(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089904
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】積層体の製造方法、積層体及び粘着テープ
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240627BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240627BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20240627BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20240627BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B32B27/00 M
C09J7/38
C09J133/00
B32B27/26
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205428
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 剛
(72)【発明者】
【氏名】菊池 洋匡
(72)【発明者】
【氏名】片野 大地
(72)【発明者】
【氏名】武井 秀晃
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK25
4F100AK25A
4F100AK25C
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4J004AA10
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4J004BA02
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4J004DB02
4J004FA01
4J004FA05
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4J040LA01
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA17
4J040NA19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、層間密着性に優れた積層体及び粘着テープを得ることが可能な積層体の製造方法、該製造方法を用いた積層体及び粘着テープを提供することを目的とする。
【解決手段】2以上の粘着剤層を有する積層体の製造方法であって、上記積層体中の隣接する2つの上記粘着剤層が、粘着樹脂A1及び架橋剤B1を少なくとも含有する第1の塗工液を塗布して第1の粘着剤層を形成する工程1、粘着樹脂A2及び架橋剤B2を少なくとも含有する第2の塗工液を塗布して上記第1の粘着剤層の形成後24時間以内に第2の粘着剤層を形成する工程2、及び上記第1の粘着剤層の形成後24時間以内に上記第1の粘着剤層及び上記第2の粘着剤層を貼合する工程3により形成され、上記架橋剤B1は上記粘着樹脂A2と反応可能であり、上記架橋剤B2は上記粘着樹脂A1と反応可能である、積層体の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の粘着剤層を有する積層体の製造方法であって、前記積層体中の隣接する2つの前記粘着剤層が、少なくとも下記の工程1~3により形成されることを特徴とする積層体の製造方法。
工程1:対象物Y1に、粘着樹脂A1及び架橋剤B1を少なくとも含有する第1の塗工液を塗布して第1の粘着剤層を形成する工程
工程2:対象物Y2に、粘着樹脂A2及び架橋剤B2を少なくとも含有する第2の塗工液を塗布して、前記第1の粘着剤層の形成後24時間以内に第2の粘着剤層を形成する工程
工程3:前記第1の粘着剤層の形成後24時間以内に、前記第1の粘着剤層及び前記第2の粘着剤層を貼合する工程
ただし、前記工程1~3において、前記第1の塗工液に含有される前記架橋剤B1は、前記第2の塗工液に含有される前記粘着樹脂A2と反応可能であり、
前記第2の塗工液に含有される前記架橋剤B2は、前記第1の塗工液に含有される前記粘着樹脂A1と反応可能である。
【請求項2】
前記第1の塗工液中の前記粘着樹脂A1がアクリル重合体であり、前記架橋剤B1がイソシアネート架橋剤であり、
前記第2の塗工液中の前記粘着樹脂A2がアクリル重合体であり、前記架橋剤B2がイソシアネート架橋剤であることを特徴とする、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記工程1では、対象物Y1a上に前記第1の塗工液を塗布して前記第1の粘着剤層を形成し、前記第1の粘着剤層を対象物Y1bの片面又は両面に転写し、
前記工程3では、前記対象物Y1bの少なくとも一方の面に有する前記第1の粘着剤層と、前記第2の粘着剤層とを貼合する、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記工程2では、対象物Y2a上に前記第2の塗工液を塗布して前記第2の粘着剤層を形成し、前記第2の粘着剤層を対象物Y2bの片面又は両面に転写し、
前記工程3では、前記対象物Y2bの少なくとも一方の面に有する前記第2の粘着剤層と、前記第1の粘着剤層とを貼合する、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記積層体は、n層(nは2以上の整数)の粘着剤層が積層されてなる多層粘着剤層を有し、前記多層粘着剤層において隣接するt番目(tは1以上(n-1)以下の整数)の粘着剤層及び(t+1)番目の粘着剤層のうち、一方が前記第1の粘着剤層であり、他方が前記第2の粘着剤層である、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記積層体が粘着テープである、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の積層体の製造方法により得られる積層体。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の積層体の製造方法により得られる粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の粘着剤層を有し、少なくとも2つの粘着剤層同士が隣接する(2層が接する)積層体及び粘着テープの製造方法等に関する。なお、積層体のうち、少なくとも2つの粘着剤層同士が隣接する複数の粘着剤層を有する粘着テープのことを、多層粘着テープと称して説明する場合がある。
【背景技術】
【0002】
積層体や粘着テープでは複数の要求性能に応える手段として、2種類以上の粘着剤層を積層して多層化する手段が知られている。
【0003】
例えば多層粘着テープの製造方法としては、第1の粘着剤層を形成する第1塗工液と第2の粘着剤層を形成する第2塗工液とを用い、上記第2塗工液が直接第1塗工液上に塗工された塗工液層を作成して多層粘着テープを得る製造方法が開示されている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1に開示の製造方法では、専用の塗工設備と複雑かつ煩雑な製造工程が必要であること、片方の塗工液の成分が他方の塗工液へ移行して粘着剤組成や添加剤配合比が微妙に変化してしまうため意図した機能を十分に発揮できないこと、塗工液が有機溶剤を含む場合は、乾燥工程の爆発限界や乾燥中に有機溶剤の揮発により粘着剤層に発泡欠陥ができる問題があるため、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層を合計した乾燥後の厚さが制限されるなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、多層粘着テープの製造方法の別の例として、第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層を別々に形成し、後で第1の粘着剤層と第2の粘着剤層とを貼合して積層させる方法がある。しかし該方法では、上記第1の粘着層と上記第2の粘着剤層との各粘着剤層の境界面の密着性(層間密着性)にバラつきが生じて剥離しやすいため、せん断保持力が劣るという課題があった。
【0006】
本発明は上記実情を鑑みてなされたものであり、層間密着性に優れた積層体及び粘着テープを得ることが可能な積層体の製造方法、該製造方法を用いた積層体及び粘着テープを提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の内容は、以下の実施態様を含む。
<1> 2以上の粘着剤層を有する積層体の製造方法であって、上記積層体中の隣接する2つの上記粘着剤層が、少なくとも下記の工程1~3により形成されることを特徴とする積層体の製造方法。
工程1:対象物Y1に、粘着樹脂A1及び架橋剤B1を少なくとも含有する第1の塗工液を塗布して第1の粘着剤層を形成する工程
工程2:対象物Y2に、粘着樹脂A2及び架橋剤B2を少なくとも含有する第2の塗工液を塗布して、上記第1の粘着剤層の形成後24時間以内に第2の粘着剤層を形成する工程
工程3:上記第1の粘着剤層の形成後24時間以内に、上記第1の粘着剤層及び上記第2の粘着剤層を貼合する工程
ただし、上記工程1~3において、上記第1の塗工液に含有される上記架橋剤B1は、上記第2の塗工液に含有される上記粘着樹脂A2と反応可能であり、上記第2の塗工液に含有される上記架橋剤B2は、上記第1の塗工液に含有される上記粘着樹脂A1と反応可能である。
【0008】
<2> 上記第1の塗工液中の上記粘着樹脂A1がアクリル重合体であり、上記架橋剤B1がイソシアネート架橋剤であり、上記第2の塗工液中の上記粘着樹脂A2がアクリル重合体であり、上記架橋剤B2がイソシアネート架橋剤であることを特徴とする、上記<1>に記載の積層体の製造方法。
【0009】
<3> 上記工程1では、対象物Y1a上に上記第1の塗工液を塗布して上記第1の粘着剤層を形成し、上記第1の粘着剤層を対象物Y1bの片面又は両面に転写し、上記工程3では、上記対象物Y1bの少なくとも一方の面に有する上記第1の粘着剤層と、上記第2の粘着剤層とを貼合する、上記<1>~<2>の何れか1つに記載の積層体の製造方法。
【0010】
<4> 上記工程2では、対象物Y2a上に上記第2の塗工液を塗布して上記第2の粘着剤層を形成し、上記第2の粘着剤層を対象物Y2bの片面又は両面に転写し、
上記工程3では、上記対象物Y2bの少なくとも一方の面に有する上記第2の粘着剤層と、上記第1の粘着剤層とを貼合する、上記<1>~<3>の何れか1つに記載の積層体の製造方法。
【0011】
<5> 上記積層体は、n層(nは2以上の整数)の粘着剤層が積層されてなる多層粘着剤層を有し、上記多層粘着剤層のt番目(tは1以上(n-1)以下の整数)の粘着剤層及び(t+1)番目の粘着剤層のうち、一方が上記第1の粘着剤層であり、他方が上記第2の粘着剤層である、上記<1>~<4>の何れか1つに記載の積層体の製造方法。
【0012】
<6> 上記積層体が粘着テープである、上記<1>~<5>の何れか1つに記載の積層体の製造方法。
【0013】
<7> 上記<1>~<6>の何れか1つに記載の積層体の製造方法により得られる積層体。
【0014】
<8> 上記<1>~<6>の何れか1つに記載の積層体の製造方法により得られる粘着テープ。
【0015】
<9> 隣接する2つの粘着剤層を少なくとも有し、JIS Z 0237に準拠して測定される、90℃環境で1kg/4cm2の荷重をかけたときのせん断保持力が1440分を超えることを特徴とする、粘着テープ。
【0016】
<9>上記<1>~<6>の何れか1つに記載の積層体の製造方法により製造される、上記<10>に記載の粘着テープ。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、2つの粘着剤層を隣接して形成する際に、先に形成する粘着剤層(第1の粘着剤層)と、後に形成する粘着剤層(第2の粘着剤層)とを所定の条件で形成及び貼合することで、隣接する2層間の層間密着性が向上し、せん断保持力に優れた積層体及び粘着テープを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の積層体の製造方法の一例を示す工程図である。
【
図2】本発明の積層体の製造方法における、第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層を説明する模式図である。
【
図3】本発明の積層体の製造方法の一例を示す工程図である。
【
図4】本発明の積層体の製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.積層体の製造方法
本発明の積層体の製造方法(以下、単に本発明の製造方法と略する場合がある。)は、2以上の粘着剤層を有する積層体の製造方法であって、上記積層体中の隣接する2つの上記粘着剤層が、少なくとも下記の工程1~3により形成されることを特徴とする。
工程1:対象物Y1に、粘着樹脂A1及び架橋剤B1を少なくとも含有する第1の塗工液を塗布して第1の粘着剤層を形成する工程
工程2:対象物Y2に、粘着樹脂A2及び架橋剤B2を少なくとも含有する第2の塗工液を塗布して、上記第1の粘着剤層の形成後24時間以内に第2の粘着剤層を形成する工程
工程3:上記第1の粘着剤層の形成後24時間以内に、上記第1の粘着剤層及び上記第2の粘着剤層を貼合する工程
ただし、上記工程1~3において、上記第1の塗工液に含有される上記架橋剤B1は、上記第2の塗工液に含有される上記粘着樹脂A2と反応可能であり、
上記第2の塗工液に含有される上記架橋剤B2は、上記第1の塗工液に含有される上記粘着樹脂A1と反応可能である。
【0020】
図1は、本発明の製造方法の一例を示す工程図であり、
図1(a)は上記工程1、
図1(b)は上記工程2、
図1(c)は上記工程3を示す。なお、
図1中、符号1は対象物Y1、符号2は第1の粘着剤層、符号3は対象物Y2、符号4は第2の粘着剤層を表す。
【0021】
本発明の製造方法は、、積層体を構成する2つ以上の粘着剤層の形成において、2つの粘着剤層を隣接して形成する際に、先に形成する粘着剤層(第1の粘着剤層)と後に形成する粘着剤層(第2の粘着剤層)とを貼合するまでの工程を所定の条件で行うことを特徴とする。
即ち、本発明の製造方法によれば、上記第1の粘着剤層を形成してから、上記第2の粘着剤層を形成及び上記第1の粘着剤層に貼合するまでの工程を所定の条件で行うことにより、第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層の貼合界面において、粘着樹脂A1及び架橋剤B2、並びに、粘着樹脂A2及び架橋剤B1の架橋構造が形成されるため、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層との層間密着性を向上させることができ、せん断保持力に優れた積層体及び粘着テープを得ることができる。詳述すれば、2つの粘着剤層を隣接して形成する際に、先に形成する第1の粘着剤層において反応前の粘着樹脂A1及び架橋剤B1が残存している間に、反応前の粘着樹脂A2及び架橋剤B2が残存している第2の粘着剤層を貼合する。これにより、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層との貼合界面において残存する粘着樹脂A1、粘着樹脂A2、架橋剤B1、架橋剤B2が反応し、粘着樹脂A1及び架橋剤B2の架橋構造、並びに粘着樹脂A2及び架橋剤B1の架橋構造が、貼合界面を介して形成されるものと推量される。
【0022】
また、本発明の製造方法によれば、第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層をそれぞれ形成し、固相(又は半固相)状態で貼合するため、特許文献1に開示されるような塗工液の重ね塗りによる多層化と異なり、塗工液中の成分の移行による各粘着層の物性の変化が生じにくく、厚さの制限を受けずに2以上の粘着剤層を積層してなる多層構造体の形成が可能となる。なお、2以上の粘着剤層を積層してなる多層構造体のことを「多層粘着剤層」と称して説明する場合がある。
【0023】
