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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089039
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】電子線マスク検査装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/04 20060101AFI20240626BHJP
   H01J 37/20 20060101ALI20240626BHJP
   H01J 37/153 20060101ALI20240626BHJP
   G03F 1/84 20120101ALI20240626BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20240626BHJP
   G01N 23/2251 20180101ALI20240626BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
H01J37/04 Z
H01J37/20 Z
H01J37/153 B
G03F1/84
H01L21/66 J
G01N23/2251
G01B11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204144
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】安藤 厚司
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 宗博
(72)【発明者】
【氏名】井上 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 寿明
【テーマコード(参考)】
2F065
2G001
2H195
4M106
5C101
【Fターム(参考)】
2F065AA24
2F065BB02
2F065CC18
2F065DD03
2F065FF09
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ00
2G001AA03
2G001AA10
2G001BA07
2G001CA03
2G001GA06
2G001GA09
2G001HA13
2G001JA03
2G001JA04
2G001JA17
2G001KA03
2G001LA11
2G001MA05
2G001QA01
2G001QA10
2G001SA05
2G001SA15
2G001SA30
2H195BD04
2H195BD07
2H195BD11
2H195BD14
2H195BD17
2H195BD19
2H195BD20
2H195BD28
4M106AA09
4M106BA02
4M106CA39
4M106DB05
4M106DB08
4M106DB20
4M106DB30
4M106DH12
5C101AA03
5C101BB02
5C101EE57
5C101EE65
5C101EE68
5C101FF02
5C101FF15
5C101FF48
5C101GG18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】試料外周部での電界の乱れを低減し、ビームキャリブレーション時の放電を抑制する装置の提供。
【解決手段】本発明の電子線マスク検査装置は、マスク基板101を載置するステージ105と、マスク基板の外周部の一部を覆うように配置され、マスク基板の表面側からマスク基板に第1の電位を印加する基板カバー電極318と、マスク基板側の面が第1の電位とは異なる第2の電位に制御された対物レンズ207と、電子線が通過する開口部が形成され、対物レンズとマスク基板との間に配置された第1の電極板314と、ステージ上でマスク基板と離間して配置されたマーク111と、第1の電極板よりも低い高さであってマスク基板表面の高さ以上の高さでマスク基板とマークとの間の隙間を覆うように配置された第2の電極板316とを備え、第1の電極板とマークと第2の電極板とに、マスク基板の表面に印加される第1の電位と同電位が印加される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク基板を載置するステージと、
前記マスク基板の外周部の少なくとも一部を覆うように前記マスク基板上に配置され、前記マスク基板の表面側から前記マスク基板に第1の電位を印加する基板カバー電極と、
マスク基板側の面が前記第1の電位とは異なる第2の電位に制御され、前記マスク基板上に電子線を導く対物レンズと、
前記電子線が通過する開口部が形成され、前記対物レンズと前記マスク基板との間に配置された第1の電極板と、
前記ステージ上で前記マスク基板と離間して配置され、表面に図形パターンが形成されたマークと、
前記第1の電極板よりも低い高さ位置であって前記マスク基板表面の高さ位置以上の高さ位置で、前記マスク基板と前記マークとの間の隙間を覆うように配置された第2の電極板と、
を備え、
前記第1の電極板と前記マークと前記第2の電極板とに、前記マスク基板の表面に印加される前記第1の電位と同電位が印加されることを特徴とする電子線マスク検査装置。
【請求項2】
前記マークと前記第2の電極板は、別体で形成されることを特徴とする請求項1記載の電子線マスク検査装置。
【請求項3】
前記対物レンズと前記第1の電極板との間から前記第1の電極板の前記開口部を通って前記マスク基板にレーザ光が斜入射され、前記マスク基板表面で反射され、前記開口部を通って前記対物レンズと前記第1の電極板との間を進む前記マスク基板からの反射光を受光して、前記マスク基板の表面高さを計測する高さ位置計測センサをさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の電子線マスク検査装置。
【請求項4】
前記開口部が形成された前記第1の電極板の内半径r1は、前記電子線の軌道中心軸から前記レーザ光の入射軌道と前記第1の電極板の表面高さ位置で前記軌道中心軸に直交する面とが交接する位置までの距離dと、前記マスク基板の端部から検査領域までの距離aとを用いて、
d<r1<a
の関係式を満足し、
前記第1の電極板の外半径r2は、前記第1の電極板上の直近のグランド電位の部材までの距離gと係数b1、b2,b3とを用いて、
b1g+b2g+b3<r2
の関係式を満足し、
前記開口部は、前記軌道中心軸に対して軸対称に形成されることを特徴とする請求項3記載の電子線マスク検査装置。
【請求項5】
前記マークは、前記第2の電極板から前記図形パターンが形成される領域までの距離が、前記マスク基板の端部から前記マスク基板の検査対象領域までの距離以上になるように形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の電子線マスク検査装置。
【請求項6】
前記第1の電極板よりも上方の前記第2の電位に制御される部材から延びた、前記第1の電極板を支持する支柱をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の電子線マスク検査装置。
【請求項7】
前記レーザ光の入射軌道と前記マスク基板表面とのなす角度θは、前記マスク基板の端部から検査領域までの距離aと、前記第1の電極板の厚さtと、前記第1の電極板と前記マスク基板表面との隙間cと、を用いて、
arctan{(t+c)/a}<θ
の関係式を満足することを特徴とする請求項3記載の電子線マスク検査装置。
【請求項8】
前記マスク基板の検査領域は、長方形であり、
前記基板カバー電極は、
前記検査領域の短辺側では前記マスク基板と重ならず、前記検査領域の長辺側では前記マスク基板の外周部と一部が重なるように、前記マスク基板上に配置された枠と、
前記枠に配置され、前記マスク基板と接触する複数の導通ピンと、
を有することを特徴とする請求項1又は2記載の電子線マスク検査装置。
【請求項9】
前記枠は、長方向に形成され、
前記複数の導通ピンは、前記枠の長辺側に配置されることを特徴とする請求項8記載の電子線マスク検査装置。
【請求項10】
