(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089411
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
H01S 5/024 20060101AFI20240626BHJP
H01L 31/02 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
H01S5/024
H01L31/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204757
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶 敦次
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 敦
(72)【発明者】
【氏名】松原 礼高
(72)【発明者】
【氏名】長島 和哉
(72)【発明者】
【氏名】石川 陽三
【テーマコード(参考)】
5F149
5F173
5F849
【Fターム(参考)】
5F149XB07
5F173SE01
5F173SF17
5F173SF47
5F173SF63
5F849XB07
(57)【要約】
【課題】例えば、複数の温調装置に対する電力負荷をより軽減することが可能となるような、改善された新規な構成を備えた光モジュールを得る。
【解決手段】光モジュールは、例えば、光学部品と、第一発熱体と、第一発熱体の温度を調整する第一温調装置と、第二発熱体と、第二発熱体の温度を調整し第一温調装置より吸熱能力が高い第二温調装置と、第一温調装置および第二温調装置の作動を制御する制御部と、を備え、第一温調装置は第二発熱体と熱的に接続されるとともに、第二温調装置は第一発熱体と熱的に接続され、制御部は、第一発熱体の温度を調整するよう、第一温調装置および第二温調装置を非作動状態から作動状態に制御する場合に、第二温調装置が第一温調装置より先に作動を開始するよう、第一温調装置および第二温調装置を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部品と、
第一発熱体と、
前記第一発熱体の温度を調整する第一温調装置と、
第二発熱体と、
前記第二発熱体の温度を調整し前記第一温調装置より吸熱能力が高い第二温調装置と、
前記第一温調装置および前記第二温調装置の作動を制御する制御部と、
を備え、
前記第一温調装置は前記第二発熱体と熱的に接続されるとともに、前記第二温調装置は前記第一発熱体と熱的に接続され、
前記制御部は、前記第一発熱体の温度を調整するよう、前記第一温調装置および前記第二温調装置を非作動状態から作動状態に制御する場合に、前記第二温調装置が前記第一温調装置より先に作動を開始するよう、前記第一温調装置および前記第二温調装置を制御する、光モジュール。
【請求項2】
前記制御部は、前記第二発熱体の温度を調整するよう、前記第一温調装置および前記第二温調装置を非作動状態から作動状態に制御する場合に、前記第二温調装置が前記第一温調装置より先に作動を開始するよう、前記第一温調装置および前記第二温調装置を制御する、請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記第二温調装置の作動開始時点から前記第一温調装置の作動開始時点までの時間差が、前記第一温調装置と前記第二温調装置との間の距離が短いほど長くなるよう設定されている、請求項1または2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記時間差が、前記距離の2乗に反比例する、請求項3に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記第一温調装置および前記第二温調装置は、供給された電力によって作動する熱電冷却装置であり、
前記制御部は、前記第一温調装置および前記第二温調装置を非作動状態から作動状態に制御する場合に前記第二温調装置に供給する電力の増加速度を、前記第一温調装置および前記第二温調装置の作動状態で前記第二温調装置に供給する電力を増加する場合の電力の増加速度より低くする、請求項1または2に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記第一温調装置の第一方向の第一端面上に、前記第一発熱体が載せられるとともに、前記第二温調装置の前記第一方向の第二端面上に、前記第二発熱体が載せられ、
前記第一温調装置および前記第二温調装置は、前記第一方向と交差した第二方向に延び、