ここで、本願明細書において、第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層とは、本発明の製造方法により得られる積層体の多層粘着剤層において隣接する2つの粘着剤層間で定義され、隣接する2つの粘着剤層のうち、先に形成される粘着剤層を「第1の粘着剤層」とし、後に形成される粘着剤層を「第2の粘着剤層」とする。例えば本発明の製造方法により製造される積層体が、
図2(a)で例示するような粘着剤層X1/粘着剤層X2/粘着剤層X3の3層を少なくとも含む多層粘着剤層Xを有する場合、
図2(b)で例示するように粘着剤層X1及び粘着剤層X2の間、並びに、
図2(c)で例示するように粘着剤層X2及び粘着剤層X3の間で、それぞれ形成順が早い方から第1の粘着剤層2及び第2の粘着剤層4が規定される。なお、隣接する2つの粘着剤層をそれぞれ同時に独立して形成する場合は、一方を「第1の粘着剤層」とし、他方を「第2の粘着剤層」とする。
【0024】
本発明の製造方法により製造される積層体が、n層(nは2以上の整数)の粘着剤層が積層されてなる多層粘着剤層を有する場合、上記多層粘着剤層において積層方向の一方から数えてt番目の粘着剤層と(t+1)番目の粘着剤層との間で規定され得る(tは1以上(n-1)以下の整数)。すなわち、上記多層粘着剤層において隣接するt番目(tは1以上(n-1)以下の整数)の粘着剤層及び(t+1)番目の粘着剤層のうち、一方が先に形成される第1の粘着剤層であり、他方が後に形成される第2の粘着剤層であり、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層との形成及び貼合までを所定の条件で実施することにより、隣接するt番目の粘着剤層と(t+1)番目の粘着剤層との間の層間密着性を向上させることができる。なお、nは2以上であれば特に限定されないが、製造適性の観点から好ましくは7以下であり、より好ましくは6以下である。
【0025】
本発明の製造方法により製造される積層体が、n層(nは2以上の整数)の粘着剤層が積層されてなる多層粘着剤層を有する場合、上記多層粘着剤層において隣接する2つの粘着剤層の組み合わせは(n-1)組存在するため、上記多層粘着剤層においては、(n-1)組の隣接する2つの粘着剤層が何れも工程1~3を経て形成される。例えば本発明の製造方法が、粘着剤層X1/粘着剤層X2/粘着剤層X3/粘着剤層X4の4層の粘着剤層が積層されてなる多層粘着剤層を有する積層体の製造方法である場合、粘着剤層X1及びX2、粘着剤層X2及びX3、並びに粘着剤層X3及びX4の3組の隣接する2つの粘着剤層が、それぞれ工程1~3を経て形成される。これにより、本発明の製造方法により製造される積層体全体でのせん断接着強度を高めることができる。
【0026】
n層(nは2以上の整数)の粘着剤層が積層されてなる多層粘着剤層を形成する際に、(n-1)組の隣接する2つの粘着剤層の組み合わせを形成する順は、隣接する2層間における形成の先後順が決まれば特に限定されない。例えば、上述した4層の粘着剤層が積層されてなる多層粘着剤層を有する積層体の製造方法においては、3組の隣接する2つの粘着剤層を形成する順は、粘着剤層X1及びX2の組み合わせ、粘着剤層X2及びX3の組み合わせ、粘着剤層X3及びX4の組み合わせの順であってもよく、粘着剤層X2及びX3の組み合わせ、粘着剤層X1及びX2の組み合わせ、粘着剤層X3及びX4の組み合わせの順であってもよく、粘着剤層X3及びX4の組み合わせ、粘着剤層X1及びX2の組み合わせ、粘着剤層X2及びX3の組み合わせの順であってもよく、これら例示した以外の順であってもよい。
【0027】
本願明細書において、多層粘着剤層及び積層体の積層構造中の「/」は積層界面(貼合界面)を表し、例えば「A/B」とは、層Aと層Bとが直接接することを表し、通常は層A及び層Bの間に他の層は介在しないが、層A及び層Bの接触を阻害しなければ層Aと層Bとの間に他の層が介在してもよい。
また、2つの層が「隣接する」とは2つの層が直接接することを表し、通常は層A及び層Bの間に他の層は介在しないが、層A及び層Bの接触を阻害しなければ層Aと層Bとの間に他の層が介在してもよい。
【0028】
本願明細書において、「上記第1の粘着剤層の形成後24時間以内」とは、「基材又は剥離ライナーに第1の塗工液を塗布して、第1の粘着剤層を形成したときから起算して24時間以内」をいう。ここで「粘着剤層を形成したとき」とは、粘着剤層中の残留溶剤量が5%以下になるまで塗工液により形成した塗膜が乾燥した状態になったときとする。また、「上記第1の粘着剤層の形成後24時間以内」とは、上記第1の粘着剤層の形成と同時(粘着剤層中の残留溶剤量が5%以下になるまで塗工液により形成した塗膜が乾燥した状態になったときが、第1の粘着剤層と同時)も含まれる。なお、本明細書内において、「粘着剤層の形成後24時間以内」のことを「粘着剤層の形成後所定時間内」と表記する場合がある。
【0029】
本明細書内において、第1の塗工液に含まれる粘着樹脂及び架橋剤を「粘着樹脂A1」及び「架橋剤B1」とし、第2の塗工液に含まれる粘着樹脂及び架橋剤を「粘着樹脂A2」及び「架橋剤B2」と表記して説明する場合がある。また、第1の粘着剤層が形成される対象物及び第2の粘着剤層が形成される対象物をそれぞれ「対象物Y1」及び「対象物Y2」と表記して説明する場合がある。
【0030】
[1]工程1
本発明の製造方法における工程1は、対象物Y1に、粘着樹脂及び架橋剤を少なくとも含有する第1の塗工液を塗布して、上記第1の粘着剤層を形成する工程である。本工程は、上記積層体中の隣接する2つの上記粘着剤層において先に形成される粘着剤層の形成工程である。なお、隣接する2つの粘着剤層が同時に形成される場合は、2つの粘着剤層のうち一方の粘着剤層を形成する工程である。
【0031】
<第1の塗工液>
上記第1の塗工液は、粘着樹脂A1及び架橋剤B1、並びに溶剤を少なくとも必須に含有する。上記第1の塗工液に含有される上記架橋剤B1は、上記粘着樹脂A1及び上記第2の塗工液に含有される粘着樹脂A2と反応可能である。また、上記第1の塗工液に含有される上記粘着樹脂A1は、上記架橋剤B1及び上記第2の塗工液に含有される架橋剤B2と反応可能である。
【0032】
<<組成>>
-粘着樹脂A1-
上記第1の塗工液に含まれる粘着樹脂A1は、架橋剤B1及び第2の塗工液に含有される架橋剤B2が有する官能基(活性点)と反応可能な官能基(架橋点)を有する。上記粘着樹脂A1が有する上記官能基(架橋点)としては、例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等が挙げられ、中でも水酸基が好ましい。
【0033】
上記粘着樹脂A1としては、第1の塗工液に含まれる架橋剤B1及び第2の塗工液に含まれる架橋剤B2と反応可能な官能基を有する樹脂であればよく、公知の粘着剤に含まれるポリマーが挙げられる。上記粘着樹脂A1として具体的には、アクリル重合体、ポリウレタン、スチレン-イソプレン-スチレン等の熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン、ポリブチレン等の合成ゴム、天然ゴム等が挙げられ、これらは架橋剤が有する官能基(活性点)と反応可能な官能基を有する。中でもアクリル重合体、ポリウレタンが好ましい。
【0034】
<アクリル重合体>
アクリル重合体は、(メタ)アクリル単量体を含む1又は2種以上の単量体成分を重合してなる重合体である。また、「(メタ)アクリル」は「アクリル又はメタクリル」を示し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を示す。アクリル重合体は、1種の単量体の単独重合体であってもよく、2種以上の単量体の共重合体であってもよいが、共重合体が好ましい。
【0035】
上記アクリル重合体を構成する(メタ)アクリル単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、1-メチルヘプチル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート等の、炭素原子数が1~18であるアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することができる。なかでも上記(メタ)アクリル単量体として、炭素原子数が4~18であるアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、炭素原子数が4~12であるアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することが、一層優れた接着力及び凝集力を発揮する粘着剤層の形成、および第1の粘着剤層と第2の粘着剤層との間に優れた層間密着性を付与できるためより好ましい。
【0036】
また、上記(メタ)アクリル単量体として、n-ブチルアクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、1-メチルヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレートのいずれか1種類または2種類以上を使用することが、一層優れた接着力及び凝集力を発揮する粘着剤層を形成でき、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層との間に優れた層間密着性を付与できるためより好ましい。
【0037】
上記炭素原子数1~18のアルキル基を有する(メタ)アクリレートは、アクリル重合体を構成する単量体成分の全量中60質量%以上であることが好ましく、80質量%~98.5質量%の範囲内であることがより好ましく、90質量%~98.5質量%の範囲内であることが、優れた接着力及び凝集力を発揮する粘着剤層を形成でき、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層との間に優れた層間密着性を付与できるためより好ましい。
【0038】
上記アクリル重合体は、炭素原子数が1~18であるアルキル基を有する(メタ)アクリレートの他に、水酸基を有するビニル単量体を1種又は2種以上含むことが好ましい。架橋剤が有する官能基と反応可能な官能基である水酸基を上記アクリル重合体に導入することができるからである。水酸基を有するビニル単量体としては、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート。10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート等のアルキル基(アルキレン基)の炭素原子数が2~10のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
中でも、上記アクリル重合体は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくは4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、更に好ましくは4-ヒドロキシブチルアクリレートを含むことが、架橋剤に対して高い反応性を発揮でき、接着力及び凝集力を発揮する粘着剤層を形成でき、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層との間に優れた層間密着性を付与できる点で好ましい。
【0039】
上記水酸基を有するビニル単量体の含有量は、アクリル重合体を構成する単量体成分の全量中、0.01質量%~1.0質量%の範囲内であることが好ましく、0.03質量%~0.3質量%の範囲内であることがより好ましい。水酸基を有するビニル単量体の含有量を上記の範囲内とすることで後述する架橋剤と良好に反応して各粘着剤層の内部、および粘着剤層間ともに架橋結合を形成することができるからである。
【0040】
上記アクリル重合体は、炭素原子数が1~18であるアルキル基を有する(メタ)アクリレート及び水酸基を有するビニル単量体の他に、カルボキシル基を有するビニル単量体を1種又は2種以上含むことが好ましい。上記カルボキシル基を有するビニル単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、(メタ)アクリル酸2量体、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート等が挙げられる。なかでも(メタ)アクリル酸が好ましく、アクリル酸が優れた接着力及び凝集力を発揮する粘着剤層を形成するうえでより好ましい。
【0041】
上記カルボキシル基を有するビニル単量体の含有量は、アクリル重合体を構成する単量体成分の全量中、0.1質量%~30質量%の範囲内であることが好ましく、1.0質量%~20質量%の範囲内であることがより好ましい。カルボキシル基を有するビニル単量体の含有量を上記の範囲内とすることは、優れた接着力及び凝集力を発揮する粘着剤層を形成するうえで好ましい。また、エポキシ系架橋剤等の架橋剤を用いる場合に架橋点を形成できるため好ましい。
【0042】
上記アクリル重合体は、炭素原子数が1~18であるアルキル基を有する(メタ)アクリレート及び水酸基を有するビニル単量体、並びに必要に応じてカルボキシル基を有するビニル単量体の他に、窒素原子含有アクリル単量体を1種又は2種以上含んでいても良い。上記窒素原子含有アクリル単量体としては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド等のアミド基を有する単量体;アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する単量体、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、イタコンイミド等のイミド基を有する単量体等が挙げられる。
【0043】
また、上記アクリル重合体は必要に応じてその他の高極性ビニル単量体を含んでいても良い。上記その他の高極性ビニル単量体としては、例えばスルホン酸基含有アクリル単量体、リン酸基含有アクリル単量体、シアノ基含有単量体、グリシジル基含有アクリル単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレン、その他の置換スチレン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等が挙げられる。
なお、水酸基を有するビニル単量体、カルボキシル基を有するビニル単量体、及び、その他の高極性ビニル単量体のことを、総じて高極性ビニル単量体と総称する。
【0044】
上記高極性ビニル単量体の総含有量は、アクリル重合体を構成する単量体成分の全量中、1.5質量%~20質量%の範囲内であることが好ましく、1.5質量%~10質量%の範囲内であることがより好ましく、2質量%~8質量%の範囲であることが、優れた接着力を発現可能な粘着剤層を形成するうえでさらに好ましい。
【0045】
上記粘着樹脂(例えばアクリル重合体)の重量平均分子量は特に限定されないが、40万~300万の範囲内であることが好ましく、70万~250万の範囲内であることがより好ましい。
【0046】
なお、本明細書内において規定される重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC法)により測定され、標準ポリスチレン換算して算出された値を指す。具体的には、上記重量平均分子量は、東ソー株式会社製GPC装置(HLC-83209GPC)を用い、以下の条件で測定することができる。
・サンプル濃度:0.5質量%(テトラヒドロフラン溶液)
・サンプル注入量:100μl
・溶離液:テトラヒドロフラン
・流速:1.0ml/分
・測定温度:40℃
・本カラム:TSKgel GMHHR-H(20)2本
・ガードカラム:TSKgel HXL-H
・検出器:示差屈折計
・標準ポリスチレンの重量平均分子量:1万~2000万(東ソー株式会社製)
後述する第2の塗工液に含まれる粘着樹脂の重量平均分子量、並び実施例及び比較例におけるアクリル重合体の重量平均分子量も、上記の方法により測定及び算出された値である。
【0047】
上記アクリル重合体は、上述した各種単量体を、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の方法で重合させることによって製造することができる。中でも溶液重合法はアクリル重合体の生産効率を向上するうえで好ましい。
