(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089663
(43)【公開日】2024-07-03
(54)【発明の名称】抗菌抗ウィルス性組成物、抗菌抗ウィルス性布帛及び抗菌抗ウィルス性フィルム
(51)【国際特許分類】
A01N 55/02 20060101AFI20240626BHJP
C09D 5/14 20060101ALI20240626BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240626BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240626BHJP
A01N 25/26 20060101ALI20240626BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240626BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
A01N55/02
C09D5/14
C09D7/63
C09D201/00
A01N25/26
A01P3/00
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215172
(22)【出願日】2023-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2022204873
(32)【優先日】2022-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(72)【発明者】
【氏名】河中 俊介
(72)【発明者】
【氏名】藤田 幸介
(72)【発明者】
【氏名】中村 厚
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏明
【テーマコード(参考)】
4H011
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AA03
4H011AA04
4H011BA05
4H011BB16
4H011BC01
4H011DA04
4J002BB001
4J002BC021
4J002BC061
4J002BD031
4J002BF021
4J002BG021
4J002BL011
4J002BN151
4J002CC021
4J002CC161
4J002CC181
4J002CD001
4J002CF001
4J002CF211
4J002CK021
4J002CN011
4J002CP031
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4J002FD317
4J038CC021
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4J038JA17
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4J038KA02
4J038KA06
4J038KA09
4J038MA07
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA02
4J038PA19
4J038PB01
4J038PB02
4J038PB04
4J038PB06
4J038PB09
4J038PC08
4J038PC10
(57)【要約】
【課題】本開示は、塗布対象となる物品の透明性の低下を抑制し、優れた乳化安定性、優れた相溶性、高い抗菌性及び抗ウィルス性を発揮する、抗菌抗ウィルス性組成物、並びに抗菌抗ウィルス性布帛及び抗菌抗ウィルス性フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】本開示は、ハンセン溶解度パラメーターの水素結合項dHが18.0以上の水系溶媒(A)に対して難溶性を示す金属化合物(B)及び前記金属化合物(B)に対して可溶性を示す有機溶媒(C)を含有するコア部と、
HLB値が11~18の範囲の界面活性剤(D)を含有するシェル部と、を備えたコアシェル構造体を有し、
以下の式(1)を満たすことを特徴にする、抗菌抗ウィルス性組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンセン溶解度パラメーター(HSP値)の水素結合項dHが18.0以上の水系溶媒(A)と、
前記水系溶媒(A)に対して難溶性を示す金属化合物(B)と、
前記金属化合物(B)に対して可溶性を示す有機溶媒(C)と、
HLB値が11~18の範囲の界面活性剤(D)と、を含有し、かつ以下の式(1)を満たすことを特徴にする、抗菌抗ウィルス性組成物。
【数1】
(上記式(1)中、dHCは、前記有機溶媒(C)のハンセン溶解度パラメーター(HSP値)の水素結合項dHを表し、dHAは、前記水系溶媒(A)のハンセン溶解度パラメーター(HSP値)の水素結合項dHを表す。)
【請求項2】
前記水系溶媒(A)30~89.5質量%と、
前記金属化合物(B)5~35質量%と、
前記有機溶媒(C)5~40質量%と、
前記界面活性剤(D)0.5~10質量%と、を含有する、請求項1に記載の抗菌抗ウィルス性組成物。
【請求項3】
前記金属化合物(B)及び前記有機溶媒(C)を含有するコア部と、
前記界面活性剤(D)を含有するシェル部と、を備えたコアシェル構造体を有する、請求項1又は2に記載の抗菌抗ウィルス性組成物。
【請求項4】
前記金属化合物(B)は、脂肪酸金属塩、ヘテロ原子含有配位子と金属イオンとの金属錯体及びヘテロ原子含有配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体からなる群から選択される1種以上であり、かつ前記脂肪酸金属塩の金属、前記ヘテロ原子含有配位子と金属イオンとの金属錯体の金属、及び前記ヘテロ原子含有配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体の金属が、それぞれ独立して、マグネシウム、マンガン、コバルト、イットリウム、鉛、ビスマス及びランタノイドからなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載の抗菌抗ウィルス性組成物。
【請求項5】
前記金属化合物(B)の金属量が、抗菌抗ウィルス性組成物の全固形分に対して、0.01~50質量%である、請求項1又は2に記載の抗菌抗ウィルス性組成物。
【請求項6】
水性樹脂分散体と、請求項1又は2に記載の抗菌抗ウィルス性組成物とを含有する抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物。
【請求項7】
布帛と
前記布帛に添着される、請求項6に記載の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物を原料とする塗布層と、を有する、抗菌抗ウィルス性布帛。
【請求項8】
基材フィルムと
前記基材フィルムの少なくとも一方の面に設けられる、請求項6の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物を原料とする塗布層と、を有する、抗菌抗ウィルス性フィルム。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の抗菌抗ウィルス性組成物に含まれる金属化合物(B)を含有しないブランクフィルムとのヘーズ値の差が10%以下である、請求項8に記載の抗菌抗ウィルス性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗菌抗ウィルス性組成物、抗菌抗ウィルス性布帛及び抗菌抗ウィルス性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
生活空間において人の手に触れる製品(繊維・フィルム・塗装板)に抗菌性又は抗ウィルス性を付与する取り組みは以前から行われているが、新型コロナウィルスの発生により抗ウィルス性への関心がより一層高まっている。そのため、人の手に触れる製品に対して、病原菌又はウィルスへの感染の可能性を低減する「抗菌抗ウィルス」化へのニーズが世界的に拡大している。
例えば、特許文献1には、ベヘン酸銀等の有機銀系抗菌剤とポリハロゲン化合物等の着色防止剤とを含む抗菌性組成物、及び当該組成物を含む成形体の技術が記載されている。そして、当該特許文献1の技術によれば、優れた抗菌性を有しながらも、適用時又は成形時におけるこれら樹脂成分の化学的変化を抑制し、樹脂組成物又は樹脂成形品の変色を防止もしくは軽減するとともに、抗菌効果の低下をも防止できるとしている。
また、特許文献2には、金属超微粒子の形成に用いられる原子量50~200の金属を含む脂肪酸金属塩、及び当該脂肪酸金属塩が樹脂中で熱分解する温度以上且つ樹脂の熱劣化温度以下の温度で加熱することにより、樹脂中で脂肪酸金属塩から金属超微粒子を生成する技術が記載されている。そして、当該特許文献2の技術によれば、金属超微粒子が有する優れた吸着性、抗菌性、微小蛋白質不活性化等の効果をより効果的に発現できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-248125号公報
【特許文献2】特開2010-121145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の有機銀系抗菌剤を含む抗菌性組成物及び上記特許文献2に記載の脂肪酸銀等の銀化合物を用いた技術では、所望の樹脂等に対して抗菌性組成物又は銀化合物を添加又は基材に対して塗布することにより、抗菌性を確保している。しかし、特許文献1の技術では、使用する有機銀系抗菌剤の化学構造と配合対象となる樹脂との相溶性により有機銀系抗菌剤の分散度が変化するため、樹脂の種類によっては、有機銀系抗菌剤が凝集するいわゆる相分離を起こすという問題が残る。また、当該特許文献2に代表される従来技術の銀化合物の多くは粒子状の材料を使用するため、塗布対象となる物品の透明性が損なわれるという課題が生じる。さらに、粒子状の金属材料を形成しない、抗菌性又は抗ウィルス性を占めす金属化合物を含有する水溶液状の組成物であっても、当該水溶液状の組成物の配合対象物となる樹脂等の材料自体の親水性・疎水性の状況によって、当該樹脂と水溶液状の組成物との混和性が不良となり、結果として相分離が生じたり、あるいは抗菌性又は抗ウィルス性が低下する問題が生じる。
【0005】
そこで、本開示は、塗布対象となる物品の透明性の低下を抑制し、優れた乳化安定性、優れた相溶性、高い抗菌性及び抗ウィルス性を発揮する、抗菌抗ウィルス性組成物、並びに抗菌抗ウィルス性布帛及び抗菌抗ウィルス性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、特定の組成を用いることにより、塗布対象となる物品の透明性の低下を抑制し、優れた乳化安定性、優れた相溶性、高い抗菌性及び抗ウィルス性を発現させることを見出し、以下の[1]~[10]のいずれかに示す本発明を完成するに至った。
【0007】
[1]ハンセン溶解度パラメーター(HSP値)の水素結合項dHが18.0以上の水系溶媒(A)と、
前記水系溶媒(A)に対して難溶性を示す金属化合物(B)と、
前記金属化合物(B)に対して可溶性を示す有機溶媒(C)と、
HLB値が11~18の範囲の界面活性剤(D)と、を含有し、かつ以下の式(1)を満たすことを特徴にする、抗菌抗ウィルス性組成物。
【数1】
(上記式(1)中、dHCは、前記有機溶媒(C)のハンセン溶解度パラメーター(HSP値)の水素結合項dHを表し、dHAは、前記水系溶媒(A)のハンセン溶解度パラメーター(HSP値)の水素結合項dHを表す。)
【0008】
[2]前記水系溶媒(A)30~89.5質量%と、
前記金属化合物(B)5~35質量%と、
前記有機溶媒(C)5~40質量%と、
前記界面活性剤(D)0.5~10質量%と、を含有する、[1]に記載の抗菌抗ウィルス性組成物。
【0009】
[3]ハンセン溶解度パラメーター(HSP値)の水素結合項dHが18.0以上の水系溶媒(A)に対して難溶性を示す金属化合物(B)及び前記金属化合物(B)に対して可溶性を示す有機溶媒(C)を含有するコア部と、
HLB値が11~18の範囲の界面活性剤(D)を含有するシェル部と、を備えたコアシェル構造体を有し、
以下の式(1)を満たすことを特徴にする、抗菌抗ウィルス性組成物。
【数2】
(上記式(1)中、dHCは、前記有機溶媒(C)のハンセン溶解度パラメーター(HSP値)の水素結合項dHを表し、dHAは、前記水系溶媒(A)のハンセン溶解度パラメーター(HSP値)の水素結合項dHを表す。)
【0010】
[4]前記金属化合物(B)及び前記有機溶媒(C)を含有するコア部と、
前記界面活性剤(D)を含有するシェル部と、を備えたコアシェル構造体を有する、[1]又は[2]に記載の抗菌抗ウィルス性組成物。
【0011】
[5]前記金属化合物(B)は、脂肪酸金属塩、ヘテロ原子含有配位子と金属イオンとの金属錯体及びヘテロ原子含有配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体からなる群から選択される1種以上であり、かつ前記脂肪酸金属塩の金属、前記ヘテロ原子含有配位子と金属イオンとの金属錯体の金属、及び前記ヘテロ原子含有配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体の金属は、それぞれ独立して、マグネシウム、マンガン、コバルト、イットリウム、鉛、ビスマス及びランタノイドからなる群から選択される1種又は2種以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の抗菌抗ウィルス性組成物。
【0012】
[6]前記金属化合物(B)の金属量が、抗菌抗ウィルス性組成物の全固形分に対して、0.01~50質量%である、[1]~[5]のいずれかに記載の抗菌抗ウィルス性組成物。
【0013】
[7]水性樹脂分散体と、[1]~[6]のいずれかに記載の抗菌抗ウィルス性組成物とを含有する、抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物。
【0014】
[8]布帛と、前記布帛に添着される、[7]に記載の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物を原料とする塗布層と、を有する、抗菌抗ウィルス性布帛。
【0015】
[9]基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくとも一方の面に設けられる、[7]に記載の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物を原料とする塗布層と、を有する、抗菌抗ウィルス性フィルム。
【0016】
[10][1]又は[2]に記載の抗菌抗ウィルス性組成物に含まれる金属化合物(B)を含有しないブランクフィルムとのヘーズ値の差が10%以下である、[9]に記載の抗菌抗ウィルス性フィルム。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、塗布対象となる物品の透明性の低下を抑制し、優れた乳化安定性、優れた相溶性、高い抗菌性及び抗ウィルス性を発揮する、抗菌抗ウィルス性組成物、並びに抗菌抗ウィルス性布帛及び抗菌抗ウィルス性フィルムを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施の形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明するが、本開示は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[抗菌抗ウィルス性組成物]
本開示の抗菌抗ウィルス性組成物は、ハンセン溶解度パラメーターの水素結合項dHが18.0以上の水系溶媒(A)と、金属化合物(B)と、前記金属化合物(B)に対して可溶性を示す有機溶媒(C)と、HLB値が11~18の範囲の界面活性剤(D)と、を必須に含有する。そして、前記金属化合物(B)は、ハンセン溶解度パラメーターの水素結合項dHが18.0以上の水系溶媒(A)に対して難溶性を示す。また、本開示の抗菌抗ウィルス性組成物において、以下の式(1)を満たす。
【数3】
(上記式(1)中、dHCは、前記有機溶媒(C)のハンセン溶解度パラメーターの水素結合項dH(HSP値)を表し、dHAは、前記水系溶媒(A)のハンセン溶解度パラメーターの水素結合項dH(HSP値)を表す。)
さらに、本開示の抗菌抗ウィルス性組成物は、前記金属化合物(B)及び前記有機溶媒(C)を含有するコア部と、前記界面活性剤(D)を含有するシェル部とを備えたコアシェル構造体を含有することが好ましい。
