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特開2024-89887評価対象の官能評価特性を評価する官能評価方法、官能評価装置及び官能評価プログラム
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  • 特開-評価対象の官能評価特性を評価する官能評価方法、官能評価装置及び官能評価プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089887
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】評価対象の官能評価特性を評価する官能評価方法、官能評価装置及び官能評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20240627BHJP
   A61B 5/377 20210101ALI20240627BHJP
   G16H 50/30 20180101ALI20240627BHJP
【FI】
A61B5/16 120
A61B5/377
G16H50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205400
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】小林 恵子
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】多久和 望
(72)【発明者】
【氏名】入戸野 宏
【テーマコード(参考)】
4C038
4C127
5L099
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038PS03
4C127AA03
4C127DD03
4C127GG07
4C127GG09
4C127GG15
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】対象物の官能評価特性を評価することが可能な、脳波を利用する新規な評価方法、新規な官能評価装置、及び新規な官能評価プログラムを提供する。
【解決手段】本開示の一実施態様の評価対象の官能評価特性を評価する官能評価方法は、評価者に対し、評価対象の官能評価特性に関する質問を提示することと;評価者が評価対象を評価していないときに、評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、電気刺激に対する評価者の脳波の反応を測定して、得られた結果を第1の脳波反応とすることと;評価者が評価対象を質問に対して評価しているときに、評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、電気刺激に対する評価者の脳波の反応を測定して、得られた結果を第2の脳波反応とすることと;第1の脳波反応と第2の脳波反応とを比較して、前記第2の脳波反応が前記第1の脳波反応よりも小さいときに、評価対象が官能評価特性を有していると判断することと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象の官能評価特性を評価する官能評価方法であって、
評価者に対し、前記評価対象の前記官能評価特性に関する質問を提示することと、
前記評価者が前記評価対象を評価していないときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波の反応を測定して、得られた結果を第1の脳波反応とすることと、
前記評価者が前記評価対象を前記質問に対して評価しているときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波の反応を測定して、得られた結果を第2の脳波反応とすることと、
前記第1の脳波反応と前記第2の脳波反応とを比較して、前記第2の脳波反応が前記第1の脳波反応よりも小さいときに、前記評価対象が前記官能評価特性を有していると判断することと、
を含む、方法。
【請求項2】
評価対象の官能評価特性を評価する官能評価方法であって、
評価者に対し、前記評価対象の前記官能評価特性に関する第1の質問を提示することと、
前記評価者が前記評価対象を前記第1の質問に対して評価しているときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波の反応を測定して、得られた結果を第3の脳波反応とすることと、
前記評価者に対し、前記第1の質問とは異なる、前記評価対象の前記官能評価特性に関する第2の質問を提示することと、
前記評価者が前記評価対象を前記第2の質問に対して評価しているときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波の反応を測定して、得られた結果を第4の脳波反応とすることと、
前記第3の脳波反応と前記第4の脳波反応とを比較して、前記第3の脳波反応と前記第4の脳波反応のいずれが大きいかを判定し、(i)前記第4の脳波反応よりも前記第3の脳波反応の方が小さい場合には、前記評価対象が、前記第2の質問の前記官能評価特性よりも、前記第1の質問の前記官能評価特性を有していると判断し、かつ(ii)前記第3の脳波反応よりも前記第4の脳波反応の方が小さい場合には、前記評価対象が、前記第1の質問の前記官能評価特性よりも、前記第2の質問の前記官能評価特性を有していると判断することと、
を含む、方法。
【請求項3】
前記第1の質問の前記官能評価特性と、前記第2の質問の官能評価特性が、相互に対照的な特性である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電気刺激が、前記評価者の指及び手からなる群から選択される少なくとも1つに対して付加される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記電気刺激が、断続的な電気刺激である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記評価対象が、物品である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記質問の官能評価特性が、触感に関する官能評価特性である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記評価対象が、化粧料である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
評価対象の官能評価特性を評価する官能評価装置であって、
評価者に対し、前記評価対象の前記官能評価特性に関する質問を提示する質問提示部と、
前記評価者が前記評価対象を評価していないときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波を測定して、得られた結果を第1の脳波反応とする第1の脳波測定部と、
前記評価者が前記評価対象を前記質問に対して評価しているときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波を測定して、得られた結果を第2の脳波反応とする第2の脳波測定部と、
前記第1の脳波反応と前記第2の脳波反応とを比較して、前記第2の脳波反応が前記第1の脳波反応よりも小さいときに、前記評価対象が前記官能評価特性を有していると判断する質問判断部と、
を含む、装置。
【請求項10】
評価対象の官能評価特性を評価する官能評価装置であって、
評価者に対し、前記評価対象の前記官能評価特性に関する第1の質問を提示する第1の質問提示部と、
前記評価者が前記評価対象を前記第1の質問に対して評価しているときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波反応を測定して、得られた結果を第3の脳波反応とする第3の脳波測定部と、
前記評価者に対し、前記第1の質問とは異なる、前記評価対象の前記官能評価特性に関する第2の質問を提示する第2の質問提示部と、
前記評価者が前記評価対象を前記第2の質問に対して評価しているときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波を測定して、得られた結果を第4の脳波反応とする第4の脳波測定部と、
