IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 小林製薬株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089475
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20240626BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20240626BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240626BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240626BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/67
A61K8/34
A61K8/86
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204863
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】井上 喬允
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 賢史
(72)【発明者】
【氏名】山之内 渉
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC352
4C083AC542
4C083AD092
4C083AD621
4C083AD622
4C083BB02
4C083BB03
4C083CC01
4C083CC02
4C083CC05
4C083DD23
4C083DD33
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、ビタミンAエステルを含む水中油型乳化組成物の、ミセル粒子径の減少が抑制する処方を提供することである。
【解決手段】(A)ビタミンAエステルを含む水中油型乳化組成物に、(B)高級アルコール、(C)親水性ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、及び(D)親油性ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを配合することにより、ミセル粒子径の減少が抑制できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビタミンAエステル、(B)高級アルコール、(C)親水性ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、及び(D)親油性ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含有する、水中油型乳化組成物。
【請求項2】
前記(C)成分のHLBから前記(D)成分のHLBを引いた値が2~16である、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
前記(C)成分のHLBが11~18である、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
前記(D)成分のHLBが5~9である、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項5】
総界面活性剤のHLBの加重平均が10~14である、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項6】
前記(C)成分及び前記(D)成分以外の界面活性剤を含まない、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項7】
油相1g当たりの前記(A)成分の含有量が、0.4万~5万I.U.である、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項8】
油相100重量部当たりの(B)成分の含有量が、1~25重量部である、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項9】
前記(A)成分100万I.U.当たりの(B)成分の含有量が、1~20gである、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項10】
油相の含有量が10~40重量%である、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項11】
前記(C)成分の含有量が、1~5重量%である、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項12】
前記(D)成分の含有量が、1~5重量%である、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項13】
前記(A)成分100万I.U.当たりの(D)成分の含有量が、0.5~15gである、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンAエステルを含む水中油型乳化組成物であって、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性を有する乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンA類は、ビタミンA及びその誘導体を包含する脂溶性化合物であり、皮膚又は粘膜の保護、保湿、抗炎症性、及びターンオーバー促進作用を有する成分として、乳化組成物等に配合されて用いられている。
【0003】
