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特開2024-89128反射型マスクブランク、反射型マスク及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089128
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】反射型マスクブランク、反射型マスク及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/24 20120101AFI20240626BHJP
   G03F 1/48 20120101ALI20240626BHJP
   G03F 1/80 20120101ALI20240626BHJP
【FI】
G03F1/24
G03F1/48
G03F1/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204305
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生越 大河
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼坂 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】稲月 判臣
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BA02
2H195BA10
2H195BB16
2H195BB22
2H195BC05
2H195BC20
2H195BC24
2H195CA01
2H195CA07
2H195CA15
2H195CA20
2H195CA22
(57)【要約】
【解決手段】基板と、基板の一の主表面上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、多層反射膜の上に形成された保護膜とを有し、保護膜が、ルテニウム(Ru)と、ニオブ(Nb)を含有し、保護膜が、その厚さ方向において、保護膜の多層反射膜に近接する側、及び保護膜の多層反射膜から最も離間する側の双方より、ルテニウム(Ru)含有率が低い部分を有する反射型マスクブランク。
【効果】本発明の反射型マスクブランク及び反射型マスクの保護膜は、反射型マスク製造時の塩素を含み酸素を含まないガスを用いたドライエッチングや、塩素と酸素を含むガスを用いたドライエッチングに対して、高い耐性を有し、また、反射型マスク製造時や、反射型マスク使用時のSPM洗浄に対する高い耐性も有する。そのため、保護膜の多層反射膜を保護する機能へのダメージが小さく、多層反射膜の反射率の低下が抑えられる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板の一の主表面上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜の上に形成された保護膜とを有する反射型マスクブランクであって、
前記保護膜が、ルテニウム(Ru)と、ニオブ(Nb)を含有し、
前記保護膜が、その厚さ方向において、前記保護膜の前記多層反射膜に近接する側、及び前記保護膜の前記多層反射膜から最も離間する側の双方より、ルテニウム(Ru)含有率が低い部分を有することを特徴とする反射型マスクブランク。
【請求項2】
前記保護膜の前記ルテニウム(Ru)含有率が低い部分が、ニオブ(Nb)を含有し、前記保護膜の前記ルテニウム(Ru)含有率が低い部分のルテニウム(Ru)含有率が85原子%以下であることを特徴とする請求項1に記載の反射型マスクブランク。
【請求項3】
前記保護膜の前記多層反射膜に近接する側のルテニウム(Ru)含有率が95原子%以上であり、前記保護膜の前記多層反射膜から最も離間する側のルテニウム(Ru)含有率が90原子%以上であることを特徴とする請求項2に記載の反射型マスクブランク。
【請求項4】
前記保護膜の上に形成された露光光を吸収する吸収体膜を有し、該吸収体膜が、タンタル(Ta)と窒素(N)を含有することを特徴とする請求項1に記載の反射型マスクブランク。
【請求項5】
前記吸収体膜上に、更にクロム(Cr)を含有するハードマスク膜を有することを特徴とする請求項4に記載の反射型マスクブランク。
【請求項6】
前記保護膜が、前記多層反射膜側から順に、第1の層、第2の層及び第3の層からなり、
前記第1の層が、ルテニウム(Ru)を含有し、ルテニウム(Ru)以外の元素を実質的に含有しない層であり、
前記第2の層が、ニオブ(Nb)を含有する層であり、
前記第3の層が、ルテニウム(Ru)を含有し、ルテニウム(Ru)以外の元素を実質的に含有しない層である
ことを特徴とする請求項1に記載の反射型マスクブランク。
【請求項7】
前記第2の層が、更に、ルテニウム(Ru)を含有することを特徴とする請求項6に記載の反射型マスクブランク。
【請求項8】
前記保護膜全体の平均ルテニウム(Ru)含有率が50原子%以上95原子%以下であることを特徴とする請求項6に記載の反射型マスクブランク。
【請求項9】
前記保護膜の上に形成された露光光を吸収する吸収体膜を有し、該吸収体膜が、タンタル(Ta)と窒素(N)を含有することを特徴とする請求項6に記載の反射型マスクブランク。
【請求項10】
前記吸収体膜上に、更にクロム(Cr)を含有するハードマスク膜を有することを特徴とする請求項9に記載の反射型マスクブランク。
【請求項11】
基板と、該基板の一の主表面上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜の上に形成された保護膜と、該保護膜の上に形成された露光光を吸収する吸収体膜のパターンとを有する反射型マスクであって、
前記保護膜が、ルテニウム(Ru)と、ニオブ(Nb)を含有し、
前記保護膜が、その厚さ方向において、前記保護膜の前記多層反射膜に近接する側、及び前記保護膜の前記多層反射膜から最も離間する側の双方より、ルテニウム(Ru)含有率が低い部分を有することを特徴とする反射型マスク。
【請求項12】
前記保護膜の前記ルテニウム(Ru)含有率が低い部分が、ニオブ(Nb)を含有し、前記保護膜の前記ルテニウム(Ru)含有率が低い部分のルテニウム(Ru)含有率が85原子%以下であることを特徴とする請求項11に記載の反射型マスク。
【請求項13】
前記保護膜の前記多層反射膜に近接する側のルテニウム(Ru)含有率が95原子%以上であり、前記保護膜の前記多層反射膜から最も離間する側のルテニウム(Ru)含有率が90原子%以上であることを特徴とする請求項12に記載の反射型マスク。
【請求項14】
前記保護膜が、前記多層反射膜側から順に、第1の層、第2の層及び第3の層からなり、
前記第1の層が、ルテニウム(Ru)を含有し、ルテニウム(Ru)以外の元素を実質的に含有しない層であり、
前記第2の層が、ニオブ(Nb)を含有する層であり、
前記第3の層が、ルテニウム(Ru)を含有し、ルテニウム(Ru)以外の元素を実質的に含有しない層である
ことを特徴とする請求項11に記載の反射型マスク。
【請求項15】
前記第2の層が、更に、ルテニウム(Ru)を含有することを特徴とする請求項14に記載の反射型マスク。
【請求項16】
前記保護膜全体の平均ルテニウム(Ru)含有率が50原子%以上95原子%以下であることを特徴とする請求項14に記載の反射型マスク。
【請求項17】
請求項4又は9に記載の反射型マスクブランクの前記吸収体膜の上に、レジスト膜のパターンを形成する工程と、
該レジスト膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素を含み酸素を含まないガスを用いたドライエッチングにより、前記吸収体膜のパターンを形成する工程と、
該吸収体膜のパターンを形成する工程の後に、SPM洗浄により前記レジスト膜のパターンを除去する工程と
を含むことを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【請求項18】
請求項5又は10に記載の反射型マスクブランクの前記ハードマスク膜の上に、レジスト膜のパターンを形成する工程と、
該レジスト膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素と酸素を含むガスを用いたドライエッチングにより、前記ハードマスク膜のパターンを形成する工程と、
該ハードマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素を含み酸素を含まないガスを用いたドライエッチングにより、前記吸収体膜のパターンを形成する工程と、
該吸収体膜のパターンを形成する工程の後に、SPM洗浄により前記レジスト膜のパターンを除去する工程と、
該レジスト膜のパターンを除去する工程の後に、塩素と酸素を含むガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜のパターンを除去する工程と
を含むことを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSIなどの半導体デバイスの製造などに使用される反射型マスク、その素材である反射型マスクブランク、及び反射型マスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス(半導体装置)の製造工程では、転写用マスクに露光光を照射し、マスクに形成されている回路パターンを、縮小投影光学系を介して半導体基板(半導体ウェハ)上に転写するフォトリソグラフィ技術が繰り返し用いられる。従来、露光光の波長は、フッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザ光を用いた193nmが主流となっており、露光プロセスや加工プロセスを複数回組み合わせるマルチパターニングというプロセスを採用することにより、最終的には露光波長より小さい寸法のパターンを形成してきた。
