(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089403
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】試薬庫
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20240626BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
G01N35/02 C
G01N35/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204747
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 貴亮
(72)【発明者】
【氏名】出縄 達之
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058BB02
2G058BB07
2G058BB12
2G058EA08
2G058GC05
2G058GC08
2G058HA02
(57)【要約】
【課題】無線読取ユニットの故障の発生が抑制された試薬庫を提供する。
【解決手段】試薬庫は、試薬を収容した試薬容器であって試薬に関する試薬情報が記録された無線タグが設けられた複数の試薬容器を保管する試薬庫であって、試薬容器を外部よりも低温で保管可能な本体部であって、内部の試薬容器から試薬を吸引部によって吸引するための試薬吸引用開口が上面に設けられている本体部と、本体部内の側面側の内壁に配置され、試薬容器の無線タグから試薬情報を読み取る無線読取ユニットとを備えており、無線読取ユニットは、試薬吸引用開口から吸引部がアクセス可能な吸引位置に位置する試薬容器の無線タグから試薬情報を読み取り可能な範囲に配置されており、かつ、本体部を平面視した場合において、無線読取ユニットの中心は、試薬吸引用開口の中心からずれて配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬を収容した試薬容器であって、前記試薬に関する試薬情報が記録された無線タグが設けられた複数の試薬容器を保管する試薬庫であって、
前記試薬容器を外部よりも低温で保管可能な本体部であって、内部の前記試薬容器から前記試薬を吸引部によって吸引するための試薬吸引用開口が上面に設けられている本体部と、
前記本体部内の側面側の内壁に配置され、前記試薬容器の前記無線タグから前記試薬情報を読み取る無線読取ユニットとを備えており、
前記無線読取ユニットは、前記試薬吸引用開口から前記吸引部がアクセス可能な吸引位置に位置する前記試薬容器の前記無線タグから前記試薬情報を読み取り可能な範囲に配置されており、かつ、前記本体部を平面視した場合において、前記無線読取ユニットの中心は、前記試薬吸引用開口の中心からずれて配置されている、試薬庫。
【請求項2】
前記本体部は、前記無線タグが前記内壁と対面する姿勢で前記試薬容器を収容可能であり、
前記無線読取ユニットは、電波を送受信するアンテナと前記アンテナを収容するケースとを有しており、かつ、前記アンテナの送受信面は前記内壁に対して傾斜する姿勢で配置される、請求項1に記載の試薬庫。
【請求項3】
電波を遮蔽することによって、前記吸引位置に位置する前記試薬容器以外の前記試薬容器の前記無線タグと前記無線読取ユニットとの間における通信を遮断する遮蔽物を備えた、請求項1に記載の試薬庫。
【請求項4】
電波を遮蔽することによって、前記吸引位置に位置する前記試薬容器以外の前記試薬容器の前記無線タグと前記無線読取ユニットとの間における通信を遮断する遮蔽物を備えており、
前記送受信面が向いている方向において、前記送受信面と、前記吸引位置に位置する前記試薬容器の隣に配置された前記試薬容器との間に前記遮蔽物が配置されている、請求項2に記載の試薬庫。
【請求項5】
前記無線読取ユニットは、配線を引き出す配線用開口を有しており、
前記本体部を平面視した場合において、前記配線用開口は、前記試薬吸引用開口の中心から最も離れた箇所に設けられている、請求項1に記載の試薬庫。
