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特開2024-89907粘着剤組成物、粘着層、及び粘着シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089907
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着層、及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20240627BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240627BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205435
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】唐沢 久美子
(72)【発明者】
【氏名】小松崎 優紀
(72)【発明者】
【氏名】綱島 啓次
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA02
4J004CB03
4J004CC02
4J004FA05
4J040DF021
4J040DF041
4J040DF051
4J040GA05
4J040GA07
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA26
4J040LA01
4J040NA12
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】接着力、初期粘着力、せん断保持力に優れる粘着層が得られる粘着剤組成物を提供することである。
【解決手段】アクリル重合体(A)と、粘着付与樹脂(B)と、架橋剤(C)とを含有する粘着剤組成物であって、前記アクリル重合体(A)が、n-オクチル(メタ)アクリレート(a1)と、ラウリル(メタ)アクリレート(a2)と、カルボキシル基及び/またはアミド基を有する不飽和単量体(a3)と、水酸基を有する不飽和単量体(a4)とを必須原料とするものであり、単量体原料におけるn-オクチル(メタ)アクリレート(a1)及びラウリル(メタ)アクリレート(a2)の使用量が合計で50~99質量%であることを特徴とする粘着剤組成物を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル重合体(A)と、粘着付与樹脂(B)と、架橋剤(C)とを含有する粘着剤組成物であって、前記アクリル重合体(A)が、n-オクチル(メタ)アクリレート(a1)と、ラウリル(メタ)アクリレート(a2)と、カルボキシル基及び/またはアミド基を有する不飽和単量体(a3)と、水酸基を有する不飽和単量体(a4)とを必須原料とするものであり、単量体原料におけるn-オクチル(メタ)アクリレート(a1)及びラウリル(メタ)アクリレート(a2)の使用量が合計で50~99質量%であることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記アクリル重合体(A)の単量体原料におけるn-オクチル(メタ)アクリレート(a1)とラウリル(メタ)アクリレート(a2)との質量比(a1/a2)が、10/90~90/10である請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記アクリル重合体(A)の重量平均分子量が、50万~200万である請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記アクリル重合体(A)100質量部に対し、前記粘着付与樹脂(B)が10~100質量部である請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の粘着剤組成物から形成される粘着層。
【請求項6】
請求項5記載の粘着層を有する粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着層、及び粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤は、電子機器や自動車等をはじめとする様々な製品の製造場面で使用されており、例えば前記電子機器の製造場面であれば、電子機器を構成する2以上のきょう体の固定、充電池、回路基板等の固定等の用途で使用されている。
【0003】
前記したような場面で使用可能な粘着剤としては、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル単量体を0.01~0.1質量%、脂肪族環式構造を有する(メタ)アクリル単量体を0.5~30質量%、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル単量体を1~7質量%含有する単量体成分を重合して得られるアクリル重合体と架橋剤とを有する粘着剤組成物が知られている(例えば特許文献1参照。)。しかしながら、この粘着剤は耐衝撃性等に優れるものの、初期粘着力が不十分であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6349802号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、接着力、初期粘着力、せん断保持力に優れる粘着層が得られる粘着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、特定のアクリル重合体と、粘着付与樹脂と、架橋剤とを含有する粘着剤組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、アクリル重合体(A)と、粘着付与樹脂(B)と、架橋剤(C)とを含有する粘着剤組成物であって、前記アクリル重合体(A)が、n-オクチル(メタ)アクリレート(