これにより、塗布対象となる物品の透明性の低下を抑制し、優れた乳化安定性、優れた相溶性、高い抗菌性及び抗ウィルス性を発揮する。抗菌抗ウィルス性組成物が水系溶媒(A)を有する液状の組成物であると、対象物に対して抗菌抗ウィルス性組成物の被覆層の形成が容易になりうる。
【0019】
本開示の抗菌抗ウィルス性組成物の別の特定方法としては、上記の[1]に記載した抗菌抗ウィルス性組成物の替わりに、[3]に記載した抗菌抗ウィルス性組成物であってもよい。具体的には、本開示の抗菌抗ウィルス性組成物は、ハンセン溶解度パラメーターの水素結合項dHが18.0以上の水系溶媒(A)(以下、単に水系溶媒(A)と称する。)(例えば、30~89.5質量%)と、前記水系溶媒(A)に対して難溶性を示す金属化合物(B)(以下、単に金属化合物(B)と称する。(例えば、5~35質量%)と、前記金属化合物(B)に対して可溶性を示す有機溶媒(C)(以下、単に有機溶媒(C)と称する。)(例えば、5~40質量%)と、HLB値が11~18の範囲の界面活性剤(D)(以下、単に界面活性剤(D)と称する。)(例えば、0.5~10質量%)と、を含有する。そして、前記抗菌抗ウィルス性組成物において、以下の式(1)を満たす。
【数4】
(上記式(1)中、dHCは、前記有機溶媒(C)のハンセン溶解度パラメーターの水素結合項dH(HSP値)を表し、dHAは、前記水系溶媒(A)のハンセン溶解度パラメーターの水素結合項dH(HSP値)を表す。)
あるいは、本開示の抗菌抗ウィルス性組成物は、ハンセン溶解度パラメーター(HSP値)の水素結合項dHが18.0以上の水系溶媒(A)に対して難溶性を示す金属化合物(B)及び前記金属化合物(B)に対して可溶性を示す有機溶媒(C)を含有するコア部と、HLB値が11~18の範囲の界面活性剤(D)を含有するシェル部と、を備えたコアシェル構造体を有し、上記式(1)を満たす。
これにより、塗布対象となる物品の透明性の低下を抑制し、優れた乳化安定性、優れた相溶性、高い抗菌性及び抗ウィルス性を発揮する。特に、コアシェル構造体を有することにより、より優れた、乳化安定性及び相溶性を発揮しうる。
【0020】
(ハンセン溶解度パラメーター(HSP値))
本実施形態において、上記式(1)に示す通り、水系溶媒(A)のハンセン溶解度パラメーターの水素結合項dHAと、有機溶媒(C)のハンセン溶解度パラメーターの水素結合項dHCとの差の絶対値は、30.0以上であり、32.0以上であることがより好ましく、32.0以上42.3以下であることがさらに好ましく、35.0以上42.3以下であることがよりさらに好ましく、40.0以上42.3以下であることが特に好ましい。
水系溶媒(A)のハンセン溶解度パラメーターの水素結合項dHAと、有機溶媒(C)のハンセン溶解度パラメーターの水素結合項dHCとの差の絶対値が、30以上であると、優れた乳化安定性を示し、例えばコアシェル構造体が安定化しやすい、あるいは金属化合物(B)が水系溶媒(A)に溶出しにくい。
ハンセン溶解度パラメーター(Hansen solubility parameter,HSP)は、物質の溶
解性の予測に用いられる値である。HSPは「分子間の相互作用が似ている2つの物質は、互いに溶解しやすい」との考えに基づいている。ハンセン溶解度パラメーター(HSP値)〔単位:(J/cm
3)
1/2〕は以下の3つのパラメーターで構成されている。
・d:分子間の分散力によるエネルギー
・dP:分子間の双極子相互作用によるエネルギー(双極子相互作用項)
・dH:分子間の水素結合によるエネルギー(水素結合項)
上記3つのパラメーター(d,dP,dH)は、3次元空間(ハンセン空間)における座標とみなすことができ、各物質のハンセン溶解度パラメーター(HSP値)をD〔単位:(J/cm
3)
1/2〕とすると、D
2=d
2+dP
2+dH
2の関係式が成り立つ。そして、2つの物質のHSP値をハンセン空間内に置いたとき、2点間距離(Ra値)が近ければ近いほど互いに溶解しやすいことを示している。すなわち、2つの物質のハンセン溶解度パラメーターの差は、それら2つの物質の親水性及び疎水性の状態が似ていることを示している。
上記Ra値は、ハンセン溶解度パラメーターにおける分散力項(d)と極性項(dP)と水素結合項(dH)とから求められる、2つの物質のHSP間距離を示す。水系溶媒(A)の分散力項(dA)、極性項(dPA)及び水素結合項(dHA)とし、有機溶媒(C)の分散力項をdCとし、極性項をdPCとし、水素結合項をdHCとすると、有機溶媒(C)のHSP値と、水系溶媒(A)のHSP値との距離(Ra値)は、下記式(2)より求められる。
【数5】
本開示では、ハンセン溶解度パラメーターにおける水素結合項(dH)の差が、優れた乳化安定性に大きな影響を与えることを見出した。
【0021】
本実施形態における界面活性剤(C)のハンセン溶解度パラメーターは、例えば、以下の方法(i)及び(ii)により算出できる。
(i)透明スクリュー管瓶(ねじ口瓶、容量:20cm3)に、被測定対象たる界面活性剤(C)50mg(0.05g)と、ハンセン溶解度パラメーターが既知の有機溶媒9.95gとを仕込み(界面活性剤(C)濃度:0.5質量%)、高速振とう機(キュートミキサー)で30分間振盪混合した後、25℃の環境下で24時間静置する。
(ii)24時間静置後の目視観察により、界面活性剤(C)の全量溶解が確認できた場合にはその有機溶剤を「良溶媒」と判定し、溶解残がある等全量溶解が確認できなかった場合にはその有機溶剤を「貧溶媒」と判定する。
前記有機溶剤と、それに対応する判定結果「良溶媒」あるいは「貧溶媒」を、コンピュータソフトウェアである「Hansen Solubility Parameters in Practice 4th Edition 4.1.07(HSPiP)」に入力して、被測定対象たる界面活性剤(C)のハンセン溶解度パラメーターを算出する。
なお、界面活性剤(C)のハンセン溶解度パラメーターの算出に使用する有機溶剤のハンセン溶解度パラメーターは、上記コンピュータソフトウェアである「Hansen Solubility Parameters in Practice 4th Edition 4.1.07(HSPiP)」に収録された値をそのまま使用することができるため、ハンセン溶解度パラメーターが既知とできる。
【0022】
本実施形態の水性溶媒(A)のハンセン溶解度パラメーターは、上記コンピュータソフトウェアである「Hansen Solubility Parameters in Practice 4th Edition 4.1.07(HSPiP)」に収録された値をそのまま使用することができる。また、水性溶媒(A)が混合物である場合、既知の各構成成分のHSP値の3つのパラメーターを単位ベクトルと考え、組成比による合成ベクトルとして算出することができる。その他、既知の方法、ハンセン球をプロットによる方法、例えば手順(I):対象となる試料を、SP値が既知の溶媒に添加して、SP値が既知の溶媒に前記試料が溶解したか否かを判別する溶解試験を行う。手順(II):次いで、手順(I)の溶解試験を行った溶媒のSP値を三次元プロットする。手順(III):手順(I)及び手順(II)の操作を溶媒15~20種類で実施する。手順(IV):前記試料が溶解した溶媒の座標を含み、かつ溶解しなかった溶媒の座標は含まない球を算出することにより、当該球の中心座標がHansenのSP値を表し、原点からの距離がHildebrandのSP値を表すことにより、Hildebrand法(Hansen法を含む)を用いた溶解度パラメーターを算出することができる。
同様に、本実施形態の有機溶媒(C)のハンセン溶解度パラメーターは、上記コンピュータソフトウェアである「Hansen Solubility Parameters in Practice 4th Edition 4.1.07(HSPiP)」に収録された値をそのまま使用することができる。また、有機溶媒(C)が混合物である場合、水性溶媒(A)が混合物である場合と同様に、既知の各構成成分のHSP値の3つのパラメーターを単位ベクトルと考え、組成比による合成ベクトルとして算出した。同様に他の既知の方法で算出することができる。
【0023】
(コアシェル構造体)
本実施形態のコアシェル構造体は、疎水性部分を核として複数の界面活性剤(D)を構成する高分子鎖が会合することにより、所定の粒子径(例えば、0.1μm~50μm程度)の粒子が形成された高分子ミセル構造を有し、内部である疎水部分に金属化合物(B)及び有機溶媒(C)が内包されている。
本実施形態の抗菌抗ウィルス性組成物に含まれる抗菌抗ウィルス能を示す成分(金属化合物(B)等)がこのような高分子ミセル構造を有することにより、多数の樹脂や種々の極性溶媒においてより高い相溶性を示す。また、高分子ミセル構造によりコア部分が外部雰囲気から遮断されているため、金属化合物(B)中の金属の溶出や化学反応が起こりにくく、結果として高い抗菌抗ウィルス能を長期間維持できると考えられる。
本実施形態の抗菌抗ウィルス性組成物が、金属化合物(B)及び有機溶媒(C)を含有するコア部と、界面活性剤(D)を含有するシェル部とを備えたコアシェル構造体を含有する場合、前記コアシェル構造体の平均一次粒子径は、0.1~50μmであることが好ましく、0.2~30μmであることがより好ましく、0.24~20μmであることがさらに好ましく、0.28~10μmであることがよりさらに好ましく、0.3~5μmであることがよりさらに好ましく、0.5~3μmであることがより特により好ましい。
前記コアシェル構造体の平均一次粒子径が上記範囲であると、当該コアシェル構造体が沈降しにくいため、より優れた相溶性を示す。当該コアシェル構造体の平均一次粒子径を上記範囲に制御する方法としては、界面活性剤(D)の重量平均分子量(Mw)、有機溶媒(C)の種類、界面活性剤(D)と有機溶媒(C)との相溶性等を調整すればよい。
本明細書におけるコアシェル構造体の平均一次粒子径の測定方法は、動的光散乱法(DLS)や顕微鏡観察等が挙げられるが、本明細書では、動的光散乱法の一つである光子相関法による粒度分布計(株式会社島津製作所、SZ-100)を用いて算出している。
具体的には、抗菌抗ウィルス性組成物を水で10倍に希釈し、溶媒の屈折率を水(1.333)、試料の屈折率をマルチポリスチレン(1.590-0.000i)と設定して、粒度分布測定を行い、メジアン径を平均一次粒子径とした。
【0024】
本開示の抗菌抗ウィルス性組成物が水系溶媒(A)、金属化合物(B)、有機溶媒(C)、及び界面活性剤(D)を含有する態様において、前記抗菌抗ウィルス性組成物の総量(100質量%)に対して、水系溶媒(A)、金属化合物(B)、有機溶媒(C)及び界面活性剤(D)の合計量が、60~100質量%占めることが好ましく、70~99質量%占めることがより好ましく、80~99質量%占めることがさらに好ましく、85~99質量%占めることがよりさらに好ましく、90~99質量%占めることが特に好ましい。
本開示の抗菌抗ウィルス性組成物が金属化合物(B)、有機溶媒(C)、及び界面活性剤(D)を含有する態様において、前記抗菌抗ウィルス性組成物の総量(100質量%)に対して、金属化合物(B)、有機溶媒(C)及び界面活性剤(D)の合計量が、5質量%以上占めることが好ましく、5~90質量%占めることがより好ましく、5~80質量%占めることがさらに好ましく、8~80質量%占めることがよりさらに好ましく、10~75質量%占めることが特に好ましい。
本開示の抗菌抗ウィルス性組成物が、金属化合物(B)及び界面活性剤(D)を含有する態様において、前記抗菌抗ウィルス性組成物の総量(100質量%)に対して、金属化合物(B)及び界面活性剤(D)の合計量が、3質量%以上占めることが好ましく、3~70質量%占めることがより好ましく、3~60質量%占めることがさらに好ましく、3~50質量%占めることがよりさらに好ましく、3~45質量%占めることが特に好ましい。
本開示の抗菌抗ウィルス性組成物が水系溶媒(A)、金属化合物(B)、有機溶媒(C)、界面活性剤(D)及び任意の添加成分(E)を含有する態様において、前記抗菌抗ウィルス性組成物の総量(100質量%)に対して、水系溶媒(A)、金属化合物(B)、有機溶媒(C)、界面活性剤(D)及び任意の添加成分(E)の合計量が、60~100質量%占めることが好ましく、70~100質量%占めることがより好ましく、80~100質量%占めることがさらに好ましく、85~100質量%占めることがよりさらに好ましく、90~100%占めることが特に好ましい。
本開示の抗菌抗ウィルス性組成物が金属化合物(B)、有機溶媒(C)、界面活性剤(D)及び任意の添加成分(E)を含有する態様において、前記抗菌抗ウィルス性組成物の総量(100質量%)に対して、金属化合物(B)、有機溶媒(C)、界面活性剤(D)及び任意の添加成分(E)の合計量が、5質量%以上占めることが好ましく、5~95質量%占めることがより好ましく、5~85質量%占めることがさらに好ましく、8~85質量%占めることがよりさらに好ましく、10~80質量%占めることが特に好ましい。
本開示の抗菌抗ウィルス性組成物が金属化合物(B)、界面活性剤(D)及び任意の添加成分(E)を含有する態様において、前記抗菌抗ウィルス性組成物の総量(100質量%)に対して、金属化合物(B)、界面活性剤(D)及び任意の添加成分(E)の合計量が、3質量%以上占めることが好ましく、3~75質量%占めることがより好ましく、3~65質量%占めることがさらに好ましく、3~55質量%占めることがよりさらに好ましく、3~50質量%占めることが特に好ましい。
本開示の抗菌抗ウィルス性組成物が金属化合物(B)及び有機溶媒(C)を含有する態様において、前記抗菌抗ウィルス性組成物の総量(100質量%)に対して、金属化合物(B)及び有機溶媒(C)の合計量が、3質量%以上占めることが好ましく、3~75質量%占めることがより好ましく、3~65質量%占めることがさらに好ましく、3~55質量%占めることがよりさらに好ましく、3~50質量%占めることが特に好ましい。
【0025】
以下、本明細書における用語を説明した後、本実施形態の抗菌抗ウィルス性組成物に含有されうる各成分である、水系溶媒(A)、金属化合物(B)、有機溶媒(C)、及び界面活性剤(D)、並びに必要により配合される任意の添加成分(E)について説明する。
【0026】
(用語)
本開示における「抗菌」とは、菌の数を減少させる効果、菌の増殖を抑制する効果等を包含する意味である。同様に、本発明において「抗ウィルス」とは、ウィルスの数を減少させる効果、ウィルスを不活化させる効果、ウィルスの感染性を低減させる効果等を包含する意味である。
本開示において抗菌の対象となる菌は特に限定されず、細菌及び真菌のいずれでもよい。細菌としては、大腸菌、緑膿菌、サルモネラ菌、モラクセラ菌、レジオネラ菌等のグラム陰性菌;黄色ブドウ球菌、クロストリジウム属細菌等のグラム陽性菌等が挙げられる。真菌としては、カンジダ菌、ロドトルラ、パン酵母等の酵母類;赤カビ、黒カビ等のカビ類が挙げられる。
本開示において抗ウィルスの対象となるウィルスは特に限定されず、公知のエンベロープウィルス(エンベロープを有するウィルス)及びノンエンベロープウィルス(エンベロープを有さないウィルス)のいずれでもよい。
上記エンベロープウィルスとしては、例えば、コロナウィルス、インフルエンザウィルス、風疹ウィルス、エボラウィルス、麻疹ウィルス、水痘・帯状疱疹ウィルス、ヘルペスウィルス、ムンプスウィルス、アルボウィルス、RSウィルス、SARSウィルス、肝炎ウィルス(例えば、A型肝炎ウィルス、B型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルス、D型肝炎ウィルス、E型肝炎ウィルス等)、黄熱ウィルス、エイズウィルス、狂犬病ウィルス、ハンタウィルス、デングウィルス、ニパウィルス、リッサウィルス等が挙げられる。
上記ノンエンベロープウィルスとしては、例えば、アデノウィルス、ノロウィルス、ロタウィルス、ヒトパピローマウィルス、ポリオウィルス、エンテロウィルス、コクサッキーウィルス、ヒトパルボウィルス、脳心筋炎ウィルス、ポリオーマウィルス、BKウィルス、ライノウィルス、ネコカリシウィルス等が挙げられる。
本開示における「金属化合物(B)に対して可溶性を示す」とは、後述の実施例の欄に記載の溶解性の評価方法により、1gの金属化合物(B)が10ml以下の溶媒で溶解する場合を「金属化合物(B)に対して可溶性を示す」という。本開示における「水系溶媒(A)に対して難溶性を示す」とは、後述の実施例の欄に記載の溶解性の評価方法により1gの物質を溶かすのに100ml以上の水系溶媒(A)が必要となる場合を「水系溶媒(A)に対して難溶性を示す」という。
