(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089209
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】フライドベーカリー製品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A21D 13/60 20170101AFI20240626BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A21D13/60
A23D9/00 518
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204427
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100206689
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】小黒 麻希
(72)【発明者】
【氏名】冨石 雄也
【テーマコード(参考)】
4B026
4B032
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG01
4B026DG05
4B026DG06
4B026DG07
4B026DG08
4B026DG09
4B026DX01
4B032DB24
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4B032DL20
4B032DP08
4B032DP23
4B032DP33
4B032DP37
4B032DP47
4B032DP54
4B032DP59
(57)【要約】
【課題】20℃におけるSFC(固体脂含量)が2.0以上である油脂でフライしたフライドベーカリー製品の食感を、ソフトにしっとりさせる製造方法と、それにより得られるフライドベーカリー製品の提供。
【解決手段】20℃におけるSFC(固体脂含量)が2.0以上である油脂を揚げ油としてフライした、ドーナツや揚げパン等のベーカリー製品の表面に、20℃で液体である液状油を付着させる工程を含む製造方法により製造されるフライドベーカリー製品は、油っぽさがなくソフトでしっとりした食感のフライドベーカリー製品となる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
20℃におけるSFC(固体脂含量)が2.0以上である油脂を揚げ油としてフライするフライドベーカリー製品の製造方法であって、20℃におけるSFCが2.0以上である油脂を揚げ油としてフライしたベーカリー製品の表面に、20℃で液体である液状油を付着させる工程を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記液状油が100℃以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記液状油が、ハイオレイックキャノーラ油、コーン油、こめ油、ごま油、オリーブ油、アボカド油、ハイオレイックヒマワリ油、およびアマニ油から選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記フライドベーカリー製品の生地および/または前記液状油は乳化剤を含まない、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記揚げ油はパーム油を含まない、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記液状油が付着されている表面に、さらにトッピング材、コーティング材を付着させる工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
表面に20℃で液体である液状油が付着している、20℃におけるSFC(固体脂含量)が2.0以上である油脂でフライされたフライドベーカリー製品。
【請求項8】
前記液状油が付着している表面の一部または全部に、さらにトッピング材、コーティング材が付着している、請求項7に記載のフライドベーカリー製品。
【請求項9】
