(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089906
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20240627BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240627BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B32B9/00 A
H05K1/03 610D
H05K3/18 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205432
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】田村 礼
(72)【発明者】
【氏名】冨士川 亘
【テーマコード(参考)】
4F100
5E343
【Fターム(参考)】
4F100AA01A
4F100AB01D
4F100AB11A
4F100AB17D
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4F100AG00A
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5E343AA02
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5E343FF16
5E343GG02
5E343GG11
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体に対し、支持体と銅配線との熱収縮による応力差を抑制することで、支持体のクラック発生を抑制し、安価かつ簡便に、信頼性の高い金属回路基板を提供することができる。
【解決手段】ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体の上に、有機樹脂成分を含有する応力緩和層を設け、その上にめっき下地層及び金属めっき層を順次積層した積層体が上記課題を解決できることを見出したものであり、ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の上に、有機樹脂成分を含有する応力緩和層(B)、めっき下地層(C)及び金属めっき層(D)が順次積層されたことを特徴とする積層体、及び、それを用いたプリント配線板、パッケージ基板、インターポーザ、LED電極用配線基板、光電融合デバイスを提供するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の少なくとも一面に、順に応力緩和層(B)とめっき下地層(C)と金属めっき層(D)を有することを特徴とする積層体。
【請求項2】
ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の少なくとも一面に、順に応力緩和層(B)とめっき下地層(C)と仮支持体(E)を有することを特徴とする積層体。
【請求項3】
さらにケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)と応力緩和層(B)の間に、シランカップリング層(F)を有することを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
【請求項4】
前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の厚みが1~10,000μmであることを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
【請求項5】
前記応力緩和層(B)の厚みが0.01~100μmであることを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
【請求項6】
前記応力緩和層(B)が少なくともウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートにフェノール等のブロック化剤を反応させて得られたブロックイソシアネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンから選ばれることを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
【請求項7】
前記応力緩和層(B)が1層以上であることを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
【請求項8】
前記めっき下地層(C)の厚みが1~10,000mg/m2であることを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
【請求項9】
前記金属めっき層(D)の厚みが0.05~100μmであることを特徴とする請求項1記載の積層体。
【請求項10】
前記シランカップリング層(F)の厚みが0.1~100nmであることを特徴とする請求項3記載の積層体。
【請求項11】
ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の少なくとも一面に、前記応力緩和層(B)を形成する工程1、
前記応力緩和層(B)の表面に前記めっき下地層(C)を形成する工程2、
前記めっき下地層(C)の表面に金属めっき層(D)を形成する工程3、
を有することを特徴とする請求項1記載の積層体の製造方法。
【請求項12】
仮支持体(E)にめっき下地層(C)と応力緩和層(B)を順次形成した転写用積層体を製造する工程1、
前記転写用積層体の前記応力緩和層(B)が形成された面を、ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の少なくとも一面に貼り合わせる工程2、
ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)に貼り合わせた前記転写用積層体の前記仮支持体(E)を剥がし、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の少なくとも一面に前記応力緩和層(B)と前記めっき下地層(C)を形成する工程3、
前記めっき下地層(C)の表面に金属めっき層(D)を形成する工程4、
を有することを特徴とする請求項2記載の積層体の製造方法。
【請求項13】
ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の少なくとも一面に、前記シランカップリング層(F)を形成する工程を有することを特徴とする請求項11または12記載の製造方法。
【請求項14】
請求項1または2記載の積層体を有することを特徴とするプリント配線板、パッケージ基板、インターポーザ、LED電極用配線基板、光電融合デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板、高周波伝送用プリント配線板、リジッドプリント配線板、パッケージ基板、インターポーザ、アンテナ、半導体チップ等の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、高速化により、プリント配線板の高密度化、高性能化が要求されており、この要求に応えるため、表面が平滑且つ誘電正接の低い支持体が求められている。その中で、配線基板の支持体として、ガラス基材等のケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる無機基材を支持体とする電子回路基板が注目されている。
【0003】
従来の配線基板材料として、一般的にガラスエポキシ樹脂に代表される有機材料が用いられているが、近年、ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体への配線形成技術や穴あけ技術の進歩により、100μm以下の小径スルーホール形成や2μmの微細配線形成が可能であることから、無機基材を支持体とした配線基板が注目を集められている。
【0004】
ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体の一例としてガラス基材があげられる。ガラス基材を支持体に用いた回路基板は支持体の誘電正接が低く、高周波伝送用途の支持体として優れた性能を持つ。更に平坦性に優れている為、配線の導体損失を小さくすることが出来る。加えて、透明性、化学的安定性、剛性、かつ安価である特徴を生かした電子回路基板への応用が研究されており、半導体用プリント基板、透明アンテナ、μLEDディスプレイ用配線板等の製品化が期待されている。更に、厚み50μmの極薄膜ガラス基板を使用することで、フォルダブルスマートフォン用配線板やローラブルディスプレイ用配線板等への開発も盛んに行われている。
【0005】
また、シリコンウエハー等の無機基材はガラスより高い平坦度を持つことから、微細な配線を必要とするCPU、メモリ、トランジスター等の基板材料として使用される。近年では炭素を添加することにより、パワー半導体として耐恒温特性・耐高電圧特性・大電流特性に優れたSiCウエハーの開発も盛んに行われている。
【0006】
従来、これらの無機基材への金属膜を形成する手法としてドライプロセスであるスパッタや蒸着を用いて、金属密着層とめっき下地層を連続成膜した後にめっきを行うことで、導電性の金属配線を形成している。
【0007】
しかし、成膜時の熱負荷や製造時の熱負荷により、基材と金属配線との熱膨張差の影響を受け、無機基材と金属配線との接触部での応力集中による密着性の低下や無機基材のクラックが発生しやすくなる為、配線の信頼性が低下するという問題があった。その為、金属配線と無機基材とのクラックを抑制するため、薄膜な金属配線と厚膜な無機基材の使用を余儀なくされ、基板設計に制限があった。
【0008】
また、ドライプロセスでの成膜は、金属薄膜を形成するために、蒸着又はスパッタを用いる為、大がかりな真空設備が必要となり、設備上、基材サイズが限定される等の問題がある。加えて、製造時に基材と金属配線のクラックを起点とし、基材が割れた場合、大気開放した後に、再度真空引きをする為、歩留まりの低下、及び生産コストが高くなる欠点があった。
【0009】
前記のクラックを抑制する為の手法として、回路基板の金属層が形成された絶縁基板に熱可塑性の接着層を介して積層した多層配線基板が提案されてきた。一方、単層の回路基板のクラックを抑制する手法として、ドライプロセスにより、無機物の応力緩和層をガラス基材と金属配線層を介して形成することで、ガラス基材の亀裂や割れまたは反りを抑制し、電気的信頼性の高いガラス回路基板が提案されているが、ドライプロセスでの成膜の為、生産コストが高くなる欠点がある。
【0010】
そこで、無機基材の厚みや金属配線の厚みに制限なく、無機基材と金属配線の密着性や無機基材のクラックを抑制し、充分な配線の信頼性を有し、また金属層の形成に際し、大がかりな真空設備を必要とせず、安価且つ簡便な方法で、品質が安定する製造方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2019-204921号公報
【特許文献2】特開2022-135962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体に対し、支持体と銅配線との熱収縮による応力差を抑制することで、支持体のクラック発生を抑制し、安価且つ簡便な手法により、信頼性の高い金属回路基板を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体の上に、有機樹脂成分を含有する応力緩和層を設け、その上にめっき下地層及び金属めっき層を順次積層した積層体が上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明は、ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の上に、有機樹脂成分を含有する応力緩和層(B)、めっき下地層(C)及び金属めっき層(D)が順次積層されたことを特徴とする積層体、及び、それを用いたプリント配線板、パッケージ基板及びインターポーザを提供するものである。
【0015】
すなわち、具体的に本発明は、
1.ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の少なくとも一面に、順に応力緩和層(B)とめっき下地層(C)と金属めっき層(D)を有することを特徴とする積層体。
2.ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の少なくとも一面に、順に応力緩和層(B)とめっき下地層(C)と仮支持体(E)を有することを特徴とする積層体。
3.さらにケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)と応力緩和層(B)の間に、シランカップリング層(F) を有することを特徴とする1または2記載の積層体。