前記基板カバー電極は、長辺側の前記枠の表面高さ位置が前記マスク基板の表面高さよりも高く、短辺側の前記枠の表面高さ位置が長辺側の前記枠の高さ位置よりも前記マスク基板の表面高さ側に低いことを特徴とする請求項9記載の電子線マスク検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線マスク検査装置に関する。例えば、1次電子ビームの照射に起因した2次電子ビームを検出することにより得られる画像を用いてマスク基板に形成されたパターンを検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、1ギガビット級のDRAM(ランダムアクセスメモリ)に代表されるように、LSIを構成するパターンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになっている。かかる半導体ウェハ上に形成されるLSIパターンの原盤となるマスク基板上に形成されるパターンの欠陥を高精度に検査することが求められる。そのためにも、高精度な画像を撮像する必要がある。
【0003】
検査装置では、例えば、電子ビームを使ったマルチ1次電子ビームで検査対象基板を走査して、検査対象基板から放出されるマルチ2次電子ビームをマルチ1次電子ビームの軌道から分離する。そして、マルチ2次電子ビームを検出器で検出して、パターン画像を撮像する。
【0004】
電子線を用いた画像取得では、検査対象のマスク基板の収率に応じて電子線の最適なランディングエネルギーが存在する。そのため、マスク基板にリターディング電位を印加する。マスク基板にリターディング電位を印加するとマスク基板と電子鏡筒の下面との間に電位差が生じるため、電界が発生する。一方、リターディング電位は、マスク基板外周部にマスク基板の表面側から印加される。そのため、マスク基板上にはリターディング電位をマスク基板の表面に印加するための構造物が配置される。これにより電界が乱れ、電子線の軌道が変化して検査精度を劣化させるといった問題があった。
【0005】
ここで、試料の上方の近傍に、該試料のリターディング電圧と同電位のシールド電極を設けることで、試料近傍の電界の乱れを低減するといった技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、リターディング電圧と同電位のシールド電極を設けることで別の問題が生じる。検査装置では、電子線のキャリブレーションが必要となる。かかるビームキャリブレーション動作は、試料1枚分の画像を取得する間に例えば複数回実施される。ビームキャリブレーション動作は、試料とは別の位置に配置されたマークを電子線で照射することにより行われる。よって、マークが電子線の照射範囲に入る位置までステージを移動することになる。かかる移動の際、シールド電極とステージ或いはステージ上の構造物との間に放電が生じ得るといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-079516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の一態様は、試料外周部での電界の乱れを低減すると共に、ビームキャリブレーション時の放電を抑制することが可能な装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の電子線マスク検査装置は、
マスク基板を載置するステージと、
マスク基板の外周部の少なくとも一部を覆うようにマスク基板上に配置され、マスク基板の表面側からマスク基板に第1の電位を印加する基板カバー電極と、
マスク基板側の面が第1の電位とは異なる第2の電位に制御され、マスク基板上に電子線を導く対物レンズと、
電子線が通過する開口部が形成され、対物レンズとマスク基板との間に配置された第1の電極板と、
ステージ上でマスク基板と離間して配置され、表面に図形パターンが形成されたマークと、
第1の電極板よりも低い高さ位置であってマスク基板表面の高さ位置以上の高さ位置で、マスク基板とマークとの間の隙間を覆うように配置された第2の電極板と、
を備え、
第1の電極板とマークと第2の電極板とに、マスク基板の表面に印加される第1の電位と同電位が印加されることを特徴とする。
【0010】
また、マークと第2の電極板は、別体で形成されると好適である。
【0011】
また、対物レンズと第1の電極板との間から第1の電極板の開口部を通ってマスク基板にレーザ光が斜入射され、マスク基板表面で反射され、開口部を通って対物レンズと第1の電極板との間を進むマスク基板からの反射光を受光して、マスク基板の表面高さを計測する高さ位置計測センサをさらに備えると好適である。
【0012】
また、開口部が形成された第1の電極板の内半径r1は、電子線の軌道中心軸からレーザ光の入射軌道と第1の電極板の表面高さ位置で軌道中心軸に直交する面とが交接する位置までの距離dと、マスク基板の端部から検査領域までの距離aとを用いて、
d<r1<a
の関係式を満足し、
第1の電極板の外半径r2は、第1の電極板上の直近のグランド電位の部材までの距離gと係数b1、b2,b3とを用いて、
b1g+b2g+b3<r2
の関係式を満足し、
開口部は、軌道中心軸に対して軸対称に形成されると好適である。
【0013】
また、マークは、第1の電極板から図形パターンが形成される領域までの距離が、マスク基板の端部からマスク基板の検査対象領域までの距離以上になるように形成されると好適である。
【0014】
また、第1の電極板よりも上方の第2の電位に制御される部材から延びた、第1の電極板を支持する支柱をさらに備えると好適である。
【0015】
また、レーザ光の入射軌道とマスク基板表面とのなす角度θは、マスク基板の端部から検査領域までの距離aと、第1の電極板の厚さtと、第1の電極板とマスク基板表面との隙間cと、を用いて、
arctan{(t+c)/a}<θ
の関係式を満足すると好適である。
【0016】
また、マスク基板の検査領域は、長方形であり、
基板カバー電極は、
検査領域の短辺側ではマスク基板と重ならず、検査領域の長辺側ではマスク基板の外周部と一部が重なるように、マスク基板上に配置された枠と、
枠に配置され、マスク基板と接触する複数の導通ピンと、
を有すると好適である。
【0017】
また、枠は、長方向に形成され、
複数の導通ピンは、枠の長辺側に配置されると好適である。
【0018】
また、基板カバー電極は、長辺側の枠の表面高さ位置がマスク基板の表面高さよりも高く、短辺側の枠の表面高さ位置が長辺側の枠の高さ位置よりもマスク基板の表面高さ側に低いと好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、試料外周部での電界の乱れを低減すると共に、ビームキャリブレーション時の放電を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。
図2】実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
図3】実施の形態1における画像取得処理を説明するための図である。
図4】実施の形態1における基板とマークの配置位置付近の構成の一例を示す図である。
図5】実施の形態1におけるステージ上のビームの軌道中心軸の移動経路の一例を示す図である。
図6】実施の形態1における基板とマークの配置位置付近の構成の他の一例を示す図である。
図7】実施の形態1における基板とマークの配置位置付近の構成の他の一例を示す図である。
図8】実施の形態1におけるシールド電極板のサイズを説明するための図である。
図9】実施の形態1における離軸距離とシールド電極板の外周端からビームの軌道中心軸までの距離との関係の一例を示す図である。
図10】実施の形態1における所望の離軸距離でのシールド電極板の外周端からビームの軌道中心軸までの距離r2とシールド電極板と直近のグランド電位の部材の下面との距離gとの関係の一例を示す図である。
図11】実施の形態1におけるマークの上面の一例を示す図である。
図12】実施の形態1における基板カバー電極の一例を示す上面図である。
図13】実施の形態1における基板カバー電極を基板上に配置した状態の一例を示す図である。
図14】実施の形態1における検査領域の長辺側での基板カバー電極を基板上に配置した状態の一例を示す断面図である。
図15】実施の形態1における検査領域の長辺側での基板カバー電極を基板上に配置した状態の他の一例を示す断面図である。
図16】実施の形態1における検査領域の短辺側での基板カバー電極を基板上に配置した状態の一例を示す断面図である。
図17】実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施の形態では、電子線マスク検査装置の一例として、マルチ電子ビームを用いたマルチ電子ビーム検査装置について説明する。但し、電子線は、マルチビームに限るものではなく、シングルビームであっても構わない。また、以下の構成は、検査装置以外にも電子線をマスクに当てて、マスクからの2次電子を検出することによりマスクの画像を取得する画像取得装置全般に適応しても良い。
