(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089730
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】支持部材の製造方法、支持部材、および発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20240627BHJP
H01L 33/58 20100101ALI20240627BHJP
H01S 5/02253 20210101ALI20240627BHJP
【FI】
H01L23/12 F
H01L33/58
H01S5/02253
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205098
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】竹田 英明
(72)【発明者】
【氏名】宮田 忠明
(72)【発明者】
【氏名】木村 圭宏
【テーマコード(参考)】
5F142
5F173
【Fターム(参考)】
5F142AA51
5F142BA32
5F142DB12
5F173MA08
5F173MA10
5F173MB04
5F173MC26
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5F173ME32
5F173ME63
5F173ME66
5F173ME85
5F173MF03
5F173MF39
(57)【要約】
【課題】表面の一部に金属膜が設けられた支持部材を効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】他の部材を支持する支持部材の製造方法は、表面および裏面を有する基板を用意する工程と、基板の表面に、複数の第1の溝と複数の第2の溝とを互いに交差するように形成する工程と、物理堆積法によって基板の表面に金属膜を形成する金属堆積工程と、複数の第1の溝および複数の第2の溝に沿って基板を複数の支持部材に個片化する工程と、を含み、複数の第2の溝の各々の幅は、複数の第1の溝の各々の幅よりも小さく、金属堆積工程は、複数の第1の溝の各々によって露出する第1表面、複数の第2の溝の各々によって露出する第2表面、ならびに第1表面および第2表面に繋がる第3表面に、金属膜を形成することを含む。
【選択図】
図5D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の部材を支持する支持部材の製造方法であって、
表面および裏面を有する基板を用意する工程と、
前記基板の前記表面に、第1方向に沿って延びる複数の第1の溝、および前記第1方向に交差する第2方向に沿って延びる複数の第2の溝を形成する工程と、
物理堆積法によって前記基板の前記表面に金属膜を形成する金属堆積工程と、
前記複数の第1の溝および前記複数の第2の溝に沿って前記基板を複数の支持部材に個片化する工程と、
を含み、
前記複数の第2の溝の各々の幅は、前記複数の第1の溝の各々の幅よりも小さく、
前記金属堆積工程は、
前記複数の第1の溝の各々によって露出する第1表面の少なくとも一部である第1領域、前記複数の第2の溝の各々によって露出する第2表面の少なくとも一部である第2領域、ならびに前記第1表面および前記第2表面に繋がる第3表面の少なくとも一部である第3領域に、前記金属膜を形成することを含み、
前記第2領域上の前記金属膜の厚さを、前記第1領域上の前記金属膜の厚さよりも小さくし、かつ、前記第3領域上の前記金属膜の厚さよりも小さくする、支持部材の製造方法。
【請求項2】
前記金属堆積工程は、前記第1領域上の前記金属膜の厚さを、前記第3領域上の前記金属膜の厚さよりも小さくする、請求項1に記載の支持部材の製造方法。
【請求項3】
前記金属堆積工程は、
前記第2表面のうち、前記第3表面と前記第2領域との間の第4領域に、前記金属膜を形成することを含み、
前記第4領域上の前記金属膜の厚さを、前記第2領域上の前記金属膜の厚さよりも大きくし、かつ、前記第3領域上の前記金属膜の厚さよりも小さくする、請求項1または2に記載の支持部材の製造方法。
【請求項4】
前記複数の第1の溝の各々の幅は、100μm以上500μm以下であり、
前記複数の第1の溝の各々の深さは、500μm以上1500μm以下であり、
前記複数の第2の溝の各々の幅は、1μm以上80μm以下であり、
前記複数の第2の溝の各々の深さは、50μm以上1500μm以下である、請求項1または2に記載の支持部材の製造方法。
【請求項5】
前記複数の第2の溝の各々の幅の、前記複数の第1の溝の各々の幅に対する比率は、0.01以上0.6以下である、請求項4に記載の支持部材の製造方法。
【請求項6】
前記第1領域に接合材を介して前記他の部材を配置した状態で、前記第2領域にレーザ光を照射することにより、前記接合材を加熱して前記第1領域に前記他の部材を接合することが可能である、請求項1または2に記載の支持部材の製造方法。
【請求項7】
前記レーザ光の波長は、0.9μm以上1.2μm以下であり、
前記波長を有する光に対する前記第2領域の反射率は、前記波長を有する光に対する前記第1領域および前記第3領域の各々の反射率よりも低い、請求項6に記載の支持部材の製造方法。
【請求項8】
前記基板を前記複数の支持部材に個片化する工程は、前記基板の前記裏面から、前記複数の第1の溝および前記複数の第2の溝を通って前記基板を切断することを含む、請求項1または2に記載の支持部材の製造方法。
【請求項9】
用意する前記基板は、前記第2方向に沿って延びる複数の凹部を有し、
前記基板の前記表面に前記複数の第1の溝および前記複数の第2の溝を形成する工程は、前記基板の前記表面に、前記凹部を横切るように前記複数の第1の溝を形成し、前記凹部の端から離れた位置を通るように前記複数の第2の溝を形成することを含み、
前記複数の支持部材の各々は、一対の柱状部分および前記一対の柱状部分の上部を連結する連結部分を有し、
前記一対の柱状部分は、前記基板における前記凹部と、前記凹部に隣り合う前記第2の溝との間に位置する部分であって、前記複数の第1の溝のうち、互いに隣り合う第1の溝の間に位置する部分から構成されており、
前記連結部分は、前記基板における前記凹部の底面と前記裏面との間に位置する部分であって、前記複数の第1の溝のうち、互いに隣り合う第1の溝の間に位置する部分から構成されており、
前記一対の柱状部分は、前記第1表面、前記第2表面、および前記第3表面を有する、請求項1または2に記載の支持部材の製造方法。
【請求項10】
前記一対の柱状部分は、前記凹部の内側面であって、前記第1表面および前記第3表面に繋がる第4表面を有し、
前記金属堆積工程は、前記第4表面の少なくとも一部である第5領域に前記金属膜を堆積することを含む、請求項9に記載の支持部材の製造方法。
【請求項11】
他の部材を支持する支持部材であって、
前記他の部材が接合される正面と、前記正面の反対側の背面と、前記正面および前記背面に繋がる底面と、前記正面および前記背面に繋がる2つの外側面とを有する本体と、
前記底面、前記正面、および前記2つの外側面の各々に設けられる金属膜と、
を備え、
前記2つの外側面の各々に設けられる前記金属膜の厚さは、前記底面に設けられる前記金属膜の厚さよりも小さく、かつ、前記正面に設けられる前記金属膜の厚さよりも小さい、支持部材。
【請求項12】
前記金属膜は、前記底面から前記2つの外側面にわたって連続的に設けられており、
前記2つの外側面の各々は、前記底面および前記正面に繋がる領域と、前記底面および前記正面から離れて位置する他の領域とを有し、前記領域に設けられる前記金属膜の厚さは、前記他の領域に設けられる前記金属膜の厚さよりも大きい、請求項11に記載の支持部材。
【請求項13】
前記本体は、前記正面および前記背面に繋がる上面を有し、
前記支持部材は、前記本体の前記上面から突出する凸部を備える、請求項11または12に記載の支持部材。
【請求項14】
前記本体は、一対の柱状部分および前記一対の柱状部分の上部を連結する連結部分を有し、
前記本体の前記2つの外側面は、前記一対の柱状部分の外側面であり、
前記本体の前記底面は、前記一対の柱状部分の各々の底面であり、
前記本体の前記正面は、前記一対の柱状部分の正面および前記連結部分の正面を有する、請求項11または12に記載の支持部材。
【請求項15】
前記本体は、前記一対の柱状部分の内側面である2つの内側面を有し、前記2つの内側面の各々に設けられる金属膜を備える、請求項14に記載の支持部材。
【請求項16】
請求項11または12に記載の支持部材と、
前記支持部材によって支持されるレンズと、
前記レンズに向けて光を出射する半導体発光素子と、
前記支持部材および前記半導体発光素子を支持するサブマウントと、
