(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089895
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】かご構造を有するシルセスキオキサンを含む化合物、該化合物由来の構成単位を有する重合体、及び該重合体を含むレジスト組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 230/08 20060101AFI20240627BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20240627BHJP
C07F 7/08 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C08F230/08
C08F220/18
C07F7/08 Y CSP
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205415
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 芙美
(72)【発明者】
【氏名】村田 貴朗
(72)【発明者】
【氏名】吉川 昌
【テーマコード(参考)】
4H049
4J100
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP10
4H049VQ28
4H049VQ49
4H049VR13
4H049VR41
4H049VU24
4J100AB07R
4J100AL03Q
4J100AL04Q
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AL08S
4J100BA03R
4J100BA15P
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4J100BA77P
4J100BC03Q
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4J100BC09Q
4J100BC53S
4J100CA05
4J100CA06
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA38
(57)【要約】 (修正有)
【課題】現像液溶解性が良好な、かご構造を有するシルセスキオキサンを含む化合物を提供する。
【解決手段】下記式1で表される、かご構造を有するシルセスキオキサンを含む化合物。(RmSiO
1.5)
n・・・(式1)
(式1において、nは3~30の整数であり、RmはRa、Rbを含み、Raは下記式2で表される構造であり、Rbはラジカル重合性官能基である。)
(上記式2中、Lは炭素数1~6の炭化水素鎖、Yはヘテロ結合であり、Z
1は直鎖または分岐アルキル基等であり、Z
2、Z
3はそれぞれ独立に、水素原子、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基等のいずれかであり、Z
2、Z
3から選ばれる少なくとも1つは水素原子以外であり、jは1~6の整数であり、kは0~2の整数である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で表される、かご構造を有するシルセスキオキサンを含む化合物。
(RmSiO
1.5)
n ・・・(式1)
(式1において、nは3~30の整数であり、RmはRa、Rbを含み、Raは下記式2で表される構造であり、Rbはラジカル重合性官能基である。)
【化2】
(上記式2中、Lは炭素数1~6の炭化水素鎖、Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合であり、Z
1は直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基であり、Z
2、Z
3はそれぞれ独立に、水素原子、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、置換基としてアルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基から選ばれる少なくとも1種を有する直鎖状もしくは分岐状のアルキル基のいずれかであり、Z
2、Z
3から選ばれる少なくとも1つは水素原子以外であり、jは1~6の整数であり、kは0~2の整数である。)
【請求項2】
請求項1に記載の化合物由来の構成単位を有する重合体。
【請求項3】
酸解離性基を含むモノマー由来の構成単位をさらに有する請求項2に記載の重合体。
【請求項4】
フェノール性水酸基を含むモノマー由来の構成単位をさらに有する請求項2に記載の重合体。
【請求項5】
ラクトン骨格を含むモノマー由来の構成単位をさらに有する請求項2に記載の重合体。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか1項に記載の重合体を含むレジスト組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のレジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かご構造を有するシルセスキオキサンを含む化合物、該化合物由来の構成単位を有する重合体、及び該重合体を含むレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
かご構造を有するシルセスキオキサンは、その硬直なポリシロキサン骨格とサブナノレベルの分子サイズから、高い透明性、耐熱性、表面硬度・耐擦傷性、機械強度等を有しており、ハードコート材料、耐熱材料、レジスト材料等の用途が検討されている。
例えば、下記特許文献1には、かご構造を有するシルセスキオキサンを含む、リソグラフィー用のレジスト組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/056928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のレジスト組成物では、エチル基やイソブチル基などの炭化水素系側鎖を有するシルセスキオキサンに起因して現像液溶解性が充分でなく、微細パターンにおいて解像性に課題が残る場合があった。