【0048】
上記溶液重合法によるアクリル重合体の製造方法は、例えば上述した各種単量体と、重合開始剤と、有機溶剤とを、好ましくは40℃~90℃の温度下で混合及び攪拌し、ラジカル重合させる方法が挙げられる。上記重合開始剤としては、例えば過酸化ベンゾイルや過酸化ラウリル等の過酸化物、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ系熱重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンジルケタール系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系の光重合開始剤等を使用することができる。
【0049】
上記アクリル重合体は、例えば溶液重合法で製造した場合であれば、有機溶剤に溶解または分散した状態であってもよい。溶液重合法で製造したアクリル重合体に含まれる有機溶剤は、上記第1の塗工液に含まれる有機溶剤として用いることができる。有機溶剤については、後で詳細に説明する。
【0050】
<ポリウレタン>
ポリウレタンとしては、架橋剤が有する官能基(活性点)と反応可能な官能基(架橋点)を有する各種ウレタン系ポリマーを選択でき、中でも水酸基を有するポリウレタンが好ましい。ポリウレタンが有する水酸基は好ましくは2個以上、より好ましくは2~4個の範囲である。ポリウレタンとして具体的には、エーテル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン等が挙げられる。ポリウレタンとしては、ポリオールとポリイソシアネートとの反応物等を用いることができる。
【0051】
上記ポリオールとしては、例えばポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ダイマージオール、ポリイソプレンポリオール等を用いることができる。
【0052】
上記ポリイソシアネートとしては、例えば脂肪族系ポリイソシアネート、脂環族系ポリイソシアネート、芳香族系ポリイソシアネート、これらのトリメチロールプロパン付加物;これらのイソシアヌレート体;これらのビュレット体;これらのアダクト体等が挙げられる。より具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0053】
また、上記ポリウレタンは、上記ポリオール及びポリイソシアネートに加えて鎖伸長剤を含んでいても良い。鎖伸長剤としては、例えば数平均分子量が50~400の低分子量ポリオール、アミン化合物等が挙げられる。
【0054】
ポリウレタンの製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基のモル比に対し、上記ポリオール及び鎖伸長剤を用いる場合にはその水酸基及びアミノ基との合計モル比が過剰となるように反応させる方法が挙げられる。ポリウレタン製造後には、残存するイソシアネート基を失活させる目的で、メタノール、1,3-ブタンジオール等のアルコール溶剤を添加させてもよい。
【0055】
-架橋剤B1-
上記第1の塗工液に含まれる架橋剤B1は、上記粘着樹脂A1及び後述する第2の塗工液に含まれる粘着樹脂A2と反応可能な官能基を有するものであれば特に限定されないが、例えばイソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤、多価金属塩架橋剤、金属キレート架橋剤、ケト・ヒドラジド架橋剤、オキサゾリン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、シラン架橋剤、過酸化物系架橋剤等を使用することができる。中でも、イソシアネート架橋剤及びエポキシ架橋剤の少なくとも一方が好ましく、第1の塗工液の溶剤等と混合しやすく、また、他の架橋剤よりも反応速度が速いため、本発明の製造方法による効果をより効果的に奏することができる観点からイソシアネート架橋剤がより好ましい。
【0056】
上記第1の塗工液に含まれる粘着樹脂A1が水酸基を有する場合、上記第1の塗工液に含まれる架橋剤B1は、上述した架橋剤から1種又は2種以上選択して用いることができるが、中でも粘着樹脂が有する水酸基との反応性に優れることから、イソシアネート架橋剤及びエポキシ架橋剤の少なくとも一方が好ましく、第1の塗工液中の粘着樹脂や有機溶剤等と混合しやすく、特に粘着樹脂が有する水酸基との反応性に優れ、更に他の架橋剤よりも反応速度が速いため本発明の製造方法による効果をより効果的に奏することができる観点から、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。
【0057】
上記イソシアネート架橋剤は、イソシアネート(NCO)基を2個以上有する化合物であり、例えば脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、芳香族イソシアネート、これらのアダクト体、イソシアヌレート体、ビウレット体等が挙げられる。
【0058】
上記脂肪族イソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、及びこれらのアダクト体、イソシアヌレート体、ビウレット体等の3官能以上の脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0059】
上記脂環式イソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4-及び/又は2,6-メチルシクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキシレン-1,2-ジカルボキシレート及び2,5-及び/又は2,6-ノルボルナンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート、及びこれらのアダクト体、イソシアヌレート体、ビウレット体等の3官能以上の脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0060】
上記芳香族イソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネ-ト(MDI;その4,4’体、2,4’体又は2,2’体、若しくはそれらの混合物)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート等の変性MDI、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネ-ト(TDI;その2,4体、又は2,6体、若しくはそれらの混合物)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、及びこれらのアダクト体、イソシアヌレート体、ビウレット体等の3官能以上の芳香族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0061】
中でも、上記イソシアネート架橋剤は、トリレンジイソシアネ-ト(TDI)またはキシレンジイソシアネート(XDI)のアダクト体である3官能の芳香族ポリイソシアネートであることが好ましい。これらの架橋剤は、粘着樹脂との反応によるポットライフが短くなりすぎるのを抑制して第1の粘着剤層内での反応を十分に進行させることができると共に、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層との層間でも反応が十分に進行するため、上記第1の粘着剤層の物性を損なわずに、上記第1の粘着剤層と上記第2の粘着剤層との層間密着性を高めることができるからである。
【0062】
上記第1の塗工液中の架橋剤B1の含有量は、上記第1の塗工液中の粘着樹脂A1の固形分100質量部に対して0.01質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上6質量部以下であることが更に好ましい。上記第1の塗工液中の架橋剤B1の含有量を上記の範囲内とすることで、上記第1の粘着剤層内における粘着樹脂A1と架橋剤B1との反応が進行するとともに、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層との層間でも反応が十分に進行し、上記第1の粘着剤層の物性を損なわずに、上記第1の粘着剤層と上記第2の粘着剤層との層間密着性を高めることができる。
【0063】
また上記第1の塗工液において、上記架橋剤B1が有する粘着樹脂と反応可能な基のモル数と上記粘着樹脂A1が有する架橋剤と反応可能な基のモル数との比が0.2~40の範囲内であることが好ましく、1.0~20の範囲内であることがより好ましく、2~15の範囲内であることが、上記第1の粘着剤層内における粘着樹脂A1と架橋剤B1との反応が進行するとともに、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層との層間でも反応が十分に進行し、上記第1の粘着剤層の物性を損なわずに、上記第1の粘着剤層と上記第2の粘着剤層との層間密着性を高めることができるため更に好ましい。例えば、アクリル重合体及びイソシアネート架橋剤を含む塗工液において、イソシアネート架橋剤(NCO)のモル数とアクリル重合体が有する水酸基(OH)のモル数との比[NCO/OH]が、上記の範囲内であることが好ましい。モル比[NCO/OH]が0.2未満(OH過多)では、第1の粘着剤層中に存在するNCOが第1の粘着剤層中で消費されるため、第2の粘着剤層に存在するOHと反応できず層間密着性に劣る場合があり、[NCO/OH]が40超(NCO過多)では、塗工液のポットライフが短くなる場合がある。
【0064】
-有機溶剤-
上記第1の塗工液に含まれる有機溶剤としては、上述した配合成分が溶解可能であれば特に限定されず、粘着樹脂や架橋剤の種類等に応じて適宜選択できる。上記有機溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン、トルエン、キシレン、アニソール等の炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール等のアルコール溶剤等が挙げられる。有機溶剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
上記第1の塗工液中の有機溶剤の含有量は、上述した第1の塗工液の構成成分を溶解又は分散でき、塗布可能な量であれば特に限定されないが、例えば上記第1の塗工液中に10質量%以上90質量%以下が好ましく、30質量%以上70質量%以下がより好ましい。
【0066】
-粘着付与樹脂-
上記第1の塗工液は、上述した粘着樹脂、架橋剤の他に、必要に応じて粘着付与樹脂をさらに含むことができる。上記第1の塗工液が粘着付与樹脂を更に含有することで、得られる第1の粘着剤層の接着力を更に向上させることができるからである。
【0067】
上記粘着付与樹脂としては、例えばロジン系粘着付与樹脂、重合ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、安定化ロジンエステル系粘着付与樹脂、不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂、水添ロジンエステル系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂、石油樹脂系粘着付与樹脂、(メタ)アクリレート樹脂系粘着付与樹脂等を使用することができる。 中でも、不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、水添ロジンエステル系粘着付与樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、石油系樹脂から1種または2種以上を組み合わせ使用することが好ましい。
【0068】
上記粘着付与樹脂は、軟化点が30℃~180℃の範囲内であることが好ましく、70℃~140℃の範囲内であることがより好ましい。
【0069】
上記第1の塗工液中の粘着付与樹脂の含有量は、上記粘着樹脂100質量部に対して5質量部~65質量部の範囲内であることが好ましく、8質量部~55質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0070】
-フィラー-
上記第1の塗工液は、上述した粘着樹脂A1、架橋剤B1の他に、必要に応じてフィラーを含むことができる。ここで、フィラーを含有する粘着剤層は、表面からフィラーの一部が露出した状態となる場合があり、フィラーを含有する粘着剤層に別の粘着剤層を貼合する際に、粘着剤層の上記フィラーが露出した面に別の粘着剤層を貼合すると、露出したフィラーにより2つの粘着剤層の接触が阻害されて、層間密着性が更に低下すると推量される。これに対し本発明の製造方法によれば、第1の粘着剤層の形成から所定の時間内に第2の粘着剤層を貼合することで、2つの粘着剤層間で架橋が形成されるため、上記第1の粘着剤層又は第2の粘着剤層の表面にフィラーが露出している場合であっても、上記第1の粘着剤層及び上記第2の粘着剤層間で高い層間密着性を確保することができる。第1の塗工液がフィラーを含む場合、後述する第2の塗工液はフィラーを含んでいても良く含まなくても良いが、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層との接触面積が得られ密着性を確保する観点から、第2の塗工液はフィラーを含まないことが好ましい。
【0071】
上記フィラーは、無機フィラーであってもよく、有機フィラーであってもよく、第1の粘着剤層に付与する物性に応じて適宜選択することができる。また、上記フィラーは、中空フィラーであってよく中実フィラーであってもよく、コアシェル型の複合フィラーであってもよい。
【0072】
上記無機フィラーを構成する無機材料としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウムウィスカ、窒化ホウ素、シリカ(結晶質シリカ、非晶質シリカ)、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル等の金属単体、金属酸化物、金属水和物、窒化物、炭酸塩、チタン酸塩、合金、アモルファスカーボンブラックやグラファイト等の炭素系物質、ガラス等が挙げられる。
【0073】
また、有機フィラーを構成する樹脂材料としては、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、テルペン樹脂、ロジン樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0074】
上記フィラーは、中実粒子であってもよく、中空構造を有する中空粒子(バルーン粒子)であってもよい。
【0075】
-添加剤-
上記第1の塗工液は、必要に応じて添加剤を含むことができる。上記添加剤としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤、触媒、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、加水分解防止剤、防黴剤、増粘剤、シランカップリング剤、重合禁止剤、消泡剤等が挙げられる。
【0076】
<<物性>>
上記第1の塗工液を用いて形成される第1の粘着剤層のゲル分率は20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、30質量%以上70質量%以下であることが、せん断方向の凝集力が優れる理由からより好ましい。本願明細書において、ゲル分率は下記に示す方法で測定される値とする。
(方法)
任意の剥離ライナーの片面に、乾燥後の厚さが50μmになるように粘着剤を塗工し、100℃で3分間乾燥し、40℃で2日エージングすることによって粘着剤層を形成する。それを50mm角に切り取ったものを試料とする。次に、上記試料の質量(G1)を測定した後、上記試料をトルエン溶液中に23℃で24時間浸漬する。上記浸漬後の試料のトルエン不溶解分を300メッシュ金網で濾過することにより分離し、110℃で1時間乾燥した後の残渣の質量(G2)を測定し、以下の式に従ってゲル分率を求める。
ゲル分率(質量%)=(G2/G1)×100
【0077】
<対象物Y1>