本実施形態の抗菌抗ウィルス性組成物を、布帛又は基材の表面に塗布層を形成する、いわゆるコーティング用の組成物として使用する場合において、当該抗菌抗ウィルス性組成物を抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物と称する。そして、本開示の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物は、水系溶媒(A)と、金属化合物(B)と、有機溶媒(C)と、界面活性剤(D)と、後述の水性樹脂分散体とを必須に含有する。なお、当該抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物を原料とする塗布層においては溶媒類が揮発しているため、当該塗布層は、金属化合物(B)と、界面活性剤(D)とを含有する。
また、本実施形態の抗菌抗ウィルス性組成物を、当該抗菌抗ウィルス性組成物から硬化物又は成形体を形成する、いわゆる硬化用の組成物として使用する場合において、抗菌抗ウィルス性組成物を抗菌抗ウィルス性硬化用組成物と称する。そして、本開示の抗菌抗ウィルス性硬化用組成物は、水系溶媒(A)と、金属化合物(B)と、有機溶媒(C)と、界面活性剤(D)と、後述の水性樹脂分散体とを必須に含有する。なお、当該抗菌抗ウィルス性硬化用組成物を原料とする硬化物又は成形体においては溶媒類が揮発しているため、当該硬化物又は成形体は、金属化合物(B)と、界面活性剤(D)とを含有する。
【0027】
(水系溶媒(A))
本明細書における水系溶媒(A)は、水又は水を主成分とする溶媒をいう。そのため、水系溶媒(A)は、水と水以外の成分(有機溶媒、緩衝溶液、塩等)を含有してもよい。また、「水を主成分とする溶媒」とは、水系溶媒(A)中の水の含有量が、水系溶媒(A)の総量に対して、50質量%以上含有する溶媒であればよい。
本実施形態の水系溶媒(A)は、水又は水を含有する水溶液であり、かつ有機溶媒(C)との関係性で選択される。具体的には、以下の式(1)を満たすように水系溶媒(A)が選択されうる。
【数6】
(上記式(1)中、dHCは、前記有機溶媒(C)のハンセン溶解度パラメーター(HSP値)の水素結合項dHを表し、dHAは、前記水系溶媒(A)のハンセン溶解度パラメーター(HSP値)の水素結合項dHを表す。)
本実施形態の水系溶媒(A)として使用可能な水としては、純水、超純水、RO水(逆浸透膜を通した水)、脱イオン水(イオン交換樹脂等によりイオンを除去した水)、蒸留水(蒸留器で蒸留した水)等が含まれる。
また、本実施形態の水系溶媒(A)において水以外に含まれる成分としては、非限定的な例示として、アセトン等の炭素原子数1~3のケトン類、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素原子数1~4の低級アルコール類、アセトニトリル、プロピオニトリル等の炭素原子数2~3のニトリル類、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類といった水と相溶する有機溶媒と水との混合物、ビス(シュウ酸)三水素カリウム水溶液、フタル酸水素カリウム水溶液、リン酸ニ水素カリウム・リン酸水素ニナトリウム水溶液、四ホウ酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム・炭酸ナトリウム水溶液等の緩衝液、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化アンモニウム等の無機・有機塩水溶液、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトロース、トレオース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、フコース、デオキシ糖、アミノ糖、ウロン酸、硫黄糖、アルジトール、サイクリトール、ウロース、分岐糖、ブドウ糖、澱粉、ヘパリン、ヘパラン硫酸等の、単糖、オリゴ糖、多糖を含む糖類水溶液、タンパク質水溶液、DNA、RNA水溶液、液体培地、さらにはそれらの混合物を挙げることができる。また水系溶媒(A)中に溶解せず分散するものを含んでいてもよく、非限定的に例示すると、クレイ等の鉱物類、金ナノ粒子等の金属微粒子、ポリスチレンビーズ、ラテックス粒子等の高分子微粒子、動物細胞、植物細胞、微生物、ウィルス等、又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0028】
本実施形態の抗菌抗ウィルス性組成物が水系溶媒(A)を含有する場合、当該水系溶媒(A)の含有量の上限は、抗菌抗ウィルス性組成物の総量(100質量%)に対して、95質量%以下、93質量%以下、90質量%以下、89.5質量%以下、88質量%以下及び87質量%以下の順で好ましい。前記水系溶媒(A)の含有量の下限は、抗菌抗ウィルス性組成物の総量(100質量%)に対して、20質量%以上、22質量%以上、24質量%以上、25質量%以上、26質量%以上及び30質量%以上の順で好ましい。
前記水系溶媒(A)の含有量の上限及び下限は任意に組み合わせできる。
水系溶媒(A)の含有量の範囲が、25~80質量%であると、水乳化物の貯蔵安定性の観点で好ましい。
さらに、本実施形態の抗菌抗ウィルス性組成物において、前記水系溶媒(A)の含有量は、水系溶媒(A)、金属化合物(B)、有機溶媒(C)、及び界面活性剤(D)の合計100質量部に対して、前記水系溶媒(A)の含有量の下限値は、30質量部以上が好ましく、35質量部以上がより好ましく、40質量部以上がさらに好ましい。また、前記水系溶媒(A)の含有量の上限値は、89.5質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、70質量部以下がさらに好ましい。
【0029】
本実施形態の水系溶媒(A)のpHは、3~11であることが好ましく、4~9であることがより好ましく、6~8であることがさらに好ましい。
本明細書におけるpHの測定方法は、ガラス電極pHメータ(例えば、製品名「卓上型pHメータ F-72」、(株)堀場製作所製)を用いて測定される。
また、必要により、水系溶媒(A)のpHを酸又はアルカリを添加して調整してもよく。当該pHを調整するための酸としては、例えば、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸、又は、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。一方、pHを調整するためのアルカリとしては、例えば、有機塩基(例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン等)又は無機塩基いずれでもよい。pHを調整するために用いる無機塩基としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウムでありうる。
【0030】
本実施形態の水系溶媒(A)のハンセン溶解度パラメーターの水素結合項dHは、30~42.3(J/cm3)1/2であることが好ましく、32~42.3(J/cm3)1/2であることがより好ましく、40.0~42.3(J/cm3)1/2であることがさらに好ましい。
水系溶媒(A)のハンセン溶解度パラメーターの水素結合項dHが上記範囲であると、水系溶媒(A)のハンセン溶解度パラメーターの水素結合項dHAと、有機溶媒(C)のハンセン溶解度パラメーターの水素結合項dHCとの差の絶対値を十分に取ることができ、優れた乳化安定性を示し、例えばコアシェル構造体が安定化しやすい、あるいは金属化合物(B)が水系溶媒(A)に溶出しにくいとの観点で好ましい。
【0031】
(金属化合物(B))
本実施形態の金属化合物(B)は、水系溶媒(A)に対して難溶性を示す。具体的には、水系溶媒(A)に対して難溶性を示すこととは、金属化合物(B)1gを溶解させるのに必要な20℃の水の量が10ml以上であることを意味する。また、金属化合物(B)が溶解したか否かは、実施例の欄で示す通り、1gの溶質を所定量の溶媒中に入れ、20±5℃で5分ごとに強く30秒間振り混ぜるとき30分以内に溶ける度合の基準で判断する。ここで言う「溶ける」とは残渣が目視で確認できないことをいう。
金属化合物(B)が水系溶媒(A)に対して難溶性を示すことにより、金属化合物(B)が有機溶媒(C)の相へ移行しやすくなる。
本実施形態の金属化合物(B)は、抗菌又は抗ウィルス性を有する金属を含む化合物であることが好ましい。また、当該金属化合物(B)は、金属と当該金属に配位する配位子とを有する形態であることが好ましい。これにより金属化合物(B)中の金属のダングリングボンドに酸素原子等が結合し難くなるため、酸化等により抗菌又は抗ウィルス性能を低下させにくくなる。
本実施形態の金属化合物(B)の金属は、マグネシウム、マンガン、コバルト、イットリウム、鉛、ビスマス及びランタノイドからなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましく、マグネシウム、マンガン、コバルト、イットリウム、鉛、ビスマス、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム及びガドリニウムからなる群から選択される1種又は2種以上であることがより好ましい。上記例示する金属であれば、抗菌又は抗ウィルス性を有する。
本実施形態において、金属化合物(B)中の金属に配位する配位子としては、マグネシウム、マンガン、コバルト、イットリウム、鉛、ビスマス及びランタノイドからなる群から選択される1種の金属に対して親和性のある官能基を有する低分子及び高分子でありうる。当該親和性のある官能基としては特に限定されるものでは無いが、窒素、酸素、硫黄及びリンからなる群から選択される1種の元素を含む基であることが好ましい。例えば、有機系硫黄基、有機系リン酸基ピロリドン基、ピリジン基、アミノ基、アミド基、イソシアネート基、カルボニル基、及び水酸基等を挙げることができ、カルボン酸、水酸基又はアミノ基を末端に有する配位子が好ましい。
例えば、末端の官能基がカルボン酸又は水酸基を有する配位子としては、具体的には、カプリル酸/ジカプリン酸1,3-プロパンジオール;10-ウンデセン酸;1-ドトリアコンタノール;1-ヘプタコサノール;1-ノナコサノール;2-エチルヘキサノール;アンドロスタン;アラキジン酸;アラキドン酸;アラキジルアルコール;ベヘン酸;ベヘニルアルコール;Capmul MCM C10;カプリン酸;カプリンアルコール;カプリルアルコール;カプリル酸;飽和脂肪族アルコールC12~C18のカプリル酸/カプリン酸とのエステル;カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド;カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド;セラミドホスホリルコリン(スフィンゴミエリン,SPH);セラミドホスホリルエタノールアミン(スフィンゴミエリン,Cer-PE);セラミドホスホリルグリセロール;セロプラスチン酸;セロチン酸;セロチン酸;セリルアルコール;セテアリルアルコール;セテス-10;セチルアルコール;コラン;コレスタン;コレステロール;シス-11-エイコセン酸;シス-11-オクタデセン酸;シス-13-ドコセン酸;クルイチル(cluytyl)アルコール;コエンザイムQ10(CoQ10);ジホモ-γ-リノレン;ドコサヘキサエン酸;卵レシチン;エイコサペンタエン酸;エイコセン酸;エライジン酸;エライドリノレニルアルコール;エライドリノレイルアルコール;エライジルアルコール;エルカ酸;エルシルアルコール;エストラン;エチレングリコールジステアレート(EGDS);ゲジン(Geddic)酸;ゲジル(geddyl)アルコール;グリセロールジステアレート(I型)EP(Precirol ATO 5);トリカプリル/カプリン酸グリセロール;トリカプリル/カプリン酸グリセロール(CAPTEX(登録商標)355 EP/NF);グリセリルモノカプリレート(Capmul MCM C8 EP);グリセリルトリアセテート;グリセリルトリカプリレート;グリセリルトリカプリレート/カプレート/ラウレート;グリセリルトリカプリレート/トリカプレート;グリセリルトリパルミテート(トリパルミチン);ヘナトリアコンチル(Henatriacontylic)酸;ヘンエイコシルアルコール;ヘンエイコシル酸;ヘプタコシル酸;ヘプタデカン酸;ヘプタデシルアルコール;ヘキサトリアコンチル酸;イソステアリン酸;イソステアリルアルコール;ラクセロ酸;ラウリン酸;ラウリルアルコール;リグノセリン酸;リグノセリルアルコール;リノエライジン酸;リノール酸;リノレニルアルコール;リノレイルアルコール;マルガリン酸;ミード;メリシン酸;メリシルアルコール;モンタン酸;モンタニルアルコール;ミリシルアルコール;ミリスチン酸;ミリストレイン酸;ミリスチルアルコール;ネオデカン酸;ネオヘプタン酸;ネオノナン酸;ネルボン酸;ノナコシル酸;ノナデシルアルコール;ノナデシル酸;ノナデシル酸;オレイン酸;オレイルアルコール;パルミチン酸;パルミトレイン酸;パルミトレイルアルコール;ペラルゴン酸;ペラルゴンアルコール;ペンタコシル酸;ペンタデシルアルコール;ペンタデシル酸;ホスファチジン酸(ホスファチデート,PA);ホスファチジルコリン(レシチン,PC);ホスファチジルエタノールアミン(ケファリン,PE);ホスファチジルイノシトール(PI);ホスファチジルイノシトールビスリン酸(PIP2);ホスファチジルイノシトールリン酸(PIP);ホスファチジルイノシトール三リン酸(PIP3);ホスファチジルセリン(PS);ポリグリセリル-6-ジステアレート;プレグナン;プロピレングリコールジカプレート;プロピレングリコール、ジカプリロカプレート;プロピレングリコールジカプリロカプレート;プシル(Psyllic)酸;リシノール酸;リシノレイルアルコール;サピエン酸;ダイズレシチン;ステアリン酸;ステアリドン;ステアリルアルコール;トリコシル酸;トリデシルアルコール;トリデシル酸;トリオレイン;ウンデシルアルコール;ウンデシレン酸;ウンデシル酸;バクセン酸;α-リノレン酸;γ-リノレン酸;10-ウンデセン酸、アダパレン、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、酪酸、カプリン酸、カプリル酸、セロチン酸、シス-11-エイコセン酸、シス-11-オクタデセン酸、シス-13-ドコセン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、エライジン酸、エルカ酸、ヘンエイコシル酸、ヘプタコシル酸、ヘプタデカン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、リグノセリン酸、リノエライジン酸、リノール酸、モンタン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、ネオデカン酸、ネオヘプタン酸、ネオノナン酸、ノナデシル酸、オレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ペラルゴン酸、ペンタコシル酸、ペンタデシル酸、リシノール酸、サピエン酸、ステアリン酸、トリコシル酸、トリデシル酸、ウンデシレン酸、ウンデシル酸、バクセン酸、吉草酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸;及びその任意の組合せからなる群から選択される。
また、末端の官能基がアミノ基を有する配位子としては、具体的には、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、1-アミノトリデカン、1-アミノペンタデカン、ヘキサデシルアミン、1-アミノヘプタデカン、ステアリルアミン、ヘプタデカン-9-アミン、オレイルアミン、1-アミノノナデカン、2-n-オクチル-1-ドデシルアミンが、好ましい。
【0032】
本実施形態の金属化合物(B)は、脂肪酸金属塩、ヘテロ原子含有配位子と金属イオンとの金属錯体及びヘテロ原子含有配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
これにより、金属化合物(B)には配位子として脂肪酸又はヘテロ原子含有配位子を有するため、金属イオン単独で使用した場合と比べて、溶出し難く、還元により金属化する等、安定性が向上する他、錯体化することにより、金属(イオン)に見られない特異な特性が発現しやすくなる。また、分散性が向上すると考えられる。
また、金属化合物(B)が脂肪酸金属塩又は金属錯体の形態を取ると、金属が有する抗菌抗ウィルス性と、脂肪酸又は錯体配位子が有する有機物への高い相溶性によって、後述の水性樹脂分散体を含有する抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物に添加した場合に、得らえる塗布層に抗菌抗ウィルス性を付与すると同時に、抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物によって塗布層の透明性の低下を抑制しうる。
