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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089456
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】X線分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/22 20180101AFI20240626BHJP
   G01N 23/223 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
G01N23/22
G01N23/223
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204831
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 春男
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA04
2G001BA05
2G001BA29
2G001CA01
2G001GA01
2G001GA08
(57)【要約】
【課題】 X線光路上の鏡や高額で高精度な試料ステージを用いなくても所望の位置にX線を正確に照射することが可能になるX線分析装置を提供すること。
【解決手段】 試料Sを載置する試料ステージ2と、試料ステージ上の照射ポイントに一次X線X1を照射するX線源3と、試料から放射される二次X線X2を検出するX線検出器4と、前記信号を分析する分析器5と、試料ステージとX線源及びX線検出器とを相対的に移動させて照射ポイントを移動可能なステージ移動機構6と、予め照射ポイントに焦点が一致していると共に照射ポイントを含む周囲を撮像可能で、互いに異なる位置に配された複数の観察光学系7A,7Bと、複数の観察光学系で撮像した複数の画像を比較して得た視差に基づいて試料の高さ位置のずれ量を算出し、ずれ量に基づいて一次X線の光軸から視た画像を作成する演算部8とを備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を載置する試料ステージと、
前記試料ステージ上の照射ポイントに一次X線を照射するX線源と、
前記一次X線が照射された前記試料から放射される二次X線を検出し、前記二次X線のエネルギー情報を含む信号を出力するX線検出器と、
前記信号を分析する分析器と、
前記試料ステージと前記X線源及び前記X線検出器とを相対的に移動させて前記照射ポイントを移動可能なステージ移動機構と、
予め前記照射ポイントに焦点が一致していると共に前記照射ポイントを含む周囲を撮像可能で、互いに異なる位置に配された複数の観察光学系と、
前記複数の観察光学系で撮像した複数の画像を比較して得た視差に基づいて前記試料の高さ位置のずれ量を算出し、前記ずれ量に基づいて前記一次X線の光軸から視た画像を作成する演算部とを備えていることを特徴とするX線分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線分析装置において、
前記複数の観察光学系が、撮像素子と、レンズとを備え、それぞれ前記一次X線の光軸に対しシャインプルーフ光学系を形成していることを特徴とするX線分析装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のX線分析装置において、
前記複数の観察光学系が、前記一次X線の光軸に対して左右対称の位置に配されている2つの観察光学系であることを特徴とするX線分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型電子部品等の試料中に含まれる金属元素の検出等が可能なX線分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線分析は、試料を非破壊で分析することが可能であるという特性から、小型電子部品などの試料に一次X線(入射X線)を照射して、試料から放射される二次X線(蛍光X線等)を分析して、試料について元素の定量分析や、多層構造の膜厚等を分析する製品検査用途等に用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1及び2には、X線源と、X線源からのX線を細いビーム状に成型するビーム成型機構と、試料を設置する試料ステージと、試料を観察するための観察光学系とを備えた蛍光X線分析装置が記載されている。