4.前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の厚みが1~10,000μmであることを特徴とする1~3いずれか一つに記載の積層体。
5.前記応力緩和層(B)の厚みが0.01~100μmであることを特徴とする1~4いずれか一つに記載の積層体。
6.前記応力緩和層(B)が少なくともウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートにフェノール等のブロック化剤を反応させて得られたブロックイソシアネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンから選ばれることを特徴とする1~5いずれか一つに記載の積層体。
7.前記応力緩和層(B)が1層以上であることを特徴とする1~6いずれか一つに記載の積層体。
8.前記めっき下地層(C)の厚みが1~10,000mg/m2であることを特徴とする1~7いずれか一つに記載の積層体。
9.前記金属めっき層(D)の厚みが0.05~100μmであることを特徴とする1記載の積層体。
10.前記シランカップリング層(F)の厚みが0.1~100nmであることを特徴とする3記載の積層体。
11.ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の少なくとも一面に、前記応力緩和層(B)を形成する工程1、
前記応力緩和層(B)の表面に前記めっき下地層(C)を形成する工程2、
前記めっき下地層(C)の表面に金属めっき層(D)を形成する工程3、
を有することを特徴とする1、3~10いずれか一つに記載の積層体の製造方法。
12.仮支持体(E)にめっき下地層(C)と応力緩和層(B)を順次形成した転写用積層体を製造する工程1、
前記転写用積層体の前記応力緩和層(B)が形成された面を、ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の少なくとも一面に貼り合わせる工程2、
ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)に貼り合わせた前記転写用積層体の前記仮支持体(E)を剥がし、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の少なくとも一面に前記応力緩和層(B)と前記めっき下地層(C)を形成する工程3、
前記めっき下地層(C)の表面に金属めっき層(D)を形成する工程4、
を有することを特徴とする2~10いずれか一つに記載の積層体の製造方法。
13.ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の少なくとも一面に、シランカップリング層(F)を形成する工程1を有することを特徴とする11または12記載の製造方法。
14.1~10いずれか一つに記載の積層体を有することを特徴とするプリント配線板、パッケージ基板、インターポーザ、LED電極用配線基板及び光電融合デバイス。
を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の積層体は、従来の蒸着法やスパッタ法で金属めっき層を形成する方法に比べ、安価且つ簡便にケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体と金属めっき層の密着性に優れ、応力緩和層により支持体と配線の熱膨張差を抑えることができ、支持体のクラックを抑制するという特徴がある。従って、本発明の積層体は、例えば、プリント配線板、リジットプリント配線版、フレキシブルプリント配線板、パッケージ基板、金属基板、タッチパネル用メタルメッシュ、有機太陽電池、有機EL素子、LED電極用配線基板、有機トランジスタ、非接触ICカード等のRFID、電磁波シールド、LED照明基材、デジタルサイネージ、光電融合デバイス、インターポーザなどの電子部材として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体の片面に応力緩和層、めっき下地層、金属めっき層を順次形成した本発明の積層体の断面図である。
【
図2】ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体の片面に、仮支持体にめっき下地層、応力緩和層を順次設けた転写用積層体の応力緩和層が形成された面を張り合わせ形成した本発明の積層体の断面図である。
【
図3】ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体の片面にシランカップリング層、応力緩和層、めっき下地層、金属めっき層を順次形成した本発明の積層体の断面図である。
【
図4】ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体の片面に、仮支持体にめっき下地層、応力緩和層を順次設けた転写用積層体の応力緩和層が形成された面とケイ素を含む支持体の片面にシランカップリング層を形成された面を張り合わせ形成した本発明の積層体の断面図である。
【
図5】ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体の片面に応力緩和層、めっき下地層、金属めっき層を順次形成し、パターニングした本発明の配線板の断面図である。
【
図6】ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体の片面にシランカップリング層、応力緩和層、めっき下地層、金属めっき層を順次形成し、パターニングした本発明の配線板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の積層体は、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の少なくとも一面に、応力緩和層(B)とめっき下地層(C)と金属めっき層(D)を有することを特徴とする積層体、および、製造方法である。
【0019】
本発明の積層体は、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の片面に、応力緩和層(B)等を順次積層した積層体であってもよく、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の両面に応力緩和層(B)等を順次積層した積層体であってもよい。
【0020】
また、本発明の積層体は仮支持体(E)に、前記めっき下地層(C)と前記応力緩和層(B)を順次形成した転写用積層体を、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の少なくとも一面に、張り合わせたものである積層体、および、その製造方法である。
【0021】
更に、本発明の積層体はケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の少なくとも一面に、シランカップリング層(F)と前記応力緩和層(B)と前記めっき下地層(C)を有することを特徴とする積層体、および、その製造方法である。
【0022】
前記ケイ素を含む無機化合物からなる支持体(A)としては、例えば、無アルカリガラス、アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、サファイアガラス、感光性ガラス、シリコンウエハー、シリコンカーバイドウエハー等があげられる。
【0023】
前記セラミックからなる支持体(A)としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、チタニア、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ウラン、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステン、炭化ホウ素、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化ランタン、モリブテンシリサイド、鉄シリサイド、バリウムシリサイド、窒化アルミ、窒化ケイ素、フォルステライト、ステアライト、コージライト、サイアロン、マシナブルセラミックス、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、フェライト、ムライト、ハイドロキシアパタイト、炭酸塩、酸化亜鉛、YAG、バリウムヘキサフェライト、黒鉛、ダイヤモンド、窒化ガリウム等があげられる。
【0024】
前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の形状がフィルム状又はシート状の場合、フィルム状又はシート状の前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)厚みは、電子機器の小型化の観点から薄膜であることが好ましいが、薄膜になるほど支持体が割れやすく、品質が安定しないため、1~10,000μmの範囲が好ましく、10~10,00μmの範囲がより好ましく、30~700μmの範囲がさらに好ましい。
【0025】
従来の技術では有機フィルム基材上に金属めっき層への密着性や剥離性を付与する有機樹脂層を形成する技術であったが、本発明の薄膜のケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)においては、薄膜な硬質基材特有な支持体へのクラックや反りが発生することが問題とされる。本発明では後述する応力緩和層(B)により、応力緩和性を付与させることで、無機基材と金属配線の密着性や無機基材のクラックを抑制し、充分な配線の信頼性を有することを可能にする。
【0026】
また、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)と後述する応力緩和層(B)との密着性を向上できることから、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の表面に、微細な凹凸の形成、その表面に付着した汚れの洗浄、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基等の官能基の導入のための表面処理等が施されていてもよい。具体的には、コロナ放電処理等のプラズマ放電処理、紫外線処理等の乾式処理、水、酸・アルカリ等の水溶液又は有機溶剤等を用いる湿式処理等が施されていてもよい。
【0027】
応力緩和層(B)は熱可塑性樹脂を用いることにより、前記応力緩和層(B)を硬化させる工程における、硬化反応時に発生する硬化収縮を抑制することが出来る為、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)と前記応力緩和層(B)との界面に掛かる応力の低減を可能にし、密着性が向上する。
【0028】
また、前記応力緩和層(B)は回路基板製造時の熱負荷に起因した、熱収縮により前記応力緩和層(B)が後述するめっき下地層(C)及び金属めっき層(D)に追従する。その結果、前記応力緩和層(B)と後述するめっき下地層(C)及び金属めっき層(D)に発生するストレスを抑制し、積層体に発生するクラックを抑制する。
【0029】
前記応力緩和層(B)は、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の表面の一部又は全部に樹脂溶液を塗工し、前記樹脂溶液中に含まれる水性媒体、有機溶剤等の溶媒を除去することによって形成することができる。
【0030】
前記応力緩和層(B)を前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の表面に塗工する方法としては、例えば、グラビア方式、コーティング方式、スクリーン方式、ローラー方式、ロータリー方式、スプレー方式等の方法が挙げられる。
【0031】
前記応力緩和層(B)の表面は、後述するめっき下地層(C)との密着性をより一層向上することを目的として、例えば、コロナ放電処理法等のプラズマ放電処理法、紫外線処理法等の乾式処理法、水や酸性又はアルカリ性薬液、有機溶剤等を用いた湿式処理法によって、表面処理されていることが好ましい。
【0032】
前記応力緩和層(B)を前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の表面に塗工した後、その塗工層に含まれる溶媒を除去する方法としては、例えば、乾燥機を用いて乾燥させ、前記溶媒を揮発させる方法が一般的である。乾燥温度としては、前記溶媒を揮発させることが可能で、かつ前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)に熱変形等の悪影響を与えない範囲の温度に設定すればよい。
【0033】