ビタミンA類は、光、空気、熱、金属イオン、及び水等の要因に対する保存安定性が悪い。従って、ビタミンA類を配合した製剤においては、これらの要因を考慮した処方設計が望まれる。
【0004】
例えば、ビタミンA類のうち、ビタミンAについては、キレート剤及び/又は抗酸化剤を用いる等の手段が提案されている。また、ビタミンAのエステルについては、加水分解に対する安定性を向上させることを目的として、水中油型乳化組成物において、油相中でビタミンAの脂肪酸エステルと抗酸化剤を共存させ、かつ、分子量が5000以上の非イオン系両親媒性高分子を配合することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-349439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ビタミンAのエステルの加水分解の課題は、当該成分が水を含む製剤に配合される限り不可避である。そして、ビタミンAのエステルが加水分解を受けるリスクの大きさは、本質的に、ビタミンAのエステルと水との接触機会の大きさに比例する。水中油型乳化組成物に当該成分が配合される場合にあっては、ミセル粒子径が小さいほど、つまり、ビタミンAのエステルが溶解した油滴の比表面積が大きいほど、ビタミンAのエステルの加水分解のリスクが増大する。
【0007】
本発明者らは、ビタミンAのエステルを含む水中油型乳化組成物の保存安定性をミセル粒子径に着眼して検討した結果、経時的に、ミセル粒子径が減少することを新たに見出した。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ビタミンAエステルを含む水中油型乳化組成物の、ミセル粒子径の減少が抑制する処方を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討を行ったところ、ビタミンAエステルを含む水中油型乳化組成物の油相に高級アルコールを配合するとともに、界面活性剤として、親水性ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと親油性ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとを組み合わせて配合することによって、ミセル粒子径の減少を抑制できることを見出した。本発明は、この知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)ビタミンAエステル、(B)高級アルコール、(C)親水性ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、及び(D)親油性ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含有する、水中油型乳化組成物。
項2. 前記(C)成分のHLBから前記(D)成分のHLBを引いた値が2~16である、項1に記載の水中油型乳化組成物。
項3. 前記(C)成分のHLBが11~18である、項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
項4. 前記(D)成分のHLBが5~9である、項1~3のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
項5. 総界面活性剤のHLBの加重平均が10~14である、項1~4のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
項6. 前記(C)成分及び前記(D)成分以外の界面活性剤を含まない、項1~5のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
項7. 油相1g当たりの前記(A)成分の含有量が、0.4万~5万I.U.である、項1~6のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
項8. 油相100重量部当たりの(B)成分の含有量が、1~25重量部である、項1~7のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
項9. 前記(A)成分100万I.U.当たりの(B)成分の含有量が、1~20gである、項1~8のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
項10. 油相の含有量が10~40重量%である、項1~9のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
項11. 前記(C)成分の含有量が、1~5重量%である、項1~10のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
項12. 前記(D)成分の含有量が、1~5重量%である、項1~11のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
項13. 前記(A)成分100万I.U.当たりの(D)成分の含有量が、0.5~15gである、項1~12のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ビタミンAエステルを含む水中油型乳化組成物の、ミセル粒子径の減少が抑制する処方が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の水中油型乳化組成物は、(A)ビタミンAエステル(以下、「(A)成分」とも記載する。)、(B)高級アルコール(以下、「(B)成分」とも記載する。)、(C)親水性ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(以下、「(C)成分」とも記載する。)、及び(D)親油性ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(以下、「(D)成分」とも記載する。)を含有することを特徴とする。以下、本開示の水中油型乳化組成物について詳述する。なお、本明細書において、2つの数値と「~」とにより示される数値範囲は、当該2つの数値を下限値及び上限値として含むものとする。例えば、2~15重量%との表記は、2重量%以上15重量%以下を意味する。