【0003】
しかし、継続的なデバイスパターンの微細化により、更なる微細パターンの形成が必要とされてきていることから、露光光としてArFエキシマレーザ光より更に波長の短い極端紫外(Extreme Ultraviolet:以下「EUV」と称す。)光を用いたEUVリソグラフィ技術が用いられるようになってきた。EUV光とは、波長が0.2~100nm程度の光であり、より具体的には、波長が13.5nm付近の光である。EUV光は物質に対する透過性が極めて低く、従来の透過型の投影光学系やマスクが使えないことから、反射型の光学素子が用いられる。そのため、パターン転写用のマスクも反射型マスクが提案されている。
【0004】
一般的な反射型マスクは、基板上にEUV光を反射する多層反射膜が形成され、多層反射膜の上にEUV光を吸収する吸収体膜がパターン状に形成されたものである。一方、一般に、吸収体膜にパターニングする前の状態のもの(レジスト膜が形成された状態を含む。)が、反射型マスクブランクと呼ばれ、これが反射型マスクの素材として用いられる。
【0005】
反射型マスクブランクは、低熱膨張の基板と、その上に形成されたEUV光を反射する多層反射膜とを有し、一般的には、更に、多層反射膜の上に形成されたEUV光を吸収する吸収体膜を有する基本構造を有している。多層反射膜としては、通常、モリブデン(Mo)膜とケイ素(Si)膜とを交互に積層することで、EUV光に対する必要な反射率を得た多層反射膜が用いられる。更に、多層反射膜を保護するための保護膜として、ルテニウム(Ru)膜が、多層反射膜の上に形成される(特開2002-122981号公報(特許文献1))。一方、吸収体膜としては、EUV光に対して消衰係数の値が比較的大きいタンタル(Ta)などが用いられる(特開2002-246299号公報(特許文献2))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-122981号公報
【特許文献2】特開2002-246299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
保護膜は多層反射膜を保護する機能を有するが、反射型マスクへの繰り返しのEUV露光による反射率の低下を防止する機能に加え、反射型マスクの製造工程における種々のドライエッチングや、薬液による洗浄に対する耐性などを有することが求められる。
【0008】
反射型マスクブランクを素材として反射型マスクを製造する工程において、ドライエッチングにより吸収体膜にパターンを形成する際、パターン形状を制御するために、通常ある程度のオーバーエッチングを実施する。オーバーエッチングを施すことによって、保護膜はエッチングに曝され、ダメージを受ける。具体的には、例えば、吸収体膜がタンタル(Ta)と窒素(N)を含む材料で形成されている場合、エッチングガスとして塩素を含み酸素を含まないガスが好ましく用いられるため、保護膜には塩素を含み酸素を含まないガスを用いたドライエッチングに対する耐性が求められる。
【0009】
また、吸収体膜にパターン形成する際のエッチングマスクとして、クロム(Cr)を含むハードマスク膜をパターニングして形成したハードマスクパターンを用いる場合、吸収体膜のパターンを形成した後、通常、塩素と酸素を含むガスを用いたドライエッチングによりハードマスクパターンの除去を行うが、その際、保護膜も同様のドライエッチングに曝される。よって、保護膜には、塩素と酸素を含むガスを用いたドライエッチングに対する耐性を有することも求められる。更に、反射型マスク製造時にレジストを除去するため、また、反射型マスクの繰り返し使用時のコンタミネーションを除去するために、反射型マスクを、硫酸過水を用いた薬液(SPM)で洗浄するため、保護膜にはSPM洗浄に対する耐性も求められる。
【0010】
反射型マスク製造時のエッチングや、反射型マスク製造時や使用時の洗浄で、保護膜がダメージを受け、膜質や膜厚が変化すると、多層反射膜を保護する機能が失われるなどの問題が生じる。ルテニウム(Ru)単体の保護膜は、特に、塩素と酸素を含むガスを用いたドライエッチングへの耐性が十分ではなく、ハードマスクパターンの除去工程において、膜厚が減少し、多層反射膜を保護する機能が低下することが問題となる。そこで、ルテニウム(Ru)を含有する保護膜に、ニオブ(Nb)などの添加元素を含有させることで、エッチングに対する耐性を向上させ、保護膜の多層反射膜を保護する機能を高めることが提案されている。しかしながら、これらの添加元素は、ルテニウム(Ru)に比べて標準酸化還元電位が卑な金属であり、保護膜に含有させることによって、保護膜の表面での酸化反応が進行しやすくなる。その結果、SPM洗浄によって保護膜の厚さが減少する速度が増大してしまい、また、保護膜を形成した後に保護膜の表面部に形成される自然酸化層の厚さが増大することで、吸収体膜をパターン形成する際に、保護膜が受けるダメージが増大してしまう。
【0011】
このように、吸収体膜をパターニングする際のオーバーエッチング、エッチングによるハードマスクパターンの除去、SPM洗浄を用いたレジストやコンタミネーションの除去などにおいて、保護膜は、種々のダメージを受け、その結果、保護膜の膜厚が減少した場合、反射型マスクの使用時における多層反射膜を保護する機能が低下してしまう。
【0012】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、塩素を含み酸素を含まないガスを用いたドライエッチング、塩素と酸素を含むガスを用いたドライエッチング、SPM洗浄に対して高い耐性を有する保護膜を有する反射型マスクブランク、反射型マスク及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、基板の一の主表面上に形成された多層反射膜の保護膜を有する反射型マスクブランク及び反射型マスクにおいて、保護膜を、ルテニウム(Ru)と、ニオブ(Nb)を含有する保護膜とし、保護膜の厚さ方向において、保護膜の多層反射膜に近接する側、及び保護膜の多層反射膜から最も離間する側の双方より、ルテニウム(Ru)含有率が低い部分を有するように構成することにより、保護膜が、塩素を含み酸素を含まないガスを用いたドライエッチング、塩素と酸素を含むガスを用いたドライエッチング、SPM洗浄に対して、高い耐性を有することを見出し、本発明をなすに至った。
【0014】
従って、本発明は、以下の反射型マスクブランク、反射型マスク、及び反射型マスクの製造方法を提供する。
1.基板と、該基板の一の主表面上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜の上に形成された保護膜とを有する反射型マスクブランクであって、
前記保護膜が、ルテニウム(Ru)と、ニオブ(Nb)を含有し、
前記保護膜が、その厚さ方向において、前記保護膜の前記多層反射膜に近接する側、及び前記保護膜の前記多層反射膜から最も離間する側の双方より、ルテニウム(Ru)含有率が低い部分を有することを特徴とする反射型マスクブランク。
2.前記保護膜の前記ルテニウム(Ru)含有率が低い部分が、ニオブ(Nb)を含有し、前記保護膜の前記ルテニウム(Ru)含有率が低い部分のルテニウム(Ru)含有率が85原子%以下であることを特徴とする1に記載の反射型マスクブランク。
3.前記保護膜の前記多層反射膜に近接する側のルテニウム(Ru)含有率が95原子%以上であり、前記保護膜の前記多層反射膜から最も離間する側のルテニウム(Ru)含有率が90原子%以上であることを特徴とする2に記載の反射型マスクブランク。
4.前記保護膜の上に形成された露光光を吸収する吸収体膜を有し、該吸収体膜が、タンタル(Ta)と窒素(N)を含有することを特徴とする1に記載の反射型マスクブランク。
5.前記吸収体膜上に、更にクロム(Cr)を含有するハードマスク膜を有することを特徴とする4に記載の反射型マスクブランク。
6.前記保護膜が、前記多層反射膜側から順に、第1の層、第2の層及び第3の層からなり、
前記第1の層が、ルテニウム(Ru)を含有し、ルテニウム(Ru)以外の元素を実質的に含有しない層であり、
前記第2の層が、ニオブ(Nb)を含有する層であり、
前記第3の層が、ルテニウム(Ru)を含有し、ルテニウム(Ru)以外の元素を実質的に含有しない層である
ことを特徴とする1に記載の反射型マスクブランク。
7.前記第2の層が、更に、ルテニウム(Ru)を含有することを特徴とする6に記載の反射型マスクブランク。
8.前記保護膜全体の平均ルテニウム(Ru)含有率が50原子%以上95原子%以下であることを特徴とする6に記載の反射型マスクブランク。
9.前記保護膜の上に形成された露光光を吸収する吸収体膜を有し、該吸収体膜が、タンタル(Ta)と窒素(N)を含有することを特徴とする6に記載の反射型マスクブランク。
10.前記吸収体膜上に、更にクロム(Cr)を含有するハードマスク膜を有することを特徴とする9に記載の反射型マスクブランク。
11.基板と、該基板の一の主表面上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜の上に形成された保護膜と、該保護膜の上に形成された露光光を吸収する吸収体膜のパターンとを有する反射型マスクであって、
前記保護膜が、ルテニウム(Ru)と、ニオブ(Nb)を含有し、
