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  • 特開-電極 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089157
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】電極
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/263 20210101AFI20240626BHJP
   A61B 5/256 20210101ALI20240626BHJP
   A61B 5/0533 20210101ALI20240626BHJP
   C08F 20/60 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A61B5/263
A61B5/256
A61B5/0533
C08F20/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204348
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】三ツ井 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】工藤 康太郎
【テーマコード(参考)】
4C127
4J100
【Fターム(参考)】
4C127AA07
4C127BB03
4C127LL08
4C127LL13
4C127LL22
4J100AL08Q
4J100AM21P
4J100BA28P
4J100BA56P
4J100BA64Q
4J100CA03
4J100DA56
4J100EA03
4J100JA45
(57)【要約】
【課題】部品交換や頻繁な洗浄などの、ウェアラブルデバイスの使用に大きな負荷となる行為を必要とせずに、生体電気信号を継続的にセンシング出来るよう、防汚性を有する電極の提供を課題とする。
【解決手段】電極は、基材と、体積抵抗率が10MΩcm以下であり、水接触角が40°以下の防汚コート層を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
体積抵抗率が10MΩcm以下であり、水接触角が40°以下の防汚コート層とを有する電極。
【請求項2】
電極体積抵抗率が100kΩcm以下である、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記防汚コート層が両極性アクリルアミドを含むモノマーの重合体を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記防汚コート層の膜厚が2μm以下である、請求項1に記載の電極。
【請求項5】
前記防汚コート層の鉛筆コードがH以上である、請求項1に記載の電極。
【請求項6】
前記基材が金属又は導電ゴムのいずれかから構成される、請求項1に記載の電極。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の電極を含む、ウェアラブルデバイス。
【請求項8】
生体電気信号測定用電極である、請求項1~6のいずれか1項に記載の電極。
【請求項9】
皮膚電気活動測定用電極である、請求項1~6のいずれか1項に記載の電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体電気信号を取得するために用いられる電極に関する。
【背景技術】
【0002】
生体電気信号(例えば、心電、皮膚電気活動(抵抗、インピーダンス)、脳波など)は、診断、予防を目的に、これまで特に医療分野で広く用いられてきた。電気信号の取得は、人体に接触させた電極に、電位変化、抵抗変化などを測定する回路を接続した測定系により行われてきた。
【0003】
生体電気信号は微弱な場合が多く、また、人体と電極の接触性によりその値が大きく変化するため、体動や、電極および人体表面の汚れ、人体表面の保湿量などに強く影響する。測定したい要因以外の外部影響による測定信号の変化はノイズとなり、その信号を用いた診断の精度を損ねる。そのため、病院等に設置された診断装置での測定では、ディスポーサブルな粘着性電極によりしっかりと人体に固定する、一回一回皮膚をアルコールで洗浄する、接触性を高めるためのジェルを用いる、などの接触性を安定させる工夫がなされてきた。
【0004】
一方、近年、スマートウォッチ、スマートリングなどのウェアラブルデバイスに、バイタルセンサーが搭載され、継続的に生体信号を取得することにより、ヘルスケア、予防に役立てる動きが加速している。特に、従来の病院に設置された装置による測定が、ある瞬間のものに限られていることと異なり、ウェアラブルデバイスは、ほぼ24時間常時生体信号を測定することができ、長時間のデータの取得、解析により従来できなかった分析、体調診断が可能となっている。その中で、皮膚電気活動の測定など、生体電気信号をセンシングする方法も搭載が進んできている。
【0005】
スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスでは、使い捨てでなく、耐久材としての使用が前提となっているため、付加的な操作なく、部品交換もできるだけ少なく、日常継続的に使用できる状態が必要である。生体電気活動の、電極による測定は、前述の通り、電極の汚染がノイズになる課題があるが、ウェアラブルデバイスでは、病院装置で実施されてきたような、ディスポーサブル部品の使用、使用毎の洗浄などを行う事ができない。そのため、電極自体が汚れにくい様な状態が必要となる。防汚性を持たせるため、例えば、人体由来の物質が付きにくいように防汚コートを対象物に付与する例はあり、例えば、公知文献1では、指紋汚れなどが付きにくい様、タッチパネル表面に施す防汚コートの例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-169295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のような方法での防汚コートは、そのまま電極表面に敷設しても導電性もしくは耐久性などが不足しており、電極としての機能が不十分であった。導電性、耐久性などを有し電極として機能しつつ防汚性を有する態様についてはこれまで開示されてこなかった。
【0008】
本発明の目的は、部品交換や頻繁な洗浄などの、ウェアラブルデバイスの使用に大きな負荷となる行為を必要とせずに、生体電気信号を継続的にセンシング出来るよう、防汚性を有する電極を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 基材と、
体積抵抗率が10MΩcm以下であり、水接触角が40°以下の防汚コート層とを有する電極。
[2] 電極体積抵抗率が100kΩcm以下である、[1]に記載の電極。
[3] 上記防汚コート層が両極性アクリルアミドを含むモノマーの重合体を含む、[1]または[2]に記載の電極。
[4] 上記防汚コート層の膜厚が2μm以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の電極。
[5] 上記防汚コート層の鉛筆コードがH以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の電極。
[6] 上記基材が金属又は導電ゴムのいずれかから構成される、[1]~[5]のいずれかに記載の電極。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の電極を含む、ウェアラブルデバイス。
[8] 生体電気信号測定用電極である、[1]~[7]のいずれかに記載の電極。
[9] 皮膚電気活動測定用電極である、[1]~[8]のいずれかに記載の電極。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、部品交換や頻繁な洗浄などの、ウェアラブルデバイスの使用に大きな負荷となる行為を必要とせずに、生体電気信号を継続的にセンシングできる新規な電極が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の電極の一例を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の電極について、詳細に説明する。
【0013】
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「同一」は、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。
【0014】
本明細書において、表記される2価の基(例えば、-CO-O-等)の結合方向は、特段の断りがない限り、制限されない。例えば、「X-Y-Z」なる式で表される化合物中の、Yが-CO-O-である場合、上記化合物は「X-O-CO-Z」及び「X-CO-O-Z」のいずれであってもよい。
【0015】
なお、以下に示す図は、いずれも、本発明を説明するための概念的な図である。従って、各部材の形状、厚さ、大きさ、および、位置関係等は、必ずしも、実際のものとは一致しない。
【0016】
本発明において、鋭意検討の結果、電極が基材と、体積抵抗率が10MΩcm以下であり、水接触角が40°以下の防汚コート層とを有することで、導電性を担保しつつ、防汚性を有する電極を実現できることを見出した。さらに電極上の防汚コート層が親水性に富み、好ましくは両極性構造を有するコート層とすることで、より導電性を担保しつつ、より防汚性を高めることができ、好ましいことを見出した。
【0017】
図1に、本発明の電極の一例を概念的に示す。図1に示す電極10は、基材12と、防汚コート層14を有する。
【0018】
基材12は、電気伝導性を示す基材であり、特に制限はないが、耐久性、ウェアラブル用途(長時間装着用途)を考慮すると、金属、導電ゴムが好ましい。金属としては、金属アレルギーなど人体に影響を与えないものが好ましく、チタン、ステンレス、アルミニウムおよび、その化合物などが好ましく用いられる。導電性ゴムとしては特に制限はないが、耐久性があり導電性を示すゴム素材として、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどの母体に、カーボン、無機金属粒子などが含まれる形態を好ましく用いることができる。基材12の厚みに特に制限はないが、ウェアラブル素材に用いる事を考慮し、薄いことが好ましく、10mm以下、好ましくは5mm以下、更に好ましくは1mm以下である。
【0019】
防汚コート層14は、単層でも、複層でも良い。複層の場合、例えば、基材12側の層は基材12との密着性を担保し、上層が防汚性や耐久性を持たせるための層などのように、機能分離されることも好ましい。
【0020】