【0013】
[(A)ビタミンAエステル]
本開示の水中油型乳化組成物は、(A)成分としてビタミンAエステルを含む。ビタミンAエステルには、レチノールと脂肪酸とのエステル、及びレチノールの酸化物のエステルを含む。
【0014】
レチノールと脂肪酸とのエステルにおいて、レチノールは、ビタミンAアルコールとも称される化合物である。レチノールと脂肪酸とのエステルにおいて、脂肪酸としては、炭素数2~30、好ましくは4~22、より好ましくは10~18、さらに好ましくは14~18の脂肪酸が挙げられる。レチノールと脂肪酸とのエステルの具体例としては、レチノール酢酸エステル、レチノールプロピオン酸エステル、レチノール酪酸エステル、レチノールオクチル酸エステル、レチノールラウリル酸エステル、レチノールパルミチン酸エステル、レチノールステアリン酸エステル、レチノールミリスチン酸エステル、レチノールオレイン酸エステル、レチノールリノレン酸エステル、レチノールリノール酸エステル等が挙げられる。これらのレチノールと脂肪酸とのエステルは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
レチノールの酸化物のエステルにおいて、レチノールの酸化物としては、具体的には、レチノイン酸(「トレチノイン」と称することもある)、レチナール等が挙げられる。レチノールの酸化物のエステルの具体例としては、レチノイン酸メチル、レチノイン酸エチル、レチノイン酸レチノール、レチノイン酸トコフェロール(トコフェロールは、α、β、γ、又はδのいずれであってもよい)等が挙げられる。これらのレチノールの酸化物のエステルは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
これらのビタミンAエステルは、その原料、製造方法、精製方法等は特に制限されず、動物等から自ら単離及び精製したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
【0017】
本開示の水中油型乳化組成物において、(A)成分として、上記のレチノールと脂肪酸とのエステル、及びレチノールの酸化物のエステルの中から、1種を選択して使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本開示の水中油型乳化組成物において、(A)成分として、上記のレチノールと脂肪酸とのエステル、及びレチノールの酸化物のエステルの中でも、好ましくはレチノールと脂肪酸とのエステル、より好ましくはレチノールパルミチン酸エステルが挙げられる。
【0019】
本開示の水中油型乳化組成物において、(A)成分の配合には、植物油等の油にビタミンAエステルが溶解させられた油溶液を用いることができる。このようなビタミンAエステルの油溶液は、「ビタミンA油」として知られている。ビタミンA油は、例えば日本薬局方に記載の方法に従って製造することができる。ビタミンA油としては、ビタミンAエステルの含有量が、例えば10万~200万I.U./g、好ましくは40万~170万I.U./g、より好ましくは60万~140万I.U./g、さらに好ましくは80万~120万I.U./gのものが挙げられる。なお、本明細書において、ビタミンAエステルの含有量の単位「I.U.」は、国際単位を示す。
【0020】
本開示の水中油型乳化組成物における(A)成分の含有量については特に限定されないが、油相1g当たりの前記(A)成分の含有量として、例えば0.4万~5万I.U.が挙げられる。本開示の水中油型乳化組成物は、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性に優れ、加水分解のリスクが低減されているため、油相1g当たりの前記(A)成分の含有量が多くなるように配合することができる。このような観点から、油相1g当たりの前記(A)成分の含有量の好適な例として、例えば1万~5万I.U.、好ましくは1.4万~5万I.U.、より好ましくは1.6万~5万I.U.が挙げられる。また、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、油相1g当たりの前記(A)成分の含有量の好適な例として、例えば0.4万~4万I.U.、好ましくは0.4万~3万I.U.、より好ましくは0.4万~2.5万I.U.、さらに好ましくは0.4万~2.2万I.U.が挙げられる。
【0021】
また、本開示の水中油型乳化組成物における(A)成分の含有量は、水中油型乳化組成物100g当たりの含有量として、例えば10万~100万I.U.、好ましくは20万~80万I.U.、より好ましくは30万~70万I.U.、さらに好ましくは40万~60万I.U.が挙げられる。
【0022】
(A)成分の配合にビタミンA油を使用する場合、本開示の水中油型乳化組成物におけるビタミンA油の含有量については、ビタミンA油中のビタミンAエステルの含有量に応じて、本開示の水中油型乳化組成物中でビタミンAエステルが前述する含有量を充足するように設定すればよい。具体的には、100万I.U./gのビタミンAエステルを含有するビタミンA油を用いる場合であれば、本開示の水中油型乳化組成物におけるビタミンA油の含有量としては、例えば0.01~5重量%、好ましくは0.05~1.5重量%、より好ましくは0.1~0.7重量%、さらに好ましくは0.3~0.7重量%、一層好ましくは0.4~0.7重量%が挙げられる。