20℃におけるSFC(固体脂含量)が2.0以上である油脂を揚げ油としてフライしたベーカリー製品の表面に、20℃で液体である液状油を付着させることを特徴とする、フライドベーカリー製品の食感改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、20℃におけるSFC(固体脂含量)が2.0以上である油脂でフライされるフライドベーカリー製品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イーストドーナツ、揚げパン、ケーキドーナツなどのフライドベーカリー製品は、油っぽさを軽減するために、20℃(常温帯)におけるSFC(固体脂含量)の高い油脂を使用して油ちょうすることが一般的である。ただ、20℃(常温帯)におけるSFC(固体脂含量)の高い油脂を使用するとフライドベーカリー製品全体の油っぽさは軽減できるものの、表面が乾燥し、硬くて皮張った食感になりやすいという課題がある。
【0003】
一方、揚げ菓子の製造においては、パーム系油脂によって油ちょうした生地の表面に、液状油脂であるコーティング用油脂組成物を塗布することで、酸化安定性を向上させるとともに風味、食感を改良することが提案されている(特許文献1)。対象とする揚げ菓子は、揚げせんべいなどの米菓やスナック菓子であり、特許文献1には、揚げ菓子の表面にコーティング油脂の油膜が形成されることにより、風味・食感が大幅に向上すること、および油脂に乳化剤を配合すると相乗効果を発揮することが記載されている。また、揚げ米菓やポテトチップス、スナック菓子等において、酸化安定性の向上、サクミ感の付与やサクミ感の劣化防止のために、乳化剤を配合した油脂を仕上げに塗布することは広く行われている(特許文献2、3)。
【0004】
このように、揚げ菓子の表面に油脂をコーティングして、酸化安定性の向上やサクミ感を付与することは従来行われていたが、しっとりしたソフトな食感や表面のソフト感を求めるものではなかった。
このためドーナツの場合には、シロップをドーナツにしみこませて、しっとり感やソフト感を向上させることが行われているが、味が甘くなりすぎてしまうという課題がある。また、油ちょうベーカリー製品用生地に対して、セルロース誘導体を乳化物の状態で含ませることにより、しっとりとした食感を付与することが提案されている(特許文献4)が、製品全体をしっとりとさせるものであり、表面にソフト感を付与するものではない。また、セルロース誘導体は食品添加物であるため、使用することが忌避される場合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-102389号公報
【特許文献2】特開昭56-29967号公報
【特許文献3】特開2000-253818号公報
【特許文献4】特開2020-96572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、20℃におけるSFCが2.0以上である油脂でフライしたドーナツや揚げパンなどのフライドベーカリー製品の食感を、乳化剤や増粘剤等の食品添加物に頼ることなく、ソフトにしっとりさせる製造方法と、その方法で得られるフライドベーカリー製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
食品の食感改良において、近年は乳化剤や増粘剤等の食品添加物に頼らない方法が求められている。
本発明者らは、20℃におけるSFCが2.0以上である油脂でフライしたフライドベーカリー製品の食感をしっとり・ソフトにすること、その際に、乳化剤や増粘剤等の食品添加物に頼らないやり方について鋭意研究した結果、20℃におけるSFCが2.0以上である油脂でフライしたベーカリー製品の表面に、20℃で液体である液状油を付着させることで、課題を解決できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、以下(1)~(6)のフライドベーカリー製品の製造方法に関する。
(1)20℃におけるSFC(固体脂含量)が2.0以上である油脂を揚げ油としてフライするフライドベーカリー製品の製造方法であって、20℃におけるSFCが2.0以上である油脂を揚げ油としてフライしたベーカリー製品の表面に、20℃で液体である液状油を付着させる工程を含むことを特徴とする製造方法。
(2)前記液状油が100℃以下である、上記(1)に記載の製造方法。
(3)前記液状油が、ハイオレイックキャノーラ油、コーン油、こめ油、ごま油、オリーブ油、アボカド油、ハイオレイックヒマワリ油、およびアマニ油から選択される少なくとも1種を含む、上記(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)前記ベーカリー製品の生地および/または液状油は乳化剤を含まない、上記(1)に記載の製造方法。