【0022】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。図1において、マスク基板に形成されたパターンを検査する検査装置100は、マルチ電子ビーム検査装置の一例である。検査装置100は、マルチ電子ビーム画像取得装置の一例である。検査装置100は、画像取得機構150、及び制御系回路160(制御部)を備えている。画像取得機構150は、電子ビームカラム102(電子鏡筒)、検査室103、検出回路106、チップパターンメモリ123、ステージ駆動機構142、及びレーザ測長システム122を備えている。電子ビームカラム102内には、電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、電磁レンズ205、一括偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、E×B分離器214(分離器)、偏向器208,209、電磁レンズ207(対物レンズ)、シールド電極板314、偏向器218、偏向器225,226、電磁レンズ224、及びマルチ検出器222が配置されている。
【0023】
電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、電磁レンズ205、一括偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、E×B分離器214(分離器)、偏向器208,209、電磁レンズ207、及びシールド電極板314によって1次電子光学系151(照明光学系)を構成する。また、シールド電極板314、電磁レンズ207、E×B分離器214、偏向器218、偏向器225,226、及び電磁レンズ224によって2次電子光学系152(検出光学系)を構成する。
【0024】
マルチ検出器222は、アレイ状(格子状)に配置される複数の検出エレメントを有する。
【0025】
シールド電極板314(第1の電極板)は、例えば、中央部に電子線が通過する開口部が形成され、対物レンズとなる電磁レンズ207とマスク基板101との間に配置される。
【0026】
検査室103内には、少なくともXY方向に移動可能なステージ105が配置される。ステージ105上には、検査対象となるマスク基板101(試料)が配置される。マスク基板101には、露光用マスク基板が含まれる。露光用マスク基板には、チップパターンが形成されている。チップパターンは、複数の図形パターンによって構成される。かかる露光用マスク基板に形成されたチップパターンが半導体基板上に複数回露光転写されることで、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成される。マスク基板101は、例えば、パターン形成面(表面)を上側に向けてステージ105に配置される。また、ステージ105上には、検査室103の外部に配置されたレーザ測長システム122から照射されるレーザ測長用のレーザ光を反射するミラー216が配置されている。
【0027】
また、基板カバー電極318が、マスク基板101の外周部の少なくとも一部を覆うようにマスク基板101上に配置される。基板カバー電極318は、マスク基板101の表面側からマスク基板101にリターディング電位(第1の電位)を印加する。リターディング電位は、リターディング電源回路130から基板カバー電極318へと供給される。
【0028】
また、ステージ105上には、マスク基板101面と同一高さ位置に配置されたマーク111が配置される。マーク111は、ステージ105上でマスク基板101と離間して配置され、表面に図形パターンが形成される。図形パターンとして、例えば、複数の十字パターンが形成される。
【0029】
また、マスク基板101とマーク111との間の隙間を覆うように対向電極板316(第2の電極板)が配置される。
【0030】
シールド電極板314とマーク111と対向電極板316とに、マスク基板101の表面に印加されるリターディング電位と同電位がリターディング電源回路130から印加される。
【0031】
また、マルチ検出器222は、電子ビームカラム102の外部で検出回路106に接続される。検出回路106は、チップパターンメモリ123に接続される。
【0032】
また、検査室103上には、マスク基板101の高さ位置を計測するためのzセンサ211が配置される。zセンサ211は、投光器と受光器となる位置センサとを有し、投光器からマスク基板101にレーザ光を斜入射し、マスク基板101からの反射光を位置センサで受光して、照射箇所の高さ位置を計測する。
【0033】
制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、リターディング電源回路130、E×B分離器制御回路132、磁気ディスク装置等の記憶装置109、モニタ117、メモリ118、及びプリンタ119に接続されている。また、偏向制御回路128は、DAC(デジタルアナログ変換)アンプ144,146,147,149、及び電源(VPS)148に接続される。DACアンプ146は、偏向器208に接続され、DACアンプ144は、偏向器209に接続される。電源148は、偏向器218に接続される。DACアンプ147は、偏向器225に接続される。DACアンプ149は、偏向器226に接続される。
【0034】
また、チップパターンメモリ123は、比較回路108に接続されている。また、ステージ105は、ステージ制御回路114の制御の下に駆動機構142により駆動される。駆動機構142では、例えば、ステージ座標系におけるX方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X-Y-θ)モータの様な駆動系が構成され、XYθ方向にステージ105が移動可能となっている。これらの、図示しないXモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。ステージ105は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。そして、ステージ105の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。レーザ測長システム122は、ミラー216からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でステージ105の位置を測長する。ステージ座標系は、例えば、マルチ1次電子ビーム20の光軸に直交する面に対して、1次座標系のX方向、Y方向、θ方向が設定される。
【0035】
電磁レンズ202、電磁レンズ205、電磁レンズ206、電磁レンズ207、及び電磁レンズ224は、レンズ制御回路124により制御される。また、一括偏向器212は、2極以上の電極により構成され、電極毎に図示しないDACアンプを介してブランキング制御回路126により制御される。偏向器209は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ144を介して偏向制御回路128により制御される。偏向器208は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ146を介して偏向制御回路128により制御される。また、偏向器225は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ147を介して偏向制御回路128により制御される。また、偏向器226は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ149を介して偏向制御回路128により制御される。
【0036】
偏向器218(ベンダー)は、例えば、円弧状に曲がった筒状に形成された対向する複数の電極により構成され、各電極の電位は電源148を介して偏向制御回路128により制御される。或いは、偏向器218は、2極以上の電極により構成され、各電極の電位は電源148を介して偏向制御回路128により制御されるように構成しておき、偏向電場の一様性を高める様にしても構わない。
【0037】
E×B分離器214は、E×B分離器制御回路132により制御される。
【0038】
電子銃201には、図示しない高圧電源回路が接続され、電子銃201内の図示しないフィラメントと引出電極間への高圧電源回路からの加速電圧の印加と共に、所定の引出電極(ウェネルト)の電圧の印加と所定の温度のカソードの加熱によって、カソードから放出された電子群が加速させられ、電子ビーム200となって放出される。
【0039】
ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0040】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、2次元状の横(x方向)m列×縦(y方向)n段(m,nは2以上の整数)の穴(開口部)22がx,y方向に所定の配列ピッチで形成されている。図2の例では、23×23の穴(開口部)22が形成されている場合を示している。各穴22は、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、同じ外径の円形であっても構わない。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチ1次電子ビーム20が形成されることになる。成形アパーチャアレイ基板203は、マルチ1次電子ビーム20を形成するマルチビーム形成機構の一例となる。
【0041】
画像取得機構150は、電子ビームによるマルチビームを用いて、図形パターンが形成されたマスク基板101から図形パターンの被検査画像を取得する。以下、検査装置100における画像取得機構150の動作について説明する。
【0042】
電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、電磁レンズ202によって屈折させられ、成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、図2に示すように、複数の穴22(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、マルチ1次電子ビーム20が形成される。
【0043】
形成されたマルチ1次電子ビーム20は、電磁レンズ205、及び電磁レンズ206によってそれぞれ屈折させられ、中間像およびクロスオーバーを繰り返しながら、マルチ1次電子ビーム20の各ビームの中間像面(像面共役位置:I.I.P.)の高さ位置に配置されたE×B分離器214に進む。そして、E×B分離器214を通過して、電磁レンズ207に進む。また、マルチ1次電子ビーム20のクロスオーバー位置付近に、通過孔が制限された制限アパーチャ基板213を配置することで、散乱ビームを遮蔽できる。また、一括偏向器212によりマルチ1次電子ビーム20全体を一括して偏向して、マルチ1次電子ビーム20全体を制限アパーチャ基板213で遮蔽することにより、マルチ1次電子ビーム20全体をブランキングできる。
【0044】
マルチ1次電子ビーム20が電磁レンズ207に入射すると、電磁レンズ207は、マルチ1次電子ビーム20をマスク基板101に結像する。言い換えれば、電磁レンズ207は、マスク基板101上にマルチ1次電子ビーム20(電子線)を導く。さらに言い換えれば、電磁レンズ207は、マルチ1次電子ビーム20でマスク基板101を照射する。このように、1次電子光学系151は、マスク基板101にマルチ1次電子ビーム20を照明する。
【0045】
電磁レンズ207によりマスク基板101(試料)面上に焦点が合わされ(合焦され)たマルチ1次電子ビーム20は、偏向器208及び偏向器209によって一括して偏向され、各ビームのマスク基板101上のそれぞれの照射位置に照射される。このように、1次電子光学系151は、マスク基板101にマルチ1次電子ビーム20を照明する。
【0046】
マスク基板101の所望する位置にマルチ1次電子ビーム20が照射されると、かかるマルチ1次電子ビーム20が照射されたことに起因してマスク基板101から反射電子を含む2次電子の束(マルチ2次電子ビーム300)が放出される。マルチ1次電子ビーム20の各ビームに対応する2次電子ビームが放出される。
【0047】
マスク基板101から放出されたマルチ2次電子ビーム300は、電磁レンズ207を通って、E×B分離器214に進む。
【0048】
E×B分離器214は、マルチ2次電子ビーム300をマルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離する。
【0049】
E×B分離器214は、コイルを用いた2極以上の複数の磁極(電磁偏向コイル)と、2極以上の複数の電極(静電偏向電極)とを有する。例えば、対向する2つの磁極と、90°ずつ位相をずらした対向する2つの電極とが配置される。配置の仕方はこれに限るものではない。例えば、電極が磁極を兼ねる構造としておき、4極或いは8極の電極兼磁極を配置することも出来る。E×B分離器214でマルチ2次電子ビーム300を偏向することで分離作用を生じさせる。E×B分離器214では、複数の磁極によって指向性の磁界を発生させる。同様に、複数の電極によって指向性の電界を発生させる。具体的には、E×B分離器214は、マルチ1次電子ビーム20の中心ビームが進む方向(軌道中心軸)に直交する面上において電界Eと磁界Bを直交する方向に発生させる。電界は電子の進行方向に関わりなく同じ方向に力を及ぼす。これに対して、磁界はフレミング左手の法則に従って力を及ぼす。そのため、電子の進行方向によって電子に作用する力の向きを変化させることができる。E×B分離器214に上側から進入してくるマルチ1次電子ビーム20には、電界による力FEと磁界による力FBが打ち消し合い、マルチ1次電子ビーム20は下方に直進する。これに対して、E×B分離器214に下側から進入してくるマルチ2次電子ビーム300には、電界による力FEと磁界による力FBがどちらも同じ方向に働き、マルチ2次電子ビーム300は所定の方向に偏向されることによって斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離する。
【0050】
斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20から分離したマルチ2次電子ビーム300は、2次電子光学系152によってマルチ検出器222に導かれる。具体的には、マルチ1次電子ビーム20から分離したマルチ2次電子ビーム300は、偏向器218によって偏向されることにより、さらに曲げられ、電磁レンズ224に進む。そして、マルチ2次電子ビーム300は、マルチ1次電子ビーム20の軌道上から離れた位置で電磁レンズ224によって、集束方向に屈折させられながらマルチ検出器222に投影される。マルチ検出器222(マルチ2次電子ビーム検出器)は、マルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離されたマルチ2次電子ビーム300を検出する。言い換えれば、マルチ検出器222は、屈折させられ、投影されたマルチ2次電子ビーム300を検出する。マルチ検出器222は、複数の検出エレメント(例えば図示しないダイオード型の2次元センサ)を有する。そして、マルチ1次電子ビーム20の各ビームは、マルチ検出器222の検出面において、マルチ2次電子ビーム300の各2次電子ビームに対応する検出エレメントに衝突して、電子を発生し、2次電子画像データを画素毎に生成する。マルチ検出器222にて検出された強度信号は、検出回路106に出力される。
【0051】
図3は、実施の形態1における画像取得処理を説明するための図である。図3に示すように、マスク基板101の検査対象のパターンが配置される検査領域35は、例えばy方向に向かって所定の幅で複数のストライプ領域32に分割される。検査領域35内には、通常、1チップ分のパターンが形成される。そのため、検査領域35は、パターン形成領域、或いはチップ領域ともいう。
【0052】
画像取得機構150によるスキャン動作は、例えば、ストライプ領域32毎に実施される。例えば、-x方向にステージ105を移動させながら、相対的にx方向にストライプ領域32のスキャン動作を進めていく。各ストライプ領域32は、長手方向に向かって複数の矩形領域33に分割される。対象となる矩形領域33へのビームの移動は、2段の偏向器208,209(静電偏向器)によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。
【0053】