この蛍光X線分析装置では、X線照射位置が試料上の所望の位置となるように観察光学系の観察像で試料の位置調整が可能となるように、X線の光路上にX線を透過可能な鏡を配置することで、X線の光軸と同軸観察可能な光学系配置を用いている。
【0004】
しかし、この装置の場合、X線光軸中に鏡を配置する必要があるため、X線のビーム成型機構を最適な配置にできない問題がある。
このため、例えば特許文献3では、X線の光軸と観察光学系の光軸とを所定の距離だけ離して配置し、観察光学系で試料位置を合わせたのち、観察光学系の光軸とX線ビームの光軸との間の所定の距離に相当する量だけ、試料ステージを動作させることで所望の位置にX線を照射させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6521384号公報
【特許文献2】特開昭61-25006号公報
【特許文献3】特開平5-118999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
上記特許文献3では、ビーム成型機構から試料までの距離を短くする必要がある場合には特に有効に作用するが、観察光学系の光軸とX線の光軸との差に相当する所定の距離だけ試料を移動させる機構が正確に動作することが前提となる。
しかしながら、ステージプレート上に置かれた試料の移動距離は、ステージの真直度やヨー運動などの影響を受けて、ステージのスライダの移動距離に対して変動を受け、ステージ上のすべての場所で正確に所望の場所にX線を照射するためには、高額な高精度ステージを用いる必要があり、システム全体が高額になってしまうという不都合があった。特にステージプレートが大きく、測定対象の試料がステージのスライダから離れた場所にある場合にこの影響は顕著となる。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、X線光路上の鏡や高額で高精度な試料ステージを用いなくても所望の位置にX線を正確に照射することが可能になるX線分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るX線分析装置は、試料を載置する試料ステージと、前記試料ステージ上の照射ポイントに一次X線を照射するX線源と、前記一次X線が照射された前記試料から放射される二次X線を検出し、前記二次X線のエネルギー情報を含む信号を出力するX線検出器と、前記信号を分析する分析器と、前記試料ステージと前記X線源及び前記X線検出器とを相対的に移動させて前記照射ポイントを移動可能なステージ移動機構と、予め前記照射ポイントに焦点が一致していると共に前記照射ポイントを含む周囲を撮像可能で、互いに異なる位置に配された複数の観察光学系と、前記複数の観察光学系で撮像した複数の画像を比較して得た視差に基づいて前記試料の高さ位置のずれ量を算出し、前記ずれ量に基づいて前記一次X線の光軸から視た画像を作成する演算部とを備えていることを特徴とする。
【0009】
このX線分析装置では、予め照射ポイントに焦点が一致していると共に照射ポイントを含む周囲を撮像可能で、互いに異なる位置に配された複数の観察光学系と、複数の観察光学系で撮像した複数の画像を比較して得た視差に基づいて試料の高さ位置のずれ量を算出し、ずれ量に基づいて一次X線の光軸から視た画像を作成する演算部とを備えているので、一次X線軸の長さを増大させる鏡等の要素の追加が不要であり、常時観察が可能で試料又は試料ステージの高さ位置を調整可能になる。
したがって、折り返しミラー等を一次X線の光軸上に配する必要が無いと共に、高額な高精度ステージが不要になり、一次X線の光軸方向から観察した試料像を常時観察・表示可能になる。
【0010】
第2の発明に係るX線分析装置は、第1の発明において、前記複数の観察光学系が、撮像素子と、レンズとを備え、それぞれ前記一次X線の光軸に対しシャインプルーフ光学系を形成していることを特徴とする。
すなわち、このX線分析装置では、複数の観察光学系が、撮像素子と、レンズとを備え、それぞれ一次X線の光軸に対しシャインプルーフ光学系を形成しているので、レンズ主面と試料面(物面)とが平行でなく、近距離と遠距離とを同時に焦点を合わせることができ、より広い視野で画像を得ることができる。