(5)前記揚げ油はパーム油を含まない、上記(1)に記載の製造方法。
(6)前記液状油が付着されている表面に、さらにトッピング材、コーティング材を付着させる工程を含む、上記(1)に記載の製造方法。
【0009】
また、本発明は、以下(7)、(8)のフライドベーカリー製品、および(9)の食感改良方法に関する。
(7)表面に20℃で液体である液状油が付着している、20℃におけるSFC(固体脂含量)が2.0以上である油脂でフライされたフライドベーカリー製品。
(8)前記液状油が付着している表面の一部または全部に、さらにトッピング材、コーティング材が付着している、上記(7)に記載のフライドベーカリー製品。
(9)20℃におけるSFC(固体脂含量)が2.0以上である油脂を揚げ油としてフライしたベーカリー製品の表面に、20℃で液体である液状油を付着させることを特徴とする、フライドベーカリー製品の食感改良方法。
【発明の効果】
【0010】
油っぽさを軽減するために固形油脂でフライするフライドベーカリー製品は、表面が乾燥して硬く皮張った食感となるという問題に、乳化剤や増粘剤等の食品添加物に頼ることなく対応でき、しっとり・ソフトな食感を持ったフライドベーカリー製品を製造することができる。また、卸売ドーナツ(袋入りドーナツ)等の工場でフライしてから市場に流通するフライドベーカリー製品は、消費者の元へ届くのは翌日以降であり、食するのはさらに1~3日後頃まで想定されるが、このしっとり・ソフト感は、食する時期まで持続するばかりでなく、むしろその時期において顕著である。
【0011】
また、冷凍ベーカリー生地の場合は、冷凍保存における生地の劣化を抑制するため加水を控えめにすることが知られているが、そうするとさらにフライドベーカリー製品の表面の乾燥感が増長される。この場合において、本発明はより顕著な効果を発揮する。
また、液状油として風味の良いものを選択することにより、液状油の風味を付与することができるので、新しい風味のフライドベーカリー製品を提供できるという効果もある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、20℃におけるSFC(固体脂含量)が2.0以上である油脂を揚げ油としてフライしたフライドベーカリー製品の表面に、液状油が付着されているフライドベーカリー製品およびその製造方法に関する。
本発明のフライドベーカリー製品は、ベーカリー生地をフライ(油ちょう)した食品であり、食感がソフトであることが求められるフライドベーカリー製品には、イーストドーナツやケーキドーナツなどのドーナツや揚げパンがあり、それぞれフィリング入りのものも含まれる。
【0013】
イーストドーナツは、成形後に発酵させたベーカリー生地をフライするものであり、一方、ケーキドーナツは、生地を化学膨化や水蒸気膨化によって膨らませフライするものである。フィリングは生地に包んでからフライしてもよいし、フライ後に充填したりサンドしてもよい。揚げパンは、発酵させたベーカリー生地を成形後、焼成してからフライする。フィリングは生地に包んでから焼成しフライしてもよいし、焼成しフライした後に充填したりサンドしてもよい。
【0014】
本発明のベーカリー製品は、小麦粉等の穀粉を主原料として、イースト、糖類、食塩、乳製品、卵、油脂類の原料に水等を加えて、混捏したベーカリー生地を加熱して得られる。イーストを添加する代わりにベーキングパウダーを使用してもよい。通常のべーカリーの製造に使用されるイーストフード、乳化剤、乳蛋白、製パン用酵素などを適宜添加することができるが、食品添加物は忌避される傾向にあるため、乳化剤や増粘剤等の食品添加物に頼ることのない食感改良方法が好ましい。ベーカリー生地は、中種法、ストレート法、湯種法、長時間発酵法、シュガーバッター法、フラワーバッター法、オールインミックス法等の公知のいずれの方法を用いて製造できる。
【0015】
製造したベーカリー生地を、ドーナツであれば、20℃におけるSFC(固体脂含量)が2.0以上である油脂を揚げ油としてフライする。揚げパンであれば、焼成してから20℃におけるSFC(固体脂含量)が2.0以上である油脂を揚げ油としてフライする。
【0016】