前記第一温調装置および前記第二温調装置は、前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に間隔をあけて並び、
前記第一発熱体および前記第二発熱体は、前記第二方向にずれて配置された、請求項1または2に記載の光モジュール。
【請求項7】
前記第一温調装置および前記第二温調装置に、前記第一発熱体と前記第三方向に並ぶ第一領域、前記第二発熱体と前記第三方向に並ぶ第二領域、並びに前記第一領域および前記第二領域の間に位置し前記第三方向において前記第一発熱体および前記第二発熱体の双方と並ばない第三領域、が形成され、
前記第一領域における前記第一温調装置と前記第二温調装置との間の前記第三方向における第一距離、および前記第二領域における前記第一温調装置と前記第二温調装置との間の前記第三方向における第二距離は、前記第三領域における前記第一温調装置と前記第二温調装置との間の前記第三方向における第三距離より長い、請求項6に記載の光モジュール。
【請求項8】
前記第一温調装置の前記第二温調装置と面する第一端縁の、前記第二発熱体と面した部位には、凹部または切欠が設けられ、
前記第二温調装置の前記第一温調装置と面する第二端縁の、前記第一発熱体と面した部位には、凹部または切欠が設けられた、請求項7に記載の光モジュール。
【請求項9】
前記第一発熱体および前記第二発熱体は、アクティブ光学部品である、請求項1または2に記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の発熱体と、各発熱体の温度を調整する複数の温調装置と、を備えた光モジュールが知られている(例えば、特許文献1)。発熱体は、例えば、レーザ素子やフォトダイオードのような、アクティブ光学部品である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の光モジュールでは、制御部により検出温度に応じてフィードバック制御された複数の温調装置が同時並行的に作動した場合、当該複数の温調装置のうち少なくとも一方が一時的に過度な吸熱作動状態となり、これに伴い、制御部から供給される電力負荷が一時的に高くなってしまう虞がある。特に、複数の温調装置の吸熱能力に差があった場合、吸熱能力の低い温調装置は、より厳しい状態になる虞がある。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、複数の温調装置に対する電力負荷をより軽減することが可能となるような、改善された新規な構成を備えた光モジュールを得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光モジュールは、例えば、光学部品と、第一発熱体と、前記第一発熱体の温度を調整する第一温調装置と、第二発熱体と、前記第二発熱体の温度を調整し前記第一温調装置より吸熱能力が高い第二温調装置と、前記第一温調装置および前記第二温調装置の作動を制御する制御部と、を備え、前記第一温調装置は前記第二発熱体と熱的に接続されるとともに、前記第二温調装置は前記第一発熱体と熱的に接続され、前記制御部は、前記第一発熱体の温度を調整するよう、前記第一温調装置および前記第二温調装置を非作動状態から作動状態に制御する場合に、前記第二温調装置が前記第一温調装置より先に作動を開始するよう、前記第一温調装置および前記第二温調装置を制御する。
【0007】
前記光モジュールでは、前記制御部は、前記第二発熱体の温度を調整するよう、前記第一温調装置および前記第二温調装置を非作動状態から作動状態に制御する場合に、前記第二温調装置が前記第一温調装置より先に作動を開始するよう、前記第一温調装置および前記第二温調装置を制御してもよい。
【0008】
前記光モジュールでは、前記第二温調装置の作動開始時点から前記第一温調装置の作動開始時点までの時間差が、前記第一温調装置と前記第二温調装置との間の距離が短いほど長くなるよう設定されていてもよい。
【0009】
前記光モジュールでは、前記時間差が、前記距離の2乗に反比例してもよい。
【0010】
前記光モジュールでは、前記第一温調装置および前記第二温調装置は、供給された電力によって作動する熱電冷却装置であり、前記制御部は、前記第一温調装置および前記第二温調装置を非作動状態から作動状態に制御する場合に前記第二温調装置に供給する電力の増加速度を、前記第一温調装置および前記第二温調装置の作動状態で前記第二温調装置に供給する電力を増加する場合の電力の増加速度より低くしてもよい。
【0011】