本実施形態の好適な金属化合物(B)は、脂肪酸金属塩、ヘテロ原子含有配位子と金属イオンとの金属錯体及びヘテロ原子含有配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体からなる群から選択される1種以上であり、かつ前記脂肪酸金属塩の金属、前記ヘテロ原子含有配位子と金属イオンとの金属錯体の金属、及び前記ヘテロ原子含有配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体の金属は、それぞれ独立して、Mg,Mn,Co,Y,Pb,Bi,La,Pr,Nd,Sm又はGdであることが好ましい。
【0033】
<脂肪酸金属塩>
本実施形態の金属化合物(B)は、脂肪酸金属塩であることが好ましい。
本実施形態の脂肪酸金属塩は、例えば下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【化1】
(前記一般式(3)中、R
1はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~21のアルキル基を表し、n
1は、1~4の範囲の整数を表し、M
1は、マグネシウム、マンガン、コバルト、イットリウム、鉛、ビスマス及びランタノイドからなる群から選択される1種又は2種以上を表す。)
前記一般式(3)中、n
1が2以上の整数である場合、複数のR
1は互いに同じでもよく、異なってもよい。R
1の炭素原子数1~21のアルキル基は、直鎖状のアルキル基でもよく、分岐状のアルキル基でもよく、脂環構造を含んでもよい。
前記一般式(3)中、R
1の水素原子又は炭素原子数1~21のアルキル基は、脂肪酸金属塩の製造に用いるR
1COOHで表される炭素原子数1~22のカルボン酸からカルボキシル基(COOH)を除いたカルボン酸残基に対応する。当該カルボン酸残基としては、ギ酸残基、酢酸残基、プロピオン酸残基、ブタン酸残基、ペンタン酸残基、ヘキサン酸残基、2-エチル酪酸残基、ヘプタン酸残基、オクタン酸残基、アクリル酸残基、メタクリル酸残基、2-エチルヘキサン酸残基(オクチル酸残基)、ネオデカン酸残基、ナフテン酸残基、イソノナン酸残基、桐油酸残基、トール油脂肪酸残基、ヤシ油脂肪酸残基、大豆油脂肪酸残基、アマニ油脂肪酸残基、サフラワー油脂肪酸残基、脱水ヒマシ油脂肪酸残基、キリ油脂肪酸残基、ラウリン酸残基、ミリスチン酸残基、パルミチン酸残基、ステアリン酸残基、イソステアリン酸残基、オレイン酸残基等が挙げられる。
前記一般式(3)中、R
1の炭素原子数1~21のアルキル基は、後述する基材密着性の観点から、好ましくは炭素原子数1~15のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1~11のアルキル基である。R
1は、好ましくはギ酸残基、酢酸残基、プロピオン酸残基、ブタン酸残基、ペンタン酸残基、ヘキサン酸残基、2-エチル酪酸残基、ヘプタン酸残基、オクタン酸残基、2-エチルヘキサン酸残基、イソノナン酸残基、ネオデカン酸残基、ナフテン酸残基、ステアリン酸残基又はオレイン酸残基である。
前記一般式(3)中、M
1は、マグネシウム、マンガン、コバルト、イットリウム、鉛、ビスマス、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム及びガドリニウムからなる群から選択される1種又は2種以上であることがより好ましい。
尚、本明細書においてランタノイドとは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)から選択される1種以上を意味する。
n
1はM1の金属原子のイオン価数によって決定される数値であり、例えば、M
1がコバルトであれば、n
1は2となる。
【0034】
本実施形態の脂肪酸金属塩は、脂肪酸ホウ酸金属塩の形態も包含する。当該脂肪酸ホウ酸金属塩は、例えば下記一般式(4)で表される化合物である。
【化2】
(前記一般式(4)中、R
2はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~21のアルキル基であり、M
2はそれぞれ独立して、マグネシウム、マンガン、コバルト、イットリウム、鉛、ビスマス及びランタノイドである。)
前記一般式(4)において、R
2の炭素原子数1~21のアルキル基は、前記一般式(3)のR
1の炭素原子数1~21のアルキル基と同じである。同様に、前記一般式(4)において、M
2の好ましい金属は、前記一般式(3)のM
1の金属と同じである。
本実施形態の金属化合物(B)として脂肪酸金属塩を使用する場合、使用する脂肪酸金属塩は1種単独でもよく、あるいは互いに構造が異なる2種以上の脂肪酸金属塩を使用してもよい。また、脂肪酸金属塩は公知の方法で製造することができ、市販品を用いてもよい。
【0035】
<金属錯体>
本実施形態の金属化合物(B)は、ヘテロ原子含有配位子と金属イオンとの金属錯体及びヘテロ原子含有配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
そして、本実施形態の金属化合物(B)の一例である、ヘテロ原子含有配位子と金属イオンとの金属錯体及びヘテロ原子含有配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体は、金属イオン又は脂肪酸金属塩とヘテロ原子含有配位子とが配位結合で錯体を形成している化合物である。
前記金属イオンとしては、上記脂肪酸金属塩の好ましい金属と同じ金属のイオンを使用できる。ヘテロ原子含有配位子が金属錯体を形成する脂肪酸金属塩としては、脂肪酸金属塩と同じものを使用できる。
上記金属錯体を形成するヘテロ原子含有配位子は、窒素、酸素、硫黄及びリンからなる群より選ばれる1種以上のヘテロ原子を分子内に有する配位子であればよい。当該ヘテロ原子含有配位子としては、例えば、N-メチルモルフォリン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、4-ジメチルアミノアミン(DMAP)、ジシアンジアミド(DICY)、トリ-n-ブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ブチルアミン、1,2-プロパンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-[[(2-ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノール、ピコリン酸、2,2’-[プロパン-1,2-ジイルビス(アザニリリデンメタニリリデン)]ジフェノール、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、8-キノリノール、5-クロロ-8-キノリノール、2,2’-ビピリジル及びその誘導体、2,2’-[プロパン-1,2-ジイルビス(アザニリリデンメタニリリデン)]ジフェノール及びその誘導体、2,2’-メチレンビス〔6-(2h-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール〕等のアミン化合物;トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート等の四級アンモニウム塩;トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物;テトラメチルホスホニウムクロライド、テトラエチルホスホニウムクロライド、テトラプロピルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、トリメチル(2-ヒドロキシルプロピル)ホスホニウムクロライド、トリフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩;チオ乳酸、2-アミノチオフェノール、2,2’-ジチオジアニリン等の硫黄系化合物等が挙げられる。
上記ヘテロ原子含有配位子は、好ましくはピコリン酸、2-{[(2-ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ}エタノール、1,2-プロパンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、8-キノリノール、5-クロロ-8-キノリノール、2,2’-ビピリジルおよびその誘導体、並びに2,2’-[プロパン-1,2-ジイルビス(アザニリリデンメタニリリデン)]ジフェノールおよびその誘導体から選択される1種以上のアミン配位子である。
上記金属錯体を形成するヘテロ原子含有配位子は、1種単独でもよく、あるいは互いに構造が異なる2種以上でもよい。
本実施形態の金属錯体において、金属イオン又は脂肪酸金属塩とヘテロ原子含有配位子の比(モル比)としては、金属イオン又は脂肪酸金属塩の金属原子1モルに対して、例えばヘテロ原子含有配位子が0.1~12モルとなる範囲であり、好ましくは0.3~10モルの範囲であり、さらに好ましくは0.5~10モルの範囲である。
本実施形態において、ヘテロ原子含有配位子と金属イオンとの金属錯体及びヘテロ原子含有配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体は、公知の方法で製造することができ、金属単体又は脂肪酸金属塩とヘテロ原子含有配位子を反応させることにより製造できる。また、当該金属錯体は市販品を用いてもよい。
【0036】
本実施形態の抗菌抗ウィルス性組成物において、金属化合物(B)の含有量の上限は、抗菌抗ウィルス性組成物の総量(100質量%)に対して、60質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、37質量%以下及び35質量%以下の順で好ましい。前記金属化合物(B)の含有量の下限は、抗菌抗ウィルス性組成物の総量(100質量%)に対して、0.5質量%以上、1質量%以上、1.5質量%以上、2質量%以上、3質量%以上及び5質量%以上の順で好ましい。
前記金属化合物(B)の含有量の上限及び下限は任意に組み合わせできる。
金属化合物(B)の含有量の範囲が、8~35質量%であると、水乳化物の貯蔵安定性の観点で好ましい。
さらに、本実施形態の抗菌抗ウィルス性組成物において、前記金属化合物(B)の含有量は、水系溶媒(A)、金属化合物(B)、有機溶媒(C)、及び界面活性剤(D)の合計100質量部に対して、前記金属化合物(B)の含有量の下限値は、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。また、前記金属化合物(B)の含有量の上限値は、35質量部以下が好ましく、32質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。
【0037】
本実施形態の金属化合物(B)において、金属化合物(B)中に含まれる金属の含有量の上限は、金属化合物(B)の総量(100質量%)に対して、55質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、及び30質量%以下の順で好ましい。
前記金属化合物(B)中に含まれる金属の含有量の下限は、金属化合物(B)の総量(100質量%)に対して、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上及び3質量%以上の順で好ましい。
前記金属の含有量の上限及び下限は任意に組み合わせできる。
金属化合物(B)中に含まれる金属の含有量の範囲が、1~40質量%であると、金属化合物の作製や取扱いが容易であるとの観点で好ましい。
【0038】
本実施形態の抗菌抗ウィルス性組成物において、金属化合物(B)中の金属の含有量の上限は、抗菌抗ウィルス性組成物の固形分の総量(100質量%)に対して、50質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、9.5質量%以下及び9質量%以下の順で好ましい。前記金属化合物(B)の含有量の下限は、抗菌抗ウィルス性組成物の総量(100質量%)に対して、0.01質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量、0.4質量%以上及び0.7質量%以上の順で好ましい。
前記金属化合物(B)の含有量の上限及び下限は任意に組み合わせできる。
金属化合物(B)の含有量の範囲が、0.01~20質量%であると、金属化合物の作製や取扱いが容易であるとの観点で好ましい。
【0039】
(有機溶媒(C))
本実施形態の有機溶媒(C)は、水系溶媒(A)との関係性で選択される。具体的には、以下の式(1)を満たすように有機溶媒(C)が選択されうる。
【数7】
(上記式(1)中、dHCは、前記有機溶媒(C)のハンセン溶解度パラメーター(HSP値)の水素結合項dHを表し、dHAは、前記水系溶媒(A)のハンセン溶解度パラメーター(HSP値)の水素結合項dHを表す。)
本実施形態の有機溶媒(C)のハンセン溶解度パラメーター(HSP値)の水素結合項dHCは、0~12.3(J/cm
3)
1/2であることが好ましく、0.1~10(J/cm
3)
1/2であることがより好ましく、0.3~1(J/cm
3)
1/2であることがさらに好ましい。
当該有機溶媒(C)のハンセン溶解度パラメーター(HSP値)の水素結合項dHが上記範囲であると、水系溶媒(A)のハンセン溶解度パラメーターの水素結合項dHAと、有機溶媒(C)のハンセン溶解度パラメーターの水素結合項dHCとの差の絶対値を十分に取ることができ、優れた乳化安定性を示し、例えばコアシェル構造体が安定化しやすい、あるいは金属化合物(B)が水系溶媒(A)に溶出しにくいとの観点で好ましい。
【0040】
本実施形態の金属化合物(B)は、有機溶媒(C)に対して可溶性を示す。具体的には、後述の実施例の欄で示す基準を準用する。
金属化合物(B)が有機溶媒(C)に対して可溶性を示すことにより、金属化合物(B)が有機溶媒(C)の相へ移行しやすくなる。
【0041】
本実施形態の抗菌抗ウィルス性組成物において、有機溶媒(C)の含有量の上限は、抗菌抗ウィルス性組成物の総量(100質量%)に対して、60質量%以下、55質量%以下、45質量%以下及び40質量%以下の順で好ましい。前記有機溶媒(C)の含有量の下限は、抗菌抗ウィルス性組成物の総量(100質量%)に対して、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上及び5質量%以上の順で好ましい。
前記有機溶媒(C)の含有量の上限及び下限は任意に組み合わせできる。
有機溶媒(C)の含有量の範囲が、3~40質量%であると、金属化合物の作製や取扱いが容易であるとの観点で好ましい。
さらに、本実施形態の抗菌抗ウィルス性組成物において、前記有機溶媒(C)の含有量は、水系溶媒(A)、金属化合物(B)、有機溶媒(C)、及び界面活性剤(D)の合計100質量部に対して、前記有機溶媒(C)の含有量の下限値は、5質量部以上が好ましく、6質量部以上がより好ましく、8質量部以上がさらに好ましい。また、前記有機溶媒(C)の含有量の上限値は、40質量部以下が好ましく、35質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。
【0042】
本実施形態の有機溶媒(C)としては、ケトン類、エステル類、アルコール類、脂肪酸類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、石油系炭化水素類及びワックス類の炭化水素系溶剤;シリコーン系溶剤;塩素系溶剤;並びにフッ素系溶剤からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
上記ケトン類としては、炭素原子数4~20のケトン類が挙げられ、炭素原子数9~20のケトン類が好ましい。具体的には、ジイソブチルケトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
上記エステル類としては、炭素原子数4~20のエステル類が挙げられ、炭素原子数6~20のエステル類が好ましい。具体的には、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸アリル、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等が挙げられる。
上記アルコール類としては、炭素原子数5~22の直鎖又は分岐の飽和アルコール類、炭素原子数12~22の直鎖又は分岐の不飽和アルコール類が挙げられ、炭素原子数8~22の直鎖又は分岐の飽和アルコール類、炭素原子数16~22の直鎖又は分岐の不飽和アルコール類が好ましい。具体的には、オレイルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、リノリルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール等が挙げられる。