そこで、本発明はこれらの問題点を解決することを目的とし、現像液溶解性が良好な、かご構造を有するシルセスキオキサンを含む化合物、前記化合物由来の構成単位を有する重合体、前記重合体を含むレジスト組成物、および前記レジスト組成物を用いたパターン形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を有する。
【0006】
[1].下記式1で表される、かご構造を有するシルセスキオキサンを含む化合物。
(RmSiO1.5)n ・・・(式1)
(式1において、nは3~30の整数であり、RmはRa、Rbを含み、Raは下記式2で表される構造であり、Rbはラジカル重合性官能基である。)
【0007】
【化2】
(上記式2中、Lは炭素数1~6の炭化水素鎖、Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合であり、Z
1は直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基であり、Z
2、Z
3はそれぞれ独立に、水素原子、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、置換基としてアルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基から選ばれる少なくとも1種を有する直鎖状もしくは分岐状のアルキル基のいずれかであり、Z
2、Z
3から選ばれる少なくとも1つは水素原子以外であり、jは1~6の整数であり、kは0~2の整数である。)
【0008】
[2].[1]に記載の化合物由来の構成単位を有する重合体。
【0009】
[3].酸解離性基を含むモノマー由来の構成単位をさらに有する[2]に記載の重合体。
【0010】
[4].フェノール性水酸基を含むモノマー由来の構成単位をさらに有する[2]又は[3]に記載の重合体。
【0011】
[5].ラクトン骨格を含むモノマー由来の構成単位をさらに有する[2]~[4]のいずれかに記載の重合体。
【0012】
[6].[2]~[5]のいずれかに記載の重合体を含むレジスト組成物。
【0013】
[7].[6]に記載のレジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上記式2で表される構造を有することにより、容易にかご型シルセスキオキサンを得られる点に加え、エステル基やチオエーテル基等の極性基により露光によって生じた酸拡散を適度に抑制することができ、また、現像液良溶解性の効果と合わせて、更なる解像性の向上が達成されることを見出して成し得た。
本発明によれば、現像液溶解性が良好であり、パターン解像性に優れるかご構造を有するシルセスキオキサンからなる重合体、前記重合体を含むレジスト組成物、および前記レジスト組成物を用いたパターン形成方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を一実施形態に基づいて説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0016】
[かご構造を有するシルセスキオキサンを含む化合物]
本発明の一実施形態のかご構造を有するシルセスキオキサンを含む化合物(以下、本化合物ともいう。)は、下記式1で表されるものである。
(RmSiO1.5)n ・・・(式1)
【0017】
式1中、nは3~30の整数であり、RmはRa、Rbを含み、Raは下記式2で表される構造であり、Rbはラジカル重合性官能基である。
【0018】
上記式1中、nは、微細なパターンを形成するために、分子サイズが小さく分子鎖の絡まり合いが弱いのが好ましく、その観点から、nは30以下が好ましく、20以下がより好ましい。また、構造の安定性の観点から、nは3以上が好ましく、6以上がより好ましい。
【0019】
【0020】
上記式2中、Lは炭素数1~6の炭化水素鎖であり、Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合であり、Z1は直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基であり、Z2、Z3はそれぞれ独立に、水素原子、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、置換基としてアルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基から選ばれる少なくとも1種を有する直鎖状もしくは分岐状のアルキル基のいずれかであり、Z2、Z3から選ばれる少なくとも1つは水素原子以外であり、jは1~6の整数であり、kは0~2の整数である。
【0021】
本化合物の質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによるポリスチレン換算)は、微細なパターンを形成できる点で1.0~2.0が好ましく、1.0~1.8がより好ましい。
質量平均分子量(Mw)は、特に限定するものではないが、800~10000が好ましく、1300~6000がより好ましい。
数平均分子量(Mn)は、特に限定するものではないが、800~10000が好ましく、1300~6000がより好ましい。
【0022】
本化合物のかご構造を有するシルセスキオキサンは、(SiO1.5)nで表現
される頂点の数がn個のかご構造である。係るかご構造は、完全かご型シルセスキオキサン構造であっても、不完全かご型シルセスキオキサン構造であってもよい。例えば完全かご型シルセスキオキサン構造としては以下の化合物が挙げられる。
【0023】
【0024】
ここで、各頂点は置換基をそれぞれ1個含有する珪素原子であり、各辺はSi-O-Si結合を表す。
【0025】
本化合物では、剛直な化学構造を有する有機ケイ素化合物を含むことにより、例えば、ドライエッチング耐性に優れたものとなる。
【0026】
本化合物において、前記シルセスキオキサンのRmは、Ra、Rbを含み、Raは、下記式2で表される構造を含むものである。
【0027】
【0028】
上記式2中、Lは、炭素数1~6の炭化水素鎖であり、その中でも炭素数1~4が好ましく、炭素数1~3が特に好ましい。
【0029】
Yは、エーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合であり、その中でもエステル結合が好ましい。
【0030】