を備える、発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、支持部材の製造方法、支持部材、および発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子を備える発光装置において、レンズのような部材を固定位置に支持することが求められる。そのような部材を支持する支持部材には、両部材を無機接合材で接合するための金属膜が設けられ得る。当該金属膜は、用途および目的によっては、支持部材の全面ではなく一部に設けられる。特許文献1には、半導体レーザ素子を支持するサブマウントの一部に金属膜を形成する方法の例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表面の一部に金属膜が設けられた支持部材を効率的に製造する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の、他の部材を支持する支持部材の製造方法は、ある実施形態において、表面および裏面を有する基板を用意する工程と、前記基板の前記表面に、第1方向に沿って延びる複数の第1の溝、および前記第1方向に交差する第2方向に沿って延びる複数の第2の溝を形成する工程と、物理堆積法によって前記基板の前記表面に金属膜を形成する金属堆積工程と、前記複数の第1の溝および前記複数の第2の溝に沿って前記基板を複数の支持部材に個片化する工程と、を含み、前記複数の第2の溝の各々の幅は、前記複数の第1の溝の各々の幅よりも小さく、前記金属堆積工程は、前記複数の第1の溝の各々によって露出する第1表面の少なくとも一部である第1領域、前記複数の第2の溝の各々によって露出する第2表面の少なくとも一部である第2領域、ならびに前記第1表面および前記第2表面に繋がる第3表面の少なくとも一部である第3領域に、前記金属膜を形成することを含み、前記第2領域上の前記金属膜の厚さを、前記第1領域上の前記金属膜の厚さよりも小さくし、かつ、前記第3領域上の前記金属膜の厚さよりも小さくする。
【0006】
本開示の、他の部材を支持する支持部材は、ある実施形態において、前記他の部材が接合される正面と、前記正面の反対側の背面と、前記正面および前記背面に繋がる底面と、前記正面および前記背面に繋がる2つの外側面とを有する本体と、前記底面、前記正面、および前記2つの外側面の各々に設けられる金属膜と、を備え、前記2つの外側面の各々に設けられる前記金属膜の厚さは、前記底面に設けられる前記金属膜の厚さよりも小さく、かつ、前記正面に設けられる前記金属膜の厚さよりも小さい。
【0007】
本開示の発光装置は、ある実施形態において、前記支持部材と、前記支持部材によって支持されるレンズと、前記レンズに向けて光を出射する半導体発光素子と、前記支持部材および前記半導体発光素子を支持するサブマウントと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、表面の一部に金属膜が設けられた支持部材を効率的に製造する方法を提供することができる。また、レンズ等の他の部材を接合する際に、他の部材を接合しやすい支持部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、本開示の例示的な実施形態1による発光装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1Aの発光装置からパッケージ、リード端子、および内部のワイヤを省略した構成のより詳細を示す分解斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、
図2に示す支持部材から金属膜を省略した構成を正面側から見た斜視図である。
【
図3B】
図3Bは、
図2に示す支持部材から金属膜を省略した構成を背面側から見た斜視図である。
【
図3C】
図3Cは、
図2に示す支持部材から金属膜を省略した構成を底面側から見た斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、支持部材およびレンズの接合方法を説明するための上面図である。
【
図4B】
図4Aは、支持部材およびレンズの接合方法を説明するための側面図である。
【
図5A】
図5Aは、本実施形態による支持部材の製造方法における工程の例を説明するための斜視図である。
【
図5B】
図5Bは、本実施形態による支持部材の製造方法における工程の例を説明するための斜視図である。
【
図5C】
図5Cは、本実施形態による支持部材の製造方法における工程の例を説明するための斜視図である。
【
図5D】
図5Dは、本実施形態による支持部材の製造方法における工程の例を説明するための斜視図である。
【
図5E】
図5Eは、本実施形態による支持部材の製造方法における工程の例を説明するための斜視図である。
【
図5F】
図5Fは、本実施形態による支持部材の製造方法における工程の例を説明するための斜視図である。
【
図5G】
図5Gは、本実施形態による支持部材の製造方法における工程の例を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態による支持部材が支持する「他の部材」の一例は、レンズである。「他の部材」はレンズに限定されず、例えば、ミラー、フィルター、もしくはプリズムなどの光学部品、または半導体レーザ素子、LED、もしくはトランジスタなどの半導体素子であってもよい。
【0011】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態による発光装置、支持部材、および支持部材の製造方法の詳細をこの順に説明する。複数の図面に表れる同一符号の部分は同一または同等の部分を示す。
【0012】
さらに以下は、本発明の技術思想を具体化するために例示しているのであって、本発明を以下に限定しない。また、構成要素の寸法、材質、形状、その相対的配置などの記載は、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図している。各図面が示す部材の大きさや位置関係などは、理解を容易にするなどのために誇張している場合がある。
【0013】
本明細書または特許請求の範囲において、ある構成要素に関し、これに該当する構成要素が複数あり、それぞれを区別して表現する場合に、その構成要素の頭に“第1”、“第2”と付記して区別することがある。本明細書と特許請求の範囲とで区別する対象や観点が異なる場合、本明細書と特許請求の範囲との間で、同一の付記が、同一の対象を指さない場合がある。 図面では、参考のために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸が模式的に示されている。本明細書において、X軸の矢印の方向を+X方向と称し、その反対の方向を-X方向と称する。±X方向を区別しない場合、単にX方向と称する。Y方向およびZ方向についても同様である。また、説明のわかりやすさのため、本明細書または特許請求の範囲では、+Y方向を「上方」、-Y方向を「下方」、+Z方向を「前方」、-Z方向を「後方」とも表現する。参照した図面における相対的な方向または位置の関係が同一であれば、本開示以外の図面、実際の製品、製造装置等において、参照した図面と同一の配置でなくてもよい。
【0014】
(実施形態)
[発光装置]
まず、
図1Aから
図2を参照して、本開示の実施形態による発光装置の例を説明する。
図1Aは、本開示の例示的な実施形態による発光装置の構成を模式的に示す斜視図である。
図1Aに示す発光装置100は、半導体レーザ素子と、半導体レーザ素子を収容するパッケージ50と、半導体レーザ素子に電力を供給する2つのリード端子60とを備える。パッケージ50は、蓋体50Lと、基体50bと、透光窓50wとを備える。半導体レーザ素子から出射されるレーザ光は、透光窓50wからパッケージ50の外部へ取り出される。パッケージ50は、半導体レーザ素子を気密封止する封止空間を形成する。気密封止の必要性は、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光の波長が短くなるほど高くなる。気密封止されず、半導体レーザ素子の出射端面が外気に接している構成では、レーザ光の波長が短くなるほど、集塵によって動作中に出射端面の劣化が進行していく可能性が高くなるからである。
【0015】
図1Bは、
図1Aの発光装置100の内部の平面構成を模式的に示す図である。
図1Bにおいて、
図1Aに示すパッケージ50のうち、蓋体50Lが省略されている。基体50bは、底板50b1と、底板50b1に設けられたステージ50b2と、ステージ50b2を囲む側壁50b3を含む。発光装置100は、基体50bの内部に、ステージ50b2によって支持されるサブマウント10と、サブマウント10によって支持される半導体レーザ素子20および支持部材30と、支持部材30によって支持されるレンズ40とを備える。半導体レーザ素子20は、レンズに向けてレーザ光を出射する。本明細書において、サブマウント10、半導体レーザ素子20、支持部材30、およびレンズ40を少なくとも備える構成を「発光装置」と称する。
【0016】