炭素原子数1~21のアルキル基は、直鎖状のアルキル基でもよく、分岐状のアルキル基でもよく、脂環構造を含んでもよい。
上記脂肪酸類は炭素原子数5~22の直鎖又は分岐の飽和脂肪酸類、炭素原子数12~22の直鎖又は分岐の不飽和の脂肪酸類が挙げられ、当該脂肪酸としては、ペンタン酸、ヘキサン酸、2-エチル酪酸、ヘプタン酸、オクタン酸、アクリル酸、メタクリル酸、2-エチルヘキサン酸(オクチル酸)、ネオデカン酸、ナフテン酸残基、イソノナン酸、桐油酸、トール油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、キリ油脂肪酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。炭素原子数1~21のアルキル基は、直鎖状のアルキル基でもよく、分岐状のアルキル基でもよく、脂環構造を含んでもよい。
上記芳香族炭化水素類としては、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素類が挙げられ、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、メシチレン、クメン、インデン、ナフタレン、アントラセン、トリフェニレン等が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素類としては、炭素原子数5~18の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素類が挙げられ、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、2,4-ヘプタジエン等が挙げられる。
上記脂環式炭化水素類としては、炭素原子数6~20の脂環式炭化水素類(ナフテン系飽和炭化水素類)が挙げられ、具体的には、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン等が挙げられる。
上記石油系炭化水素類としては、ミネラルスピリット、ガソリン、コールタールナフサ、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレピン油等が挙げられる。
上記ワックス類としては、植物系ワックス(ハゼ蝋、ウルシ蝋等)、動物系ワックス(ミツ蝋、鯨蝋等)、鉱物系ワックス(モンタンワックス等)、石油系ワックス(パラフィンワックス等)、合成ワックス等が挙げられる。
上記シリコーン系溶剤としては、ジメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、メチルフェニルシリコーン、環状ジメチルシリコーン、フロロアルキル変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン等のストレートシリコーンオイル、変性シリコーンオイルが挙げられ、変性シリコーンオイルの場合、側鎖型変性シリコーンオイル、両末端型変性シリコーンオイル、片末端型変性シリコーンオイル、側鎖両末端型変性シリコーンオイルが挙げられる。
上記塩素系溶剤としては、1、2-ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等が挙げられる。
上記フッ素系溶剤としては、ハイドロフルオロカーボン(HFC)系溶剤、ハイドロフルオロエーテル(HFE)系溶剤、パーフルオロカーボン(PFC)系溶剤、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)系溶剤等が挙げられる。
【0043】
また、本実施形態の有機溶媒(C)の別の形態としては、例えば、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコール系溶媒、フェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、3-クロロフェノール、4-クロロフェノール等のフェノール系溶媒、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ナフタレン、エチルベンゼン及びテトラリン等の芳香族炭化水素系溶媒、n-ヘプタン、n-ヘキサン、n-オクタン、シクロアルカン(例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン)、メチルペンタン、2-エチルペンタン、イソパラフィン系炭化水素、流動パラフィン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の炭化水素系溶媒、その他汎用溶媒として、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、アセトフェノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、2-メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、クロロホルム、ブタノール、エタノール、クロロベンゼン、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒等が挙げられ、これらを単独で使用しても、あるいは2種類以上混合して使用してもよい。
【0044】
(界面活性剤(D))
本実施形態の界面活性剤(D)としては、HLB値が11~18の範囲を示せばよく、イオン性(アニオン、カチオン及び両性を含む)及びノ二オン性(非イオン)の界面活性剤のいずれでも使用することができるが、アニオン性を示すアニオン界面活性剤(d1)、非イオンを示すノ二オン界面活性剤(d2)又はカチオン性を示すカチオン界面活性剤(d3)が好ましい。
本実施形態の界面活性剤(D)のHLB値は、11~18である。当該HLB値の上限は、18、17.5、17又は16であることが好ましい。一方、当該HLB値の下限は、11、11.5、12又は12.5であることが好ましい。前記上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
界面活性剤(D)のHLB値が11未満であると、水乳化物を作製し易さの点でデメリットが生じる。一方、界面活性剤(D)のHLB値が18超であると、水乳化物の貯蔵安定性の点でデメリットが生じる。
本明細書におけるHLB(hydrophilic-lipophilic balance)は、Griffin式により求められる値であり、後述の実施例で示すように、界面活性剤(D)として1種単独の界面活性剤を使用する場合は、当該界面活性剤(D)そのもの単独のHLB値を意味し、2種以上の界面活性剤(D)を組み合わせて使用する場合は、Griffin式及び各々の含有量を元に求められるこれら複数の界面活性剤全体におけるHLBの値を意味する。そして、界面活性剤(D)の混合物のHLB値は、それぞれ単独の界面活性剤のHLB値の加重平均値を用いる(界面活性剤便覧、西一郎ら、産業図書(株)、1960年発行、309頁)。
【0045】
本実施形態の抗菌抗ウィルス性組成物において、界面活性剤(D)の含有量の上限は、抗菌抗ウィルス性組成物の総量(100質量%)に対して、20質量%以下、15質量%以下、12.5質量%以下及び10質量%以下の順で好ましい。前記界面活性剤(D)の含有量の下限は、抗菌抗ウィルス性組成物の総量(100質量%)に対して、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上及び3質量%以上の順で好ましい。
前記界面活性剤(D)の含有量の上限及び下限は任意に組み合わせできる。
界面活性剤(D)の含有量の範囲が、2~10質量%であると、臨界ミセル濃度以上の範囲になるため容易にコアシェル構造体を形成しやすくなることや最終加工物の耐久性を低下させない観点で好ましい。
さらに、本実施形態の抗菌抗ウィルス性組成物において、前記界面活性剤(D)の含有量は、水系溶媒(A)、金属化合物(B)、有機溶媒(C)、及び界面活性剤(D)の合計100質量部に対して、前記界面活性剤(D)の含有量の下限値は、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、前記界面活性剤(D)の含有量の上限値は、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。
【0046】
「アニオン界面活性剤(d1)」
本実施形態のアニオン界面活性剤(d1)としては、N-アシルアミノ酸塩、脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテルカルボン酸、アシル乳酸塩等のカルボン酸系アニオン界面活性剤;アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩、脂肪酸アミドエーテルリン酸塩等のリン酸系アニオン界面活性剤;アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、アシルイセチオン酸塩、アルキルグリシジルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N-
アシルメチルタウリン塩等のスルホン酸系アニオン界面活性剤;アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸塩等の硫酸系アニオン界面活性剤;が挙げられる。
【0047】
「ノ二オン界面活性剤(d2)」
本実施形態のノ二オン界面活性剤(d2)としては、エステル型、エーテル型、エステル・エーテル型及びその他のいずれでもよく、ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテル、ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステル及び多価アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0048】
<ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル>
上記ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルは、多価アルコールに対して、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシド等の炭素原子数1~8のアルキレンオキシドが付加した構造を有する化合物でありうる。
また、上記多価アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、ジトリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン、ジペンタエリスリトール及びショ糖からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
上記アルキレンオキシドの付加モル数は、3~87が好ましく、4~70がより好ましく、5~60がさらに好ましい。尚、前記アルキレンオキシドに占めるエチレンオキシドの割合は、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。
上記ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの重量平均分子量(Mw)は、300~10000が好ましく、400~8000がより好ましく、500~5000がさらに好ましい。
上記ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの例としては、ポリエチレングリコール、グリセリンエチレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物、ジグリセリンエチレンオキシド付加物、ソルビタンエチレンオキシド付加物、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、ソルビトールエチレンオキシド付加物、ソルビトールエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、ジトリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物、ショ糖エチレンオキシド付加物等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0049】
<ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル>
上記ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルは、多価アルコールに対して、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素原子数1~8のアルキレンオキシドが付加した化合物と、脂肪酸とがエステル結合した構造を有する化合物でありうる。
上記多価アルコールとしては、上述した<ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル>の欄に記載した多価アルコールと同様である。
上記脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソセチル酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、イソドコサン酸、エルカ酸、リグノセリン酸又はイソテトラコサン酸等が挙げられる。
上記アルキレンオキシドの付加モル数としては、上述した<ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル>の欄に記載の付加モル数と同様である。
上記ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルの重量平均分子量(Mw)は、300~7000が好ましく、500~5000がより好ましく、700~3000がさらに好ましい。
上記ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルの例としては、グリセリンエチレンオキシド付加物モノラウレート、グリセリンエチレンオキシド付加物ジラウレート、グリセリンエチレンオキシド付加物トリラウレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物トリラウレート、ソルビタンエチレンオキシド付加物モノオレエート、ソルビタンエチレンオキシド付加物ジオレエート、ソルビタンエチレンオキシド付加物トリオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物モノオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物ジオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物トリオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物トリラウレート、ショ糖エチレンオキシド付加物トリラウレート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0050】
<ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテル>
上記ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテルは、脂肪族一価アルコールに対し、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素原子数1~8のアルキレンオキシドを付加した構造を有する化合物でありうる。
上記アルキレンオキシドの付加モル数としては、1~90モルが好ましく、2~80モルがより好ましく、3~55モルがさらに好ましい。また、アルキレンオキシド全体に対するエチレンンオキシドの割合は、20モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましく、40モル%以上がさらに好ましい。
上記ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテルの例としては、例えば、オクチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、
トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等の脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