前記第3の脳波反応と前記第4の脳波反応とを比較して、前記第3の脳波反応と前記第4の脳波反応のいずれが大きいかを判定し、(i)前記第4の脳波反応よりも前記第3の脳波反応の方が小さい場合には、前記評価対象が、前記第2の質問の前記官能評価特性よりも、前記第1の質問の前記官能評価特性を有していると判断し、かつ(ii)前記第3の脳波反応よりも前記第4の脳波反応の方が小さい場合には、前記評価対象が、前記第1の質問の前記官能評価特性よりも、前記第2の質問の前記官能評価特性を有していると判断する、質問判断部と、
を含む、装置。
【請求項11】
評価対象の官能評価特性を評価する官能評価プログラムであって、
評価者に対し、前記評価対象の前記官能評価特性に関する質問を提示する処理と、
前記評価者が前記評価対象を評価していないときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波を測定して、得られた結果を第1の脳波反応とする処理と、
前記評価者が前記評価対象を前記質問に対して評価しているときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波を測定して、得られた結果を第2の脳波反応とする処理と、
前記第1の脳波反応と前記第2の脳波反応とを比較して、前記第2の脳波反応が前記第1の脳波反応よりも小さいときに、前記評価対象が前記官能評価特性を有していると判断する処理と、
をコンピュータに実行させる、プログラム。
【請求項12】
評価対象の官能評価特性を評価する官能評価プログラムであって、
評価者に対し、前記評価対象の前記官能評価特性に関する第1の質問を提示する処理と、
前記評価者が前記評価対象を前記第1の質問に対して評価しているときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波を測定して、得られた結果を第3の脳波反応とする処理と、
前記評価者に対し、前記第1の質問とは異なる、前記評価対象の前記官能評価特性に関する第2の質問を提示する処理と、
前記評価者が前記評価対象を前記第2の質問に対して評価しているときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波を測定して第4の脳波反応とする処理と、
前記第3の脳波反応と前記第4の脳波反応とを比較して、前記第3の脳波反応と前記第4の脳波反応のいずれが大きいかを判定し、(i)前記第4の脳波反応よりも前記第3の脳波反応の方が小さい場合には、前記評価対象が、前記第2の質問の前記官能評価特性よりも、前記第1の質問の前記官能評価特性を有していると判断し、かつ(ii)前記第3の脳波反応よりも前記第4の脳波反応の方が小さい場合には、前記評価対象が、前記第1の質問の前記官能評価特性よりも、前記第2の質問の前記官能評価特性を有していると判断する処理と、
をコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、評価対象の官能評価特性を評価する官能評価方法、官能評価装置及び官能評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脳波等を利用して対象物(例えば化粧料)の使用感などを評価する方法が種々提案されている。
【0003】
特許文献1には、脳波感性スペクトルを測定する、化粧料の評価方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、被験者に対象物を使用させる使用ステップと、対象物に関する視覚情報を付与している時の被験者の定常状態視覚誘発電位を測定する測定ステップと、定常状態視覚誘発電位に基づき、対象物の使用感を評価する評価ステップとを含む、対象物の評価方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-354588号公報
【特許文献2】特開2020-204577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、脳波等を利用して対象物の使用感等を評価する従来の方法は、対象物を使用したときに発生する脳波等のデータのみに着目することが一般的であった。
【0007】
したがって、本開示の主題は、対象物の官能評価特性を評価することが可能な、脳波を利用する新規な評価方法、新規な官能評価装置、及び新規な官能評価プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〈態様1〉
評価対象の官能評価特性を評価する官能評価方法であって、
評価者に対し、前記評価対象の前記官能評価特性に関する質問を提示することと、
前記評価者が前記評価対象を評価していないときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波の反応を測定して、得られた結果を第1の脳波反応とすることと、
前記評価者が前記評価対象を前記質問に対して評価しているときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波の反応を測定して、得られた結果を第2の脳波反応とすることと、
前記第1の脳波反応と前記第2の脳波反応とを比較して、前記第2の脳波反応が前記第1の脳波反応よりも小さいときに、前記評価対象が前記官能評価特性を有していると判断することと、
を含む、方法。
〈態様2〉
評価対象の官能評価特性を評価する官能評価方法であって、
評価者に対し、前記評価対象の前記官能評価特性に関する第1の質問を提示することと、
前記評価者が前記評価対象を前記第1の質問に対して評価しているときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波の反応を測定して、得られた結果を第3の脳波反応とすることと、
前記評価者に対し、前記第1の質問とは異なる、前記評価対象の前記官能評価特性に関する第2の質問を提示することと、
前記評価者が前記評価対象を前記第2の質問に対して評価しているときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波の反応を測定して、得られた結果を第4の脳波反応とすることと、
前記第3の脳波反応と前記第4の脳波反応とを比較して、前記第3の脳波反応と前記第4の脳波反応のいずれが大きいかを判定し、(i)前記第4の脳波反応よりも前記第3の脳波反応の方が小さい場合には、前記評価対象が、前記第2の質問の前記官能評価特性よりも、前記第1の質問の前記官能評価特性を有していると判断し、かつ(ii)前記第3の脳波反応よりも前記第4の脳波反応の方が小さい場合には、前記評価対象が、前記第1の質問の前記官能評価特性よりも、前記第2の質問の前記官能評価特性を有していると判断することと、
を含む、方法。
〈態様3〉
前記第1の質問の前記官能評価特性と、前記第2の質問の官能評価特性が、相互に対照的な特性である、態様2に記載の方法。
〈態様4〉
前記電気刺激が、前記評価者の指及び手からなる群から選択される少なくとも1つに対して付加される、態様1~3のいずれかに記載の方法。
〈態様5〉
前記電気刺激が、断続的な電気刺激である、態様1~4のいずれかに記載の方法。
〈態様6〉
前記評価対象が、物品である、態様1~5のいずれかに記載の方法。
〈態様7〉
前記質問の官能評価特性が、触感に関する官能評価特性である、態様1~6のいずれかに記載の方法。
〈態様8〉
前記評価対象が、化粧料である、態様1~7のいずれかに記載の方法。
〈態様9〉
評価対象の官能評価特性を評価する官能評価装置であって、
評価者に対し、前記評価対象の前記官能評価特性に関する質問を提示する質問提示部と、
前記評価者が前記評価対象を評価していないときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波を測定して、得られた結果を第1の脳波反応とする第1の脳波測定部と、
前記評価者が前記評価対象を前記質問に対して評価しているときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波を測定して、得られた結果を第2の脳波反応とする第2の脳波測定部と、
前記第1の脳波反応と前記第2の脳波反応とを比較して、前記第2の脳波反応が前記第1の脳波反応よりも小さいときに、前記評価対象が前記官能評価特性を有していると判断する質問判断部と、
を含む、装置。
〈態様10〉
評価対象の官能評価特性を評価する官能評価装置であって、
評価者に対し、前記評価対象の前記官能評価特性に関する第1の質問を提示する第1の質問提示部と、
前記評価者が前記評価対象を前記第1の質問に対して評価しているときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波反応を測定して、得られた結果を第3の脳波反応とする第3の脳波測定部と、
