(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008991
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 49/18 20060101AFI20240112BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20240112BHJP
B24B 53/00 20060101ALI20240112BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240112BHJP
B24B 53/12 20060101ALI20240112BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B24B49/18
B24B49/10
B24B53/00 A
B24B7/04 A
B24B53/12 Z
H01L21/304 631
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023187379
(22)【出願日】2023-11-01
(62)【分割の表示】P 2019045269の分割
【原出願日】2019-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】細野 拓真
(57)【要約】
【課題】研削砥石のドレス量を正確に測定する研削装置を提供する。
【解決手段】研削装置1は、研削砥石21が設けられて研削砥石21とともに回転する砥石スピンドル22と、砥石スピンドル22に設けられた切り欠き53aと切り欠き53aに嵌合可能なピン53bとを備え、砥石スピンドル22を同一の停止位置で停止するように砥石スピンドル22の回転を規制する規制手段5と、ドレスボード31によるドレス実施前後に停止位置に対応する測定位置において研削砥石21の厚みを測定して、研削砥石21のドレス量を測定する第1のセンサ25と、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削砥石をドレスするドレスボードを備えた研削装置であって、
前記研削砥石が設けられ、前記研削砥石とともに回転する砥石スピンドルと、
前記砥石スピンドルが同一の停止位置で停止するように前記砥石スピンドルの回転を規制する規制手段と、
前記ドレスボードによるドレス実施前後に前記停止位置に対応する測定位置において前記研削砥石の厚みを測定して、前記研削砥石のドレス量を測定するドレス量測定手段と、
を備えていることを特徴とする研削装置。
【請求項2】
前記ドレスボードを支持し、前記ドレスボードを回転させるドレススピンドルと、
前記ドレスボード内の所定の測定位置におけるドレスボードの残量を測定する残量測定手段と、
をさらに備えていることを特徴とする請求項1記載の研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野では、シリコンウェハ等の半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という)を薄く平坦に研削する研削装置が知られている。
【0003】
特許文献1記載の研削装置4は、被加工物Wの上面W1を研削する前又は後に、研削砥石310にドレッシングボード8を接触させて研削面310aをドレスする。なお、符号は特許文献1における符号である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、ドレスボードでドレスされた研削砥石のドレス量は、ドレス前後の研削砥石の厚みの差から算出される。しかしながら、研削砥石は、測定位置によっては5~10μm程度の厚みばらつきが存在するため、研削砥石のドレス量を正確に測定することは難しく、研削砥石が適切にドレスされたか否かを把握できない虞があるという問題があった。
【0006】
そこで、研削砥石のドレス量を正確に測定するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る研削装置は、研削砥石をドレスするドレスボードを備えた研削装置であって、前記研削砥石が設けられ、前記研削砥石とともに回転する砥石スピンドルと、前記砥石スピンドルが同一の停止位置で停止するように前記砥石スピンドルの回転を規制する規制手段と、前記ドレスボードによるドレス実施前後に前記停止位置に対応する測定位置において前記研削砥石の厚みを測定して、前記研削砥石のドレス量を測定するドレス量測定手段と、を備えている。
【0008】
この構成によれば、規制手段が、所定の停止位置で停止するように砥石スピンドルの回転を規制することにより、厚み測定の度に、ドレス量測定手段が同一の測定位置で研削砥石の厚みを測定するため、研削砥石のドレス量を正確に把握することができる。
【0009】
また、本発明に係る研削装置は、前記ドレスボードを支持し、前記ドレスボードを回転させるドレススピンドルと、前記ドレスボード内の所定の測定位置におけるドレスボードの残量を測定する残量測定手段と、をさらに備えていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、サーボモータは、ドレススピンドルを所定の停止位置で停止可能であることにより、残量測定の度に、残量測定手段が同一の測定位置でドレスボードの厚みを測定するため、ドレスボードの残量を正確に把握することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、規制手段が、砥石スピンドルを所定の停止位置で規制することにより、ドレス量測定手段が同一の測定位置で研削砥石の厚みを測定するため、研削砥石のドレス量を正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る研削装置を模式的に示す正面図。
【
図2】ドレスボードで研削砥石をドレスする様子を示す正面図。
【
図3】スピンドルを所定位置で停止させる手順を示す模式図。
【
図4】第1の変形例に係る研削装置において、スピンドルを所定位置で停止させる手順を示す模式図。
【
図5】第2の変形例に係る研削装置において、スピンドルを所定位置で停止させる手順を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0014】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0015】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0016】
図1は、研削装置1の基本的構成を示す正面図である。研削装置1は、ウェハに対して研削加工を行うものである。研削装置1は、研削手段2と、ドレス手段3と、を備えている。
【0017】
研削手段2は、研削砥石21と、砥石スピンドル22と、スピンドル送り機構23と、を備えている。
【0018】
研削砥石21は、例えばカップ型砥石であり、砥石スピンドル22の下端に取り付けられている。
【0019】
砥石スピンドル22は、回転軸2a回りに回転駆動するように構成されている。研削時には、研削砥石21に負荷が作用するため、砥石スピンドル22の回転駆動には、誘導モータが用いられる。砥石スピンドル22の上端には、後述する小径回転軸22aと、大径回転軸22bと、上からこの順で設けられている。
【0020】
スピンドル送り機構23は、砥石スピンドル22を上下方向に昇降させる。スピンドル送り機構23は、公知の構成であり、例えば、砥石スピンドル22の移動方向を案内する複数のリニアガイドと、砥石スピンドル22を昇降させるボールネジスライダ機構と、で構成されている。スピンドル送り機構23は、砥石スピンドル22とコラム24との間に介装されている。
【0021】
また、研削手段2は、研削砥石21の厚み(研削面21aの高さ)を測定する第1のセンサ25を備えている。第1のセンサ25は、例えば、ウェット環境でも使用可能な接触式厚みセンサである。第1のセンサ25は、水平方向に進退可能なアーム26に支持されている。第1のセンサ25は、測定値を後述する制御装置6に送る。
【0022】
ドレス手段3は、ドレスボード31と、ドレススピンドル32と、を備えている。ドレスボード31は、研削砥石21の研削面21aをドレスする。ドレススピンドル32は、図示しないサーボモータによって回転軸3a回りに回転駆動するように構成されている。また、ドレススピンドル32は、上下方向に昇降可能に構成されている。
【0023】
また、ドレス手段3は、ドレスボード31の高さを測定する第2のセンサ33を備えている。第2のセンサ33は、例えば、ウェット環境でも使用可能な接触式厚みセンサである。第2のセンサ33は、水平方向に進退可能なアーム34に支持されている。第2のセンサ33は、測定値を後述する制御装置6に送る。
【0024】