前記保護膜が、その厚さ方向において、前記保護膜の前記多層反射膜に近接する側、及び前記保護膜の前記多層反射膜から最も離間する側の双方より、ルテニウム(Ru)含有率が低い部分を有することを特徴とする反射型マスク。
12.前記保護膜の前記ルテニウム(Ru)含有率が低い部分が、ニオブ(Nb)を含有し、前記保護膜の前記ルテニウム(Ru)含有率が低い部分のルテニウム(Ru)含有率が85原子%以下であることを特徴とする11に記載の反射型マスク。
13.前記保護膜の前記多層反射膜に近接する側のルテニウム(Ru)含有率が95原子%以上であり、前記保護膜の前記多層反射膜から最も離間する側のルテニウム(Ru)含有率が90原子%以上であることを特徴とする12に記載の反射型マスク。
14.前記保護膜が、前記多層反射膜側から順に、第1の層、第2の層及び第3の層からなり、
前記第1の層が、ルテニウム(Ru)を含有し、ルテニウム(Ru)以外の元素を実質的に含有しない層であり、
前記第2の層が、ニオブ(Nb)を含有する層であり、
前記第3の層が、ルテニウム(Ru)を含有し、ルテニウム(Ru)以外の元素を実質的に含有しない層である
ことを特徴とする11に記載の反射型マスク。
15.前記第2の層が、更に、ルテニウム(Ru)を含有することを特徴とする14に記載の反射型マスク。
16.前記保護膜全体の平均ルテニウム(Ru)含有率が50原子%以上95原子%以下であることを特徴とする14に記載の反射型マスク。
17.4又は9に記載の反射型マスクブランクの前記吸収体膜の上に、レジスト膜のパターンを形成する工程と、
該レジスト膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素を含み酸素を含まないガスを用いたドライエッチングにより、前記吸収体膜のパターンを形成する工程と、
該吸収体膜のパターンを形成する工程の後に、SPM洗浄により前記レジスト膜のパターンを除去する工程と
を含むことを特徴とする反射型マスクの製造方法。
18.5又は10に記載の反射型マスクブランクの前記ハードマスク膜の上に、レジスト膜のパターンを形成する工程と、
該レジスト膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素と酸素を含むガスを用いたドライエッチングにより、前記ハードマスク膜のパターンを形成する工程と、
該ハードマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素を含み酸素を含まないガスを用いたドライエッチングにより、前記吸収体膜のパターンを形成する工程と、
該吸収体膜のパターンを形成する工程の後に、SPM洗浄により前記レジスト膜のパターンを除去する工程と、
該レジスト膜のパターンを除去する工程の後に、塩素と酸素を含むガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜のパターンを除去する工程と
を含むことを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の反射型マスクブランク及び反射型マスクの保護膜は、反射型マスク製造時の塩素を含み酸素を含まないガスを用いたドライエッチングや、塩素と酸素を含むガスを用いたドライエッチングに対して、高い耐性を有し、また、反射型マスク製造時や、反射型マスク使用時のSPM洗浄に対する高い耐性も有する。そのため、保護膜の多層反射膜を保護する機能へのダメージが小さく、多層反射膜の反射率の低下が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の反射型マスクブランクの第1の態様の一例を示す断面図である。
図2】本発明の反射型マスクブランクの第2の態様の一例を示す断面図である。
図3】本発明の反射型マスクブランク及び反射型マスクの第3の態様の一例を示し、(A)は反射型マスクブランクの断面図、(B)は反射型マスクの断面図である。
図4】本発明の反射型マスクブランク及び反射型マスクの第4の態様の一例を示し、(A)は反射型マスクブランクの断面図、(B)は反射型マスクの断面図である。
図5】本発明の反射型マスクブランク及び反射型マスクの第5の態様の一例を示し、(A)は反射型マスクブランクの断面図、(B)は反射型マスクの断面図である。
図6】本発明の反射型マスクブランク及び反射型マスクの第6の態様の一例を示し、(A)は反射型マスクブランクの断面図、(B)は反射型マスクの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の反射型マスクブランクは、基板と、基板上(基板の一の主表面(表側の面)上)に形成された露光光を反射する多層反射膜と、多層反射膜上に形成された保護膜とを有する。本発明の反射型マスクブランクは、EUV光を露光光とするEUVリソグラフィで用いられる反射型マスク(EUVマスク)の素材(EUVマスクブランク)として好適である。EUV光を露光光とするEUVリソグラフィに用いられるEUV光の波長は13~14nmであり、通常、波長が13.5nm程度の光である。
【0018】
基板は、EUV光露光用として、低熱膨張特性を有するものであることが好ましく、例えば、熱膨張係数が、±2×10-8/℃以内、好ましくは±5×10-9/℃の範囲内の材料で形成されているものが好ましい。このような材料としては、チタニアドープ石英ガラス(SiO2-TiO2系ガラス)などが挙げられる。また、基板は、表面が十分に平坦化されているものを用いることが好ましく、基板の主表面の表面粗さは、RMS値で、好ましくは0.5nm以下、より好ましくは0.2nm以下である。このような表面粗さは、基板の研磨などにより得ることができる。基板のサイズは、基板の主表面のサイズが、152mm角、基板の厚さが6.35mmであることが好ましい。このサイズの基板は、いわゆる6025基板と呼ばれる基板(主表面のサイズが、6インチ角、厚さが0.25インチの基板)である。
【0019】
多層反射膜は、反射型マスクにおいて、露光光であるEUV光を反射する膜である。多層反射膜は、基板の一の主表面に接して設けてよく、また、基板と多層反射膜との間に下地膜を設けてもよい。多層反射膜は、反射型マスクにおいて、露光光であるEUV光を反射する膜である。多層反射膜はEUV光に対する屈折率が相対的に高い高屈折率層と、EUV光に対する屈折率が相対的に低い低屈折率層を交互に積層した周期積層構造を有する。
【0020】
高屈折率層はケイ素(Si)を含有する層であることが好ましい。高屈折率層は、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)及び水素(H)から選択される少なくとも1つの添加元素を含有していてもよい。高屈折率層は、更に、添加元素を含有する層と、添加元素を含有しない層との多層で構成されていてもよい。高屈折率層の厚さは、好ましくは3.5nm以上、より好ましくは4nm以上であり、また、好ましくは4.9nm以下、より好ましくは4.4nm以下である。低屈折率層はモリブデン(Mo)を含有する層であることが好ましい。低屈折率層は、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)及び水素(H)から選択される少なくとも1つの添加元素を含有していてもよい。低屈折率層は、更に、添加元素を含有する層と、添加元素を含有しない層との多層で構成されていてもよい。低屈折率層の厚さは、好ましくは2.1nm以上、より好ましくは2.6nm以上であり、また、好ましくは3.5nm以下、より好ましくは3nm以下である。多層反射膜の厚さは、好ましくは200nm以上、より好ましくは270nm以上であり、また、好ましくは400nm以下、より好ましくは290nm以下である。
【0021】
多層反射膜の形成方法としては、ターゲットに電力を供給し、供給した電力で雰囲気ガスをプラズマ化(イオン化)して、スパッタリングを行うスパッタ法や、イオンビームをターゲットに照射するイオンビームスパッタ法が挙げられる。スパッタ法としては、ターゲットに直流電圧を印加するDCスパッタ法、ターゲットに高周波電圧を印加するRFスパッタ法がある。スパッタ法とは、スパッタガスをチャンバーに導入した状態でターゲットに電圧を印加し、ガスをイオン化し、ガスイオンによるスパッタリング現象を利用した成膜方法で、特にマグネトロンスパッタ法は、生産性において有利である。ターゲットに印加する電力は、DCでもRFでもよく、また、DCには、ターゲットのチャージアップを防ぐために、ターゲットに印加する負バイアスを短時間反転するパルススパッタリングも含まれる。
【0022】
多層反射膜は、例えば、複数のターゲットを装着できるスパッタ装置を用いてスパッタ法により形成することができ、具体的には、ターゲットとして、モリブデン(Mo)を含有する層を形成するためのモリブデン(Mo)ターゲット、ケイ素(Si)を含有する層を形成するためのケイ素(Si)ターゲットなどから適宜選択して用い、スパッタガスとして、ヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス、キセノン(Xe)ガスなどの希ガスを用いて形成することができる。
【0023】