Z1は、直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基であり、Z2、Z3はそれぞれ独立に、水素原子、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、置換基としてアルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基から選ばれる少なくとも1種を有する直鎖状もしくは分岐状のアルキル基のいずれかであり、Z2、Z3から選ばれる少なくとも1つは水素原子以外である。この中でも、Z2は水素原子、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルキルオキシカルボニル基、置換基としてアルキルオキシカルボニル基を有する直鎖状もしくは分岐状のアルキル基が好ましく、Z3は水素原子、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基としてアルキルオキシカルボニル基を有する直鎖状もしくは分岐状のアルキル基が好ましい。
【0031】
jは、1~6の整数であり、その中でも2~4が好ましい。また、kは、0~2の整数であり、その中でも0~1が好ましい。
【0032】
Rbは、ラジカル重合性官能基を表し、ラジカル重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基、α-メチルスチリル基、ビニル基等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリロイル基、スチリル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。
なお、本発明において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基またはメタクリロイル基を意味する。また、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸またはメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0033】
本化合物において、RaとRbとの導入割合は、シルセスキオキサンを含む化合物およびその重合体の分子量分布を小さくできることから、通常モル比4:1~14:1であり、好ましくは5:1~12:1であり、特に好ましくは6:1~10:1である。
【0034】
[重合体]
本発明の一実施形態の重合体(以下、本重合体ともいう。)は、本化合物由来の構成単位を有するものである。
本重合体は、本化合物を重合させた重合体でもよいが、2種以上の構成単位を有する共重合体であることが好ましい。つまり、本重合体は、本化合物として示したシルセスキオキサン骨格を含む構成単位以外の他の構成単位の1種以上を含むことが好ましく、他の構成単位の1~5種を含むことがより好ましい。
他の構成単位としては、化学増幅型レジスト組成物において公知の構成単位を用いることができる。例えば、酸解離性基を含む構成単位、フェノール性水酸基を含む構成単位、ラクトン骨格を含む構成単位等が挙げられる。
【0035】
本重合体中の、シルセスキオキサン骨格を含む構成単位は1種でもよく2種以上でもよい。シルセスキオキサン骨格を含む構成単位以外の構成単位とのバランスの点から、シルセスキオキサン骨格を含む構成単位は3種以下が好ましい。
本重合体の全構成単位に対するシルセスキオキサン骨格を含む構成単位の含有量は1~50モル%が好ましく、1~40モル%がより好ましく、1~30モル%であることがさらに好ましい。
本重合体の質量平均分子量は、1000~100000が好ましく、3000~50000がより好ましく、5000~30000がさらに好ましい。
【0036】
<酸解離性基を含む構成単位>
本重合体は、上記したとおり、酸解離性基を含むモノマー由来の構成単位の1種以上を有することが好ましい。酸解離性基とは、酸の作用によってアルカリ溶解性が向上する基を意味する。
酸解離性基を含む単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましい。酸解離性基を含む単量体の具体例としては、t-ブチル(メタ)アクリレート、t-アミル(メタ)アクリレート、1,1-ジエチルプロピル(メタ)アクリレート、1-メチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1-エチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1-イソプロピルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1-t-ブチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1-メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-イソプロピル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
酸解離性基を含む単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本重合体の全構成単位に対する酸解離性基を含む構成単位の含有量は5~80モル%が好ましく、10~70モル%がより好ましく、20~65モル%であることがさらに好ましい。
【0038】
<フェノール性水酸基を含む構成単位>
本重合体は、フェノール性水酸基を含むモノマー由来の構成単位の1種以上を有することが好ましい。
フェノール性水酸基を含む単量体としては、スチレン化合物または(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましい。フェノール性水酸基を含む単量体の具体例としては、4-ヒドロキシスチレン、2-ヒドロキシスチレン、3-ヒドロキシスチレン、2,3-ジヒドロキシスチレン、3,4-ジヒドロキシスチレン、3,5-ジヒドロキシスチレン、4-イソプロペニルフェノール、2-ヒドロキシ-6-ビニルナフタレン、4-ヒドロキシ-6-ビニルナフタレン、5-ヒドロキシ-6-ビニルナフタレン、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
フェノール性水酸基を含む単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本重合体の全構成単位に対するフェノール性水酸基を含む構成単位の含有量は5~90モル%が好ましく、10~80モル%がより好ましく、20~70モル%であることがさらに好ましい。