【0023】
[(B)高級アルコール]
本開示の水中油型乳化組成物は、(B)成分として高級アルコールを含む。高級アルコールは炭素数6以上の1価アルコールであり、高級アルコールの好ましい例としては、炭素数10~30の1価アルコール、好ましくは炭素数16~30の1価アルコール、より好ましくは炭素数18~30の1価アルコールが挙げられる。
【0024】
本開示の水中油型乳化組成物で使用される高級アルコールの炭素鎖は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよく、これらの中でも、好ましくは直鎖状が挙げられる。また、本開示の水中油型乳化組成物で使用される高級アルコールの炭素鎖は、飽和型又は不飽和型のいずれであってもよく、これらの中でも、好ましくは飽和型が挙げられる。
【0025】
本開示の水中油型乳化組成物で使用される高級アルコールの具体例としては、カプリンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール等の直鎖状高級アルコールが挙げられる。これらの高級アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
これらの高級アルコールの中でも、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性を向上させる観点から、好ましくは、直鎖状、飽和型、且つ炭素数10~30(より好ましくは16~30、さらに好ましくは18~30、一層好ましくは20~30、より一層好ましくは22~30、22~28、22~26、又は22~24)の1価アルコールが挙げられ、特に好ましくはベヘニルアルコールが挙げられる。
【0027】
本開示の水中油型乳化組成物における(B)成分の含有量については特に限定されないが、油相100重量部当たりの(B)成分の含有量として、例えば1~25重量部が挙げられ、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、好ましくは10~25重量部、より好ましくは13~25重量部、さらに好ましくは17~25重量部、一層好ましくは17.5~25重量部、17.5~23重量部、17.5~21重量部、又は17.5~20重量部が挙げられる。
【0028】
本開示の水中油型乳化組成物における(B)成分の含有量は、(A)成分100万I.U.当たりの含有量として、例えば1~20gが挙げられ、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、好ましくは5~20g、より好ましくは7~20g、さらに好ましくは9.5~20g、9.5~15g、9.5~12g、又は9.5~11gが挙げられる。
【0029】
本開示の水中油型乳化組成物における(B)成分の具体的な含有量としては、例えば、0.5~10重量%、好ましくは2~10重量%、より好ましくは3.5~10重量%、さらに好ましくは4.8~10重量%、4.8~8重量%、又は4.8~6重量%が挙げられる。
【0030】
[(C)親水性ポリオキシアルキレンアルキルエーテル]
本開示の水中油型乳化組成物は、(C)成分として親水性ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む。親水性ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、水に可溶なポリオキシアルキレンアルキルエーテルである。
【0031】
親水性ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのHLB(親水性親油性バランス)としては、例えば11~18が挙げられ、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、好ましくは13~18、さらに好ましくは14~18、一層好ましくは16~17.5が挙げられる。
【0032】
本明細書で、HLB(親水性親油性バランス)は、下記式により求められるものである。
HLB=7+1.171log(Mw/Mo)
(式中、Mwは界面活性剤の親水性基の分子量、Moは界面活性剤の疎水性基の分子量、logは底が10の対数を示す。)
【0033】
親水性ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおける、ポリオキシアルキレンの付加モル数としては、例えば14~26が挙げられ、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、好ましくは16~24、より好ましくは18~22が挙げられる。
【0034】
親水性ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおける、ポリオキシアルキレンとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンが挙げられ、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、好ましくはポリオキシエチレンが挙げられる。
【0035】
親水性ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおける、アルキルエーテルのアルキル基としては、例えば炭素数12~26のアルキル基が挙げられる。当該アルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。当該アルキル基は、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、好ましくは直鎖状アルキル基が挙げられ、より好ましくは、直鎖状且つ炭素数14~24(さらに好ましくは炭素数16~22、16~20、16~18、18~22、又は20~22のアルキル基)が挙げられる。