また、スパッタリングを、反応性ガスを用いた反応性スパッタリングとする場合は、例えば、窒素(N)を含有する膜を形成するときには、窒素(N2)ガスなどの窒素含有ガス、酸素(O)を含有する膜を形成するときには、酸素(O2)ガスなどの酸素含有ガス、窒素(N)と酸素(O)を含有する膜を形成するときには、亜酸化窒素(N2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO2)ガスなどの酸化窒素ガス、炭素(C)と酸素(O)を含有する膜を形成するときには、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガスなどの酸化炭素ガス、水素(H)を含有する膜を形成するときには、水素(H2)ガスなどの水素含有ガス、炭素(C)と水素(H)を含有する膜を形成するときには、メタン(CH4)ガスなどの炭化水素ガスを、希ガスと共に用いればよい。更に、ホウ素(B)を含有する層を形成するときには、ホウ素(B)を添加したモリブデン(Mo)ターゲット(ホウ化モリブデン(MoB)ターゲット)、ホウ素(B)を添加したケイ素(Si)ターゲット(ホウ化ケイ素(SiB)ターゲット)などを用いることができる。
【0024】
保護膜は、反射型マスクブランクにおいて、多層反射膜を保護する膜である。本発明において、保護膜は、ルテニウム(Ru)と、ニオブ(Nb)を含有する。また、保護膜は、厚さ方向において、多層反射膜に近接する側(具体的には、多層反射膜に近接する側の界面又は界面部)、及び多層反射膜から最も離間する側(具体的には、多層反射膜から最も離間する側の界面又は界面部)の双方より、ルテニウム(Ru)含有率が低い部分を有する構造を有している。従って、保護膜は、厚さ方向において、組成が変化する構造を有しており、多層反射膜に近接する側、及び多層反射膜から最も離間する側以外の部分(内部)に、ルテニウム(Ru)含有率が低い部分を有している。保護膜は、ルテニウム(Ru)含有率が段階的及び/又は連続的に変化する構造を有している。保護膜は、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)などの添加元素を含有していてもよいが、多層反射膜に近接する側及び多層反射膜から最も離間する側は、酸素(O)を含有していないことが好ましく、添加元素を含有していないことがより好ましい。保護膜は、多層反射膜上に形成される。保護膜は、多層反射膜との間に他の膜を介して形成されていてもよいが、通常、多層反射膜に接して形成される。
【0025】
多層反射膜から最も離間する側のルテニウム(Ru)含有率を、多層反射膜から最も離間する側より内側(多層反射膜側)のルテニウム(Ru)含有率より高くすることにより、塩素を含み酸素を含まないガスを用いたドライエッチング、及びSPM洗浄に対して、高い耐性が得られる。多層反射膜から最も離間する側のルテニウム(Ru)含有率を、多層反射膜から最も離間する側より内側(多層反射膜側)のルテニウム(Ru)含有率より高くすることにより、保護膜形成後の洗浄、熱処理、自然酸化などにより、保護膜の表層部に、ニオブ(Nb)の酸化物が形成されることを抑制することができる。その結果、吸収体膜をパターニングする際に適用される塩素を含み酸素を含まないガスを用いたドライエッチング、SPM洗浄における保護膜へのダメージを低減することができる。保護膜の多層反射膜から最も離間する側のルテニウム(Ru)含有率は、90原子%以上であることが好ましく、保護膜の多層反射膜から最も離間する側は、ルテニウム(Ru)以外の元素を実質的に含有しないこと(ルテニウム(Ru)からなること)がより好ましい。SPM洗浄は、硫酸と過酸化水素水との混合液(硫酸過水)による洗浄であり、硫酸過水は、一般に、硫酸と過酸化水素水とが、硫酸:過酸化水素水=1:0.25~1の容積比で混合された液である。
【0026】
多層反射膜から最も離間する側より内側(多層反射膜側)のルテニウム(Ru)含有率を低くすることにより、塩素と酸素を含むガスを用いたドライエッチングに対して、高い耐性が得られる。多層反射膜に近接する側、及び多層反射膜から最も離間する側以外の部分(内部)のルテニウム(Ru)含有率が高すぎると、塩素と酸素を含むガスを用いたドライエッチングに対する十分な耐性が得られない場合がある。そのため、保護膜の多層反射膜に近接する側、及び保護膜の多層反射膜から最も離間する側の双方より、ルテニウム(Ru)含有率が低い部分のルテニウム(Ru)含有率は、90原子%未満であることが好ましく、85原子%以下であることがより好ましい。
【0027】
一方、多層反射膜に近接する側、及び多層反射膜から最も離間する側以外の部分(内部)のルテニウム(Ru)含有率が低すぎると、反射型マスク製造時や使用時のSPM洗浄に対する十分な耐性が得られない場合や、保護膜形成後の洗浄、熱処理、自然酸化などにより、保護膜の内部での、ニオブ(Nb)の酸化物の形成が促進される場合がある。ニオブ(Nb)の酸化物の形成は、EUV光に対する光学定数を変化させ、反射率の低下を引き起こす要因となる。そのため、保護膜の多層反射膜に近接する側、及び保護膜の多層反射膜から最も離間する側の双方より、ルテニウム(Ru)含有率が低い部分のルテニウム(Ru)含有率は、50原子%以上であることが好ましい。保護膜の多層反射膜に近接する側、及び保護膜の多層反射膜から最も離間する側の双方より、ルテニウム(Ru)含有率が低い部分は、ニオブ(Nb)を含有することが好ましい。保護膜の多層反射膜に近接する側、及び保護膜の多層反射膜から最も離間する側の双方より、ルテニウム(Ru)含有率が低い部分は、ニオブ(Nb)を含有する場合、更に、ルテニウム(Ru)を含有していてもよい。
【0028】
多層反射膜に近接する側のルテニウム(Ru)含有率を、多層反射膜に近接する側より内側(多層反射膜から離間する側)のルテニウム(Ru)含有率より高くすることにより、SPM洗浄に対して、高い耐性が得られる。ルテニウム(Ru)含有率が高いと、ニオブ(Nb)の酸化物が形成されにくいため、多層反射膜に近接する側のルテニウム(Ru)含有率を高くすることにより、反射型マスクを繰り返し使用して、保護膜へのダメージが多層反射膜に近接する側に至った場合であっても、SPM洗浄に対する保護膜の耐性を維持することができる。保護膜の多層反射膜に近接する側のルテニウム(Ru)含有率は、95原子%以上であることが好ましく、保護膜の多層反射膜に近接する側は、ルテニウム(Ru)以外の元素を実質的に含有しないこと(ルテニウム(Ru)からなること)がより好ましい。
【0029】
図1は、本発明の反射型マスクブランクの第1の態様の一例を示す断面図である。この反射型マスクブランク101は、基板1と、基板1上に、基板1に接して形成されている多層反射膜2と、多層反射膜2に接して形成されている保護膜3とを備える。この場合、保護膜3は、厚さ方向において、組成が変化する構造を有する。
【0030】
エッチングや洗浄によるダメージを保護膜全体で小さくする観点から、保護膜全体の平均ルテニウム(Ru)含有率は、50原子%以上であることが好ましく、60原子%以上であることが好ましく、65原子%以上であることが更に好ましく、また、95原子%以下であることが好ましく、90原子%以下であることがより好ましい。
【0031】
保護膜が薄すぎると、反射型マスク製造時のエッチングや、反射型マスク製造時や使用時の洗浄に対する十分な耐性が得られない。また、保護膜が厚すぎると、EUV光の反射率を大きく低下させる。そのため、保護膜の厚さは2nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましく、また、5nm以下であることが好ましく、4nm以下であることがより好ましい。
【0032】
保護膜は、多層反射膜側から順に、第1の層、第2の層及び第3の層からなる構造(3層構造)とすることができる。この場合、多層反射膜に近接する側の第1の層、及び反射膜から最も離間する側の第3の層の双方より、第2の層のルテニウム(Ru)含有率が低い構造とすることができる。第1の層、第2の層及び第3の層は、各々、ルテニウム(Ru)含有率が段階的及び/又は連続的に変化する構造を有していてもよく、また、ニオブ(Nb)含有率が段階的及び/又は連続的に変化する構造を有していてもよい。第1の層、第2の層及び第3の層は、各々、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)などの添加元素を含有していてもよいが、第1の層及び第3の層は、酸素(O)を含有していないことが好ましく、添加元素を含有していないことがより好ましい。
【0033】
第3の層は、ルテニウム(Ru)を含有する層であることが好ましい。第3の層のルテニウム(Ru)含有率を、第2の層のルテニウム(Ru)含有率より高くすることにより、塩素を含み酸素を含まないガスを用いたドライエッチング、及びSPM洗浄に対して、高い耐性が得られる。第3の層のルテニウム(Ru)含有率を、第2の層のルテニウム(Ru)含有率より高くすることにより、保護膜形成後の洗浄、熱処理、自然酸化などにより、保護膜の表層部に、ニオブ(Nb)の酸化物が形成されることを抑制することができる。その結果、吸収体膜をパターニングする際に適用される塩素を含み酸素を含まないガスを用いたドライエッチング、SPM洗浄における保護膜へのダメージを低減することができる。保護膜の第3の層のルテニウム含有率は、90原子%以上であることが好ましく、第3の層は、ルテニウム(Ru)以外の元素を実質的に含有しないこと(ルテニウム(Ru)からなること)がより好ましい。
【0034】
第3の層の厚さは、0.2nm以上であることが好ましく、0.5nm以上であることがより好ましく、また、3.5nm以下であることが好ましく、1.5nm以下であることがより好ましい。
【0035】
第2の層は、ニオブ(Nb)を含有する層であることが好ましい。第2の層のルテニウム(Ru)含有率を低くすることにより、塩素と酸素を含むガスを用いたドライエッチングに対して、高い耐性が得られる。第2の層のルテニウム(Ru)含有率が高すぎると、塩素と酸素を含むガスを用いたドライエッチングに対する十分な耐性が得られない場合がある。そのため、第2の層のルテニウム(Ru)含有率は、90原子%未満であることが好ましく、85原子%以下であることがより好ましい。