【0040】
<ラクトン骨格を含む構成単位>
本重合体は、ラクトン骨格を含むモノマーの構成単位を1種以上有してもよい。ラクトン骨格とは、-O-C(=O)-を有する環を含む単環または多環の原子団を意味する。前記-O-C(=O)-を有する環は、-C(=O)-O-C(=O)-を有する環でもよい。
ラクトン骨格は、4~20員環が好ましく、5~10員環がより好ましい。
ラクトン骨格は、ラクトン環のみの単環であってもよく、ラクトン環に芳香族または非芳香族の、炭化水素環または複素環が縮合していてもよい。
ラクトン骨格を含む単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましい。特に、基板等への密着性に優れる点から、置換または無置換のδ-バレロラクトン環を有する(メタ)アクリル酸エステル、および置換または無置換のγ-ブチロラクトン環を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、無置換のγ-ブチロラクトン環を有する単量体が特に好ましい。
ラクトン骨格を有する単量体の具体例としては、β-(メタ)アクリロイルオキシ-β-メチル-δ-バレロラクトン、4,4-ジメチル-2-メチレン-γ-ブチロラクトン、β-(メタ)アクリロイルオキシ-γ-ブチロラクトン、β-(メタ)アクリロイルオキシ-β-メチル-γ-ブチロラクトン、α-(メタ)アクリロイルオキシ-γ-ブチロラクトン、2-(1-(メタ)アクリロイルオキシ)エチル-4-ブタノリド、(メタ)アクリル酸パントイルラクトン、5-(メタ)アクリロイルオキシ-2,6-ノルボルナンカルボラクトン、8-メタクリロキシ-4-オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-3-オン、9-メタクリロキシ-4-オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-3-オン等が挙げられる。
【0041】
ラクトン骨格を含む単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本重合体がラクトン骨格を含む単量体単位を有する場合、その含有量は、全構成単位に対して1~70モル%が好ましく、5~60モル%がより好ましく、10~50モル%であることがさらに好ましい。
【0042】
[レジスト組成物]
本発明の一実施形態のレジスト組成物(以下、本レジスト組成物ともいう。)は、本重合体と、レジスト溶媒と、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物とを含むことが好ましい。本重合体は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。アルカリ現像用のレジスト組成物であっても、有機溶媒現像用のレジスト組成物であってもよい。
レジスト組成物(溶剤を除く)に対して、本重合体の含有量は、特に限定されないが、70~99.9質量%が好ましい。
【0043】
レジスト溶媒としては、例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)などが挙げられる。レジスト溶媒は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト溶媒の使用量は、形成するレジスト膜の厚みにもよるが、本重合体100質量部に対して100~10000質量部の範囲が好ましい。
【0044】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物は、化学増幅型レジスト組成物の光酸発生剤として使用可能なものの中から任意に選択できる。光酸発生剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物、ジアゾメタン化合物等が挙げられる。
光酸発生剤の使用量は、本重合体100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましい。
【0045】
本レジスト組成物は、必要に応じて、含窒素化合物、酸化合物(有機カルボン酸、リンのオキソ酸またはその誘導体)、界面活性剤、その他のクエンチャー、増感剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。該添加剤は、当該分野で公知のものを使用できる。
【0046】
[本化合物の製造方法]
次に、本化合物の製造方法の一例を示す。
本化合物のかご構造を有するシルセスキオキサン化合物は、Ra及び/又はRbを含むRmを有するシラン化合物を公知の方法により加水分解・共縮合することにより得られる。なお、本発明において、加水分解・共縮合とは、2種類以上のシラン化合物と所定量の水および触媒を混合し、アルコキシシリル基の加水分解と、これに続くシラノール基の縮合反応により、所望のシルセスキオキサン化合物を製造する一連の反応のことである。
【0047】
Rmを有するシラン化合物の加水分解・共縮合の触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸およびフッ化水素酸などの無機酸、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、アンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライドおよびベンジルトリエチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩などが好適である。
これらの中でも、フッ化水素酸、アンモニウムフルオリドは、かご構造を特異的に生成するため、特に好ましい。
【0048】
触媒量は、Rmを有するシラン化合物の加水分解性アルコキシ基モル数の理論量合計の0.001~1倍が好ましく、0.005~0.5倍がより好ましい。0.001倍以上では十分な触媒活性を得ることができる。また、1倍以下ならば、ゲル化を抑制することができる。
【0049】
Rmを有するシラン化合物の加水分解に使用する水量は、加水分解性アルコキシ基モル数の理論量合計の0.1~10倍が好ましく、1~3倍がより好ましい。
加水分解・共縮合の反応温度は、0~100℃が好ましく、20~50℃がより好ましい。0℃以上ならば十分に反応が進行する。100℃以下ならば副反応の誘発やゲル化の可能性が少ない。
