする目的で、撮像のトリガーとなるトリガーマーク(13)を画像領域(12)に隣接して配置してもよい。また、画像形成体(10)が複数種類存在する場合、互いを区別する目的で額面(14)や記番号(15)が配置されていてもよい。
【0021】
図2は、画像形成体(10)における第1画像(21)及び第2画像(22)の効果の一例を示す。図2に示すように、目視の観察者(99)が肉眼で画像領域(12)を観察する場合、第1距離(L1)で第1画像(21)が視認される一方、第2距離(L2)で第2画像(22)が視認されるといったように、本発明で判別の対象となる画像形成体(10)は、視認可能な絵柄が観察距離で変化する効果を示す。
【0022】
本発明の実施の形態における画像形成体(10)の判別方法について、図3から図9を用いて説明する。
【0023】
図3は、情報処理装置(30)が画像形成体(10)から撮像領域(50)を取り込む一例を示す。図3に示すように、情報処理装置(30)は、撮像手段(30A)を用いて画像形成体(10)から画像領域(12)を含む撮像領域(50)を、撮像手段(30A)で撮像して取り込む。なお、本発明における情報処理装置(30)は、スマートフォンやタブレット端末を含めた撮像手段(30A)を有する携帯端末を対象とし、撮像手段(30A)は、画像領域(12)を含む撮像領域(50)に対して、静止画又は動画の少なくとも一方を撮像画像(50A)として撮像する。なお、図3では、撮像手段(30A)が情報処理装置(30)に内蔵されて図示されているが、撮像手段(30A)及び情報処理装置(30)が物理的に分離して配置され、撮像手段(30A)が撮像した撮像画像(50A)を有線又は無線によって受信する構成であってもよい。
【0024】
図4は、情報処理装置(30)の内部構成の一例を示す図である。図4に示すように、情報処理装置(30)は、読取部(30B)と、記憶部(30C)と、処理部(30D)と、を少なくとも有している。
【0025】
読取部(30B)は、撮像手段(30A)が撮像した撮像画像(50A)から、第1画像(21)及び第2画像(22)を読取って保存する。このとき、第1画像(21)及び第2画像(22)の取り込み方法の一例としては、後述する各種撮像条件で得られた撮像画像(50A)の中から、第1画像(21)を撮像できたものを第1観察画像(51)、第2画像(22)を撮像できたものを第2観察画像(52)として取り込んでもよい。また、第1画像(21)及び第2画像(22)の取り込み方法の他の一例としては、撮像画像(50A)をガウシアンフィルタ、メディアンフィルタ等のフィルタ処理、二値化または色反転等を含めた公知の画像処理方法で編集して、第1画像(21)を抽出した第1観察画像(51)、第2画像(22)を抽出した第2観察画像(52)をそれぞれ作成して保存してもよい。
【0026】
記憶部(30C)は、あらかじめ第1比較画像(31)と、第2比較画像(32)と、第1閾値(41)と、第2閾値(42)とを少なくとも記憶している。
【0027】
第1比較画像(31)は、第1画像(21)の判別の基準となる画像であり、第2比較画像(32)は、第2画像(22)の判別の基準となる画像である。なお、本発明における第1比較画像(31)及び第2比較画像(32)は、比較対象となる第1画像(21)及び第2画像(22)が撮影された画像又は動画データそのものであってもよいし、撮像画像(50A)に対して画像サイズの拡大・縮小、ガウシアンフィルタやメディアンフィルタ等のフィルタ処理、二値化又は色反転等の公知の画像処理を施し、第1画像(21)及び第2画像(22)が抽出された画像又は動画データを第1観察画像(51)及び第2観察画像(52)として活用してもよい。
【0028】
第1閾値(41)は、第1画像(21)と第1比較画像(31)との比較(第1の比較)に用いる閾値であり、第2閾値(42)は、第2画像(22)と第2比較画像(32)との比較(第2の比較)に用いる閾値である。なお、本発明における第1の比較及び第2の比較は、各々の画像と比較画像との間の一致度(類似度)を求めるパターンマッチング、局所的基準特徴量データの比較(特開2014-174727参照)を含めた公知の比較方法で実施し、第1閾値(41)及び第2閾値(42)は、前述した公知の比較方法に基づく所定の画像又は数値を用いる。
【0029】
処理部(30D)は、後述する画像判別プログラムを保存し、読取部(30B)及び記憶部(30C)の画像または動画データを用いて画像判別を実行する。なお、読取部(30B)における各種観察画像作成の画像処理並びに記憶部(30C)における各種画像および閾値の読取処理についても、処理部(30D)で実施してもよい。
