IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社荏原製作所の特許一覧 ▶ 学校法人早稲田大学の特許一覧

<>
  • 特開-ポンプシステム 図1
  • 特開-ポンプシステム 図2
  • 特開-ポンプシステム 図3
  • 特開-ポンプシステム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089937
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ポンプシステム
(51)【国際特許分類】
   F04D 15/00 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
F04D15/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205486
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】常田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】能見 基彦
(72)【発明者】
【氏名】宮川 和芳
【テーマコード(参考)】
3H020
【Fターム(参考)】
3H020BA06
3H020BA21
3H020CA08
3H020DA14
3H020EA01
3H020EA07
3H020EA15
3H020EA17
(57)【要約】
【課題】異物によって運転を阻害されにくいポンプシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】ポンプシステム100は、流路10と、流路10内に配置される羽根車22を有するポンプ20と、流路10を流れる液体Lの流量を調整可能な流量制御弁30と、流量制御弁30の開度を制御する制御装置40と、ポンプ20の内部に存在する異物を検出する検出装置と、を備える。制御装置40は、検出装置50による異物を検出した場合に、ポンプ20の最高効率点流量未満となるように開度を絞る絞り制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプシステムであって、
流路と、
前記流路内に配置される羽根車を有するポンプと、
前記流路を流れる液体の流量を調整可能な流量制御弁と、
前記流量制御弁の開度を制御する制御装置と、
前記ポンプの内部に存在する異物を検出する検出装置と、を備え、
前記制御装置は、前記検出装置による異物を検出した場合に、前記ポンプの最高効率点流量未満となるように前記開度を絞る絞り制御を行う
ポンプシステム。
【請求項2】
前記検出装置は、前記ポンプの内部を撮像する撮像器を有し、
前記制御装置は、前記撮像器で撮像した画像の変化に基づいて、前記開度を制御する
請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項3】
前記検出装置は、前記ポンプの負荷を検出する負荷検出器を有し、
前記制御装置は、前記負荷の変化に基づいて、前記開度を制御する
請求項1又は請求項2に記載のポンプシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記検出装置による異物の除去を検出した場合に、前記ポンプの最高効率点流量以上となるように前記開度を開放する開制御を行う
請求項1又は請求項2に記載のポンプシステム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記開度を絞る絞制御をした後、所定時間異物が除去されない場合に、警告をユーザに報知する報知部を有する
請求項1又は請求項2に記載のポンプシステム。
【請求項6】
前記検出装置は、前記ポンプが有する回転軸の振動を検出する軸振動検出器を有し、
前記制御装置は、前記振動の変化に基づいて、前記開度を制御する
請求項1又は請求項2に記載のポンプシステム。
【請求項7】
前記検出装置は、前記ポンプの騒音を検出する騒音検出器を有し、
前記制御装置は、前記騒音の変化に基づいて、前記開度を制御する