【0050】
加水分解・共縮合時には、有機溶媒を使用することが好ましい。有機溶媒としては、Rmを有するシラン化合物を溶解できるものであれば特に限定はないが、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1-メトキシ-2-プロパノール、アセトニトリルなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独でも、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0051】
Raを有するシラン化合物は、下記式2で表される構造を有するものであり、例えば、チオール基を含有するシラン化合物とα,β-不飽和エステル化合物とのマイケル付加反応により製造することができる。
【0052】
【0053】
チオール基を含有するシラン化合物としては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0054】
α,β-不飽和エステル化合物としては、炭素数1~6の2価の鎖式炭化水素基(L)、エーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合(Y)、直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかである(Z1)、水素原子、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、置換基としてアルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基から選ばれる少なくとも1種を有する直鎖状もしくは分岐状のアルキル基のいずれかである(Z2およびZ3)。
但し、Z2、Z3から選ばれる基の少なくとも1つは水素原子以外であり、kは0~2である化合物である構造を有し、Z2が結合する炭素とZ3が結合する炭素との間に不飽和結合を有する。
【0055】
α,β-不飽和エステル化合物としては、例えば、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、クロトン酸プロピル、クロトン酸イソプロピル、クロトン酸ブチル、クロトン酸s-ブチル、クロトン酸ペンチル、クロトン酸2-エチルヘキシル、クロトン酸n-ヘキシル、クロトン酸t-ブチル、クロトン酸シクロペンチル、クロトン酸シクロへキシル、クロトン酸イソボルニル、クロトン酸ジシクロペンタニル、クロトン酸フェニル、クロトン酸4-メチルフェニル、クロトン酸ジメチルフェニル、クロトン酸ベンジル、クロトン酸フェネチル、イソクロトン酸メチル、イソクロトン酸エチル、イソクロトン酸プロピル、イソクロトン酸イソプロピル、イソクロトン酸ブチル、イソクロトン酸s-ブチル、イソクロトン酸ペンチル、イソクロトン酸2-エチルヘキシル、イソクロトン酸n-ヘキシル、イソクロトン酸t-ブチル、イソクロトン酸シクロペンチル、イソクロトン酸シクロへキシル、イソクロトン酸イソボルニル、イソクロトン酸ジシクロペンタニル、イソクロトン酸フェニル、イソクロトン酸4-メチルフェニル、イソクロトン酸ジメチルフェニル、イソクロトン酸ベンジル、イソクロトン酸フェネチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸s-ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸4-メチルフェニル、メタクリル酸ジメチルフェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェネチル、アンゲリカ酸メチル、アンゲリカ酸エチル、アンゲリカ酸プロピル、アンゲリカ酸イソプロピル、アンゲリカ酸ブチル、アンゲリカ酸s-ブチル、アンゲリカ酸ペンチル、アンゲリカ酸2-エチルヘキシル、アンゲリカ酸n-ヘキシル、アンゲリカ酸t-ブチル、アンゲリカ酸シクロペンチル、アンゲリカ酸シクロへキシル、アンゲリカ酸イソボルニル、アンゲリカ酸ジシクロペンタニル、アンゲリカ酸フェニル、アンゲリカ酸4-メチルフェニル、アンゲリカ酸ジメチルフェニル、アンゲリカ酸ベンジル、アンゲリカ酸フェネチル、チグリン酸メチル、チグリン酸エチル、チグリン酸プロピル、チグリン酸イソプロピル、チグリン酸ブチル、チグリン酸s-ブチル、チグリン酸ペンチル、チグリン酸2-エチルヘキシル、チグリン酸n-ヘキシル、チグリン酸t-ブチル、チグリン酸シクロペンチル、チグリン酸シクロへキシル、チグリン酸イソボルニル、チグリン酸ジシクロペンタニル、チグリン酸フェニル、チグリン酸4-メチルフェニル、チグリン酸ジメチルフェニル、チグリン酸ベンジル、チグリン酸フェネチル、2-エチル-2-ブテン酸メチル、2-エチル-2-ブテン酸エチル、2-エチル-2-ブテン酸プロピル、2-エチル-2-ブテン酸イソプロピル、2-エチル-2-ブテン酸ブチル、2-エチル-2-ブテン酸s-ブチル、2-エチル-2-ブテン酸ペンチル、2-エチル-2-ブテン酸2-エチルヘキシル、2-エチル-2-ブテン酸n-ヘキシル、2-エチル-2-ブテン酸t-ブチル、2-エチル-2-ブテン酸シクロペンチル、2-エチル-2-ブテン酸シクロへキシル、2-エチル-2-ブテン酸イソボルニル、2-エチル-2-ブテン酸ジシクロペンタニル、2-エチル-2-ブテン酸フェニル、2-エチル-2-ブテン酸4-メチルフェニル、2-エチル-2-ブテン酸ジメチルフェニル、2-エチル-2-ブテン酸ベンジル、2-エチル-2-ブテン酸フェネチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジs-ブチル、マレイン酸ジペンチル、マレイン酸ジ2-エチルヘキシル、マレイン酸ジn-ヘキシル、マレイン酸ジt-ブチル、マレイン酸ジシクロペンチル、マレイン酸ジシクロへキシル、マレイン酸ジイソボルニル、マレイン酸ビスジシクロペンタニル、マレイン酸ジフェニル、マレイン酸ジ4-メチルフェニル、マレイン酸ビスジメチルフェニル、マレイン酸ジベンジル、マレイン酸ジフェネチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジs-ブチル、フマル酸ジペンチル、フマル酸ジ2-エチルヘキシル、フマル酸ジn-ヘキシル、フマル酸ジt-ブチル、フマル酸ジシクロペンチル、フマル酸ジシクロへキシル、フマル酸ジイソボルニル、フマル酸ビスジシクロペンタニル、フマル酸ジフェニル、フマル酸ジ4-メチルフェニル、フマル酸ビスジメチルフェニル、フマル酸ジベンジル、フマル酸ジフェネチル、シトラコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、シトラコン酸ジプロピル、シトラコン酸ジイソプロピル、シトラコン酸ジブチル、シトラコン酸ジs-ブチル、シトラコン酸ジペンチル、シトラコン酸ジ2-エチルヘキシル、シトラコン酸ジn-ヘキシル、シトラコン酸ジt-ブチル、シトラコン酸ジシクロペンチル、シトラコン酸ジシクロへキシル、シトラコン酸ジイソボルニル、シトラコン酸ビスジシクロペンタニル、シトラコン酸ジフェニル、シトラコン酸ジ4-メチルフェニル、シトラコン酸ビスジメチルフェニル、シトラコン酸ジベンジル、シトラコン酸ジフェネチル、メサコン酸ジメチル、メサコン酸ジエチル、メサコン酸ジプロピル、メサコン酸ジイソプロピル、メサコン酸ジブチル、メサコン酸ジs-ブチル、メサコン酸ジペンチル、メサコン酸ジ2-エチルヘキシル、メサコン酸ジn-ヘキシル、メサコン酸ジt-ブチル、メサコン酸ジシクロペンチル、メサコン酸ジシクロへキシル、メサコン酸ジイソボルニル、メサコン酸ビスジシクロペンタニル、メサコン酸ジフェニル、メサコン酸ジ4-メチルフェニル、メサコン酸ビスジメチルフェニル、メサコン酸ジベンジル、メサコン酸ジフェネチル、グルタコン酸ジメチル、グルタコン酸ジエチル、グルタコン酸ジプロピル、グルタコン酸ジイソプロピル、グルタコン酸ジブチル、グルタコン酸ジs-ブチル、グルタコン酸ジペンチル、グルタコン酸ジ2-エチルヘキシル、グルタコン酸ジn-ヘキシル、グルタコン酸ジt-ブチル、グルタコン酸ジシクロペンチル、グルタコン酸ジシクロへキシル、グルタコン酸ジイソボルニル、グルタコン酸ビスジシクロペンタニル、グルタコン酸ジフェニル、グルタコン酸ジ4-メチルフェニル、グルタコン酸ビスジメチルフェニル、グルタコン酸ジベンジル、グルタコン酸ジフェネチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジプロピル、イタコン酸ジイソプロピル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸ジs-ブチル、イタコン酸ジペンチル、イタコン酸ジ2-エチルヘキシル、イタコン酸ジn-ヘキシル、イタコン酸ジt-ブチル、イタコン酸ジシクロペンチル、イタコン酸ジシクロへキシル、イタコン酸ジイソボルニル、イタコン酸ビスジシクロペンタニル、イタコン酸ジフェニル、イタコン酸ジ4-メチルフェニル、イタコン酸ビスジメチルフェニル、イタコン酸ジベンジル、イタコン酸ジフェネチル、イソプロピリデンマロン酸ジメチル、イソプロピリデンマロン酸ジエチル、イソプロピリデンコハク酸ジメチル、エトキシメチレンマロン酸ジエチル、ベンジリデンマロン酸ジエチル、2-(4-メトキシベンジリデン)マロン酸ジエチル、イソプロピリデンコハク酸ジエチルなどが挙げられる。
中でも、シルセスキオキサン化合物の現像液溶解性に優れることから、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、シトラコン酸エステル、メサコン酸エステル、グルタコン酸エステル、イタコン酸エステル、メチレンマロン酸エステル、メチレンコハク酸エステル等ジエステル構造が好ましく、その中でも入手容易性の観点からマレイン酸エステル、フマル酸エステル、イタコン酸エステルが特に好ましい。
【0056】
付加反応は無溶媒で行ってもよいし、溶媒を用いることもできる。溶媒の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、1-プロピルアルコール、2-プロピルアルコール、1-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、ベンジルアルコール、2-メトキシエチルアルコール、2-エトキシエチルアルコール、2-(メトキシメトキシ)エタノール、2-ブトキシエタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジ エチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、グリセリンエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3-メトキシブチルアセテート、2-エチルブチルアセテート、2-エチルヘキシルアセテート、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、γ-ブチロラクトン、2-メトキシエチルアセテート、2-エトキシエチルアセテート、2-ブトキシエチルアセテート、2-フェノキシエチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で、又は2種以上を併用して使用することができる。また、その使用量は適宜、決めればよい。
【0057】
チオール基を含有するシラン化合物と、α,β-不飽和エステル化合物との反応モル比は、未反応物を少なくできることから、チオール基を含有するシラン化合物1モルに対してα,β-不飽和エステル化合物0.5~5モルが好ましく、0.8~3モルがより好ましい。
【0058】
付加反応の温度は、-40~100℃が好ましく、-20~80℃がより好ましい。-40℃以上ならば、付加反応を十分進行させることができる。また、100℃以下ならば、α,β-不飽和エステル化合物の重合を抑制することができる。
付加反応の時間は、1~60時間が好ましく、2~48時間がより好ましい。1時間以上ならば、付加反応を十分進行させることができる。60時間以内ならば、α,β-不飽和エステル化合物の重合を抑制することができる。
【0059】
付加反応は、触媒を用いることができる。
触媒としては、マイケル付加反応に使用されるアミン類、アルカリ金属アルコキシド、金属水素化物、金属炭酸塩、アルキル金属化物、ホスフィン類などの公知のものを用いることができ、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ピペリジン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7等のアミン類、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert-ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、水素化ナトリウム等の金属水素化物、炭酸カリウム等の金属炭酸塩、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム等のアルキル金属化物、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等のホスフィン類が挙げられる。