前記応力緩和層(B)の膜厚は、本発明の積層体を用いる用途によって異なるが、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)と後述するめっき下地層(C)との密着性をより向上し、かつ応力緩和性の低下がない範囲が好ましく、前記応力緩和層(B)の膜厚は、0.01μm~100μmの範囲が好ましく、0.05μm~50μmの範囲が好ましく、0.1μm~30μmの範囲がより好ましく、0.2μm~5μmの範囲がさらに好ましい。
【0034】
前記応力緩和層(B)の形成に用いる応力緩和層の樹脂組成物(b)としては、各種樹脂と溶媒とを含有するものを用いることができる。
【0035】
前記樹脂(b)としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートにフェノール等のブロック化剤を反応させて得られたブロックイソシアネートポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。なお、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂は、例えば、ウレタン樹脂存在下でアクリル単量体を重合することにより得られる。また、これらの樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0036】
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂は、アミノトリアジン環構造とフェノール構造とがメチレン基を介して結合したノボラック樹脂である。前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂は、例えば、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン等のアミノトリアジン化合物と、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、ビスフェノールA、フェニルフェノール、ナフトール、レゾルシン等のフェノール化合物と、ホルムアルデヒドとをアルキルアミン等の弱アルカリ性触媒の存在下又は無触媒で、中性付近で共縮合反応させるか、メチルエーテル化メラミン等のアミノトリアジン化合物のアルキルエーテル化物と、前記フェノール化合物とを反応させることにより得られる。
【0037】
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂は、メチロール基を実質的に有していないものが好ましい。また、前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂には、その製造時に副生成物として生じるアミノトリアジン構造のみがメチレン結合した分子、フェノール構造のみがメチレン結合した分子等が含まれていても構わない。さらに、若干量の未反応原料が含まれていてもよい。
【0038】
前記フェノール構造としては、例えば、フェノール残基、クレゾール残基、ブチルフェノール残基、ビスフェノールA残基、フェニルフェノール残基、ナフトール残基、レゾルシン残基等が挙げられる。また、ここでの残基とは、芳香環の炭素に結合している水素原子が少なくとも1つが抜けた構造を意味する。例えば、フェノールの場合は、ヒドロキシフェニル基を意味する。
【0039】
前記トリアジン構造としては、例えば、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン等のアミノトリアジン化合物由来の構造が挙げられる。
【0040】
前記フェノール構造及び前記トリアジン構造は、それぞれ1種で用いることも2種以上併用することもできる。また、密着性をより向上できることから、前記フェノール構造としてはフェノール残基が好ましく、前記トリアジン構造としてはメラミン由来の構造が好ましい。
【0041】
また、前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂の水酸基価は、密着性をより向上できることから、50~200mgKOH/gの範囲が好ましく、80~180mgKOH/gの範囲がより好ましく、100~150mgKOH/gの範囲がさらに好ましい。
【0042】
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0043】
また、前記アミノトリアジン環を有する化合物として、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂を併用することが好ましい。
【0044】
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、アルコールエーテル型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド誘導体由来の構造を有する含リンエポキシ化合物、ジシクロペンタジエン誘導体由来の構造を有するエポキシ樹脂、エポキシ化大豆油等の油脂のエポキシ化物などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0045】
前記エポキシ樹脂の中でも、応力緩和性をより向上できることから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂のエポキシ基と、後述するめっき下地層(C)に含有する塩基性窒素原子含有基が反応し、共有結合を形成するため、後述するめっき下地層(C)と前記応力緩和層(B)の界面の密着性が向上する。
【0046】
また、前記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、密着性をより向上できることから、100~300g/当量の範囲が好ましく、120~250g/当量の範囲がより好ましく、150~200g/当量の範囲がさらに好ましい。
【0047】
前記応力緩和層(B)が、アミノトリアジン変性ノボラック樹脂及びエポキシ樹脂を含有する層とする場合、密着性をより向上できることから、前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂中のフェノール性水酸基と前記エポキシ樹脂中のエポキシ基とのモル比[(x)/(y)]は、0.1~5の範囲以下が好ましく、0.2~3の範囲以下がより好ましく、0.3~2の範囲がさらに好ましい。
【0048】
前記アミノトリアジン変性ノボラック樹脂とエポキシ樹脂との反応を促進するため、硬化促進剤を併用してもよい。前記硬化促進剤としては、例えば、一級、二級又は三級のアミノ基を有するアミン化合物が挙げられる。また、前記アミン化合物としては、脂肪族、脂環族、芳香族のいずれのものも用いることができる。また、前記硬化促進剤として、メルカプタン、酸無水物、酸フッ化ホウ素、ホウ酸エステル、有機酸ヒドラジット、ルイス酸、有機金属化合物、オニウム塩、カチオン性化合物等も用いることができる。
【0049】
また、フェノキシ樹脂を含有するものを用いることが好ましい。前記応力緩和層(B)は、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)前記めっき下地層(C)との応力緩和性を向上させる機能を有するものである。本発明において、フェノキシ樹脂は、重量平均分子量が10,000~100,000の範囲にあるものを用いることが好ましい。前記応力緩和層(B)に高分子量のフェノキシ樹脂を用いることにより、ポリマーの伸度を向上させ、さらに応力緩和性を向上することができる。
【0050】
フェノキシ樹脂は、2価のフェノール化合物とエピクロロヒドリンとの反応、または、2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる、ポリヒドロキシポリエーテルである。2価のフェノール化合物としてはビスフェノール類が挙げられる。フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA構造(骨格)を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールF構造を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールS構造を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールM構造を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールP構造を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールZ構造を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。その他、ノボラック構造、アントラセン構造、フルオレン構造、ジシクロペンタジエン構造、ノルボルネン構造、ナフタレン構造、ビフェニル構造、アダマンタン構造等の骨格構造を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。これらフェノキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのなかでも、ビスフェノール構造を有するものが好ましく、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格がより好ましい。また、フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基であってもよい。
【0051】
本発明において、使用するフェノキシ樹脂の重量平均分子量は10,000~100,000の範囲が好ましい。分子量が10,000以上であると長期耐熱試験後のめっき密着力が高くなり、また、分子量が100,000以下であると有機溶剤への溶解性が向上し、前記応力緩和層(B)を形成する際の塗工液の粘度が適当になるため、ハンドリングが良好となる。フェノキシ樹脂の好ましい重量平均分子量は20,000~80,000であり、より好ましくは22,000~50,000である。なお、フェノキシ樹脂の重量平均分子量は上記反応において、エポキシ樹脂とフェノール樹脂とのモル比や反応時間により調整することができる。なお、本明細書において、重量平均分子量は、後述するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した、標準ポリスチレンで換算した値を採用した。GPCの測定には、測定装置として高速GPC装置(HLC-8420GPC、東ソー株式会社製)を用い、カラムはTSKgelG5000HxL/G4000HxL/G3000HxL/G2000HxL(東ソー株式会社製)を直列に連結して使用し、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、RI検出器を用いて測定した。また、フェノキシ樹脂とは、一般的に高分子量のエポキシ樹脂を意味するが、本明細書において「エポキシ樹脂」とは、重量平均分子量が10,000未満のものを意味するものとし、上記したフェノキシ樹脂とは区別するものとする。
【0052】
上記したフェノキシ樹脂として市販のものを使用してもよく、例えば、三菱ケミカル株式会社製の1256、4250(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、4275(ビスA/ビスF混合タイプ)、YL6794、YL7213、YL7290、YL7482、YL7553、YX8100(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、X6954(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂、YX7200(シクロヘキサン骨格含有フェノキシ樹脂)、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製のYP-70(ビスフェノールF型フェノキシ樹脂)、ZX356-2(ビスフェノールAおよびビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂)、YPB-40PXM40(臭素含有フェノキシ樹脂)、ERF-001M30(リン含有フェノキシ樹脂)、FX―280、FX―293、FX-310(フルオレン骨格含有フェノキシ樹脂)、Gabriel Phenoxies社製のPKHA、PKHB、PKHB+、PKHC、PKHH、PKHJ、PKFE等が挙げられる。
【0053】
本発明において、前記応力緩和層(B)には、上記フェノキシ樹脂と併用してエポキシ樹脂が含まれていることが好ましい。フェノキシ樹脂とエポキシ樹脂とを併用することにより、より一層、常態時および長期耐熱試験後の後述する金属めっき層(D)との密着性並びに応力緩和性が向上する。