前記光モジュールでは、前記第一温調装置の第一方向の第一端面上に、前記第一発熱体が載せられるとともに、前記第二温調装置の前記第一方向の第二端面上に、前記第二発熱体が載せられ、前記第一温調装置および前記第二温調装置は、前記第一方向と交差した第二方向に延び、前記第一温調装置および前記第二温調装置は、前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に間隔をあけて並び、前記第一発熱体および前記第二発熱体は、前記第二方向にずれて配置されてもよい。
【0012】
前記光モジュールでは、前記第一温調装置および前記第二温調装置に、前記第一発熱体と前記第三方向に並ぶ第一領域、前記第二発熱体と前記第三方向に並ぶ第二領域、並びに前記第一領域および前記第二領域の間に位置し前記第三方向において前記第一発熱体および前記第二発熱体の双方と並ばない第三領域、が形成され、前記第一領域における前記第一温調装置と前記第二温調装置との間の前記第三方向における第一距離、および前記第二領域における前記第一温調装置と前記第二温調装置との間の前記第三方向における第二距離は、前記第三領域における前記第一温調装置と前記第二温調装置との間の前記第三方向における第三距離より長くてもよい。
【0013】
前記光モジュールでは、前記第一温調装置の前記第二温調装置と面する第一端縁の、前記第二発熱体と面した部位には、凹部または切欠が設けられ、前記第二温調装置の前記第一温調装置と面する第二端縁の、前記第一発熱体と面した部位には、凹部または切欠が設けられてもよい。
【0014】
前記光モジュールでは、前記第一発熱体および前記第二発熱体は、アクティブ光学部品であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、例えば、改善された新規な構成を備えた光モジュールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1実施形態の光モジュールの構成を示す例示的かつ模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の光モジュールにおいて制御部から一の温調装置に供給される制御電流の例示的かつ模式的な経時変化を示すグラフであって、二つの温調装置が同時に作動を開始した場合(一点鎖線)、一の温調装置が他の温調装置の作動の開始から所定時間遅れて作動を開始した場合(破線)、および一の温調装置が他の温調装置の作動の開始から破線の場合より長い時間遅れて作動を開始した場合(実線)を示すグラフである。
【
図3】
図3は、第1実施形態の光モジュールにおいて制御部によって制御された二つの温調装置が同時に作動を開始した場合において制御部から一の温調装置に供給される制御電流の例示的かつ模式的な経時変化を示すグラフであって、二つの温調装置が所定距離だけ離れた場合(一点鎖線)、二つの温調装置が一点鎖線の場合より長い距離離れた場合(破線)、および二つの温調装置が破線の場合より長い距離離れた場合(実線)を示すグラフである。
【
図4】
図4は、第1実施形態の光モジュールの制御部における温度の検出値から制御電流を決定する例示的な制御ブロック図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の光モジュールにおいて制御部から一の温調装置に供給される制御電流の例示的かつ模式的な経時変化を示すグラフであって、比例係数が高い場合(破線)、および比例係数が低い場合(実線)を示すグラフである。
【
図6】
図6は、第2実施形態の光モジュールの構成を示す例示的かつ模式的な平面図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態の光モジュールの構成を示す例示的かつ模式的な平面図である。
【
図8】
図8は、第4実施形態の光モジュールの構成を示す例示的かつ模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0018】
以下に示される複数の実施形態は、同様の構成を備えている。よって、各実施形態の構成によれば、当該同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。また、以下では、それら同様の構成には同様の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0019】
本明細書において、序数は、装置や、部品、部位、方向等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではないし、個数等を限定するものでもない。
【0020】
また、各図において、X方向を矢印Xで表し、Y方向を矢印Yで表し、Z方向を矢印Zで表す。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに交差するとともに互いに直交している。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の光モジュール100A(100)の平面図である。