図3の例では、例えば、5×5列のマルチ1次電子ビーム20の場合を示している。1回のマルチ1次電子ビーム20の照射で照射可能な照射領域34は、(マスク基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のx方向のビーム間ピッチにx方向のビーム数を乗じたx方向サイズ)×(マスク基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のy方向のビーム間ピッチにy方向のビーム数を乗じたy方向サイズ)で定義される。照射領域34が、マルチ1次電子ビーム20の視野となる。そして、マルチ1次電子ビーム20を構成する各1次電子ビーム10は、自身のビームが位置するx方向のビーム間ピッチとy方向のビーム間ピッチとで囲まれるサブ照射領域29内に照射され、当該サブ照射領域29内を走査(スキャン動作)する。各1次電子ビーム10は、互いに異なるいずれかのサブ照射領域29を担当することになる。そして、各1次電子ビーム10は、担当サブ照射領域29内の同じ位置を照射することになる。2段の偏向器208,209は、マルチ1次電子ビーム20を一括して偏向することにより、パターンが形成されたマスク基板101面上をマルチ1次電子ビーム20で走査する。言い換えれば、サブ照射領域29内の1次電子ビーム10の移動は、2段の偏向器208,209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。かかる動作を繰り返し、1つの1次電子ビーム10で1つのサブ照射領域29内を順に照射していく。
【0054】
各ストライプ領域32の幅は、照射領域34のy方向サイズと同様、或いはスキャンマージン分狭くしたサイズに設定すると好適である。図3の例では、照射領域34が矩形領域33と同じサイズの場合を示している。但し、これに限るものではない。照射領域34が矩形領域33よりも小さくても良い。或いは大きくても構わない。そして、マルチ1次電子ビーム20を構成する各1次電子ビーム10は、自身のビームが位置するサブ照射領域29内に照射され、当該サブ照射領域29内を走査(スキャン動作)する。そして、1つのサブ照射領域29のスキャンが終了したら、2段の偏向器208,209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって照射位置が同じストライプ領域32内の隣接する矩形領域33へと移動する。かかる動作を繰り返し、ストライプ領域32内を順に照射していく。1つのストライプ領域32のスキャンが終了したら、ステージ105の移動或いは/及び2段の偏向器208,209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって照射領域34が次のストライプ領域32へと移動する。以上のように各1次電子ビーム10の照射によってサブ照射領域29毎のスキャン動作および2次電子画像の取得が行われる。これらのサブ照射領域29毎の2次電子画像を組み合わせることで、矩形領域33の2次電子画像、ストライプ領域32の2次電子画像、或いは検査領域35の2次電子画像が構成される。
【0055】
また、実際に画像比較を行う場合には、各矩形領域33内のサブ照射領域29をさらに複数のフレーム領域30に分割して、フレーム領域30毎の測定画像となるフレーム画像31について比較することになる。図3の例では、1つの1次電子ビーム10によってスキャンされるサブ照射領域29を例えばx,y方向にそれぞれ2分割することによって形成される4つのフレーム領域30に分割する場合を示している。
【0056】
また、ステージ105が連続移動しながらマルチ1次電子ビーム20をマスク基板101に照射する場合、マルチ1次電子ビーム20の照射位置がステージ105の移動に追従するように2段の偏向器208,209によって一括偏向によるトラッキング動作が行われる。そのため、マルチ2次電子ビーム300の放出位置がマルチ1次電子ビーム20の軌道中心軸に対して刻々と変化する。同様に、サブ照射領域29内をスキャンする場合に、各2次電子ビームの放出位置は、サブ照射領域29内で刻々と変化する。このように放出位置が変化した各2次電子ビームをマルチ検出器222の対応する検出領域内に照射させるように、例えば2段の偏向器225,226は、マルチ2次電子ビーム300を一括偏向する。言い換えれば、偏向器225,226は、マルチ1次電子ビーム20を用いた走査により変動するマルチ検出器222の検出面上でのマルチ2次電子ビーム300の位置をマルチ2次電子ビームの振り戻し偏向により不動にする。これにより、各2次電子ビームがマルチ検出器222の対応する検出エレメントにて検出されることができる。なお、偏向器225,226は、2段の偏向器に限らず、1段の偏向器により構成しても構わない。
【0057】
図4は、実施の形態1における基板とマークの配置位置付近の構成の一例を示す図である。図4において、マスク基板101はステージ105上で複数の支持ピン72によって例えば3点支持される。また、マーク111は、ステージ105上のマスク基板101から離間した位置で、表面がマスク基板101表面と同じ高さ位置になるように配置される。マーク111は、ステージ105上で複数の支柱76によって支持される。電子鏡筒102の下部に配置される電磁レンズ207のポールピースは地絡され、グランド電位に制御される。よって、ポールピースの下面、言い換えれば、電磁レンズ207のマスク基板101側の面が、リターディング電位(第1の電位)とは異なるグランド電位(第2の電位)に制御される。
【0058】
ここで、上述したように、電子線を用いた画像取得では、検査対象のマスク基板の収率に応じて電子線の最適なランディングエネルギーが存在する。そのため、マスク基板101には、基板カバー電極318を介して、例えば、負のリターディング電位を印加する。一方、電子鏡筒102の下面は、グランド電位に制御される。図1の例では、例えば、対物レンズとなる電磁レンズ207の下面が電子鏡筒102の下面となる。電磁レンズ207の下面は、地絡され、グランド電位に制御される。
【0059】
マスク基板101にリターディング電位を印加するとマスク基板101と電磁レンズ207の下面との間に電位差が生じるため、電界が発生する。一方、リターディング電位は、基板カバー電極318によって、マスク基板101の外周部にマスク基板101の表面側から印加される。そのため、マスク基板101上にはリターディング電位をマスク基板101の表面に印加するための構造物が配置される。これにより電界が乱れ、電子線の軌道が変化して検査精度を劣化させるといった問題があった。そこで、実施の形態1では、マルチ1次電子ビーム20の軌道中心軸11を中心とする例えば軸対称のシールド電極板314を配置する。例えば円盤状のシールド電極板314を配置する。シールド電極板314の中央部には、マルチ1次電子ビーム20が通過可能な開口部が形成される。開口部は、例えば所定の半径を有する円形に形成される。シールド電極板314を配置することにより、マルチ1次電子ビーム20がマスク基板101に照射される際に、基板カバー電極318が露出しないように隠すことができる。そして、シールド電極板314には、リターディング電源回路130からマスク基板101に印加されるリターディング電位と同様の電位が印加される。これにより、シールド電極板314とマスク基板101とは同電位となり、シールド電極板314とマスク基板101との間に電界が生じないようにできる。よって、基板カバー電極318等の構造物による電界の乱れを抑制或いは低減できる。
【0060】
シールド電極板314は、マスク基板101に近いほど好適である。よって、シールド電極板314は、基板カバー電極318に接触しない程度にマスク基板101に近づけた高さ位置に配置する。シールド電極板314と基板カバー電極318との間の隙間を、例えば、1mm以内に配置すると好適である。
【0061】
実施の形態1では、マスク基板101の表面高さ位置を計測するためのzセンサ211(高さ位置計測センサ)を配置する。具体的には、zセンサ211の投光器60は、対物レンズとなる電磁レンズ207とシールド電極板314との間からシールド電極板314の開口部を通ってマスク基板101にレーザ光61を斜入射する。そして、zセンサ211の位置センサ62は、マスク基板101表面で反射され、シールド電極板314の開口部を通って電磁レンズ207とシールド電極板314との間を進むマスク基板101からの反射光63を受光して、マスク基板101の表面高さを計測する。実施の形態1では、電磁レンズ207とシールド電極板314との間をレーザ光が斜入射するので、シールド電極板314とマスク基板101との間をレーザ光が斜入射する場合よりもシールド電極板314とマスク基板101との距離を小さくできる。よって、シールド電極板314による電位のシールド効果を高めることができる。
【0062】
検査装置100では、マルチ1次電子ビーム20のキャリブレーションが必要となる。かかるキャリブレーション動作は、基板1枚分の画像を取得する間に例えば複数回実施される。キャリブレーション動作は、マスク基板101とは別の位置に配置されたマーク111をマルチ1次電子ビーム20で走査することにより行われる。例えば、焦点位置のキャリブレーションを行う。マーク111をマルチ1次電子ビーム20で走査した際にマーク111から放出される2次電子をマルチ検出器222或いは電磁レンズ207の上方に配置される図示しない検出器により検出する。そして、得られる2次電子画像ができるだけ鮮明になる位置に電磁レンズ207で焦点位置を調整する。