【0054】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、アルコールエーテル型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド誘導体由来の構造を有するリン含有エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン誘導体由来の構造を有するエポキシ樹脂、エポキシ化大豆油等の油脂のエポキシ化物等が挙げられる。これらエポキシ樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
フェノキシ樹脂と併用するエポキシ樹脂としては、後述する金属めっき層(D)の密着性をより向上できることから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等の芳香族エポキシ樹脂が好ましく、さらに、液状のエポキシ樹脂が好ましく、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
【0056】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、密着性をより向上できることから、100~5,000g/当量であることが好ましく、120~2,000g/当量であることがより好ましく、120~250g/当量であることがさらに好ましい。
【0057】
前記応力緩和層(B)中のフェノキシ樹脂に加えてエポキシ樹脂がさらに含まれる場合、フェノキシ樹脂とエポキシ樹脂との配合割合は、質量基準におい90:10~10:90であることが好ましく、85:15~15:80であることがより好ましい。
【0058】
また、本発明において、前記応力緩和層(B)にフェノキシ樹脂を用いた場合、フェノキシ樹脂の末端にあるエポキシ基と、後述するめっき下地層(C)に含まれる塩基性窒素原子含有基とが反応するため、前記応力緩和層(B)と後述するめっき下地層(C)の界面の密着性が向上する。また、フェノキシ樹脂は、その他樹脂を併用して用いてもよい。
【0059】
前記応力緩和層(B)としては、金属めっき層(D)が熱などの負荷を受けて変形する際に、後述する金属めっき層(D)に追従出来る、耐熱性に優れた熱可塑性樹脂からなることが好ましく、一例としてフェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂を用いることが好ましい。
【0060】
前記応力緩和層(B)は、1層でも良く、2層以上あっても良い。2層以上の応力緩和層(B)を形成した場合、例えば、後述するめっき下地層(C)に近い層は、後述するめっき下地層(C)との密着性を向上させ、一方で、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)に近い応力緩和層(B)は、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)との応力緩和性を向上させることができる。また、後述するめっき下地層(C)に近い1層目の応力緩和層(B)は、後述するめっき下地層(C)や後述する金属めっき層(D)に近い層になり、導電性パターンを形成した際に、銅配線に近い部分となるため、絶縁信頼性を向上させる目的で、応力緩和層(B)の樹脂組成物を選択し、形成することができる。
【0061】
また、前記応力緩和層(B)の塗料は、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の表面に塗工することになるので、塗工しやすい粘度とするため、有機溶剤を配合することが好ましい。前記有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソプロピルアルコール、ダイアセトンアルコール、エチレングリコール、トルエン等が挙げられる。これらの溶剤は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0062】
また、前記応力緩和層(B)の塗料には、必要に応じて、皮膜形成助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を適宜添加してもよい。
【0063】
前記応力緩和層(B)の塗料を塗工する方法としては、例えば、グラビア方式、コーティング方式、スクリーン方式、ローラー方式、ロータリー方式、スプレー方式、キャピラリー方式、ドクターロール方式等の方法が挙げられる。
【0064】
前記応力緩和層(B)の塗料を、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の表面に形成した後、その塗工層に含まれる有機溶剤を除去する方法としては、例えば、乾燥機を用いて乾燥させ、有機溶剤を揮発させる方法が一般的である。
【0065】
前記応力緩和層(B)の乾燥温度としては、50℃~400℃の範囲が好ましく、80℃~340℃の範囲がより好ましく、120℃~280℃の範囲が好ましく、150℃~200℃の範囲がさらに好ましい。
【0066】
めっき下地層(C)は、前記応力緩和層(B)上に形成されたものであり、前記めっき下地層(C)を構成する金属としては、遷移金属又はその化合物が挙げられ、中でもイオン性の遷移金属が好ましい。このイオン性の遷移金属としては、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト等が挙げられる。これらのイオン性の遷移金属の中でも、銅、銀、金は、電気抵抗が低く、腐食に強い導電性パターンが得られることから好ましい。また、前記めっき下地層(C)は多孔質状のものが好ましく、この場合、その層中に空隙を有する。
【0067】
本発明の積層体の製造方法としては、まず、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の上に、前記応力緩和層(B)を形成し、その後、ナノサイズの金属ナノ粒子(c)を含有する流動体を塗工し、流動体中に含まれる有機溶剤等を乾燥により除去することによって、前記めっき下地層(C)を形成した後、電解又は無電解めっきにより後述する金属めっき層(D)を形成する方法が挙げられる。この前記めっき下地層(C)の形成の際、前記金属ナノ粒子(c)を含有する流動体を前記応力緩和層(B)の上に塗工、乾燥して、めっき下地層(C’)を形成した後、焼成して前記めっき下地層(C’)中に存在する分散剤を含む有機化合物を除去して空隙を形成して多孔質状の前記めっき下地層(C)とすることで、後述する金属めっき層(D)との密着性が向上することから好ましい。
【0068】
前記めっき下地層(C)の形成に用いる前記金属ナノ粒子(c)の形状は、粒子状又繊維状のものが好ましい。また、前記金属ナノ粒子(c)の大きさはナノサイズのものを用いるが、具体的には、前記金属ナノ粒子(c)の形状が粒子状の場合は、微細なメッシュ状の導電性パターンを形成でき、抵抗値をより低減できるため、平均粒子径が1~100nmの範囲が好ましく、1~50nmの範囲がより好ましい。なお、前記「平均粒子径」は、前記導電性物質を分散良溶媒にて希釈し、動的光散乱法により測定した体積平均値である。この測定にはマイクロトラック社製「ナノトラックUPA-150」を用いることができる。
【0069】
一方、前記金属ナノ粒子(c)の形状が繊維状の場合は、微細なメッシュ状の導電性パターンを形成でき、抵抗値をより低減できるため、繊維の直径が5~100nmの範囲が好ましく、5~50nmの範囲がより好ましい。また、繊維の長さは、0.1~100μmの範囲が好ましく、0.1~30μmの範囲がより好ましい。
【0070】
前記流動体中の前記金属ナノ粒子(c)の含有率は、1~90質量%の範囲が好ましく、1~60質量%の範囲がより好ましく、さらに1~10質量%の範囲がより好ましい。
【0071】
前記流動体に配合される成分としては、前記金属ナノ粒子(c)を溶媒中に分散させるための分散剤や溶媒、また必要に応じて、後述する界面活性剤、レベリング剤、粘度調整剤、成膜助剤、消泡剤、防腐剤等が挙げられる。
【0072】
前記金属ナノ粒子(c)を溶媒中に分散させるため、低分子量又は高分子量の分散剤を用いることが好ましい。前記分散剤としては、例えば、ドデカンチオール、1-オクタンチオール、トリフェニルホスフィン、ドデシルアミン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン;ミリスチン酸、オクタン酸、ステアリン酸等の脂肪酸;コール酸、グリシルジン酸、アビンチン酸等のカルボキシル基を有する多環式炭化水素化合物などが挙げられる。これらの中でも、前記めっき下地層(C)を多孔質状とすることで前記めっき下地層(C)と後述する金属めっき層(D)との密着性を向上できることから、高分子分散剤が好ましく、この高分子分散剤としては、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン等のポリアルキレンイミン、前記ポリアルキレンイミンにポリオキシアルキレンが付加した化合物、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、前記ウレタン樹脂や前記アクリル樹脂にリン酸基を含有する化合物等が挙げられる。
【0073】
上記のように、前記分散剤に高分子分散剤を用いることで、低分子分散剤と比較して、前記めっき下地層(C)中の分散剤を除去して多孔質状とし、その空隙サイズを大きくすることができ、ナノオーダーからサブミクロンオーダーの大きさの空隙を形成することができる。この空隙に後述する金属めっき層(D)を構成する金属が充填されやすくなり、充填された金属がアンカーとなり、前記めっき下地層(C)と後述する金属めっき層(D)との密着性を大幅に向上することができる。
【0074】
前記金属ナノ粒子(c)を分散させるために必要な前記分散剤の使用量は、前記金属ナノ粒子(c)100質量部に対し、0.01~50質量部が好ましく、0.01~10質量部がより好ましい。
【0075】
また、前記めっき下地層(C)と後述する金属めっき層(D)との密着性をより向上する目的で、焼成により分散剤を除去して多孔質状の前記めっき下地層(C)を形成する場合は、前記ナノサイズの金属粉100質量部に対し、0.1~10質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましい。
【0076】
前記流動体に用いる溶媒としては、水性媒体や有機溶剤を用いることができる。前記水性媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等が挙げられる。また、前記有機溶剤としては、アルコール化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。
【0077】
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブチルアルコール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ステアリルアルコール、アリルアルコール、シクロヘキサノール、テルピネオール、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0078】
また、前記流動体には、上記の金属粉、溶媒の他に、必要に応じてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、イソプレングリコール等を用いることができる。
【0079】
前記界面活性剤としては、一般的な界面活性剤を用いることができ、例えば、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ヘキサメタリン酸塩等が挙げられる。
【0080】
前記レベリング剤としては、一般的なレベリング剤を用いることができ、例えば、シリコーン系化合物、アセチレンジオール系化合物、フッ素系化合物等が挙げられる。
【0081】
前記粘度調整剤としては、一般的な増粘剤を用いることができ、例えば、アルカリ性に調整することによって増粘可能なアクリル重合体や合成ゴムラテックス、分子が会合することによって増粘可能なウレタン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、水添加ヒマシ油、アマイドワックス、酸化ポリエチレン、金属石鹸、ジベンジリデンソルビトールなどが挙げられる。
【0082】
前記成膜助剤としては、一般的な成膜助剤を用いることができ、例えば、アニオン系界面活性剤(ジオクチルスルホコハク酸エステルソーダ塩など)、疎水性ノニオン系界面活性剤(ソルビタンモノオレエートなど)、ポリエーテル変性シロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0083】
前記消泡剤としては、一般的な消泡剤を用いることができ、例えばシリコーン系消泡剤や、ノニオン系界面活性剤、ポリエーテル,高級アルコール、ポリマー系界面活性剤等が挙げられる。
【0084】
前記防腐剤としては、一般的な防腐剤を用いることができ、例えば、イソチアゾリン系防腐剤、トリアジン系防腐剤、イミダゾール系防腐剤、ピリジン系防腐剤、アゾール系防腐剤、ヨード系防腐剤、ピリチオン系防腐剤等が挙げられる。
【0085】