発光装置100は、さらに、基体50bの内部に複数のワイヤ60wを備える。複数のワイヤ60wの一部は、一方のリード端子60と半導体レーザ素子20とに電気的に接続されており、残りの部分は、他方のリード端子60と半導体レーザ素子20とに電気的に接続されている。複数のワイヤ60wは、2つのリード端子60から半導体レーザ素子20に電力を供給するために用いられる。2つのリード端子60は、半導体レーザ素子20から出射されるレーザ光の出射タイミングおよび出力を調整する外部回路に電気的に接続されている。
【0017】
図2は、
図1Aの発光装置100からパッケージ50、リード端子60、および内部のワイヤ60wを省略した構成のより詳細を示す分解斜視図である。
図2に示す破線によって囲まれた領域には、後方から見たレンズ40が示されている。
図2に示す発光装置100Aは、サブマウント10と、半導体レーザ素子20と、支持部材30と、レンズ40とを備える。
図2では、支持部材30およびレンズ40が互いに分離された状態で示されているが、実際には、両者は互いに接合されている。以下に、各構成要素を説明する。各構成要素の材料および寸法などの詳細については後述する。
【0018】
サブマウント10は、
図2に示すようにXZ平面に対して平行である上面10s1および下面10s2を有する。
図2に示す例において、サブマウント10は直方体の形状を有するが、任意の平板形状を有していてもよい。サブマウント10は、さらに、上面10s1および下面10s2の各々に設けられる金属膜を備える。上面10s1に設けられる金属膜は、半導体レーザ素子20をサブマウント10に無機接合材で接合する際に、接合強度を向上させる。上面10s1に設けられる金属膜は、さらに、半導体レーザ素子20に電力を供給するのに用いてもよい。具体的には、半導体レーザ素子20の下面電極および金属膜が導電性の接合材で接合され、金属膜にワイヤ60wがワイヤボンディングされる。下面10s2に設けられる金属膜は、サブマウント10を、
図1Bに示す基体50bのステージ50b2に無機接合材で接合する際に、接合強度を向上させる。
【0019】
半導体レーザ素子20は、
図2に示すように、サブマウント10の上面10s1に設けられている。
図2に示す例において、半導体レーザ素子20は、Z方向に延びる直方体の形状を有する。半導体レーザ素子20は、Z方向に交差する2つの端面を有し、この2つの端面が共振器を構成する。当該2つの端面のうち、レンズ40の側に位置する端面20eが、レーザ光を出射する端面である。端面20eはX方向に沿って延びる矩形形状を有する。
【0020】
半導体レーザ素子20は、端面20eからレーザ光を出射する。当該レーザ光は、+Z方向に進行するにつれて、YZ平面において相対的に速く広がり、XZ平面において相対的に遅く広がる。その結果、当該レーザ光は、端面20eに対して平行な面において、楕円形状のファーフィールドパターンを形成する。楕円の長軸はY方向に対して平行であり、短軸はX方向に対して平行である。ファーフィールドパターンとは、端面20eから離れた位置における光強度分布である。当該光強度分布において、レーザ光の強度がそのピーク強度の1/e2以上である部分をレーザ光の主要部分とする。eは自然対数の底である。
【0021】
なお、半導体レーザ素子20の代わりに、LEDを用いてもよい。本明細書において、半導体レーザ素子およびLEDをまとめて「半導体発光素子」とも称する。
【0022】
支持部材30は、サブマウント10の上面10s1に設けられている。支持部材30は、レンズ40を支持する。支持部材30は、本体30Aと、本体30Aから突出する凸部30Bとを備える。本体30Aは、一対の柱状部分30aと、一対の柱状部分30aの上部を連結する連結部分30bとを有する。一対の柱状部分30aは、半導体レーザ素子20の両側に位置し、連結部分30bは、半導体レーザ素子20の上方に位置する。言い換えれば、本体30Aは、半導体レーザ素子20を跨ぐブリッジ形状を有する。ブリッジ形状を有する本体30Aは、半導体レーザ素子20から出射されるレーザ光の進行を妨げない。凸部30Bは、後述する製造方法によって支持部材30を製造する際に残る部分である。凸部30Bは、上方から近づく物体がレンズ40に接触する可能性を低減するのに役立つ。なお、支持部材30は、凸部30Bを備えていなくてもよい。
【0023】
支持部材30は、本体30Aの上面以外の表面の少なくとも一部に設けられる金属膜30mを備える。
図2に示すハッチング部分は金属膜30mを表す。金属膜30mは、レンズ40を支持部材30に無機接合材で接合する際に、接合強度を向上させる。金属膜30mは、さらに、支持部材30をサブマウント10に無機接合材で接合する際に、接合強度を向上させる。金属膜30mは、例えば、単層または複数層を有し得る。単層の金属膜は、例えば、Cr、Ti、NiもしくはAu、またはこれらの2種類以上を含む合金から形成され得る。複数層の金属膜のうち、下地層は、例えばCr、Ti、もしくはNi、またはこれらの2種類以上を含む合金から形成される。中間層は、Pt、Pd、もしくはRu、またはこれらの2種類以上を含む合金から形成される。最表面は、例えばCr、Ti、Ni、もしくはAu、またはこれらの2種類以上を含む合金から形成され得る。支持部材30の形状および金属膜30mが設けられる領域については詳細を後述する。
【0024】
無機接合層32は、支持部材30とレンズ40との間に位置する。無機接合層32は、支持部材30とレンズ40とを接合する無機接合材を加熱することによって形成される。無機接合材は、例えば焼結材であり得る。焼結では、金属の粒子または金属の粉末を当該金属の融点よりも低い温度で加熱して焼き固めることにより、部材同士が接合される。無機接合材として、例えば金属ペーストを用いてもよい。金属ペーストは、有機バインダとその中に分散される複数の金属粒子とを有する。複数の金属粒子は、例えば、Ag粒子、Cu粒子、Au粒子、およびその他の貴金属粒子からなる群から選択される少なくとも1種類の金属粒子を含む。金属ペーストは柔軟性を有するので、金属ペースト中の複数の金属粒子を加熱によって焼結して支持部材30とレンズ40とを接合する際に、レンズ40の位置を微調整することができる。金属ペースト中の有機バインダは加熱中に揮発し、残りの焼結された複数の金属粒子から無機接合層32が形成される。
【0025】
レンズ40は、レーザ光が入射する光入射面40s1と、当該レーザ光を出射する光出射面40s2とを有する。レンズ40は、さらに、光入射面40s1の両側に位置する2つの接合面40s3を有する。2つの接合面40s3は、それぞれ、本体30Aの一対の柱状部分30aの前方端面に対向する。
【0026】
レンズ40は、光入射面40s1が半導体レーザ素子20の端面20eに対向するように配置されている。レンズ40は、YZ平面において曲率を有し、X方向に沿って一様に延びるコリメートレンズである。レンズ40は、その後方の光軸上に焦点を有する。半導体レーザ素子20の端面20eの中心は、レンズ40の焦点にほぼ一致する。したがって、レンズ40は、半導体レーザ素子20から出射されるレーザ光をYZ平面においてコリメートして光出射面40s2から前方に向けて出射する。レンズ40の光軸は、半導体レーザ素子20から出射されるレーザ光の光軸にほぼ一致する。本明細書において、「コリメートする」とは、レーザ光を平行光にすることだけではなく、レーザ光の広がり角を低減することも意味する。また、本明細書において、「レーザ光の光軸」は、レーザ光のファーフィールドパターンの中心を通過する軸を意味する。光軸上を進むレーザ光は、ファーフィールドパターンの光強度分布においてピーク強度を示す。
【0027】
なお、用途によっては、レンズ40はYZ平面およびXZ平面において曲率を有し、半導体レーザ素子20から出射されるレーザ光をYZ平面およびXZ平面においてコリメートしてもよい。あるいは、レンズ40は、半導体レーザ素子20から出射されるレーザ光を集光してもよい。
【0028】
レンズ40は、2つの接合面40s3の各々に設けられる金属膜40mを備える。金属膜40mは、レンズ40を支持部材30に無機接合材で接合する際に、接合強度を向上させる。
【0029】
支持部材30がレンズ40を支持するので、半導体レーザ素子20の端面20eと、レンズ40の光入射面40s1との距離は短くなる。したがって、半導体レーザ素子20から出射されるレーザ光が大きく広がる前に、レンズ40によってその広がりを低減することができ、小型の発光装置100Aを実現することが可能になる。
【0030】
半導体レーザ素子20から出射されるレーザ光の光軸方向から見て、すなわち前方から見て、レンズ40の重心は、X方向において、本体30Aの一対の柱状部分30aの間に位置する。前方から見て、レンズ40の重心は、さらに、Y方向において、一対の柱状部分30aの前方端面の上辺および下辺のうち、下辺よりも高い位置にあり、上辺よりも低い位置にある。レンズ40の重心を上記の位置とすることにより、支持部材30はレンズ40を安定的に支持することができる。
【0031】
[支持部材30の形状および材料]
次に、
図3Aから
図3Cを参照して、支持部材30の形状および材料を説明する。
図3Aから
図3Cは、それぞれ、