請求項1又は請求項2に記載のポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を吸い込み、吐出するポンプがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-226457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のポンプは、吸い込む液体に含まれるごみ等の異物を吸い込む場合があり、この際、異物が羽根車を含む回転部に引っ掛かることがあった。このため、ポンプ効率が低下し、エネルギー損失が増大することがあった。また、これにより、ポンプに要求される圧力及び流量を保てなくなったり、異物が回転部に噛み込まれることでポンプを運転できなくなったり、ポンプの部品が損傷したりするおそれがあった。
【0005】
本発明は、異物によって運転を阻害されにくいポンプシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
(1)本発明に係る一態様のポンプシステムは、流路と、前記流路内に配置される羽根車を有するポンプと、前記流路を流れる液体の流量を調整可能な流量制御弁と、前記流量制御弁の開度を制御する制御装置と、前記ポンプの内部に存在する異物を検出する検出装置と、を備え、前記制御装置は、前記検出装置による異物を検出した場合に、前記ポンプの最高効率点流量未満となるように前記開度を絞る絞り制御を行う。
(2)上記(1)において、前記検出装置は、前記ポンプの内部を撮像する撮像器を有し、
前記制御装置は、前記撮像器で撮像した画像の変化に基づいて、前記開度を制御してよい。
(3)上記(1)又は(2)において、前記検出装置は、前記ポンプの負荷を検出する負荷検出器を有し、前記制御装置は、前記負荷の変化に基づいて、前記開度を制御してよい。
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記制御装置は、前記検出装置による異物の除去を検出した場合に、前記ポンプの最高効率点流量以上となるように前記開度を開放する開制御を行ってよい。
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記制御装置は、開度を絞る絞制御をした後、所定時間異物が除去されない場合に、警告をユーザに報知する報知部を有してよい。
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、前記検出装置は、前記ポンプが有する回転軸の振動を検出する軸振動検出器を有し、前記制御装置は、前記振動の変化に基づいて、前記開度を制御してよい。
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記検出装置は、前記ポンプの騒音を検出する騒音検出器を有し、前記制御装置は、前記騒音の変化に基づいて、前記開度を制御してよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、異物によって運転を阻害されにくいポンプシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るポンプシステムの説明図である。
図2】設計点流量で流れているポンプの内部の液体の状態を示す説明図である。
図3】最高効率点流量未満で流れているポンプの内部の液体の状態を示す説明図である。
図4】制御装置によるポンプシステムの制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態]
以下、実施形態に係るポンプシステム100を説明する。図1は、実施形態に係るポンプシステム100の説明図である。図2は、設計点流量で流れているポンプ20の内部の液体Lの状態を示す説明図である。図3は、最高効率点流量未満で流れているポンプ20の内部の液体Lの状態を示す説明図である。
【0010】
(ポンプ)
図1に示すように、実施形態に係るポンプシステム100は、例えば、池、湖、河川、海、貯水池等、ごみ等の異物Gを含む水等の液体Lを吸い込むポンプ20に適用できる。
【0011】
ポンプシステム100は、流路10と、流路10内に配置される羽根車22を有するポンプ20と、流路10を流れる液体Lの流量を調整可能な流量制御弁30と、流量制御弁30の開度を制御する制御装置40と、ポンプ20の内部に存在する異物Gを検出する検出装置50と、を備えている。回転部21は、モータMと、モータMによって回転する羽根車22と、を含んでいる。羽根車22は回転軸22aを有しており、回転軸22aがモータMによって回転させられる。なお、回転軸22aは、羽根車22と一体に形成されていてもよい。あるいは、回転軸22aと羽根車22とが別体であり、固定手段(ボルトなど)で両者が固定されていてもよい。
【0012】