【請求項6】
前記無線読取ユニットは、配線を引き出す配線用開口を有しており、
前記配線用開口は、前記無線読取ユニットの底面に設けられている、請求項1に記載の試薬庫。
【請求項7】
前記無線読取ユニットは、アンテナと前記アンテナを収容するケースとを有しており、
前記ケースは、複数の部材の貼り合わせによって形成され、
前記貼り合わせ部分は、シーリング材により封止されている、請求項1に記載の試薬庫。
【請求項8】
前記本体部内に複数の前記試薬容器を搬送する搬送機構を備え、
前記搬送機構は、複数の前記試薬容器を順次、前記吸引位置に搬送する、請求項1から7のいずれか1項に記載の試薬庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試薬庫に関する。
【背景技術】
【0002】
生体試料等の検体を分析する分析装置内においては、複数の検査項目についての検査が実施可能な分析装置が知られている。そのような分析装置においては、各検査項目に対応する複数の試薬を備え、検査項目に応じた試薬を適宜選択的に使用して検査が実施される。そのため試薬容器に無線タグであるRF(radio frequency)タグを取り付け、RFタグから読み取った情報に基づいて、適切な試薬を分析に用いることが提案されている(特許文献1、2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5690501号公報
【特許文献2】特許第5557501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷蔵保存が必要な試薬は冷蔵可能な試薬庫中に保存される。試薬庫には、複数の試薬容器を収容する収容ケースと、収容ケースごと試薬容器を搬送する搬送機構とが備えられている。また、試薬庫には、試薬吸引用開口が設けられており、試薬庫外部に配置されているピペット等の吸引部が試薬吸引用開口から挿入されて、試薬容器から試薬を吸引可能とされている。この際、複数の試薬容器のうち、検査項目に応じた試薬を保持する試薬容器が吸引部によりアクセス可能な位置に搬送される。この際、適切な試薬容器からの試薬吸引を実施するために、試薬容器に付与されたRFタグから試薬情報が読み取られ、適切な試薬容器が試薬吸引用開口からアクセス可能な位置に搬送される。試薬庫は冷蔵庫であり、試薬吸引用開口から試薬庫内の空気に比べて暖かい外気が侵入することにより、試薬吸引用開口近傍には結露水が発生し易い。試薬庫にRFタグ読み取り用のRFアンテナを備える際には、結露水よるRFアンテナの故障が生じる恐れがある。
【0005】
本開示は、無線タグ読み取り用の無線読取ユニットを備え、無線タグを有する試薬容器を保管する試薬庫であって、無線読取ユニットの故障の発生が抑制された試薬庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の試薬庫は、試薬を収容した試薬容器であって試薬に関する試薬情報が記録された無線タグが設けられた複数の試薬容器を保管する試薬庫であって、
試薬容器を外部よりも低温で保管可能な本体部であって、内部の試薬容器から試薬を吸引部によって吸引するための試薬吸引用開口が上面に設けられている本体部と、
本体部内の側面側の内壁に配置され、試薬容器の無線タグから試薬情報を読み取る無線読取ユニットとを備えており、
無線読取ユニットは、試薬吸引用開口から吸引部がアクセス可能な吸引位置に位置する試薬容器の無線タグから試薬情報を読み取り可能な範囲に配置されており、かつ、本体部を平面視した場合において、無線読取ユニットの中心は、試薬吸引用開口の中心からずれて配置されている。
【0007】
本体部は、無線タグが内壁と対面する姿勢で試薬容器を収容可能であることが好ましく、無線読取ユニットは、電波を送受信するアンテナとアンテナを収容するケースとを有しており、かつ、アンテナの送受信面は内壁に対して傾斜する姿勢で配置されることが好ましい。
【0008】
電波を遮蔽することによって、吸引位置に位置する試薬容器以外の試薬容器の無線タグと無線読取ユニットとの間における通信を遮断する遮蔽物を備えていることが好ましい。