防汚コート層14は、親水性を示すことにより、好ましく防汚性を発現する。これは、皮脂などの親油性材料に対し、水分を電極表面に担持する、あるいは一度付着した油分が水分により速やかに置き換えられる事により清浄になりやすい態様によると推測される。親水性は、水接触角が40°以下であり、40°未満であることが好ましい。水接触角は、純水接触角は、接触角計(例えば、M553G-XM((株)シロ産業製)を用いて測定される。電極表面に純水を1μl滴下して、θ/2法により求め、5回測定して得た値の平均値を接触角の値とする。
【0021】
防汚コート層14は、凹凸が少ない事が好ましい。凹凸が大きいと、皮脂、油分が滞留しやすく付着しやすいためと推定される。凹凸は、レーザー顕微鏡(例えば、キーエンス社製VK-8700)で測定したRa(算術平均粗さ)において、2μm以下が好ましく、1μm以下が更に好ましく、0.5μm以下が最も好ましい。また、基材の粗さに対し、コートした後の粗さが悪化していないことが好ましく、コート後電極の算術平均粗から基材の算術平均粗さを減じた値が、0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることが好ましい。
【0022】
電極10は導電性を有する必要がある。そのため、防汚コート層14の体積抵抗率は10MΩcm以下であり、5MΩcm以下であることがより好ましく、2MΩcm以下であることが更に好ましい。電極10の電極体積抵抗率は100kΩcm以下であることが好ましく、10kΩcm以下であることがより好ましく、1kΩcm以下であることが更に好ましい。防汚コート層14の体積抵抗率は、2×2cmの導電性基材12上に防汚コート層を成膜し、2×2cmの導電性平滑金属板(例えば平滑な50μm厚のステンレス板)をその上に押し当て、導電性基材間(導電性基材と導電性平滑金属板)の抵抗を測定し、そこから導電性平滑金属および基材12分の抵抗を減じた値を、コート層14の膜厚方向の抵抗として、厚みで割り面積を乗じた値を体積抵抗率として求める。また、電極10の体積抵抗率は、2×2cmの電極10に対し、2×2cmの導電性平滑金属板を防汚コート層14側から押し当て、導電性基材間の抵抗を測定し、そこから導電性平滑金属板分の抵抗を減じた値を、電極10の膜厚方向の抵抗として、厚みで割り面積を乗じた値を体積抵抗率として求める。また、抵抗値の絶対値を小さくし、且つ防汚性を発現させ、且つ膜としての強度を担保するため、防汚コート層14の膜厚は20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、2μm以下が更に好ましく、1μm以下が最も好ましい。また、1nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。膜厚は、断面SEMにより求める事ができる。
【0023】
電極10は、表面硬度が高い事により、剥がれ、耐久性を向上することができる。硬度を挙げるには、コート層に架橋構造を入れる、絡み合いの大きいポリマー構造(例えば、調査構造、パッキン性の高いブロック層導入など)を用いることにより好ましく実現できる。表面構造は、好ましくは鉛筆硬度でF以上、より好ましくはH以上が好ましい。鉛筆硬度は、JIS K5600記載の方法で測定できる。
【0024】
基材12と防汚コート層14は、密着性が高い事が耐久性の観点から好ましい。密着性はJIS K5600記載のクロスカット法で確認できる。密着性は、分類2以下が好ましく、分類1以下がより好ましく、分類0が更に好ましい。
【0025】
汗(水分)がある中で皮脂付着を抑制するために、表面油分が水に置き換えられやすい特性を有する事が好ましい。そのため、防汚コート層14は、両イオン性材料を有することが好ましく、両極性アクリルアミドを含むモノマーの重合体を含むことが好ましい。
両極性アクリルアミドを含むモノマーの重合体として、アクリルアミド構造を有し、-SOMおよび-COOMからなる群より選択される置換基の少なくとも一つを有する構造を含むポリマーであることが好ましく、アクリルアミド構造を有し、-SOMを有する構造を含むポリマーが更に好ましい。Mは、水素原子もしくは乖離してカチオンとなりうる原子、もしくは原子団を表す。両極性アクリルアミドを含むモノマーの重合体としては、例えば、WO17/073437の段落[0146]~[0164]、特開2010-231195の段落[0047]~[0070]、特開2011-245846の段落[0031]~[0101]、特開2012-187907の段落[0086]~[0138]に記載の、両極性アクリルアミドを含むモノマーの重合体、また、WO19/078056の[0013]~[0054]に記載のベタインアクリルアミドモノマーを含む重合体を用いる事ができる。
両極性アクリルアミドを含むモノマーとしては下記構造のモノマーが特に好ましい。
【0026】
【化1】
【0027】
防汚コート層14の成膜方法について特に制限はないが、ディップコート、バーコート、ダイコートなどにより成膜することができる。溶媒を含んだコート液として塗布し、乾燥、加熱により成膜することも好ましい。また、アクリロイル基、ウレタン基などの反応性基を含み、熱開始剤、光開始剤などを含むコート材とすることで、成膜後、熱、光処理により架橋、重合構造を形成することも好ましい。
【0028】
防汚コート層14は、基材12と密着性を高めるための材料、工程を含む事も好ましい。例えば、リン酸基など基材12に吸着しやすい官能基をコート材ポリマー中に含有させる、基材12の上にシロキサン系材料などの下塗り層や、コロナ処理・プラズマ処理などを行う事も好ましい。