a1)と、ラウリル(メタ)アクリレート(a2)と、カルボキシル基及び/またはアミド基を有する不飽和単量体(a3)と、水酸基を有する不飽和単量体(a4)とを必須原料とするものであり、単量体原料におけるn-オクチル(メタ)アクリレート(a1)及びラウリル(メタ)アクリレート(a2)の使用量が合計で50~99質量%であることを特徴とする粘着剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粘着剤組成物は、接着力、初期粘着力、せん断保持力に優れる粘着層が得られることから、電子機器、自動車、建築等に利用される粘着剤として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の粘着剤組成物は、アクリル重合体(A)と、粘着付与樹脂(B)と、架橋剤(C)とを含有する粘着剤組成物であって、前記アクリル重合体(A)が、n-オクチル(メタ)アクリレート(a1)と、ラウリル(メタ)アクリレート(a2)と、カルボキシル基及び/またはアミド基を有する不飽和単量体(a3)と、水酸基を有する不飽和単量体(a4)とを必須原料とするものであり、単量体原料におけるn-オクチル(メタ)アクリレート(a1)及びラウリル(メタ)アクリレート(a2)の使用量が合計で50~99質量%であるものである。
【0010】
n-オクチル(メタ)アクリレート(a1)は、n-オクチルアクリレートとn-オクチルメタクリレートの一方又は両方であるが、n-オクチルアクリレートが好ましい。
【0011】
ラウリル(メタ)アクリレート(a2)は、ラウリルアクリレートとラウリルメタクリレートの一方又は両方であるが、ラウリルアクリレートが好ましい。
【0012】
前記不飽和単量体(a3)は、カルボキシル基有する不飽和単量体とアミド基を有する不飽和単量体の一方又は両方である。
【0013】
前記カルボキシル基を有する不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸;カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のカルボキシアルキル(メタ)アクリレート;イタコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸などが挙げられるが、(メタ)アクリル酸が好ましい。なお、これらの不飽和単量体は、単独で用いることも、2種以上併用することもできる。
【0014】
前記アミド基を有する不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド;N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-(1,1-ジメチル-3-オキソブチル)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド等のN-1置換(メタ)アクリルアミド化合物;N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイル-4-ピペリドン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のN-2置換(メタ)アクリルアミド化合物などが挙げられる。なお、これらの不飽和単量体は、単独で用いることも、2種以上併用することもできる。
【0015】
前記水酸基を有する不飽和単量体(a4)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のアルキル基(アルキレン基)の炭素原子数が2~10のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキブチル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、これらの不飽和単量体(a4)は、単独で用いることも、2種以上併用することもできる。
【0016】
前記アクリル重合体(A)は、n-オクチル(メタ)アクリレート(a1)、ラウリル(メタ)アクリレート(a2)、カルボキシル基を有する不飽和単量体(a3)、及び水酸基を有する不飽和単量体(a4)を必須原料とするものであるが、これら以外のその他の単量体(a5)を使用することもできる。
【0017】
前記アクリル重合体(A)の単量体原料におけるn-オクチル(メタ)アクリレート(a1)及びラウリル(メタ)アクリレート(a2)の使用量は合計で50~99質量%であるが、得られる粘着剤の接着力、初期粘着力、及びせん断保持力のバランスがより向上することから、85~98質量%が好ましい。
【0018】
前記アクリル重合体(A)の単量体原料におけるn-オクチル(メタ)アクリレート(a1)とラウリル(メタ)アクリレート(a2)との質量比(a1/a2)は、得られる粘着剤の接着力、ボールタック、及びせん断保持力のバランスがより向上することから、10/90~90/10が好ましく、20/80~80/20がより好ましい。
【0019】
前記アクリル重合体(A)の単量体原料における前記不飽和単量体(a3)は、優れた初期粘着力を維持しつつ、得られる粘着剤層に極性を付与しつつ、凝集力を適度に付与することができることから、0.1~15質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
【0020】
前記アクリル重合体(A)の単量体原料における前記水酸基を有する不飽和単量体(a4)は、適度な凝集力と柔軟性を発現させることができることから、0.01~15質量%が好ましく、0.05~10質量%がより好ましい。
【0021】
前記アクリル重合体(A)の単量体原料中の前記その他の単量体(a5)は、40質量%未満が好ましく、15質量%未満がより好ましい。
【0022】
なお、前記アクリル重合体(A)の単量体原料として、バイオマス由来の単量体を多く使用することが、環境負荷低減の観点から好ましい。
【0023】