【0063】
マーク111には、リターディング電源回路130からマスク基板101に印加されるリターディング電位と同様の電位が印加される。マーク111は、例えば、シリコン(Si)材で形成されると好適である。マーク111には、例えば、裏面側からリターディング電位と同様の電位が印加される。キャリブレーション動作時には、マルチ1次電子ビーム20がマーク111を照射可能な位置までステージ105を移動させる。言い換えれば、マルチ1次電子ビーム20の軌道中心軸11をマーク111上に相対的に移動させる。よって、ビーム照射時に、マーク111の外周部はシールド電極板314によって覆われる。これにより、ビーム照射時に、マーク111とマスク基板101とのエネルギー条件を同一にできる。
【0064】
ここで、上述したように、リターディング電圧と同電位のシールド電極板314を設けることで別の問題が生じる。マーク111がマルチ1次電子ビーム20の照射範囲に入る位置までステージ105を移動する際、シールド電極板314とステージ105或いはステージ105上の構造物との間に放電が生じ得るといった問題がある。そこで、実施の形態1では、図4に示すように、ステージ105上で、マスク基板101とマーク111との間の隙間を覆うように対向電極板316(第2の電極板)が配置される。具体的には、対向電極板316は、マスク基板101とマーク111との間のステージ105上面或いはステージ上の構造物とを覆うように配置される。対向電極板316は、シールド電極板314よりも低い高さ位置であってマスク基板101表面の高さ位置以上の高さ位置に配置される。対向電極板316には、リターディング電源回路130からマスク基板101に印加されるリターディング電位と同様の電位が印加される。対向電極板316には、例えば、裏面側からリターディング電位と同様の電位が印加される。対向電極板316は、ステージ105上で複数の支柱74によって支持される。ステージ105を移動する際、対向電極板316が、シールド電極板314直下を相対的に移動する。対向電極板316とシールド電極板314とは同電位に制御されるため、ステージ105を移動する際、放電を抑制できる。
【0065】
図5は、実施の形態1におけるステージ上のビームの軌道中心軸の移動経路の一例を示す図である。マーク111は、マスク基板101から見て、例えば、レーザ干渉用の反射ミラー216側に配置されると好適である。図5の例では、マスク基板101の四隅の対角線の延長線上にマーク111が配置される場合を一例として示している。対向電極板316は、マーク111の周囲を取り囲むと共に、マスク基板101の4辺のうち、マーク111側の2辺全体に沿うように、上方から見て、例えばL字形状に形成される。かかる形状にすることで、マスク基板101上のどの位置からマーク111上にビームの軌道中心軸が移動する場合であっても、マスク基板101からマーク111までの経路(矢印)全体を対向電極板316内にできる。
【0066】
基板カバー電極318と対向電極板316との間の隙間、及びマーク111と対向電極板316との間の隙間は狭い方が良い。例えば、1mm以下に配置すると好適である。
【0067】
図4及び図5の例では、マーク111と対向電極板316は、別体で形成される場合を示している。但し、これに限るものではない。対向電極板316の一部にマーク111を形成しても構わない。言い換えれば、マーク111と対向電極板316が、一体で形成される構成でも構わない。
【0068】
また、図4の例では、リターディング電源回路130内の同じ電源から、基板カバー電極318とシールド電極板314とマーク111と対向電極板316とに同じ電位を印加する場合を示しているがこれに限るものではない。
【0069】
図6は、実施の形態1における基板とマークの配置位置付近の構成の他の一例を示す図である。図6の例では、基板カバー電極318およびシールド電極板314にリターディング電位を印加する電源と、マーク111および対向電極板316にリターディング電位と同電位を印加する電源とを分けた場合を示している。このように、電源を別々にすることで、配線のインピーダンス等による電位誤差を補正できる。図6の例では、基板カバー電極318とシールド電極板314との組と、マーク111と対向電極板316との組に分けた場合を示したが、これに限るものではない。基板カバー電極318とシールド電極板314とマーク111と対向電極板316とを、1つと3つの組に分けて2つの電源から電位を印加しても良いし、2つと2つの組に分けて2つの電源から電位を印加しても良い。或いは、1つと1つと2つの組に分けて3つの電源から電位を印加しても良い。或いは、基板カバー電極318とシールド電極板314とマーク111と対向電極板316とに別々の電源から電位を印加しても良い。
【0070】
また、シールド電極板314は、図4、6に示すように、シールド電極板314よりも上方のグランド電位に制御される部材から延びた複数の支柱70によって支持される。また、シールド電極板314は、電子鏡筒102に固定された部材から延びた複数の支柱70によって支持されると好適である。検査室103が変形した場合でも対物レンズとなる電磁レンズ207とシールド電極板314との位置関係を高精度で維持できる。複数の支柱70は絶縁性材料で形成される。例えば、酸化アルミニウムで形成されると好適である。電磁レンズ207は、グランド電位に制御される部材の一例である。また、電磁レンズ207は、電子鏡筒102に固定された部材の一例である。図4、6の例では、シールド電極板314は、電磁レンズ207の下面から延びた複数の支柱70によって支持される場合を示している。
【0071】
図7は、実施の形態1における基板とマークの配置位置付近の構成の他の一例を示す図である。対物レンズとなる電磁レンズ207の下面側には熱シールド71が配置される場合がある。熱シールド71は、グランド電位に制御される部材の他の一例となる。また、熱シールド71は、電子鏡筒102に固定された部材の他の一例である。図7の例では、シールド電極板314は、熱シールド71の下面から延びた複数の支柱70によって支持される場合を示している。
【0072】
図8は、実施の形態1におけるシールド電極板のサイズを説明するための図である。正方形のマスク基板101内の検査領域35は、図8の下図に示すように、長方形に形成される。そのため、マスク基板101の外周端の4辺のうち、対向する一方の2辺から検査領域35端までの距離aと対向する他方の2辺から検査領域35端までの距離bとは異なる。図8の例では、距離aが、距離bよりも短い場合を示している。
【0073】
円形の開口部が形成されたシールド電極板314の内半径r1(開口部の半径)は、マルチ1次電子ビーム20(電子線)の軌道中心軸11から、zセンサ211のレーザ光の入射軌道とシールド電極板314の表面高さ位置で軌道中心軸11に直交する面とが交接する位置までの距離dと、マスク基板101の端部から検査領域35までの短い方の距離aとを用いて、次の式(1)の関係式を満足する関係となれば良い。また、開口部は、軌道中心軸11に対して軸対称に形成される。これにより、シールド電極板314は、マスク基板101の端部をカバーすると共に、zセンサ211のレーザ光との干渉を避けることができる。
(1) d<r1<a
【0074】
また、zセンサ211のレーザ光61の入射軌道とマスク基板101表面とのなす角度θは、マスク基板101の端部から検査領域35までの短い方の距離aと、シールド電極板314の厚さtと、シールド電極板314とマスク基板101表面との隙間cと、を用いて、次の式(2)の関係式を満足する関係となれば良い。これにより、zセンサ211のレーザ光は、シールド電極板314との干渉を避けることができる。
(2) arctan{(t+c)/a}<θ
【0075】
図9は、実施の形態1における離軸距離とシールド電極板の外周端からビームの軌道中心軸までの距離との関係の一例を示す図である。上述したように、電界の乱れが生じると、これに起因してビームの照射位置が設計値からずれる。シールド電極板314を配置することで、離軸距離を低減できる。図9では、シールド電極板314と電界を形成する直近のグランド電位の部材(例えば電磁レンズ207)の下面との距離(ギャップ)gを可変にした各ケースの結果を示している。距離gが大きい方からA,B,Cの順で示している。距離gが狭い方が、シールド電極板314の外周端からビームの軌道中心軸11までの距離を小さくできることがわかる。よって、シールド電極板314の外半径r2を小さくできる。言い換えれば、シールド電極板314の外半径r2は、距離gに依存する。図9において点線は、離軸距離の許容値を示している。