【0060】
α,β-不飽和エステル化合物の重合を抑制するため、反応系内に重合防止剤を添加してもよい。重合防止剤の種類は、特に限定されない。重合防止剤は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、4-tert-ブチルカテコール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、ペンタエリスリトールテトラキス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメイト)、2-sec-ブチル-4,6-ジニトロフェノール等のフェノール系化合物;N,N-ジイソプロピルパラフェニレンジアミン、N,N-ジ-2-ナフチルパラフェニレンジアミン、N-フェニレン-N-(1,3-ジメチルブチル)パラフェニレンジアミン、N,N’-ビス(1,4-ジメチルフェニル)-パラフェニレンジアミン、N-(1,4-ジメチルフェニル)-N’-フェニル-パラフェニレンジアミン等のアミン系化合物;4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)セバケイト等のN-オキシル系化合物;銅、塩化銅(II)、塩化鉄(III)等の金属化合物等が挙げられる。
【0061】
重合防止剤の使用量は適宜設定できる。例えば、α,β-不飽和エステル化合物に対して20ppm以上が好ましく、充分な重合防止効果を得るには50ppm以上がより好ましい。一方、コストの観点から重合防止剤の使用量は、10000ppm以下が好ましく、5000ppm以下がより好ましい。
本付加反応終了後の精製方法については、生成物の物性、原料、溶剤の有無等を考慮して、分液、水洗、蒸留、晶析、濾過等の公知の精製方法を、適宜組み合わせることができる。
【0062】
Rbを有するシラン化合物としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリエトキシ(7-オクテン-1-イル)シラン、トリメトキシ(7-オクテン-1-イル)シラン等が挙げられる。これらの中でも3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0063】
[本重合体の製造方法]
本重合体は、例えば、本化合物を単体又は本化合物と他の構成単位を有するモノマーとを適宜割合で混合し、重合溶媒の存在下で、重合開始剤を使用し、ラジカル重合させる溶液重合法で製造することができる。
【0064】
[本重合体の用途]
本重合体は、本レジスト組成物に含ませることができ、例えば、半導体基板のレジストパターンを形成することができる。
以下、パターンが形成された基板の製造方法の一例について説明する。
まず、シリコンウエハー等の被加工基板の表面に、本レジスト組成物をスピンコート等により塗布する。そして、本レジスト組成物が塗布された被加工基板を、ベーキング処理(プリベーク)等で乾燥することにより、基板上にレジスト膜を形成する。
ついで、レジスト膜に、フォトマスクを介して、250nm以下の波長の光を照射して潜像を形成する(露光)。照射光としては、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUVエキシマレーザーまたは電子線が好ましく、EUVエキシマレーザーまたは電子線が特に好ましい。
露光後、適宜熱処理(露光後ベーク、PEB)し、レジスト膜に現像液を接触させてレジスト膜の一部を溶解する。現像液は適宜選択されるが、アルカリ現像液または有機系現像液を用いることが好ましい。
ポジ型現像プロセスではアルカリ現像液で露光部を溶解して除去し、ネガ型現像プロセスでは有機系現像液で未露光部を溶解して除去する。
【0065】
アルカリ現像液としてはアルカリ性水溶液が用いられる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類;エチルアミン、n-プロピルアミン等の第一アミン類;ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等の第二アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩;ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類;等の水溶液が挙げられる。
【0066】
有機系現像液としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を用いることができる。
【0067】
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどが挙げられる。
【0068】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、などが挙げられる。
【0069】
アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、1-プロピルアルコール、2-プロピルアルコール、1-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、ベンジルアルコール、2-メトキシエチルアルコール、2-エトキシエチルアルコール、2-(メトキシメトキシ)エタノール、2-ブトキシエタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
【0070】
エーテル系溶剤としては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0071】
アミド系溶剤としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0072】
炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどが挙げられる。
【0073】
これらの中で、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を含有する現像液であることが好ましい。また、これらの溶剤は単独で、又は2種以上を併用して使用することができる。