ここで、制御装置40は、検出装置50による異物Gを検出した場合に、ポンプ20の最高効率点流量e未満となるように開度を絞る絞り制御を行う。好ましくは、制御装置40は、検出装置50による異物Gを検出した場合に、ポンプ20の最高効率点流量e未満であって、安定運転最小流量を下回るまで開度を絞る絞り制御を行う。すなわち、図2に示すように、通常、ポンプ20によって送出する液体Lを、設計点流量で流している状態から、ポンプ20の効率が最大となる流量より小さくなるように絞ると、図3に示すように、ポンプ20の内部で液体Lの流れが乱れ、ポンプ20の内部に逆流、キャビテーション等が起きる。つまり、敢えてポンプ20を不安定に運転して、乱れた流れをポンプ20の内部に存在する(羽根車22に付着した)異物Gに作用させることで、異物Gを取り除くことができる。このように、モータMを逆回転したり、インバータでモータMの回転数を変えたりする制御をしなくても、流路10に設けられた流量制御弁30の開度を絞るだけで、ポンプ20の内部の液体Lの流れを変えて、異物Gを除去できる。よって、異物Gによって運転を阻害されにくいポンプシステム100を提供できる。
【0013】
検出装置50は、異物Gを検出する装置である。検出装置50は、ポンプ20の内部を撮像する撮像器51を有していてよい。撮像器51は、撮像素子を有する、いわゆる、デジタルカメラであってよい。
そして、制御装置40は、撮像器51で撮像した画像の変化に基づいて、開度を制御する。すなわち、異物Gがポンプ20の内部に存在(付着)する前と後とで、視覚的な変化があることを利用する。例えば、制御装置40は、異物Gが存在(付着)する前における画像と現在における画像との比較結果を数値化し、その数値の大きさに応じて、開度を制御する。これにより、ポンプ20の内部に異物Gが存在(付着)したことを検出でき、検出した時点で自動的に異物Gを取り除くことができる。
【0014】
検出装置50は、ポンプ20の負荷を検出する負荷検出器52を有していてよい。ポンプ20の負荷は、例えば、ポンプ20を駆動するモータMの電流値若しくはトルク、ポンプ20の発生する差圧若しくは流量、又は、異物Gを直接的に検出する接触式センサ若しくは撮像装置(カメラ)等によって検出してよい。負荷検出器52は、例えば、電流計、電圧計、トルク計等であってよい。
そして、制御装置40は、モータ負荷の変化に基づいて、開度を制御する。すなわち、異物Gがポンプ20の内部に存在(付着)する前と後とで、モータ負荷に変化があることを利用する。例えば、制御装置40は、異物Gが存在(付着)する前におけるモータ負荷と現在におけるモータ負荷との比較結果を数値化し、その数値の大きさに応じて、開度を制御する。これにより、ポンプ20の内部に異物Gが存在(付着)したことを検出でき、検出した時点で自動的に異物Gを取り除くことができる。
【0015】
検出装置50は、ポンプ20が有する回転軸22aの振動を検出する軸振動検出器53を有していてよい。軸振動検出器53としては、例えば加速度センサあるいは変位センサ等を用いることができる。ポンプ20内に異物Gが存在すると、回転軸22aにおける振動が増加する傾向がある。
そして、制御装置40は、回転軸22aの振動の変化に基づいて、開度を制御する。すなわち、異物Gがポンプ20の内部に存在(付着)する前と後とで、回転軸22aの振動に変化があることを利用する。例えば、制御装置40は、異物Gが存在(付着)する前における振動と現在における振動との比較結果を数値化し、その数値の大きさに応じて、開度を制御する。これにより、ポンプ20の内部に異物Gが存在(付着)したことを検出でき、検出した時点で自動的に異物Gを取り除くことができる。
【0016】
検出装置50は、ポンプ20が発する騒音を検出する騒音検出器54を有していてよい。騒音検出器54としては、例えばマイクロフォン等を用いることができる。ポンプ20内に異物Gが存在するとポンプ20が発する騒音が増加する傾向がある。例えば、回転軸22aの振動、あるいは、異物Gの存在に起因するポンプ20の内部におけるキャビテーションの発生、等が、騒音が増加する要因となる。
そして、制御装置40は、ポンプ20が発する騒音の変化に基づいて、開度を制御する。すなわち、異物Gがポンプ20の内部に存在(付着)する前と後とで、ポンプ20が発する騒音に変化があることを利用する。例えば、制御装置40は、異物Gが存在(付着)する前における騒音と現在における騒音との比較結果を数値化し、その数値の大きさに応じて、開度を制御する。これにより、ポンプ20の内部に異物Gが存在(付着)したことを検出でき、検出した時点で自動的に異物Gを取り除くことができる。
【0017】