図1に示されるように、光モジュール100A(100)は、第一温調装置11(11)と、第二温調装置12(12)と、第一発熱体21と、第二発熱体22と、制御部30と、センサ40と、を備えている。
【0022】
第一温調装置11および第二温調装置12は、例えば、公知の熱電冷却装置(thermo electric cooler:TEC)である。熱電冷却装置は、複数のペルチェ素子(不図示)を有しており、当該ペルチェ素子の、供給された電力に応じて吸熱するというペルチェ効果によって、対象物としての第一発熱体21または第二発熱体22から吸熱する。第一温調装置11および第二温調装置12のそれぞれにおいて、複数のペルチェ素子は、直列に接続されている。制御部30は、第一温調装置11および第二温調装置12のそれぞれに電力を供給することにより、これら第一温調装置11および第二温調装置12が吸熱するよう、制御する。制御部30による電力の供給開始により第一温調装置11および第二温調装置12は、吸熱作動を開始し、制御部30による電力の供給停止により第一温調装置11および第二温調装置12は、吸熱作動を停止する。なお、以下では、制御部30から第一温調装置11へ供給される電流を制御電流I1とし、制御部30から第二温調装置12へ供給される電流を制御電流I2とする。
【0023】
第一温調装置11は、Z方向における略一定の高さ、およびY方向における略一定の幅で、X方向に延びている。第一温調装置11のZ方向の端面11bは、Z方向を向き、Z方向と交差して広がっている。端面11bは、頂面や、載置面とも称されうる。Z方向は、第一方向の一例であり、X方向は、第二方向の一例であり、Y方向は、第三方向の一例である。また、端面11bは、第一端面の一例である。
【0024】
第二温調装置12は、Z方向における略一定の高さ、およびY方向における略一定の幅で、X方向に延びている。第二温調装置12のZ方向の端面12bは、Z方向を向き、Z方向と交差して広がっている。端面12bは、頂面や、載置面とも称されうる。端面12bは、第二端面の一例である。
【0025】
また、本実施形態では、第一温調装置11のY方向の反対方向の端縁11aと、第二温調装置12のY方向の端縁12aとは、X方向に互いに平行に延びている。すなわち、端縁11aと端縁12aとの間のY方向における間隔(距離)は、X方向の位置によらず、略一定である。端縁11a,12aは、それぞれ、載置基板の端縁である。端縁11aは、第一端縁の一例であり、端縁12aは、第二端縁の一例である。
【0026】
第一発熱体21は、端面11b上に載せられ、第二発熱体22は、端面12b上に載せられている。本実施形態では、第一発熱体21は、端面11bのX方向の中央部に載せられ、第二発熱体22は、端面12bのX方向の中央部に載せられている。このため、本実施形態では、第一発熱体21と第二発熱体22とは、Y方向に並んでいる。
【0027】
第一発熱体21および第二発熱体22は、例えば、サブマウント上にレーザ発光素子が実装されたチップオンサブマウントや、フォトダイオード、フォトダイオードアレイのような、アクティブ光学部品である。なお、光モジュール100は、第一発熱体21および第二発熱体22以外に光学部品を備えてもよい。その場合、第一発熱体21および第二発熱体22は、例えば、電子部品のような、光学部品とは異なる部品であってもよい。
【0028】
このような構成において、第一発熱体21の温度は、第一温調装置11によって調整され、第二発熱体22の温度は、第二温調装置12によって調整される。すなわち、第一発熱体21は、第一温調装置11と熱的に接続され、第二発熱体22は、第二温調装置12と熱的に接続されている。ただし、本実施形態では、第一発熱体21は、第二温調装置12とも熱的に接続され、第二発熱体22は、第一温調装置11とも熱的に接続されている。
【0029】
また、本実施形態では、第二温調装置12の吸熱能力が、第一温調装置11の吸熱能力より高いものとする。ここに、吸熱能力が高いとは、単位時間あたりの最大吸熱量が大きいことを意味する。
【0030】
センサ40は、例えば、半導体温度センサや熱電対のような温度センサである。センサ40は、第一発熱体21および第二発熱体22のそれぞれに設けられている。なお、センサ40は、第一発熱体21および第二発熱体22と熱的に接続されていればよく、
図1の例のように第一発熱体21および第二発熱体22に直接設けられなくてもよい。
【0031】