上記工程1において、第1の塗工液を塗布する対象物Y1は、特に限定されず、例えば基材、剥離ライナー、機能性フィルム、部品等の被着体等が挙げられる。
【0078】
-基材-
上記基材としては、粘着剤層を支持できれば特に限定されず、例えば、樹脂フィルム、ゴム(弾性体)シート、発泡体、紙、布(織布、不織布)、金属箔、これらの複合材等が挙げられる。上記樹脂フィルムは、非多孔質であることから、発泡体や不織布等の多孔質基材と区別することができる。
【0079】
上記樹脂フィルムは、樹脂材料を主成分とするフィルムであり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂フィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂フィルム;ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂フィルム;ナイロン66等のアミド系樹脂フィルム;ウレタン系樹脂フィルム;フッ素樹脂フィルム;ゴム系フィルム;セロハン;各種樹脂の混合フィルム等が挙げられる。上記樹脂フィルムは、単層構造であってもよく、2層以上が積層された多層構造であってもよい。また、上記樹脂フィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。
【0080】
上記発泡体としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系発泡体;ポリウレタン系発泡体、アクリル系発泡体、その他のゴム系発泡体等が挙げられる。
【0081】
上記紙としては、例えば和紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙、合成紙、トップコート紙等が挙げられる。
【0082】
上記布としては、例えば、綿、スフ、マニラ麻、パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維等で形成される織布又は不織布等が挙げられる。
【0083】
上記金属箔としては、例えばアルミニウム箔、銅箔等が挙げられる。
【0084】
上記基材は、必要に応じて、充填剤、着色剤、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。また、上記基材は各種添加剤を含むことで、例えば導電層や放熱層、着色層等の、各種機能層であってもよい。
【0085】
上記基材は、必要に応じて、表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、等の従来公知の易接着処理が施されていてもよい。
【0086】
また、上記基材は、下塗り層、帯電防止層、着色層、金属蒸着層等の任意の層が形成されていても良い。
【0087】
上記基材の厚みは特に制限されず、基材の種類に応じて適宜設定することができる。上記基材が樹脂フィルムであれば、好ましくは15μm~300μmの範囲内とすることができる。また、上記基材が発泡体であれば、好ましくは20μm~50000μmの範囲内とすることができる。
【0088】
-剥離ライナー-
上記剥離ライナーは、粘着剤層から剥離可能であり、粘着剤層を保護する部材である。通常、剥離ライナーの剥離処理面が粘着剤層と接し、本発明の製造方法の工程時、又は本発明の製造方法により得られた積層体の使用時に剥離され得る。
【0089】
上記剥離ライナーとしては、粘着剤層から剥離可能であれば特に限定されず、例えば、フッ素樹脂やポリオレフィン系樹脂等の樹脂フィルム;上質紙、コート紙、含浸紙等の紙;等、一般的な粘着テープに用いられる公知の剥離ライナーを用いることができる。
【0090】
上記剥離ライナーは、単層で剥離機能を有するものであってもよく、各種紙や樹脂フィルムの片面または両面に剥離剤による剥離処理がされていてもよい。剥離剤の材料としては、特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂、有機樹脂変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アミノアルキド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、長鎖アルキル樹脂などがある。
【0091】
-機能性フィルム-
上記機能性フィルムとしては、光学的機能、導電機能、絶縁機能、意匠性、表面保護機能、熱調整機能等の、所望の機能を積層体に付与することが可能であれば特に限定されない。光学的機能とは、例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性、視認性、遮光性等が挙げられる。また、熱調整機能とは、例えば断熱性、放熱性、蓄熱性、遮熱性等が挙げられる。このような機能性フィルムとして具体的には光学フィルム、導電性フィルム、絶縁性フィルム、ガスバリアフィルム、反射防止フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、視野角向上フィルム、輝度向上フィルム、ハードコートフィルム、意匠フィルム、装飾フィルム、表面保護フィルム、遮光フィルム、電磁波シールドフィルム、電波吸収フィルム、難燃性フィルム、放熱フィルム、断熱フィルム、蓄熱フィルム、太陽光発電フィルム等が挙げられる。
【0092】
-被着体-
上記被着体としては、粘着剤層を介して接合する部品が挙げられる。被着体の種類は特に限定されず、本発明の製造方法により得られる積層体の用途に応じて適宜選択できる。上記被着体として例えば、フレキシブル回路基板、フラットスピーカー、センサー、画像表示装置、タッチパネル、薄型電池、アクチュエーター等の電子部品等が挙げられる。
【0093】
<<工程1>>
上記工程1において上記対象物Y1に上記第1の塗工液を塗布する方法としては、特に制限されず、例えばクローズドエッジダイ、スロットダイ等のダイコーティング法;リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法;スピンコーティング法;スクリーンコーティング法;ファウンテンコーティング法;ディッピング法;スプレー法;ナイフコート法等を用いることができる。中でも均一な膜厚に塗布可能なことから、ナイフコート、ダイコーティング又はロールコーティングが好ましい。
【0094】
上記工程1においては、上記第1の塗工液を乾燥後の厚さが1μm~200μmの範囲内になるように塗布することが好ましく、中でも2μm~150μmの範囲内が好ましく、特に5μm~100μmの範囲内が好ましい。第1の塗工液を塗布することで形成される第1粘着剤層の厚みを上記の範囲内とすることで、第1の粘着剤層に期待する性能の発現と生産速度とが両立できるからである。
【0095】
上記工程1においては、上記第1の塗工液を対象物Y1に塗布して上記対象物Y1上に第1の粘着剤層を直接形成してもよく、
図3で例示するように、第1の塗工液を対象物Y1a(
図3中の符号1a)に塗布して第1の粘着剤層(
図3中の符号2)を形成し、上記第1の粘着剤層を対象物Y1b(
図3中の符号1b)に転写して対象物Y1bの片面又は両面に第1の粘着剤層を形成してもよい(転写工程とする)。対象物Y1bの片面又は両面に転写される第1の粘着剤層は、対象物Y1a上において残留溶剤量が所定値以下となっている。即ち、後述する工程2及び工程3において起算点となる「上記第1の粘着剤層を形成後」とは「対象物Y1a上に粘着剤層を形成後」とすることができる。
【0096】
上記工程1が上述のように転写工程を含む場合、対象物Y1aは剥離ライナーであることが好ましい。即ち上記工程1は、対象物Y1aである剥離ライナー上に第1の塗工液を塗布して第1の粘着剤層を形成し、上記剥離ライナー上の第1の粘着剤層を対象物Y1bの片面又は両面に転写することが好ましい。このとき対象物Y1bは剥離ライナー以外の対象物であることが好ましい。また、対象物Y1aが剥離ライナーである場合、対象物Y1aは、対象物Y1bに第1の粘着剤層を転写後に剥離されてもよく、工程3までの間第1の粘着剤層に貼合されていても良い。
【0097】
例えば上記工程1における対象物Y1が剥離ライナーであり、上記第1の塗工液からなる第1の粘着剤層を剥離ライナー上に形成する場合、第1の粘着剤層は剥離ライナーの剥離処理面に第1の塗工液を塗布して形成される。
【0098】
例えば上記工程1における対象物Y1が剥離ライナー以外の対象物(例えば基材、機能性フィルム又は被着体)であり、上記第1の塗工液からなる第1の粘着剤層を上記剥離ライナー以外の対象物に形成する場合、上記第1の粘着剤層は、上記剥離ライナー以外の対象物Y1に直接、第1の塗工液を塗布して形成してもよく、剥離ライナー(対象物Y1a)上に第1の塗工液を塗布して第1の粘着剤層を形成し、上記第1の粘着剤層を上記剥離ライナー以外の対象物(対象物Y1b)の片面又は両面に転写してもよい。剥離ライナー以外の対象物の片面又は両面に転写される第1の粘着剤層は、転写前の剥離ライナー上において残留溶剤量が所定値以下となっている。
【0099】
上記第1の粘着剤層は、上記対象物Y1(転写工程を含む場合はY1b)の片面のみに形成してもよく、両面にそれぞれ形成されても良い。例えば上記基材に第1の粘着剤層を形成する場合、上記第1の粘着剤層は上記基材の片面のみに形成してもよく、上記基材の両面にそれぞれ形成しても良い。上記対象物Y1(転写工程を含む場合はY1b)の両面にそれぞれ第1の粘着剤層を形成する場合、一方の面に形成される第1の粘着剤層a1と、他方の面に形成される第1の粘着剤層a2とは、厚さ及び/又は組成が同じであってもよく異なっても良い。
【0100】
上記工程1において、上記第1の塗工液を塗布した後、塗膜を乾燥することで、上記第1の粘着剤層が形成される。上記第1の塗工液の塗膜の乾燥条件は、粘着剤層の残留溶剤量が所定値以下となるように温度や時間等を適宜調製して設定される。上記第1の粘着剤層の残留溶剤量が5%以下であればよく、中でも3%以下がより好ましく、2%以下が更に好ましい。
【0101】
上記第1の塗工液の塗膜の乾燥温度は、粘着剤層の残留溶剤量が上記の範囲内となるように適宜設定すればよいが、剥離ライナーや基材、形成した粘着剤層への熱ダメージの回避や生産速度確保の観点から、50℃~110℃の範囲内が好ましい。また、乾燥温度は乾燥開始から完了まで一定でよいが、温度勾配(乾燥温度を乾燥途中で初期より高くする)を設けることが、生産速度と安全性(乾燥機内の溶剤濃度を爆発限界以下に保つ)の両立から好ましい。塗膜の乾燥時間は、乾燥温度や風量等に応じて粘着剤層の残留溶剤量が上記の範囲内となるように適宜設定できる。
【0102】
本願明細書において、残留溶剤量は下記に示す方法で測定される値とする。
(方法)
任意の対象物の片面に塗工液を塗工及び乾燥して粘着剤層を形成し、それを100mm角に切り取ったものを試料とする。次に、上記試料の質量(A)を測定した後、上記試料を局所排気装置付き乾燥機に70℃で10分間乾燥する。常温まで冷却したのち、上記乾燥後の試料の質量(B)を測定し、以下の式に従って残留溶剤量(質量%)を求める。なお、下記式中のCは、70℃で10分間放置した任意の対象物の100mm角の質量を表す。
残留溶剤量(質量%)=(B-C)/(A-B)×100
【0103】
上記工程1において上記第1の塗工液を塗布した後、上記第1の塗工液の塗膜を乾燥して残留溶剤量が所定値以下となったときが、後述する第2の粘着剤層を貼合するまでの時間の起算点となる。第1の粘着剤層は、残留溶剤量が所定値以下となる乾燥終了時から24時間以内に第2の粘着剤層に貼合される。
【0104】
[2]工程2
本発明の製造方法における工程2は、対象物Y2に、粘着樹脂A2及び架橋剤B2を少なくとも含有する第2の塗工液を塗布して、上記第1の粘着剤層の形成後24時間以内に上記第2の粘着剤層を形成する工程である。本工程は、上記積層体中の隣接する2つの上記粘着剤層において後に形成される粘着剤層の形成工程である。なお、隣接する2つの粘着剤層が同時に形成される場合は、2つの粘着剤層のうち他方の粘着剤層を形成する工程である。
【0105】
工程2は、上記第1の粘着剤層の形成後24時間以内(0時間~24時間の範囲内)に第2の粘着剤層を形成可能であればよく、通常、上記工程1の後に実施されるが、工程1と同時に行ってもよい。中でも工程2は、上記第1の粘着剤層の形成後800分以内に第2の粘着剤層を形成することが好ましく、より好ましくは400分以内であり、更に好ましくは200分以内である。
【0106】
<第2の塗工液>
上記第2の塗工液は、粘着樹脂A2及び架橋剤B2を少なくとも含有する。上記第2の塗工液に含有される上記架橋剤B2は、上記粘着樹脂A2及び上記第1の塗工液に含有される粘着樹脂A1と反応可能である。また、上記第2の塗工液に含有される上記粘着樹脂A2は、上記架橋剤B2及び上記第1の塗工液に含有される架橋剤B1と反応可能である。
【0107】
<<組成>>
上記第2の塗工液は、粘着樹脂A2及び架橋剤B2、並びに溶剤を少なくとも必須に含有する。上記第2の塗工液は、上述した第1の塗工液と組成が同一であってもよく、異なってもよい。
【0108】
-粘着樹脂-
上記第2の塗工液に含まれる粘着樹脂A2は、架橋剤が有する官能基(活性点)と反応可能な官能基を有する。上記粘着樹脂A2が有する、架橋剤が有する官能基(活性点)と反応可能な官能基としては、例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基等が挙げられる。
【0109】
上記粘着樹脂A2としては、架橋剤B1及びB2と反応可能な官能基を有する樹脂であればよく、公知の粘着剤に含まれるポリマーが挙げられる。上記粘着樹脂A2として具体的には、アクリル重合体、ポリウレタン、スチレン-イソプレン-スチレン等の熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン、ポリブチレン等の合成ゴム、天然ゴム等が挙げられ、これらは架橋剤が有する官能基(活性点)と反応可能な官能基を有する。中でもアクリル重合体が好ましい。
【0110】
上記アクリル重合体を構成する(メタ)アクリル単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-へプチル(メタ)アクリレート、1-メチルへプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、1-メチルヘプチル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート等の、炭素原子数が1~18であるアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することができる。なかでも上記(メタ)アクリル単量体として、炭素原子数が4~18であるアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、炭素原子数が4~12であるアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することが、一層優れた接着力及び凝集力を発揮する粘着剤層を形成でき、また、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層との間に優れた層間密着性を付与できるためより好ましい。
【0111】
また、上記(メタ)アクリル単量体として、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-へプチル(メタ)アクリレート、1-メチルへプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレートのいずれか1種類または2種類以上を使用することが、一層優れた接着力及び凝集力を発揮する粘着剤層を形成でき、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層との間に優れた層間密着性を付与できるためより好ましい。
【0112】
上記炭素原子数1~18のアルキル基を有する(メタ)アクリレートは、アクリル重合体を構成する単量体成分の全量中60質量%以上であることが好ましく、80質量%~98.5質量%の範囲内であることがより好ましく、90質量%~98.5質量%の範囲内であることが、優れた接着力及び凝集力を発揮する粘着剤層を形成できるためより好ましい。
【0113】