【0036】
一方、第2の層のルテニウム(Ru)含有率が低すぎると、反射型マスク製造時や使用時のSPM洗浄に対する十分な耐性が得られない場合や、保護膜形成後の洗浄、熱処理、自然酸化などにより、保護膜の内部での、ニオブ(Nb)の酸化物の形成が促進される場合がある。ニオブ(Nb)の酸化物の形成は、EUV光に対する光学定数を変化させ、反射率の低下を引き起こす要因となる。そのため、第2の層のルテニウム(Ru)含有率は、50原子%以上であることが好ましい。第2の層は、ニオブ(Nb)を含有することが好ましい。ニオブ(Nb)を含有する第2の層は、更に、ルテニウム(Ru)を含有していてもよい。
【0037】
第2の層の厚さは、0.3nm以上であることが好ましく、1nm以上であることがより好ましく、また、4.5nm以下であることが好ましく、3.5nm以下であることがより好ましい。
【0038】
第1の層は、ルテニウム(Ru)を含有する層であることが好ましい。第1の層のルテニウム(Ru)含有率を、第2の層のルテニウム(Ru)含有率より高くすることにより、SPM洗浄に対して、高い耐性が得られる。ルテニウム(Ru)含有率が高いと、ニオブ(Nb)の酸化物が形成されにくいため、第1の層のルテニウム(Ru)含有率を高くすることにより、反射型マスクを繰り返し使用して、保護膜へのダメージが第1の層に至った場合であっても、SPM洗浄に対する保護膜の耐性を維持することができる。保護膜の第1の層のルテニウム(Ru)含有率は、95原子%以上であることが好ましく、保護膜の第1の層は、ルテニウム(Ru)以外の元素を実質的に含有しないこと(ルテニウム(Ru)からなること)がより好ましい。
【0039】
第1の層の厚さは、0.2nm以上であることが好ましく、0.3nm以上であることがより好ましく、また、4.5nm以下であることが好ましく、3nm以下であることがより好ましく、1.5nm以下であることが更に好ましい。
【0040】
図2は、本発明の反射型マスクブランクの第2の態様の一例を示す断面図である。この反射型マスクブランク102は、基板1と、基板1上に、基板1に接して形成されている多層反射膜2と、多層反射膜2に接して形成されている保護膜3とを備える。この場合、保護膜3は、多層反射膜2側から、多層反射膜2に接して形成されている第1の層31と、第1の層に接して形成されている第2の層32と、第2の層に接して形成されている第3の層33との3層構造である。
【0041】
保護膜の組成及び厚さ(第1の層、第2の層及び第3の層の、各々の組成及び厚さ)は、反射型マスク製造時のエッチングや、反射型マスク製造時や使用時の洗浄での処理条件や、反射型マスクの使用環境などに応じて設定すればよい。
【0042】
保護膜(保護膜を構成する各層)は、例えば、スパッタ法によって形成することができる。ターゲットとしては、ルテニウム(Ru)を含む膜又は層を形成するためにはルテニウム(Ru)ターゲット又はルテニウム(Ru)合金ターゲット、ニオブ(Nb)を含む膜又は層を形成するためにはニオブ(Nb)ターゲット又はニオブ(Nb)合金ターゲットを用いることができる。具体的には、ルテニウム(Ru)ターゲット、ニオブ(Nb)ターゲット、ルテニウム(Ru)とニオブ(Nb)との合金ターゲットなどから、適宜選択して用いることができる。保護膜(保護膜を構成する各層)は、スパッタガスとして、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス、キセノン(Xe)ガスなどの希ガスを用いたスパッタリングにより、また、希ガスと共に、酸素含有ガス、窒素含有ガス、炭素含有ガスなどの反応性ガスとを用いた反応性スパッタリングにより形成することができる。反応性ガスとして具体的には、酸素(O2)ガス、窒素(N2)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO2)ガスなどの酸化窒素ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガスなどの酸化炭素ガスなどが挙げられる。
【0043】
保護膜(保護膜を構成する各層)の組成は、ターゲットに印加する電力の大きさ(比率)などによって制御することができる。また、保護膜(保護膜を構成する各層)の厚さは、ターゲットへ印加する電力の大きさ、ターゲットへ電力を印加する時間などによって制御することができる。
【0044】
保護膜の上には、更に、パターン形成膜として吸収体膜を形成して、基板と、多層反射膜と、保護膜と、吸収体膜とを有する反射型マスクブランク(EUVマスクブランク)とし、吸収体膜をパターン形成することによって、反射型マスク(EUVマスク)を製造するのが一般的である。
【0045】
本発明の反射型マスクブランクは、保護膜上に、更に、露光光を吸収する吸収体膜を有していてもよい。このような反射型マスクブランクとして具体的には、基板と、基板の一の主表面上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、多層反射膜の上に形成された保護膜と、保護膜上に形成された露光光を吸収する吸収体膜とを有するものが挙げられる。多層反射膜と、保護膜と、吸収体膜とを有する反射型マスクブランクからは、基板と、基板の一の主表面上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、多層反射膜の上に形成された保護膜と、保護膜の上に形成された露光光を吸収する吸収体膜のパターン(吸収体パターン)とを有する反射型マスクを製造することができる。吸収体膜は、露光光、具体的にはEUV光を吸収し、反射率を低下させる膜である。吸収体膜は、保護膜に接して設けられていることが好ましい。
【0046】
吸収体膜は、多層反射膜の上に形成され、露光光であるEUV光を吸収して、露光光の反射率を低下させる膜であり、反射型マスクにおいては、吸収体膜が形成されている部分と、吸収体膜が形成されていない部分との反射率の差によって、転写パターンを形成する。
【0047】
吸収体膜の材料としては、EUV光を吸収し、パターン加工が可能な材料であれば、制限はない。吸収体膜の材料としては、例えば、タンタル(Ta)を含有する材料が挙げられ、具体的には、Ta単体、TaO、TaN、TaON、TaC、TaCN、TaCO、TaCON、TaB、TaOB、TaNB、TaONB、TaCB、TaCNB、TaCOB、TaCONBなどのタンタル(Ta)化合物が挙げられる。
【0048】
吸収体膜の材料としては、特に、タンタル(Ta)と窒素(N)を含有する材料、特に、タンタル(Ta)と窒素(N)とからなる材料は、塩素を含み酸素を含まないガスを用いたドライエッチングにおけるエッチング選択比が、ルテニウム(Ru)を含む材料からなる保護膜に対して高く、更に、後述するハードマスク膜、特に、クロムを含む材料からなるハードマスク膜に対しても高く、吸収体膜のパターン形成時の加工性が良好となることから好ましい。吸収体膜のタンタル(Ta)と窒素(N)を含有する材料において、タンタル(Ta)の含有率は、好ましくは30原子%以上、より好ましくは40原子%以上であり、また、好ましくは90原子%以下、より好ましくは85原子%以下である。また、窒素(N)の含有率は好ましくは10原子%以上、より好ましくは15原子%以上であり、また、好ましくは60原子%以下、より好ましくは50原子%以下である。吸収体膜の厚さは、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上であり、また、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下である。
【0049】
吸収体膜は、スパッタリングにより形成することができ、スパッタリングは、マグネトロンスパッタが好ましい。具体的には、タンタル(Ta)ターゲットや、タンタル(Ta)化合物ターゲット(タンタル(Ta)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)などとを含有するターゲット)などを用い、スパッタガスとして、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス、キセノン(Xe)ガスなどの希ガスを用いたスパッタリングにより、また、希ガスと共に、酸素含有ガス、窒素含有ガス、炭素含有ガスなどの反応性ガスとを用いた反応性スパッタリングにより形成することができる。反応性ガスとして具体的には、酸素(O2)ガス、窒素(N2)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO2)ガスなどの酸化窒素ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガスなどの酸化炭素ガスなどが挙げられる。更に、ホウ素(B)を含有する膜を形成するときには、ホウ素(B)を添加したタンタル(Ta)ターゲット(ホウ化タンタル(TaB)ターゲット)などを用いることができる。
【0050】
図3は、本発明の反射型マスクブランク及び反射型マスクの第3の態様の一例を示す断面図である。この反射型マスクブランク103は、基板1と、基板1上に、基板1に接して形成されている多層反射膜2と、多層反射膜2に接して形成されている保護膜3と、保護膜3に接して形成されている吸収体膜4とを備える。一方、反射型マスク103aは、基板1と、基板1上に、基板1に接して形成されている多層反射膜2と、多層反射膜2に接して形成されている保護膜3と、保護膜3に接して形成されている吸収体膜のパターン(吸収体パターン)4aとを備える。これらの場合、保護膜3は、厚さ方向において、組成が変化する構造を有する。
【0051】