フライの揚げ油として使用する油脂は、20℃におけるSFC(固体脂含量)が2.0以上である油脂であればいずれも使用できる。20℃におけるSFC(固体脂含量)が2.0以上である油脂を揚げ油として使用することで、フライドベーカリー製品の油っぽさを軽減することができる。フライドベーカリー製品の油っぽさを軽減できる観点から、SFC(固体脂含量)は2.3以上である油脂が好ましく、5.0以上である油脂がさらに好ましく、7.0以上、10.0以上、12.0以上、15.0以上することがよりさらに好ましい。また、フライドベーカリー製品の皮張りを強くし過ぎず、口溶けを良好にする観点からは、SFC(固体脂含量)は30.0以下であることが好ましく、25.0以下であることがさらに好ましい。
なお、SFC(固体脂含量)は、基準油脂分析試験法「2.2.9-2013 固体脂含量(NMR法)」(日本油化学協会編)にしたがって測定した値である。
【0017】
20℃におけるSFC(固体脂含量)が2.0以上である油脂は、たとえば、カカオ脂、ヤシ油、パーム油、乳脂、牛脂、豚脂などの動植物性油脂、水素添加、分別、エステル交換等を施した加工油脂等が挙げられる。20℃におけるSFC(固体脂含量)が2.0以上である油脂を110~210℃程度に加熱して、ベーカリー製品をフライして、フライ後は油脂を切って放冷等により冷却する。
また、パーム油には、飽和脂肪酸が多く含まれているだけでなく、3-モノクロロプロパン-1,2-ジオール(3-MCPD)脂肪酸エステルおよびグリシドール脂肪酸エステルも含まれている。飽和脂肪酸や3-MCPD脂肪酸エステルおよびグリシドール脂肪酸エステルは、トランス脂肪酸のように人における健康被害は報告されていないものの、多量に摂取すると栄養学上の問題があることが指摘されている。近年の健康志向に沿えば、より安心して摂取できる油脂の使用が求められている。また、パーム油の原料であるアブラヤシの農園開発に伴って、森林破壊や温室効果ガスの排出等の環境問題が生じるとして、近年パーム油の使用を控える傾向もあり、フライ用油脂を構成する成分としてなるべく少ない量とすることが好ましい。
【0018】
本発明においては、ベーカリー製品を20℃におけるSFC(固体脂含量)が2.0以上である油脂でフライした後、その表面に液状油を付着させる。付着にはいずれの方法も使用でき、たとえば浸漬、スプレー、刷毛塗布等の方法を用いる。液状油の付着量は、フライドベーカリー製品に対して、0.3~20重量%の範囲であってよく、0.5~15重量%が好ましく、1.0~10重量%がより好ましく、2~6重量%がよりさらに好ましい。付着時の液状油の温度は、限定されないが、100℃以上であると熱く危ないので作業性に難がある。作業性とフライドベーカリー製品のソフト感のバランスの良さの観点から、液状油の温度は、5~80℃が好ましく、10~60℃がより好ましく、15~55℃がよりさらに好ましい。
また、液状油をフライドベーカリー製品の表面全体に付着させることは必要ないが、少なくとも、フライドベーカリー製品の食感がしっとり・ソフトになるのに十分な範囲の表面に付着させる。たとえば、フライドベーカリー製品の半面に付着させることができる。
【0019】
本発明で使用する液状油は、常温で液体の液状油であれば特に限定されることはない。たとえば、ハイオレイックキャノーラ油、コーン油、こめ油、ごま油、オリーブ油、アボカド油、ハイオレイックヒマワリ油、アマニ油、ナタネ油(キャノーラ油を含む)、大豆油、綿実油、紅花油、落花生油、くるみ油などが挙げられ、単独あるいは2種以上を混合しても使用できる。また、遺伝子組換えの技術を用いて品種改良した植物から抽出したものであってもよく、たとえば、ナタネ油、ヒマワリ油、紅花油、大豆油などでは、オレイン酸含量を高めたハイオレイックタイプの品種から得られた油でもよい。これらのうち、ハイオレイックキャノーラ油、コーン油、こめ油、ごま油、オリーブ油、アボカド油、ハイオレイックヒマワリ油、またはアマニ油が風味がよいため好ましく用いられ、香味油も使用できる。
また、食品添加物は忌避される傾向にあるため、液状油には乳化剤を配合しないことが好ましい。
【0020】
また、表面にトッピング材、コーティング材を付着させるフライドベーカリー製品の場合には、液状油を付着させた後の表面に、トッピング材、コーティング材を付着させる。トッピング材、コーティング材は、粉状、粒状、流動状等のいずれの形態でもよく、一部に付着させてもよいし、全体を被覆するように付着させてもよい。たとえば、グレーズ、アイシング、砂糖、ドーナツシュガー、フォンダン、チョコレート等が挙げられる。
製造後、フライドベーカリー製品は通常個別包装されて市場に流通される。また、製造したフライドベーカリー製品は冷蔵または冷凍して流通させてもよい。