【0009】
電波を遮蔽することによって、吸引位置に位置する試薬容器以外の試薬容器の無線タグと無線読取ユニットとの間における通信を遮断する遮蔽物を備えていることが好ましく、さらに、送受信面が向いている方向において、送受信面と、吸引位置に位置する試薬容器の隣に配置された試薬容器との間に遮蔽物が配置されていることが好ましい。
【0010】
無線読取ユニットは、配線を引き出す配線用開口を有してもよく、本体部を平面視した場合において、配線用開口は、試薬吸引用開口の中心から最も離れた箇所に設けられていることが好ましい。
【0011】
無線読取ユニットは、配線を引き出す配線用開口を有してもよく、配線用開口は、無線読取ユニットの底面に設けられていることが好ましい。
【0012】
無線読取ユニットは、アンテナと前記アンテナを収容するケースとを有しており、ケースは、複数の部材の貼り合わせによって形成され、貼り合わせ部分は、シーリング材により封止されていることが好ましい。
【0013】
本体部内に複数の試薬容器を搬送する搬送機構を備えてもよく、搬送機構は、複数の試薬容器を順次、吸引位置に搬送することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本開示の技術によれば、無線タグ読み取り用の無線読取ユニットを備え、無線タグを有する試薬容器を保管する試薬庫における、無線読取ユニットの故障の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】試薬庫の上面の一部を切り欠いて示す斜視図である
【
図3】上面の一部を切り欠いた試薬庫の平面図である。
【
図6】無線読取ユニットの外観を示す斜視図である。
【
図10】試薬庫内における試薬容器、アンテナ及び金属板の位置関係を示す模式図である。
【
図11】変形例に試薬庫の一部を示す平面図である。
【
図12】アンテナの配置による効果の説明図である。
【
図13】試薬庫内における試薬容器、アンテナ及び金属板の位置関係を示す模式図である。
【
図14】試薬庫内における試薬容器、アンテナ及び金属板の位置関係を示す模式図である。
【
図15】試薬庫内における試薬容器、アンテナ及び金属板の位置関係を示す模式図である。
【
図16】無線読取ユニットの配線用開口の位置についての説明図である。
【
図17】無線読取ユニットのシーリング材70についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を詳細に説明する。なお、図面中の各構成要素の縮尺等は実際のものとは適宜変更している。各図において、同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0017】
図1は、一実施形態にかかる試薬庫の斜視図を示し、
図2は、試薬庫の上面の一部を切り欠いた斜視図であり、
図3は上面の一部を切り欠いた試薬庫の平面図である。
【0018】
試薬庫10は、本体部12と無線読取ユニット40とを備えている(
図2参照)。試薬庫10の本体部12は、本例において、直方体の形状を有する。本体部12は、その長手方向の一端面に開閉可能な扉14を備えている。本体部12は、試薬容器30(
図4参照)を外部よりも低温で保管可能である。例えば、室温よりも低温の2℃から10℃などの温度で保管する図示しない冷蔵機構を備えており、本体部12の内壁面は断熱材15によって覆われている。
図3において一部露出している断熱材15はグレーで示している。図には示されていないが、本体部12の上面12A、下面及び側面12Bの全ての内壁面が断熱材15で覆われている。試薬庫10への試薬容器30の出し入れは扉14を開閉して行う。
【0019】
本体部12の上面12Aには、試薬吸引用開口16が設けられている。試薬吸引用開口16は、本体部12内に収容されている試薬容器30から試薬を吸引するための開口である。試薬吸引用開口16から吸引部80のノズル82が挿入され、試薬吸引用開口16の直下に位置する試薬容器30から試薬が吸引される。本例において、後述する試薬容器30の形状に応じて、試薬吸引用開口16は細長形状を有している。そして、試薬吸引用開口16の長軸が試薬容器30の後述する搬送方向Aに直交する方向に沿って形成されている。