【0076】
図10は、実施の形態1における所望の離軸距離でのシールド電極板の外周端からビームの軌道中心軸までの距離r2とシールド電極板と直近のグランド電位の部材(例えば電磁レンズ207)の下面との距離(ギャップ)gとの関係の一例を示す図である。測定されたシールド電極板314の外周端からビームの軌道中心軸11までの距離r2と直近のグランド電位の部材(例えば電磁レンズ207)の下面との距離(ギャップ)gとの関係を多項式でフィッティングする。図10の例では、2次関数で定義できる。
【0077】
よって、所望の軸間距離に抑えるために、シールド電極板314の外半径r2は、シールド電極板314上の直近のグランド電位の部材(例えば、電磁レンズ207)までの距離gと係数b1、b2,b3とを用いて、次の式(3)の関係式を満足する関係となれば良い。
(3) b1g+b2g+b3<r2
【0078】
例えば、リターディング電位が-30kVの時、離軸距離を1nmにする場合に、シールド電極板314とマスク基板101表面との隙間cを一定にした条件下において、式(3)は、以下の式(4)で定義できる。
(4) 0.21g+1.4g-0.24<r2
【0079】
また、通常のマスク基板101で用いられる基板101端から検査領域35までの短い方の距離a=10mmのとき、従来、シールド電極板314が無い状態では、離軸距離が所望の許容値(例えば、1nm)を超えていた。これに対して、実施の形態1におけるシールド電極板314を配置することで、マスク基板101の端から内部に10mm以上離れた位置では、離軸距離を許容値内に抑えることができたことを確認した。離軸距離とは、ビームの照射位置の設計値からのずれ量を示している。よって、実際にマルチ1次電子ビーム20が当たる位置の直上がシールド電極板314の開口部によって基板表面が露出している状態であっても電界の乱れによるビーム軌道の変化を抑制できる。
【0080】
図11は、実施の形態1におけるマークの上面の一例を示す図である。図11において、マーク111は、対向電極板316からマーク111の図形パターンが形成されるマークパターン形成領域77までの距離が、マスク基板101の端部からマスク基板101の検査領域35(検査対象領域)までの距離以上になるように形成される。ここでは、距離a,bのうち、短い方の距離a以上となれば良い。言い換えれば、図形パターンが形成されるマークパターン形成領域77の周囲にパターン無し領域を配置すると良い。これにより、マーク111へのビーム照射時の条件をマスク基板101へのビーム照射時の条件に合わせることができる。マーク111のマークパターン形成領域77内には、複数の十字パターンが配置される。例えば、マルチ1次電子ビーム20のマスク基板101上での照射位置に合わせて、マルチ1次電子ビーム20のビーム数と同数、同ピッチの複数の十字パターンが配置される。これにより、同時に、マルチ1次電子ビーム20の各ビームのキャリブレーションを実施できる。
【0081】
図12は、実施の形態1における基板カバー電極の一例を示す上面図である。図12において、基板カバー電極318は、枠17と複数の導通ピン13とを有する。枠17と複数の導通ピン13は、導電性材料により形成される。或いは、導電性材料の膜が表面にコーティングされている。枠17は、長方向に形成される。具体的には、枠17の外周部が、上から見て、長方形に形成される。同様に、枠17の内周部が上から見て、長方形に形成される。複数の導通ピン13は、枠17の裏面側に配置される。また、複数の導通ピン13は、枠17の長辺側に配置される。図12の例では、対向する2つの長辺の一方に、2つの導通ピン13が配置され、他方に1つの導通ピン13が配置される場合を示している。
【0082】
図13は、実施の形態1における基板カバー電極を基板上に配置した状態の一例を示す図である。複数の導通ピン13は、マスク基板101と接触する。複数の導通ピン13は、マスク基板101の酸化被膜等の絶縁性の膜を貫通して導電性の膜に到達する。そして、複数の導通ピン13を介して基板カバー電極318に印加されたリターディング電位がマスク基板101に印加される。実施の形態1では、さらに、枠17が、検査領域35の短辺側ではマスク基板101と重ならず、検査領域35の長辺側ではマスク基板101の外周部と一部が重なるように、マスク基板101上に配置される。これにより、マスク基板101の導通ピン13との接触が無い辺側では、枠17が、マスク基板101と重ならないように配置できる。
【0083】
図14は、実施の形態1における検査領域の長辺側での基板カバー電極を基板上に配置した状態の一例を示す断面図である。検査領域35の長辺側では、マスク基板101の外周端と検査領域35端までの距離bが検査領域35の短辺側での距離aより大きい。そして、検査領域35の長辺側では、図14に示すように、基板カバー電極318の枠17がマスク基板101外周部と重なり、導通ピン13によって基板カバー電極318とマスク基板101とが導通する。よって、かかる位置では、枠17がマスク基板101の表面高さ位置よりも上方に配置される必要がある。
【0084】
図15は、実施の形態1における検査領域の長辺側での基板カバー電極を基板上に配置した状態の他の一例を示す断面図である。図15の例では、シールド電極板314の中央部の面を水平に形成し、外周部の面を斜め上方へ傾けて形成する場合を示している。かかる形状にすることで、シールド電極板314とマスク基板101との隙間cを小さくできる。但し、図15の例では、さらにシールド電極板314が基板カバー電極318に近づくと、シールド電極板314と基板カバー電極118とが接触する可能性がある。そのため、かかる形状の場合、ステージ105の移動範囲に制限が必要となる。例えば、軌道中心軸11がx方向の検査領域35の端よりも外側には相対的に行かないようにステージ105の移動範囲を制限する。
【0085】
図16は、実施の形態1における検査領域の短辺側での基板カバー電極を基板上に配置した状態の一例を示す断面図である。検査領域35の短辺側では、マスク基板101の外周端と検査領域35端までの距離aが検査領域35の長辺側での距離bより小さい。そして、検査領域35の短辺側に配置される枠17の短辺側には、導通ピン13が配置されないので、図15に示すように、基板カバー電極318の枠17がマスク基板101外周部と重ならないように隙間を開けて配置できる。よって、かかる位置では、枠17がマスク基板101の表面高さ位置よりも上方に配置される必要が無い。そこで、実施の形態1では、基板カバー電極318は、長辺側の枠17の表面高さ位置がマスク基板101の表面高さよりも高く、短辺側の枠17の表面高さ位置が長辺側の枠の高さ位置よりもマスク基板101の表面高さ側に低いと好適である。具体的には、枠17の短辺側の表面高さ位置を例えばマスク基板101表面と同じ高さ位置になるように形成する。これにより、y方向では、さらにシールド電極板314が基板カバー電極118に近づく場合でも、シールド電極板314と基板カバー電極118との接触を回避できる。これは、シールド電極板314の中央部の面を水平に形成し、外周部の面を斜め上方へ傾けて形成する場合であっても、シールド電極板314全体が水平である場合であっても同様である。そのため、y方向については、ステージ105の移動範囲の制限を不要にできる。
【0086】
以上のように、配置した構成において、画像取得機構150は、マルチ1次電子ビーム20でマスク基板101の画像を取得する。
【0087】
スキャン工程(画像取得工程)として、画像取得機構150は、マルチ1次電子ビーム20でマスク基板101を走査(スキャン)する。ここでは、画像取得機構150は、ストライプ領域32毎に、マルチ1次電子ビーム20で当該ストライプ領域32をスキャンする。上述したように、1次電子光学系151は、マルチ1次電子ビーム20でマスク基板101を照射する。マルチ1次電子ビーム20でマスク基板101が照射されたことに起因して放出されるマルチ2次電子ビーム300は、2次電子光学系152によって、マルチ検出器222に導かれる。そして、導かれたマルチ2次電子ビーム300は、マルチ検出器222で検出される。検出されるマルチ2次電子ビーム300には、反射電子が含まれていても構わない。或いは、反射電子は、2次電子光学系を移動中に発散し、マルチ検出器222まで到達しない場合であっても構わない。そして。検出されたマルチ2次電子ビーム300の信号に基づいた2次電子画像が取得される。具体的には、マルチ検出器222によって検出された各サブ照射領域29内の画素毎の2次電子の検出データ(測定画像データ:2次電子画像データ:被検査画像データ)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。そして、得られた測定画像データは、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