制御装置40には、撮像器51、負荷検出器52、軸振動検出器53、および騒音検出器54による検出結果のうち、少なくとも1つが入力される。以下では、「撮像器51、負荷検出器52、軸振動検出器53、および騒音検出器54のうち少なくとも1つ」を、単に「検出装置50」と記載する。制御装置40は、検出装置50による異物Gの除去を検出した場合に、ポンプ20の最高効率点流量以上となるように開度を開放する開制御を行う。これにより、異物Gの除去を検出した時点で、自動的にポンプ20を設計点流量による通常運転に切り替えて、ポンプ20の運転を継続できる。
【0018】
制御装置40は、開度を絞る絞制御をした後、所定時間異物Gが除去されない場合に、警告をユーザに報知する報知部41を有してよい。これにより、開度を絞る絞制御では取り除くことができないような異物Gの除去をユーザに促すことができる。よって、ユーザによるポンプ20のメンテナンスを、適時に、最小限にできる。
【0019】
(制御フロー)
次に、制御装置40によるポンプシステム100の制御フローについて、図4に基づいて説明する。
図4は、制御装置40によるポンプシステム100の制御フロー図である。
(1)まず、流量制御弁30を開制御する(ステップS1)。
【0020】
(2)次に、設計点流量でポンプ20を運転する(ステップS2)。
【0021】
(3)ここで、常時、又は、所定のタイミングで、異物検出制御を行う(ステップS3)。具体的には、検出装置50で検出した結果に基づいて、異物Gが存在するか否かを判定する。例えば、異物Gが存在(付着)する前における画像と現在における画像との比較結果を数値化し、その数値が閾値より大きい場合に、異物Gが存在すると判定する。異物Gを検出しない場合、設計点流量でのポンプ20の運転を継続する(ステップS2)。異物Gを検出した場合、流量制御弁30を、最高効率点流量未満となるように絞る絞り制御を行う(ステップS4)。
【0022】
(4)ステップS4において、流量制御弁30を最高効率点流量未満となるように絞った状態で、タイマー計測し、所定時間経過したか否かを判定する(ステップS5)。所定時間経過するまで流量制御弁30を絞った状態を継続する。
【0023】
(5)ステップS5において、所定時間経過した場合、異物除去確認を行う(ステップS6)。具体的には、検出装置50で検出した結果に基づいて、異物Gが除去されたか否かを判定する。例えば、ステップS3において、異物Gが存在していると判定した画像と現在における画像との比較結果を数値化し、その数値が閾値より大きい場合に、異物Gが除去されたと判定する。異物Gが除去されたと判定した場合、流量制御弁30を開制御し(ステップS1)、設計点流量でのポンプ20の運転を継続する(ステップS2)。異物Gが除去されないと判定した場合、警告をユーザに報知する(ステップS7)。
このように、制御装置40は、ポンプシステム100を制御する。
【0024】
以上、図面を参照して実施形態について説明したが、本発明は上述のものに限られない。実施形態として挙げられた複数の特徴を、自由に組み合わせてもよい。
例えば、検出装置50は、撮像器51、負荷検出器52、軸振動検出器53、騒音検出器54のうちのいずれか1つのみを有してもよい。あるいは、検出装置50は、撮像器51、負荷検出器52、軸振動検出器53、騒音検出器54のうちいずれか2つまたは3つを有してもよい。制御装置40は、撮像器51、負荷検出器52、軸振動検出器53、騒音検出器54によるそれぞれの検出結果を組み合わせて制御を行ってもよい。
【0025】
本実施形態に係るポンプシステム100は、流路10と、流路10内に配置される羽根車22を有するポンプ20と、流路10を流れる液体Lの流量を調整可能な流量制御弁30と、流量制御弁30の開度を制御する制御装置40と、ポンプ20の内部に存在する異物Gを検出する検出装置と、を備える。制御装置40は、検出装置50による異物Gを検出した場合に、ポンプ20の最高効率点流量未満となるように開度を絞る絞り制御を行う。これにより、ポンプ20の内部で液体Lの流れが乱れ、ポンプ20の内部に逆流、キャビテーション等が起きる。このため、乱れた流れをポンプ20の内部に存在する異物Gに作用させることができ、異物Gを取り除くことができる。よって、異物Gによって運転を阻害されにくいポンプシステム100を提供できる。
【符号の説明】
【0026】
10 流路
20 ポンプ
21 回転部
22 羽根車
22a 回転軸
30 流量制御弁
40 制御装置
41 報知部
50 検出装置
51 撮像器
52 負荷検出器
53 軸振動検出器
54 騒音検出器
100 ポンプシステム
e 最高効率点流量
G 異物
L 液体
M モータ
図1
図2
図3
図4