前記評価者に対し、前記第1の質問とは異なる、前記評価対象の前記官能評価特性に関する第2の質問を提示する第2の質問提示部と、
前記評価者が前記評価対象を前記第2の質問に対して評価しているときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波を測定して、得られた結果を第4の脳波反応とする第4の脳波測定部と、
前記第3の脳波反応と前記第4の脳波反応とを比較して、前記第3の脳波反応と前記第4の脳波反応のいずれが大きいかを判定し、(i)前記第4の脳波反応よりも前記第3の脳波反応の方が小さい場合には、前記評価対象が、前記第2の質問の前記官能評価特性よりも、前記第1の質問の前記官能評価特性を有していると判断し、かつ(ii)前記第3の脳波反応よりも前記第4の脳波反応の方が小さい場合には、前記評価対象が、前記第1の質問の前記官能評価特性よりも、前記第2の質問の前記官能評価特性を有していると判断する、質問判断部と、
を含む、装置。
〈態様11〉
評価対象の官能評価特性を評価する官能評価プログラムであって、
評価者に対し、前記評価対象の前記官能評価特性に関する質問を提示する処理と、
前記評価者が前記評価対象を評価していないときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波を測定して、得られた結果を第1の脳波反応とする処理と、
前記評価者が前記評価対象を前記質問に対して評価しているときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波を測定して、得られた結果を第2の脳波反応とする処理と、
前記第1の脳波反応と前記第2の脳波反応とを比較して、前記第2の脳波反応が前記第1の脳波反応よりも小さいときに、前記評価対象が前記官能評価特性を有していると判断する処理と、
をコンピュータに実行させる、プログラム。
〈態様12〉
評価対象の官能評価特性を評価する官能評価プログラムであって、
評価者に対し、前記評価対象の前記官能評価特性に関する第1の質問を提示する処理と、
前記評価者が前記評価対象を前記第1の質問に対して評価しているときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波を測定して、得られた結果を第3の脳波反応とする処理と、
前記評価者に対し、前記第1の質問とは異なる、前記評価対象の前記官能評価特性に関する第2の質問を提示する処理と、
前記評価者が前記評価対象を前記第2の質問に対して評価しているときに、前記評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、前記電気刺激に対する前記評価者の脳波を測定して第4の脳波反応とする処理と、
前記第3の脳波反応と前記第4の脳波反応とを比較して、前記第3の脳波反応と前記第4の脳波反応のいずれが大きいかを判定し、(i)前記第4の脳波反応よりも前記第3の脳波反応の方が小さい場合には、前記評価対象が、前記第2の質問の前記官能評価特性よりも、前記第1の質問の前記官能評価特性を有していると判断し、かつ(ii)前記第3の脳波反応よりも前記第4の脳波反応の方が小さい場合には、前記評価対象が、前記第1の質問の前記官能評価特性よりも、前記第2の質問の前記官能評価特性を有していると判断する処理と、
をコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、対象物の官能評価特性を評価することが可能な、脳波を利用する新規な評価方法、新規な官能評価装置、及び新規な官能評価プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、注意に関する脳波の反応量に関する図(臨床神経生理学、入戸野宏、2013年、41巻、2号、86-92頁)である。
図2図2は、本開示の第1の実施態様の官能評価方法に基づく脳波グラフである。
図3図3は、本開示の第2の実施態様のうち、触覚対象物の官能評価方法に基づく脳波グラフである。
図4図4は、本開示の第2の実施態様のうち、嗅覚対象物の官能評価方法に基づく脳波グラフである。
図5図5は、本開示の第2の実施態様のうち、聴覚対象物の官能評価方法に基づく脳波グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について詳述する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0012】
本開示における第1の実施態様の評価対象の官能評価特性を評価する官能評価方法は、評価者に対し、評価対象の官能評価特性に関する質問を提示することと、評価者が評価対象を評価していないときに、評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、電気刺激に対する評価者の脳波の反応を測定して、得られた結果を第1の脳波反応とすることと、評価者が評価対象を質問に対して評価しているときに、評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、電気刺激に対する評価者の脳波の反応を測定して、得られた結果を第2の脳波反応とすることと、第1の脳波反応と第2の脳波反応とを比較して、前記第2の脳波反応が前記第1の脳波反応よりも小さいときに、評価対象が官能評価特性を有していると判断することと、を含む。ここで、本開示において「官能評価特性を有している」とは、官能評価特性を有していること、官能評価特性と一致していること、官能評価特性が妥当であること、又は官能評価特性が矛盾していないことのいずれかの概念を包含する。
【0013】
また、本開示における第2の実施態様の評価対象の官能評価特性を評価する官能評価方法は、評価者に対し、評価対象の官能評価特性に関する第1の質問を提示することと、評価者が評価対象を第1の質問に対して評価しているときに、評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、電気刺激に対する評価者の脳波の反応を測定して、得られた結果を第3の脳波反応とすることと、評価者に対し、第1の質問とは異なる、評価対象の官能評価特性に関する第2の質問を提示することと、評価者が評価対象を第2の質問に対して評価しているときに、評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、電気刺激に対する評価者の脳波の反応を測定して、得られた結果を第4の脳波反応とすることと、第3の脳波反応と第4の脳波反応とを比較して、第3の脳波反応と第4の脳波反応のいずれが大きいかを判定し、(i)第4の脳波反応よりも第3の脳波反応の方が小さい場合には、評価対象が、第2の質問の官能評価特性よりも、第1の質問の官能評価特性を有していると判断し、かつ(ii)第3の脳波反応よりも第4の脳波反応の方が小さい場合には、評価対象が、第1の質問の官能評価特性よりも、第2の質問の官能評価特性を有していると判断することと、を含む。
【0014】
原理によって限定されるものではないが、本開示の官能評価方法が、評価対象の官能評価特性を評価することができる作用原理等は以下のとおりであると考える。
【0015】
例えば、人は評価対象を使用している間、それを評価するために情報を収集している。そのプロセスを「注意」と称することができ、この「注意」に関するデータをうまく利用することができれば、人が評価対象をどのように評価しているかを測定し得ると着想した。
【0016】
本発明者は、「注意」に関するデータとして、電気刺激に対する脳波反応に着目し、一度に使える注意(注意資源)の量には限界があるという仮定の元に、所定量の注意資源内において、使われている注意資源量と使われずに余っている注意資源量とを、脳波に基づいて調べてみたところ、驚くべきことに、評価前の脳波反応量と評価中の脳波反応量との増減によって、人が評価対象をどのように評価しているかを測定し得ることを見出した。
【0017】
注意に関する脳波の反応量には、図1の斜線領域と白色領域とを含む領域として示されるように、限界があると考えている。例えば、評価対象に関する質問を提示したときに、その提示した質問が、一致しない、妥当ではない、あるいは矛盾しないと意識的に脳内において評価している場合には、質問への関心は低いため、電気刺激を与えると、質問に対する脳波反応量は少なく、電気刺激に関する脳波反応が強く現れると考えられる(図1の右側の図)。一方、提示した質問が、一致する、妥当である、あるいは矛盾すると意識的に脳内において評価している場合には、質問への関心は高いため、電気刺激を与えると、質問に対する脳波反応量が強く現れ、電気刺激に関する脳波反応は弱く現れると考えられる(図1の左側の図)。したがって、このような脳波に基づく注意資源量の増減に着目する本開示の官能評価方法によれば、評価対象の官能評価特性を評価することができると考えている。