チャック4は、上面にアルミナ等の多孔質材料からなる図示しない吸着体が埋設されている。チャック4は、内部を通って表面に延びる図示しない管路を備えている。管路は、図示しないロータリージョイントを介して真空源、圧縮空気源又は給水源に接続されている。真空源が起動すると、チャック4に載置されたワークがチャック4に吸着保持される。また、圧縮空気源又は給水源が起動すると、ワークとチャック4との吸着が解除される。
【0025】
チャック4は、チャックスピンドル41を備えている。チャックスピンドル41は、回転軸4a回りに回転駆動するように構成されている。
【0026】
研削装置1は、砥石スピンドル22の停止位置を規制する規制手段5を備えている。規制手段5の具体的構成については後述する。
【0027】
研削装置1の動作は、制御装置6によって制御される。制御装置6は、研削装置1を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御装置6は、例えば、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御装置6の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作することにより実現されても良い。
【0028】
図2に示すように、研削装置1は、ドレスボード31を研削砥石21に押し当てることにより、研削面21aのドレスを行う。
【0029】
具体的には、ドレスボード31の上面をチャック4の上面よりも高く位置決めする。そして、砥石スピンドル22及びドレススピンドル32をそれぞれ回転させながら、研削砥石21をドレスボード31に押し当てることにより、研削面21aがドレスされる。
【0030】
また、
図1に示すように、第1のセンサ25が、ドレス前後で研削砥石21の厚みをそれぞれ測定することにより、その差から研削砥石21のドレス量を算出する。研削砥石21の厚み測定時には、研削砥石21を停止させる。
【0031】
砥石スピンドル22は、誘導モータで回転駆動することから、砥石スピンドル22の停止方向は一定ではない。さらに、研削面21aは、周方向で5~10μm程度のバラつきが存在する。そこで、第1のセンサ25が研削面21aに接触する測定位置が測定の度に一致するよう、後述するように規制手段5が砥石スピンドル22の停止位置を規制することにより、研削砥石21のドレス量を正確に把握することができる。
【0032】
第2のセンサ33は、ドレスボード31のドレス後の厚みを測定することにより、ドレスボード31の残量を算出する。また、第2のセンサ33は、ドレス前後でドレスボード31の厚みをそれぞれ測定することにより、その差からドレスボード31の摩耗量を算出する。
【0033】
なお、ドレススピンドル32は、サーボモータで回転駆動することから、ドレススピンドル32を停止させる向きは、任意に設定可能である。すなわち、第2のセンサ33がドレスボード31に接触する測定位置が常に同一になるように、ドレススピンドル32の停止位置を制御することにより、ドレスボード31の摩耗量及び残量を正確に把握することができる。
【0034】
次に、規制手段5の構成について
図3に基づいて説明する。
【0035】
規制手段5は、ホイール51と、回転速度センサ52と、位置決め機構53と、を備えている。
【0036】
ホイール51は、誘導モータに接続された小径回転軸22aの外面に周設され、周方向に沿って凹凸に形成されている。
【0037】
回転速度センサ52は、ホイール51に対向するように設けられている。回転速度センサ52は、ホイール51の凹凸を検知し、砥石スピンドル22の回転速度を検出する。
【0038】
位置決め機構53は、誘導モータに接続された大径回転軸22bの外面に凹設された切り欠き53aと、切り欠き53aに嵌合可能なピン53bと、を備えている。ピン53bは、エアシリンダ53cの先端に取り付けられており、水平方向に進退移動することができる。
【0039】
次に、規制手段5の作用について
図3に基づいて説明する。まず、
図3(a)に示すように、回転速度センサ52が、砥石スピンドル22の回転速度を検出する。
【0040】
次に、回転速度センサ52が、砥石スピンドル22の回転速度が所定速度以下まで減速したことを検知すると、
図3(b)に示すように、エアシリンダ53cがピン53bを砥石スピンドル22に押し当てる。このように、砥石スピンドル22が低速回転域に移行した後に、ピン53bを砥石スピンドル22に押し当てることにより、ピン53bが高速回転する砥石スピンドル22に衝突して損傷することを抑制できる。
【0041】
そして、切り欠き53aがピン53bまで達すると、