図2に示す支持部材30から金属膜30mを省略した構成を正面側、背面側、および底面側から見た斜視図である。金属膜30mを備えない本体30A0は、
図3Aに示すように、レンズ40が接合される正面30s1と、2つの外側面30s2と、上面30s3とを有する。本体30A0は、さらに、
図3Bに示すように、背面30s4を有する。本体30A0は、さらに、
図3Cに示すように、2つの底面30s5と、2つの内側面30s6と、下面30s7とを有する。外側面30s2は、
図3Aおよび
図3Bに示すように、正面30s1、背面30s4、および底面30s5に繋がる領域30r1と、正面30s1、背面30s4、および底面30s5から離れて位置する領域30r2とを有する。凸部30Bは、
図3Aおよび
図3Bに示すように、本体30A0の上面30s3から突出している。本明細書において、上記の複数の面30s1~30s7および領域30r1、30r2という用語は、金属膜30mを備える本体30Aにも用いられる。
【0032】
2つの外側面30s2は、本体30A0の一対の柱状部分30a0の外側面である。本体30A0の2つの底面30s5は、本体30A0の一対の柱状部分30a0の底面である。本体30A0の正面30s1は、一対の柱状部分30a0の正面および連結部分30b0の正面を有する。本体30A0の背面30s4は、一対の柱状部分30a0の背面および連結部分30b0の背面を有する。2つの内側面30s6は、本体30A0の一対の柱状部分30a0の内側面である。
【0033】
次に、本体30A0における複数の面の位置関係を説明する。正面30s1および背面30s4は、互いに反対側に位置する。正面30s1および背面30s4の各々は、2つの外側面30s2、上面30s3、2つの底面30s5、2つの内側面30s6、および下面30s7に繋がっている。各外側面30s2は、正面30s1、上面30s3、背面30s4、および2つの底面30s5の一方に繋がっている。上面30s3は、正面30s1、2つの外側面30s2、および背面30s4に繋がっている。各底面30s5は、正面30s1、2つの外側面30s2の一方、背面30s4、および2つの内側面30s6の一方に繋がっている。各内側面30s6は、正面30s1、背面30s4、2つの底面30s5の一方、および下面30s7に繋がっている。下面30s7は、正面30s1、背面30s4、および2つの底面30s5に繋がっている。
【0034】
図2に示す金属膜30mは、本体30A0における正面30s1、2つの外側面30s2、背面30s4、2つの底面30s5、2つの内側面30s6、および下面30s7に設けられており、上面30s3には設けられていない。金属膜30mは、2つの底面30s5、2つの内側面30s6、および下面30s7から、正面30s1、2つの外側面30s2、および背面30s4にわたって連続的に設けられている。
【0035】
金属膜30mのうち、正面30s1に設けられる金属膜は、レンズ40を支持部材30に無機接合材で接合する際に、接合強度を向上させる。金属膜30mのうち、底面30s5に設けられる金属膜は、支持部材30をサブマウント10に無機接合材で接合する際に、接合強度を向上させる。支持部材30とサブマウント10とを接合する無機接合材は、底面30s5に繋がる背面30s4および内側面30s6に設けられる金属膜にも回り込んでフィレットを形成する。+Y方向から見て、サブマウント10の外形が支持部材30の外形よりも大きい場合は、正面30s1および外側面30s2に設けられる金属膜にも回り込んでフィレットを形成する。その結果、支持部材30とサブマウント10との接合強度がさらに向上する。
【0036】
後述する支持部材30の製造方法により、外側面30s2に設けられる金属膜の厚さを、正面30s1、背面30s4、底面30s5、内側面30s6、および下面30s7の各々に設けられる金属膜の厚さよりも小さくする。外側面30s2に設けられる金属膜の厚さは均一ではない。外側面30s2と、正面30s1、背面30s4、および底面30s5の各々とによって形成される稜を第1の稜、外側面30s2と上面30s3とによって形成される稜を第2の稜とする。外側面30s2に設けられる金属膜の厚さは、第1の稜から第2の稜の中点に向かうにつれて小さくする。領域30r2は、例えば、外側面30s2のうち、外側面30s2に設けられる金属膜の厚さがその最大の厚さの1/10以下である領域であり得る。したがって、領域30r1に設けられる金属膜の厚さは、領域30r2に設けられる金属膜の厚さよりも大きい。外側面30s2の領域30r2に設けられる金属膜の厚さは十分小さいので、外側面30s2の領域30r2に設けられる金属膜は、
図2において省略されている。外側面30s2の領域30r2に設けられる金属膜の厚さが十分小さいことは、支持部材30とレンズ40とを無機接合材で接合する際に、領域30r2にレーザ光を照射して当該無機接合材を効率的に加熱するのに役立つ。つまり、支持部材とレンズ等の他の部材を接合する際に、他の部材を接合しやすい支持部材を提供することができる。
【0037】
本体30A0は、レーザ光の照射によって加熱することが可能な材料から形成されている。本体30A0は、例えば、ガラス、シリコン、石英、合成石英、サファイア、透明セラミック、およびプラスチックからなる群から選択される少なくとも1つの透光性材料から形成され得る。あるいは、本体30A0は、例えば、AlN、SiC、およびアルミナからなる群から選択される少なくとも1つのセラミックから形成され得る。凸部30Bの材料は、本体30A0の材料と同じである。
【0038】
[支持部材30およびレンズ40の接合方法]
次に、
図4Aおよび
図4Bを参照して、支持部材30およびレンズ40の接合方法を説明する。
図4Aおよび
図4Bは、それぞれ、支持部材30およびレンズ40の接合方法を説明するための上面図および側面図である。
図4Aおよび
図4Bに示す二点鎖線によって囲まれた領域は、半導体レーザ素子20から出射されるレーザ光20Lの主要部分を表す。
図4Aおよび
図4Bに示す例では、支持部材30とレンズ40とを接合する無機接合材として、金属ペースト32aが用いられている。
【0039】
図4Aに示すように、レンズ40は、金属ペースト32aを介して支持部材30の本体30Aに配置されている。
図4Aに示す白抜きの矢印は、加熱用のレーザ光が照射される方向を表す。
図4Aに示すように、支持部材30の本体30Aのうち、外側面30s2の領域30r2に加熱用のレーザ光が照射される。外側面30s2の領域30r1と領域30r2とは、
図4Bに示すように、金属膜30mの厚さの差から外観によって区別することができる。したがって、外側面30s2の領域30r2は、照射ターゲットとして視認しやすい。
【0040】
外側面30s2の領域30r2に設けられる金属膜の厚さは十分小さいので、加熱用のレーザ光はほとんど反射されることなく本体30Aの一対の柱状部分30aを効率的に加熱することができる。その結果、本体30Aの一対の柱状部分30aから金属ペースト32aに熱が伝わり、金属ペースト32a中の複数の金属粒子を焼結して支持部材30とレンズ40とを接合することができる。金属ペースト32a中の有機バインダは加熱中に揮発する。有機バインダが揮発しきれずに残った場合には、
図4Aに示す中間生成物をオーブンによって加熱して残った有機バインダを完全に揮発させてもよい。
【0041】
仮に加熱用のレーザ光の一部が外側面30s2の領域30r2で反射されても、加熱用のレーザ光は、
図4Aに示すように、領域30r2に対して垂直ではなく斜めに入射するので、照射によって生じる反射光は、加熱用のレーザ光を出射する光源には戻らない。したがって、戻り光による当該光源の損傷を防ぐことができる。
【0042】
前述したように、
図3Cに示す2つの内側面30s6にも金属膜が設けられている。当該金属膜は、外側面30s2の領域30r2から本体30Aの内部に入射した加熱用のレーザ光を反射する。したがって、加熱用のレーザ光が本体30Aを透過して半導体レーザ素子20に到達する可能性を低減できる。その結果、半導体レーザ素子20が加熱用のレーザ光で照射されて損傷する可能性を低減することが可能になる。
図3Aに示す正面30s1、
図3Bに示す背面30s4、および
図3Cに示す下面30s7に設けられる金属膜も、加熱用のレーザ光が本体30Aを透過して半導体レーザ素子20に到達する可能性を低減できる。
【0043】
加熱用のレーザ光のパワー密度は、例えば10kW/cm2以上10000kW/cm2以下であり得る。レーザ光の照射時間は、例えば1ms以上50ms以下であり得る。加熱用のレーザ光の波長に特に制限はない。加熱用のレーザ光として、例えば紫外線、青色光、緑色光、赤色光、または赤外光を用いることができる。加熱用のレーザ光が赤外光である場合、加熱用のレーザ光の波長は、例えば0.9μm以上1.2μm以下であり得る。そのような波長のレーザ光を出射する光源は、例えばYAGレーザ光源であり得る。
【0044】
金属ペースト32aの加熱中に、支持部材30とレンズ40とは、