【0018】
なお、図2の脳波グラフは、上述した第1の実施態様の官能評価方法に基づく結果の一例であり、図3~5の脳波グラフは、上述した第2の実施態様の官能評価方法に基づく結果の一例である。
【0019】
ところで、従来のプローブ法は、脳波又は脳血流等を使って人の注意状態を客観的に評価する手法の一つである。なお、プローブとは、日本語では測定又は実験などのために試料に挿入する「探り針」という意味である。
【0020】
本発明では、対象物の評価時を主課題としたときに、それとは関係のない電気刺激を与える点ではプローブ法となり得る。しかしながら、新規性のある相違点としては、評価前に対象物の官能評価特性と一致、或いは不一致と想定される官能評価特性の質問を提示し対象物に対する官能評価次元を与えた上で、プローブとなる電気刺激を与える点である。このときの脳波反応は評価者が対象物と官能評価特性の質問との関係性を正に判断しているときのものとなる。具体的には両者が一致していれば、対象物に注意が向き、プローブである電気刺激への脳波反応が小さくなり、スムーズに評価できていると解釈できる。一方、両者が不一致であれば、対象物ではなくプローブである電気刺激に対して注意が向き、脳波反応が大きくなり、スムーズに評価ができていないと解釈できる。
【0021】
《評価対象の官能評価特性を評価する官能評価方法》
上述したように、本開示の官能評価方法には、少なくとも第1の実施態様及び第2の実施態様が存在する。なお、本開示の官能評価方法は、人間を手術、治療又は診断する方法とは相違する。
【0022】
〈第1の実施態様の官能評価方法〉
本開示の第1の実施態様における、評価対象の官能評価特性を評価する官能評価方法は、評価者に対し、評価対象の官能評価特性に関する質問を提示することと、評価者が評価対象を評価していないときに、評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、電気刺激に対する評価者の脳波の反応を測定して、得られた結果を第1の脳波反応とすることと、評価者が評価対象を質問に対して評価しているときに、評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、電気刺激に対する評価者の脳波の反応を測定して、得られた結果を第2の脳波反応とすることと、第1の脳波反応と第2の脳波反応とを比較して、前記第2の脳波反応が前記第1の脳波反応よりも小さいときに、評価対象が官能評価特性を有していると判断することと、を含む。
【0023】
(評価対象)
評価対象としては特に制限はなく、例えば、五感(触覚、嗅覚、聴覚、視覚、味覚)などの感覚モダリティに作用するものを挙げることができる。ここで、「感覚モダリティ」とは、感覚様相のことで、それぞれの感覚器で感知する固有の経験の種類(現象的性質)を指す。評価対象は、具体的には、例えば、飲食物、化粧料などの物品であってもよく、或いは、形態を呈しない、例えば、音又は音楽、香り、映像などであってもよい。プローブ法において電気刺激を用いた脳波反応の測定では、電気刺激という触覚とは異なる感覚モダリティ、例えば、視覚や聴覚の対象物を用いることが多い。一方、本開示の評価方法では、視覚、聴覚、及び嗅覚という対象物の他に、電気刺激と同様の感覚モダリティである触覚の対象物も評価することができる。
【0024】
このような物品としては特に制限はなく、例えば、身体に塗布して使用するもの、例えば、化粧料、化粧料以外のパーソナルケア製品等を挙げることができる。
【0025】
化粧料としては、例えば、ファンデーション、口紅、チーク、アイシャドー、アイブロー、アイライナー、マスカラ等のメイクアップ化粧料、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、美容液等の基礎化粧料、日焼け止め化粧料、シェービング用品、及びフレグランス等が挙げられる。また、本開示では、美容を目的とした医薬品又は医薬部外品も化粧料として扱うことができる。
【0026】
パーソナルケア製品としては、例えば、石鹸、ハンドソープ、ボディーソープ、ハンドクリーム、デオドラント等のボディー製品、シャンプー等のヘアケア製品、歯磨剤等の口腔ケア製品、及びネイルケア製品等が挙げられる。
【0027】
この他、上記以外の日用品、例えば、生理用品、吸水パッド等の吸収性物品、ティッシュペーパー、ウェットティッシュ、トイレットペーパー等の紙製品、化粧道具(スポンジ、ブラシ類)、ヘアブラシ、歯ブラシ、爪切り等のボディーケア用道具、美容器具、各種容器(例えば化粧容器)等であってよい。さらに、食料品、飲料品、嗜好品等であってもよく、文房具、日用雑貨、家具、寝具、食器、台所用品、衣料品等であってもよい。
【0028】
(官能評価特性に関する質問)
本開示の第1の実施態様における官能評価方法は、評価者に対し、評価対象の官能評価特性に関する質問を提示することを含む。質問の提示は、後述する、第1の脳波反応を取得する前であってもよく、或いは、第1の脳波反応を取得した後の、第2の脳波反応を取得する前であってもよい。精度の高い官能評価結果を得る観点から、質問の提示は、第1の脳波反応を取得した後の、第2の脳波反応を取得する前であることが好ましい。
【0029】
質問の提示は、例えば、口頭で直接行ってもよく、録音したものを評価者に聞かせてもよく、或いは、文面又は映像で提示してもよい。また、官能評価方法における一連の操作が終了した後に、最初の質問とは異なる質問を提示して、同様の操作を複数回実施してもよい。このように、本開示の官能評価方法を評価対象に対して複数回実施することにより、評価対象における総合的な官能評価特性を評価することができる。
【0030】
官能評価特性としては特に制限はなく、評価する評価対象などに応じて適宜決定することができる。官能評価特性としては、例えば、触感に関する評価特性(例えば、べたつき感等の使用性)、嗅覚に関する評価特性(例えば、心地よい香り、すっきりとした香り、不快感な臭い)、聴覚に関する評価特性(例えば、ゆったりとした音又は音楽、心地よい音又は音楽、すっきりとした音又は音楽、不快感な音又は音楽)、視覚に関する評価特性(例えば、高級感)、味覚に関する評価特性(例えば、おいしい、まずい)を挙げることができる。
【0031】
(第1の脳波反応)
本開示の第1の実施態様における官能評価方法は、評価者が評価対象を評価していないときに、評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、電気刺激に対する評価者の脳波の反応を測定して、得られた結果を第1の脳波反応とすることを含む。
【0032】
評価者に対して電気刺激を付加する手段としては特に制限はない。例えば、電気刺激は、電気刺激装置(日本光電工業株式会社製、SEN-3301)を用いて矩形波の定電流刺激を生成し、アイソレータ(同社製、SS-202J)を介して、評価者の指等に装着したAg/AgCl粘着ゲルのNCS電極(同社製、NM-314YS、通電部は直径1.7cmの円形)から提供することができる。
【0033】
評価者に対して電気刺激を付加する部位としては特に制限はないが、精度の高い官能評価結果を得る観点から、電気刺激は評価者の指及び手からなる群から選択される少なくとも一箇所に対して付加されることが好ましく、指に対して付加することがより好ましい。なかでも、触感に関する評価特性を評価する場合には、電気刺激は、精度の高い官能評価結果を得る観点から、評価対象に触れる手及び/又は指に対して付加することが好ましい。電気刺激を付加する部位として指を選択する場合には、電気刺激は、少なくとも指1本に対して付加すればよいが、複数の指に対して付加してもよく、また、指の第1関節以降に付加することが好ましく、第2関節から第3関節の間において付加することがより好ましい。
【0034】
電気刺激は、連続的に付加してもよく、或いは断続的に付加してもよい。精度の高い官能評価結果を得る観点から、電気刺激は断続的に付加することが好ましい。
【0035】
電気刺激の電流としては特に制限はないが、精度の高い官能評価結果を得る観点から、試験前に評価者ごとの感覚閾値を測定し、その3倍程度の値を用いるのが望ましい。電流の数値としては、1mA以上10mA以下とすることが望ましい。