防汚コート層14を、ポリマー塗布により形成する場合、ポリマーの分子量については特に制限はないが、塗布性の観点から、重量平均分子量が100万以下が好ましく、20万以下がより好ましく、1000以上が好ましい。また、コート液を用いる場合、溶媒は特に制限はないが、水、有機溶媒など、適宜ポリマーの溶解性、乾燥性などから用いる事ができる。
【0029】
本発明の電極は、電極を長期間装着している系で好ましく効果をあげることができる。例えば、スマートウォッチ、イヤホン、リングなどのウェアラブルデバイス、ホルダー心電図などの医療機器などに用いられる生体電気信号測定用電極として好ましく、特に皮膚電気活動測定用電極として好ましい。特に、日、月、年単位で装着するウェアラブルデバイスで好ましく用いる事ができる。
【0030】
本発明の電極は、平板形状でも良く、デバイス、機器の形態に合わせて、曲面、3次元構造になっていても良い。
【0031】
以上、本発明のについて詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
【実施例0032】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
以下に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す態様により限定的に解釈されるべきものではない。
【0033】
(実施例1)
基材としてステンレス板(SUS304、50μm厚、表面算術平均粗さ0.61μm)を用い、その上に、防汚コート層として、
下記構造の化合物:0.18部
エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム:0.10部
ポリオキシエチレンラウリルエーテル:0.03部
水:61.39部
からなる防汚コート液1を、バー塗布により、乾燥後膜厚が170nmになる様に塗布、100℃2分乾燥し、電極1を得た。同電極の体積抵抗率は5.8×10Ωcm、防汚コート層の1.7×10Ωcm、表面の算術平均粗さは0.68μm、防汚コート層の水接触角は30°であった。
【0034】
【化2】
【0035】
なお、上記化合物における各構成単位の括弧の右下の数値は、質量比を表し、また、エチレンオキシ単位の括弧の右下の数値は、繰り返し数を表す。
【0036】
(実施例2)
実施例1において、乾燥後膜厚を2μmになる様に塗布した以外は同様にして電極2を得た。同電極の体積抵抗率は6.5×10Ωcm 、防汚コート層の1.7×10Ωcm、表面の算術平均粗さは0.70μm、防汚コート層の水接触角は30°であった。
【0037】
(実施例3)
実施例1において、基材として、厚み500μmのステンレス板(SUS304、50μm厚、表面算術平均粗さ0.71μm)以外は同様にして電極3を得た。同電極の体積抵抗率は5.7×10Ωcm 、防汚コート層の1.7×10Ωcm、表面の算術平均粗さは0.70μm、防汚コート層の水接触角は30°であった。
【0038】
(比較例1)
実施例1において、防汚コート層を、ダイキン化学社製オプツールを、バー塗布により、乾燥後膜厚が170nmになる様に塗布、100℃2分乾燥した以外は同様にして、電極3を得た。同電極の体積抵抗率は7.1×10Ωcm 、防汚コート層の2.1×10Ωcm、表面の算術平均粗さは0.69μm、防汚コート層の水接触角は102°であった。
【0039】
(比較例2)
基材としてステンレス板(SUS304、50μm厚、表面算術平均粗さ0.61μm)を用い、防汚コート層ない状態でそのまま電極4とした。同電極の体積抵抗率は7.1×10-5Ωcm、表面の算術平均粗さは0.61μm、防汚コート層の水接触角は69°であった。
【0040】
(防汚性の評価方法)
2×2cmの大きさに切り取った電極を2つ用意し、導電ゴムシート(エンジニア社製導電性カラーマット)3×7cmの上に、長手方向に3cmの間隔で2つの電極を置き、各電極の上にそれぞれ200gの重りを載せ、2電極間の抵抗を測定した。その際、防汚コート層がある場合は、防汚コート層側を導電ゴムシート側にした。その後、各電極を取り出し、導電ゴムに接した面の上に、電極を45°に傾けた状態で人工汗(林純薬製)と人工皮脂(林純薬製)の混合溶液(重量比 1:0.0004)を60ccかけ流した。その後、40℃30分乾燥させた後、再び導電ゴムシート上に、人工汗と人工皮脂をかけ流した面をゴムシートに接するようにした状態で、最初と同じ間隔、重りを載せて、2電極間の抵抗値を測定した。人工汗および皮脂で電極表面が汚染されると、導電ゴムと電極間の接触抵抗が増大することを利用し、人工汗と人工皮脂の混合液をかけ流す処理を行う前後での抵抗変化から、防汚性を評価した。
【0041】
表1に評価結果を示す。比較例1、2においては、人工汗と人工皮脂の混合溶液を掛け流すことにより抵抗上昇、すなわち汚染が見られたが、実施例1、2、3においては抵抗情報がほぼなく、防汚性が確認された。実施例2では、皮脂汚れで生じるのと同程度の抵抗値増分が防汚コートした時点で発生していたが、防汚性によりそれ以上の抵抗上昇はなかった。実施例1、3は、実施例2に対し、防汚コートによる抵抗上昇がほぼない状態で、防汚性も示した。
【0042】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0043】
スマートウォッチ、イヤホン、リングなどのウェアラブルデバイス、ホルダー心電図などの医療機器等の各種の生体電気信号測定用に、好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 電極
12 基材
14 防汚コート層
図1