【0074】
現像は、公知の方法で行えばよく、現像液が満たされた槽の中に基板を一定時間浸漬する方法、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法、基板表面に現像液を噴霧する方法、一定速度で回転させている基板上に一定速度でノズルを走査しながら現像液を吐出する方法等が挙げられる。
現像後、基板を純水や有機溶剤等で適宜リンス処理する。このようにして被加工基板上にレジストパターンが形成される。
【0075】
レジストパターンが形成された基板は、適宜熱処理(ポストベーク)してレジストを強化し、レジストのない部分を選択的にドライエッチングする。
ドライエッチング後、レジストを剥離剤によって除去することによって、微細パターンが形成された基板が得られる。
【実施例0076】
以下、本発明の一実施例を説明する。本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
なお、シルセスキオキサン化合物の数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算で求めた。
【0077】
<シルセスキオキサン骨格を含む化合物(SQ1)の合成>
撹拌子、温度計を備えたフラスコに、特許第4909081号に記載の方法で合成した下記式3に示すシラン化合物(A1)1.00g(2.8mmol)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン0.10g(0.40mmol)、テトラヒドロフラン5.3mlを加え溶解させ、3.2%アンモニウムフルオリド水溶液0.47gを滴下した。室温で3時間攪拌した後、濃縮した。
酢酸エチル10mLを加え、水10mL、続いて水5mLで2回洗浄した。得られた有機層を濃縮、減圧乾燥して、下記式4に示すシルセスキオキサン骨格を含む重合性単量体(SQ1)0.82gを無色粘調液体として収率93%で得た。
【0078】
Mn2150、Mw/Mn1.05であり、下記化学式中、mは8と推測される。なお、1H-NMRの積分比より、シラン化合物(A1)由来の側鎖(Ra)と3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン由来の側鎖(Rb)はモル比7.0:1.0であった。1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ6.10ppm(s、1H)、5.55ppm(s、1H)、4.11ppm(brt、2H)、3.71ppm(s、21H)、3.67ppm(s、21H)、3.05ppm(m、7H)、2.90-2.50ppm(m、42H)、1.94ppm(s、3H)、1.64ppm(m、16H)、0.71ppm(brt、16H)。
【0079】
【0080】
【0081】
<シラン化合物の合成(A2)>
撹拌子、温度計を備えたフラスコに、炭酸カリウム11.36g、アセトン204mL、イタコン酸ジエチル37.92g(5.1mmol)を加えた後、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン40.00g(5.1mmol)を滴下し、室温で8時間反応させた。反応終了後、ろ過、濃縮、減圧乾燥して下記式5に示すシラン化合物(A2)74.61gを無色液体として収率95.8%で得た。1H-NMR(270MHz、CDCl3):δ4.17ppm(q、2H)、4.15ppm(q、2H)、3.57ppm(s、9H)、3.03ppm(m、1H)、2.88ppm(dd、1H)、2.68ppm(m、3H)、2.55ppm(t、2H)、1.70ppm(m、2H)、1.27ppm(t、3H)、1.26ppm(t、3H)、0.75ppm(m、2H)。
【0082】
【0083】
<シルセスキオキサン骨格を含む化合物(SQ2)の合成>
シラン化合物(A1)に代えてシラン化合物(A2)を用いた他はSQ1と同様にして、下記式6に示すシルセスキオキサン骨格を含む重合性単量体(SQ2)を無色粘調液体として収率99.0%で得た。
【0084】
なお、1H-NMRの積分比より、シラン化合物(A2)由来の側鎖(Ra)と3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン由来の側鎖(Rb)はモル比7.0:1.0であった。1H-NMR(270MHz、CDCl3):δ6.12ppm(s、1H)、5.56ppm(s、1H)、4.21―4.10ppm(m、30H)、3.03ppm(m、7H)、2.91-2.63ppm(m、28H)、2.55ppm(brt、14H)、1.95ppm(s、3H)、1.66ppm(m、16H)、1.27ppm(t、21H)、1.26ppm(t、21H)、0.73ppm(brt、16H)
【0085】
【0086】
<実施例1>
得られたSQ1をレジスト溶媒としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に室温で所定の濃度に溶解させて溶解性を評価した。
【0087】
<実施例2>
実施例1のPGMEAをエステル系有機系現像液としての酢酸ブチルに代えた他は実施例1と同様にして溶解性を評価した。
【0088】
<実施例3、4>
実施例1、2のSQ1をSQ2に代えた他は実施例1、2と同様にして溶解性を評価した。
【0089】
<比較例1、2>
実施例1、2において、SQ1をメタクリロイルオキシプロピルヘプタイソブチル-T8-シルセスキオキサンに代えて、濃度を表1に示すようにした以外は実施例1と同様にして溶解性を評価した。
【0090】
(溶解性の評価)
実施例1~4及び比較例1,2の溶解性を評価した。
溶解性の評価は、所望の濃度でシルセスキオキサンと溶媒を容器に入れ、室温で軽く振り混ぜた。得られた溶液を目視にて観察した結果、完全溶解し、均一溶液となった場合を溶解、溶け残りがあった場合を不溶と評価した。その結果を下記表1に示す。
【0091】
【0092】
表1に示されるように、実施例1~4は、前記式2で表されるRaを含む構造を有するシルセスキオキサン骨格を含む化合物であり、レジスト溶媒及び現像液に50wt%濃度でも溶解し、実用上問題ないことが確認された。
一方、比較例1,2は、前記式2で表されるRaを含まない構造であり、レジスト溶媒及び現像液に2.2wt%濃度で不溶となり、各実施例に比べて溶解性が劣り、実用性に改善の余地があることが確認された。