【0036】
第1の脳波反応を取得する手段としては特に制限はない。例えば、脳波は、電極キャップとフラットタイプアクティブ電極とを使用して、国際10-20法に基づいて測定することができる。この方法は、頭皮上の32部位(Fp1、Fp2、AF3、AF4、F7、F3、Fz、F4、F8、FC5、FC1、FC2、FC6、T7、C3、Cz、C4、T8、CP5、CP1、CP2、CP6、P7、P3、Pz、P4、P8、PO3、PO4、O1、Oz、O2)と左右の耳朶(A1、A2)を基準電位とし、Active Two System(BIOSEMI社製)を用いて脳波を記録する方法である。
【0037】
(第2の脳波反応)
本開示の第1の実施態様における官能評価方法は、評価者が評価対象を質問に対して評価しているときに、評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、電気刺激に対する評価者の脳波の反応を測定して、得られた結果を第2の脳波反応とすることを含む。
【0038】
ここで実施される、評価者に対して電気刺激を付加する手段及び第2の脳波反応を取得する手段に関しては、上述した第1の脳波反応において記載した手段を同様に採用することができる。
【0039】
(第1の脳波反応と第2の脳波反応との比較)
本開示の第1の実施態様における官能評価方法は、第1の脳波反応と第2の脳波反応とを比較して、第2の脳波反応が第1の脳波反応よりも小さいときに、評価対象が官能評価特性を有していると判断することを含む。一方、第1の脳波反応と第2の脳波反応との反応量の差が少ないときには、評価者は、評価対象が官能評価特性を有しているとは判断していないと評価できるので、このような場合には、質問の内容を変更して同様の操作を実施することができる。ここで、第1の脳波反応と第2の脳波反応とを比較するときの各脳波反応の値は、例えば、図2に示すように、脳波の観測時間(ミリ秒)をx軸、脳波の強度(例えば電圧(μV))をy軸としたときのグラフにおいては、y軸の値を意図することができる。
【0040】
例えば、図2には、評価対象として化粧料を使用し、かかる化粧料を皮膚に塗布しているときに、「化粧料は肌に馴染むか?」と質問を提示したときの第1の脳波と第2の脳波を示すグラフである。このときの第2の脳波の電圧は、第1の脳波の電圧に比べて小さくなっているため(注意が電気刺激ではなく評価の方に注がれているため)、評価者は評価対象(化粧料)が質問に関する官能評価特性(肌への馴染みやすさ)を有していると判断したと評価することができる。
【0041】
第2の脳波反応量が第1の脳波反応量に比べて小さくなる割合が大きくなると、質問に関する官能評価特性の一致度又は妥当性がより高いと言うことができる。質問に関する官能評価特性の一致度又は妥当性の観点から、第2の脳波反応量が、第1の脳波反応量に比べ、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、又は50%以上低下していることが好ましい。かかる割合の上限値については特に制限はなく、例えば、100%以下、100%未満、95%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、又は50%以下とすることができる。
【0042】
第2の脳波反応量が第1の脳波反応量に比べて小さくなる箇所(指標)の選定は特に制限はない。例えば、40ミリ秒以上、50ミリ秒以上、又は60ミリ秒以上、400ミリ秒以下、300ミリ秒以下、200ミリ秒以下、150ミリ秒以下、又は140ミリ秒以下の脳波の観測時間(ミリ秒)の範囲において、脳波反応がポジティブな状態(すなわち、脳波反応がy軸のプラス方向に上昇する状態)で第2の脳波反応が第1の脳波反応に比べて小さくなっている箇所を選定することができる。このような箇所が複数存在する場合には、そのうちの少なくとも一箇所を選定することができ、或いは、例えば、第2の脳波反応量が第1の脳波反応量に比べて小さくなる割合が最も大きい一箇所を選定してもよい。第1の脳波反応量及び第2の脳波反応量はそれぞれ、例えば、所定の観測時間の範囲内における平均値(例えば電圧の平均値)とすることができる。
【0043】
〈第2の実施態様の官能評価方法〉
本開示の第2の実施態様における、評価対象の官能評価特性を評価する官能評価方法は、評価者に対し、評価対象の官能評価特性に関する第1の質問を提示することと、評価者が評価対象を第1の質問に対して評価しているときに、評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、電気刺激に対する評価者の脳波の反応を測定して、得られた結果を第3の脳波反応とすることと、評価者に対し、第1の質問とは異なる、評価対象の官能評価特性に関する第2の質問を提示することと、評価者が評価対象を第2の質問に対して評価しているときに、評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、電気刺激に対する評価者の脳波の反応を測定して、得られた結果を第4の脳波反応とすることと、第3の脳波反応と第4の脳波反応とを比較して、第3の脳波反応と第4の脳波反応のいずれが大きいかを判定し、(i)第4の脳波反応よりも第3の脳波反応の方が小さい場合には、評価対象が、第2の質問の官能評価特性よりも、第1の質問の官能評価特性を有していると判断し、かつ(ii)第3の脳波反応よりも第4の脳波反応の方が小さい場合には、評価対象が、第1の質問の官能評価特性よりも、第2の質問の官能評価特性を有していると判断することと、を含む。
【0044】
本開示の第2の実施態様の官能評価方法における、評価対象、官能評価特性及びそれに関する質問、並びに、評価者に対して電気刺激を付加する手段及び脳波反応を取得する手段等に関しては、上述した第1の実施態様の官能評価方法において記載したものを同様に採用することができる。
【0045】
(官能評価特性に関する第1の質問及び第2の質問)
第1の実施態様の官能評価方法では、1回の官能評価に対し、質問の提示は、典型的には一度であるが、第2の実施態様の官能評価方法は、1回の官能評価に対し、質問の提示が、典型的には二度実施され得る。なお、第2の実施態様の官能評価方法においても、1回の官能評価を実施した後に、質問の内容を変更して同様の操作を複数回実施してもよい。
【0046】
評価対象の官能評価特性に関する、第1の質問及び第2の質問は異なっている限り特に制限はない。例えば、触感に関する官能評価特性に関する質問を第1の質問とし、他の五感(例えば嗅覚)に関する官能評価特性に関する質問を第2の質問としてもよい。あるいは、第1の質問及び第2の質問はいずれも触感に関する官能評価特性に関する質問であるが、第1の質問は、例えば、化粧料の肌への馴染みやすさに関する質問とし、第2の質問は、第1の質問とは異なる、化粧料のべたつき感等に関する質問としてもよい。精度の高い官能評価結果を得る観点から、第1の質問及び第2の質問はいずれも、同一の五感に関する官能評価特性に関する質問であることが好ましく、触感に関する官能評価特性に関する質問であることがより好ましい。さらに、第1の質問及び第2の質問は、精度の高い官能評価結果を得る観点から、類似する質問ではなく、相互に対照的な官能評価特性(例えば、「化粧料が肌に馴染みやすいか?」といったポジティブな官能評価特性と、「化粧料はべたつくか?」といったネガティブな官能評価特性)であることが特に好ましい。
【0047】
(第3の脳波反応と第4の脳波反応との比較)
本開示の第2の実施態様における官能評価方法は、第3の脳波反応と第4の脳波反応とを比較して、第3の脳波反応と第4の脳波反応のいずれが大きいかを判定し、(i)第4の脳波反応よりも第3の脳波反応の方が小さい場合には、評価対象が、第2の質問の官能評価特性よりも、第1の質問の官能評価特性を有していると判断し、かつ(ii)第3の脳波反応よりも第4の脳波反応の方が小さい場合には、評価対象が、第1の質問の官能評価特性よりも、第2の質問の官能評価特性を有していると判断することと、を含む。ここで、比較する第3の脳波反応と第4の脳波反応は、上述した第1の脳波反応(質問なし)との差分でもよい。一方、第2の実施態様の官能評価方法において、第3の脳波反応と第4の脳波反応との反応量の差が少ないときには、評価者は、評価対象が2つの質問の官能評価特性をいずれも有していると判断しているか、或いは、評価対象が2つの質問の官能評価特性をいずれも有していないと判断しているので、このような場合には、2つの質問のうちの少なくともいずれか一方を変更して同様の操作を実施することができる。ここで、第3の脳波反応と第4の脳波反応とを比較するときの各脳波反応の値は、例えば、図3に示すように、脳波の観測時間(ミリ秒)をx軸、脳波の強度(例えば電圧(μV))をy軸としたときのグラフにおいては、y軸の値を意図することができる。