図3(c)に示すように、ピン53bが切り欠き53aに嵌合することにより、砥石スピンドル22を所定の停止位置で位置決めする。これにより、第1のセンサ25が研削面21aに接触する測定位置が常に同一になり、研削砥石21のドレス量を正確に把握することができる。
【0042】
次に、上述した実施形態の第1の変形例に係る研削装置1について、
図4に基づいて説明する。なお、本変形例は、以下に説明する構成以外の構成は上述した実施形態と同様である。
【0043】
ホイール51は、略円環状に形成されており、外周において1つの凸部51aが形成されている。
【0044】
位置決め機構53は、いわゆる電磁制動機構であり、大径回転軸22bの外周面に埋設された回転側磁石53dと、エアシリンダ53cの先端に取り付けられて水平方向に進退移動可能な固定側磁石53eと、を備えている。なお、回転側磁石53d及び固定側磁石53eは、互いに吸引し合うように磁極が設定されている。また、回転側磁石53d、固定側磁石53eは、永久磁石又は電磁石の何れであっても構わない。
【0045】
次に、本変形例に適用される規制手段5の作用について、
図4に基づいて説明する。まず、
図4(a)に示すように、回転速度センサ52が、ホイール51の凸部51aを検知し、砥石スピンドル22の回転速度を検出する。
【0046】
次に、回転速度センサ52が、砥石スピンドル22の回転速度が所定速度以下まで減速したことを検知すると、
図4(b)に示すように、エアシリンダ53cが固定側磁石53eを砥石スピンドル22の近傍に接近させる。回転側磁石53dが固定側磁石53eの近傍を通過する度に、回転側磁石53d及び固定側磁石53eの間に吸引力が作用し、砥石スピンドル22がさらに減速される。
【0047】
その後、
図4(c)に示すように、回転側磁石53d及び固定側磁石53eが互いに対向する位置で吸引し合うことで、砥石スピンドル22が所定の停止位置で位置決めされる。これにより、第1のセンサ25が研削面21aに接触する測定位置が常に同一になり、研削砥石21のドレス量を正確に把握することができる。
【0048】
次に、上述した実施形態の第2の変形例に係る研削装置1について、
図5に基づいて説明する。なお、本変形例は、以下に説明する構成以外の構成は上述した実施形態と同様である。
【0049】
ホイール51は、略円環状に形成されており、外周において1つの凸部51aが形成されている。
【0050】
位置決め機構53は、いわゆる摩擦制動機構であり、大径回転軸22bの外周に押し当てられるブレーキパッド53fを備えている。ブレーキパッド53fは、図示しないエアシリンダによって、水平方向に進退移動可能に構成されている。
【0051】
次に、本変形例に適用される規制手段5の作用について、
図5に基づいて説明する。まず、回転速度センサ52が、ホイール51の凸部51aを検知し、砥石スピンドル22の回転速度を検出する。
【0052】
次に、回転速度センサ52が、砥石スピンドル22の回転速度が所定速度以下まで減速したことを検知すると、エアシリンダがブレーキパッド53fを大径回転軸22bに押し当てて、砥石スピンドル22が制動される。
【0053】
なお、回転速度センサ52がホイール51の凸部51aに対向するように、ブレーキパッド53fが砥石スピンドル22を停止させることにより、砥石スピンドル22が所定の停止位置で位置決めされる。これにより、第1のセンサ25が研削面21aに接触する測定位置が常に同一になり、研削砥石21のドレス量を正確に把握することができる。
【0054】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。また、上述した実施形態及び各変形例は、互いに組み合わせても構わない。
【符号の説明】
【0055】
1 ・・・研削装置
2 ・・・研削手段
21 ・・・研削砥石
21a・・・研削面
22 ・・・砥石スピンドル
22a・・・小径回転軸
22b・・・大径回転軸
23 ・・・スピンドル送り機構
24 ・・・コラム
25 ・・・第1のセンサ(ドレス量測定手段)
26 ・・・アーム
3 ・・・ドレス手段
31 ・・・ドレスボード
32 ・・・ドレススピンドル
33 ・・・第2のセンサ(残量測定手段)
34 ・・・アーム
4 ・・・チャック
41 ・・・チャックスピンドル
5 ・・・規制手段
51 ・・・ホイール
51a・・・凸部
52 ・・・回転速度センサ
53 ・・・位置決め機構
53a・・・切り欠き
53b・・・ピン
53c・・・エアシリンダ
53d・・・回転側磁石
53e・・・固定側磁石
53f・・・ブレーキパッド
6 ・・・制御装置