【0051】
<ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステル>
上記ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステルは、ポリオキシエチレングリコール、及び/又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールと、脂肪酸とがエステル結合した構造を有する化合物でありうる。前記ポリアルキレングリコールの重量平均分子量(Mw)は、100~1000が好ましく、150~800がより好ましく、200~700がさらに好ましい。
上記ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルの例としては、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールジオレエート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノラウレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールジラウレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノオレエート、ポリエチレンポリプロピレングリコールジオレエート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0052】
<多価アルコール脂肪酸エステル>
多価アルコール脂肪酸エステルは、多価アルコールと脂肪酸がエステル結合した構造を持つ化合物でありうる。
上記多価アルコールは、上述した<ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル>の欄に記載した多価アルコールと同様である。
上記脂肪酸は、上述した<ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル>の欄に記載した脂肪酸と同様である。
また、上記多価アルコール脂肪酸エステルは、少なくとも1又は2以上の水酸基を有する。上記多価アルコール脂肪酸エステルの重量平均分子量(Mw)は、100~1200が好ましく、220~1000がより好ましく、300~800がさらに好ましい。
上記脂肪酸エステルとしては、グリセリンモノラウレート、グリセリンジラウレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンジオレエート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンジオレエート、ショ糖モノラウレート、ショ糖ジラウレートが挙げられる。
【0053】
<好適なノニオン界面活性剤(d2)>
本実施形態の好適なノニオン界面活性剤(d2)としては、具体的には、例えば、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のノニオン界面活性剤が挙げられる。これらのうち、エチレンオキサイド鎖を有するノニオン界面活性剤(d2)が好ましい。特に、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選択される1種又は2種以上が好ましい。
本実施形態の界面活性剤(D)として、エチレンオキサイド鎖を有するノニオン界面活性剤(d2)を用いる場合、エチレンオキサイド付加モル数は、好ましくは4~250であり、より好ましくは20~160であり、さらに好ましくは20~80である。また、ノニオン界面活性剤(d2)の脂肪酸部分及びアルキル部分の炭素原子数は、好ましくは8~24であり、より好ましくは12~22である。
【0054】
「カチオン界面活性剤(d3)」
上記カチオン界面活性剤(d3)としては、例えば、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム等のジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩;塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、ベヘニルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム等のモノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩;塩化ステアロキシプロピルトリメチルアンモニウム等の長鎖アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩;が挙げられる。
【0055】
「好ましい界面活性剤(D)」
本実施形態の好ましい界面活性剤(D)は、上記の界面活性剤(D)、例えば、ノ二オン界面活性剤(d1)、アニオン界面活性剤(d2)及びカチオン界面活性剤(d3)からなる群から選択される1種又は2種以上の混合物でもよい。
また、本実施形態の好ましい界面活性剤(D)は、溶液状の界面活性剤(D)でもよく、具体的には、ノ二オン界面活性剤(d1)、アニオン界面活性剤(d2)及びカチオン界面活性剤(d3)からなる群から選択される1種又は2種以上の界面活性剤と、上記の例示した水系溶剤(A)及び/又は上記の例示した有機溶媒(C)とを混合した界面活性剤混合液であってもよい。また、必要により、当該界面活性剤混合液に、増粘剤を添加してもよい。増粘剤の添加は、加工剤の貯蔵安定性(分離の抑制)や塗料配合時の取扱い性の観点から好ましい。
なお、界面活性剤(D)として混合溶液を使用する場合、前記混合溶液における固形分は、0.5~95質量%であることが好ましく、0.5~50質量%であることがより好ましい。
前記増粘剤としては、水性塗料用として公知の材料を使用することができる。例えば、会合型増粘剤、セルロース系増粘剤、(メタ)アクリル酸系増粘剤、ポリウレタン系増粘剤、ポリアクリルアミド系増粘剤、ビニルエーテル系増粘剤、鉱物系増粘剤又は多糖類系増粘剤等が挙げられる。
また、前記増粘剤は市販品を使用することができ、例えば、(株)ADEKA製アデカノール(登録商標)UHシリーズ、サンノプコ(株)製SNシックナーシリーズ、東亞合成(株)製アロン(商標登録)増粘剤シリーズ、BYK社製(商標登録)OPTIFLOシリーズ等が挙げられる。
上記増粘剤の含有量は、界面活性剤混合液の固形分100質量部に対し、0.01~10質量部である。前記増粘剤は、1種単独で使用してもよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
(任意の添加成分)
本実施形態の抗菌抗ウィルス性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で分散助剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防食剤、粘度調整剤、キレート剤、消泡剤又は酸化防止剤等の添加成分(E)を配合することができる。
また、上記分散剤の例としては、ポリカルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物及びそれらの塩等の高分子型分散剤等が挙げられる。上記分散助剤の例としては、ピロリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩等の縮合リン酸塩等が挙げられる。上記防腐剤の例としては、次亜塩素酸ナトリウム等が挙げられる。上記防黴剤の例としては、オキサゾリジン-2,5-ジオン等のオキサゾリン等が挙げられる。上記防食剤の例としては、アミン類、ピリジン類、テトラフェニルホスホニウム塩、ベンゾトリアゾール類、トリアゾール類、テトラゾール類、安息香酸等が挙げられる。上記増粘剤の例としては、水和ケイ酸アルミニウム、モンモリロナイト粘土のジメチルオクタデシル塩、アルカリ可溶性アクリルポリマー、コロイダルシリカ、アルミナゾル、重金属石鹸、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム等が挙げられる。上記粘度調整剤の例としては、
上記キレート剤の例としては、グルコン酸等のカルボン酸系キレート剤;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリメチルテトラアミン等のアミン系キレート剤、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸等のポリアミノポリカルボン酸系キレート剤;2-アミノエチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸等の有機ホスホン酸系キレート剤、フェノール誘導体;1,3-ジケトン等が挙げられる。
なお、かかる添加成分(E)が上記(A)成分~(D)成分と重複する場合は、前記各成分として用いられ、その範囲を超えない。
本実施形態の抗菌抗ウィルス性組成物において、添加成分(E)の含有量は、抗菌抗ウィルス性組成物の総量(100質量%)に対して、0.1~20質量%であることが好ましい。
さらに、本実施形態の抗菌抗ウィルス性組成物において、前記添加成分(E)は任意成分であるが、添加する場合の含有量は、水系溶媒(A)、金属化合物(B)、有機溶媒(C)、及び界面活性剤(D)の合計100質量部に対して、前記添加成分(E)の含有量の下限値は、0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましく、また、前記添加成分(E)の含有量の上限値は、25質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。
【0057】
(抗菌抗ウィルス性組成物の物性)
本実施形態の抗菌抗ウィルス性組成物が溶液状である場合の粘度としては、分散安定性及び取り扱い性の観点から、10~100,000mPa・sが好ましく、100~50,000mPa・sがより好ましい。なお、当該粘度は、溶液状の抗菌抗ウィルス性組成物を25℃に温度調整し、ブルックフィールド型粘度計(B8L型粘度計、株式会社トキメック製)を用いて測定できる。
本実施形態の抗菌抗ウィルス性組成物が水系溶媒(A)を含有する溶液状の抗菌抗ウィルス性組成物の場合、当該溶液の抗菌抗ウィルス性組成物のpHは、3~11であることが好ましく、4~10であることがより好ましく、4.5~9.5であることがさらに好ましい。
【0058】
[抗菌抗ウィルス性組成物の製造方法]
本開示の抗菌抗ウィルス性組成物を製造する方法は、特に制限されず、上述した水系溶媒(A)と、金属化合物(B)と、有機溶媒(C)と、界面活性剤(D)とを均一に混合することができる方法が適宜採用される。
具体的には、例えば、水中油型のエマルションを形成する場合は、金属化合物(B)、有機溶媒(C)、及び界面活性剤(D)を混合均一とした後、水系溶媒(A)を添加混合する等の方法が挙げられ、有機溶媒(C)に金属化合物(B)を加え混合均一とした後、界面活性剤(D)を加え、乳化分散機を用いて完全に分散させた後、水系溶媒(A)を添加混合する方法が好ましい。
本実施形態において使用される乳化分散機としては、原料の種類、エマルションの状態、目的とする微細化度等に応じて適宜選択使用されるが、具体的には、ホモジナイザー、ホモミキサー、アジテイター、ディスパー、プラネタリーミキサー、アジホモミキサー、ユニバーサルミキサー、超音波分散機、アトライター、サンドミル、パールミル、グレンミル、ダイノーミル、ボールミル、コロイドミル等の乳化分散機を使用することができる。これらは1種又は2種以上の方法を選択することができる。
【0059】
[抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物]
本開示の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物は、上述した本実施形態の抗菌抗ウィルス性組成物(以下、抗菌抗ウィルス性組成物)及び水性樹脂分散体を含有する。より詳細には、本開示の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物は、水系溶媒(A)、金属化合物(B)、有機溶媒(C)、界面活性剤(D)及び水性樹脂分散体を必須に含有する。
これにより、本開示の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物は、水性樹脂分散体に対して高い相溶性を有するため、抗菌抗ウィルス性組成物を含有する抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物から得られる塗布層は、透明性が損なわれるといった外観への影響を低減することができる。また、抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物は基材との密着促進効果を示すことができ、抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物は抗菌抗ウィルス性組成物を含有するため、得られる塗布層は、基材との高い密着性を示すことができる。従って、基材と当該基材上に積層してなる塗布層との積層体は、塗布層が抗菌抗ウィルス性を示すと同時に、基材と塗布層は高い密着性をも示すことができる。
本実施形態の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物中に含まれる抗菌抗ウィルス性組成物の含有量は特に限定されず、例えば抗菌抗ウィルス性硬化用組成物由来の金属を樹脂固形分100質量部に対して0.01~30質量部の範囲で含有するとよく、好ましくは樹脂固形分100質量部に対して0.01~15質量部の範囲で含有し、より好ましくは樹脂固形分100質量部に対して0.01~10質量部の範囲で含有し、さらに好ましくは樹脂固形分100質量部に対して0.1~10質量部の範囲で含有する。
本明細書における「樹脂固形分」とは、抗菌抗ウィルス性硬化用組成物に含まれる水性樹脂分散体等の固形分の総量を意味する。
本実施形態の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物に含まれる抗菌抗ウィルス性組成物は1種単独でもよく、2種以上でもよい。
【0060】
本実施形態の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物に含まれる水性樹脂分散体は、特に限定されず、例えばエマルジョン系樹脂、ラテックス系樹脂、熱硬化型樹脂、活性エネルギー線硬化型樹脂のいずれのタイプでも使用することができる。
上記水性樹脂分散体は、水性樹脂及び非水溶性樹脂(溶剤系樹脂)のいずれでもよい。尚、本明細書において「水溶性樹脂」とは、20℃で樹脂1gを溶解させるのに必要な水の量が10ml未満であることを意味する。また、「非水溶性樹脂」とは前記「水溶性樹脂」ではない樹脂を意味する。
上記水性樹脂分散体の具体例としては、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、ウレタン尿素樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン共重合樹脂及びアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合(ABS)樹脂等が挙げられる。
上記水性樹脂分散体は、上記例示の樹脂を変性したものも含み、例えばフェノール樹脂であればロジン変性フェノール樹脂も含む意味である。
本実施形態の抗菌抗ウィルス性硬化用組成物に含まれる水性樹脂分散体は1種単独でもよく、2種以上でもよい。
本実施形態の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物における水性樹脂分散体の含有量は特に限定されず、例えば抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物の樹脂固形分の総質量に対して10~100質量%の範囲で適宜設定するとよい。
本実施形態の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物は、抗菌抗ウィルス性組成物と水性樹脂分散体とを含有すればよく、分散媒をさらに含有してもよい。分散媒は、抗菌抗ウィルス性硬化用組成物の粘度を調整する目的で添加されるもので、水性媒体でも油性媒体のいずれでもよい。