【0048】
例えば、図3の左側の上下のグラフは、評価対象として馴染みやすい化粧料を使用したときに、評価者に「化粧料は肌になじむか?」と第1の質問を提示したときの第3の脳波を示すグラフ(左側上図)と、「化粧料はべたつくか?」と第2の質問を提示したときの第4の脳波を示すグラフ(左側下図)である。このときの第3の脳波の電圧(例えば電圧の平均値)は、40~140ミリ秒付近において第4の脳波の電圧(例えば電圧の平均値)に比べて小さくなっているため、評価者は評価対象の化粧料が肌になじむと判断したと評価することができる。
【0049】
同様に、図3の右側の上下のグラフは、評価対象としてべたつきやすい化粧料を使用したときに、評価者に「化粧料は肌になじむか?」と第1の質問を提示したときの第3の脳波を示すグラフ(右側上図)と、「化粧料はべたつくか?」と第2の質問を提示したときの第4の脳波を示すグラフ(右側下図)である。このときの第4の脳波の電圧(例えば電圧の平均値)は、40~140ミリ秒付近において第3の脳波の電圧(例えば電圧の平均値)に比べて小さくなっているため、評価者は評価対象の化粧料がべたつくと判断したと評価することができる。
【0050】
第3の脳波反応量と第4の脳波反応量との差が大きくなると、脳波反応量が低い方の質問に関する官能評価特性の一致度又は妥当性がより高いと言うことができる。質問に関する官能評価特性の一致度又は妥当性の観点から、脳波反応量が低い方の脳波反応量が、脳波反応量が高い方の脳波反応量に比べ、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、又は50%以上低下していることが好ましい。かかる割合の上限値については特に制限はなく、例えば、100%以下、100%未満、95%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、又は50%以下とすることができる。
【0051】
第3の脳波反応量が第4の脳波反応量に比べて小さくなる箇所(指標)又は第4の脳波反応量が第3の脳波反応量に比べて小さくなる箇所(指標)の選定は特に制限はない。例えば、40ミリ秒以上、50ミリ秒以上、又は60ミリ秒以上、400ミリ秒以下、300ミリ秒以下、200ミリ秒以下、150ミリ秒以下、又は140ミリ秒以下の脳波の観測時間(ミリ秒)の範囲において、脳波反応がポジティブな状態(すなわち、脳波反応がy軸のプラス方向に上昇する状態)で、第3の脳波反応が第4の脳波反応に比べて小さくなっている箇所又は第4の脳波反応が第3の脳波反応に比べて小さくなっている箇所を選定することができる。このような箇所が複数存在する場合には、そのうちの少なくとも一箇所を選定することができ、或いは、例えば、第3の脳波反応量が第4脳波反応量に比べて小さくなる割合が最も大きい一箇所を選定してもよい。第3の脳波反応量及び第4の脳波反応量はそれぞれ、例えば、所定の観測時間の範囲内における平均値(例えば電圧の平均値)とすることができる。
【0052】
《評価対象の官能評価特性を評価する官能評価装置》
本開示の官能評価装置は、少なくとも、上述した第1の実施態様の官能評価方法を実施し得る第1の実施態様の官能評価装置と、上述した第2の実施態様の官能評価方法を実施し得る第2の実施態様の官能評価装置とが存在する。
【0053】
〈第1の実施態様の官能評価装置〉
本開示の第1の実施態様における、評価対象の官能評価特性を評価する官能評価装置は、評価者に対し、評価対象の官能評価特性に関する質問を提示する質問提示部と、評価者が評価対象を評価していないときに、評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、電気刺激に対する評価者の脳波を測定して、得られた結果を第1の脳波反応とする第1の脳波測定部と、評価者が評価対象を質問に対して評価しているときに、評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、電気刺激に対する評価者の脳波を測定して、得られた結果を第2の脳波反応とする第2の脳波測定部と、第1の脳波反応と第2の脳波反応とを比較して、第2の脳波反応が第1の脳波反応よりも小さいときに、評価対象が官能評価特性を有していると判断する質問判断部と、を含む。
【0054】
第1の実施態様の官能評価装置における、質問提示部と、第1の脳波測定部と、第2の脳波測定部と、質問判断部は、上述した第1の実施態様の官能評価方法を実施し得るユニットであり、上述した第1の実施態様の官能評価方法と同様の構成(例えば、脳波の観測時間(ミリ秒)をx軸、脳波の強度(例えば電圧(μV))をy軸としたときのグラフを用い、第1の脳波反応と第2の脳波反応とを比較する構成など)を採用することができる。また、評価対象、官能評価特性及びそれに関する質問、並びに、評価者に対して電気刺激を付加する手段及び脳波反応を取得する手段等に関しても、上述した第1の実施態様の官能評価方法と同様の構成を採用することができる。
【0055】
〈第2の実施態様の官能評価装置〉
本開示の第2の実施態様における、評価対象の官能評価特性を評価する官能評価装置は、評価者に対し、評価対象の官能評価特性に関する第1の質問を提示する第1の質問提示部と、評価者が評価対象を第1の質問に対して評価しているときに、評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、電気刺激に対する評価者の脳波反応を測定して、得られた結果を第3の脳波反応とする第3の脳波測定部と、評価者に対し、第1の質問とは異なる、評価対象の官能評価特性に関する第2の質問を提示する第2の質問提示部と、評価者が評価対象を第2の質問に対して評価しているときに、評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、電気刺激に対する評価者の脳波を測定して、得られた結果を第4の脳波反応とする第4の脳波測定部と、第3の脳波反応と第4の脳波反応とを比較して、第3の脳波反応と第4の脳波反応のいずれが大きいかを判定し、(i)第4の脳波反応よりも第3の脳波反応の方が小さい場合には、評価対象が、第2の質問の官能評価特性よりも、第1の質問の官能評価特性を有していると判断し、かつ(ii)第3の脳波反応よりも第4の脳波反応の方が小さい場合には、評価対象が、第1の質問の官能評価特性よりも、第2の質問の官能評価特性を有していると判断する、質問判断部と、を含む。
【0056】
第2の実施態様の官能評価装置における、第1の質問提示部と、第3の脳波測定部と、第2の質問提示部と、第4の脳波測定部と、質問判断部は、上述した第2の実施態様の官能評価方法を実施し得るユニットであり、上述した第2の実施態様の官能評価方法と同様の構成(例えば、脳波の観測時間(ミリ秒)をx軸、脳波の強度(例えば電圧(μV))をy軸としたときのグラフを用い、第3の脳波反応と第4の脳波反応とを比較する構成など)を採用することができる。また、評価対象、官能評価特性及びそれに関する質問、並びに、評価者に対して電気刺激を付加する手段及び脳波反応を取得する手段等に関しては、第2の実施態様の官能評価装置においても、上述した第1の実施態様の官能評価方法と同様の構成を採用することができる。
【0057】
《評価対象の官能評価特性を評価する官能評価プログラム》
本開示の官能評価プログラムは、少なくとも、上述した第1の実施態様の官能評価方法をコンピュータに実行させることができる第1の実施態様の官能評価プログラムと、上述した第2の実施態様の官能評価方法をコンピュータに実行させることができる第2の実施態様の官能評価プログラムとが存在する。
【0058】
〈第1の実施態様の官能評価プログラム〉
本開示の第1の実施態様における、評価対象の官能評価特性を評価する官能評価プログラムは、評価者に対し、評価対象の官能評価特性に関する質問を提示する処理と、評価者が評価対象を評価していないときに、評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、電気刺激に対する評価者の脳波を測定して、得られた結果を第1の脳波反応とする処理と、評価者が評価対象を質問に対して評価しているときに、評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、電気刺激に対する評価者の脳波を測定して、得られた結果を第2の脳波反応とする処理と、第1の脳波反応と第2の脳波反応とを比較して、第2の脳波反応が第1の脳波反応よりも小さいときに、評価対象が官能評価特性を有していると判断する処理と、をコンピュータに実行させることができる。