図4Aに示す太線の矢印によって表されるように、互いに反対の方向から加圧される。金属ペースト32aは柔軟性を有するので、レンズ40は、加圧方向に例えば0.1μm以上3μm以下だけシフトする。半導体レーザ素子20からレーザ光20Lを出射させた状態で、加圧によるシフトによってレンズ40の位置を微調整することができる。その結果、
図4Bに示すように、レーザ光20Lを正確にコリメートすることができる位置にレンズ40を取り付けることが可能になる。
【0045】
[支持部材30の製造方法]
次に、
図5Aから
図5Gを参照して、本実施形態による支持部材30の製造方法の例を説明する。
図5Aから
図5Gは、本実施形態による支持部材30の製造方法における工程の例を説明するための斜視図である。
【0046】
<基板を用意する工程>
最初の工程において、
図5Aに示すように、表面30saおよび裏面30sbを有する基板30S1が用意される。基板30S1は、例えば、前述の透光性材料またはセラミックから形成され得る。
【0047】
<基板の表面に凹部を形成する工程>
次の工程において、
図5Aに示す基板30S1の表面30saに、
図5Bに示すように、複数の凹部30cを形成することにより、複数の凹部30cを有する基板30S2が形成される。複数の凹部30cは、Z方向に沿って延び、かつX方向に沿って並ぶ。凹部30cは、例えば機械加工、レーザ加工、またはエッチングによって形成され得る。凹部30cの幅(X方向における寸法)は、
図3Cに示す2つの内側面30s6のX方向における距離を規定する。凹部30cの深さ(Y方向における寸法)は、
図3Cに示す内側面30s6のY方向における寸法を規定する。凹部30cの長さ(Z方向における寸法)および個数は、製造する支持部材30の数に応じて決定される。本明細書において、複数の凹部30cが並ぶ方向を「第1方向」とも称し、複数の凹部30cが延びる方向を「第2方向」とも称する。
図5Aに示す例において、第1方向はX方向であり、第2方向はZ方向である。第1方向および第2方向は必ずしも互いに直交する必要はなく、互いに交差していればよい。
【0048】
凹部30cの幅および深さは以下の通りである。凹部30cの幅は、例えば100μm以上1000μm以下であり得る。凹部30cの深さは、例えば50μm以上1000μm以下であり得る。
【0049】
<基板の表面に溝を形成する工程>
次の工程において、
図5Bに示す基板30S2の表面30saに、
図5Cに示すように、複数の第1の溝30g1および複数の第2の溝30g2を形成することにより、表面30saに凹凸形状を有する基板30S3が形成される。複数の第1の溝30g1は、X方向に沿って延び、かつZ方向に沿って並ぶ。複数の第2の溝30g2は、Z方向に沿って延び、かつX方向に沿って並ぶ。複数の第2の溝30g2の各々の幅(X方向における寸法)は、複数の第1の溝30g1の各々の幅(Z方向における寸法)よりも小さい。第1の溝30g1および第2の溝30g2の形成には、例えば幅が互いに異なる2種類のブレードが用いられ得る。第1の溝30g1および第2の溝30g2の幅の差による効果については後述する。
【0050】
複数の第1の溝30g1は、
図5Bに示す凹部30cを横切る。複数の第2の溝30g2は、
図5Bに示す凹部30cのZ方向に沿って延びる端から離れた位置を通る。複数の第1の溝30g1のうち、互いに隣り合う2つの第1の溝30g1の中心間距離は均一ではなく、相対的に大きい中心間距離d1と相対的に小さい中心間距離d2とが交互に繰り返される。なお、複数の第1の溝30g1のうち、互いに隣り合う2つの第1の溝30g1の中心間距離は均一であってもよい。d2/d1は、例えば0.1以上1以下であり得る。複数の第2の溝30g2のうち、互いに隣り合う2つの第2の溝30g2の中心間距離は均一であってもよいし、均一でなくてもよい。
【0051】
中心間距離d1を有する互いに隣り合う2つの第1の溝30g1の間の最短距離は、
図3Aおよび
図3Bに示す外側面30s2のZ方向における寸法を規定する。互いに隣り合う2つの第2の溝30g2の間の最短距離は、
図3Aに示す正面30s1、および
図3Bに示す背面30s4のX方向における最大の寸法を規定する。
【0052】
複数の第1の溝30g1の各々の深さ(Y方向における寸法)および複数の第2の溝30g2の各々の深さ(Y方向における寸法)は互いに同じであり、
図5Bに示す凹部30cの深さよりも大きい。第1の溝30g1の深さは、
図3Aに示す正面30s1および
図3Bに示す背面30s4のY方向における最大の寸法を規定する。第2の溝30g2の深さは、
図3Aおよび
図3Bに示す外側面30s2のY方向における寸法を規定する。
【0053】
複数の第1の溝30g1および複数の第2の溝30g2を形成することにより、
図3Aから
図3Cに示す支持部材30の本体30A0が形成される。
図5Cに示す太線によって囲まれた領域は、
図3Cに示す本体30A0の底面30s5を表す。
図5Cに示す例において、X方向およびZ方向をそれぞれ行方向および列方向として、15個の本体30A0が、5行3列のマトリクス状に位置する。
【0054】
本体30A0は、前述したように、一対の柱状部分30a0と、一対の柱状部分30a0の上部を連結する連結部分30b0とを有する。本体30A0の一対の柱状部分30a0は、凹部30cと、凹部30cに隣り合う第2の溝30g2との間に位置する部分であって、中心間距離d1を有する互いに隣り合う2つの第1の溝30g1の間に位置する部分から構成されている。本体30A0の連結部分30b0は、凹部30cの底面と裏面30sbとの間に位置する部分であって、中心間距離d1を有する互いに隣り合う2つの第1の溝30g1の間に位置する部分から構成されている。
【0055】
本体30A0の一対の柱状部分30a0は、第1表面30sa1、第2表面30sa2、第3表面30sa3、第4表面30sa4、および第5表面30sa5を有する。第1表面30sa1は、複数の第1の溝30g1の各々によって露出する表面である。第2表面30sa2は、複数の第2の溝30g2の各々によって露出する表面である。第3表面30sa3は、第1表面30sa1および第2表面30sa2に繋がる表面である。第4表面30sa4は、
図5Bに示す凹部30cの内側面であって、第1表面30sa1および第3表面30sa3に繋がる表面である。第5表面30sa5は、
図5Bに示す凹部30cの底面である。
【0056】
第1の溝30g1および第2の溝30g2の幅および深さは以下の通りである。第1の溝30g1の幅は、例えば100μm以上500μm以下であり、第2の溝30g2の幅は、例えば1μm以上80μm以下であり得る。第1の溝30g1の幅に対する第2の溝30g2の幅の比率は、0.01以上0.6以下である。第1の溝30g1の深さは、例えば500μm以上1500μm以下であり、第2の溝30g2の深さは、例えば50μm以上1500μm以下であり得る。
【0057】
<金属堆積工程>
次の工程において、
図5Cに示す基板30S3の表面30saに対して垂直な方向から、
図5Dに示すように、金属膜30Mを物理堆積法によって形成することにより、金属膜30Mを備える基板30S4が形成される。
図5Dに示すハッチング部分は、金属膜30Mを表す。金属膜30Mは、例えば、前述の単層または複数層を有し得る。
【0058】
物理堆積法は、例えば、スパッタリングまたは物理蒸着であり得る。物理蒸着では、対象物を膜材料よりも上方に配置した状態で、膜材料を加熱して蒸発させた原子を対象物に付着させることにより、当該対象物の表面に膜が形成される。スパッタリングでは、対象物を膜材料のターゲットに対向するように配置した状態で、ターゲットをスパッタして飛び出す原子を対象物に付着させることにより、当該対象物の表面に膜が形成される。物理蒸着およびスパッタリングにおいて、原子の飛来方向に対して斜めに交差する表面に形成される膜の厚さは、原子の飛来方向に対して垂直に交差する表面に形成される膜の厚さよりも小さくなる傾向にある。さらに、対象物に細くかつ深い溝がある場合、シャドウイング効果により、当該溝の側面の奥深い位置には飛来原子はほとんど到達しない。この性質を利用して、所定の箇所の金属膜の厚みが小さくなるように金属膜を形成することができる。
【0059】
金属堆積工程により、以下の複数の領域に金属膜30Mが形成される。当該複数の領域は、説明の便宜上、序数によって番号付けされている。第1領域は、第1表面30sa1の少なくとも一部である領域である。第2領域は、第2表面30sa2の少なくとも一部である領域であって、前方および後方の第1表面30sa1ならびに第3表面30sa3から離れて位置する領域である。第3領域は、第3表面30sa3の少なくとも一部である領域である。第4領域は、第2表面30sa2のうち、前方および後方の第1表面30sa1ならびに第3表面30sa3を連結した表面と第2領域との間の領域である。第5領域は、第4表面30sa4の少なくとも一部である領域である。第6領域は、第5表面30sa5の少なくとも一部である領域である。
【0060】