前記アクリル重合体(A)の重量平均分子量は、ポリマー鎖同士の絡み合いが生じやすくなり、得られる粘着剤層の破断を抑制しつつ伸張性を高めることが可能になることから、50万以上、より好ましくは60万以上、より好ましくは70万以上、より好ましく80万以上であり、好ましくは200万以下、より好ましくは180万以下、さらに好ましくは150万以下である。ここで、重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)測定に基づきポリスチレン換算した値である。
【0024】
前記アクリル重合体(A)の酸価は、優れた初期粘着力を維持しつつ、得られる粘着剤層に極性を付与しつつ、凝集力を適度に付与することができることから、0.1~120mgKOH/gが好ましい。
【0025】
前記アクリル重合体(A)の水酸基価は、適度な凝集力と柔軟性を発現させることが出来ることから、0.01~80mgKOH/gが好ましい。
【0026】
前記アクリル重合体(A)は、例えば、上記した単量体を、重合開始剤の存在下、溶剤中で共重合させることにより簡便に製造することができる。
【0027】
前記重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイルや過酸化ラウロイル等の過酸化物開始剤;アゾビスメチルブチロニトリル、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ開始剤などが挙げられる。なお、これらの重合開始剤は、単独で用いることも、2種以上併用することもできる。
【0028】
前記溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶剤等が挙げられるが、これらの中でも、エステル溶剤を含むことが好ましい。
【0029】
前記粘着付与樹脂(B)としては、例えば、未変性ロジン、変性ロジン、ロジン誘導体等のロジン系樹脂;未変性テルペン、芳香族変性テルペン、水添テルペン、テルペンフェノール等のテルペン系樹脂;石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、ピュアモノマー石油樹脂等の重合系樹脂;フェノール樹脂、キシレン樹脂等の縮合系樹脂などが挙げられるが、これらの中でも、環境負荷低減の観点や、前記アクリル重合体(A)との相溶性に優れることから、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等のバイオマス由来の樹脂が好ましい。また、なお、これらの粘着付与樹脂(B)は、単独で用いることも、2種以上併用することもできる。
【0030】
前記未変性ロジンとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等が挙げられる。
【0031】
前記変性ロジンとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、不均化ロジン、重合ロジン、水添ロジン等が挙げられる。
【0032】
前記ロジン誘導体としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、前記未変性ロジン又は前記変性ロジンをエステル化したロジンエステル;前記未変性ロジン又は変性ロジンを不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン;前記ロジンエステルを不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル;前記不飽和脂肪酸変性ロジン又は前記不飽和脂肪酸変性ロジンエステルに含まれるカルボキシル基を還元したロジンアルコール;未変性ロジン、変性ロジン、ロジンエステル、不飽和脂肪酸変性ロジン、不飽和脂肪酸変性ロジンエステル又はロジンアルコールの金属塩等のロジン金属塩;ロジンフェノール等が挙げられる。
【0033】
前記未変性テルペンとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、α-ピネン、β-ピネン、d-リモネン、l-リモネン、ジペンテン等のテルペン化合物の重合体が挙げられる。
【0034】
前記芳香族変性テルペンとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、前記未変性テルペンのフェノール変性物又はスチレン変性物が挙げられる。
【0035】
前記テルペンフェノールとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、テルペンとフェノールを共重合させた樹脂等が挙げられる。
【0036】
前記石油樹脂としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、脂肪族/芳香族石油樹脂及びこれらの水素添加物などが挙げられる。
【0037】
前記粘着付与樹脂(B)としては、市販品を用いてもよく、前記ロジン系樹脂としては、パインクリスタルKR-85、KR-612、KR-614(以上、荒川化学工業株式会社製);ロンヂスR-CH、K-25、K-80、N-18(以上、荒川化学工業株式会社製);白菊ロジン、アラダイムR-95、パインクリステルKR-140(以上、荒川化学工業株式会社製);ハイペーノールCH(以上、荒川化学工業株式会社製);エステルガムAA-G、AA-L、AAV、105、AT、ペンセルGA-100、AZ、パインクリスタルKE-359(以上、荒川化学工業株式会社製)、ハリエスターTF、S、ネオトールG2、ハリタック8LJA、ER95(以上、ハリマ化成株式会社製);エステルガムH、HP、パインクリスタルKE-311、PE-590、(以上、荒川化学工業株式会社製);パインクリスタルKE-100(以上、荒川化学工業株式会社製);ペンセルC、D-125、D-135、D-160、KK、スーパーエステルA-100、スーパーエステルA-125、E-650、E-788、E-865、E-865NT(以上、荒川化学工業株式会社製)、ハリエスターSK-323NS、SK-508、SK-508H、SK-816E、SK-822E、ハリタックPCJ(以上、ハリマ化成株式会社製);パインクリスタルKE-604、KR-120(以上、荒川化学工業株式会社製);タノマルE-100、E-200、E-200NT(以上、荒川化学工業株式会社製);パインクリスタルKM-1500、KR-50M(以上、荒川化学工業株式会社製)等が挙げられる。また、前記重合系樹脂としては、FTR0100、FTR2120、FTR2140、FTR6100、FTR6110、FTR6125、FTR7100、FTR8100、FTR8120、FMR0150(以上、三井化学株式会社製)等が挙げられる。