【0036】
親水性ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの好適な例としては、ポリエチレン(16~24)ラウリルエーテル、ポリエチレン(16~24)ミリスチルエーテル、ポリエチレン(16~24)セチルエーテル、ポリエチレン(16~24)ステアリルエーテル、ポリエチレン(16~24)アラキジルエーテル、ポリエチレン(16~24)ベヘニルエーテルが挙げられ、より好ましくは、ポリエチレン(18~22)セチルエーテル、ポリエチレン(18~22)ステアリルエーテル、ポリエチレン(18~22)アラキジルエーテル、ポリエチレン(18~22)ベヘニルエーテルが挙げられ、さらに好ましくは、ポリエチレン(20)セチルエーテル、ポリエチレン(20)ステアリルエーテル、ポリエチレン(20)アラキジルエーテル、ポリエチレン(20)ベヘニルエーテルが挙げられる。
【0037】
本開示の水中油型乳化組成物において、(C)成分の含有量については特に限定されず、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性の求められる程度に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1~5重量%が挙げられ、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、好ましくは1.5~3重量%、より好ましくは1.7~2.5重量%が挙げられる。
【0038】
本開示の水中油型乳化組成物において、水相100重量部当たりの(C)成分の含有量としては、例えば、1~5重量部が挙げられ、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、好ましくは2~4重量部、より好ましくは2.5~3重量部が挙げられる。
【0039】
[(D)高級アルコール]
本開示の水中油型乳化組成物は、(D)成分として親油性ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む。親油性ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、本開示の水中油型乳化組成物に含まれる油性基剤に可溶なポリオキシアルキレンアルキルエーテルである。
【0040】
親油性ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのHLBとしては、例えば5~9が挙げられ、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、好ましくは5~8.5、さらに好ましくは6~8、一層好ましくは6.5~7.5が挙げられる。
【0041】
本開示の水中油型乳化組成物において、(C)成分のHLBから(D)成分のHLBを引いた値としては、例えば2~16が挙げられ、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、好ましくは5~11.5、より好ましくは8.5~11が挙げられ、さらに好ましくは9~10.5が挙げられる。
【0042】
親油性ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおける、ポリオキシアルキレンの付加モル数としては、例えば3~8が挙げられ、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、好ましくは3~7、より好ましくは4~6が挙げられる。
【0043】
親油性ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおける、ポリオキシアルキレンとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンが挙げられ、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、好ましくはポリオキシエチレンが挙げられる。
【0044】
親油性ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおける、アルキルエーテルのアルキル基としては、例えば炭素数12~26のアルキル基が挙げられる。当該アルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。当該アルキル基は、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、好ましくは直鎖状アルキル基が挙げられ、より好ましくは、直鎖状且つ炭素数14~24(さらに好ましくは炭素数16~22、一層に好ましくは炭素数18~22、より一層好ましくは炭素数20~22)のアルキル基が挙げられる。
【0045】
親油性ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの好適な例としては、ポリエチレン(3~8)ラウリルエーテル、ポリエチレン(3~8)ミリスチルエーテル、ポリエチレン(3~8)セチルエーテル、ポリエチレン(3~8)ステアリルエーテル、ポリエチレン(3~8)アラキジルエーテル、ポリエチレン(3~8)ベヘニルエーテルが挙げられ、より好ましくは、ポリエチレン(3~7)セチルエーテル、ポリエチレン(3~7)ステアリルエーテル、ポリエチレン(3~7)アラキジルエーテル、ポリエチレン(3~7)ベヘニルエーテルが挙げられ、さらに好ましくは、ポリエチレン(4~6)アラキジルエーテル、ポリエチレン(4~6)ベヘニルエーテルが挙げられ、一層好ましくは、ポリエチレン(5)ベヘニルエーテルが挙げられる。
【0046】