物理堆積法において、第3領域および第6領域上の金属膜は、それぞれ、第3領域および第6領域に対して主に垂直方向から飛来する金属粒子から形成される。これに対して、第1領域および第5領域上の金属膜は、それぞれ、第1領域および第5領域に対して垂直方向ではなく主に斜め方向から飛来する金属粒子から形成される。したがって、金属堆積工程により、第1領域および第5領域の各々に形成される金属膜の厚さは、第3領域および第6領域の各々に形成される金属膜の厚さよりも小さくなる。
【0061】
第2の溝30g2の幅は第1の溝30g1の幅よりも小さく、第2領域は第2の溝30g2の奥深くに位置する。第2の溝30g2では、シャドウイング効果により、第2領域に対して斜め方向から飛来する金属粒子は、第2の溝30g2の奥深くに位置する第2領域にはほとんど到達しない。したがって、金属堆積工程により、第2領域に形成される金属膜30Mの厚さは、第1領域および第5領域の各々に形成される金属膜30Mの厚さよりも小さくなり、かつ、第3領域および第6領域の各々に形成される金属膜30Mの厚さよりも小さくなる。
【0062】
第4領域は第2の溝30g2の開口付近に位置するので、第4領域に対して斜め方向から飛来する金属粒子は、第4領域にある程度到達する。したがって、金属堆積工程により、第4領域に形成される金属膜30Mの厚さは、第2領域に形成される金属膜30Mの厚さよりも大きくなり、かつ、第3領域および第6領域の各々に形成される金属膜30Mの厚さよりも小さくなる。
【0063】
金属膜が形成される上記の複数の領域と、
図3Aから
図3Cに示す本体30A0の複数の面30s1~30s7との対応関係は以下の通りである。第1領域は、
図3Aに示す本体30A0の正面30s1、および
図3Bに示す本体30A0の背面30s4に対応する。第2領域は、
図3Aおよび
図3Bに示す外側面30s2の領域30r2に対応する。第3領域は、
図3Cに示す本体30A0の底面30s5に対応する。第4領域は、
図3Aおよび
図3Bに示す外側面30s2の領域30r1に対応する。第5領域は、
図3Cに示す本体30A0の内側面30s6に対応する。第6領域は、
図3Cに示す本体30A0の下面30s7に対応する。
【0064】
上記の複数の領域に形成される金属膜の厚さは以下の通りである。第1領域上の金属膜の厚さは、例えば0.2μm以上1.6μm以下であり得る。第2領域上の金属膜の厚さは、例えば0.001μm以上0.1μm以下であり得る。第3領域上の金属膜の厚さは、例えば0.4μm以上2μm以下であり得る。第4領域上の金属膜の厚さは、例えば0.2μm以上1.6μm以下であり得る。第5領域上の金属膜の厚さは、例えば0.2μm以上1.6μm以下であり得る。第6領域上の金属膜の厚さは、例えば0.4μm以上2μm以下であり得る。
【0065】
<基板の上下を反転させる工程>
次の工程において、
図5Dに示す基板30S4は、
図5Eに示すように、上下を反転した状態で粘着シート34の上に配置される。金属膜30Mは粘着シートに接触している。
【0066】
<基板の裏面に溝を形成して個片化する工程>
次の工程において、
図5Eに示す基板30S4の裏面30sbに、
図5Fに示すように、複数の第3の溝30g3および複数の第4の溝30g4を形成することにより、基板30S4が切断されて複数の部分に個片化される。当該複数の部分は、
図2に示す支持部材30を一部に含む。裏面30sbに対する法線方向から見て、すなわち+Y方向から見た上面視で、複数の第3の溝30g3は、複数の第1の溝30g1を通ってそれぞれ形成される。上面視で、第3の溝30g3の一部は、第1の溝30g1の一部に重なる。上面視で、複数の第4の溝30g4は、複数の第2の溝30g2を通ってそれぞれ形成される。上面視で、第4の溝30g4の一部は、第2の溝30g2の全部に重なる。個片化された複数の部分は粘着シート34によって固定されているので、当該複数の部分が散らばる可能性を低減できる。
【0067】
複数の第3の溝30g3の各々の幅(Z方向における寸法)は、複数の第1の溝30g1の各々の幅よりも小さい。複数の第4の溝30g4の各々の幅(X方向における寸法)は、複数の第2の溝30g2の各々の幅よりも大きい。複数の第3の溝30g3の各々の幅は、複数の第4の溝30g4の各々の幅よりも小さい。
【0068】
複数の第3の溝30g3の各々の幅は、例えば、複数の第2の溝30g2の各々の幅と同じであり得る。複数の第4の溝30g4の各々の幅は、例えば、複数の第1の溝30g1の各々の幅と同じであり得る。第3の溝30g3は、例えば、第2の溝30g2を形成するブレードによって形成され得る。第4の溝30g4は、例えば、第1の溝30g1を形成するブレードによって形成され得る。
【0069】
複数の第3の溝30g3のうち、互いに隣り合う2つの第3の溝30g3の中心間距離は均一ではなく、中心間距離d1と中心間距離d2とが交互に繰り返される。中心間距離d2(d1)を有する互いに隣り合う2つの第3の溝30g3は、上面視で、中心間距離d1(d2)を有する互いに隣り合う2つの第1の溝30g1に部分的に重なる。上面視で、当該2つの第3の溝30g3の間に位置する対称線は、当該2つの第1の溝30g1の間に位置する対称線に重なる。
【0070】
複数の第4の溝30g4のうち、互いに隣り合う2つの第4の溝30g4の中心間距離は均一である。第4の溝30g4は、上面視で、第2の溝30g2に部分的に重なる。上面視で、第4の溝30g4の中心線は、第2の溝30g2の中心線に重なる。
【0071】
中心間距離d2を有する互いに隣り合う2つの第3の溝30g3の間の最短距離は、
図3Aおよび
図3Bに示す凸部30BのZ方向における寸法を規定する。互いに隣り合う2つの第4の溝30g4の間の最短距離は、
図3Aおよび
図3Bに示す凸部30BのX方向における寸法を規定する。
【0072】
複数の第3の溝30g3の各々の深さ(Y方向における寸法)および複数の第4の溝30g4の各々の深さ(Y方向における寸法)は互いに同じである。第3の溝30g3の深さおよび第4の溝30g4の深さは、
図3Aおよび
図3Bに示す凸部30BのY方向における寸法を規定する。
【0073】
図5Fに示す太線によって囲まれた領域は、
図2に示す支持部材30の凸部30Bの上面を表す。凸部30Bの直下に、
図2に示す本体30Aが位置する。
【0074】
なお、上記の複数の溝30g1~g4の各々の幅および深さはあくまで例示である。複数の溝30g1~g4の各々の幅および深さは、
図2に示す支持部材30の形状に応じて、適宜設定され得る。
【0075】
<支持部材以外の部分を除去する工程>
次の工程において、
図5Fに示す個片化された複数の部分のうち、支持部材30以外の部分を粘着シート34から除去することにより、
図5Gに示すように、5行3列のマトリクス状に配列された15個の支持部材30を得ることができる。
図5Gに示す破線によって囲まれた領域には、拡大された支持部材30が示されている。
【0076】
前述したように、上記の複数の領域に設けられる金属膜の厚さについて、第2領域に設けられる金属膜の厚さは、他の領域に設けられる金属膜の厚さよりも小さい。したがって、前述の加熱用のレーザ光に対する上記の複数の領域の反射率について、第2領域の反射率は、他の領域の反射率よりも低い。このことから、支持部材30において、第1領域に接合材を介して他の部材を配置した状態で、第2領域にレーザ光を照射することにより、接合材を加熱して第1領域に他の部材を接合することが可能になる。
【0077】
図5Aから
図5Fを参照して説明した上記の工程により、一部に金属膜を備え、加熱用のレーザ光を照射する領域には金属膜を備えない支持部材30を効率的に製造することができる。なお、
図5Fを参照して説明した工程において、中心間距離d2を有する互いに隣り合う2つの第3の溝30g3の間の部分を除去することにより、本体30Aを備えるが、凸部30Bを備えない支持部材を形成してもよい。
【0078】
本実施形態による支持部材30の製造方法とは異なり、金属膜30Mを形成しない
図5Cに示す基板30S3を個片化し、本体30A0および凸部30Bを備える構成に金属膜を形成する製造方法も考えられる。そのような製造方法では、本体30A0および凸部30Bを備える構成のうち、加熱用のレーザ光を照射する領域に金属膜が形成されないようにマスク工程を追加する必要があり、製造工程が増えてしまう。これに対して、本実施形態による支持部材30の製造方法では、マスク工程が必要ないという利点がある。
【0079】
さらに、本実施形態による支持部材30の製造方法とは異なり、
図5Dに示す基板30S4を、金属膜30Mが形成された表面30saからブレードによって切断して個片化する製造方法も考えられる。そのような製造方法では、金属膜30Mの切断の際に金属バリが発生してしまう。金属バリが発生すると、
図2に示す支持部材30とレンズ40との接合、および支持部材30とサブマウント10との接合において、接合不良が生じる可能性がある。これに対して、本実施形態による支持部材30の製造方法では、
図5Eに示す基板30S4が、金属膜30Mが形成されていない裏面30sbからブレードによって切断されて個片化される。したがって、金属バリの発生を低減でき、