上記アクリル重合体は、炭素原子数が1~18であるアルキル基を有する(メタ)アクリレートの他に、水酸基を有するビニル単量体を1種又は2種以上含むことが好ましい。架橋剤が有する官能基と反応可能な官能基である水酸基を上記アクリル重合体に導入することができるからである。水酸基を有するビニル単量体としては、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のアルキル基(アルキレン基)の炭素原子数が2~10のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
中でも、上記アクリル重合体は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくは4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、更に好ましくは4-ヒドロキシブチルアクリレートを含むことが、架橋剤に対して高い反応性を発揮でき、接着力及び凝集力により優れた粘着剤層を形成でき、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層との間に優れた層間密着性を付与できる点で好ましい。
【0114】
上記水酸基を有するビニル単量体の含有量は、アクリル重合体を構成する単量体成分の全量中、0.01質量%~1.0質量%の範囲内であることが好ましく、0.03質量%~0.3質量%の範囲内であることがより好ましい。水酸基を有するビニル単量体の含有量を上記の範囲内とすることで後述する架橋剤と良好に反応して、粘着剤層の内部および粘着剤層間ともに架橋結合を形成することができるからである。
【0115】
上記アクリル重合体は、炭素原子数が1~18であるアルキル基を有する(メタ)アクリレート及び水酸基を有するビニル単量体の他に、カルボキシル基を有するビニル単量体を1種又は2種以上含むことが好ましい。上記カルボキシル基を有するビニル単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、(メタ)アクリル酸2量体、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート等が挙げられる。なかでも(メタ)アクリル酸が好ましく、アクリル酸が優れた接着力及び凝集力を発揮する粘着剤層を形成するうえでより好ましい。
【0116】
上記カルボキシル基を有するビニル単量体の含有量は、アクリル重合体を構成する単量体成分の全量中、0.1質量%~30質量%の範囲内であることが好ましく、1.0質量%~20質量%の範囲内であることがより好ましい。カルボキシル基を有するビニル単量体の含有量を上記の範囲内とすることで、優れた接着力及び凝集力を発揮する粘着剤層を形成するうえで好ましい。
【0117】
上記アクリル重合体は、炭素原子数が1~18であるアルキル基を有する(メタ)アクリレート及び水酸基を有するビニル単量体、並びに必要に応じてカルボキシル基を有するビニル単量体の他に、窒素原子含有アクリル単量体を1種又は2種以上含んでいても良い。上記窒素原子含有アクリル単量体としては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド等のアミド基を有する単量体;アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する単量体、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、イタコンイミド等のイミド基を有する単量体;等が挙げられる。
【0118】
また上記アクリル重合体は、必要に応じてその他の高極性ビニル単量体を含んでいても良い。上記その他の高極性ビニル単量体としては、例えばスルホン酸基含有アクリル単量体、リン酸基含有アクリル単量体、シアノ基含有単量体、グリシジル基含有アクリル単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレン、その他の置換スチレン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等が挙げられる。なお、水酸基を有するビニル単量体、カルボキシル基を有するビニル単量体、及び、その他の高極性ビニル単量体のことを、総じて高極性ビニル単量体と総称する。
【0119】
上記高極性ビニル単量体の総含有量は、アクリル重合体を構成する単量体成分の全量中、1.5質量%~20質量%の範囲内であることが好ましく、1.5質量%~10質量%の範囲内であることがより好ましく、2質量%~8質量%の範囲であることが、優れた接着力を発現可能な粘着剤層を形成するうえでさらに好ましい。
【0120】
上記粘着樹脂(例えばアクリル重合体)の重量平均分子量は特に限定されないが、40万~300万の範囲内であることが好ましく、80万~250万の範囲内であることがより好ましい。
【0121】
上記アクリル重合体は、上述した第1の塗工液におけるアクリル重合体の調製方法と同様の方法を用いて調製することができる。
【0122】
<ポリウレタン>
ポリウレタンとしては、架橋剤が有する官能基(活性点)と反応可能な官能基(架橋点)を有する各種ウレタン系ポリマーを選択でき、中でも水酸基を有するポリウレタンが好ましい。ポリウレタンが有する水酸基は好ましくは2個以上、より好ましくは2~4個の範囲である。ポリウレタンとして具体的には、エーテル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン等が挙げられる。ポリウレタンとしては、ポリオールとポリイソシアネートとの反応物等を用いることができ、更に鎖伸長剤を含んでいても良い。ポリウレタンを構成するポリオール、ポリイソシアネート及び鎖伸長剤の具体例、並びにポリウレタンの製造方法については、上述した第1の塗工液において説明した、粘着樹脂として用いることが可能なポリウレタンと同様であり、引用され得る。
【0123】
-架橋剤B2-
上記第2の塗工液に含まれる架橋剤B2は、上記粘着樹脂A2及び第1の塗工液に含まれる粘着樹脂A1と反応可能な官能基を有する。このような架橋剤B2としては、例えばイソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤、多価金属塩架橋剤、金属キレート架橋剤、ケト・ヒドラジド架橋剤、オキサゾリン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、シラン架橋剤等を使用することができる。中でも、イソシアネート架橋剤及びエポキシ架橋剤の少なくとも一方が好ましく、第2の塗工液の溶剤等と混合しやすく、また、他の架橋剤よりも反応速度が速いため本発明の製造方法による効果をより効果的に奏することができる観点からイソシアネート系架橋剤がより好ましい。
【0124】
上記第2の塗工液に含まれる粘着樹脂A2及び第1の塗工液に含まれる粘着樹脂A1が水酸基を有する場合、上記第2の塗工液に含まれる架橋剤B2は、上述した架橋剤から1種又は2種以上選択して用いることができる。中でも粘着樹脂が有する水酸基との反応性に優れることから、イソシアネート架橋剤及びエポキシ架橋剤の少なくとも一方が好ましく、第2の塗工液中の粘着樹脂A2や有機溶剤等と混合しやすく、特に粘着樹脂が有する水酸基との反応性に優れ、更に他の架橋剤よりも反応速度が速いため本発明の製造方法による効果をより効果的に奏することができる観点から、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。
【0125】
上記イソシアネート架橋剤は、イソシアネート(NCO)基を2個以上有する化合物であり、例えば脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、芳香族イソシアネート、これらのアダクト体、イソシアヌレート体、ビウレット体等が挙げられる。上記脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート及び芳香族イソシアネートの具体例については、上記第1の塗工液に含むことが可能なイソシアネート架橋剤として例示した脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート及び芳香族イソシアネートと同じであり、引用され得る。
【0126】
中でも、上記イソシアネート架橋剤は、トリレンジイソシアネ-ト(TDI)またはキシレンジイソシアネート(XDI)のアダクト体である3官能の芳香族ポリイソシアネートであることが、上記第2の粘着剤層内における粘着樹脂A2と架橋剤B2との反応が進行するとともに、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層との層間でも反応が十分に進行し、上記第1の粘着剤層の物性を損なわずに、上記第1の粘着剤層と上記第2の粘着剤層との層間密着性を高めることができるため好ましい。
【0127】
上記第2の塗工液中の架橋剤B2の含有量は、上記第2の塗工液中の粘着樹脂A2の固形分100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上6質量部以下であることが更に好ましい。上記第2の塗工液中の上記架橋剤の含有量を上記の範囲内とすることで、上記第2の粘着剤層内における粘着樹脂A2と架橋剤B2との反応が進行するとともに、第2の粘着剤層と第1の粘着剤層との層間でも反応が十分に進行し、上記第2の粘着剤層の物性を損なわずに、上記第1の粘着剤層との層間密着性を高めることができる。特に第2の粘着剤層を形成後直ぐに第1の粘着剤層に貼合することで、より高い層間密着性効果が得られる。
【0128】
上記第2の塗工液において、上記架橋剤B2が有する粘着樹脂と反応可能な基のモル数と上記粘着樹脂A2が有する架橋剤と反応可能な基のモル数との比が0.2~40の範囲内であることが好ましく、1.0~20の範囲内であることがより好ましく、2~15の範囲内であることが、上記第2の粘着剤層内における粘着樹脂と架橋剤との反応が進行するとともに、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層との層間でも反応が十分に進行し、上記第2の粘着剤層の物性を損なわずに、上記第1の粘着剤層と上記第2の粘着剤層との層間密着性を高めることができるため更に好ましい。例えば、アクリル重合体及びイソシアネート架橋剤を含む塗工液において、イソシアネート架橋剤(NCO)のモル数とアクリル重合体が有する水酸基(OH)のモル数との比[NCO/OH]が、上記の範囲内であることが好ましい。モル比[NCO/OH]が0.2未満(OH過多)では、第2の粘着剤層中に存在するNCOが第2の粘着剤層中で消費されるため、第1の粘着剤層に存在するOHと反応できず層間密着性に劣る場合があり、40超(NCO過多)では、塗工液のポットライフが短くなる場合がある。
【0129】
-有機溶剤-
上記第2の塗工液に含まれる有機溶剤としては、上述した配合成分が溶解可能であれば特に限定されず、上述した第1の塗工液において例示した有機溶剤と同様とすることができ、引用され得る。有機溶剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0130】
上記第2の塗工液中の有機溶剤の含有量は、上述した第2の塗工液の構成成分を溶解又は分散でき、塗布可能な量であれば特に限定されず、上述した第1の塗工液における有機溶剤の好ましい含有量の範囲と同様とすることができ、引用され得る。
【0131】
-粘着付与樹脂-
上記第2の塗工液は、必要に応じて粘着付与樹脂をさらに含むことができる。上記第2の塗工液が粘着付与樹脂を更に含有することで、得られる第2の粘着剤層の接着力を更に向上させることができるからである。上記第2の塗工液に含むことが可能な上記粘着付与樹脂の種類、軟化点、及び上記第2の塗工液中の粘着付与樹脂の含有量については、上述した第1の塗工液において例示した粘着付与樹脂の種類、好ましい軟化点、及び上記第1の塗工液中の粘着付与樹脂の好ましい含有量の範囲と同じであり、引用され得る。
【0132】
-フィラー-
上記第2の塗工液は、必要に応じてフィラーを含むことができる。上記第2の塗工液に含むことが可能なフィラーについては、上述した第1の塗工液において例示したフィラーと同じであり、引用され得る。第2の塗工液がフィラーを含む場合、第1の塗工液はフィラーを含んでいても良く含まなくても良いが、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層との接触面積が得られやすくなり密着性を確保する観点から、第1の塗工液はフィラーを含まないことが好ましい。
【0133】
-添加剤-
上記第2の塗工液は、必要に応じて添加剤を含むことができる。上記第2の塗工液に含むことが可能な具体的な添加剤については、上述した第1の塗工液において例示した添加剤と同じであり、引用され得る。
【0134】
<対象物Y2>
上記工程2において第2の塗工液を塗布する対象物Y2は特に限定されず、例えば基材、剥離ライナー、機能性フィルム、部品等の被着体等が挙げられる。上記工程2において使用可能な対象物Y2の例示及び詳細については、上述した工程1において使用可能な対象物Y1の例示及び詳細と同じであり、引用され得るため説明は省略する。
【0135】
<<工程2>>
上記工程2において、上記第2の塗工液を塗布する方法としては、特に制限されず、上述した工程1における第1の塗工液を塗布する方法として例示した方法を用いることができ、引用され得る。
【0136】
上記工程2において、上記第2の塗工液を乾燥後の厚さが1μm~200μmの範囲内になるように塗布することが好ましく、中でも2μm~150μmの範囲内が好ましく、特に5μm~100μmの範囲内が好ましい。第2の塗工液を塗布することで形成される第2の粘着剤層の厚みを上記の範囲内とすることで、第2の粘着剤層に期待する性能の発現と生産速度とが両立できるからである。
【0137】
上記工程2において、上記第2の塗工液を塗布した後、塗膜を乾燥することで、上記第2の粘着剤層が形成される。上記第2の塗工液の塗膜の乾燥条件は、第2の粘着剤層の残留溶剤量が所定値以下となるように温度や時間等を適宜調製して設定される。上記第2の粘着剤層の残留溶剤量が5%以下であることが好ましく、3%以下がより好ましく、2%以下が更に好ましい。
【0138】
上記工程2における具体的な乾燥条件等については、上述の工程1で説明した第1の塗工液の塗膜の乾燥条件と同様とすることができ、引用され得る。なお、上記工程2において上記第2の塗工液を塗布した後、上記第2の塗工液の塗膜を乾燥して残留溶剤量が所定値以下になったときを、後述する「上記第2の粘着剤層を形成後上記第1の粘着剤層及び上記第2の粘着剤層を貼合するまでの時間」の起算点とする。第2の粘着剤層は、第1の粘着剤層の残留溶剤量が所定値以下となる乾燥終了時から24時間以内に形成され、第1の粘着剤層と貼合される。
【0139】
上記工程2においては、上記第2の塗工液を対象物Y2に塗布して上記対象物Y2上に第2の粘着剤層を直接形成してもよく、
図4で例示するように、第2の塗工液を対象物Y2a(
図4中の符号3a)に塗布して第2の粘着剤層(
図4中の符号4)を形成後、上記第2の粘着剤層(
図4中の符号4)を対象物Y2b(
図4中の符号3b)に転写して対象物Y2bの片面又は両面に第2の粘着剤層を形成してもよい。対象物Y2bの片面又は両面に転写される第2の粘着剤層は、対象物Y2a上において残留溶剤量が所定値以下となっている。即ち、「上記第2の粘着剤層を形成後」とは「対象物Y2a上に第2の粘着剤層を形成後」とすることができる。
【0140】
上記工程2が、上述のように転写工程を含む場合、対象物Y2aは剥離ライナーであることが好ましい。即ち、上記工程2は、対象物Y2aである剥離ライナー上に第2の塗工液を塗布して上記剥離ライナー上に形成した第2の粘着剤層を、対象物Y2bの片面又は両面に転写することが好ましい。このとき対象物Y2bは剥離ライナー以外の対象物であることが好ましい。また、対象物Y2aが剥離ライナーである場合、対象物Y2aは、対象物Y2bに第2の粘着剤層を転写後剥離されてもよく、工程3までの間は第2の粘着剤層に貼合されていても良い。
【0141】
例えば上記工程2における対象物Y2が剥離ライナーであり、上記第2の塗工液からなる第2の粘着剤層を剥離ライナー上に形成する場合、第2の粘着剤層は、剥離ライナーの剥離処理面に第2の塗工液を塗布して形成される。