制御部30は、例えば、CPUや、主記憶部、補助記憶部等を有したコンピュータと、コンピュータの作動に応じて電力を供給する駆動回路と、を有する。この場合、CPUは、インストールされたプログラムにしたがって作動し、CPUによって制御された駆動回路が第一温調装置11および第二温調装置12に供給する電力を変更することにより、第一発熱体21および第二発熱体22の温度を調整する。
【0032】
制御部30は、第一発熱体21の温度を検出するセンサ40の検出値に基づいて、第一発熱体21が所定温度となるよう、第一温調装置11をフィードバック制御する。制御部30は、第二発熱体22の温度を検出するセンサ40の検出値に基づいて、第二発熱体22が所定温度となるよう、第二温調装置12をフィードバック制御する。
【0033】
図2は、制御部30から第一温調装置11に供給される制御電流I1の経時変化を示すグラフである。第一温調装置11および第二温調装置12の作動停止状態(非作動状態)において、第一温調装置11および第二温調装置12の双方が同時に作動を開始するような場合、
図2において一点鎖線で示されるように、制御電流I1は、目標値Itに対して、大きくオーバーシュートし、場合によっては、上限値Ithを超えてしまう虞があることが判明した。これは、第一温調装置11と第二温調装置12とが近くに配置され、第一温調装置11と第二温調装置12とが熱的に接続された状態となっていることによるものと考えられる。
【0034】
そこで、発明者らが検討したところ、
図2において破線で示されるように、第一温調装置11の作動を、第二温調装置12の作動開始(t=0)から遅らせることにより(その際の時間差はTD1)、制御電流I1のオーバーシュートを低減できることが判明した。さらに、
図2において実線で示されるように、第一温調装置11の作動を、第二温調装置12の作動開始(t=0)からさらに遅らせることにより(その際の時間差は、TD1より長いTD2)、制御電流I1のオーバーシュートをさらに低減できることが判明した。
【0035】
また、
図3は、第一温調装置11および第二温調装置12の双方が同時に作動を開始するような場合の、制御部30から第一温調装置11に供給される制御電流I1の経時変化を示すグラフであって、一点鎖線は、第一温調装置11と第二温調装置12とのY方向における距離が比較的近い場合、破線は、第一温調装置11と第二温調装置12とのY方向における距離が一点鎖線の場合よりも長い場合、実線は、第一温調装置11と第二温調装置12とのY方向における距離が破線の場合よりも長い場合を示す。このように、発明者らの検討により、オーバーシュートは、第一温調装置11と第二温調装置12とが近いほど大きくなること、言い換えると、第一温調装置11と第二温調装置12とが遠いほど小さくなることが、判明した。
【0036】
発明者らは、さらに研究を重ねたところ、第二温調装置12の作動開始時点から第一温調装置11の作動開始時点までの時間差TD1,TD2が、第一温調装置11と第二温調装置12との間の距離が短いほど長くなるように設定すれば、オーバーシュートを所定範囲に抑制しながら迅速に温度を調整することができることが判明した。さらに、当該時間差を、距離の2乗に反比例するように設定することで、第一温調装置11および第二温調装置12の距離に応じて、オーバーシュートを所定範囲に抑制可能な最適な時間差が得られることが判明した。
【0037】
本実施形態のように、第一温調装置11と第二温調装置12とが比較的近くに位置され、第一温調装置11と第二発熱体22とが熱的に接続されるとともに、第二温調装置12と第一発熱体21とが熱的に接続された構成においては、第一発熱体21の温度の調整に第一温調装置11に加えて第二温調装置12を利用することができるとともに、第二発熱体22の温度の調整に第二温調装置12に加えて第一温調装置11を利用することができる。したがって、第一発熱体21の温度の調整に第一温調装置11のみを利用する場合、および第二発熱体22の温度の調整に第二温調装置12のみを利用する場合に比べて、温度の調整をより迅速に行うことができる。
【0038】
そして、本実施形態では、制御部30は、第一発熱体21の温度を調整するよう、第一温調装置11および第二温調装置12を非作動状態から作動状態に制御する場合に、第一温調装置11より吸熱能力が高い第二温調装置12が、当該第一温調装置11より先に作動を開始するよう、第一温調装置11および第二温調装置12を制御する。これにより、制御電流I1,I2のオーバーシュートを抑制しながらより迅速に第一発熱体21の温度を調整することが可能となる。
【0039】