前記流動体の粘度(25℃でB型粘度計を用いて測定した値)は、0.1~500,000mPa・sの範囲が好ましく、0.5~10,000mPa・sの範囲がより好ましい。また、前記流動体を、後述するインクジェット印刷法、凸版反転印刷等の方法によって塗工(印刷)する場合には、その粘度は5~20mPa・sの範囲が好ましい。
【0086】
前記応力緩和層(B)の上に前記流動体を塗工や印刷する方法としては、例えば、インクジェット印刷法、反転印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法、パッド印刷、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等が挙げられる。
【0087】
これらの塗工方法の中でも、電子回路等の高密度化を実現する際に求められる0.01~100μm程度の細線状でパターン化された前記めっき下地層(C)を形成する場合には、インクジェット印刷法、反転印刷法を用いることが好ましい。
【0088】
前記インクジェット印刷法としては、一般にインクジェットプリンターといわれるものを用いることができる。具体的には、コニカミノルタEB100、XY100(コニカミノルタIJ株式会社製)、ダイマティックス・マテリアルプリンターDMP-3000、ダイマティックス・マテリアルプリンターDMP-2831(富士フィルム株式会社製)等が挙げられる。
【0089】
また、反転印刷法としては、凸版反転印刷法、凹版反転印刷法が知られており、例えば、各種ブランケットの表面に前記流動体を塗工し、非画線部が突出した版と接触させ、前記非画線部に対応する流動体を前記版の表面に選択的に転写させることによって、前記ブランケット等の表面に前記パターンを形成し、次いで、前記パターンを、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の上(表面)に転写させる方法が挙げられる。
【0090】
また、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)が成形品の場合のパターンの印刷については、パッド印刷法が知られている。凹版の上にインクを載せ、スキージで書き取ることでインクを均質に凹部に充填し、インクを載せた版上に、シリコンゴムやウレタンゴム製のパッドを押し当て、パターンをパッド上に転写し、成形品へ転写させる方法が挙げられる。
【0091】
前記流動体を塗工や印刷した後の乾燥温度としては、50℃~400℃の範囲が好ましく、80℃~340℃の範囲がより好ましく、120℃~320℃の範囲が好ましく、150℃~300℃の範囲が好ましく、180℃~280℃の範囲がさらに好ましい。
【0092】
前記めっき下地層(C)の単位面積当たりの質量は、1~10,000mg/m2の範囲が好ましく、1~5,000mg/m2の範囲が好ましい。前記めっき下地層(C)に対し、無電解めっきを施す場合は、前記めっき下地層(C)を触媒として使うため、前記めっき下地層(C)の膜厚が薄くて良く、具体的には、1~5,000mg/m2が好ましく、10~1,000mg/m2が好ましく、10~500mg/m2が好ましく、50~500mg/m2がより好ましい。一方、前記めっき下地層(C)に電解めっきを施す場合は、前記めっき下地層(C)に導電性があり、低抵抗である方が良いため、膜厚が厚い方が良く、100~10,000mg/m2が好ましく、300~5,000mg/m2が好ましく、後述する金属めっき層(D)と前記めっき下地層(C)の密着性や、めっき下地層(C)を薄くし低コスト化するため、500~2,000mg/m2がより好ましい。
【0093】
前記めっき下地層(C)に電解めっきを施す場合の前記めっき下地層(C)の表面抵抗は、電解めっきを均質に形成するため、低抵抗であることが好ましい。表面抵抗は、0.1~10,000Ω/□の範囲であることが好ましく、0.15~1,000Ω/□の範囲がより好ましく、0.15~500Ω/□の範囲がより好ましく、0.2~100Ω/□の範囲がより好ましく、0.2~10Ω/□の範囲がより好ましく、0.2~5Ω/□の範囲がさらに好ましい。
【0094】
また、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の上に前記応力緩和層(B)と前記めっき下地層(C)を形成する方法として、仮支持体(E)に前記めっき下地層(C)と前記応力緩和層(B)を順次積層させることで、転写用積層体を作製し、前記転写用積層体の応力緩和層(B)の面を、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の少なくとも一面に貼り合わせる方法がある。
転写法で張り合わせる方法は、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の上に既存のドライプロセスで実施するスパッタ法やウエットプロセスで塗工する方法と比較し、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の上に、前記応力緩和層(B)と前記めっき下地層(C)を熱圧着により一括で形成することを可能にする簡便な方法であるため、生産性に優れており、製造コストを抑えられる。更に、熱圧着により圧力を加えることで前記応力緩和層(B)に前記めっき下地層(C)を埋没させることにより、前記応力緩和層(B)と前記めっき下地層(C)の界面の密着力を強固にする観点から好ましい。
【0095】
前記仮支持体(E)としては、前記転写用積層体を貼り合わせた後、最終的に剥がす必要があるため、前記仮支持体(E)と前記めっき下地層(C)は界面で容易に剥離できるものを選択することが好ましい。例えば、高分子フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート、及びポリブチレンナフタレートなどの芳香族ポリエステル;ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレンー六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレンーエチレン共重合体、フッ化ビニリデン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレンーエチレン共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロジオキシソール共重合体、フッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂;ポリメチルペンテン(TPX)、ポリプロピレン(PP)[二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、無軸延伸ポリプロピレン(CPP)も含む]、及びポリエチレン(PE)[高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む]などのオレフィン樹脂;ポリスチレン(PS);ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリイミド、透明ポリイミドなどのポリイミド樹脂;ポリアミドイミド、ポリアミドなどのポリアミド樹脂;ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ABSとポリカーボネートとのポリマーアロイ、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、エポキシ樹脂などが上げられる。中でも、芳香族ポリエステル、ポリエチレン、オレフィン樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、LCP、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレンを前記仮支持体(E)として用いることが好ましい。
【0096】
また、前記仮支持体(E)として、金属を用いることができ、銅、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、ステンレス、ベリリウム銅、燐青銅、ニッケル、ニクロム、ニッケル合金、錫、亜鉛、鉛、金、亜鉛、鉛、タンタル、モリブデン、ニオブ、鉄、銀、を用いることが出来る。その他、無機基材としては、シリコン、セラミックス、ガラス等からなる前記仮支持体(E)として用いることができる。
【0097】
前記仮支持体(E)の形状は、特に限定されるものではないが、フィルム状又はシート状の場合が取り扱い易い。前記仮支持体(E)の膜厚としては、通常、1~5,000μmの範囲が好ましく、1~300μmの範囲がより好ましく、1~200μmの範囲がより好ましく、1~100μmの範囲がより好ましく、1~50μmの範囲がさらに好ましい。前記仮支持体(E)は、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)に貼り合わせ、めっき下地層(C)と応力緩和層(B)を前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)に転写し積層した後、不要となるため、作業性を失わない程度に薄膜であることが好ましい。
【0098】
前記仮支持体(E)の表面は、転写用積層体からめっき下地層(C)と応力緩和層(B)を転写し易くするため、平滑であることが好ましい。具体的には、レーザー顕微鏡で測定した時の表面粗さ(最大高さSz)が0.001~30μmの範囲が好ましく、0.01~20μmの範囲が好ましく、0.05~10μmの範囲がより好ましい。なお、表面粗さ(最大高さSz)とは、ISO 25178に記された評価方法で測定したものであり、表面の最も高い点から最も低い点までの距離を表す。
【0099】
また、これら前記仮支持体(E)の表面に離型層を形成したものを用いることができる。離型層は、前記仮支持体(E)に、シリコーン系離型剤や、非シリコーン系離型剤を塗工することで形成できる。非シリコーン系離型剤としては、アルキド樹脂 、メラミン樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、尿素樹脂、ポリオレフィン、パラフィン、シリカ複合アクリル樹脂、シリカ複合メラミン樹脂、シリカ複合ウレタン樹脂、シリカ複合エポキシ系樹脂、シリカ複合フェノール樹脂、シリカ複合ポパール樹脂、シリカ複合ポリスチレン系樹脂、シリカ複合ポリ酢酸ビニル系樹脂、シリカ複合ポリイミド系樹脂、シリカ複合ポリアミドイミド系樹脂を用いることができる。シリコーン樹脂の離型層は、前記転写用積層体の前記仮支持体(E)を剥がす際に、前記めっき下地層(C)の表面にシリコーン樹脂が移行し、後述する前記めっき下地層(C)へ金属めっき層(D)を形成する際に、前記めっき下地層(C)と前記金属めっき層(D)の密着性を阻害する。そのため、離型層としては、非シリコーン系離型剤を用いることが好ましく、ポリオレフィン、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、シリカ複合アクリル樹脂、シリカ複合メラミン樹脂、シリカ複合ウレタン樹脂、シリカ複合エポキシ系樹脂、シリカ複合フェノール樹脂、シリカ複合ポパール樹脂、シリカ複合ポリスチレン系樹脂、シリカ複合ポリ酢酸ビニル系樹脂、シリカ複合ポリイミド系樹脂、シリカ複合ポリアミドイミド系樹脂を用いることが好ましい。
【0100】
離型層の膜厚は、離型性を確保できれば特に限定されることはないが、離型層が前記めっき下地層(C)の表面に付着するのを防止するため薄膜であることが好ましい。具体的には、0.01~50μmが好ましく、さらに0.01~10μmがより好ましく、さらに0.01~1μmがより好ましい。
【0101】
前記仮支持体(E)としては、金属を用いることが好ましい。後述する前記仮支持体(E)の表面に、金属ナノ粒子を用いた前記めっき下地層(C)を形成する際、金属を用いると高分子フィルムを用いた場合に比べ、より高温で乾燥することができ、めっき下地層(C)の表面抵抗を下げることで、めっき下地層自体の導電性を上げることができる。また、導電性パターンを形成する工程において、後述する前記転写用積層体の応力緩和層(B)の面を前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)に貼り合わせたあと、前記仮支持体(E)の面から両面を貫通する貫通孔、もしくは、内層の導電性パターンまで非貫通孔を形成する際、ドリルやレーザーで孔を形成することになるが、高分子フィルムを前記仮支持体(A)として用いた場合は、孔開け加工の際、高分子のスミアが発生し、貫通孔もしくは非貫通孔を導電化する工程で、めっき析出不具合が発生する場合がある。一方、金属を使うと、従来のプリント基板のドリルやレーザーを用いた孔開け加工の工法が適用でき、前記仮支持体(E)としては、銅やアルミニウムを用いることが好ましい。
【0102】