図2に示す支持部材30とレンズ40との接合、および支持部材30とサブマウント10との接合における接合不良を低減することが可能になる。
【0080】
本実施形態による支持部材30の本体30Aがブリッジ形状を有するのは、
図2に示すように、半導体レーザ素子20を跨ぐように支持部材30を配置するためである。用途および目的によっては、支持部材30はブリッジ形状ではなく立方体の形状を有していてもよい。その場合、
図5Bに示す凹部30cを形成する必要はない。
【0081】
[各構成要素の材料および寸法などの詳細]
次に、
図2に示す発光装置100Aのサブマウント10、半導体レーザ素子20、支持部材30、無機接合層32、およびレンズ40、ならびに
図1Aに示すパッケージ50およびリード端子60の材料および寸法などの詳細を説明する。
【0082】
<サブマウント10>
サブマウント10の一部または全体は、例えば、AlN、SiC、およびアルミナからなる群から選択される少なくとも1つのセラミックから形成され得る。あるいは、サブマウント10の一部または全体は、例えば、CuW、Cu、Cu/AlN/Cuの積層構造、および金属マトリクス複合材料(Metal Matrics Compound:MMC)からなる群から選択される少なくとも1つから形成され得る。MMCは、例えば、Cu、AgまたはAlからなる群から選択される少なくとも1つとダイヤモンドを含む。
【0083】
サブマウント10の熱伝導率は、例えば10[W/m・K]以上2000[W/m・K]以下であり得る。そのような熱伝導率により、サブマウント10は、駆動時に半導体レーザ素子20から発せられる熱を効率的にパッケージ50に伝えることができる。
【0084】
サブマウント10の熱膨張率は、例えば2×10-6[1/K]以上2×10-5[1/K]以下であり得る。そのような熱膨張率により、サブマウント10の上に半導体レーザ素子20を無機接合材で接合する際に加えられる熱によってサブマウント10が変形する可能性を低減できる。
【0085】
サブマウント10のX方向における寸法は、例えば1mm以上3mm以下であり、Y方向における寸法は、例えば0.1mm以上0.5mm以下であり、Z方向における寸法は、例えば1mm以上6mm以下である。
【0086】
サブマウント10の上面10s1および下面10s2の各々に設けられる金属膜は、例えば、前述の単層または複数層を有し得る。当該金属膜のY方向における寸法は、例えば0.5μm以上10μm以下であり得る。
【0087】
<半導体レーザ素子20>
半導体レーザ素子20は、Y方向に沿って、n型基板、n型クラッド層、活性層、およびp型クラッド層を備える半導体積層構造を有する。n型およびp型の関係は逆であってもよい。半導体レーザ素子20は、さらに、半導体積層構造の上面および下面の各々に設けられる電極を備える。半導体積層構造のうち、p型クラッド層に電気的に接続される電極を「p側電極」と称し、n型基板に電気的に接続される電極を「n側電極」と称する。p側電極とn側電極とに電圧を印加して閾値以上の電流を流すことにより、半導体レーザ素子20は、活性層の2つの端面のうち、+Z方向側に位置する端面20eからレーザ光を出射する。
【0088】
半導体レーザ素子20は、可視領域における紫色、青色、緑色もしくは赤色のレーザ光、または不可視領域における赤外もしくは紫外のレーザ光を出射し得る。紫色の発光ピーク波長は、350nm以上420nm以下の範囲内にあることが好ましく、400nm以上415nm以下の範囲内にあることがより好ましい。青色光の発光ピーク波長は、420nmより大きく495nm以下の範囲内にあることが好ましく、440nm以上475nm以下の範囲内にあることがより好ましい。緑色光の発光ピーク波長は、495nmより大きく570nm以下の範囲内にあることが好ましく、510nm以上550nm以下の範囲内にあることがより好ましい。赤色光の発光ピーク波長は、605nm以上750nm以下の範囲内にあることが好ましく、610nm以上700nm以下の範囲内にあることがより好ましい。
【0089】
紫色、青色および緑色のレーザ光を出射するレーザダイオードとしては、窒化物半導体材料を含むレーザダイオードが挙げられる。窒化物半導体材料としては、例えば、GaN、InGaN、およびAlGaNを用いることができる。赤色のレーザ光を出射するレーザダイオードとしては、例えば、InAlGaP系、GaInP系、GaAs系、およびAlGaAs系の半導体材料を含むレーザダイオードが挙げられる。
【0090】
半導体レーザ素子20のX方向における寸法は例えば50μm以上500μm以下であり、Y方向における寸法は例えば20μm以上150μm以下であり、Z方向における寸法は例えば50μm以上4mm以下であり得る。
【0091】
<支持部材30>
支持部材30の材料については、前述した通りである。支持部材30の本体30AのX方向における最大の寸法は、例えば0.6mm以上3mm以下であり、Y方向における最大の寸法は、例えば0.1mm以上3mm以下であり、Z方向における寸法は、例えば0.2mm以上1mm以下であり得る。支持部材30の凸部30BのX方向における寸法は、例えば0.1mm以上3mm以下であり、Y方向における寸法は、例えば0.1mm以上3mm以下であり、Z方向における寸法は、例えば0.05mm以上1mm以下であり得る。
【0092】
<無機接合層32>
無機接合層32は、前述したように、支持部材30とレンズ40とを接合する無機接合材を加熱することによって形成される。無機接合材は、前述の焼結材であり得る。あるいは、レンズ40の位置を微調整する必要がない場合、無機接合材は、例えば、はんだ材またはろう材であり得る。はんだ付けまたはろう付けでは、はんだ材またはろう材を昇温によって溶融し、降温によって固化させることにより、部材同士が接合される。
【0093】
はんだ材は、例えばAuSn、SnCu、SnAg、およびSnAgCuからなる群から選択される少なくとも1つであり得る。ろう材は、例えば、金ろう材、錫ろう材、および銀ろう材からなる群から選択される少なくとも1つであり得る。
【0094】
無機接合材の厚さは、例えば1μm以上30μm以下であり得る。そのような厚さを有する無機接合材により、接合強度を向上させることができ、かつ接合を短時間で終えることができる。
【0095】
サブマウント10と半導体レーザ素子20との接合、サブマウント10と支持部材30との接合、およびサブマウント10と基体50bのステージ50b2との接合に用いられる無機接合材は、例えば、前述の焼結材、はんだ材、またはろう材であり得る。
【0096】
<レンズ40>
レンズ40は、例えば、ガラス、シリコン、石英、合成石英、サファイア、透明セラミック、およびプラスチックからなる群から選択される少なくとも1つの透光性材料から形成され得る。レンズ40は、半導体レーザ素子20から出射されるレーザ光に対して、例えば60%以上の透過率を有し、好ましくは80%以上の透過率を有し得る。
【0097】
レンズ40のX方向における寸法は、例えば、支持部材30のX方向における最大の寸法に等しくてもよいし、支持部材30のX方向における最大の寸法よりも大きくてもよいし小さくてもよい。ただし、レンズ40のX方向における寸法は、支持部材30の本体30Aにおける2つの内側面のX方向における距離よりも大きい。レンズ40のY方向における最大の寸法は、例えば0.2mm以上3mm以下であり、Z方向における最大の寸法は、例えば0.2mm以上3mm以下であり得る。
【0098】
レンズ40の接合面40s3に設けられる金属膜40mは、例えば、前述の単層または複数層を有し得る。当該金属膜のZ方向における寸法は、例えば0.2μm以上2μm以下であり得る。
【0099】
<パッケージ50>
パッケージ50の基体50bのうち、底板50b1は、例えば、Cu、Al、Ag、Fe、Ni、Mo、Cu、W、およびCuMoからなる群から選択される少なくとも1つを含む金属から形成され得る。そのような金属から形成される底板50b1は高い熱伝導率を有するので、駆動時に半導体レーザ素子20から発せられる熱を外部に効率的に伝えることができる。パッケージ50の基体50bのうち、側壁50b3は、サブマウント10、半導体レーザ素子20、支持部材30、およびレンズ40を囲む。側壁50b3は、例えばコバール(kovar)から形成され得る。コバールは、主成分である鉄にニッケルおよびコバルトを加えた合金である。
【0100】
基体50bの底板50b1に設けられるステージ50b2により、半導体レーザ素子20の端面20eと透光窓50wとの高さを合わせることができる。ステージ50b2は、例えば、基体50bの底板50b1と同じ材料から形成され得る。ステージ50b2は、例えば、基体50bの底板50b1の一部が突出した部分であり得る。
【0101】
パッケージ50に含まれる蓋体50Lは、基体50bと同じ材料から形成されてもよいし、異なる材料から形成されてもよい。パッケージ50に含まれる透光窓50wは、例えば、ガラス、石英、合成石英、サファイア、および透光性セラミックからなる群から選択される少なくとも1つの透光性材料から形成され得る。