本開示の水中油型乳化組成物において、(D)成分の含有量については特に限定されず、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性の求められる程度に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1~5重量%が挙げられ、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、好ましくは1.5~3重量%、より好ましくは1.7~2.5重量%が挙げられる。
【0047】
本開示の水中油型乳化組成物において、油相100重量部当たりの(D)成分の含有量としては、例えば、2~12重量部が挙げられ、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、好ましくは6~9重量部、より好ましくは7~8重量部が挙げられる。
【0048】
本開示の水中油型乳化組成物において、(A)成分100万I.U.当たりの(D)成分の含有量として、例えば0.5~15gが挙げられ、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、好ましくは1~10g、より好ましくは2~7g、さらに好ましくは3~5gが挙げられる。
【0049】
[その他の成分]
本開示の水中油型乳化組成物は、前述する成分の他に、薬学的又は香粧学的な生理機能を発揮できる薬効成分が、必要に応じて含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。このような薬効成分としては、例えば、ステロイド剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、抗炎症剤、殺菌剤、鎮痒剤、皮膚保護剤、血行促進成分、ビタミン類、ムコ多糖類等が挙げられる。これらの薬効成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、本発明の水中油型乳化組成物において、これらの薬効成分を含有させる場合、その濃度については、使用する薬効成分の種類、期待する効果等に応じて適宜設定すればよい。
【0050】
また、本開示の水中油型乳化組成物は、前述する成分の他に、必要に応じて、製剤形態等に応じて他の添加剤が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。このような添加剤としては、例えば、水、油性基剤(上記(B)成分以外)、1価低級(炭素数1~5)アルコール、多価アルコール、界面活性剤(上記(C)成分及び(D)成分以外)、増粘剤、緩衝剤、可溶化剤、キレート剤、防腐剤、保存剤、酸化防止剤、安定化剤、キレート剤、香料、着色料、並びに、それら以外の酸及び塩基等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の中でも、好ましくは、水、油性基剤、増粘剤、及び塩基が挙げられる。本開示の水中油型乳化組成物において、これらの添加剤を含有させる場合、その含有量については、使用する添加剤の種類等に応じて適宜設定すればよい。
【0051】

本開示の水中油型乳化組成物における水の含有量としては、例えば、55~90重量%、好ましくは60~80重量%が挙げられる。
【0052】
油性基剤
(B)成分以外の油性基剤としては、炭化水素油、エステル油、高級脂肪酸、動植物油脂、シリコーン油等が挙げられる。これらの油性基剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの油性基剤の中でも、好ましくは、炭化水素油及びエステル油が挙げられる。
【0053】
炭化水素油の具体例としては、スクワレン、スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、シクロパラフィン、ポリブテン、ワセリン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、セレシン等が挙げられる。これらの炭化水素油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの炭化水素油の中でも、好ましくは、流動パラフィン及びワセリンが挙げられる。
【0054】
本開示の水中油型乳化組成物が炭化水素油を含む場合、炭化水素油の含有量としては、油相100重量部当たりの含有量として、例えば3~75重量部が挙げられ、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、好ましくは30~75重量部、より好ましくは40~75重量部、さらに好ましくは50~75重量部、一層好ましくは53~75重量部、53~70重量部、53~62重量部、又は53~60重量部が挙げられる。また、本開示の水中油型乳化組成物が炭化水素油を含む場合、炭化水素油の具体的な含有量としては、例えば、1.5~30重量%、好ましくは6~30重量%、より好ましくは10~30重量%、さらに好ましくは14~30重量%、14~24重量%、又は14~18重量%が挙げられる。
【0055】
エステル油としては、脂肪酸と1価又は多価アルコールとのエステルが挙げられる。脂肪酸としては、炭素数8~22の脂肪族モノ又はジカルボン酸が挙げられ、1価アルコールとしては、炭素数2~22の直鎖又は分岐アルコールが挙げられ、多価アルコールとしては、炭素数3~5の2~5価の多価アルコールが挙げられる。
【0056】