【0038】
粘着剤組成物中の前記ロジン系樹脂(B)の含有量は、前記アクリル重合体(A)100質量部に対し、得られる粘着剤の接着力、初期粘着力、及びせん断保持力のバランスがより向上することから、10~100質量部が好ましく、15~90質量部が好ましい。
【0039】
前記架橋剤(C)は、例えば、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤、多価金属塩架橋剤、金属キレート架橋剤、ケト・ヒドラジド架橋剤、オキサゾリン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、シラン架橋剤等が挙げられるが、イソシアネート架橋剤が好ましい。
【0040】
前記架橋剤(C)の含有量は、前記アクリル重合体(A)100質量部に対して、0.05~20質量%が好ましく、0.07~15質量%がより好ましく、0.1~10質量部がさらに好ましい。
【0041】
本発明の粘着剤組成物には、添加剤として、pHを調整するための塩基(アンモニア水など)や酸;発泡剤;可塑剤;軟化剤;酸化防止剤;ガラスやプラスチック製の繊維・バルーン・ビーズ・金属粉末等の充填剤;顔料・染料等の着色剤;pH調整剤;皮膜形成補助剤;レベリング剤;増粘剤;撥水剤;消泡剤;酸触媒;酸発生剤、シランカップリング剤等を含んでいてもよい。
【0042】
前記粘着剤組成物を支持体上に塗布し、乾燥させることによって、粘着層を形成することができる。前記支持体は、剥離シート及び粘着シート等の基材のいずれであってもよい。
【0043】
前記塗工方法としては、ナイフコーター、リバースコーター、ダイコーター、リップダイコーター、スロットダイコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の方法を用いることができる。
【0044】
前記粘着層の厚さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上であり、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは75μm以下である。
【0045】
本発明の粘着シートは、前記粘着層と前記基材とを有する。前記基材は、フィルム状、シート状、テープ状、板状、立体形状等のいずれであってもよく、前記基材の材質としては、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂等のプラスチック;ゴム;不織布;金属箔;紙などが挙げられ、プラスチックが好ましく、ポリエステル樹脂がより好ましい。また、前記基材は、表面が平滑なものであってもよく、繊維質基材、フォーム基材等の表面に凹凸を有するものであってもよい。
【0046】
前記基材の厚さは、好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは1,000μm以下である。
【0047】
本発明の粘着剤組成物から得られる粘着フィルムは、高いタック性を示すことから低温下での良好な貼付性や、粗面被着体に対する安定した粘着力を発現させることが可能であり、粘着テープ(特に、建築材料や電子機器の固定用テープ、およびそれらの製造場面に用いられる粘着テープ)に用いられる粘着剤として有用である。
【実施例0048】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。なお、アクリル重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエッションクロマトグラフ(GPC)で測定される標準ポリスチレン換算での重量平均分子量である。
【0049】
[平均分子量の測定方法]
前記GPC法による分子量の測定は、東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8329GPC)を用いて測定し、ポリスチレン換算した値である。
サンプル濃度:0.4質量%(THF溶液)
サンプル注入量:100μl
溶離液:THF
流速:1.0ml/分
測定温度:40℃
本カラム:TSKgel GMHHR-H(20)2本
ガードカラム:TSKgel HXL-H
検出器:示差屈折計
スタンダードポリスチレン分子量:1万~2000万(東ソー株式会社製)
【0050】
(合成例1:アクリル重合体(A-1)の合成)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、n-オクチルアクリレート(以下、「NOAA」と略記する。)580質量部、ラウリルアクリレート(以下、「LA」と略記する。)388質量部、アクリル酸(以下、「AA」と略記する。)30質量部、4 ヒドロキシブチルアクリレート(以下、「4HBA」と略記する。)2質量部、酢酸エチル1000質量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら70℃まで昇温した。1時間後に、予め酢酸エチルにて溶解した2,2’ アゾビス(2 メチルブチロニトリル)溶液10質量部(固形分5質量%)を添加した。その後、攪拌下70℃にて8時間ホールドした後、内容物を冷却し200メッシュ金網にて濾過し、アクリル重合体(A-1)の50質量%溶液を得た。このアクリル重合体(A-1)の重量平均分子量は85万であった。