【0059】
第1の実施態様のプログラムにおけるかかる処理は、上述した第1の実施態様の官能評価方法を実施し得るように、コンピュータに実行させる処理であり、上述した第1の実施態様の官能評価方法と同様の構成(例えば、脳波の観測時間(ミリ秒)をx軸、脳波の強度(例えば電圧(μV))をy軸としたときのグラフを用い、第1の脳波反応と第2の脳波反応とを比較する構成など)を採用することができる。また、評価対象、官能評価特性及びそれに関する質問、並びに、評価者に対して電気刺激を付加する手段及び脳波反応を取得する手段等に関しても、上述した第1の実施態様の官能評価方法と同様の構成を採用することができる。
【0060】
〈第2の実施態様の官能評価プログラム〉
本開示の第2の実施態様における、評価対象の官能評価特性を評価する官能評価プログラムは、評価者に対し、評価対象の官能評価特性に関する第1の質問を提示する処理と、評価者が評価対象を第1の質問に対して評価しているときに、評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、電気刺激に対する評価者の脳波を測定して、得られた結果を第3の脳波反応する処理と、評価者に対し、第1の質問とは異なる、評価対象の官能評価特性に関する第2の質問を提示する処理と、評価者が評価対象を第2の質問に対して評価しているときに、評価者に対して電気刺激を付加し、かつ、電気刺激に対する評価者の脳波を測定して第4の脳波反応とする処理と、第3の脳波反応と第4の脳波反応とを比較して、第3の脳波反応と第4の脳波反応のいずれが大きいかを判定し、(i)第4の脳波反応よりも第3の脳波反応の方が小さい場合には、評価対象が、第2の質問の官能評価特性よりも、第1の質問の官能評価特性を有していると判断し、かつ(ii)第3の脳波反応よりも第4の脳波反応の方が小さい場合には、評価対象が、第1の質問の官能評価特性よりも、第2の質問の官能評価特性を有していると判断する処理と、をコンピュータに実行させることができる。
【0061】
第2の実施態様のプログラムにおけるかかる処理は、上述した第2の実施態様の官能評価方法を実施し得るように、コンピュータに実行させる処理であり、上述した第2の実施態様の官能評価方法と同様の構成(例えば、脳波の観測時間(ミリ秒)をx軸、脳波の強度(例えば電圧(μV))をy軸としたときのグラフを用い、第3の脳波反応と第4の脳波反応とを比較する構成など)を採用することができる。また、評価対象、官能評価特性及びそれに関する質問、並びに、評価者に対して電気刺激を付加する手段及び脳波反応を取得する手段等に関しては、第2の実施態様の官能評価プログラムにおいても、上述した第1の実施態様の官能評価方法と同様の構成を採用することができる。
【実施例0062】
以下の実施例を挙げて、本発明についてさらに詳しく説明を行うが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0063】
《試験例1》
本試験例では、評価対象の官能評価特性を評価する、上述した第1の実施態様の官能評価方法について検討した。
【0064】
〈実施例1〉
評価者の右手中指の第2関節から第3関節にわたってAg/AgCL粘着ゲルのNCS電極(日本光電工業株式会社製、NM-314YS、通電部は直径1.7cmの円形)を装着した。ここで、電気刺激の付与は、電気刺激装置(日本光電工業株式会社製、SEN-3301)を用い、アイソレータ(同社製、SS-202J)を介して、断続的な矩形波の定電流をNCS電極に提供して実施した。
【0065】
次いで、評価者の頭に電極キャップを装着した。ここで、評価者の脳波は、頭皮上の32部位(Fp1、Fp2、AF3、AF4、F7、F3、Fz、F4、F8、FC5,FC1,FC2,FC6,T7、C3、Cz、C4、T8、CP5,CP1,CP2,CP6,P7,P3,Pz,P4,P8,PO3,PO4、O1、Oz、O2)と左右の耳朶(A1、A2)を基準電位とし、Active Two System(BIOSEMI社製)を用いて脳波を記録する国際10-20法に基づいて測定した。
【0066】
まず、評価者が評価対象を評価していないときに、評価者に対して電気刺激を付加し、そのときの電気刺激に対する評価者の脳波の反応(第1の脳波反応)を測定した。その結果を図2に点線で示す。
【0067】
次いで、評価対象として、馴染みやすい化粧料として知られている化粧料を用い、該化粧料がどのような化粧料であるかを評価者には知らせない状態で、評価者に「この化粧料は肌に馴染みやすいか?」との質問を提示した。評価者は、右手の人差し指、中指及び薬指の先端から第1関節付近にかけて化粧料を採取し、評価者に対して電気刺激を付加しながら、採取した化粧料を目の下から頬のエリアにわたって大きな円を描くように塗布しつつ、先の質問が正しいか否かを評価してもらい、そのときの電気刺激に対する評価者の脳波の反応(第2の脳波反応)を測定した。その結果を図2に実線で示す。
【0068】
〈結果〉
図2のグラフから明らかなように、質問を提示して評価対象を評価しているときの脳波が明らかに減少していることが確認できた。このことから、評価者の注意は、電気刺激ではなく、評価対象の評価の方に注がれていることは明らかであるから、評価者は、提示した質問が対象物に対して一致している、妥当である、又は矛盾がないと意識的に脳内において評価していると言える。
【0069】
《試験例2:触覚に関する事例》
本試験例では、評価対象(触覚対象物)の官能評価特性を評価する、上述した第2の実施態様の官能評価方法について検討した。
【0070】
〈実施例2〉
評価者に対する、電気刺激の付与及び脳波測定に関しては、実施例1と同様にして行った。
【0071】
実施例2では、評価対象として、馴染みやすい化粧料として知られている化粧料を用い、該化粧料がどのような化粧料であるかを評価者には知らせない状態で、評価者にはまず「この化粧料は肌に馴染みやすいか?」との質問(第1の質問)を提示した。評価者は、右手の人差し指、中指及び薬指の先端から第1関節付近にかけて化粧料を採取し、評価者に対して電気刺激を付加しながら、採取した化粧料を目の下から頬のエリアにわたって大きな円を描くように塗布しつつ、先の質問が正しいか否かを評価してもらい、そのときの電気刺激に対する評価者の脳波の反応(第3の脳波反応)を測定した。その結果を図3の左上に示す。
【0072】
次いで、評価者に「この化粧料はべたつくか?」との質問(第2の質問)を提示した。評価者は、同様に、右手の人差し指、中指及び薬指の先端から第1関節付近にかけて化粧料を採取し、評価者に対して電気刺激を付加しながら、採取した化粧料を目の下から頬のエリアにわたって大きな円を描くように塗布しつつ、先の質問が正しいか否かを評価してもらい、そのときの電気刺激に対する評価者の脳波の反応(第4の脳波反応)を測定した。その結果を図3の左下に示す。
【0073】
〈結果〉
図3の左側上下のグラフから明らかなように、40~140ミリ秒付近(破線領域内)において第3の脳波が第4の脳波よりも明らかに減少していることが確認できた(40~140ミリ秒付近における第3の脳波の電圧の平均値は-0.23であり、第4の脳波の電圧の平均値は0.59であった。)。この結果より、評価者が第2の質問よりも第1の質問を評価しているときに、評価者の注意が、評価対象の評価の方に注がれている、即ち、馴染みやすい化粧料に対し「この化粧料は肌に馴染みやすいか?」との質問に注意が注がれていることは明らかであるから、本開示の評価方法によれば、評価対象の官能評価特性を正当に評価し得ると言える。
【0074】
〈実施例3〉
評価者に対する、電気刺激の付与及び脳波測定に関しては、実施例1と同様にして行った。
【0075】
実施例3では、評価対象として、べたつき感を呈する化粧料として知られている化粧料を用い、該化粧料がどのような化粧料であるかを評価者には知らせない状態で、評価者にはまず「この化粧料は肌に馴染みやすいか?」との質問(第1の質問)を提示した。評価者は、右手の人差し指、中指及び薬指の先端から第1関節付近にかけて化粧料を採取し、評価者に対して電気刺激を付加しながら、採取した化粧料を目の下から頬のエリアにわたって大きな円を描くように塗布しつつ、先の質問が正しいか否かを評価してもらい、そのときの電気刺激に対する評価者の脳波の反応(第3の脳波反応)を測定した。その結果を図3の右上に示す。