【0142】
例えば上記工程2における対象物Y2が剥離ライナー以外の対象物(例えば基材、機能性フィルム又は被着体)であり、上記第2の塗工液からなる第2の粘着剤層を剥離ライナー以外の対象物に形成する場合、上記第2の粘着剤層は、上記剥離ライナー以外の対象物(対象物Y2)に直接、第2の塗工液を塗布して形成してもよく、剥離ライナー(対象物Y2a)上に第2の塗工液を塗布して上記剥離ライナー上に第2の粘着剤層を形成後、剥離ライナー以外の対象物(対象物Y2b)の片面又は両面に転写してもよい。剥離ライナー以外の対象物の片面又は両面に転写される第2の粘着剤層は、転写前の剥離ライナー上において残留溶剤量が所定値以下となっている。
【0143】
上記第2の粘着剤層は、上記対象物Y2(転写工程を含む場合はY2b)の片面のみに形成してもよく、両面にそれぞれ形成されても良い。例えば上記基材に第2の粘着剤層を形成する場合、上記第2の粘着剤層は、上記基材の片面のみに形成してもよく、上記基材の両面にそれぞれ形成しても良い。対象物Y2(転写工程を含む場合はY2b)の両面にそれぞれ第2の粘着剤層を形成する場合、一方の面に形成される第2の粘着剤層a1と、他方の面に形成される第2の粘着剤層a2とは、厚さ及び/又は組成が同じであってもよく異なっても良い。
【0144】
[3]工程3
本発明の製造方法における工程3は、上記第1の粘着剤層の形成後24時間以内に、上記第1の粘着剤層及び上記第2の粘着剤層を貼合する工程である。工程3により第1の粘着剤層と第2の粘着剤層とが隣接する。工程3は工程1及び工程2の後に実施される。
【0145】
工程3において、第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層の貼合を上記第1の粘着剤層の形成後24時間以内に行うことで、第1の粘着剤層の固相(又は半固相)内において反応前の粘着樹脂A1及び架橋剤B1が残存する間に、第1の粘着剤層が第2の粘着剤層と接触することができる。これにより、第1の粘着剤層内に存在する反応前の粘着樹脂A1及び架橋剤B1と、第2の粘着剤層内の反応前の粘着樹脂A2及び架橋剤B2とが、2つの粘着剤層の貼合界面において相互に反応し、上記貼合界面を介して粘着樹脂A1及び架橋剤B2による架橋反応と、粘着樹脂A2及び架橋剤B1による架橋反応とを生じることができる。
【0146】
上記工程1において上記第1の粘着剤層を形成後、上記第1の粘着剤層と上記工程2において形成した上記第2の粘着剤層とを貼合するまでの時間は、第1の粘着剤層を形成後24時間以内であればよく、中でも密着性付与の観点から800分以内が好ましく、より好ましくは400分以内であり、更に好ましくは200分以内である。
【0147】
また、上記工程2において上記第2の粘着剤層を形成後上記第1の粘着剤層と上記第2の粘着剤層とを貼合するまでの時間は、特に限定されないが、24時間以内とすることができ、中でも密着性付与の観点から、第2の粘着剤層を形成後800分以内が好ましく、より好ましくは第2の粘着剤層を形成後200分以内であり、更に好ましくは第2の粘着剤層を形成後10分以内である。
【0148】
第1の粘着剤層及び上記第2の粘着剤層を貼合する環境は、通常の粘着テープの製造環境と同様にすることができ適宜設定可能であり、例えば温度が20℃~30℃、湿度が30%RH~80%RHの環境とすることができる。
【0149】
工程3においては、第1の粘着剤層と第2の粘着剤層が貼合可能であれば、上記粘着剤層は対象物Y1上に無くても良く、第2の粘着剤層は対象物Y2上に無くても良い。粘着剤層が対象物上に無い場合とは、例えば後述するように粘着剤層X1/粘着剤層X2/粘着剤層X3の積層構造(3層粘着剤層)を形成する際に、先に隣接する粘着剤層X1/粘着剤層X2の2層粘着剤層を工程1~3(工程1(1)~工程3(1)とする)により形成し、続いて上記2層粘着剤層の粘着剤層X2を第1の粘着剤層とし、粘着剤層X3を第2の粘着剤層として隣接する粘着剤層X2/粘着剤層X3を工程1~3(工程1(2)~工程3(2)とする)により形成する場合が挙げられる。この場合、粘着剤層X1/粘着剤層X2の形成における工程2(1)が、粘着剤層X2/粘着剤層X3の形成における工程1(2)に相当するが、上記工程3(2)において第1の粘着剤層に相当する粘着剤層X2は粘着剤層X1上にあり、上記工程2(1)における対象物Y2上に無い。また、先に隣接する粘着剤層X2/粘着剤層X3の2層粘着剤層を工程1~3(工程1(1)~工程3(1)とする)により形成し、続いて上記2層粘着剤層の粘着剤層X2を第1の粘着剤層とし粘着剤層X1を第2の粘着剤層として隣接する粘着剤層X1/粘着剤層X2を工程1~3(工程1(2)~工程3(2)とする)により形成する場合が挙げられる。このとき、粘着剤層X2/粘着剤層X3の形成における工程1(1)が、粘着剤層X1/粘着剤層X2の形成における工程1(2)に相当するが、上記工程3(2)において第1の粘着剤層に相当する粘着剤層X2は粘着剤層X3上にあり、上記工程1(1)における対象物Y1上に無い。
【0150】
本発明の製造方法により3層以上の粘着剤層が積層された多層粘着剤層を形成する場合、工程3において第1の粘着剤層の第2の粘着剤層と貼合する面と反対側、及び/又は、第2の粘着剤層の第1の粘着剤層と貼合する面と反対側に、反対側粘着剤層を有していても良い。上記反対側粘着剤層は、工程3において上記第1及び/又は第1の粘着剤層の一方の面に第2及び/又は第1の粘着剤層を貼合するよりも先に、別の隣接する2層間を形成する工程1~3の実施により、上記第1及び/又は第2の粘着剤層の他方の面に貼合されており、隣接する2層の粘着剤層の関係を有する。例えば、隣接する粘着剤層X1/粘着剤層X2の2層粘着剤層を工程1(1)~工程3(1)により形成し、上記2層粘着剤層の粘着剤層X2を第1の粘着剤層とし、粘着剤層X3を第2の粘着剤層として隣接する粘着剤層X2/粘着剤層X3を工程1(2)~工程3(2)により形成する場合、上記工程3(2)において上記2層粘着剤層の粘着剤層X1が反対側粘着剤層に相当する。
【0151】
工程3において、第1の粘着剤層の、上記第2の粘着剤層との貼合面とは反対側に剥離ライナーを有する場合、及び/又は、第2の粘着剤層の、上記第1の粘着剤層との貼合面とは反対側に剥離ライナーを有する場合、上記剥離ライナーを除去する剥離工程を含んでいてもよい。
【0152】
[4]その他
本発明の製造方法においては、上記第1の塗工液中の上記粘着樹脂A1がアクリル重合体であり、上記架橋剤B1がイソシアネート架橋剤であり、上記第2の塗工液中の上記粘着樹脂A2がアクリル重合体であり、上記架橋剤B2がイソシアネート架橋剤であることが好ましい。
【0153】
本発明の製造方法により得られる積層体が、n’層(n’は3以上の整数)の粘着剤層の積層からなる多層粘着剤層を含む場合、上記積層体は(n’-1)組の隣接する2つの粘着剤層を有する。本発明の製造方法が、n’層(n’は3以上の整数)の粘着剤層からなる多層粘着剤層の製造工程を含む場合、隣接する(t’)番目の粘着剤層及び(t’-1)番目の粘着剤層、並びに隣接する(t’)番目の粘着剤層及び(t’+1)番目の粘着剤層が、それぞれ上述した工程1~3により形成される。隣接する(t’)番目の粘着剤層及び(t’-1)番目の粘着剤層の形成において工程1(1)~工程3(1)が実施され、隣接する(t’)番目の粘着剤層及び(t’+1)番目の粘着剤層の形成において工程1(2)~工程3(2)が実施され得る。t’は2以上の整数且つ(n’-1)以下の整数である。
【0154】
また、本発明の製造方法において上記積層体が、粘着剤層X1、上記粘着剤層X1に隣接する粘着剤層X2、及び上記粘着剤層X2に隣接する粘着剤層X3の積層構造(粘着剤層X1/粘着剤層X2/粘着剤層X3の3層粘着剤層)を少なくとも有する場合、上記粘着剤層X1、X2及びX3は、隣接する2層間でそれぞれ第1及び第2の粘着剤層を規定し、各隣接する2層間で工程1~3が行われるが、3層間において形成順に応じて第1の粘着剤層、第2の粘着剤層、および第3の粘着剤層とみなすこともできる。
【0155】
3層粘着剤層は、例えば以下の工程1~3並びに工程4-1及び5-1、若しくは、工程1~3並びに工程4-2及び5-2により製造され得る。
工程1:対象物Y1に、粘着樹脂A1及び架橋剤B1を少なくとも含有する第1の塗工液を塗布して第1の粘着剤層を形成する工程
工程2:対象物Y2に、粘着樹脂A2及び架橋剤B2を少なくとも含有する第2の塗工液を塗布して、第1の粘着剤層の形成後24時間以内に第2の粘着剤層を形成する工程
工程3:上記第1の粘着剤層の形成後24時間以内に、上記第1の粘着剤層及び上記第2の粘着剤層を貼合して、上記第1の粘着剤層及び上記第2の粘着剤層が隣接する2層粘着剤層を形成する工程
<工程4-1及び工程5-1>
工程4-1:対象物Y3に、粘着樹脂A3及び架橋剤B3を少なくとも含有する第3の塗工液を塗布して、上記第1の粘着剤層の形成後24時間以内に第3の粘着剤層を形成する工程
工程5-1:上記第1の粘着剤層の形成後24時間以内に、上記2層粘着剤層の上記第1の粘着剤層及び上記第3の粘着剤層を貼合する工程
<工程4-2及び工程5-2>
工程4-2:対象物Y3に、粘着樹脂A3及び架橋剤B3を少なくとも含有する第3の塗工液を塗布して、上記第2の粘着剤層の形成後24時間以内に上記第3の粘着剤層を形成する工程
工程5-2:上記第2の粘着剤層の形成後24時間以内に、上記2層粘着剤層の上記第2の粘着剤層及び上記第3の粘着剤層を貼合する工程
ただし、工程4-1において、上記第3の塗工液に含有される上記粘着樹脂A3は、第1の塗工液に含有される架橋剤B1と反応可能であり、第1の塗工液に含有される上記粘着樹脂A1は、第3の塗工液に含有される架橋剤B3と反応可能である。
また、工程4-2において、上記第3の塗工液に含有される上記粘着樹脂A3は、第2の塗工液に含有される架橋剤B2と反応可能であり、第2の塗工液に含有される上記粘着樹脂A2は、第3の塗工液に含有される架橋剤B3と反応可能である。
第3の塗工液に含有される粘着樹脂A3及び架橋剤B3、並びに対象物Y3の詳細については、第1又は第2の塗工液に含有される粘着樹脂及び架橋剤、並びに対象物Y1、Y2の詳細と同様とすることができる。
粘着剤層X1~X3の形成順に応じて、上記工程1~3並びに工程4-1及び5-1、若しくは、工程1~3並びに工程4-2及び5-2における上記第1の粘着剤層、第2の粘着剤層、及び第3の粘着剤層は、粘着剤層X1~X3の何れかに読み替えることができる。
【0156】
本発明の製造方法により3層以上の粘着剤層が積層された多層粘着剤層を有する積層体を製造する場合、工程3において、第1の粘着剤層の第2の粘着剤層に貼合する面と反対側の面、及び/又は、第2の粘着剤層の第1の粘着剤層に貼合する面と反対側の面に反対側粘着剤層を有していても良い。反対側粘着剤層は、先に第1の粘着剤層又は第2の粘着剤層に貼合されて隣接している。反対側粘着剤層は、隣接する粘着剤層との間で形成順が特定されていればよく、上記隣接する粘着剤層を介して対向する粘着剤層(隣接する粘着剤層が第1の粘着剤層であれば第2の粘着剤層、隣接する粘着剤層が第2の粘着剤層であれば第1の粘着剤層)よりも先に形成されていてもよく、後に形成されていてもよい。本発明の製造方法は、固相(又は半固相)の粘着剤層同士を貼合するため、1つの粘着剤層内での未反応成分のマイグレーション等が生じにくい。そのため3層以上の粘着剤層を積層形成する場合、基準となる粘着剤層の一方の面に予め別の粘着剤層(反対側粘着剤層)が貼合されていても、上記基準となる粘着剤層中の未反応成分が枯渇するのを抑制でき、他方の面に粘着剤層を貼合したときに、接着界面において架橋構造を形成することができる。
【0157】
例えば
図2(a)で例示するような粘着剤層X1/粘着剤層X2/粘着剤層X3の3層を少なくとも含む多層粘着剤層Xを有する積層体の製造方法においては、粘着剤層X1及び粘着剤層X2の積層構造(2層粘着剤層)を上述した工程1~工程3(工程1(1)~工程3(1)とする)により形成し、粘着剤層X2及び粘着剤層X3の積層構造(2層粘着剤層)を上述した工程1~工程3(工程1(2)~工程3(2)とする)により形成する場合がある。工程1(1)~工程3(1)が工程1(2)~工程3(2)よりも先に実施される場合、工程3(2)において粘着剤層X2の粘着剤層X3に貼合する面と反対側の面には、反対側粘着剤層として粘着剤層X1を有していても良い。また、工程1(1)~工程3(1)が工程1(2)~工程3(2)よりも後に実施される場合、工程3(1)において粘着剤層X2の粘着剤層X1に貼合する面と反対側の面には、反対側粘着剤層として粘着剤層X3有していても良い。
【0158】
粘着剤層X1/粘着剤層X2/粘着剤層X3の3層の形成において、工程1(1)~工程3(1)により粘着剤層X1/粘着剤層X2を形成後、粘着剤層X2を第1の粘着剤層とし粘着剤層X3を第2の粘着剤層として上述した工程1(2)~工程3(2)を行う場合、上記工程1(2)の「対象物Y1に、粘着樹脂A1及び架橋剤B1を少なくとも含有する第1の塗工液を塗布して第1の粘着剤層を形成する」とは、粘着剤層X1及び粘着剤層X2の形成順に応じて、上記工程1(1)~工程3(1)における工程1(1)又は工程2(1)に相当する。
【0159】
また上記3層の形成において、粘着剤層X3を第1の粘着剤層とし粘着剤層X2を第2の粘着剤層として上述した工程1(2)~工程3(2)の途中で工程1(1)~工程1(3)を行う場合に、工程2(2)の「対象物Y2に、粘着樹脂A2及び架橋剤B2を少なくとも含有する第2の塗工液を塗布して、上記第1の粘着剤層の形成後24時間以内に第2の粘着剤層を形成する」とは、粘着剤層X1及び粘着剤層X2の形成順に応じて、粘着剤層X1及び粘着剤層X2の積層構造を形成する工程1(1)~工程3(1)における工程1(1)又は工程2(2)に相当する。
【0160】
本発明の製造方法は、上記工程3の後にエージング処理を行う。エージング処理を行う工程のことを、エージング処理工程と称する場合がある。工程3の後にエージング処理を行うことで、隣接する2つの粘着剤層の界面での架橋反応を促進させて層間密着性をより高めることができる。本発明の製造方法において、n層(nは2以上の整数)の粘着剤層からなる多層粘着剤層を有する積層体を製造する場合、エージング処理工程は、上記多層粘着剤層の形成工程において最後に実施される工程3の後(換言すれば、(n-1)組目の隣接する2つの粘着剤層の形成工程における工程3(n-1)の後)に行うことが好ましい。多層粘着剤層を形成する過程において、先に形成した粘着剤層中の未反応の粘着樹脂及び架橋剤を残存させながら、他の粘着剤層を形成することができ、隣接する2層の粘着剤層間の架橋反応時間を稼ぐことができる。そしてn層(nは2以上の整数)の粘着剤層からなる多層粘着剤層全体に対して、最後にエージング処理を行うことにより、(n-1)組の隣接する2つの粘着剤層間の層間密着性を向上させることができるため好ましい。
【0161】
エージング処理の温度及び時間は、積層体の厚み等に応じて適宜設定することができ、汎用の粘着テープのエージング処理条件を適用することができる。例えば本発明の製造方法により得られる粘着テープの総厚さが200μm以上の場合は、23℃前後で行うことが、粘着面のシワができにくいため好ましい。
【0162】
本発明の製造方法は、隣接した2つの粘着剤層を上述した工程1~3により形成して、n層(nは2以上の整数)の多層粘着剤層を形成することが可能であればよく、得られる積層体が有する多層粘着剤層は、1つであっても良く、2つ以上であってもよい。本発明の製造方法により得られる積層体が2つ以上の多層粘着剤層を有する場合、各多層粘着剤層は例えば対象物を介して画定することができる。
【0163】
本発明の製造方法は、隣接する2つの粘着剤層を有する多層粘着剤層を少なくとも含む各種積層体の製造方法として用いることができる。上記積層体が粘着テープであれば、本発明の製造方法は、粘着テープの製造方法として用いられる。
【0164】
[5]本発明の製造方法の具体的態様
以下に本発明の製造方法の具体的態様を例示するが、これらに限定されるものではない。また、本発明の製造方法により得られる積層体が粘着テープの場合、得られる粘着テープにおいて剥離ライナーは任意構成であり、上記粘着テープは上記除去等により一方又は両方の剥離ライナーを有さなくてもよい。以下同様とする。なお以下に説明する積層構造において「(剥離ライナー/)」又は「(/剥離ライナー)」とは、剥離ライナーがあっても無くてもよいことを表す。