消費者の元へ届くのは翌日以降であり、食されるのはさらに1~3日後まで想定されるが、本発明のフライドベーカリー製品の食感のしっとり・ソフトさは、常温で1~4日以上維持されて、その食感は食する時期においても顕著な効果を発揮する。
【0021】
また、本発明のフライドベーカリー製品を冷蔵または冷凍して流通させ、そのまま、または解凍や復温を行って喫食する場合においても、しっとり・ソフトという食感の改善効果は顕著なままである。
さらに、フライドベーカリー製品の表面に液状油を付着させることにより、しっとり・ソフトという食感の改善だけでだけでなく、液状油として風味の良いものを選択することにより、液状油の風味を付与することができ、香味油も使用できるので、新しい風味のフライドベーカリー製品を製造できる。
【0022】
以下、実施例等により本発明の実施形態をより具体的に記載するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【実施例0023】
[イーストドーナツの製造]
イーストドーナツ冷凍生地を下記表1の配合で調製し、下記表2の工程で製造した。
<配合>
【表1】
ブルチアーレ、ル・ガトー(昭和産業株式会社)
ジョーカーキモ(ピュラトスジャパン株式会社)
【0024】
【0025】
[生地に乳化剤入りのイーストドーナツの製造]
乳化剤入りのイーストドーナツ冷凍生地を下記表3の配合で調製し、上記表2の工程で製造した。
<配合>
【表3】
ブルチアーレ、ル・ガトー(昭和産業株式会社)
ジョーカーキモ(ピュラトスジャパン株式会社)
エマルジーММ-100(理研ビタミン株式会社)
【0026】
[ケーキドーナツの製造]
ケーキドーナツ生地を下記表4の配合で調製し、下記表5の工程で製造した。
<配合>
【表4】
ゴールデンドウケーキドーナツミックスXL-10(昭和産業株式会社)
【0027】
【0028】
[揚げパンの製造]
揚げパン生地を下記表6の配合で調製し、下記表7の工程で製造した。
<配合>
【表6】
ブルチアーレ(昭和産業株式会社)
【0029】
【0030】
[評価基準]
ベーカリー製品の評価に秀でた5名の専門官能評価パネルを用いて、以下の表8の評価基準にしたがって官能評価を行った。
【表8】
【0031】
[試験1:揚げ油に関する試験]
表1および表3の配合、表2の工程に基づきイーストドーナツを製造して、揚げ油に関する試験に供した。
揚げ油として用いる油脂として、市販のショートニング(20℃でのSFCは2.4~25.2)またはバター(20℃でのSFCは16.1)を用いて、液状油としてキャノーラ油を刷毛塗りにより付着させ、実施例1~7のイーストドーナツを製造した。比較例1として液状油を付着させないものを、比較例2として揚げ油を液状油とするものを、参考例としてドーナツ生地に乳化剤を入れて液状油を付着させないものを、それぞれ製造した。
各実施例、比較例、参考例の製造方法とそれらの官能評価の結果を表9に示す。
表9における官能評価において、表9の下から3行から最終行までの「しっとり感」、「表面の柔らかさ」、「油っぽさ」は、製造後1週間冷凍してから、チルド10時間で解凍し常温3時間で復温させて食した場合の官能評価である。一方、表9の下から7行から下から4行までの「しっとり感」、「表面の柔らかさ」、「油っぽさ」、「風味」は、製造してから24時間後に食した場合の官能評価である。
【0032】
【0033】
実施例1~7のイーストドーナツは、「しっとり感」、「表面の柔らかさ」、「油っぽさ」、「風味」のいずれの項目でも高評価でバランスがとれているのに対して、比較例1では「しっとり感」と「表面の柔らかさ」が、比較例2では「油っぽさ」の項目の評価が著しく低かった。また、ドーナツ生地に乳化剤を入れた参考例の評価は、全体として高いものの、生地全体が柔らかいという点で、実施例のものとは食感が別なものであった。
また、1週間冷凍したものを解凍して食した場合にも、製造してから24時間後に食した場合とほぼ同等の官能評価が得られ(表9下3行)、本発明のフライドベーカリー製品は、冷凍流通しても食感の改善効果は顕著なままであることが確認された。
常温下で30分間のクーリングを行わず、イーストドーナツ表面が高温(90℃)のまま液状油付着処理を施した実施例7においても、クーリングを行った実施例3と同様、評価が良かった。本発明のフライドベーカリー製品は、液状油を付着させる時の表面温度に関わらず食感の改善効果がみられることが確認された。
【0034】
[試験2:液状油に関する試験]
表1および表3の配合、表2の工程に基づきイーストドーナツを製造して、液状油に関する試験に供した。