【0030】
情報処理装置(30)による第1観察画像(51)及び第2観察画像(52)の取得方法について、図5から図9を用いて説明する。
【0031】
図5は、撮像距離(L)を変化させる場合の撮像方法の一例を示す図である。図5に示すように、情報処理装置(30)は、画像領域(12)を第1距離(L1)から撮像して第1観察画像(51)を取り込み、画像領域(12)を第2距離(L2)から撮像して第2観察画像(52)を取り込む。
【0032】
図6は、撮像距離(L)が一定の場合の撮像方法の一例を示す図である。図6に示すように、情報処理装置(30)は、撮像距離(L)で画像領域(12)を含む撮像領域(50)を撮像し、後述する図7に示す各種画像処理によって第1観察画像(51)及び第2観察画像(52)を取得する。
【0033】
図7は、図6で撮像した撮像領域(50)について、画像処理によって第1観察画像(51)及び第2観察画像(52)を取得する一例を示す図である。図7において、撮像画像(50A)は画像サイズの拡大・縮小、ガウシアンフィルタやメディアンフィルタ等によるフィルタ処理、二値化や色反転を含めた公知の方法で画像処理が実施され、第1比較画像(31)との比較(第1の比較)に用いる第1観察画像(51)、第2比較画像(32)との比較(第2の比較)に用いる第2観察画像(52)がそれぞれ作成される。
【0034】
図8は、撮像距離(L)が一定であり、かつ、互いに異なる倍率で撮像領域(50)を撮像する一例を示す図である。図8に示すように、情報処理装置(30)は、画像領域(12)を互いに異なる倍率(望遠・広角)で撮像することで、第1観察画像(51)及び第2観察画像(52)を取得する。
【0035】
図9は、撮像距離(L)が一定であり、かつ、互いに異なる被写界深度で撮像領域(50)を撮像する一例を示す図である。図9に示すように、情報処理装置(30)は、画像領域(12)を互いに異なる被写界深度(ピントのボケ具合の大小)で撮像することで、第1観察画像(51)及び第2観察画像(52)を取得する。
【0036】
本発明の実施の形態における画像形成体(10)の判別プログラムについて、図10及び図11を用いて説明する。
【0037】
図10は、画像領域(12)を第1距離(L1)及び第2距離(L2)でそれぞれ撮像(図5参照)して実施する、画像形成体(10)判別プログラムのフロー図である。
【0038】
図10において、情報処理装置(30)は、撮像手段(30A)を起動して(S1)、画像領域(12)を第1距離(L1)から撮像することで読取部(30B)に第1観察画像(51)を取得し(S2)、画像領域(12)を第2距離(L2)から撮像することで読取部(30B)に第2観察画像(52)を取得する(S3)。なお、S1とS2との間に、画像領域(12)中からトリガーマーク(13)を読み取ることで第1観察画像(51)及び第2観察画像(52)の取得を開始する図示しない読取開始工程(S1-2)が存在してもよい。また、第1観察画像(51)及び第2観察画像(52)の取得は、順番を入れ替えても成立する。
【0039】
S2及びS3を実施した情報処理装置(30)は、S2で取得した第1観察画像(51)と記憶部(30C)に記憶している第1比較画像(31)とで第1の比較を行う(S4)。
【0040】
第1の比較によって、第1観察画像(51)が第1比較画像(31)に対して第1閾値(41)以内であれば(S5でYes)、情報処理装置(30)は、S3で取得した第2観察画像(52)と記憶部(30C)に記憶している第2比較画像(32)とで第2の比較を行う(S6)。
【0041】
第2の比較によって、第2観察画像(52)が第2比較画像(32)に対して第2閾値(42)以内であれば(S7でYes)、情報処理装置(30)は、撮像した画像形成体(10)が特定の第1画像(21)及び第2画像(22)を有する画像形成体(10)であると判別し(S8)、判別結果を出力する(S10)。
【0042】
このとき、第1の比較の結果、第1観察画像(51)が第1比較画像(31)に対して第1閾値(41)以内でなければ(S5でNo)、情報処理装置(30)は、撮像した画像形成体(10)が特定の第1画像(21)を有していないと判別して(S9)、判別結果を出力する(S10)。また、第2の比較の結果、第2観察画像(52)が第2比較画像(32)に対して第2閾値(42)以内でなければ(S7でNo)、情報処理装置(30)は、撮像した画像形成体10が特定の第2画像(22)を有していないと判別して(S9)、判別結果を出力する(S10)。なお、第1の比較及び第2の比較は、順番を入れ替えても成立する。