前記仮支持体(E)に後述する前記めっき下地層(C)を塗工する際、必要に応じて、前記仮支持体(E)の表面に、塗料を濡れ易くする目的で表面処理をしてもよい。具体的には、コロナ放電処理等のプラズマ放電処理、紫外線処理等の乾式処理、水、酸・アルカリ等の水溶液又は有機溶剤等を用いる湿式処理等の方法が挙げられる。前記仮支持体(E)を過剰に表面処理をすると、後述する前記仮支持体(E)と前記めっき下地層(C)の界面で剥離しにくくなるため、適度に表面処理を実施することが好ましい。
【0103】
前記仮支持体(E)の上に前記めっき下地層(C)を塗工や印刷する方法としては、例えば、インクジェット印刷法、反転印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、パッド印刷法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法、ロータリーコート法、キャピラリーコート法、マイクログラビア塗工法、ドクターロール方式等が挙げられる。
【0104】
前記仮支持体(E)の上に前記めっき下地層(C)を塗工する際、塗工や印刷した後の乾燥温度としては、50℃~400℃の範囲が好ましく、80℃~340℃の範囲がより好ましく、120℃~320℃の範囲が好ましく、150℃~300℃の範囲が好ましく、180℃~280℃の範囲がさらに好ましい。
【0105】
前記応力緩和層(B)は、前記仮支持体(E)の表面に形成した前記めっき下地層(C)の一部又は全部に前記応力緩和層(B)を塗工し、前記応力緩和層(B)の塗料中に含まれる有機溶剤を除去することによって形成できる。
【0106】
前記応力緩和層(B)の塗料を塗工する方法としては、例えば、グラビア方式、コーティング方式、スクリーン方式、ローラー方式、ロータリー方式、スプレー方式、キャピラリー方式、ドクターロール方式等の方法が挙げられる。
【0107】
前記応力緩和層(B)の塗料を、前記仮支持体(E)の表面に形成した前記めっき下地層(C)の表面に塗工した後、その塗工層に含まれる有機溶剤を除去する方法としては、例えば、乾燥機を用いて乾燥させ、有機溶剤を揮発させる方法が一般的である。乾燥温度としては、用いた有機溶剤を揮発させることが可能な範囲の温度に設定する必要がある。
【0108】
前記応力緩和層(B)の乾燥温度としては、50℃~400℃の範囲が好ましく、80℃~340℃の範囲がより好ましく、120℃~280℃の範囲が好ましく、150℃~200℃の範囲がさらに好ましい。
【0109】
次に、転写用積層体をケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)に転写する方法について説明する。
転写方法としては、転写用積層体の応力緩和層(B)の面を前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)に、熱と圧力を用いて貼り合わせる方法を用いることができる。特に限定されることはないが、例えば、熱ラミネート法、無溶剤ラミネート法、押し出しラミネート法、ウエットラミネート法、熱ロール転写法、インモールド転写法、プレス法、真空プレス法、水圧転写法等を用いることができる。
【0110】
前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)がフレキシブル材でロールフィルムである場合は、熱ラミネート法、無溶剤ラミネート法、押し出しラミネート法、ウエットラミネート法を用いることが好ましい。特に簡便に処理できることから、熱ラミネート法がより好ましい。一方、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)がリジット材の場合は、枚葉で熱圧着する場合が多いため、プレス法、真空プレス法を用いることが好ましい。
【0111】
熱圧着条件について、加熱条件は、50℃~400℃の範囲が好ましく、80℃~350℃の範囲がより好ましく、80℃~280℃の範囲がより好ましく、100℃~200℃の範囲がより好ましく、120~180℃の範囲がより好ましい。圧力条件としては、0.05MPa~35MPaの範囲が好ましく、0.3MPa~20MPaの範囲がより好ましい。
【0112】
熱圧着の処理時間としては、熱ラミネートの場合、搬送しながらロールの線圧により熱圧着することになるため、1秒以内で処理することになる。一方で、プレスや真空プレスの場合は、1秒~120分の範囲が好ましく、30秒~60分の範囲が好ましく、30秒~15分の範囲がより好ましく、生産性の観点から1分~5分の範囲で処理することが好ましい。
【0113】
また、熱圧着する場合、転写用積層体と前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の間に空気が入り込んだり、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)や転写用積層体から発生するガスで、転写用積層体と前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の間にガスがたまり転写率が低下するため、真空プレスを用いて真空下で熱圧着をすることが好ましい。真空条件としては、絶対圧力として100hPa以下が好ましく、50hPa以下がより好ましく、13hPa以下がより好ましい。加熱条件や圧力条件は、前述と同じ条件で処理することが好ましい。
【0114】
次に、転写用積層体の応力緩和層(B)の面をケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)に貼り合わせ、仮支持体(E)を剥離する方法について説明する。
前記仮支持体(E)を剥離する方法は特に限定されないが、前記熱圧着時に前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)と前記応力緩和層(B)の密着性が低い場合(仮接着状態)は、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)に前記応力緩和層(B)と前記めっき下地層(C)が十分転写せず、一部転写用積層体側に残る場合があるため、剥離する際の前記仮支持体(E)の引き剥がす方向と速度が重要となる。具体的には、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)に対し、90度~180度方向に引き剥がすことが好ましく、120度~180度の範囲で引き剥がすことが好ましく、150度~180度方向に引き剥がすことが好ましい。引き剥がす際は、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)側ではなく、前記仮支持体(E)側を前述の角度で引き剥がすこと好ましい。引き剥がす速度は0.01m/分~20m/分の範囲であることが好ましく、0.05~10m/分の範囲であることがより好ましく、0.5~5m/分の範囲であることがより好ましい。
【0115】
次に、転写用積層体の応力緩和層(B)の面を前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)に貼り合わせ、その後、転写用積層体の前記仮支持体(E)を引き剥がした後の積層体の後処理について説明する。
ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)と応力緩和層(B)の密着性をより向上させるため、熱処理を実施しても良い。熱処理条件としては、80℃~400℃の範囲が好ましく、100℃~350℃の範囲がより好ましく、120℃~325℃の範囲がより好ましく、150℃~300℃の範囲がより好ましい。熱処理時間としては、1秒~168時間の範囲が好ましく、30秒~72時間の範囲がより好ましく、生産性の観点から1分~30分の範囲がさらに好ましい。
【0116】
次の工程では、めっき下地層(C)の表面に、後述する金属めっき層(D)やパターンレジストを形成するため、これらの密着性を低下させる成分を洗浄する洗浄処理を実施することが好ましい。密着性を低下させる成分としては、例えば、仮支持体(E)が樹脂フィルムの場合はフィルム中に存在しフィルム表面にブリードしてくるオリゴマー成分、仮支持体(E)に離型層を形成した場合、離型剤の成分が一部めっき下地層(C)に移染した成分、金属の仮支持体(E)の場合は仮支持体上の金属酸化物の皮膜がある。前記洗浄処理としては、めっき下地層(C)の表面に存在する有機物の加熱による酸化分解、コロナ放電処理等のプラズマ放電処理、紫外線処理等の乾式処理、水、酸・アルカリ等の水溶液、オゾンを含む水(オゾンナノバブル)、または有機溶剤等を用いる湿式処理等の方法が挙げられる。
【0117】
また、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の少なくとも一面に、シランカップリング層(F)と前記応力緩和層(B)と前記めっき下地層(C)を積層させる方法がある。
シランカップリング層(F)を形成する方法は、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)と前記応力緩和層(B)と反応し、共有結合を形成するため、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)とシランカップリング層(F)の界面、前記応力緩和層(B)とシランカップリング層(F)の界面の密着性をより向上することが出来る。
【0118】
前記シランカップリング層(F)としては、例えば、アミノシラン化合物、エポキシシラン化合物、(メタ)アクリルシラン化合物、ビニルシラン化合物、メルカプトンシラン化合物、アクリルシラン化合物等があげられる。特に、めっき密着性の長期信頼性及び下地密着性の長期信頼性を向上させる観点から、アミノシラン化合物が好ましい。
【0119】
前記シランカップリング層(F)の厚みは密着性の観点から有機分子の化学吸着過程で固体表面上に形成された単層薄膜であることが好ましく、具体的に、0.1~100nmが好ましく、さらに0.2~3nmの範囲が好ましく、1~2nmの範囲がより好ましい。
【0120】
前記シランカップリング層(F)を前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の表面に塗工する方法としては、例えば、グラビア方式、コーティング方式、スクリーン方式、ローラー方式、ロータリー方式、ディッピング方式、スプレー方式等の方法が挙げられる。
【0121】
前記シランカップリング層(F)の表面は、前記応力緩和層(B)との密着性をより一層向上することを目的として、例えば、コロナ放電処理法等のプラズマ放電処理法、紫外線処理法等の乾式処理法、水や酸性又はアルカリ性薬液、有機溶剤等を用いた湿式処理法によって、表面処理されていることが好ましい。
【0122】
前記シランカップリング層(F)を前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の表面に塗工した後、その塗工層に含まれる溶媒を除去する方法としては、例えば、乾燥機を用いて乾燥させ、前記溶媒を揮発させる方法が一般的である。乾燥温度としては、前記溶媒を揮発させることが可能で、かつ前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)に熱変形等の悪影響を与えない範囲の温度に設定すればよい。
【0123】
また、前記シランカップリング層(F)上に、前記応力緩和層(B)とめっき下地層(C)を順次積層させる方法として、前述した塗工により前記応力緩和層(B)と前記めっき下地層(C)を順次積層する方法と、前述した前記仮支持体(E)に前記応力緩和層(B)と前記めっき下地層(C)を順次積層させることで、転写用積層体を作製し、前記転写用積層体の応力緩和層(B)の面を、前記シランカップリング層(F)上に張り合わせる方法がある。
転写法で張り合わせる方法は、塗工方式と比べて、前記応力緩和層(B)の溶媒に前記シランカップリング層(F)が曝されない為、めっき密着性の長期信頼性に優れている観点から好ましい。
【0124】
本発明の積層体を後述する金属配線として用いる場合、前記めっき下地層(C)、金属めっき層(D)等を後述するエッチングにより除去し、金属配線のパターンを形成して金属配線を作製する方法がある。
【0125】
本発明の積層体を構成する金属めっき層(D)は、例えば、前記積層体を導電性パターン等に用いる場合に、長期間にわたり断線等を生じることなく、良好な通電性を維持可能な信頼性の高い配線パターンを形成することを目的として設けられる層である。
【0126】
前記金属めっき層(D)を構成する金属としては、銅、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等が挙げられる。これらの中でも、電気抵抗が低く、腐食に強い導電性パターンが得られることから銅が好ましい。
【0127】