【0020】
無線読取ユニット40は、本体部12の側面12B側の内壁13に配置されている。無線読取ユニット40の詳細については後述する。
【0021】
ここで、試薬庫10に備えられる一例の試薬容器30について説明する。
図4は試薬容器30の斜視図を示す。
【0022】
本例の試薬容器30は、それぞれ試薬を収容する複数のセル31を備えた容器本体32と、蓋体34とを備える。蓋体34には、各セル31に対応してノズル82(
図1参照)を挿入するための挿入孔35が設けられている。なお、挿入孔35はノズル82により破断可能なシール材が備えられておりセル31は密閉されている。これにより、試薬の蒸発及びセル31内への塵埃の混入を防止している。使用時にはノズル82の先端によりシール材が破断されてノズル82等がセル31内に挿入される。なお、挿入孔35には、シール材に代えて、一部に切り込みを有するゴム材が備えられていてもかまわない。
【0023】
試薬容器30の一側面30Aには、無線タグ38が貼付されている。無線タグ38には試薬容器30に収容されている試薬に関する試薬情報が記録されている。試薬情報は、試薬の種類、試薬が適用される検査の種類等に関する情報である。無線タグ38は、例えば、RF(Radio Frequency)タグである。
【0024】
試薬容器30は、試薬トレイ50にセットされた状態で試薬庫10内に収容される。
図5は試薬トレイ50を示す斜視図である。
図5に示すように、本例の試薬トレイ50は、仕切り板51によって隔てられた6つの試薬容器収容部52を備えており、6個の試薬容器30を並列に収容することができる。複数の試薬容器30は無線タグ38を備えた面が同一の方向位置するようにセットされる。
【0025】
試薬庫10の本体部12は、試薬トレイ50ごと試薬容器30を収容する。この際、試薬容器30は、無線タグ38が試薬庫10の本体部12の内壁13と正対する姿勢で収容される。
【0026】
本例において、試薬庫10は、試薬トレイ50を試薬庫10内で移動する搬送機構55をさらに備えている。本例においては、試薬庫10の長手方向が試薬容器30の搬送方向Aである。搬送機構55は、例えば、ボールネジとサーボモータを備えた直動機構とリニアガイドなどを備える。
【0027】
本例では、搬送機構55が試薬トレイ50を長手方向に移動することによって、複数の試薬容器30を順次吸引位置Pに搬送する。吸引位置Pとは、試薬庫10内で試薬吸引用開口16から吸引部80がアクセス可能な位置をいう。吸引位置Pに位置する試薬容器30の蓋体34の挿入孔35を備えた面が試薬吸引用開口16から露呈する。
【0028】
無線読取ユニット40は、試薬容器30に備えられた無線タグ38から試薬情報を読み取ることができる。無線読取ユニット40は、試薬吸引用開口16から吸引部80がアクセス可能な吸引位置Pに位置する試薬容器30の無線タグ38から試薬情報を読み取り可能な範囲に配置されている(
図10参照)。また、無線読取ユニット40は、本体部12を平面視した場合において、無線読取ユニット40の中心Cが、試薬吸引用開口16の中心Dからずれて配置されている。なお、ここで、無線読取ユニット40の中心Cは、搬送方向Aにおける無線読取ユニット40の中心とする。同様に、試薬吸引用開口16の中心Dは、搬送方向Aにおける試薬吸引用開口16の中心とする。
【0029】
図3に示されているように、無線読取ユニット40は、内壁13を覆うように備えられている断熱材15の一部を切り欠いて断熱材15の間に挿入されるようにして内壁13に設置されている。試薬トレイ50の搬送を妨げないように内壁13に設置するために、本例の無線読取ユニット40の外形は、断熱材15の厚みと同等の厚みの薄い略直方体形状(
図6参照)である。
【0030】
無線読取ユニット40は、アンテナ42とアンテナ42を収容するケース44とを有している。
【0031】
図6は、無線読取ユニット40の外観を示す斜視図であり、
図7は無線読取ユニット40の分解斜視図である。