【0165】
本発明の製造方法の1つの態様例(第1態様)として例えば、上記工程1では、対象物Y1に粘着剤層a形成用塗工液を塗布して粘着剤層aを形成し、上記工程2では、対象物Y2に粘着剤層b形成用塗工液を塗布して、上記粘着剤層aの形成後所定時間内に粘着剤層bを形成し、上記工程3では、上記粘着剤層aの形成後所定時間内に上記粘着剤層aと上記粘着剤層bとを貼合してもよい。これにより例えば、対象物Y2/粘着剤層b/粘着剤層a/対象物Y1の積層構造を少なくとも有する積層体を製造することができる。
【0166】
より具体的には、本発明の製造方法により得られる積層体が粘着テープである場合、上記第1態様による粘着テープの製造方法の一例としては、上記工程1では、対象物Y1である剥離ライナーの剥離処理面に粘着剤層a形成用塗工液を塗布して上記粘着剤層aを形成し、上記工程2では、対象物Y2である剥離ライナーの剥離処理面に粘着剤層b形成用塗工液を塗布して、上記粘着剤層aの形成後所定時間内に上記粘着剤層bを形成し、上記工程3では、上記粘着剤層aの形成後所定時間内に上記粘着剤層aと上記粘着剤層bとを貼合してもよい。これにより例えば、(剥離ライナー/)粘着剤層b/粘着剤層a(/剥離ライナー)の積層構造を少なくとも有する基材レスの両面型の粘着テープを製造することができる。
【0167】
本発明の製造方法の1つの態様例(第2態様)として例えば、上記工程1では、対象物Y1に粘着剤層a形成用塗工液を塗布して粘着剤層aを形成し、上記工程2では、対象物Y2aに粘着剤層b形成用塗工液を塗布して、上記粘着剤層aの形成後所定時間内に粘着剤層bを形成し、上記粘着剤層bを対象物Y2bの片面又は両面に転写し、上記工程3では、上記粘着剤層aの形成後所定時間内に上記粘着剤層aと上記対象物Y2bの片面又は両面に有する粘着剤層bとを貼合してもよい。
【0168】
より具体的には、本発明の製造方法により得られる積層体が粘着テープである場合、上記第2態様による粘着テープの製造方法の一例としては、上記工程1では、対象物Y1である剥離ライナーの剥離処理面に粘着剤層a形成用塗工液を塗布して粘着剤層aを形成し、上記工程2では、対象物Y2aである剥離ライナーの剥離処理面に粘着剤層b形成用塗工液を塗布して、上記粘着剤層aの形成後所定時間内に粘着剤層bを形成し、上記粘着剤層bを対象物Y2bである基材又は機能性フィルムの片面又は両面に転写し、上記工程3では、上記粘着剤層aの形成後所定時間内上記剥離ライナー上の粘着剤層aと上記基材又は機能性フィルムの片面又は両面に有する粘着剤層bとを貼合してもよい。これにより、例えば以下の積層構造を少なくとも有する片面又は両面型の粘着テープを製造することができる。
・(剥離ライナー/)粘着剤層a/粘着剤層b/基材又は機能性フィルムの積層構造
・(剥離ライナー/)粘着剤層a/粘着剤層b/基材又は機能性フィルム/粘着剤層b
・(剥離ライナー)/粘着剤層a/粘着剤層b/基材又は機能性フィルム/粘着剤層b/粘着剤層a(/剥離ライナー)の積層構造
の積層構造
【0169】
本発明の製造方法の1つの態様例(第3態様)として例えば、上記工程1では、対象物Y1aに粘着剤層a形成用塗工液を塗布して粘着剤層aを形成し、上記粘着剤層aを対象物Y1bの片面又は両面に転写し、上記工程2では、対象物Y2に粘着剤層b形成用塗工液を塗布して、上記粘着剤層aの形成後所定時間内に粘着剤層bを形成し、上記工程3では、上記粘着剤層aの形成後所定時間内に上記対象物Y1bの片面又は両面に有する上記粘着剤層aと上記対象物Y2上の粘着剤層bとを貼合してもよい。
【0170】
より具体的には、本発明の製造方法により得られる積層体が粘着テープである場合、上記第3態様による粘着テープの製造方法の一例としては、上記工程1では、対象物Y1aである剥離ライナーの剥離処理面に粘着剤層a形成用塗工液を塗布して粘着剤層aを形成し、上記粘着剤層aを対象物Y1bである基材又は機能性フィルムの片面又は両面に転写し、上記工程2では、対象物Y2である剥離ライナーの剥離処理面に粘着剤層b形成用塗工液を塗布して、上記粘着剤層aの形成後所定時間内に上記粘着剤層bを形成し、上記工程3では、上記粘着剤層aの形成後所定時間内に上記基材又は機能性フィルムの片面又は両面に有する上記粘着剤層aと上記剥離ライナー上の粘着剤層bとを貼合してもよい。これにより、例えば以下の積層構造を少なくとも有する片面又は両面型の粘着テープを製造することができる。
・(剥離ライナー/)粘着剤層b/粘着剤層a/基材又は機能性フィルムの積層構造
・(剥離ライナー/)粘着剤層b/粘着剤層a/基材又は機能性フィルム/粘着剤層a/粘着剤層b(/剥離ライナー)の積層構造
・(剥離ライナー/)粘着剤層b/粘着剤層a/基材又は機能性フィルム/粘着剤層a(/剥離ライナー)の積層構造
【0171】
本発明の製造方法の1つの態様例(第4態様)として例えば、上記工程1では、対象物Y1aに粘着剤層a形成用塗工液を塗布して粘着剤層aを形成し、上記粘着剤層aを対象物Y1bの片面又は両面に転写し、上記工程2では、対象物Y2aに上記粘着剤層b形成用塗工液を塗布して、上記粘着剤層aの形成後所定時間内に粘着剤層bを形成し、上記粘着剤層bを対象物Y2bの片面又は両面に転写し、上記工程3では、上記粘着剤層aの形成後所定時間内に上記対象物Y1bの片面又は両面に有する粘着剤層aと上記対象物Y2bの片面又は両面に有する粘着剤層bとを貼合してもよい。
【0172】
より具体的には、本発明の製造方法により得られる積層体が粘着テープである場合、上記第4態様による粘着テープの製造方法の一例としては、上記工程1では、対象物Y1aである剥離ライナーの剥離処理面に上記粘着剤層a形成用塗工液を塗布して粘着剤層aを形成し、上記粘着剤層aを対象物Y1bである基材又は機能性フィルムの片面又は両面に転写し、上記工程2では、対象物Y2aである剥離ライナーの剥離処理面に粘着剤層b形成用塗工液を塗布して、上記粘着剤層aの形成後所定時間内に粘着剤層bを形成し、上記粘着剤層bを対象物Y2bである基材又は機能性フィルムの片面又は両面に転写し、上記工程3では、上記粘着剤層aの形成後所定時間内に上記基材又は機能性フィルムの片面又は両面に有する上記粘着剤層aと上記基材又は機能性フィルムの片面又は両面に有する粘着剤層bとを貼合してもよい。これにより、例えば以下の積層構造を有する片面又は両面型の粘着テープを製造することができる。
・(剥離ライナー/)粘着剤層b/基材又は機能性フィルム/粘着剤層b/粘着剤層a/基材又は機能性フィルムの積層構造
・基材又は機能性フィルム/粘着剤層b/粘着剤層a/基材又は機能性フィルム/粘着剤層a(/剥離ライナー)の積層構造
・(剥離ライナー/)粘着剤層b/基材又は機能性フィルム/粘着剤層b/粘着剤層a/基材又は機能性フィルム/粘着剤層a(/剥離ライナー)の積層構造
【0173】
上述した各態様の製造方法において、対象物Y1(Y1a、Y1b)及び対象物Y2(Y2a、Y2b)を適宜選択することで、一方又は両方の最外層が基材又は機能性フィルムである積層体や、一方又は両方の最外層が部品等の被着体である積層体(接合体)を製造することができる。例えば上記第1態様の製造方法によれば、対象物Y1及びY2が被着体である以下の積層構造を有する積層体(接合体)を得ることができる。
・被着体/粘着剤層b/粘着剤層a/被着体の積層構造
また例示しないが、上述した第2~第4態様の製造方法により対象物Y1及びY2が被着体である積層体(接合体)を得ることができる。
【0174】
2.積層体
本発明の積層体は、隣接する2つの粘着剤層(多層粘着剤層)を少なくとも有する。本発明の積層体は、上記「1.積層体の製造方法」にて説明した製造方法により得られる。
【0175】
本発明の積層体は、隣接する2つの粘着剤層を少なくとも有すれば、層構成や積層体の種類は特に限定されず、対象物や層構成の選択により適宜設定することができる。本発明の積層体は、例えば両方の最外層が剥離ライナー以外の対象物であり、最外層の対象物が、隣接する2つの粘着剤層を少なくとも有する多層粘着剤層(中間層)を介して接合された接合体であってもよい。
【0176】
また本発明の積層体は、一方又は両方の表面が粘着面である粘着テープであってもよい。上記積層体において一方又は両方の表面が粘着面であるとは、上記積層体の最外層が剥離ライナーである場合は、剥離ライナーを除く積層体の最表面が粘着面として機能すること意味する。本発明の積層体が粘着テープである場合、後述する「3.粘着テープ」の項で説明する物性を具備することが好ましい。
【0177】
本発明の積層体は、隣接する2つの粘着剤層を少なくとも有すればよく、n層(nは2以上の整数)の粘着剤層が積層されてなる多層粘着剤層を1つ又は2以上有することができる。本発明の積層体の具体的態様については、上記「1.積層体の製造方法」にて説明した積層体の具体的態様と同様とすることができる。
【0178】
3.粘着テープ
本発明の粘着テープは、隣接する2つの粘着剤層を少なくとも有し、JIS Z 0237に準拠して測定される90℃環境で1kg/4cm2の荷重をかけたときのせん断保持力が1440分を超えることを特徴とする。
【0179】
本発明の粘着テープのせん断保持力は、1440分を超えればよく、時間が長いほどより好ましい。本発明の粘着テープのせん断保持力は、後述する実施例の項で説明する方法により測定される値である。
【0180】
本発明の粘着テープは、上記「1.積層体の製造方法」にて説明した製造方法を用いて製造することができ、隣接する2つの粘着剤層間の界面に形成される結合により層間密着性が優れるため、高いせん断保持力を発揮することができる。
【0181】
本発明の粘着テープにおいて、隣接する2つの粘着剤層の組成や厚みは、上記「1.積層体の製造方法」の項で説明した粘着剤層の組成や乾燥後厚みと同じとすることができる。
【0182】
本発明の粘着テープは、隣接する2つの粘着剤層を少なくとも有する構造を有すればよく、n層(nは2以上の整数)の粘着剤層が積層された多層粘着剤層を1つ又は2以上有していてもよい。このような粘着テープとして例えば、n層の粘着剤層(nは2以上の整数)が積層されてなる多層粘着層のみを有する粘着テープ、n層の粘着剤層(nは2以上の整数)が積層されてなる多層粘着層/基材又は機能性フィルム/1層の粘着剤層を有する粘着テープ、n層の粘着剤層(nは2以上の整数)が積層されてなる多層粘着層/基材又は機能性フィルム/n層の粘着剤層(nは2以上の整数)が積層されてなる多層粘着層を有する粘着テープ等が挙げられる。上記例示した粘着テープは、片方又は両方の最外層に剥離ライナーを有していても良い。
【0183】
本発明の粘着テープのその他の態様については、上記「1.積層体の製造方法」にて説明した積層体の具体的態様と同様とすることができる。
【0184】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例0185】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明の実施形態はこれらに限定されない。
【0186】
(180°ピール接着力)
温度23℃及び相対湿度50%RHの環境下、実施例及び比較例で作製した粘着テープの片面(粘着力を測定しない粘着剤層側)に、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムで裏打ちをした後、長さ100mm、幅20mmに裁断して試験片を得た。次に、上記試験片の粘着剤面を、長さ130mm、幅30mm、厚さ2mmのステンレス板(SUS304、BA仕上げ)の中央部に2kgローラー1往復で加圧してラミネートした。温度23℃及び相対湿度50%RHの環境下で1時間放置後、引張試験機を用いて上記ステンレス板から上記試験片を引張速度300mm/分で180°方向に引き剥がした際の接着力を測定した。上記接着力を、実施例及び比較例の粘着テープにおける180°ピール接着力とした。
【0187】
(せん断保持力)
温度23℃及び相対湿度50%RHの環境下、実施例及び比較例で作製した粘着テープの片面(最後に貼合した粘着剤層)に、厚さ50μmのアルミ箔で裏打ちをした後、長さ100mm、幅20mmに裁断した。次に、他方の粘着剤面をステンレス板(SUS304を#360のサンドペーパーでヘアライン仕上げしたもの)に接着面積が20mm×20mm(4cm2)になる様に2kgローラー一往復で加圧貼付して試験片を作成した。温度23℃及び相対湿度50%RHの環境下で1時間放置後、測定温度90℃の環境下に試験片のステンレス板側を固定した後、粘着テープの自由端に1kgの荷重をせん断方向に付与した。上記荷重が付与された状態で90℃の環境下に放置して、粘着テープが剥離(落下)するまでの時間を測定した。さらに、落下した試験片のステンレス板側に残った粘着剤層の厚さを3D形状測定(キーエンス社製VR-3000、テープの幅方向の平均値)で求めて、評価した粘着テープの粘着剤層の厚さ±5μmの場合は粘着剤層の密着不良による脱落と判断した。なお、1440分保持した場合はそこで試験を終了して「1440<」とした。
【0188】
(ゲル分率)
実施例、比較例で作成した各粘着剤層を、40℃の環境下で2日間エージングさせることによってゲル分率測定用の粘着剤層を形成する。得られた粘着剤層を縦50mm及び横40mmの正方形に裁断したものを試験片とした。上記試験片の質量(G1)を測定した後、23℃の環境下で、上記試験片をトルエンに24時間浸漬させ、上記浸漬後の上記試験片とトルエンとの混合物を、300メッシュ金網を用いて濾過することによって、トルエンへの不溶成分を抽出し、上記不溶成分を105℃の環境下で1時間乾燥させたものの質量(G2)を測定した。上記質量(G1)と質量(G2)と下記式に基づいて、そのゲル分率を算出した。
ゲル分率(質量%)=(G2/G1)×100
【0189】
[アクリル系粘着剤の調製]
実施例および比較例で用いたアクリル系粘着剤をそれぞれ以下の方法で調製した。
【0190】
(アクリル系粘着剤組成物P-1)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、モノマー組成としてn-ブチルアクリレート79.9質量部、2-エチルヘキシルアクリレート6質量部、シクロヘキシルアクリレート10質量部、アクリル酸4質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.1質量部と、酢酸エチル150質量部とを仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら72℃まで昇温させた。次に、上記混合物に、予め酢酸エチルに溶解した2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)溶液2質量部(固形分0.1質量%)を添加し、攪拌下、72℃で4時間ホールドした後、75℃で5時間ホールドした。上記混合物を酢酸エチルで希釈して、200メッシュ金網でろ過することによって、重量平均分子量106万のアクリル重合体(A-1)の溶液(固形分濃度26%)を得た。
【0191】
上記アクリル重合体(A-1)100質量部に対して、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂D-125(荒川化学工業株式会社製)5質量部と芳香族系炭化水素樹脂FTR6125(三井化学株式会社製)15質量部を混合攪拌したのち、酢酸エチルを加えることによって固形分30質量%の粘着剤溶液を得た。次に、上記粘着剤溶液100質量部に対し、架橋剤としてバーノックD-40(DIC株式会社製、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体、不揮発分40質量%、以下D-40)を1.0質量部添加し、均一になるよう攪拌混合して粘着剤組成物(P-1)を得た。
【0192】
(アクリル系粘着剤組成物P-2)
n-ブチルアクリレート93.4質量部、酢酸ビニル3.0質量部、アクリル酸3.5質量部、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1質量部に変更する以外は調整例1と同様の方法で、重量平均分子量100万のアクリル重合体(A-2)の溶液(不揮発分35質量%)を得た。
【0193】