図4は、本発明の反射型マスクブランク及び反射型マスクの第4の態様の一例を示す断面図である。この反射型マスクブランク104は、基板1と、基板1上に、基板1に接して形成されている多層反射膜2と、多層反射膜2に接して形成されている保護膜3と、保護膜3に接して形成されている吸収体膜4とを備える。一方、反射型マスク104aは、基板1と、基板1上に、基板1に接して形成されている多層反射膜2と、多層反射膜2に接して形成されている保護膜3と、保護膜3に接して形成されている吸収体膜のパターン(吸収体パターン)4aとを備える。これらの場合、保護膜3は、多層反射膜2側から、多層反射膜2に接して形成されている第1の層31と、第1の層に接して形成されている第2の層32と、第2の層に接して形成されている第3の層33との3層構造である。
【0052】
本発明の反射型マスクブランクは、吸収体膜上に、更に、吸収体膜をドライエッチングする際のエッチングマスクとして機能するハードマスク膜を有していてもよい。このような反射型マスクブランクとして具体的には、基板と、基板の一の主表面上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、多層反射膜の上に形成された保護膜と、保護膜上に形成された露光光を吸収する吸収体膜と、吸収体膜上に形成されたハードマスク膜とを有するものが挙げられる。多層反射膜と、保護膜と、吸収体膜と、ハードマスク膜とを有する反射型マスクブランクからは、基板と、基板の一の主表面上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、多層反射膜の上に形成された保護膜と、保護膜の上に形成された露光光を吸収する吸収体膜のパターン(吸収体パターン)とを有する反射型マスクを製造することができ、必要に応じてハードマスク膜のパターンを残存させれば、吸収体膜のパターン(吸収体パターン)の上に形成されたハードマスク膜のパターンを有する反射型マスクを製造することもできる。ハードマスク膜は、吸収体膜に接して設けられていることが好ましい。
【0053】
ハードマスク膜は、吸収体膜とはエッチング特性が異なり、吸収体膜をドライエッチングする際のエッチングマスクとして機能する膜である。このハードマスク膜は、吸収体膜のパターン(吸収体パターン)を形成した後には、例えばパターン検査などの検査で用いる光の波長における反射率を低減するための反射率低減層として残しても、取り除いて反射型マスク上には残存させないようにしてもよい。ハードマスク膜の材料としては、クロム(Cr)を含有する材料が挙げられる。クロム(Cr)を含有する材料で形成されているハードマスク膜は、特に、吸収体膜が、タンタル(Ta)を含有し、クロム(Cr)を含有しない材料で形成されている場合に好適である。吸収体膜の一部として、パターン検査などの検査で用いる光の波長における反射率を低減する機能を主に担う層(反射率低減層)を形成する場合は、ハードマスク膜は、吸収体膜の反射率低減層の上に形成することができる。ハードマスク膜の厚さは、特に制限はないが、通常5~20nm程度である。
【0054】
ハードマスク膜は、スパッタリングにより形成することができ、スパッタリングは、マグネトロンスパッタが好ましい。具体的には、クロム(Cr)ターゲットや、クロム(Cr)化合物ターゲット(クロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)などとを含有するターゲット)などを用い、スパッタガスとして、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス、キセノン(Xe)ガスなどの希ガスを用いたスパッタリングにより、また、希ガスと共に、酸素含有ガス、窒素含有ガス、炭素含有ガスなどの反応性ガスとを用いた反応性スパッタリングにより形成することができる。反応性ガスとして具体的には、酸素(O2)ガス、窒素(N2)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO2)ガスなどの酸化窒素ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガスなどの酸化炭素ガスなどが挙げられる。
【0055】
図5は、本発明の反射型マスクブランク及び反射型マスクの第5の態様の一例を示す断面図である。この反射型マスクブランク105は、基板1と、基板1上に、基板1に接して形成されている多層反射膜2と、多層反射膜2に接して形成されている保護膜3と、保護膜3に接して形成されている吸収体膜4と、吸収体膜4に接して形成されているハードマスク膜5とを備える。一方、反射型マスク105aは、基板1と、基板1上に、基板1に接して形成されている多層反射膜2と、多層反射膜2に接して形成されている保護膜3と、保護膜3に接して形成されている吸収体膜のパターン(吸収体パターン)4aと、吸収体膜のパターン(吸収体パターン)4aに接して形成されているハードマスク膜のパターン5aとを備える。更に、この反射型マスク105aからハードマスク膜のパターン5aを除去して、図3(B)に示される第3の態様の反射型マスク103aとすることもできる。これらの場合、保護膜3は、厚さ方向において、組成が変化する構造を有する。
【0056】
図6は、本発明の反射型マスクブランク及び反射型マスクの第6の態様の一例を示す断面図である。この反射型マスクブランク106は、基板1と、基板1上に、基板1に接して形成されている多層反射膜2と、多層反射膜2に接して形成されている保護膜3と、保護膜3に接して形成されている吸収体膜4と、吸収体膜4に接して形成されているハードマスク膜5とを備える。一方、反射型マスク106aは、基板1と、基板1上に、基板1に接して形成されている多層反射膜2と、多層反射膜2に接して形成されている保護膜3と、保護膜3に接して形成されている吸収体膜のパターン(吸収体パターン)4aと、吸収体膜のパターン(吸収体パターン)4aに接して形成されているハードマスク膜のパターン5aとを備える。更に、この反射型マスク106aからハードマスク膜のパターン5aを除去して、図4(B)に示される第4の態様の反射型マスク104aとすることもできる。これらの場合、保護膜3は、多層反射膜2側から、多層反射膜2に接して形成されている第1の層31と、第1の層に接して形成されている第2の層32と、第2の層に接して形成されている第3の層33との3層構造である。
【0057】
反射型マスクブランクは、更に、基板の一の主表面と反対側の面である他の主表面(裏側の面)上に、好ましくは他の主表面に接して、反射型マスクを露光装置に静電チャックするために用いる導電膜を設けてもよい。
【0058】
導電膜は、シート抵抗が100Ω/□以下であることが好ましく、材質に特に制限はない。導電膜の材料としては、例えば、タンタル(Ta)又はクロム(Cr)を含有する材料が挙げられる。また、タンタル(Ta)又はクロム(Cr)を含有する材料は、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)などを含有していてもよい。タンタル(Ta)を含有する材料としては、Ta単体、TaO、TaN、TaON、TaC、TaCO、TaCN、TaCON、TaB、TaOB、TaNB、TaONB、TaCB、TaCOB、TaCNB、TaCONBなどのタンタル(Ta)化合物が挙げられる。クロム(Cr)を含有する材料として具体的には、Cr単体、CrO、CrN、CrON、CrC、CrCO、CrCN、CrCON、CrB、CrOB、CrNB、CrONB、CrCB、CrCOB、CrCNB、CrCONBなどのクロム(Cr)化合物が挙げられる。
【0059】
導電膜の厚さは、静電チャック用として機能すればよく、特に制限はないが、通常20~300nm程度である。導電膜の厚さは、反射型マスクとして形成した後、特に、吸収体膜のパターン(吸収体パターン)を形成した後に、多層反射膜及び吸収体膜のパターン(吸収体パターン)と、膜応力がバランスするように形成することが好ましい。導電膜は、多層反射膜を形成する前に形成しても、基板の多層反射膜側の全ての膜を形成した後に形成してもよく、また、基板の多層反射膜側の一部の膜を形成した後、導電膜を形成し、その後、基板の多層反射膜側の残部の膜を形成してもよい。導電膜は、例えば、マグネトロンスパッタ法により形成することができる。
【0060】
反射型マスクブランクは、更に、基板から最も離間する側に、レジスト膜が形成されたものであってもよい。本発明において、レジスト膜は、電子線(EB)レジストが好ましい。また、レジスト膜はSPM洗浄で除去できるものが好ましい。
【0061】
次に、反射型マスクブランクから反射型マスクを製造する方法について説明する。多層反射膜と、保護膜と、吸収体膜とを有する反射型マスクブランクから、基板と、多層反射膜と、保護膜と、吸収体膜のパターン(吸収体パターン)とを有する反射型マスクを製造する場合、例えば、まず、反射型マスクブランクの吸収体膜の上に、レジスト膜のパターン(レジストパターン)を形成する。本発明において、レジスト膜のパターン(レジストパターン)は、反射型マスクブランクに形成されているレジスト膜から、又は反射型マスクブランクの上にレジスト膜を形成して、形成したレジスト膜から、露光、現像、洗浄などの工程を含む常法により形成することができる。次に、レジスト膜のパターン(レジストパターン)をエッチングマスクとして、塩素を含み酸素を含まないガスを用いたドライエッチングにより、吸収体膜のパターン(吸収体パターン)を形成する。次に、吸収体膜のパターン(吸収体パターン)を形成した後に、SPM洗浄によりレジスト膜のパターン(レジストパターン)を除去すれば、反射型マスクを得ることができる。