図8は無線読取ユニット40の正面図であり、
図9は
図8のIX-IX線断面図である。
【0032】
図6及び
図7に示すように、ケース44は、2つの主面44A及び44Bを備えた薄型の直方体形状であり、ケース本体45とケース蓋体46とから構成される。ケース本体45及びケース蓋体46にはそれぞれ凹部45c、46cが設けられており、両者を貼り合わせることで形成される空間内にアンテナ42は収容される。ケース本体45及びケース蓋体46には、それぞれ対応するネジ穴45a、46aが設けられており、両者は図示しないネジを用いてネジ止めされる。なお、ケース本体45の長手方向両脇に設けられたネジ穴45b及びケース蓋体46の長手方向両脇に設けられた切り欠き46bは、試薬庫10の本体部12にネジ止め固定する際の固定用ネジ挿入用である。また、ケース本体45の一面には、配線ケーブルを外部に引き出すための配線用開口49(
図16参照)を構成するための切り欠き45dが設けられている。本例では、
図7に示すように、配線用開口49を構成するための切り欠き45dは、ケース本体45の一側面の上部に備えられている。すなわち、配線用開口49は
図6に示すケース44の一方の側面44Cの上部に設けられている。
【0033】
アンテナ42は、回路基板47上に固定されている。アンテナ42の回路基板47に接触している面が送受信面42Aである。アンテナ42は、送受信面42Aがケース本体45の外面であるケース44の主面44Aに対して傾斜する姿勢でケース44に収容されている。アンテナ42が固定されている回路基板47ごと、ケース44の主面44Aに対して傾斜するように凹部45cには回路基板47を固定する台座48が備えられている。ケース44の主面44A、44Bは本体部12の内壁13に略平行に設置される。すなわち、無線読取ユニット40は、アンテナ42の送受信面42Aが内壁13に対して傾斜する姿勢で本体部12に配置される。なお、この際、無線読取ユニット40は
図8の正面図に示すケース44のケース蓋体46側の主面44Bが外部向きとなるようにして本体部12に設置される。
【0034】
また、ケース44内部には、金属板60が主面44A、44Bと直交する姿勢で配置されている。金属板60は、アンテナ42の送受信面42Aが向いている方向側に配置されている。ここで、送受信面42Aが向いている方向Bとは、送受信面42Aに垂直、かつ、アンテナ42から外側に向かう方向である。金属板60は、電波を遮蔽することによって、吸引位置Pに位置する試薬容器以外の試薬容器30の無線タグ38と無線読取ユニット40との間における通信を遮断する遮蔽物の一例である。
【0035】
図10に、試薬庫10内における試薬容器30、アンテナ42及び金属板60の位置関係を模式的に示す。
図10において、吸引位置Pに位置する試薬容器30にはP、試薬容器30Pの右隣の試薬容器30にはR、左隣の試薬容器30にはLの細番符号を付している。同様に、試薬容器30P、試薬容器30R、及び試薬容器30Lのそれぞれの無線タグ38にも対応する細番符号を付している。なお、以下において、試薬容器30、無線タグ38を特定する必要が無い場合には、細番符号を付けず単に試薬容器30、無線タグ38という。無線タグ38は、アンテナ42が備えられている内壁13に正対して配置されている(
図3参照)。これに対し、
図10に示すようにアンテナ42の送受信面42Aは、無線タグ38に対して、平面視において傾斜する態様で配置されている。そして、遮蔽物である金属板60は、送受信面42Aが向いている方向Bにおいて、送受信面42Aと、吸引位置Pに位置する試薬容器30Pの隣に配置された試薬容器30Rとの間に配置されている。
【0036】
試薬庫10は概ね上記のような構成である。
【0037】
上述の通り、本実施形態の試薬庫10は、試薬容器30を収容する本体部12と、本体部12の側面12B側の内壁13に配置され、試薬容器30の無線タグ38から試薬情報を読み取る無線読取ユニット40とを備えている。本体部12の上面12Aには試薬吸引用開口16が設けられている。無線読取ユニット40は、試薬吸引用開口16から吸引部80がアクセス可能な吸引位置Pに位置する試薬容器30の無線タグ38から試薬情報を読み取り可能な範囲に配置されており、かつ、本体部12を平面視した場合において、無線読取ユニット40の中心Cは、試薬吸引用開口16の中心Dからずれて配置されている。