【0102】
<リード端子60>
2つのリード端子60は、半導体レーザ素子20に電流を注入する。当該2つのリード端子60は、
図1Bに示すように、ワイヤ60wおよびサブマウント10を介して半導体レーザ素子20に電気的に接続されている。
図1Bに示す例において、一方のリード端子60は、3本のワイヤ60wを介して、半導体レーザ素子20の上面に設けられる金属膜(電極)に電気的に接続されている。他方のリード端子60は、3本のワイヤ60wを介して、サブマウント10の上面10s1に設けられる金属膜に電気的に接続されている。1つのリード端子60と半導体レーザ素子20とを電気的に接続するワイヤ60wの本数は3本である必要はなく、1本または2本でもよいし、4本以上でもよい。
【0103】
リード端子60は、例えばFe-Ni合金、またはCu合金のような導電性材料から形成され得る。ワイヤ60wは、例えばAu、Ag、Cu、およびAlからなる群から選択される少なくとも1つの金属から形成され得る。
【0104】
本開示は、以下の項目に記載の支持部材の製造方法、支持部材、および発光装置を含む。
[項目1]
他の部材を支持する支持部材の製造方法であって、
表面および裏面を有する基板を用意する工程と、
前記基板の前記表面に、第1方向に沿って延びる複数の第1の溝、および前記第1方向に交差する第2方向に沿って延びる複数の第2の溝を形成する工程と、
物理堆積法によって前記基板の前記表面に金属膜を形成する金属堆積工程と、
前記複数の第1の溝および前記複数の第2の溝に沿って前記基板を複数の支持部材に個片化する工程と、
を含み、
前記複数の第2の溝の各々の幅は、前記複数の第1の溝の各々の幅よりも小さく、
前記金属堆積工程は、
前記複数の第1の溝の各々によって露出する第1表面の少なくとも一部である第1領域、前記複数の第2の溝の各々によって露出する第2表面の少なくとも一部である第2領域、ならびに前記第1表面および前記第2表面に繋がる第3表面の少なくとも一部である第3領域に、前記金属膜を形成することを含み、
前記第2領域上の前記金属膜の厚さを、前記第1領域上の前記金属膜の厚さよりも小さくし、かつ、前記第3領域上の前記金属膜の厚さよりも小さくする、支持部材の製造方法。
[項目2]
前記金属堆積工程は、前記第1領域上の前記金属膜の厚さを、前記第3領域上の前記金属膜の厚さよりも小さくする、項目1に記載の支持部材の製造方法。
[項目3]
前記金属堆積工程は、
前記第2表面のうち、前記第3表面と前記第2領域との間の第4領域に、前記金属膜を形成することを含み、
前記第4領域上の前記金属膜の厚さを、前記第2領域上の前記金属膜の厚さよりも大きくし、かつ、前記第3領域上の前記金属膜の厚さよりも小さくする、項目1または2に記載の支持部材の製造方法。
[項目4]
前記複数の第1の溝の各々の幅は、100μm以上500μm以下であり、
前記複数の第1の溝の各々の深さは、500μm以上1500μm以下であり、
前記複数の第2の溝の各々の幅は、1μm以上80μm以下であり、
前記複数の第2の溝の各々の深さは、50μm以上1500μm以下である、項目1から3のいずれか1項に記載の支持部材の製造方法。
[項目5]
前記複数の第2の溝の各々の幅の、前記複数の第1の溝の各々の幅に対する比率は、0.01以上0.6以下である、項目4に記載の支持部材の製造方法。
[項目6]
前記第1領域に接合材を介して前記他の部材を配置した状態で、前記第2領域にレーザ光を照射することにより、前記接合材を加熱して前記第1領域に前記他の部材を接合することが可能である、項目1から5のいずれか1項に記載の支持部材の製造方法。
[項目7]
前記レーザ光の波長は、0.9μm以上1.2μm以下であり、
前記波長を有する光に対する前記第2領域の反射率は、前記波長を有する光に対する前記第1領域および前記第3領域の各々の反射率よりも低い、項目6に記載の支持部材の製造方法。
[項目8]
前記基板を前記複数の支持部材に個片化する工程は、前記基板の前記裏面から、前記複数の第1の溝および前記複数の第2の溝を通って前記基板を切断することを含む、項目1から7のいずれか1項に記載の支持部材の製造方法。
[項目9]
用意する前記基板は、前記第2方向に沿って延びる複数の凹部を有し、
前記基板の前記表面に前記複数の第1の溝および前記複数の第2の溝を形成する工程は、前記基板の前記表面に、前記凹部を横切るように前記複数の第1の溝を形成し、前記凹部の端から離れた位置を通るように前記複数の第2の溝を形成することを含み、
前記複数の支持部材の各々は、一対の柱状部分および前記一対の柱状部分の上部を連結する連結部分を有し、
前記一対の柱状部分は、前記基板における前記凹部と、前記凹部に隣り合う前記第2の溝との間に位置する部分であって、前記複数の第1の溝のうち、互いに隣り合う第1の溝の間に位置する部分から構成されており、
前記連結部分は、前記基板における前記凹部の底面と前記裏面との間に位置する部分であって、前記複数の第1の溝のうち、互いに隣り合う第1の溝の間に位置する部分から構成されており、
前記一対の柱状部分は、前記第1表面、前記第2表面、および前記第3表面を有する、項目1から8のいずれか1項に記載の支持部材の製造方法。
[項目10]
前記一対の柱状部分は、前記凹部の内側面であって、前記第1表面および前記第3表面に繋がる第4表面を有し、
前記金属堆積工程は、前記第4表面の少なくとも一部である第5領域に前記金属膜を堆積することを含む、項目9に記載の支持部材の製造方法。
[項目11]
他の部材を支持する支持部材であって、
前記他の部材が接合される正面と、前記正面の反対側の背面と、前記正面および前記背面に繋がる底面と、前記正面および前記背面に繋がる2つの外側面とを有する本体と、
前記底面、前記正面、および前記2つの外側面の各々に設けられる金属膜と、
を備え、
前記2つの外側面の各々に設けられる前記金属膜の厚さは、前記底面に設けられる前記金属膜の厚さよりも小さく、かつ、前記正面に設けられる前記金属膜の厚さよりも小さい、支持部材。
[項目12]
前記金属膜は、前記底面から前記2つの外側面にわたって連続的に設けられており、
前記2つの外側面の各々は、前記底面および前記正面に繋がる領域と、前記底面および前記正面から離れて位置する他の領域とを有し、前記領域に設けられる前記金属膜の厚さは、前記他の領域に設けられる前記金属膜の厚さよりも大きい、項目11に記載の支持部材。
[項目13]
前記本体は、前記正面および前記背面に繋がる上面を有し、
前記支持部材は、前記本体の前記上面から突出する凸部を備える、項目11または12に記載の支持部材。
[項目14]
前記本体は、一対の柱状部分および前記一対の柱状部分の上部を連結する連結部分を有し、
前記本体の前記2つの外側面は、前記一対の柱状部分の外側面であり、
前記本体の前記底面は、前記一対の柱状部分の各々の底面であり、
前記本体の前記正面は、前記一対の柱状部分の正面および前記連結部分の正面を有する、項目11から13のいずれか1項に記載の支持部材。
[項目15]
前記本体は、前記一対の柱状部分の内側面である2つの内側面を有し、前記2つの内側面の各々に設けられる金属膜を備える、項目14に記載の支持部材。
[項目16]
項目11から15のいずれか1項に記載の支持部材と、
前記支持部材によって支持されるレンズと、
前記レンズに向けて光を出射する半導体発光素子と、
前記支持部材および前記半導体発光素子を支持するサブマウントと、
を備える、発光装置。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本開示の支持部材の製造方法は、例えば、光学部品または半導体素子を支持する支持部材の製造に適用され得る。本開示の支持部材は、例えば、光学部品または半導体素子を支持する部材に適用され得る。本開示の発光装置は、例えば、加工、プロジェクタ、ディスプレイ、または照明器具に用いられる光源に適用され得る。
【符号の説明】
【0106】
10:サブマウント 10s1:上面 10s2:下面 20:半導体レーザ素子 20L:レーザ光 20e:端面 30:支持部材 30A、30A0:本体 30B:凸部 30M、30m:金属膜 30S1、30S2、30S3、30S4:基板 30a、30a0:一対の柱状部分 30b、30b0:連結部分 30c:凹部 30g1:第1の溝 30g2:第2の溝 30g3:第3の溝 30g4:第4の溝 30r1、30r2:領域 30s1:正面 30s2:外側面 30s3:上面 30s4:背面 30s5:底面 30s6 内側面 30s7:下面 30sa:表面 30sa1:第1表面 30sa2:第2表面 30sa3:第3表面 30sa4:第4表面 30sa5:第5表面 30sb:裏面 32:無機接合層 32a:金属ペースト 34:粘着シート 40:レンズ 40m:金属膜 50:パッケージ 50L:蓋体 50b:基体 50b1:底板 50b2:ステージ 50b3:側壁 50w:透光窓 60:リード端子 60w:ワイヤ 100、100A:発光装置