上記分散媒の具体例としては、水、1-ブタノール、イソブタノール、1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の単官能アルコール、各種ジオール、グリセリン等の多価アルコール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、プロピレングリコール、1,2ブタンジオール、3-メチル-1,3ブタンジオール、1、2ペンタンジオール、2-メチル-1,3プロパンジオール、1,2ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール等のジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールAの炭素原子数2又は3のアルキレンオキサイド(平均付加モル数1以上16以下)付加物である芳香族ジオール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオールポリオキシプロピレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、シクロヘキサンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチルカルビトール、γ-ブチロラクトン、各種脂肪酸等が挙げられる。上記分散媒は1種単独で使用してもよく、あるいは2種以上混合して使用してもよい。
本実施形態における抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物における分散媒の含有量は特に限定されず、例えば、抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物の固形分濃度が30~80質量%の範囲となるように適宜設定するとよい。
本実施形態の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物は、可塑剤をさらに含有してもよい。抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物に可塑剤を添加することによって、得られる塗布層に柔軟性を与え基材に対する追従性を向上させることができる。
上記可塑剤としては、特に限定はされず、例えば、フタル酸エステル、非芳香族二塩基酸エステル、脂肪族エステル、ポリアルキレングリコールのエステル、リン酸エステル、トリメリット酸エステル、塩素化パラフィン、炭化水素系油、プロセスオイル、ポリエーテル、エポキシ可塑剤類、ポリエステル系可塑剤等が挙げられ、好ましくはフタル酸エステルである。前記可塑剤の具体例としては、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸イソデシル、トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等が挙げられる。上記可塑剤は1種単独使用してもよく、あるいは2種以上使用してもよい。
【0061】
本実施形態の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物における可塑剤の含有量は特に限定されず、例えば抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物の樹脂固形分100質量部に対して0.1~50質量部の範囲で適宜設定するとよい。
本実施形態の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物は、抗菌抗ウィルス性組成物、水性樹脂分散体、並びに任意に分散媒及び/又は可塑剤を含有すれすればよく、本発明の効果を損なわない範囲でその他添加剤を含有してもよい。当該その他添加剤としては、顔料、艶消し剤、硬化剤、硬化促進剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、増粘剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、帯電防止剤、滑剤、防腐剤等が挙げられる。
本実施形態の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物を基材表面に塗工し、得られた塗膜に対して水性樹脂分散体に適した硬化方法(熱硬化、活性エネルギー線硬化等)を適用することで塗布層を形成することができる。
また、抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物の塗工方法については、公知公用の塗工方法であればいずれの方法も使用でき、例えば、ロールコーター、静電塗装、バーコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、デイッピング塗布、スプレー塗布等の方法が挙げられる。本開示の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物は、低VOCであるため塗工作業性の向上、人体への悪影響を低減できる。このため、例えば、屋内等において任意の対象物の表面にスプレー塗工する場合などに特に適する。
塗工対象である基材は特に限定されず、例えば、紙、合成紙、鋼板、アルミ箔、ガラス、木材、織布、編布、不織布、石膏ボード、木質ボード、樹脂基材等が挙げられる。
上記樹脂基材の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリエチレンフィルム(LLDPE:低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム)、ポリプロピレンフィルム(CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、エポキシ樹脂フィルム、メラミン樹脂フィルム、トリアセチルセルロース樹脂フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ABS樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、ポリフッ化ビニル樹脂フィルム、ポリフッ化ビニリデン樹脂フィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム等が挙げられる。使用する上記樹脂基材は、コロナ処理等の表面処理を施してもよい。
【0062】
(抗菌抗ウィルス性布帛)
本実施形態の抗菌抗ウィルス性布帛は、布帛と、前記布帛に添着される、抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物を原料とする塗布層と、を有する。換言すると、本実施形態の抗菌抗ウィルス性布帛は、布帛と、前記布帛に添着される塗布層とを有し、当該塗布層は、上述した金属化合物(B)及び上述した界面活性剤(D)を含有する。
本実施形態の抗菌抗ウィルス性布帛の作製方法は、塗材の粘度・粘性を調整するためのエチルセルロース等の糊剤0.01~5質量部と、水性アクリル樹脂等の水性樹脂分散体0.01~20質量部と、上述した抗菌抗ウィルス性組成物1~60質量部と、必要により添加される水系溶媒15~99質量部と、を混合した水性塗剤を調製する工程(I)、前記水性塗剤1~50質量部と、必要により添加される水系溶媒(A)50~99質量部とを混合して水性加工液を調製する工程(II)、前記水性加工液に基材(例えば、布帛)を塗布又は浸漬する工程(III)及び20~180℃で1分~48時間、水性加工液が添着された布帛を乾燥する工程(IV)を有する。ここでいう、必要により添加される水系溶媒の種類としては前記水系溶媒(A)と同種のものを用いることができる。
上記塗布層の平均塗布量は適宜設定されるが、概ねで金属化合物(B)の金属量に換算して0.01~10g/m2であることが好ましい。
上記糊剤としては、水溶性ポリマーが用いられる。当該水溶性ポリマーは、天然高分子であってもよいし、合成高分子であってもよい。前記水性ポリマーとしては、例えば、トウモロコシ、小麦等のデンプン物質、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系物質、アルギン酸ナトリウム、アラビヤゴム、ローカストビーンガム、トラントガム、グアーガム、タマリンド種子等の多糖類、ゼラチン、カゼイン等のタンパク質物質、タンニン系物質、リグニン系物質等の公知の天然水性高分子が挙げられる。
また、合成水性高分子としては、例えば、公知のポリビニルアルコール系化合物、ポリエチレンオキサイド系化合物、アクリル酸系水性高分子、無水マレイン酸系水性高分子等が挙げられる。これらの中でも多糖類系高分子やセルロース系高分子が好ましい。
【0063】
(抗菌抗ウィルス性フィルム)
本実施形態の抗菌抗ウィルス性フィルムは、基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくとも一方の面に設けられる、抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物を原料とする塗布層と、を有する。
換言すると、本実施形態の抗菌抗ウィルス性フィルムは、基材フィルムと、前記基材フィルムに添着される塗布層とを有し、当該塗布層は、上述した金属化合物(B)及び上述した界面活性剤(D)を含有する。
本実施形態の抗菌抗ウィルス性フィルムの作製方法は、水性アクリル樹脂等の水性樹脂分散体1~99質量部と、上述した抗菌抗ウィルス性組成物1~50質量部と、必要により添加される水系溶媒0~98質量部と、を混合した水性塗剤を調製する工程(I)、前記水性塗剤を基材(例えば、PETフィルム等の基材フィルム)に塗布する工程(II)及び20~180℃で1分~48時間、前記水性塗剤が塗布された基材を乾燥する工程(III)を有する。ここでいう、必要により添加される水系溶媒の種類としては前記水系溶媒(A)と同種のものを用いることができる。
上記塗布層の平均厚みは適宜設定されるが、概ね1~50μmであることが好ましい。
また、前記塗布層のヘーズ値が10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましく、3%以下であることが最も好ましい。当該ヘーズ値の測定方法は、後述の実施例に記載の通り、JIS K7136:2000の規格に準拠して行った。
【0064】
本実施形態の抗菌抗ウィルス性フィルムの好ましい形態において、基材フィルムと前記基材フィルムの一方の面に設けられた基準塗布層とを有するブランクフィルムのヘーズ値と、基材フィルムと前記基材フィルムの一方の面に設けられた前記塗布層とを有する抗菌抗ウィルス性フィルムのヘーズ値との差が10%以下であることが好ましい。
前記基準塗布層は、抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物から、金属化合物(B)を除いた基準組成物から形成されうる。
より詳細には、基準塗布層の原料である基準組成物は、水及び水性樹脂分散体を必須に含有する。当該基準組成物における水性樹脂分散体の含有量は、抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物における水性樹脂分散体の含有量の数値範囲を援用できる。
【0065】
「成形体」
本開示の抗菌抗ウィルス性硬化用組成物は、抗菌抗ウィルス性組成物及び樹脂を含有する。当該抗菌抗ウィルス性硬化用組成物はコーティング用途だけでなく、抗菌抗ウィルス性硬化用組成物自体を硬化、成形することによって抗菌抗ウィルス性を示す成形体とすることができる。
本開示の抗菌抗ウィルス性硬化用組成物が含有する樹脂は、本開示の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物が含有する水性樹脂分散体と同じ樹脂を使用できる。また、本発明の抗菌抗ウィルス性硬化用組成物は、本発明の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物が含有可能な成分と同じものを含有することができる。
本発明の抗菌抗ウィルス性硬化用組成物の成形方法は、使用する樹脂に適した成形方法を採用すればよく、射出成形、押出成形、加圧成形(プレス成形)、圧空成形や真空成形等の溶融成形法やキャスト法が挙げられる。
本発明の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物を用いて得られる塗布層を有する塗装品及び本発明の抗菌抗ウィルス性硬化用組成物を用いて得られる成形体は、抗菌抗ウィルス活性を有する材として人間の手が触れる箇所に好適に用いることができる。適用用途としては、スマートフォン外装、パソコン外装、タッチパネル、手すり、ドアノブ、洗面台、エレベーターボタン等のプッシュボタン、室内内装品(壁紙、フローリング等)、各種包装材、各種繊維製品、医療装備品(医療用手袋、医療用眼鏡等)等の、幅広い用途に利用可能である。
(抗菌及び抗ウィルス性の発現方法)
本開示の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物を用いて得られる塗布層を有する塗装品及び本開示の抗菌抗ウィルス性硬化用組成物を用いて得られる成形体は、蛍光灯、白熱電球、ハロゲンランプ、白色、青色、緑色等のLED(発光ダイオード)、半導体レーザー、エレクトロルミネッセンス光源等や、太陽光(自然光)といった光照射下に曝すことにより、十分な抗菌抗ウィルス性、すなわち菌およびウィルスの増殖を抑制または減少させることができるだけでなく、例えば暗所に静置するなど光照射下でなくともよく、明暗に関係なく、十分な抗菌抗ウィルス性を発揮する。
【実施例0066】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。また、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。
【0067】
(評価方法)
(1)<溶解度の評価>
JIS K8001を参考に、1gの溶質を溶媒中に入れ、20±5℃で5分ごとに強く30秒間振り混ぜるとき30分以内に溶ける度合で評価をおこなった。
「金属化合物(B)に対して可溶性を示す」とは、1gの金属化合物(B)が10ml以下の溶媒で溶解する場合を「金属化合物(B)に対して可溶性を示す」とし、「水系溶媒(A)に対して難溶性を示す」とは、1g物質または1mlの溶媒を溶かすのに100ml以上の水系溶媒(A)が必要となる場合を「水系溶媒(A)に対して難溶性を示す」とした。ここで言う「溶ける」とは残渣が目視で確認できないことをいう。
【0068】
(2)<乳化安定性の評価>
実施例及び比較例で作製した各抗菌抗ウィルス性組成物を200mlスクリュー瓶に入れて、前記各抗菌抗ウィルス性組成物の作製直後の粘度と、前記各抗菌抗ウィルス性組成物を40℃で7日間静置した後の粘度とを25℃下で静置してそれぞれ測定し、以下の基準で評価した。なお、当該粘度は、溶液状の抗菌抗ウィルス性組成物を25℃に温度調整し、ブルックフィールド型粘度計(B8L型粘度計、株式会社トキメック製)を用いて測定できる。
〇・・・40℃で7日経過後の粘度が、作製直後より0.5~2倍以内
×・・・40℃で7日経過後の粘度が、作製直後より0.5倍未満又は2倍越
【0069】
(3)<相溶性の評価>
実施例及び比較例で作製した抗菌抗ウィルス性組成物を200mlスクリュー瓶に入れ、25℃下で静置し、以下の基準で目視により評価した。
〇・・・相分離無
×・・・相分離、沈降有
【0070】
(4)<抗ウィルス性の評価>
抗ウィルス性評価は、JIS R 1706:2020のフィルム密着法を参考に、バクテリオファージQβを対象に行った。
ブランク試験片表面及び抗菌抗ウィルスコーティング試験片表面へのウィルス接種作用条件は、暗所25℃で4時間とした。ブランク試験片と抗菌抗ウィルスコーティング試験片における4時間反応後のバクテリオファージQβ感染価より、以下の計算式を用いて抗ウィルス活性値を算出した。結果を表1に示す。抗ウィルス活性値は2.0以上であれば、抗ウィルス効果があると評価する。
抗ウィルス活性値=Log(A/B)=Log(A)-Log(B)
Log(A):ブランク試験片の4時間反応後の感染価の常用対数値
Log(B):抗菌抗ウィルスコーティング試験片の4時間反応後の感染価の常用対数値
【0071】
(5)<抗菌性の評価>
抗菌性評価はサンアイバイオチェッカーFC(三愛石油株式会社製)を用いて行った。予め室温で1週間放置した井戸水をサンバイオチェッカーの培地面に滴下し、実施例及び比較例で作製した抗菌抗ウィルスコーティング試験片の塗布層と接触させマスキングテープで固定した。この試料を30℃で2日間培養し、いずれかの培地にコロニーが形成されたものを×、いずれの培地にもコロニーが形成されなかったものを○とした。
【0072】
(6)<透明性の評価>
実施例及び比較例において作製した抗菌抗ウィルス性フィルムを、JIS K7136:2000の規格に準拠したヘーズメーターで測定した。また、有機溶媒(B)、金属化合物(B)及び界面活性剤を含有しないこと以外は実施例の方法と同様に作製したブランクフィルムのヘーズ値もJIS K7136:2000の規格に準拠したヘーズメーターで測定した。そして、実施例及び比較例の抗菌抗ウィルス性フィルムの測定した各ヘーズ値を、前記ブランクフィルムのヘーズ値に対して、以下の基準で評価した。