【0038】
試薬庫10の本体部12は、試薬容器30を外部よりも低温で保管可能であり、本体部12の内部の気温は、外部の気温よりも低い。内部の温度を低温に保つために、内壁面には断熱材15が備えられている。これに対し、本体部12の上面12Aの試薬吸引用開口16から外気が侵入するために、本体部12において試薬吸引用開口16の周囲の内壁面は非常に結露水が発生し易い。具体的には、
図3の一点鎖線で示す領域Eが、結露水が発生し易い領域である。領域Eは、試薬吸引用開口16を中心として試薬吸引用開口16の周辺領域を含む。無線読取ユニット40の中心Cを試薬吸引用開口16の中心Dからずらすことで、無線読取ユニット40の中心Cが試薬吸引用開口16の中心Dと一致した場合と比較して、無線読取ユニット40と領域Eとの重なる部分を狭めることができる。これにより、結露水が無線読取ユニット40のケース44内に侵入するのを抑制することができる。無線読取ユニット40と領域Eとの重なる部分が小さいほど、結露水のケース44内への侵入抑制の効果が高い。ケース44内に結露水が侵入すると、回路基板47及び/又はアンテナ42などの電子部品の故障に繋がり、無線読取ユニット40による無線タグ38の読取りができなくなる場合がある。これに対し、本試薬庫10は、結露水の無線読取ユニット40のケース44への侵入を抑制できるので、結果として無線読取ユニット40の故障を抑制することができる。
【0039】
上記例では、無線読取ユニット40は、アンテナ42の送受信面42Aが内壁13に対して傾斜する姿勢で本体部12に配置される。しかし、
図11に変形例の試薬庫110の一部の平面図に示すように、無線読取ユニット140の中心Cが試薬吸引用開口16の中心Dからずれていれば、アンテナ42の送受信面42Aが内壁13に正対して配置されていてもよい。この場合にも、無線読取ユニット140の中心Cが試薬吸引用開口16の中心Dと一致した場合と比較して、無線読取ユニット140と領域Eとの重なる部分を狭めることができ、結露水のケース144への侵入を抑制できる。
【0040】
無線読取ユニット40、140は、
図3あるいは
図11に示すように、内壁13に沿って備えられている断熱材15を一部取り除き断熱材15の間に嵌め込むようにして設置される。すなわち、この無線読取ユニット40、140を設置している箇所は断熱材15を備えていないため、断熱性能が低下する領域となる。
図12に示すように、アンテナ42の送受信面42Aを内壁13に傾斜させて配置する無線読取ユニット40は、送受信面42Aを内壁13に正対させる無線読取ユニット140より内壁13に沿わせる面の長さをΔL短くすることができる。その分、断熱材15を除去する領域が狭まるため、断熱性能の低下を抑制できるという効果が得られる。
【0041】
また、本例の試薬庫10は、電波を遮蔽することによって、吸引位置Pに位置する試薬容器30P以外の試薬容器30の無線タグ38と無線読取ユニット40との間における通信を遮断する遮蔽物(本例では金属板60)を備えている(
図10参照)。
図10において、アンテナ42の送受信面42Aが内壁13に対して傾斜した配置されている場合の、アンテナ42による読取可能領域Fを破線で示す。
図10に示すように、読取可能領域Fには、吸引位置Pに位置する試薬容器30Pとその右隣に位置する試薬容器30Rの無線タグ38P、38Rが含まれる。このように、アンテナ42が2つの無線タグ38P、38Rからの信号を受信する場合、吸引位置Pに位置する試薬容器30Pを特定するのが難しくなる。本例では、送受信面42Aと吸引位置Pに位置する試薬容器30P以外の試薬容器30の無線タグ38と無線読取ユニット40との間における通信を遮断する配置として、金属板60を、送受信面42Aと試薬容器30Rの無線タグ38Rとの間に配置している。これによって、読取可能領域Fを、試薬容器30Pの無線タグ38Pのみを含むクロスハッチングで示す領域FAに狭めることができる。このように、遮蔽物(ここでは、金属板60)を備えることにより、アンテナ42は、吸引位置Pに位置する試薬容器30Pの無線タグ38Pからの信号を他の試薬容器30からの信号と分離して受信可能とすることができ、試薬容器30Pの特定が容易になる。