【0062】
また、多層反射膜と、保護膜と、吸収体膜と、ハードマスク膜とを有する反射型マスクブランクから、基板と、多層反射膜と、保護膜と、吸収体膜のパターン(吸収体パターン)と、ハードマスク膜のパターンとを有する反射型マスクを製造する場合、まず、反射型マスクブランクの吸収体膜の上に、レジスト膜のパターン(レジストパターン)を形成する。次に、レジスト膜のパターン(レジストパターン)をエッチングマスクとして、塩素と酸素を含むガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜のパターンを形成する。次に、ハードマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素を含み酸素を含まないガスを用いたドライエッチングにより、吸収体膜のパターン(吸収体パターン)を形成する。次に、吸収体膜のパターン(吸収体パターン)を形成した後に、SPM洗浄によりレジスト膜のパターン(レジストパターン)を除去すれば、ハードマスク膜のパターンを残存させた反射型マスクを得ることができる。更に、レジスト膜のパターン(レジストパターン)を除去した後に、塩素と酸素を含むガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜のパターンを除去すれば、ハードマスク膜のパターンのない反射型マスクを得ることができる。
【0063】
本発明の保護膜は、多層反射膜から最も離間する側(第3の層)のルテニウム(Ru)含有率が高く形成されているので、吸収体膜のパターン(吸収体パターン)の形成のための塩素を含み酸素を含まないガスを用いたドライエッチング、及びその後のレジスト膜のパターン(レジストパターン)の除去のためのSPM洗浄に対して、高い耐性を発揮する。
【0064】
また、本発明の保護膜は、厚さ方向において、多層反射膜に近接する側(第1の層)、及び多層反射膜から最も離間する側(第3の層)の双方より内側(第2の層)のルテニウム(Ru)含有率が低く形成されているので、ハードマスク膜のパターンの形成のための塩素と酸素を含むガスを用いたドライエッチングに対して、高い耐性を発揮する。
【0065】
更に、本発明の保護膜は、多層反射膜に近接する側(第1の層)のルテニウム(Ru)含有率が高く形成されているので、反射型マスクを繰り返し使用して、保護膜へのダメージが多層反射膜に近接する側に至った場合であっても、SPM洗浄に対する保護膜の耐性を維持することができる。
【0066】
このように、本発明の反射型マスクブランク保護膜は、反射型マスクブランクから反射型マスクを製造する際に適用される塩素を含み酸素を含まないガスを用いたドライエッチングや、塩素と酸素を含むガスを用いたドライエッチングに対して、高い耐性を有し、また、反射型マスクブランクから反射型マスクを製造する際に適用されるSPM洗浄、更には、反射型マスクを使用する際に適用されるSPM洗浄に対する高い耐性を有する。
【実施例0067】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0068】
[実施例1]
152mm角、6.35mm厚の低熱膨張ガラス基板(SiO2-TiO2系ガラス基板)に、モリブデン(Mo)ターゲットとケイ素(Si)ターゲットとを用い、両ターゲットと基板の主表面とを対向させ、基板を自転させながら、DCパルスマグネトロンスパッタリングにより、多層反射膜を形成した。ターゲットを2つ装着でき、ターゲットを片方ずつ又は両方同時に放電することができるスパッタ装置に、各々のターゲットを装着し、基板を設置した。
【0069】
まず、チャンバー内にアルゴン(Ar)ガス(流量:12SCCM)を流しながらケイ素(Si)ターゲットに電力を印加し、厚さ4.2nmのケイ素(Si)層を形成して、ケイ素ターゲットへの電力の印加を停止した。次に、チャンバー内にアルゴンガス(流量:15SCCM)を流しながら、モリブデンターゲットに電力を印加し、厚さ2.8nmのモリブデン(Mo)層を形成し、モリブデンターゲットへの電力の印加を停止した。これらケイ素(Si)層とモリブデン(Mo)層とを形成する操作を1サイクルとし、これを40サイクル繰り返して、40サイクル目のモリブデン(Mo)層を形成した後、最後に、上記の方法でケイ素(Si)層を4.2nm形成して、多層反射膜とした。
【0070】
次に、多層反射膜の上に、ルテニウム(Ru)ターゲットとニオブ(Nb)ターゲットを用い、両ターゲットと基板の主表面とを対向させ、基板を自転させながら、DCパルスマグネトロンスパッタリングにより、多層反射膜に接する保護膜を形成した。ターゲットを2つ装着でき、ターゲットを片方ずつ又は両方同時に放電することができるスパッタ装置に、各々のターゲットを装着し、多層反射膜を形成した基板を設置した。
【0071】
まず、チャンバー内にアルゴン(Ar)ガス(流量:10SCCM)を流しながらルテニウム(Ru)ターゲットに電力を印加し、保護膜の多層反射膜と接する第1の層として、厚さ1.5nmのルテニウム(Ru)単体の層(Ru層)を形成して、ルテニウム(Ru)ターゲットへの電力の印加を停止した。
【0072】
次に、チャンバー内にアルゴン(Ar)ガス(流量:10SCCM)を流しながらニオブ(Nb)ターゲットに電力を印加し、保護膜の第1の層と接する第2の層として、厚さ1nmのニオブ(Nb)単体の層(Nb層)を形成して、ニオブ(Nb)ターゲットへの電力の印加を停止した。
【0073】
次に、チャンバー内にアルゴン(Ar)ガス(流量:10SCCM)を流しながらルテニウム(Ru)ターゲットに電力を印加し、保護膜の第2の層と接する第3の層として、厚さ0.5nmのルテニウム(Ru)単体の層(Ru層)を形成して、ルテニウム(Ru)ターゲットへの電力の印加を停止した。
【0074】
これらの操作によって、厚さ方向において、組成が変化する構造を有する厚さ3nmの保護膜を形成して、反射型マスクブランクを得た。得られた保護膜の第1の層、第2の層及び第3の層の組成と厚さから算出した、保護膜全体の平均ルテニウム(Ru)含有率は、73原子%であった。なお、厚さは、断面のエネルギー分散型X線分光法を利用した透過型電子顕微鏡(TEM-EDX)像で確認した。
【0075】
次に、得られた保護膜の耐性を評価した。保護膜に対して、塩素を含み酸素を含まないガス(Cl2流量:150SCCM、He流量:10SCCM)を用いたドライエッチングを128秒間実施し、次いで、塩素と酸素を含むガス(Cl2流量:150SCCM、O2流量:30SCCM、He流量:10SCCM)を用いたドライエッチングを45秒間実施した後、SPM洗浄(H2SO4:H22=3:1、6分間)する処理をした。処理後の保護膜の厚さを測定したところ、保護膜形成時の厚さと比較して、0.6nmの厚さの減少が確認された。
【0076】
[実施例2]
第2の層として、チャンバー内にアルゴン(Ar)ガス(流量:10SCCM)を流しながらルテニウム(Ru)ターゲット及びニオブ(Nb)ターゲットに電力を印加して、厚さ1nmのルテニウム(Ru)とニオブ(Nb)とからなる層(RuNb層)を形成した以外は、実施例1と同様にして、反射型マスクブランクを得た。
【0077】
得られた保護膜の第2の層のルテニウム(Ru)含有率は50原子%であった。また、得られた保護膜の第1の層、第2の層及び第3の層の組成と厚さから算出した、保護膜全体の平均ルテニウム(Ru)含有率は、85原子%であった。次に、得られた保護膜の耐性を、実施例1と同様の方法で評価した。処理後の保護膜の厚さを測定したところ、保護膜形成時の厚さと比較して、0.2nmの厚さの減少が確認された。
【0078】
[実施例3]
第2の層として、チャンバー内にアルゴン(Ar)ガス(流量:10SCCM)を流しながらルテニウム(Ru)ターゲット及びニオブ(Nb)ターゲットに、電力を、実施例2と比べてニオブ(Nb)ターゲットに印加する電力を小さくして印加して、厚さ1nmのルテニウム(Ru)とニオブ(Nb)とからなる層(RuNb層)を形成した以外は、実施例2と同様にして、反射型マスクブランクを得た。
【0079】
得られた保護膜の第2の層のルテニウム(Ru)含有率は85原子%であった。また、得られた保護膜の第1の層、第2の層及び第3の層の組成と厚さから算出した、保護膜全体の平均ルテニウム(Ru)含有率は、95原子%であった。次に、得られた保護膜の耐性を、実施例1と同様の方法で評価した。処理後の保護膜の厚さを測定したところ、保護膜形成時の厚さと比較して、1.6nmの厚さの減少が確認された。
【0080】
[実施例4]
第1の層として、チャンバー内にアルゴン(Ar)ガス(流量:10SCCM)を流しながらルテニウム(Ru)ターゲット及びニオブ(Nb)ターゲットに電力を印加して、厚さ1.5nmのルテニウム(Ru)とニオブ(Nb)とからなる層(RuNb層)を形成した以外は、実施例1と同様にして、反射型マスクブランクを得た。
【0081】
得られた保護膜の第1の層のルテニウム(Ru)含有率は95原子%であった。また、得られた保護膜の第1の層、第2の層及び第3の層の組成と厚さから算出した、保護膜全体の平均ルテニウム(Ru)含有率は、70原子%であった。次に、得られた保護膜の耐性を、実施例1と同様の方法で評価した。処理後の保護膜の厚さを測定したところ、保護膜形成時の厚さと比較して、1.6nmの厚さの減少が確認された。
【0082】
[実施例5]
第3の層として、チャンバー内にアルゴン(Ar)ガス(流量:10SCCM)を流しながらルテニウム(Ru)ターゲット及びニオブ(Nb)ターゲットに電力を印加して、厚さ0.5nmのルテニウム(Ru)とニオブ(Nb)とからなる層(RuNb層)を形成した以外は、実施例1と同様にして、反射型マスクブランクを得た。