表面に付着させる液状油の種類を変えて、25℃の各液状油を刷毛で塗布して、実施例3、8~17のイーストドーナツを製造した。比較例3として、液状油に代え40℃で溶かした20℃でのSFCが17.9の油脂を付着させたものを製造した。
各実施例、比較例の製造方法とそれらの官能評価の結果を表10に示す。
なお、表10~表13における「しっとり感」、「表面の柔らかさ」、「油っぽさ」、「風味」は、製造してから24時間後に食した場合の官能評価である。
【0035】
【0036】
液状油を付着させた実施例3、8~17では、いずれも「しっとり感」は4.5点以上、「表面の柔らかさ」は5点であり、比較例3との差がはっきりと示された。また、各液状油の風味、たとえばオリーブ油ではフルーティーさ、ごま油では香ばしい味、こめ油では甘い味が付与されており、ハイオレイックヒマワリ油ではすっきりとして素材の味が引き立っている等、新しい風味のイーストドーナツが得られた。
【0037】
比較例1、3および実施例3、8~17のイーストドーナツに、ドーナツシュガーをトッピングして包装し、24時間後に観察・試食評価を行った。比較例1、3のイーストドーナツではドーナツシュガーの付きが悪く表面の露出した部分が多く観察されやや乾いた食感であったのに対し、実施例3、8~17のイーストドーナツでは、ドーナツシュガーが付着しており、食感もソフトであった。
比較例1、3および実施例3、8~17のイーストドーナツに、チョコレートをコーティングして包装し、24時間後に試食評価を行った。比較例1、3のイーストドーナツでは乾いてパサつく食感であったのに対し、実施例3、8~17のイーストドーナツでは、柔らかくソフトな食感であった。
本発明のフライドベーカリー製品は、トッピング材、コーティング材を付着させても、食感の改善効果が見られることが確認された。
【0038】
[試験3:付着させる液状油の温度に関する試験]
表1および表3の配合、表2の工程に基づきイーストドーナツを製造して、付着させる液状油の温度に関する試験に供した。
表面に付着させる液状油としてハイオレイックヒマワリ油を用い、5~100℃の範囲の各温度で表面に刷毛で塗布して、実施例18~22のイーストドーナツを製造した。
各実施例の製造方法とそれらの官能評価の結果を表11に示す。
【0039】
【0040】
5~100℃の温度のハイオレイックヒマワリ油を表面に付着させたイーストドーナツの食感は、しっとり・ソフトであり、5℃と100℃のものではやや油っぽかった。このように、液状油の温度は3~100℃の範囲であってよい。液状油が100℃以上であると熱く危なく作業性に難があることから、5~80℃が好ましく、10~60℃がより好ましく、15~55℃がさらにより好ましい。
【0041】
[試験4:付着させる液状油の付着量に関する試験]
表1および表3の配合、表2の工程に基づきイーストドーナツを製造して、付着させる液状油の付着量に関する試験に供した。
表面に付着させる液状油としてキャノーラ油を用い、付着量をイーストドーナツ100gに対して0.5~10gの範囲の量になるように表面に刷毛で塗布して、実施例23~26のフライドベーカリー製品を製造した。
各実施例の製造方法とそれらの官能評価の結果を表12に示す。
【0042】
【0043】
イーストドーナツ100gに対して0.5~10gの範囲の量(イーストドーナツに対して0.5~10重量%)の液状油が付着したイーストドーナツで、本発明の効果が得られることが示された。このように、液状油の付着量はフライドベーカリー製品に対して、0.3~20重量%の範囲であってよく、0.5~15重量%が好ましく、1.0~10がより好ましく、2~6重量%がよりさらに好ましい。
【0044】
[試験5:ケーキドーナツ、揚げパンに関する試験]
表4の配合、表5の工程に基づきケーキドーナツを、表6の配合、表7の工程に基づき揚げパンを製造して、試験に供した。
表面に付着させる液状油としてそれぞれこめ油とコーン油を使用して、実施例27のケーキドーナツにはスプレーで、実施例28の揚げパンには浸漬で、表面に液状油を付着させた。比較例4と5として、それぞれ表面に液状油を付着させないケーキドーナツと揚げパンを製造した。
各実施例、比較例の製造方法とそれらの官能評価の結果を表13に示す。
【0045】
【0046】
イーストドーナツ以外のケーキドーナツや揚げパンにも本発明の製造方法が有効であることが示された。本発明の製造方法は、フライドベーカリー製品全般に適用できること、および液状油の付着には、いずれの方法も使用できることがわかった。