【0088】
なお、例えば、数本のストライプ領域32のスキャン動作が完了するごとに、次のストライプ領域32のスキャンを開始する前に、上述したキャリブレーションが実施される。実施の形態1では、マーク111まで移動する間の経路が対向電極板316に覆われているので、放電を回避或いは抑制できる。
【0089】
図17は、実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。図17において、比較回路108内には、磁気ディスク装置等の記憶装置50,52,56、フレーム画像作成部54、位置合わせ部57、及び比較部58が配置される。フレーム画像作成部54、位置合わせ部57、及び比較部58といった各「~部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。フレーム画像作成部54、位置合わせ部57、及び比較部58内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
【0090】
比較工程として、比較回路108は、取得された2次電子画像を所定の参照画像と比較する。具体的には、例えば、以下のように動作する。
【0091】
比較回路108内に転送された測定画像データ(ビーム画像)は、記憶装置50に格納される。
【0092】
そして、フレーム画像作成部54は、各1次電子ビームのスキャン動作によって取得されたサブ照射領域29の画像データをさらに分割した複数のフレーム領域30のフレーム領域30毎のフレーム画像31を作成する。そして、フレーム領域30を被検査画像の単位領域として使用する。なお、各フレーム領域30は、画像の抜けが無いように、互いにマージン領域が重なり合うように構成されると好適である。作成されたフレーム画像31は、記憶装置56に格納される。
【0093】
一方、参照画像作成回路112は、マスク基板101に形成された複数の図形パターンの元になる設計データに基づいて、フレーム領域30毎に、フレーム画像31に対応する参照画像を作成する。具体的には、以下のように動作する。まず、記憶装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、この読み出された設計パターンデータに定義された各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換する。
【0094】
上述したように、設計パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
【0095】
かかる図形データとなる設計パターンデータが参照画像作成回路112に入力されると図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計パターン画像データに展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データを出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/2(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、8ビットの占有率データとなる。かかるマス目(検査画素)は、測定データの画素に合わせればよい。
【0096】
次に、参照画像作成回路112は、図形のイメージデータである設計パターンの設計画像データに、所定のフィルタ関数を使ってフィルタ処理を施す。これにより、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである設計画像データをマルチ1次電子ビーム20の照射によって得られる像生成特性に合わせることができる。作成された参照画像の画素毎の画像データは比較回路108に出力される。比較回路108内に転送された参照画像データは、記憶装置52に格納される。
【0097】
次に、位置合わせ部57は、被検査画像となるフレーム画像31と、当該フレーム画像31に対応する参照画像とを読み出し、画素より小さいサブ画素単位で、両画像を位置合わせする。例えば、最小2乗法で位置合わせを行えばよい。
【0098】
そして、比較部58は、ステージ105上に載置されるマスク基板101の2次電子画像を所定の画像と比較する。具体的には、比較部58は、フレーム画像31と参照画像とを画素毎に比較する。比較部58は、所定の判定条件に従って画素毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。例えば、画素毎の階調値差が判定閾値Thよりも大きければ欠陥と判定する。そして、比較結果が出力される。比較結果は、記憶装置109、若しくはメモリ118に出力される、或いはプリンタ119より出力されればよい。
【0099】
なお、上述したダイ-データベース検査の他、同一基板上の異なる場所の同一パターンを撮像した測定画像データ同士を比較するダイ-ダイ検査を行っても好適である。或いは、自己の測定画像だけを用いて検査しても構わない。
【0100】
上述した動作をすべてのストライプ領域32について繰り返すことになる。
【0101】
以上のように、実施の形態1によれば、マスク基板101外周部での電界の乱れを低減すると共に、ビームキャリブレーション時の放電を抑制できる。
【0102】
以上の説明において、一連の「~回路」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~回路」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。プロセッサ等を実行させるプログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録されればよい。例えば、位置回路107、比較回路108、及び参照画像作成回路112等は、上述した少なくとも1つの処理回路で構成されても良い。
【0103】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0104】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0105】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての電子線マスク検査装置は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0106】
10 1次電子ビーム
11 軌道中心軸
13 導通ピン
17 枠
20 マルチ1次電子ビーム
22 穴
29 サブ照射領域
30 フレーム領域
31 フレーム画像
32 ストライプ領域
33 矩形領域
34 照射領域
35 検査領域
50,52,56 記憶装置
54 フレーム画像作成部
57 位置合わせ部
58 比較部
60 投光器
61 レーザ光
62 位置センサ
63 反射光
70 支柱
71 熱シールド
72 支持ピン
74 支柱
76 支柱
77 マークパターン形成領域
100 検査装置
101 基板
102 電子ビームカラム
103 検査室
105 ステージ
106 検出回路
107 位置回路
108 比較回路
109 記憶装置
110 制御計算機
111 マーク
112 参照画像作成回路
113 マークパターン
114 ステージ制御回路
117 モニタ
118 メモリ
119 プリンタ
120 バス
122 レーザ測長システム
123 チップパターンメモリ
124 レンズ制御回路
126 ブランキング制御回路
128 偏向制御回路
130 リターディング電源回路
132 E×B分離器制御回路
142 ステージ駆動機構
144,146,147,149 DACアンプ
148 電源(VPS)
150 画像取得機構
151 1次電子光学系
152 2次電子光学系
160 制御系回路
200 電子ビーム
201 電子銃
202,205,206,207 電磁レンズ
203 成形アパーチャアレイ基板
208,209 偏向器
211 zセンサ
212 一括偏向器
213 制限アパーチャ基板
214 E×B分離器
216 ミラー
218 偏向器
222 マルチ検出器
224 電磁レンズ
225,226 偏向器
300 マルチ2次電子ビーム
314 シールド電極板
316 対向電極板
318 基板カバー電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17