本発明の積層体においては、前記めっき下地層(C)中に存在する空隙に金属めっき層(D)を構成する金属が充填されていることが好ましく、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)と前記めっき下地層(C)との界面近傍に存在する前記めっき下地層(C)中の空隙まで、前記金属めっき層(D)を構成する金属が充填されているものが、前記めっき下地層(C)と前記金属めっき層(D)との密着性がより向上するため好ましい。
【0128】
前記金属めっき層(D)は、前記めっき下地層(C)の上に形成される層であるが、その形成方法としては、めっき処理によって形成する方法が好ましい。このめっき処理としては、例えば、電解めっき法、無電解めっき法等の湿式めっき法、スパッタリング法、真空蒸着法等の乾式めっき法などが挙げられる。また、これらのめっき法を2つ以上組み合わせて、前記金属めっき層(D)を形成しても構わない。
【0129】
上記の無電解めっき法は、例えば、前記めっき下地層(C)を構成する金属に、無電解めっき液を接触させることで、無電解めっき液中に含まれる銅等の金属を析出させ金属皮膜からなる無電解めっき層(皮膜)を形成する方法である。
【0130】
前記無電解めっき液としては、例えば、銅、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等の金属と、還元剤と、水性媒体、有機溶剤等の溶媒とを含有するものが挙げられる。
【0131】
前記還元剤としては、例えば、ジメチルアミノボラン、次亜燐酸、次亜燐酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、フェノール等が挙げられる。
【0132】
また、前記無電解めっき液としては、必要に応じて、酢酸、蟻酸等のモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマール酸等のジカルボン酸化合物;リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸化合物;グリシン、アラニン、イミノジ酢酸、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸化合物;イミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンジ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸等のアミノポリカルボン酸化合物などの有機酸、又はこれらの有機酸の可溶性塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物等の錯化剤を含有するものを用いることができる。
【0133】
前記無電解めっき液は、20~98℃の範囲で用いることが好ましい。
【0134】
前記電解めっき法は、例えば、前記めっき下地層(C)を構成する金属、又は、前記無電解処理によって形成された無電解めっき層(皮膜)の表面に、電解めっき液を接触した状態で通電することにより、前記電解めっき液中に含まれる銅等の金属を、カソードに設置した前記めっき下地層(C)を構成する導電性物質又は前記無電解処理によって形成された無電解めっき層(皮膜)の表面に析出させ、電解めっき層(金属皮膜)を形成する方法である。
【0135】
前記電解めっき液としては、例えば、銅、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等の金属の硫化物と、硫酸と、水性媒体とを含有するもの等が挙げられる。具体的には、硫酸銅と硫酸と水性媒体とを含有するものが挙げられる。
【0136】
前記電解めっき液は、20~98℃の範囲で用いることが好ましい。
【0137】
上記電解めっき処理法では、毒性の高い物質を用いることなく、作業性がよいため、電解めっき法を用いた銅からなる前記金属めっき層(D)を形成することが好ましい。
【0138】
また、前記乾式めっき処理工程としては、スパッタリング法、真空蒸着法等を用いることができる。前記スパッタリング法は、真空中で不活性ガス(主にアルゴン)を導入し、金属めっき層(D)を形成材料に対してマイナスイオンを印加してグロー放電を発生させ、次いで、前記不活性ガス原子をイオン化し、高速で前記金属めっき層(D)の形成材料の表面にガスイオンを激しく叩きつけ、前記金属めっき層(D)の形成材料を構成する原子及び分子を弾き出し勢いよく前記めっき下地層(C)の表面に付着させることにより金属めっき層(D)を形成する方法である。
【0139】
スパッタリング法による前記金属めっき層(D)の形成材料としては、例えば、クロム、銅、チタン、銀、白金、金、ニッケル-クロム合金、ステンレス、銅-亜鉛合金、インジウムチンオキサイド(ITO)、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化ニオブ、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0140】
前記スパッタリング法によりめっき処理する際には、例えば、マグネトロンスパッタ装置等を用いることができる。
【0141】
前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の上に直接、厚さ0.05μm~100μm以内の金属めっき層(D)を形成する場合、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)にクラックや反りが生じるが、本発明を用いることで、クラックや反りを抑制することができる。
【0142】
前記金属めっき層(D)の厚さは前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)に発生するクラックや反りの観点から、0.05~100μmの範囲が好ましく、さらに1~50μmがより好ましく、さらに5~18μmがより好ましい。前記金属めっき層(D)の厚さは、前記金属めっき層(D)の形成する際のめっき処理工程における処理時間、電流密度、めっき用添加剤の使用量等を制御することによって調整することができる。
【0143】
前記金属めっき層(D)のパターニング方法としては、例えば、サブトラクティブ法、セミアディティブ法等のフォトリソ-エッチング法、前記めっき下地層(C)の印刷パターン上にめっきする方法等が挙げられる。
【0144】
前記サブトラクティブ法は、予め製造した本発明の積層体を構成する金属めっき層(D)の上に、所望のパターン形状に対応した形状のエッチングレジスト層を形成し、その後の現像処理によって、前記レジストの除去された部分の前記めっき下地層(C)、前記金属めっき層(D)等を薬液で溶解し除去することによって、所望のパターンを形成する方法である。前記薬液としては、塩化銅、塩化鉄等を含有する薬液を用いることができる。
【0145】
前記セミアディティブ法は、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の両面又は片面に前記応力緩和層(B)及び前記めっき下地層(C)を形成し、前記めっき下地層(C)の表面に、所望のパターンに対応した形状のめっきレジスト層を形成し、次いで、電解めっき法、無電解めっき法又はそれらの組み合わせによって金属めっき層(D)を形成した後、前記めっきレジスト層とそれに接触した前記めっき下地層(C)とを薬液等に溶解し除去することによって、所望のパターンを形成する方法である。
【0146】
また、前記めっき下地層(C)の印刷パターン上にめっきする方法は、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の両面又は片面に形成した前記応力緩和層(B)の上に、インクジェット法、反転印刷法等で前記めっき下地層(C)のパターンを印刷し、前記めっき下地層(C)の表面に、電解めっき法、無電解めっき法又はそれらの組み合わせによって前記金属めっき層(D)を形成することによって、所望のパターンを形成する方法である。
【0147】
上記の方法で得られた本発明の積層体は、従来の蒸着法やスパッタ法で銅層を形成する方法に比べ、前記ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)と前記金属めっき層(D)の密着性に極めて優れ、導電性パターンを形成した後のクラック耐性に優れる。また、本発明の積層体を用いて導電性パターンを形成した際、効果的に応力緩和層(B)が導電性パターンの残留応力を低減することでの銅膜厚の厚膜化が出来る特徴がある。従って、本発明の積層体は、例えば、プリント配線板、リジットプリント配線版、フレキシブルプリント配線板、パッケージ基板、金属基板、タッチパネル用メタルメッシュ、有機太陽電池、有機EL素子、LED電極用配線基板、有機トランジスタ、非接触ICカード等のRFID、電磁波シールド、LED照明基材、デジタルサイネージ、光電融合デバイス、インターポーザなどの電子部材として好適に用いることができる。
【実施例0148】
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例および比較例において、「部」および「%」は、いずれも質量基準である。
【0149】
[調製例1:応力緩和層(B)形成用の塗工液(1)の調製]
フェノキシ樹脂4250(三菱ケミカル株式会社製ビスフェノールA/ビスフェノールF混合タイプ、分子量60,000、固形分100質量%)を60質量部、アミノトリアジンノボラック樹脂(DIC株式会社製「フェノライトLA-7052」、固形分60質量%)33質量部、エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON EXA-830CRP」;ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ基当量162g/当量)17質量部、トリメリット酸無水物を3質量部、および、硬化触媒として四国化成株式会社製「TBZ」0.5質量部を混合し、シクロヘキサノンを用いて不揮発分が2質量%となるように希釈し、均一に混合することで、応力緩和層(B)形成用の塗工液(1)を得た。
【0150】
[調製例2:応力緩和層(B)形成用の塗工液(2)の調製]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリエステルポリオール(1,4-シクロヘキサンジメタノールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られたポリエステルポリオール)100質量部、2,2―ジメチロールプロピオン酸17.6質量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール21.7質量部及びジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート106.2質量部を、メチルエチルケトン178質量部の混合溶剤中で反応させることによって、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を得た。
次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にトリエチルアミン13.3質量部を加えて、前記ウレタンプレポリマーが有するカルボキシル基を中和し、さらに水380質量部を加えて十分に攪拌することにより、ウレタンプレポリマーの水性分散液を得た。
上記で得られたウレタンプレポリマーの水性分散液に、25質量%エチレンジアミン水溶液8.8質量部を加え、攪拌することによって、ウレタンプレポリマーを鎖伸長した。次いでエージング・脱溶剤することによって、ウレタン樹脂の水性分散液(不揮発分30質量%)を得た。前記ウレタン樹脂の重量平均分子量は53,000であった。
次に、攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、単量体混合物滴下用滴下漏斗、重合触媒滴下用滴下漏斗を備えた反応容器に脱イオン水140質量部、上記で得られたウレタン樹脂の水分散液100質量部を入れ、窒素を吹き込みながら80℃まで昇温した。その後、攪拌しながら、メタクリル酸メチル60質量部、アクリル酸n-ブチル30質量部及びN-n-ブトキシメチルアクリルアミド10質量部からなる単量体混合物と、0.5質量%過硫酸アンモニウム水溶液20質量部とを別々の滴下漏斗から、反応容器内温度を80℃に保ちながら120分間かけて滴下した。
滴下終了後、さらに同温度にて60分間攪拌した後、反応容器内の温度を40℃に冷却して、不揮発分が2質量%になるように脱イオン水で希釈した後、200メッシュ濾布で濾過することによって、前記ウレタン樹脂をシェル層とし、メタクリル酸メチル等を原料とするビニル樹脂をコア層とするコア・シェル型複合樹脂である応力緩和層(B)形成用の塗工液(2)を得た。
【0151】
[調製例3:応力緩和層(B)形成用の塗工液(3)の調製]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された反応容器中で、2,2-ジメチロールプロピオン酸6.3質量部と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのヌレート体71.1質量部とを、メチルエチルケトン中で反応させることによってイソシアネート化合物を調製した後、前記反応容器にブロック剤としてフェノール17.8質量部を供給し反応させることによって、ブロックポリイソシアネートの溶剤溶液を調製した。