上記アクリル重合体(A-2)100質量部に対して、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂D-125(荒川化学工業株式会社製)9.3質量部と不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂A-100(荒川化学工業株式会社製)9.3質量部とを混合攪拌したのち、酢酸エチルを加えることによって固形分38質量%の粘着剤溶液を得た。次に、上記粘着剤溶液100質量部に対し、架橋剤としてバーノックD-40を1.2質量部添加し、均一になるよう攪拌混合してアクリル系粘着剤組成物(P-2)を得た。
【0194】
(アクリル系粘着剤組成物P-3)
上記アクリル重合体(A-2)100質量部に対して、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂D-125(荒川化学工業株式会社製)9.3質量部と不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂A-100(荒川化学工業株式会社製)9.3質量部とを混合攪拌したのち、酢酸エチルを加えることによって固形分38質量%の粘着剤溶液を得た。次に、上記粘着剤溶液100質量部に、熱可塑性樹脂製中空粒子(マツモトマイクロスフエアーFN-80SDE、松本油脂製薬(株)製、アクリロニトリル系共重合体、平均粒径30μm、密度0.025g/cm3)を0.24質量部配合して均一に分散させた後、架橋剤としてバーノックD-40を1.2質量部配合することによって粘着剤組成物(P-3)を得た。
【0195】
[実施例1]
上記粘着剤組成物(P-1)を、剥離ライナーY1(片面側が剥離処理された厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(以下、PETと表す)フィルム)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工し、90℃で3分間乾燥させることによって粘着剤層a(残留溶剤量≦5%)を1枚形成した。
粘着剤層aを形成後、同様の操作で粘着剤組成物(P-1)を、剥離ライナーY2(片面側が剥離処理された厚さ75μmのPETフィルム)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工し、90℃で3分間乾燥させることによって、粘着剤層b(残留溶剤量≦5%)を1枚形成した。
次に、温度23℃及び相対湿度50%RHの環境下、2枚の粘着剤層a及びbの露出面同士を貼合して積層した後、上記剥離ライナーY1、Y2の上面から線圧5kg/cmのロールで常温ラミネートした。これを40℃の環境下で48時間熟成させることによって、厚さ100μmの粘着テープ(T-1)を得た。なお、粘着剤層a形成後(粘着剤層aの残留溶剤量が5%以下になったとき(乾燥終了時)から。以下同様とする。)、粘着剤層bと貼合するまでの時間は6分、粘着剤層a形成後、粘着剤層bを形成するまでの時間(粘着剤層bの残留溶剤量が5%以下になる(乾燥が終了する)までの時間。以下同様とする)は3分、粘着剤層b形成後、粘着剤層aと貼合するまでの時間は3分だった。
【0196】
[実施例2~4、比較例1~2]
粘着剤層a形成後、粘着剤層bを形成するまでの時間、及び、粘着剤層a形成後、粘着剤層bと貼合するまでの時間をそれぞれ下記表に示す時間に変えたこと以外は、実施例1と同様の操作で厚さ100μmの粘着テープ(T-2~T-4、U-1~U-2)を得た。なお、粘着剤層aの露出面の汚染を防止するため、粘着剤層bと貼合するまでの間、粘着剤層aの露出面は別の剥離ライナー(片面が剥離処理された厚さ25μmのPETフィルムの剥離処理面)を貼合して保護した。
【0197】
[実施例5]
粘着剤層a形成後、粘着剤層bを形成するまでの時間、及び、粘着剤層b形成後、粘着剤層aと貼合するまでの時間をそれぞれ下記表に示す時間に変えたこと以外は、実施例4と同様の操作で厚さ100μmの粘着テープ(T-5)を得た。なお、粘着剤層aおよび粘着剤層bの露出面の汚染を防止するため、粘着剤層aと粘着剤層bを貼合するまでの間、粘着剤層a、bの露出面はそれぞれ別の剥離ライナー(片面が剥離処理された厚さ25μmのPETフィルムの剥離処理面)を貼合して保護した。
【0198】
[実施例6]
上記粘着剤組成物(P-1)の代わりに粘着剤組成物(P-2)を用いて粘着剤層a及び粘着剤層bを形成したこと以外は、実施例2と同様の操作で厚さ100μmの粘着テープ(T-6)を得た。
【0199】
[実施例7]
上記粘着剤組成物(P-1)の代わりに粘着剤組成物(P-2)を用いて粘着剤層a及び粘着剤層bを形成したこと以外は、実施例4と同様の操作で厚さ100μmの粘着テープ(T-7)を得た。
【0200】
[比較例3]
上記粘着剤組成物(P-1)の代わりに粘着剤組成物(P-2)を用いて粘着剤層a及び粘着剤層bを形成したこと、並びに、粘着剤層a形成後、粘着剤層bを形成するまでの時間、及び粘着剤層a形成後、粘着剤層bと貼合するまでの時間をそれぞれ下記表に示す時間に変えたこと以外は、実施例4と同様の操作で厚さ100μmの粘着テープ(U-3)を得た。
【0201】
[実施例8]
上記粘着剤組成物(P-1)を、剥離ライナーY1(片面側が剥離処理された厚さ75μmのPETフィルム)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工し、90℃で3分間乾燥させることによって、粘着剤層a(残留溶剤量≦5%)を1枚形成した。
粘着剤層a形成後、同様の操作で粘着剤組成物(P-2)を、剥離ライナーY2(片面側が剥離処理された厚さ75μmのPETフィルム)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工し、90℃で3分間乾燥させることにより、粘着剤層b(残留溶剤量≦5%)を1枚形成した。
次に、温度23℃及び相対湿度50%RHの環境下、2枚の粘着剤層a及びbの露出面同士を貼合して積層した後、上記剥離ライナーY1、Y2の上面から線圧5kg/cmのロールで常温ラミネートした。これを40℃の環境下で48時間熟成させることによって、厚さ100μmの粘着テープ(T-8)を得た。なお、粘着剤層a形成後、粘着剤層bと貼合するまでの時間は180分であり、粘着剤層a形成後、粘着剤層bを形成するまでの時間は177分、粘着剤層b形成後、粘着剤層aと貼合するまでの時間は3分だった。
【0202】
[比較例4]
粘着剤層a形成後、粘着剤層bを形成するまでの時間、及び粘着剤層a形成後、粘着剤層bと貼合するまでの時間をそれぞれ下記表に示す時間に変えたこと以外は、実施例8と同様の操作で厚さ100μmの粘着テープ(U-4)を得た。
【0203】
[実施例9]
上記粘着剤組成物(P-2)を、剥離ライナーY1(片面側が剥離処理された厚さ75μmのPETフィルム)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工し、90℃で3分間乾燥させることによって、粘着剤層a(残留溶剤量≦5%)を1枚形成した。
上記粘着剤層a形成後、同様の操作で粘着剤組成物(P-1)を、剥離ライナーY2(片面側が剥離処理された厚さ75μmのPETフィルム)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し、90℃で3分間乾燥させることによって、粘着剤層b(残留溶剤量≦5%)を1枚形成した。
次に、温度23℃及び相対湿度50%RHの環境下、2枚の粘着剤層a及びbの露出面同士を貼合して積層した後、上記剥離ライナーの上面から線圧5kg/cmのロールで常温ラミネートした。これを40℃の環境下で48時間熟成させることによって、厚さ100μmの粘着テープ(T-9)を得た。なお、粘着剤層a形成後、粘着剤層bと貼合するまでの時間は180分、粘着剤層a形成後、粘着剤層bを形成するまでの時間は177分、粘着剤層b形成後、粘着剤層aと貼合するまでの時間は3分だった。
【0204】
[比較例5]
粘着剤層a形成後、粘着剤層bを形成するまでの時間、及び粘着剤層a形成後、粘着剤層bと貼合するまでの時間を下記表に示す時間に変えたこと以外は、実施例9と同様の操作で厚さ100μmの粘着テープ(U-5)を得た。
【0205】
[実施例10]
上記の粘着剤層a及び粘着剤層bの厚さをそれぞれ下記表に示す値に変えたこと以外は、実施例6と同様の操作で厚さ100μmの粘着テープ(T-10)を得た。
【0206】
[実施例11]
上記の粘着剤層a及び粘着剤層bの厚さをそれぞれ下記表に示す値に変えたこと、及び粘着剤層aを形成する際の乾燥時間を4分にしたこと以外は、実施例6と同様の操作で厚さ200μmの粘着テープ(T-11)を得た。
【0207】
[実施例12]
上記粘着剤組成物(P-2)を、剥離ライナーY1(片面側が剥離処理された厚さ75μmのPETフィルム)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工し、90℃で3分間乾燥させることによって、粘着剤層a(残留溶剤量≦5%)を2枚形成した。
次に、温度23℃及び相対湿度50%RHの環境下、上記2枚の粘着剤層aを厚さ12μmのPETフィルム基材(両面をコロナ処理することによって表面のぬれ指数を60mN/mに調整したもの)の両面に貼合後、上記剥離ライナーY1の上面から線圧5kg/cmのロールで常温ラミネートした。
【0208】
2枚の粘着剤層aを上記PETフィルム基材の両面に貼合後、同様の操作で粘着剤組成物(P-1)を、剥離ライナーY2(片面側が剥離処理された厚さ75μmのPETフィルム)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し、90℃で3分間乾燥させることにより、粘着剤層b(残留溶剤量≦5%)を2枚形成した。
次に、温度23℃及び相対湿度50%RHの環境下で、粘着剤層bを1枚と、PETフィルム基材の一方の面上の粘着剤層a(剥離ライナーを貼合直前に剥がす)の露出面同士を、上記剥離ライナーY2の上面から線圧5kg/cmのロールで常温ラミネートしながら貼合した。
次に、もう1枚の粘着剤層bと上記PETフィルム基材の他方の面上の粘着剤層a(剥離ライナーを貼合直前に剥がす)の露出面同士を、上記剥離ライナーY2の上面から線圧5kg/cmのロールで常温ラミネートしながら貼合した。これを40℃の環境下で48時間熟成させることによって、厚さ212μmの粘着テープ(T-12)を得た。なお、粘着剤層a形成後、粘着剤層bと貼合するまでの時間は180分、粘着剤層a形成後、粘着剤層bを形成するまでの時間は177分、粘着剤層b形成後、粘着剤層aと貼合するまでの時間は3分だった。
【0209】
[比較例6]
粘着剤層a形成後、粘着剤層bを形成するまでの時間、及び粘着剤層a形成後、粘着剤層bと貼合するまでの時間をそれぞれ下記表に示す時間に変えたこと以外は、実施例12と同様の操作で厚さ212μmの粘着テープ(U-6)を得た。
【0210】
[実施例13]
上記粘着剤組成物(P-2)の代わりに粘着剤組成物(P-3)を用いて乾燥後の厚さが75μmの粘着剤層aを形成したこと以外は、実施例12と同様の操作で厚さ262μmの粘着テープ(T-13)を得た。
【0211】
[比較例7]
粘着剤層a形成後、粘着剤層bを形成するまでの時間、及び粘着剤層a形成後、粘着剤層bと貼合するまでの時間をそれぞれ下記表に示す時間に変えたこと以外は、実施例13と同様の操作で厚さ262μmの粘着テープ(U-7)を得た。
【0212】
[実施例14]
上記粘着剤組成物(P-1)を、剥離ライナーY1(片面側が剥離処理された厚さ75μmのPETフィルム)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工し、90℃で3分間乾燥させることによって、粘着剤層a(残留溶剤量≦5%)を1枚形成した。
粘着剤層aを形成後、同様の操作で粘着剤組成物(P-1)を、剥離ライナーY2(片面側が剥離処理された厚さ75μmのPETフィルム)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し、90℃で3分間乾燥させることにより、粘着剤層b(残留溶剤量≦5%)を1枚形成した。
次に、温度23℃及び相対湿度50%RHの環境下、2枚の粘着剤層a及び粘着剤層bの露出面同士を、上記剥離ライナーの上面から線圧5kg/cmのロールで常温ラミネートして、多層粘着剤層a/bを得た。なお、粘着剤層a形成後、粘着剤層bと貼合するまでの時間は6分、粘着剤層a後、粘着剤層bを形成するまでの時間は3分、粘着剤層b形成後、粘着剤層aと貼合するまでの時間は3分だった。
【0213】
次に、粘着剤層a及びbを形成後、上記粘着剤組成物(P-1)を剥離ライナーY3(片面側が剥離処理された厚さ75μmのPETフィルム)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工し、90℃で3分間乾燥させることによって、粘着剤層c及び粘着剤層d(共に残留溶剤量≦5%)を形成した。
次に、温度23℃及び相対湿度50%RHの環境下、粘着剤層cと多層粘着剤層a/bの粘着剤層a側(剥離ライナーをラミネート前に剥がす)の露出面同士を、上記剥離ライナーの上面から線圧5kg/cmのロールで常温ラミネートしながら貼合した。
次に、粘着剤層dと多層粘着剤層a/bの粘着剤層b側(剥離ライナーをラミネート前に剥がす)の露出面同士を、上記剥離ライナーの上面から線圧5kg/cmのロールで常温ラミネートしながら貼合した。これを40℃の環境下で48時間熟成させることによって、厚さ200μmの粘着テープ(T-14)を得た。なお、粘着剤層a形成後、粘着剤層cを形成するまでの時間は177分、粘着剤層b形成後、粘着剤層dを形成するまでの時間は177分、粘着剤層a及びbを貼合してから多層粘着剤層a/bの粘着剤層aに粘着剤層cを貼合するまでの時間は180分、粘着剤層a及びbを貼合してから多層粘着剤層a/bの粘着剤層cに粘着剤層dを貼合するまでの時間は180分、粘着剤層c形成後(粘着剤層cの残留溶剤量が5%以下になったとき(乾燥終了時)から。以下同様とする。)、多層粘着剤層a/bの粘着剤層aと貼合するまでの時間は3分、粘着剤層d形成後(粘着剤層dの残留溶剤量が5%以下になったとき(乾燥終了時)から。以下同様とする。)、多層粘着剤層a/bの粘着剤層bと貼合するまでの時間は3分だった。
【0214】
[比較例8]
粘着剤層b形成後、粘着剤層dを形成するまでの時間、及び粘着剤層a及び粘着剤層bを貼合してから多層粘着剤層a/bの粘着剤層bに粘着剤層dを貼合するまでの時間をそれぞれ下記表に示す時間に変えたこと以外は、実施例14と同様の操作で厚さ200μmの粘着テープ(U-7)を得た。
【0215】
[実施例15]
粘着剤層aと粘着剤層bの形成に使用する粘着剤組成物(P-1)の代わりに粘着剤組成物(P-3)を用いて、乾燥後の厚さが75μmの粘着剤層a及び乾燥後の厚さが75μmの粘着剤層bをそれぞれ作成したこと以外は、実施例14と同様の操作で厚さ250μmの粘着テープ(T-15)を得た。
【0216】
[比較例9]
粘着剤層a形成後、粘着剤層bを形成するまでの時間、粘着剤層b形成後、粘着剤層aと貼合するまでの時間、粘着剤層b形成後、粘着剤層dを形成するまでの時間、上記粘着剤層aと粘着剤層bとを貼合してから多層粘着剤層a/bの粘着剤層bに粘着剤層dを貼合するまでの時間を、それぞれ下記表に示す時間に変えたこと以外は、実施例15と同様の操作で厚さ250μmの粘着テープ(U-7)を得た。
【0217】
なお、実施例14~15及び比較例8~9で得た粘着テープは、粘着剤層c/粘着剤層a/粘着剤層b/粘着剤層dの多層粘着剤層を有し、隣接する2つの粘着剤層間での第1及び第2の順は下記表の通りである。
【0218】
【0219】
実施例及び比較例の粘着テープの製造条件及び評価結果を下記表に示す。
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】
実施例1~15の積層体(粘着テープ)は、隣接する2つの粘着剤層がそれぞれ本発明の製造方法における工程1~3を具備して形成されており、良好なせん断保持力を示すことが確認された。
一方で、比較例1~9の積層体(粘着テープ)は、隣接する2つの粘着剤層がそれぞれ本発明の製造方法における工程1~3の何れかを具備せずに形成されており、2つの粘着剤層の間でアンカリング破壊が生じた。比較例8,9での積層体(粘着テープ)は、4層の粘着剤層が積層された多層粘着剤層を有し、隣接する2つの粘着剤層の組み合わせが3組存在するが、上記工程1~3の何れかを具備しなかった1組(粘着剤層b及び粘着剤層d)においてアンカリング破壊が生じた。