エステル油の具体例としては、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸イソセチル、2-エチルへキサン酸ステアリル、2-エチルへキサン酸イソステアリル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸2-ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソセチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル、ピバリン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、エルカ酸オクチルドデシル、ジデカン酸ネオペンチルグリコール、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパンアジピン酸ジデシル、アジピン酸ジデシル、イソステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸バチル、モノヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油、ラノリン脂肪酸イソステアリル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸オクチルドデシル、リシノレイン酸セチル、コハク酸ジオクチル、乳酸セチル、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジノナン酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール等が挙げられる。
【0057】
これらのエステル油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのエステル油の中でも、好ましくは脂肪酸と1価アルコールとのエステル、より好ましくは炭素数8~22(好ましくは10~18、より好ましくは12~16)の脂肪族モノカルボン酸と炭素数2~22(好ましくは2~10、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4)の直鎖又は分岐(好ましくは分岐)アルコールが挙げられ、特に好ましくはミリスチン酸イソプロピルが挙げられる。
【0058】
本開示の水中油型乳化組成物がエステル油を含む場合、エステル油の含有量としては、油相100重量部当たりの含有量として、例えば1~25重量部が挙げられ、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、好ましくは10~25重量部、より好ましくは13~25重量部、さらに好ましくは17~25重量部、一層好ましくは17.5~25重量部、17.5~23重量部、17.5~21重量部、又は17.5~20重量部が挙げられる。また、本開示の水中油型乳化組成物がエステル油を含む場合、エステル油の具体的な含有量としては、例えば、0.5~10重量%、好ましくは2~10重量%、より好ましくは3.5~10重量%、さらに好ましくは4.8~10重量%、4.8~8重量%、又は4.8~6重量%が挙げられる。
【0059】
本開示の水中油型乳化組成物は、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、(C)成分及び(D)成分以外の界面活性剤を含まないことが好ましい。
【0060】
増粘剤
増粘剤としては、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、デキストラン、ペクチン、デキストリン脂肪酸エステル等の多糖類系増粘剤;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系増粘剤;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸ナトリウムベントナイト等のビニル系増粘剤等が挙げられる。これらの増粘剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの増粘剤の中でも、好ましくはビニル系増粘剤が挙げられ、好ましくはポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸ナトリウムベントナイトが挙げられ、より好ましくはカルボキシビニルポリマーが挙げられる。
【0061】
本発明の水中油型乳化組成物が増粘剤を含む場合、増粘剤の含有量としては、水相100重量部当たりの含有量として、例えば0.1~1.2重量部が挙げられ、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、好ましくは0.3~1.2重量部、より好ましくは0.5~1.2重量部、さらに好ましくは0.6~1.2重量部、0.6~1重量部、0.6~0.8重量部、又は0.6~0.7重量部が挙げられる。また、本開示の水中油型乳化組成物が増粘剤を含む場合、増粘剤の具体的な含有量としては、例えば、0.05~1重量%、好ましくは0.2~10重量%、より好ましくは0.35~0重量%、さらに好ましくは0.48~1重量%、0.48~0.8重量%、又は0.48~0.6重量%が挙げられる。
【0062】
塩基
塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基;モノ、ジ、及びトリエタノールアミン、及び塩基性アミノ酸などの有機塩基が挙げられる。これらの塩基は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの塩基の中でも、好ましくは有機塩基が挙げられ、より好ましくはモノ、ジ、及びトリエタノールアミンが挙げられ、さらに好ましくはトリエタノールアミンが挙げられる。
【0063】