【0011】
第3の発明に係るX線分析装置は、第1又は第2の発明において、前記複数の観察光学系が、前記一次X線の光軸に対して左右対称の位置に配されている2つの観察光学系であることを特徴とする。
すなわち、このX線分析装置では、複数の観察光学系が、一次X線の光軸に対して左右対称の位置に配されている2つの観察光学系であるので、演算部での演算処理を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るX線分析装置によれば、予め照射ポイントに焦点が一致していると共に照射ポイントを含む周囲を撮像可能で、互いに異なる位置に配された複数の観察光学系と、複数の観察光学系で撮像した複数の画像を比較して得た視差に基づいて試料の高さ位置のずれ量を算出し、ずれ量に基づいて一次X線の光軸から視た画像を作成する演算部とを備えているので、折り返しミラー等を一次X線の光軸上に配する必要が無いと共に、高額な高精度ステージが不要になり、一次X線の光軸方向から観察した試料像を常時観察・表示可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る一実施形態のX線分析装置において、X線分析装置を示す構成図である。
図2】本実施形態において、X線分析装置によるX線分析方法を示す説明図である。
図3】本実施形態において、X線分析装置によるX線分析方法を示すフローチャートである。
図4】本実施形態において、第1観察光学系による画像例(左画像)(a)、第2観察光学系による画像例(右画像)(b)を示す図である。
図5】本実施形態において、第1観察光学系と第2観察光学系との合成画像例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るX線分析装置の一実施形態を、図1から図5を参照しながら説明する。
【0015】
本実施形態のX線分析装置1は、図1及び図2に示すように、試料Sを載置する試料ステージ2と、試料ステージ2上の照射ポイントPに一次X線X1を照射するX線源3と、一次X線X1が照射された試料Sから放射される二次X線X2(蛍光X線や散乱X線等)を検出し、二次X線X2のエネルギー情報を含む信号を出力するX線検出器4と、前記信号を分析する分析器5と、試料ステージ2とX線源3及びX線検出器4とを相対的に移動させて照射ポイントPを移動可能なステージ移動機構6と、予め照射ポイントPに焦点が一致していると共に照射ポイントPを含む周囲を撮像可能で、互いに異なる位置に配された複数の観察光学系7A,7Bと、複数の観察光学系7A,7Bで撮像した複数の画像を比較して得た視差に基づいて試料Sの高さ位置のずれ量を算出し、ずれ量に基づいて一次X線X1の光軸から視た画像を作成する演算部8とを備えている。
【0016】
上記複数の観察光学系7A,7Bは、図2に示すように、撮像素子7aと、レンズ7bとを備え、それぞれ一次X線X1の光軸に対しシャインプルーフ(Scheimpflug)光学系を形成している。
また、複数の観察光学系7A,7Bは、一次X線X1の光軸に対して左右対称の位置に配されている。すなわち、本実施形態のX線分析装置1は、一次X線X1の光軸に対して同じ角度で左右に傾斜した光軸を有して一次X線X1の光軸の左右に配された2組の観察光学系7A,7Bを備えている。
さらに、本実施形態のX線分析装置1は、X線分析器4に接続されたデータ処理部9を備えている。
【0017】
上記撮像素子7aは、例えばCCDやC-MOSであり、照射ポイントPを含む周辺を撮像した画像を演算部8に送信する。
上記レンズ7bは、予め撮像素子7aの焦点を照射ポイントPに一致させるように設定されている。
上記演算部8及びデータ処理部9は、例えばディスプレイを備えたコンピュータ等である。なお、演算部8とデータ処理部9とを一体化しても構わない。
【0018】
上記X線源3は、試料ステージ2より上方に位置し、試料ステージ2上の任意の照射ポイントPに一次X線X1を照射するX線管球である。X線源3は、例えば管球内のフィラメント(陰極)から発生した熱電子がフィラメント(陰極)とターゲット(陽極)との間に印加された電圧により加速され、ターゲット(W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Rh(ロジウム)など)に衝突して発生したX線を一次X線X1としてベリリウム箔などの窓から出射するものである。