【0042】
既述の通り、本例では、アンテナ42の送受信面42Aが内壁13に対して傾斜する姿勢で配置され、無線タグ38に対して傾斜して配置されている。この場合、金属板60は、送受信面42Aが向いている方向Bにおいて、送受信面42Aと、吸引位置Pに位置する試薬容器30Pの隣に配置された試薬容器30Rとの間に配置することによって、隣接する試薬容器30Rからの送受信を遮断することができる。
【0043】
なお、本例では、金属板60は、無線読取ユニット40のケース44内に備えられているが、金属板60は、ケース44の外部に配置されていてもかまわない。
【0044】
また、無線読取ユニット40は、その中心Cが試薬吸引用開口16の中心Dに対して搬送方向Aのどちらにずれていてもかまわない。
図10においては、紙面左右方向で示される搬送方向Aにおいて、無線読取ユニット40は、その中心Cが試薬吸引用開口16の中心Dに対して左側にずれて設置されているが、右側にずれて設置されていてもよい。
【0045】
図13は、無線読取ユニット40が右側にずれて配置された場合の、試薬庫10内における試薬容器30、アンテナ42及び金属板60の位置関係を模式的に示す図である。
図13においては、アンテナ42の送受信面42Aが、
図10に示した場合とは逆向きに傾斜して配置されている。
【0046】
図13において、アンテナ42の送受信面42Aが
図10の場合と逆向きに傾斜した場合のアンテナ42による読取可能領域Fを破線で示す。
図13に示すように、読取可能領域Fには、吸引位置Pに位置する試薬容器30Pとその左隣に位置する試薬容器30Lの無線タグ38P、38Lが含まれる。そのため、金属板60を、送受信面42Aと試薬容器30Lの無線タグ38Lとの間に配置すればよい。すなわち、この場合も、金属板60は、送受信面42Aが向いている方向Bにおいて、送受信面42Aと、吸引位置Pに位置する試薬容器30Pの隣に配置された試薬容器30Lとの間に配置すればよい。これによって、読取可能領域Fを、試薬容器30Pの無線タグ38Pのみを含むクロスハッチングで示す領域FAに狭めることができる。
【0047】
なお、
図11に示すアンテナ42を、送受信面42Aが無線タグ38と正対する姿勢で配置させる場合についての遮蔽物である金属板60の配置の例を、
図14及び
図15に示す。
【0048】
図14に示すように、送受信面42Aが無線タグ38と正対する姿勢で配置され、かつ、アンテナ42が、搬送方向Aにおける試薬吸引用開口16の中心Dに対して、図中左にずれて配置されている場合、アンテナ42の読取可能領域Fには、吸引位置Pに位置する試薬容器30Pの無線タグ38Pとその左隣に位置する試薬容器30Lの無線タグ38Pとが含まれる。そのため、金属板60を、送受信面42Aと試薬容器30Lの無線タグ38Lとの間に配置して、送受信面42Aと無線タグ38Lとの間の電波を遮断し、送受信面42Aと無線タグ38Lとの通信を遮断すればよい。本例では、金属板60は送受信面42Aと略平行に配置することにより、無線タグ38Lとの通信を遮断し、読取可能領域Fを、試薬容器30Pの無線タグ38Pのみを含むクロスハッチングで示す領域FAに狭めることができる。
【0049】
また、
図15に示すように、送受信面42Aが無線タグ38と正対する姿勢で配置され、かつ、アンテナ42が、搬送方向Aにおける試薬吸引用開口16の中心Dに対して、図中右にずれて配置されている場合、アンテナ42の読取可能領域Fには、吸引位置Pに位置する試薬容器30Pの無線タグ38Pとその右隣に位置する試薬容器30Rの無線タグ38Rとが含まれる。そのため、金属板60を、送受信面42Aと試薬容器30Rの無線タグ38Rとの間に配置して、送受信面42Aと無線タグ38Rとの間の電波を遮断し、送受信面42Aと無線タグ38Rとの通信を遮断すればよい。本例では、金属板60は送受信面42Aと略平行に配置することにより、無線タグ38Rとの通信を遮断し、読取可能領域Fを、試薬容器30Pの無線タグ38Pのみを含むクロスハッチングで示す領域FAに狭めることができる。