さらに、本実施形態では、制御部30は、第二発熱体22の温度を調整するよう、第一温調装置11および第二温調装置12を非作動状態から作動状態に制御する場合にあっても、第二温調装置12が第一温調装置11より先に作動を開始するよう、第一温調装置11および第二温調装置12を制御するのが好ましい。この場合も、制御電流I1,I2のオーバーシュートを抑制しながらより迅速に第一発熱体21の温度を調整することが可能となる。
【0040】
図4は、制御部30がセンサ40による温度の検出値T(t)から制御電流I2を決定するロジックを示す制御ブロック図である。
図4の例では、制御部30は、比例制御(P)、積分制御(I)、および微分制御(D)を組み合わせたPID制御によるフィードバック制御を行う。
【0041】
図5は、PIDのうち比例制御(P)の比例係数Kp(係数)を変更した場合の、制御電流I2の経時変化を示すグラフである。
図5において、破線は、比例係数Kpが大きい場合、実線は、比例係数Kpが小さい場合を示す。
図5から明らかとなるように、比例係数Kpを小さくすることで、制御電流I2の増加速度、すなわち、第二温調装置12に供給される電力の増加速度を低くすることができる。また、比例係数Kpが小さい場合の制御電流I2のオーバーシュートO2は、比例係数Kpが大きい場合の制御電流I2のオーバーシュートO1より小さくなる。
【0042】
制御部30は、例えば、上述したような第一温調装置11および第二温調装置12を非作動状態から作動状態とする場合にあっては、
図5の実線の場合のように、比例係数Kpを比較的小さく設定することで、制御電流I1,I2のオーバーシュートをより一層抑制することができる。他方、制御部30は、第一温調装置11および第二温調装置12の作動状態において、第二温調装置12へ供給する電力を増加する場合にあっては、電力の増加量がそれほど大きくなく、オーバーシュート自体が生じ難い状況であるため、比例係数Kpを比較的大きく設定して、より迅速に温度を調整することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、例えば、制御電流I1,I2のオーバーシュートを抑制しながら、第一発熱体21および第二発熱体22のより迅速な温度の調整を実現することが可能な、新規な改善された光モジュール100A(100)を得ることができる。
【0044】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態の光モジュール100B(100)の平面図である。本実施形態の光モジュール100Bも、上記第1実施形態の光モジュール100Aと同様の構成を備えている。また、制御部30は、上記第1実施形態と同様の制御を実行する。よって、本実施形態によっても上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0045】
ただし、本実施形態では、
図6に示されるように、第一発熱体21と第二発熱体22とは、Y方向には並ばず、X方向にずれて配置されている。このような配置により、第一発熱体21と第二発熱体22との相互の熱的な干渉を抑制することができる。
【0046】
また、このような第一発熱体21および第二発熱体22のX方向へのずれにより、第一温調装置11B(11)および第二温調装置12B(12)には、第一発熱体21とY方向に並んだ第一領域A1、第二発熱体22とY方向に並んだ第二領域A2、および第一領域A1と第二領域A2との間の第三領域A3が、形成されている。
【0047】
そして、
図6から明らかとなるように、第一領域A1および第二領域A2においては、第三領域A3に比べて、第一温調装置11Bと第二温調装置12BとがY方向に離れている。言い換えると、第一領域A1における第一温調装置11Bと第二温調装置12Bとの間のY方向における距離(第一距離)、および第二領域A2における第一温調装置11Bと第二温調装置12Bとの間のY方向における距離(第二距離)は、第三領域A3における第一温調装置11Bと第二温調装置12Bとの間のY方向における距離(第三距離)より長くなっている。
【0048】
上述したように、第一発熱体21と第二温調装置12とが熱的に接続されるとともに、第二発熱体22と第一温調装置11とが熱的に接続されている場合、第一発熱体21および第二発熱体22の温度の調整を、第一温調装置11および第二温調装置12の双方を用いてより迅速に行うことができるという利点が得られる。しかしながら、第一発熱体21と第二温調装置12とが近すぎる場合、および第二発熱体22と第一温調装置11とが近すぎる場合にあっては、制御電流I1,I2のオーバーシュートが大きくなってしまう。
【0049】
そこで、本実施形態では、第一領域A1、第二領域A2、および第三領域A3において、第一温調装置11と第二温調装置12とのY方向の距離を変えることにより、第一発熱体21と第二温調装置12とが適度に熱的に接続されるとともに、第二発熱体22と第一温調装置11とが適度に熱的に接続される構成とし、制御電流I1,I2のオーバーシュートを抑制することができる。