【0083】
得られた保護膜の第3の層のルテニウム(Ru)含有率は90原子%であった。また、得られた保護膜の第1の層、第2の層及び第3の層の組成と厚さから算出した、保護膜全体の平均ルテニウム(Ru)含有率は、71原子%であった。次に、得られた保護膜の耐性を、実施例1と同様の方法で評価した。処理後の保護膜の厚さを測定したところ、保護膜形成時の厚さと比較して、0.7nmの厚さの減少が確認された。
【0084】
[比較例1]
保護膜として、チャンバー内にアルゴン(Ar)ガス(流量:10SCCM)を流しながらルテニウム(Ru)ターゲットに電力を印加して、厚さ3nmのルテニウム(Ru)単体の層(Ru層)を形成し、単層構造の保護膜とした以外は、実施例1と同様にして、反射型マスクブランクを得た。
【0085】
次に、得られた保護膜の耐性を、実施例1と同様の方法で評価した。処理後の保護膜の厚さを測定したところ、保護膜形成時の厚さと比較して、2.8nmの厚さの減少が確認された。
【0086】
[比較例2]
保護膜の形成において、実施例1と同様にして、実施例1の第1の層と同じ、厚さ1.5nmのルテニウム(Ru)単体の層(Ru層)を形成し、次いで、第2の層の厚さを変更して厚さ1.5nmのニオブ(Nb)単体の層(Nb層)を形成し、実施例1とは異なり第3の層を形成せずに、2層構造の保護膜とした以外は、実施例1と同様にして、反射型マスクブランクを得た。
【0087】
次に、得られた保護膜の耐性を、実施例1と同様の方法で評価した。処理後の保護膜の厚さを測定したところ、保護膜が消失していることが確認された。
【0088】
[比較例3]
保護膜の形成において、実施例1とは異なり第1の層を形成せずに、実施例1と同様にして、第2の層の厚さを変更して厚さ2.5nmのニオブ(Nb)単体の層(Nb層)を形成し、次いで、実施例1の第3の層と同じ、厚さ0.5nmのルテニウム(Ru)単体の層(Ru層)を形成して、2層構造の保護膜とした以外は、実施例1と同様にして、反射型マスクブランクを得た。
【0089】
次に、得られた保護膜の耐性を、実施例1と同様の方法で評価した。処理後の保護膜の厚さを測定したところ、保護膜形成時の厚さと比較して、2.7nmの厚さの減少が確認された。
【符号の説明】
【0090】
1 基板
2 多層反射膜
3 保護膜
31 第1の層
32 第2の層
33 第3の層
4 吸収体膜
4a 吸収体膜のパターン(吸収体パターン)
5 ハードマスク膜
5a ハードマスク膜のパターン
101、102、103、104、105、106 反射型マスクブランク
103a、104a、105a、106a 反射型マスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
層反射膜は、基板の一の主表面に接して設けてよく、また、基板と多層反射膜との間に下地膜を設けてもよい。多層反射膜は、反射型マスクにおいて、露光光であるEUV光を反射する膜である。多層反射膜はEUV光に対する屈折率が相対的に高い高屈折率層と、EUV光に対する屈折率が相対的に低い低屈折率層を交互に積層した周期積層構造を有する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
エッチングや洗浄によるダメージを保護膜全体で小さくする観点から、保護膜全体の平均ルテニウム(Ru)含有率は、50原子%以上であることが好ましく、60原子%以上であることがより好ましく、65原子%以上であることが更に好ましく、また、95原子%以下であることが好ましく、90原子%以下であることがより好ましい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
図2は、本発明の反射型マスクブランクの第2の態様の一例を示す断面図である。この反射型マスクブランク102は、基板1と、基板1上に、基板1に接して形成されている多層反射膜2と、多層反射膜2に接して形成されている保護膜3とを備える。この場合、保護膜3は、多層反射膜2側から、多層反射膜2に接して形成されている第1の層31と、第1の層31に接して形成されている第2の層32と、第2の層32に接して形成されている第3の層33との3層構造である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
吸収体膜の材料としては、タンタル(Ta)と窒素(N)を含有する材料、特に、タンタル(Ta)と窒素(N)とからなる材料は、塩素を含み酸素を含まないガスを用いたドライエッチングにおけるエッチング選択比が、ルテニウム(Ru)を含む材料からなる保護膜に対して高く、更に、後述するハードマスク膜、特に、クロムを含む材料からなるハードマスク膜に対しても高く、吸収体膜のパターン形成時の加工性が良好となることから好ましい。吸収体膜のタンタル(Ta)と窒素(N)を含有する材料において、タンタル(Ta)の含有率は、好ましくは30原子%以上、より好ましくは40原子%以上であり、また、好ましくは90原子%以下、より好ましくは85原子%以下である。また、窒素(N)の含有率は好ましくは10原子%以上、より好ましくは15原子%以上であり、また、好ましくは60原子%以下、より好ましくは50原子%以下である。吸収体膜の厚さは、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上であり、また、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
図4は、本発明の反射型マスクブランク及び反射型マスクの第4の態様の一例を示す断面図である。この反射型マスクブランク104は、基板1と、基板1上に、基板1に接して形成されている多層反射膜2と、多層反射膜2に接して形成されている保護膜3と、保護膜3に接して形成されている吸収体膜4とを備える。一方、反射型マスク104aは、基板1と、基板1上に、基板1に接して形成されている多層反射膜2と、多層反射膜2に接して形成されている保護膜3と、保護膜3に接して形成されている吸収体膜のパターン(吸収体パターン)4aとを備える。これらの場合、保護膜3は、多層反射膜2側から、多層反射膜2に接して形成されている第1の層31と、第1の層31に接して形成されている第2の層32と、第2の層32に接して形成されている第3の層33との3層構造である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
図6は、本発明の反射型マスクブランク及び反射型マスクの第6の態様の一例を示す断面図である。この反射型マスクブランク106は、基板1と、基板1上に、基板1に接して形成されている多層反射膜2と、多層反射膜2に接して形成されている保護膜3と、保護膜3に接して形成されている吸収体膜4と、吸収体膜4に接して形成されているハードマスク膜5とを備える。一方、反射型マスク106aは、基板1と、基板1上に、基板1に接して形成されている多層反射膜2と、多層反射膜2に接して形成されている保護膜3と、保護膜3に接して形成されている吸収体膜のパターン(吸収体パターン)4aと、吸収体膜のパターン(吸収体パターン)4aに接して形成されているハードマスク膜のパターン5aとを備える。更に、この反射型マスク106aからハードマスク膜のパターン5aを除去して、図4(B)に示される第4の態様の反射型マスク104aとすることもできる。これらの場合、保護膜3は、多層反射膜2側から、多層反射膜2に接して形成されている第1の層31と、第1の層31に接して形成されている第2の層32と、第2の層32に接して形成されている第3の層33との3層構造である。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
また、多層反射膜と、保護膜と、吸収体膜と、ハードマスク膜とを有する反射型マスクブランクから、基板と、多層反射膜と、保護膜と、吸収体膜のパターン(吸収体パターン)と、ハードマスク膜のパターンとを有する反射型マスクを製造する場合、まず、反射型マスクブランクのハードマスク膜の上に、レジスト膜のパターン(レジストパターン)を形成する。次に、レジスト膜のパターン(レジストパターン)をエッチングマスクとして、塩素と酸素を含むガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜のパターンを形成する。次に、ハードマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素を含み酸素を含まないガスを用いたドライエッチングにより、吸収体膜のパターン(吸収体パターン)を形成する。次に、吸収体膜のパターン(吸収体パターン)を形成した後に、SPM洗浄によりレジスト膜のパターン(レジストパターン)を除去すれば、ハードマスク膜のパターンを残存させた反射型マスクを得ることができる。更に、レジスト膜のパターン(レジストパターン)を除去した後に、塩素と酸素を含むガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜のパターンを除去すれば、ハードマスク膜のパターンのない反射型マスクを得ることができる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
このように、本発明の反射型マスクブランク保護膜は、反射型マスクブランクから反射型マスクを製造する際に適用される塩素を含み酸素を含まないガスを用いたドライエッチングや、塩素と酸素を含むガスを用いたドライエッチングに対して、高い耐性を有し、また、反射型マスクブランクから反射型マスクを製造する際に適用されるSPM洗浄、更には、反射型マスクを使用する際に適用されるSPM洗浄に対する高い耐性を有する。