【0019】
また、本実施形態のX線分析装置1は、一次X線X1を成形するX線ビーム成型機構10を備えている。このX線ビーム成型機構10は、例えばポリキャピラリX線集光素子である。ポリキャピラリX線集光素子は、多数の中空のガラス管を、入射光と出射口でそれぞれ一点を指向するように束ねることで、ガラス管の内壁を全反射モードで伝播するX線を集光する素子である。
【0020】
上記X線検出器4は、試料ステージ2より上方に位置しつつX線源3と離間している。このX線検出器4は、試料Sから放射される二次X線X2を検出し、この二次X線X2のエネルギー情報を含む信号を出力する。X線検出器4は、例えば半導体検出器又は比例計数管などのエネルギー分散型X線検出器である。なお、X線検出器4として、波長分散型X線検出器を用いてもよい。
上記分析器5は、X線検出器4に接続されて出力された信号を分析する。分析器5は例えば、上記信号から電圧パルスの波高を得てエネルギースペクトルを生成する波高分析器(マルチチャンネルアナライザー)である。
【0021】
上記試料ステージ2は、数値制御可能な1軸又はそれ以上の多軸のリニアステージに載置されたパレットであって、ステージ移動機構6により、一定の搬送方向に連続的に移動可能となっている。
なお、試料ステージ2の表面材料は、試料Sから発生する二次X線X2のエネルギーに対して、試料ステージ2の表面から発生する二次X線X2のエネルギーと干渉しないものが選ばれる。
【0022】
上記試料ステージ2は、測定対象の試料Sを乗せて、その測定対象部位をX線ビーム成型機構10の集光点(照射ポイントP)に一致させるように位置を微調整可能となっている。
上記複数の観察光学系7A,7Bは、視野の中心がX線ビーム成型機構10から既定の距離だけ離れた点で一次X線X1の光軸と観察像の中心とが一致するように配置及び焦点を調整されている。
複数の観察光学系7A,7Bは、結像面に撮像素子7aが配置され、取得した画像を演算部8に取り込み、直接または画像処理を行った像を演算部8の画面上に表示可能である。
また、撮像素子7aは、画像上のX方向が2つのシャインプルーフ光学系の2つの光軸を含む面と平行になるように、その取付け角度が調整されている。
【0023】
本実施形態のX線分析装置1では、それぞれの観察光学系7A,7Bから得られた画像を、一旦電子データとして演算部8に取り込み、演算部8は、観察光学系7A,7Bの2枚の画像から画像処理により視差を補正し、一次X線X1の光軸から観察した合成画像を生成し表示する。
演算部8は、視差を補正する際に得られたずれ量(視差量)から画像要素毎の距離を計算し距離画像も作成可能である。
【0024】
また、演算部8は、上記距離画像を用いて、画像上で指定された測定点を照射ポイントP、すなわちX線ビーム成型機構10の軸上かつ正しい作動距離になるように試料ステージ2を駆動可能である。
さらに、上記距離画像を用いて試料ステージ2を動作させる際に装置構造物に衝突する可能性がある場合、演算部8が警告を発するあるいは試料ステージ2の動作を停止することで、衝突を抑制するように設定しても構わない。
【0025】
本実施形態のX線分析方法は、図3に示すように、複数の観察光学系7A,7Bで複数の画像(右画像11R及び左画像11L)を撮像する画像取得ステップS1と、複数の画像をそれぞれ複数のブロックに区切るブロック抽出ステップS2と、複数のブロックのうち、複数の画像を比較して最も一致するブロックを一致ブロックとして特定する一致ブロック特定ステップS3と、複数の画像において互いの一致ブロックの位置のずれ量δxを求めるずれ量検出ステップS4と、ずれ量δxに基づいて全てのブロックを移動させて複数の画像の合成画像を作成する合成画像作成ステップS5とを有している。
【0026】
上記X線分析方法のうちについて、以下に具体的に説明する。
まず、画像取得ステップS1において、図4及び図5に示すように、2組の観察光学系7A,7Bで右画像11R及び左画像11Lが撮像され、これら画像が演算部8に送られる。
2組の観察光学系7A,7Bからの画像は、観察物体の試料Sが既定の高さにある場合は同じ画像となるが、高さがずれた場合は、2つの画像上でX方向にずれて表示される。