次に、前記ブロックポリイソシアネートの溶剤溶液にトリエチルアミンを4.8質量部加えることで、前記ブロックポリイソシアネートが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水400質量部を加え十分に攪拌した後、前記メチルエチルケトンを留去することによって、脱イオン水を用いて不揮発分が2質量%となるように希釈し均一に混合することで、前記ブロックポリイソシアネートと水とを含有する応力緩和層(B)形成用の塗工液(3)を得た。
【0152】
[調製例4:めっき下地層(C)形成用の塗工液(1)の調製]
窒素雰囲気下、メトキシポリエチレングリコール(数平均分子量2,000)20質量部、ピリジン8.0質量部およびクロロホルム20mlを含む混合物に、p-トルエンスルホン酸クロライド9.6質量部を含むクロロホルム(30ml)溶液を、氷冷撹拌しながら30分間滴下した後、浴槽温度40℃で4時間攪拌し、クロロホルム50mlを混合した。
次いで、得られた生成物を、5質量%塩酸水溶液100mlで洗浄し、次いで飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで洗浄し、次いで飽和食塩水溶液100mlで洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、濾過、減圧濃縮し、ヘキサンで数回洗浄した後、濾過し、80℃で減圧乾燥することによって、p-トルエンスルホニルオキシ基を有するメトキシポリエチレングリコールを得た。
p-トルエンスルホニルオキシ基を有するメトキシポリエチレングリコール5.39質量部、ポリエチレンイミン(アルドリッチ社製、分子量25,000)20質量部、炭酸カリウム0.07質量部およびN,N-ジメチルアセトアミド100mlを混合し、窒素雰囲気下、100℃で6時間攪拌した。
次いで、酢酸エチルとヘキサンとの混合溶液(酢酸エチル/ヘキサンの体積比=1/2)300mlを加え、室温で強力攪拌した後、生成物の固形物を濾過した。その固形物を、酢酸エチルとヘキサンの混合溶液(酢酸エチル/ヘキサンの体積比=1/2)100mlを用いて洗浄した後、減圧乾燥することによって、ポリエチレンイミンにポリエチレングリコールが結合した化合物を得た。
得られたポリエチレンイミンにポリエチレングリコールが結合した化合物を0.592質量部含む水溶液138.8質量部と、酸化銀10質量部とを混合し、25℃で30分間攪拌した。次いで、ジメチルエタノールアミン46質量部を攪拌しながら徐々に加え、25℃で30分間攪拌した。続いて、10質量%アスコルビン酸水溶液15.2質量部を攪拌しながら徐々に加え20時間攪拌を続けることによって銀の分散体を得た。
得られた銀の分散体にイソプロピルアルコール200mlとヘキサン200mlの混合溶剤を加え2分間攪拌した後、3,000rpmで5分間遠心濃縮を行った。上澄みを除去した後、沈殿物にイソプロピルアルコール50mlとヘキサン50mlの混合溶剤を加えて2分間攪拌した後、2,000rpm10分間遠心濃縮を行った。上澄みを除去した後、沈殿物にさらに水20質量部を加えて2分間攪拌して、減圧下有機溶剤を除去した。さらに水10質量部を加えて攪拌分散した後、該分散体を-40℃の冷凍機に1昼夜放置して凍結し、これを凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製 FDU-2200)で24時間処理することによって、灰緑色の金属光沢があるフレーク状の塊からなる塩基性窒素原子含有基を有する分散剤を含有する銀粒子を得た。
得られた塩基性窒素原子含有基を有する分散剤を含有する銀粒子の粉末を、エタノール45質量部と、イオン交換水55質量部との混合溶媒に分散させて、5質量%のめっき下地層(C)形成用の塗工液(1)を調製した。得られた銀粒子について、電気炉で500℃1時間加熱した灰分から分散剤の割合を計算した結果、銀固形分100質量%に対し5質量%であることを確認した。
【0153】
<調整例5:転写用積層体(1)の調整>
離型フィルム(東洋紡株式会社製「TN-200」、離型PETフィルム;厚さ38μm)の離型層を形成している面に、調整例4で得られためっき下地層(C)形成用の塗工液(1)を、卓上型小型コーター(RKプリントコートインストルメント社製「Kプリンティングプローファー」)を用いて塗工し、150℃で5分間乾燥することによって、前記めっき下地層(C)に相当する銀層を乾燥後の厚さが0.1μmとなるように塗工した。その後、調整例1で得られた応力緩和層(B)形成用の塗工液(1)を、卓上型小型コーター(RKプリントコートインストルメント社製「Kプリンティングプローファー」)を用いて塗工し、180℃で3分間乾燥することによって、前記応力緩和層(B)に相当する層を乾燥後の厚さが0.3μmとなるように塗工することによって、前記仮支持体(E)に相当する離型フィルムの表面に、めっき下地層(C)と応力緩和層(B)を形成し、転写用積層体(1)を得た。
【0154】
<調整例6:転写用積層体(2)の調整>
応力緩和層(B)形成用の塗工液(1)の代わりに応力緩和層(B)形成用の塗工液(2)を使用し、調整例5と同様な方法で転写用積層体(2)を得た。
【0155】
<調整例7:転写用積層体(3)の調整>
応力緩和層(B)形成用の塗工液(1)の代わりに応力緩和層(B)形成用の塗工液(3)を使用し、調整例5と同様な方法で転写用積層体(3)を得た。
【0156】
<調整例8:転写用積層体(4)の調整>
離型フィルム(東洋紡株式会社製「TN-200」、離型PETフィルム;厚さ38μm)の離型層を形成している面に、調整例4で得られためっき下地層(C)形成用の塗工液(1)を、卓上型小型コーター(RKプリントコートインストルメント社製「Kプリンティングプローファー」)を用いて塗工し、150℃で5分間乾燥することによって、前記めっき下地層(C)に相当する銀層を乾燥後の厚さが0.1μmとなるように塗工した。その後、調整例1で得られた応力緩和層(B)形成用の塗工液(1)を、卓上型小型コーター(RKプリントコートインストルメント社製「Kプリンティングプローファー」)を用いて塗工し、180℃で3分間乾燥することによって、前記応力緩和層(B)に相当する層を乾燥後の厚さが0.3μmとなるように塗工した。次いで、調整例2で得られた応力緩和層(B)形成用の塗工液(2)を、卓上型小型コーター(RKプリントコートインストルメント社製「Kプリンティングプローファー」)を用いて塗工し、180℃で3分間乾燥することによって、前記応力緩和層(B)に相当する層を乾燥後の厚さが0.3μmとなるように塗工することによって、前記仮支持体(E)に相当する離型フィルムの表面に、めっき下地層(C)と応力緩和層(B)を形成し、転写用積層体(4)を得た。
【0157】
(実施例1)
厚み500μm無アルカリガラス基材(日本電気硝子製OA-10G)の両面にコロナ処理(春日電機株式会社製「コロナ表面改質評価装置TEC-4AX」、電極-基材間距離0.5mm、100W)を実施した。その後、調整例2で得た応力緩和層(B)形成用の塗工液(2)をバーコーターにて塗工乾燥し、形成した。その後、順次調整例4で得ためっき下地層(C)形成用の塗工液(1)をバーコーターにて塗工乾燥し、形成した。その後、電解銅めっきにより厚み18μmの金属めっき層(D)を形成し、各層が積層された積層体(1)を得た。
【0158】
(実施例2)
厚み500μm無アルカリガラス基材(日本電気硝子製OA-10G)の両面にコロナ処理(春日電機株式会社製「コロナ表面改質評価装置TEC-4AX」、電極-基材間距離0.5mm、100W)を実施した。その後、調整例5で得た転写用積層体(1)の前記応力緩和層(B)が形成された面を、無アルカリガラスの両面に貼り合わせ、ハンドプレス(株式会社東洋精機製作所製「ミニテストプレス」)を用い、プレスの上面熱板をSUS,下面熱板をSUSにして、上面熱板温度を150℃、下面熱板温度を150℃にして、圧力5MPa、10分間熱圧着した。次いで、無アルカリガラスの両面に熱圧着した転写用積層体(1)の離型フィルムのみを剥離することによって、無アルカリガラスの両面に前記応力緩和層(B)とめっき下地層(C)を形成した。その後、電解銅めっきにより厚み18μmの金属めっき層(D)を形成し、各層が積層された積層体(2)を得た。
【0159】
(実施例3)
厚み500μmの無アルカリガラスの代わりに厚み35μmの無アルカリガラスを使用し、実施例2と同様な方法で積層体(3)を得た。
【0160】
(実施例4)
厚み500μmの無アルカリガラスの代わりに厚み500μmのシリコンウエハーを使用し、実施例2と同様な方法で積層体(4)を得た。
【0161】
(実施例5)
厚み500μmの無アルカリガラスの代わりに厚み500μmのアルミナ基板を使用し、実施例2と同様な方法で積層体(5)を得た。
【0162】
(実施例6)
調整例6で作製した転写用積層体(2)を用いる以外は、実施例2と同様な方法で積層体(6)を得た。
【0163】
(実施例7)
調整例7で作製した転写用積層体(3)を用いる以外は、実施例2と同様な方法で積層体(7)を得た。
【0164】
(実施例8)
調整例8で作製した転写用積層体(4)を用いる以外は、実施例2と同様な方法で積層体(8)を得た。
【0165】
(実施例9)
厚み500μmの無アルカリガラスに1wt%のアミノシラン溶液に無アルカリガラス基材を浸漬させた後に、乾燥させシランカップリング剤処理を行った。シランカップリング剤処理をした無アルカリガラス基材を用いた以外は、実施例8と同様な方法で積層体(9)を得た。
【0166】
(比較例1)
厚み500μmの無アルカリガラスの表面に、スパッタリング法で厚み20nmのTi層と厚み200nmのCu層に連続成膜を行い、その後電化銅めっきにより厚み18μmの金属めっき層(D)を形成し、各層が積層された積層体(R1)
【0167】
(比較例2)
厚み500μmの無アルカリガラスの代わりに厚み500μmのシリコンウエハーを使用し、比較例1と同様な方法で積層体(R2)を得た
【0168】
<ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)に入るクラックの評価方法>
電解銅めっきにより形成した積層体について、配線長さが50mm、配線幅がLINE/SPACE=50/50μmになるよう配線加工を行い、ホットオイル試験後の配線板のケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体に発生するクラックの数を光学顕微鏡を用いて測定した。ホットオイル試験の試験条件は液相雰囲気下で260℃の溶液に10秒間浸漬させた後に、20℃の溶液に20秒間浸漬させることを100回繰り返し行った。ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体に入ったクラックの数は加工した配線を10本観察し、一本当たりの平均値を評価した。
A:クラック数が0以上、2未満である。
B:クラック数が2以上、4未満未満である。
C:クラック数が4以上、7未満である。
D:クラック数が7以上、10未満である。
E:クラック数が10以上である。
【0169】
<ケイ素を含む無機化合物又はセラミックからなる支持体(A)の反り量の測定>
電解銅めっきにより形成した積層体について、四隅の反り量をスキマゲージを用いて、測定した。基材として300mm×300mmのガラス基材に銅膜厚18μmにおける測定値を評価した。反り量の値は四隅の反り量の最大値を評価した。
A:反り量が0mm以上、0.1mm未満である。
B:反り量が0.1mm以上、0.3mm未満である。
C:反り量が0.3mm以上、0.5mm未満である。
D:反り量が0.5mm以上、1.0mm未満である。
E:反り量が1.0mm以上である。
【0170】
<常態強度;ピール試験による評価>
前記で得た積層体のピール強度測定は、IPC-TM-650、NUMBER2.4.9に準拠した方法により行った。測定に用いるリード幅は1mm、そのピールの角度は90°とした。なお、ピール強度は、前記めっき層の厚みが厚くなるほど高い値を示す傾向にあるが、本発明でのピール強度の測定は、現在汎用されているめっき層18μmにおける測定値を基準として実施した。
上記で測定した加熱前の剥離強度の値から、下記の基準にしたがって密着性を評価した。
A:剥離強度の値が700N/m以上である。
B:剥離強度の値が500N/m以上、700N/m未満である。
C:剥離強度の値が300N/m以上、500N/m未満である。
D:剥離強度の値が100N/m以上、300N/m未満である。
E:剥離強度の値が100N/m未満である。
【0171】
実施例1~9、比較例1,2のクラック数、反り量、密着性の評価結果を、表1~2に示した。
【0172】
【0173】