【0043】
図11は、画像領域(12)を1つの撮像距離(L)で撮像(図6から図9参照)して実施する、画像形成体(10)判別プログラムのフロー図である。
【0044】
図11において、情報処理装置(30)は、撮像手段(30A)を起動して(S1)、画像領域(12)を任意の撮像距離(L)から撮像することで撮像画像(50A)を取得する(S21)。
なお、S1とS21との間に、画像領域(12)中からトリガーマーク(13)を読み取ることで第1観察画像(51)及び第2観察画像(52)の取得を開始する図示しない読取開始工程(S1-2)が存在してもよい。また、S21においては、撮像手段(30A)の倍率を変化(図8参照)させて複数取得してもよいし、撮像手段(30A)の被写界深度を変化(図9参照)させて複数取得してもよい。
【0045】
情報処理装置(30)は、S21で取得した撮像画像(50A)に対して画像サイズの拡大・縮小、ガウシアンフィルタやメディアンフィルタ等のフィルタ処理、二値化又は色反転等の公知の画像処理(図7参照)を施し(S22)、S22で得られた画像に対して第1比較画像(31)及び第2比較画像(32)とのパターンマッチングを行う(S23)。
【0046】
S23の結果、第1比較画像(31)に最も一致する画像が得られた場合(S24aでYes)、当該の画像を読取部(30B)に第1観察画像(51)として取得するとともに、第2比較画像(32)に最も一致する画像が得られた場合(S25aでYes)、当該の画像を読取部(30B)に第2観察画像(52)として取得する。このとき、S24aでNoの回数がx(S24bでYes)、S25aでNoの判定が所定の回数がy(S25bでYes)の場合、読取エラー(S26)と判定して、判別結果を出力する(S10)。なお、x及びyの数は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、パターンマッチングの順番は、逆であってもよい。
【0047】
S24a及びS25aがYesだった場合、情報処理装置(30)は、S24aで取得した第1観察画像(51)と記憶部(30C)に記憶している第1比較画像(31)とで第1の比較を行う(S4)。
【0048】
第1の比較によって、第1観察画像(51)が第1比較画像(31)に対して第1閾値(41)以内であれば(S5でYes)、情報処理装置(30)は、S25aで取得した第2観察画像(52)と記憶部(30C)に記憶している第2比較画像(32)とで第2の比較を行う(S6)。
【0049】
第2の比較によって、第2観察画像(52)が第2比較画像(32)に対して第2閾値(42)以内であれば(S7でYes)、情報処理装置(30)は、撮像した画像形成体(10)が特定の第1画像(21)及び第2画像(22)を有する画像形成体(10)であると判別して(S8)、判別結果を出力する(S10)。このとき、S4及びS6は、S23で同時に実施してもよい。なお、判別手段の出力の方法は、画像表示、音声や振動などを含めた公知の方法で実施する。
【0050】
本発明の実施の形態は、第1画像(21)及び第2画像(22)を有する画像形成体(10)に対して、情報処理装置(30)を用いた機械的な判別が可能である。したがって、従来の肉眼での観察に伴う個人差が生じることなく、画像形成体(10)を安定して判別することが可能である。また、本発明では、撮像距離(L)が等しい場合であっても画像形成体(10)の判別が可能なので、画像形成体(10)を各種貴重印刷物及びカード製品に配置して、情報処理装置(30)を有する携帯端末で自動的に二段階認証するといった機械読取及び真偽判別の要素としての画像形成体(10)の活用が可能となる。
【符号の説明】
【0051】
10 画像形成体
11 基材
12 画像領域
21 第1画像
22 第2画像
30 情報処理装置
30A 撮像手段
30B 読取部
30C 記憶部
30D 処理部
31 第1比較画像
32 第2比較画像
41 第1閾値
42 第2閾値
50 撮像領域
50A 撮像画像
51 第1観察画像
52 第2観察画像
L 撮像距離
L1 第1距離
L2 第2距離
99 目視の観察者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12