図2に示したように、試料Sの高さが規定の高さからずれ量δzでずれた場合は、左側の第1観察光学系7Aでは視差による像移動量がδx、右側の第2観察光学系7Bでは視差による像移動量が-δxだけずれることになる。
【0027】
ブロック抽出ステップS2では、左側の第1観察光学系7Aから得られた左画像11Lと、右側の第2観察光学系7Bから得られた右画像11Rとを、格子状に複数の小さなブロックに区切る。
次に、一致ブロック特定ステップS3では、左画像11Lの各ブロックについて、右画像11R上でX方向に動かしながら最も一致度が高いブロック(一致ブロックB1)を探す。
最も一致度の高いブロックは、例えばブロック内の各ピクセルの誤差二乗和が最も小さいピクセルとして判定する。
ずれ量検出ステップS4では、右画像11R上で最も一致度が高いブロック(一致ブロックB1)の場所L1と、左画像11L上のブロックの場所とについて、X方向のずれ量δxを求める。
【0028】
上記ずれ量δxは、右画像11Rと左画像11Lとで対象な設計となっているので、合成画像作成ステップS5では、演算部8において、右画像11Rと左画像11Lとは別に合成画像11RL用のメモリを用意し、合成画像11LRのメモリ上で上記ずれ量δxの1/2(δx/2)だけずらした位置に当該一致ブロックB1を移動させる。
さらに、すべてのブロックに対して同様の処理を実施することで、合成画像11LRのメモリには仮想的に一次X線X1の光軸方向から観察した合成画像11LRが構成される。得られた合成画像11LRを、一次X線X1の光軸上の仮想視点からの像として形成し演算部8の画面上に表示する。
【0029】
上記演算処理において、それぞれの一致度を求めるブロック毎に、左右のずれ量δxのデータが求められている。この左右のずれ量δxは図2より幾何学的な計算で、試料SのZ方向のずれ量δzに換算することができる。すなわち、画像上での各点において、試料Sの表面高さの分布が得られる。
上記で表示された仮想視点からの合成画像11LR上である点を指定すると、その点の高さと、X線ビーム成型機構10の光軸(一次X線X1の光軸)からどれだけ離れているかの情報を得ることができることを意味する。この情報を用いて、演算部8は、指定された点がX線ビーム成型機構10の光軸上かつX線ビーム成型機構10から決められた距離に配置されるよう試料ステージ2を駆動する。
【0030】
なお、演算部8は、試料ステージ2を駆動する際、上記使用した距離情報と、既知の装置構造情報とを照合し、試料Sが装置構造物に衝突する可能性を試料ステージ2の駆動前に計算上で評価する。その結果、衝突の可能性があれば、演算部8は、警告を発することで衝突を回避する、あるいは、試料ステージ2の動作を強制的に停止する。
【0031】
このように本実施形態のX線分析装置1では、予め照射ポイントPに焦点が一致していると共に照射ポイントPを含む周囲を撮像可能で、互いに異なる位置に配された複数の観察光学系7A,7Bと、複数の観察光学系7A,7Bで撮像した複数の画像を比較して得た視差に基づいて試料Sの高さ位置のずれ量を算出し、ずれ量に基づいて一次X線X1の光軸から視た画像を作成する演算部8とを備えているので、一次X線軸の長さを増大させる鏡等の要素の追加が不要であり、常時観察が可能で試料又は試料ステージの高さ位置を調整可能になる。
したがって、折り返しミラー等を一次X線X1の光軸上に配する必要が無いと共に、高額な高精度ステージが不要になり、一次X線X1の光軸方向から観察した試料像を常時観察・表示可能になる。
【0032】
また、複数の観察光学系7A,7Bが、撮像素子7aと、レンズ7bとを備え、それぞれ一次X線X1の光軸に対しシャインプルーフ光学系を形成しているので、レンズ主面と試料面(物面)とが平行でなく、近距離と遠距離とを同時に焦点を合わせることができ、より広い視野で画像を得ることができる。
さらに、複数の観察光学系7A,7Bが、一次X線X1の光軸に対して左右対称の位置に配されている2つの観察光学系であるので、演算部8での演算処理を簡略化することができる。
【0033】
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…X線分析装置、2…試料ステージ、3…X線源、4…X線検出器、5…分析器、6…ステージ移動機構、7A,7B…複数の観察光学系、7a…撮像素子、7b…レンズ、8…演算部、S…試料、P…照射ポイント、X1…一次X線、X2…二次X線
図1
図2
図3
図4
図5