【0051】
(合成例2~7:アクリル重合体(A-2)~(A-7)の合成)
単量体の組成を、表1の通りに変更した以外は合成例1と同様にして、アクリル重合体(A-2)~(A-7)の50質量%溶液を得た。
【0052】
(合成例5~8:アクリル重合体(RA-1)~(RA-4)の合成)
単量体の組成を、表2の通りに変更した以外は合成例1と同様にして、アクリル重合体(RA-1)~(RA-4)の50質量%溶液を得た。
【0053】
上記の合成例1~8で合成したアクリル樹脂(A-1)~(A-7)及び(RA-1)~(RA-4)の単量体組成及び性状値を表1及び2に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表中の略号は、以下の通りである。
BA:n-ブチルアクリレート
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
【0057】
(実施例1:粘着剤組成物(1)の調製及び評価)
合成例1で得られたアクリル重合体(A-1)の溶液200質量部(アクリル重合体(A-1)として100質量部)に対して、ロジン系粘着付与樹脂(A-100:荒川化学株式会社製)20質量部、重合ロジン系粘着付与樹脂(PCJ:ハリマ化成株式会社製)30質量部を、不揮発分40%となるよう酢酸エチルを加えて、均一になるように攪拌混合した。次いで、イソシアネート系架橋剤(ファインタック硬化剤D-40A;DIC株式会社製)3.5質量部、を均一になるように攪拌混合することによって粘着組成物(1)を得た。
【0058】
[粘着フィルムの作製]
表面に離型処理された厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(離型PET50)の表面に、溶剤乾燥後における膜厚が25μmとなるように実施例1で得られた粘着剤組成物(1)を塗布し、80℃乾燥機中で3分間溶剤を揮発した後、PET25μmフィルムを貼り合せた。
【0059】
[接着力の評価]
前述の方法で作成した粘着フィルムを25mm幅に切ったものを試験片とした。これをステンレス(SUS)板、及び、ポリプロピレン(PP)板に対し、接着面積が25mm×60mmとなるように2kgロール×2往復圧着させた。その後、23℃、湿度50%の雰囲気下で30分間放置した後、23℃、湿度50%の雰囲気下でJISK6848-1974に準拠して180度剥離強度を測定し、これを初期接着力(N/25mm)とした。
【0060】
[初期粘着力の評価]
前記方法で得られた粘着フィルムを用い、JIS Z0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に規定されている傾斜式ボールタックの試験方法に準拠して試験を実施し、初期粘着力を評価した。
【0061】
[せん断保持力の評価]
前記方法で得られた粘着フィルムを25mm幅に裁断したものを試験片とした。これをステンレス板に対し、接着面積が25mm×25mmとなるように2kgロ
ールで1往復し貼り付けた。貼り付けた試験片に対して1kgの荷重をステンレス板に対して0°の方向(剪断方向)にかけ、70℃雰囲気下にて24時間経過した際に、被着体から粘着フィルムが荷重方向にズレ落ちた距離(mm)を測定し、これを保持力とした。また、前記24時間を経過する前に、前記ステンレス板から粘着シートが剥離し落下した場合には、落下までに要した時間を測定した。
【0062】
(実施例2~10:粘着剤組成物(2)~(10)の調製及び評価)
アクリル重合体、及び粘着付与樹脂の配合を、表3及び4の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物(2)~(10)を調製し、各種物性を評価した。
【0063】
(比較例1~4:粘着剤組成物(R1)~(R4)の調製及び評価)
アクリル重合体、及び粘着付与樹脂の配合を、表5の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物(R1)~(R4)を調製し、各種物性を評価した。
【0064】
上記の実施例1~10で得た粘着剤組成物(1)~(10)及び比較例1~4で得た粘着剤組成物(R1)~(R4)の配合組成及び評価結果を表3~5に示す。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
【0068】
表中の略号は、以下の通りである。
PCJ:ハリマ化成株式会社製、重合ロジンエステル
PEDR-120M:広西梧州日成林産化工股 有限公司製、重合ロジンエステル
KE-100:荒川化学工業株式会社製、超淡色ロジンエステル
A-100:荒川化学工業株式会社製、特殊ロジンエステル
D-135:荒川化学工業株式会社製、重合ロジンエステル
T130:ヤスハラケミカル株式会社製、テルペンフェノール樹脂
FTR6100:三井化学株式会社製、芳香族炭化水素系樹脂
FTR6125:三井化学株式会社製、芳香族炭化水素系樹脂
【0069】
実施例1~7の本発明の粘着剤組成物は、接着力、初期粘着力、せん断保持力に優れる粘着層が得られることが確認された。
【0070】
一方、比較例1及び2は、アクリル重合体(A)の単量体原料として、ラウリル(メタ)アクリレートを使用しなかった例であるが、接着力及びボールタックが不十分であることが確認された。
【0071】
比較例3は、アクリル重合体(A)の単量体原料として、n-オクチル(メタ)アクリレートを使用しなかった例であるが、接着力及びボールタックが不十分であることが確認された。
【0072】
比較例4は、アクリル重合体(A)の単量体原料として、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートを共に使用しなかった例であるが、接着力及びボールタックが不十分であることが確認された。