本開示の水中油型乳化組成物が塩基を含む場合、塩基の含有量としては、水相100重量部当たりの含有量として、例えば0.1~1.2重量部が挙げられ、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、好ましくは0.3~1.2重量部、より好ましくは0.5~1.2重量部、さらに好ましくは0.6~1.2重量部、0.6~1重量部、0.6~0.8重量部、又は0.6~0.7重量部が挙げられる。また、本開示の水中油型乳化組成物が塩基を含む場合、塩基の具体的な含有量としては、例えば、0.05~1重量%、好ましくは0.2~1重量%、より好ましくは0.35~1重量%、さらに好ましくは0.48~1重量%、0.48~0.8重量%、又は0.48~0.6重量%が挙げられる。
【0064】
[その他]
本開示の水中油型乳化組成物に含まれる全ての界面活性剤のHLBの加重平均(各々の界面活性剤のHLBに、全ての界面活性剤の総量に対する重量比で重み付けした値を、すべての界面活性剤について足し合わせた値)については、例えば10~14が挙げられ、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、好ましくは11~13が挙げられ、より好ましくは11.5~12.5が挙げられる。
【0065】
本開示の水中油型乳化組成物における油相の含有量(油性基剤及び油溶性成分の総量)と水相の含有量(水性基剤及び水溶性成分の総量)との比率は、水中油型となる限りにおいて特に限定されないが、油相の含有量として、例えば10~40重量%が挙げられ、ミセル粒子径の減少が抑制された安定性をより一層高める観点から、好ましくは15~35重量%、より好ましくは20~30重量%、さらに好ましくは25~30重量%が挙げられる。
【0066】
本開示の水中油型乳化組成物におけるミセルの平均粒子径(レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を指す。)については、例えば1.5~3.5μ、好ましくは2μm~3μmが挙げられる。
【0067】
[製剤形態及び製品分類]
本開示の水中油型乳化組成物の製剤形態については、常温で流動性を有する形態であれば特に制限されず、例えば、液状及び半固形状(クリーム状)が挙げられる。本開示の水中油型乳化組成物はミセル粒子径の減少が抑制された安定性に優れるため、流動性が高い製剤形態であっても、効果的にミセル粒子径の減少を抑制できる。このような観点から、本開示の水中油型乳化組成物の製剤形態の好適な例として、液状が挙げられる。
【0068】
本発明の水中油型乳化組成物の製品分類としては、医薬品(外用、粘膜用及び内服用)、医薬部外品(外用、粘膜用及び内服用)、化粧料、皮膚洗浄料、口腔ケア製品等が挙げられる。
【0069】
[製造方法]
本発明の水中油型乳化組成物は、公知の乳化製剤の製造方法に従って製造することができる。本発明の水中油型乳化組成物の製造方法として、例えば、以下に示す方法が挙げられる。先ず、(A)成分、(B)成分、(D)成分、並びに、必要に応じて添加される他の油性基剤及び油溶性成分を混合して油相用組成物を調製する。油相用組成物の調製時の温度としては、好ましくは加温条件が挙げられ、より好ましくは、60~90℃、好ましくは70~87℃、より好ましくは75~85℃が挙げられる。別途、(C)成分、水、並びに必要に応じて添加される他の水性基剤及び水溶性成分を混合して水相用組成物を調製する。水相用組成物の調製時の温度としては、好ましくは加温条件が挙げられ、より好ましくは、60~90℃、好ましくは70~87℃、より好ましくは75~85℃が挙げられる。次いで、得られた水相用組成物と油相用組成物とを混合し、ホモジナイザー等の乳化手法によって乳化させることにより、本発明の水中油型乳化組成物が得られる。混合時の温度としては、好ましくは加温条件が挙げられ、より好ましくは、60~90℃、好ましくは70~87℃、より好ましくは75~85℃が挙げられる。
【0070】
また、乳化における撹拌速度としては、例えば、上記の平均粒子径のミセルが得られる撹拌速度を選択することができ、具体的には、1000~6000rpm、好ましくは2000~5000rpm、より好ましくは2000~4000rpmが挙げられる。
【実施例0071】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
試験例
表1及び2に示す組成の水中油型乳化組成物を以下の手順で製造した。(1)表1及び2において「油」が付された成分(油性基剤及び油溶性成分)を混合し、均一になるまで80℃条件下で攪拌し、油相用組成物を調製した。(2)表1及び2において「水」が付された成分(水性基剤及び水溶性成分)を混合し、均一になるまで80℃条件下で攪拌し、水相用組成物を調製した。(3)油相用組成物に水相用組成物を80℃で添加し、均一になるまで3000rpmで混合し、同じ攪拌速度で攪拌しながら35℃になるまで自然冷却した。これによって、水中油型乳化組成物を得た。
【0073】
得られた水中油型乳化組成物を再び50℃まで加熱し、50℃で1か月保管した。保管前後におけるミセルの平均粒子径(レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を指す。)を、SALD 2000J(島津製作所)を用いて測定し、保管前の平均粒子径を100%とした場合の、保管後の平均粒子径の減少率(%)を測定した。減少率を以下に基づいて分類し、粒子径の減少抑制スコアを導出した。なお、表1及び2の水中油型乳化組成物の平均粒子径は、2μm~3μmであった。結果を表1及び2に示す。
【0074】
<粒子径の減少抑制スコア>
5:0.5%未満
4:0.5%以上1%未満
3:1%以上5%未満
2:5%以上10%未満
1:10%以上
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
表1及び2に示す通り、いずれの水中油型乳化組成物も、同量のビタミンAエステルを含み、非イオン性界面活性剤の配合量も同量で、HLB加重平均も同等であるにもかかわらず、(A)~(D)成分を含む場合(実施例1~4)に、ミセルの粒子径の減少抑制効果が顕著に向上することが判った。