【0050】
既述の通り、無線読取ユニット40のケース44内に結露水が侵入することが、無線読取ユニット40の故障に繋がる。上述した実施形態の試薬庫10においては、無線読取ユニット40の中心Cを試薬吸引用開口16の中心Dからずらし、領域Eと重複する領域を減らすことで、結露水のケース44内への侵入を抑制している。これに加え、本例の無線読取ユニット40においては、ケース44に設けられている配線用開口49の位置を工夫することによって、さらなる結露水の侵入の抑制を図っている。
【0051】
図16に示すように、無線読取ユニット40においては、試薬庫10の本体部12を平面視した場合において、配線用開口49が試薬吸引用開口16の中心Dから搬送方向Aに最も離れた箇所に設けられている。既述の通り、配線用開口49は、ケース44の側面44Cに備えられている。本体部12を平面視した場合であって、側面44Cはケース44のうち試薬吸引用開口16の中心Dから最も離れた面である。すなわち、側面44Cは結露水が発生し易い領域Eから外れた位置となるので、配線用開口49が側面44Cに設けられていれば、配線用開口49からの結露水の侵入を抑制することができる。
【0052】
なお、配線用開口49は、無線読取ユニット40の底面44D(
図6参照)に設けられていてもよい。結露水は本体部12の内壁13を伝って、あるいは上面12Aから垂れて無線読取ユニット40のケース44内に侵入することが多いが、配線用開口49が底面44Dに設けられていればそのような結露水の侵入を抑制することができる。ここで、底面44Dとは、試薬庫10の本体部12に設置された状態において下面となる面である。
【0053】
また、結露水は、配線用開口49の他、ケース本体45とケース蓋体46との貼り合わせ部分及びネジ穴部分からケース44内に侵入すると考えられる。そのため、ケース本体45とケース蓋体46との貼り合わせ部分はシーリング材70(
図17参照)により封止されていることが好ましい。
図17に示すように、ケース本体45の貼り合わせ面45E及びケース蓋体46の貼り合わせ面46Eの両方もしくは一方にシーリング材70を塗布して、両者を貼り合わせた上で、ネジ止めして固定する。これにより、ケース本体45と蓋体46との貼り合わせ部分からの結露水の侵入をさらに効果的に抑制することができる。
【0054】
シーリング材70としては、シリコーン樹脂あるいはエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0055】
上記説明した試薬庫10、110等は、例えば、生体試料等の検体を分析する分析装置内に設置されて使用される。
【符号の説明】
【0056】
10 :試薬庫
12 :本体部
12A :上面
12B :側面
13 :内壁
14 :扉
15 :断熱材
16 :試薬吸引用開口
30、30L、30P、30R :試薬容器
30A :試薬容器の一側面
31 :セル
32 :容器本体
34 :蓋体
35 :挿入孔
38、38L、38P、38R :無線タグ
40 :無線読取ユニット
42 :アンテナ
42A :送受信面
44 :ケース
44A、44B :ケース主面
44C :ケースの側面
44D :ケースの底面
45 :ケース本体
45a :ネジ穴
45b :ネジ穴
45c :凹部
45d :切り欠き
45E :貼り合わせ面
46 :ケース蓋体
46a :ネジ穴
46b :切り欠き
46c :凹部
46E :貼り合わせ面
47 :回路基板
48 :台座
49 :配線用開口
50 :試薬トレイ
51 :仕切り板
52 :試薬容器収容部
55 :搬送機構
60 :金属板
70 :シーリング材
80 :吸引部
82 :ノズル
110 :試薬庫
140 :無線読取ユニット
144 :ケース
A :搬送方向
B :方向
C :中心
D :中心
E :領域
F :読取可能領域
FA :領域
P :吸引位置