【0050】
具体的に、本実施形態では、第一温調装置11B(11)の第二温調装置12B(12)と面する端縁11aのうち、第二発熱体22と面する部位に、切欠11a1が設けられている。また、第二温調装置12B(12)の第一温調装置11B(11)と面する端縁12aのうち、第一発熱体21と面する部位に、切欠12a1が設けられている。切欠11a1および切欠12a1は、X方向に対して傾斜した端縁11a,12aによって構成されている。
【0051】
本実施形態によれば、例えば、比較的簡単な構成によって、制御電流I1,I2のオーバーシュートを抑制しながら、第一発熱体21および第二発熱体22のより迅速な温度の調整を実現することが可能な、新規な改善された光モジュール100B(100)を得ることができる。
【0052】
[第3実施形態]
図7は、第3実施形態の光モジュール100C(100)の平面図である。本実施形態の光モジュール100Cも、上記第2実施形態の光モジュール100B(100)と同様の構成を備えている。また、制御部30は、上記第2実施形態すなわち第1実施形態と同様の制御を実行する。よって、本実施形態によっても上記第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0053】
ただし、本実施形態では、
図7に示されるように、第一温調装置11C(11)の第二温調装置12C(12)と面する端縁11aのうち、第二発熱体22と面する部位に、切欠11a2が設けられている。また、第二温調装置12C(12)の第一温調装置11C(11)と面する端縁12aのうち、第一発熱体21と面する部位に、切欠12a2が設けられている。切欠11a2および切欠12a2は、Y方向またはY方向の反対方向に凹んだ凹部として形成されている。
【0054】
本実施形態によっても、上記第2実施形態と同様に、比較的簡単な構成によって、制御電流I1,I2のオーバーシュートを抑制しながら、第一発熱体21および第二発熱体22のより迅速な温度の調整を実現することが可能な、新規な改善された光モジュール100C(100)を得ることができる。
【0055】
[第4実施形態]
図8は、第4実施形態の光モジュール100D(100)の平面図である。本実施形態の光モジュール100Dも、上記第2実施形態の光モジュール100B(100)と同様の構成を備えている。また、制御部30は、上記第2実施形態すなわち第1実施形態と同様の制御を実行する。よって、本実施形態によっても上記第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0056】
ただし、本実施形態では、
図8に示されるように、第一温調装置11D(11)の第二温調装置12D(12)と面する端縁11aのうち、第二発熱体22と面する部位に、切欠11a3が設けられている。また、第二温調装置12D(12)の第一温調装置11D(11)と面する端縁12aのうち、第一発熱体21と面する部位に、切欠12a3が設けられている。切欠11a3および切欠12a3は、角部において矩形状に凹んだ切欠として形成されている。
【0057】
本実施形態によっても、上記第2実施形態と同様に、比較的簡単な構成によって、制御電流I1,I2のオーバーシュートを抑制しながら、第一発熱体21および第二発熱体22のより迅速な温度の調整を実現することが可能な、新規な改善された光モジュール100D(100)を得ることができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0059】
例えば、切欠や凹部の形状は、種々に変更して実施することができる。また、第一温調装置と第二温調装置との間で、切欠や凹部の位置や、形状、大きさ等を異ならせてもよい。
【符号の説明】
【0060】
11,11A~11D…第一温調装置
11a…端縁(第一端縁)
11a1…切欠
11a2…切欠(凹部)
11a3…切欠
11b…端面(第一端面)
12,12A~12D…第二温調装置
12a…端縁(第二端縁)
12a1…切欠
12a2…切欠(凹部)
12a3…切欠
12b…端面(第二端面)
21…第一発熱体(アクティブ光学部品)
22…第二発熱体(アクティブ光学部品)
30…制御部
40…センサ
100,100A~100C…光モジュール
A1…第一領域
A2…第二領域
A3…第三領域
I1,I2…制御電流
It…目標値
Ith…上限値
O1,O2…オーバーシュート
TD1,TD2…時間差
X…方向(第二方向)
Y…方向(第三方向)
Z…方向(第一方向)