【0076】
次いで、評価者に「この化粧料はべたつくか?」との質問(第2の質問)を提示した。評価者は、同様に、右手の人差し指、中指及び薬指の先端から第1関節付近にかけて化粧料を採取し、評価者に対して電気刺激を付加しながら、採取した化粧料を目の下から頬のエリアにわたって大きな円を描くように塗布しつつ、先の質問が正しいか否かを評価してもらい、そのときの電気刺激に対する評価者の脳波の反応(第4の脳波反応)を測定した。その結果を図3の右下に示す。
【0077】
〈結果〉
図3の右側上下のグラフから明らかなように、40~140ミリ秒付近(破線領域内)において第4の脳波が第3の脳波よりも明らかに減少していることが確認できた(40~140ミリ秒付近における第4の脳波の電圧の平均値は0.19であり、第3の脳波の電圧の平均値は0.54であった。)。この結果より、評価者が第1の質問よりも第2の質問を評価しているときに、評価者の注意が、評価対象の評価の方に注がれている、即ち、べたつき感を呈する化粧料に対し「この化粧料はべたつくか?」との質問に注意が注がれていることは明らかであるから、本開示の評価方法によれば、評価対象の官能評価特性を正当に評価し得ると言える。
【0078】
《試験例3:嗅覚に関する事例》
本試験例では、評価対象(嗅覚対象物)の官能評価特性を評価する、上述した第2の実施態様の官能評価方法について検討した。
【0079】
〈実施例4〉
評価者に対する、電気刺激の付与及び脳波測定に関しては、実施例1と同様にして行った。
【0080】
実施例4では、評価対象として、まろやかさを呈する香料として知られている香料を用い、該香料がどのような香料であるかを評価者には知らせない状態で、評価者にはまず「この香料はまろやかであると感じるか?」との質問(第1の質問)を提示した。評価者に対して電気刺激を付加しながら、評価者は香料を付けた紙片に鼻を近づけ息を吸い、それ以降は自然なペースで呼吸をしつつ、香料を嗅いで先の質問が正しいか否かを評価してもらい、そのときの電気刺激に対する評価者の脳波の反応(第3の脳波反応)を測定した。その結果を図4の左上に示す。
【0081】
次いで、評価者に「この香料はさわやかであると感じるか?」との質問(第2の質問)を提示した。評価者に対して電気刺激を付加しながら、評価者は香料を付けた紙片に鼻を近づけ息を吸い、それ以降は自然なペースで呼吸をしつつ、香料を嗅いで先の質問が正しいか否かを評価してもらい、そのときの電気刺激に対する評価者の脳波の反応(第4の脳波反応)を測定した。その結果を図4の左下に示す。
【0082】
〈結果〉
図4の左側上下のグラフから明らかなように、170~270ミリ秒付近において第3の脳波が第4の脳波よりも明らかに減少していることが確認できた(170~270ミリ秒付近における第3の脳波の電圧の平均値は0.39であり、第4の脳波の電圧の平均値は1.32であった。)。この結果より、評価者が第2の質問よりも第1の質問を評価しているときに、評価者の注意が、評価対象の評価の方に注がれている、即ち、まろやかさを感じやすい香料に対し「この香料はまろやかであると感じるか?」との質問に注意が注がれていることは明らかであるから、本開示の評価方法によれば、評価対象の官能評価特性を正当に評価し得ると言える。
【0083】
〈実施例5〉
評価者に対する、電気刺激の付与及び脳波測定に関しては、実施例1と同様にして行った。
【0084】
実施例5では、評価対象として、さわやかさを呈する香料として知られている香料を用い、該香料がどのような香料であるかを評価者には知らせない状態で、評価者にはまず「この香料はまろやかであると感じるか?」との質問(第1の質問)を提示した。評価者に対して電気刺激を付加しながら、評価者は香料を付けた紙片に鼻を近づけ息を吸い、それ以降は自然なペースで呼吸をしつつ、香料を嗅いで先の質問が正しいか否かを評価してもらい、そのときの電気刺激に対する評価者の脳波の反応(第3の脳波反応)を測定した。その結果を図4の右上に示す。
【0085】
次いで、評価者に「この香料はさわやかであると感じるか?」との質問(第2の質問)を提示した。評価者に対して電気刺激を付加しながら、評価者は香料を付けた紙片に鼻を近づけ息を吸い、それ以降は自然なペースで呼吸をしつつ、香料を嗅いで先の質問が正しいか否かを評価してもらい、そのときの電気刺激に対する評価者の脳波の反応(第4の脳波反応)を測定した。その結果を図4の右下に示す。
【0086】
〈結果〉
図4の右側上下のグラフから明らかなように、170~270ミリ秒付近において第4の脳波が第3の脳波よりも明らかに減少していることが確認できた(170~270ミリ秒付近における第4の脳波の電圧の平均値は-0.49であり、第3の脳波の電圧の平均値は2.55であった。)。この結果より、評価者が第2の質問よりも第1の質問を評価しているときに、評価者の注意が、評価対象の評価の方に注がれている、即ち、さわやかさを感じやすい香料に対し「この香料はさわやかであると感じるか?」との質問に注意が注がれていることは明らかであるから、本開示の評価方法によれば、評価対象の官能評価特性を正当に評価し得ると言える。
【0087】
《試験例4:聴覚に関する事例》
本試験例では、評価対象(聴覚対象物)の官能評価特性を評価する、上述した第2の実施態様の官能評価方法について検討した。
【0088】
〈実施例6〉
評価者に対する、電気刺激の付与及び脳波測定に関しては、実施例1と同様にして行った。
【0089】
実施例6では、評価対象として、楽しさを呈する音楽として知られている音楽を用い、該音楽がどのような音楽であるかを評価者には知らせない状態で、評価者に「この音楽は楽しいと感じるか?」との質問(第1の質問)を提示した。評価者は、音楽を聴取しつつ、先の質問が正しいか否かを評価してもらい、そのときの電気刺激に対する評価者の脳波の反応(第3の脳波反応)を測定した。その結果を図5の左上に示す。
【0090】
次いで、評価者に「この音楽は悲しいと感じるか?」との質問(第2の質問)を提示した。評価者に対して電気刺激を付加しながら、音楽を聴取しつつ、先の質問が正しいか否かを評価してもらい、そのときの電気刺激に対する評価者の脳波の反応(第4の脳波反応)を測定した。その結果を図5の左下に示す。
【0091】
〈結果〉
図5の左側上下のグラフから明らかなように、270~370ミリ秒付近において第3の脳波が第4の脳波よりも明らかに減少していることが確認できた(270~370ミリ秒付近における第3の脳波の電圧の平均値は-1.16であり、第4の脳波の電圧の平均値は-0.57であった。)。この結果より、評価者が第2の質問よりも第1の質問を評価しているときに、評価者の注意が、評価対象の評価の方に注がれている、即ち、楽しさを感じやすい音楽に対し「この音楽は楽しいと感じるか?」との質問に注意が注がれていることは明らかであるから、本開示の評価方法によれば、評価対象の官能評価特性を正当に評価し得ると言える。
【0092】
〈実施例7〉
評価者に対する、電気刺激の付与及び脳波測定に関しては、実施例1と同様にして行った。
【0093】
実施例7では、評価対象として、悲しさを呈する音楽として知られている音楽を用い、該音楽がどのような音楽であるかを評価者には知らせない状態で、評価者に「この音楽は楽しいと感じるか?」との質問(第1の質問)を提示した。評価者は、音楽を聴取しつつ、先の質問が正しいか否かを評価してもらい、そのときの電気刺激に対する評価者の脳波の反応(第3の脳波反応)を測定した。その結果を図5の右上に示す。
【0094】
次いで、評価者に「この音楽は悲しいと感じるか?」との質問(第2の質問)を提示した。評価者に対して電気刺激を付加しながら、音楽を聴取しつつ、先の質問が正しいか否かを評価してもらい、そのときの電気刺激に対する評価者の脳波の反応(第4の脳波反応)を測定した。その結果を図5の右下に示す。
【0095】
〈結果〉
図5の右側上下のグラフから明らかなように、270~370ミリ秒付近において第4の脳波が第3の脳波よりも明らかに減少していることが確認できた(270~370ミリ秒付近における第4の脳波の電圧の平均値は-0.47であり、第3の脳波の電圧の平均値は1.30であった。)。この結果より、評価者が第1の質問よりも第2の質問を評価しているときに、評価者の注意が、評価対象の評価の方に注がれている、即ち、悲しさを感じやすい音楽に対し「この音楽は悲しいと感じるか?」との質問に注意が注がれていることは明らかであるから、本開示の評価方法によれば、評価対象の官能評価特性を正当に評価し得ると言える。
図1
図2
図3
図4
図5