〇・・・ブランクフィルムのヘーズ値に対して+10.0%以内の値
×・・・ブランクフィルムのヘーズ値に対して+10.0%以上の値
【0073】
(7)<平均粒子径の測定>
抗菌抗ウィルス性組成物を水で10倍に希釈し、溶媒の屈折率を水(1.333)、試料の屈折率をマルチポリスチレン(1.590-0.000i)と設定して、粒度分布測定を行い、メジアン径を平均一次粒子径とした。
【0074】
「抗菌抗ウィルス性組成物の作製」
(金属化合物(B)の合成)
<合成例1:脂肪酸金属塩(Co)の調製>
2-エチルヘキサン酸319.0質量部と水酸化コバルト100.0質量部を130℃で反応し、130℃で減圧脱水後、石油系炭化水素134.2質量部を加えて2-エチルヘキサン酸コバルト溶液(脂肪酸金属塩(Co))502.3質量部を得た。得られた脂肪酸金属塩(Co)中のコバルト含有量は12質量%であった。
【0075】
<合成例2:第1の脂肪酸金属塩(Nd)の調製>
ネオデカン酸224.8質量部と酸化ネオジム60.0質量部を130℃で反応させた後、130℃で減圧脱水後、シクロヘキサン306.9質量部を加えてネオデカン酸ネオジム溶液570.0質量部を得た。得られた溶液の溶媒を130℃で留去し、第1の脂肪酸金属塩(Nd)としてネオデカン酸ネオジムを得た。得られたネオデカン酸ネオジム中のネオジム含有量は18.7質量%であった。
【0076】
<合成例3:脂肪酸金属塩(Bi)の調製>
2-エチルヘキサン酸330.6質量部と酸化ビスマス125.0質量部を130℃で反応し、130℃で減圧脱水後、2-エチルヘキサン酸ビスマス溶液439.5質量部を得た。得られた脂肪酸金属塩(Bi)中のビスマス含有量は25質量%であった。
【0077】
<合成例4:脂肪酸金属塩(Mg)の調製>
2-エチルヘキサン酸461.4質量部と水酸化マグネシウム71.9質量部、石油系炭化水素411.4質量部を110℃で反応させ、90℃で減圧脱水後、ブチルジグリコール35.9質量部を加えて2-エチルヘキサン酸マグネシウム溶液(脂肪酸金属塩(Mg))1000質量部を得た。得られた脂肪酸金属塩(Mg)中のマグネシウム含有量は3.0質量%であった。
【0078】
<合成例5:脂肪酸金属塩(La)の調製>
ネオデカン酸83.1質量部と酸化ランタン21.5質量部を130℃で反応し、130℃で減圧脱水後、シクロヘキサン107.6質量部を加えてネオデカン酸ランタン溶液(脂肪酸金属塩(La))208.5質量部を得た。得られた脂肪酸金属塩(La)中のランタン含有量は8.8質量%であった。
【0079】
<合成例6:脂肪酸金属塩(Pr)の調製>
ネオデカン酸166.6質量部と酸化プラセオジム45.0質量部を130℃で反応し、130℃で減圧脱水後、シクロヘキサン220.0質量部を加えてネオデカン酸プラセオジム溶液(脂肪酸金属塩(Pr))422.0質量部を得た。得られた脂肪酸金属塩(Pr)中のプラセオジム含有量は8.8質量%であった。
【0080】
<合成例7:脂肪酸金属塩(Sm)の調製>
ネオデカン酸137.1質量部と酸化サマリウム37.6質量部を130℃で反応し、130℃で減圧脱水後、シクロヘキサン196.3質量部を加えてネオデカン酸サマリウム溶液(脂肪酸金属塩(Sm))364.7質量部を得た。得られた脂肪酸金属塩(Sm)中のサマリウム含有量は8.8質量%であった。
【0081】
<合成例8:脂肪酸金属塩(Gd)の調製>
ネオデカン酸149.3質量部と酸化ガドリニウム43.0質量部を130℃で反応し、130℃で減圧脱水後、シクロヘキサン230.2質量部を加えてネオデカン酸ガドリニウム溶液(脂肪酸金属塩(Gd))415.1質量部を得た。得られた脂肪酸金属塩(Gd)中のガドリニウム含有量は8.8質量%であった。
【0082】
<合成例9:第2の脂肪酸金属塩(Nd)の調製>
2-エチルヘキサン酸192.8質量部と酸化ネオジム60.0質量部を130℃で反応し、130℃で減圧脱水後、シクロヘキサン338.5質量部を加えて2-エチルヘキサン酸ネオジム溶液(脂肪酸金属塩(Nd))581.6質量部を得た。得られた第2の脂肪酸金属塩(Nd)中のネオジム含有量は8.8質量%であった。
【0083】
<合成例10:金属錯体(Mn)の調製>
ネオデカン酸マンガン溶液(Mn:6.5質量%)291質量部とベンジルアルコール1235質量部の溶液に8-ヒドロキシキノリン50質量部を加え50℃で1時間反応し、ネオデカン酸マンガンと8-ヒドロキシキノリンの錯体溶液(金属錯体(Mn))1576質量部を得た。得られた金属錯体(Mn)中のマンガン含有量は、1.2質量%であった。
【0084】
<合成例11:脂肪酸金属塩(Zr)の調製>
2-エチルヘキサン酸173.7質量部と炭酸ジルコニウム180.0質量部を110℃で反応し、90℃で減圧脱水後、ミネラルスピリットで希釈し2-エチルヘキサン酸ジルコニウム溶液445.4質量部を得た。得られた脂肪酸金属塩(Zr)中のジルコニウ
ム含有量は12質量%であった。
【0085】
<その他>
上記の他、2-エチルヘキサン酸イットリウムである脂肪酸金属塩(Y)、2-エチルヘキサン酸鉛である脂肪酸金属塩(Pb)及び2-エチルヘキサン酸銀である脂肪酸金属塩(Ag)の市販品をそれぞれ準備した(2-エチルヘキサン酸イットリウムは富士フィルム和光純薬株式会社製、2-エチルヘキサン酸鉛はDIC株式会社製、2-エチルヘキサン酸銀は富士フィルム和光純薬株式会社製。)。
実施例及び比較例において、使用した界面活性剤(D)は、以下の通りである。
界面活性剤(D1):第一工業製薬社製 ノイゲンEA-137(HLB 13.0)
界面活性剤(D2):第一工業製薬社製 ノイゲンEA-167(HLB 14.8) 界面活性剤(D3):第一工業製薬社製 ノイゲンEA-177(HLB 15.6)
界面活性剤(D4):第一工業製薬社製 ノイゲンEA-87(HLB 10.6)
界面活性剤(D5):第一工業製薬社製 ノイゲンEA-207D(HLB 18.7)
【0086】
(実施例1)
上記合成例2で合成したネオデカン酸ネオジムと有機溶媒(B)としてシクロヘキサンとを混合して、ネオデカン酸ネオジム(ネオジム含有量18.7wt%)の52wt%シクロヘキサン溶液を調製した。その後、イオン交換水45質量部及び界面活性剤混合液(D-A)(第一工業製薬社製 ノイゲンEA-137(HLB 13.0)0.5質量部、ノイゲンEA-167(HLB 14.8)1.5質量部、アデカ社製増粘剤アデカノールUH-752 1質量部を、メタノール/水混合溶媒2質量部に溶解したもの)5質量部の混合液に、ネオデカン酸ネオジム(ネオジム含有量18.7wt%)の52wt%シクロヘキサン溶液50質量部、を添加し、高速乳化分散機(プライミクス社製、ホモミクサーMARK II 2.5型)を用いて高速撹拌して抗菌抗ウィルス性組成物(1)を得た。その後、抗菌抗ウィルス性組成物(1)を上記(2)<乳化安定性の評価>及び(3)<相溶性の評価>の欄に記載の手順に従い、乳化安定性及び相分離・沈降の有無を評価した。
【0087】
(実施例2)
界面活性剤混合液(D-A)中の「ノイゲンEA-167(HLB 14.8)」を、界面活性剤「ノイゲンEA-177(HLB 15.6)」に置き換えた界面活性剤混合液(D-B)以外は、実施例1と同様にして、抗菌抗ウィルス性組成物(2)を得た。その後、抗菌抗ウィルス性組成物(2)を上記(2)<乳化安定性の評価>及び(3)<相溶性の評価>の欄に記載の手順に従い、乳化安定性及び相分離・沈降の有無を評価した。
なお、上記界面活性剤混合液(D-B)の組成は、第一工業製薬社製 ノイゲンEA-137(HLB 13.0)0.5質量部と、ノイゲンEA-177(HLB 15.6)1.5質量部と、アデカ社製増粘剤アデカノールUH-752 1質量部とを、メタノ
ール/水混合溶媒2質量部に溶解した組成である。
【0088】
(実施例3)
イオン交換水45質量部及び実施例1の界面活性剤混合液(D-A)5質量部の混合液に、合成例11で合成した2-エチルヘキサン酸ジルコニウム(ジルコニウム含有量12.0wt%)の50wt%ミネラルスピリット溶液50質量部、を添加し、高速乳化分散機(プライミクス社製、ホモミクサーMARK II 2.5型)を用いて高速撹拌して抗菌抗ウィルス性組成物(3)を得た。その後、抗菌抗ウィルス性組成物(3)を上記(2)<乳化安定性の評価>及び(3)<相溶性の評価>の欄に記載の手順に従い、乳化安定性及び相分離・沈降の有無を評価した。
【0089】
(実施例4)
イオン交換水61.7質量部及び実施例1の界面活性剤混合液(D-A)5質量部の混合液に、合成例3で合成した2-エチルヘキサン酸ビスマス(ビスマス含有量25wt%)の25wt%2-エチルヘキサン酸溶液33.3質量部、を添加し、高速乳化分散機(プライミクス社製、ホモミクサーMARK II 2.5型)を用いて高速撹拌して抗菌抗ウィルス性組成物(4)を得た。その後、抗菌抗ウィルス性組成物(4)を上記(2)<乳化安定性の評価>及び(3)<相溶性の評価>の欄に記載の手順に従い、乳化安定性及び相分離・沈降の有無を評価した。
【0090】
(参考例1)
イオン交換水45質量部及び実施例1の界面活性剤混合液(D-A)5質量部の混合液に、合成例10で合成したネオデカン酸マンガン(マンガン含有量8.0wt%)の52wt%ベンジルアルコール溶液50質量部、を添加し、高速乳化分散機(プライミクス社製、ホモミクサーMARK II 2.5型)を用いて高速撹拌して抗菌抗ウィルス性組成物(C1)を得た。その後、抗菌抗ウィルス性組成物(C1)を上記(2)<乳化安定性の評価>及び(3)<相溶性の評価>の欄に記載の手順に従い、乳化安定性及び相分離・沈降の有無を評価した。
【0091】
(比較例1)
上記合成例2で合成したネオデカン酸ネオジムと有機溶媒(B)としてシクロヘキサンとを混合して、ネオデカン酸ネオジム(ネオジム含有量18.7wt%)の52wt%シクロヘキサン溶液を調製した。その後 、イオン交換水50質量部に、ネオデカン酸ネオ
ジム(ネオジム含有量18.7wt%)の52wt%シクロヘキサン溶液50質量部添加し、高速乳化分散機(プライミクス社製、ホモミクサーMARK II 2.5型)を用いて高速撹拌して比較用組成物(1)を得た。その後、比較用組成物(1)を上記(2)<乳化安定性の評価>及び(3)<相溶性の評価>の欄に記載の手順に従い、乳化安定性及び相分離・沈降の有無を評価した。
【0092】
(比較例2)
実施例1の界面活性剤混合液(D-A)に代えて界面活性剤混合液(D-C)(第一工業製薬社製 ノイゲンEA-87 (HLB 10.6)2質量部、アデカ社製増粘剤UH-752 1質量部を、メタノール/水混合溶媒2質量部に溶解したもの)5質量部を使用し、高速乳化分散機(プライミクス社製、ホモミクサーMARK II 2.5型)を用いて高速撹拌して比較用組成物(2)を得た。その後、比較用組成物(2)を上記(2)<乳化安定性の評価>及び(3)<相溶性の評価>の欄に記載の手順に従い、乳化安定性及び相分離・沈降の有無を評価した。
【0093】
(比較例3)
実施例1の界面活性剤混合液(D-A)に代えて界面活性剤混合液(D-D)(第一工業製薬社製 ノイゲンEA-207D (HLB 18.7)2質量部、アデカ社製増粘剤UH-752 1質量部を、メタノール/水混合溶媒2質量部に溶解したもの)5質量部を使用し、高速乳化分散機(プライミクス社製、ホモミクサーMARK II 2.5型)を用いて高速撹拌して比較用組成物(3)を得た。その後、比較用組成物(3)を上記(2)<乳化安定性の評価>及び(3)<相溶性の評価>の欄に記載の手順に従い、乳化安定性及び相分離・沈降の有無を評価した。
【0094】
(比較例4)イオン交換水45質量部と実施例1の界面活性剤混合液(D-A)5質量部の混合液に、シクロヘキサン溶液50質量部を添加し、高速乳化分散機(プライミクス社製、ホモミクサーMARK II 2.5型)を用いて高速撹拌して比較用組成物(4)を得た(金属化合物(B)を不含)。その後、比較用組成物(4)を上記(2)<乳化安定性の評価>及び(3)<相溶性の評価>の欄に記載の手順に従い、乳化安定性及び相分離・沈降の有無を評価した。
【0095】
「抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物及びフィルム塗布物の作製」
(実施例5)
水性ウレタン樹脂(ポリカーボネートウレタン樹脂:DIC社製、ハイドラン WLS-210 樹脂固形分35%)100質量部と、実施例1で得られた抗菌抗ウィルス性組成物(金属量4.4wt%)を2.4質量部添加し、分散撹拌機(プライミクス社製TKホモディスパー2.5型)で撹拌し、抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物全体に対する樹脂固形分に対する金属量が0.3%となるようにした水性塗剤を得た。得られた水性塗剤をバーコーターでPETフィルム(パナック製 厚み250μm)に20μmの膜厚で塗布し、120℃で5分間乾燥したフィルム塗布物を有する抗菌抗ウィルス性フィルムで抗ウィルス性評価、透明性評価をおこなった。
なお、作製した抗菌抗ウィルス性フィルムについて、比較例6、7を実質的に抗菌抗ウィルス性組成物の塗布物を含まないブランク試験片とし、実施例5~7の抗菌抗ウィルス性フィルムを抗菌抗ウィルスコーティング試験片とし、上記の抗ウィルス性試験及び抗菌性試験を行った。結果を表2に示す。
【0096】
(実施例6)
実施例5の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物を4.8質量部添加とする以外は同じ方法で、樹脂固形分に対する金属量が0.6質量%となるようにした水性塗剤を得た。得られた水性塗剤をバーコーターでPETフィルム(パナック製 厚み250μm)に20μmの膜厚で塗布し、120℃で5分間乾燥したフィルム塗布物で抗ウィルス性評価、外観評価をおこなった。
【0097】
(実施例7)
実施例5の抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物を14質量部添加とする以外は同じ方法で、樹脂固形分に対する金属量が1.8質量%となるようにした水性塗剤を得た。得られた水性塗剤をバーコーターでPETフィルム(パナック製 厚み250μm)に20μmの膜厚で塗布し、120℃で5分間乾燥したフィルム塗布物で抗ウィルス性評価、外観評価をおこなった。
【0098】
(比較例5)
水性ウレタン樹脂(DIC製、ハイドランWLS-210)をそのまま、PETフィルム(パナック製、厚み250μm)にバーコーターで塗布し、フィルム塗布物を得た。
【0099】
(比較例6)
水性ウレタン樹脂(ポリカーボネートウレタン樹脂:DIC社製、ハイドラン WLS-210 樹脂固形分35%)100質量部を、銀担持リン酸ジルコニウム(東亜合成株式会社製「ノバロンAG1100」、銀イオン含有量11wt%)を1質量部添加し、分散撹拌機(プライミクス社製TKホモディスパー2.5型)で撹拌し、樹脂固形分に対する銀含有量が3.85質量%となるようにした水性塗剤を得た。得られた水性塗剤をバーコーターでPETフィルム(パナック製 厚み250μm)に20μmの膜厚で塗布し、120℃で5分間乾燥したフィルム塗布物で抗ウィルス性評価、外観評価をおこなった。
【0100】
「抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物及び抗菌抗ウィルス性布帛の作製」
(実施例8)
<水性繊維加工液と布帛の作製>
実施例1の抗菌抗ウィルス性組成物(1)24質量部と水71.6質量部、水性アクリル樹脂(DIC製 DEXCEL HPS CLEAR CONC L-502)3質量部とエチルセルロース1.4質量部を撹拌混合した水性塗剤を作製した。前記水性塗剤20質量部と水80質量部を分散撹拌機(プライミクス社製TKホモディスパー2.5型)で撹拌し、水性繊維加工液である抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物を作製した。前記抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物を、綿/ポリエステル混紡布(生地質量 100g/m2)に対して、85g/m2の割合で浸漬し、120℃x2分で乾燥して抗菌抗ウィルス性布帛を得た。
【0101】
【0102】
上記表1の結果から、本実施例の抗菌抗ウィルス性組成物は、比較例の組成物に比べて、相溶性及び乳化安定性に優れることが確認された。また、上記表2の結果から、本実施例の抗菌抗ウィルス性組成物を含有する抗菌抗ウィルス性コーティング用組成物を用いて作製した、抗菌抗ウィルス性フィルム及び抗菌抗ウィルス性布帛について、高い抗菌抗ウィルス性が認められた。