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特開2024-89961布帛用乾燥装置及び布帛用画像形成装置及び布帛用画像形成システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089961
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】布帛用乾燥装置及び布帛用画像形成装置及び布帛用画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   D06C 7/00 20060101AFI20240627BHJP
   D06B 11/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
D06C7/00 Z
D06B11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205536
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】保坂 茂利
【テーマコード(参考)】
3B154
【Fターム(参考)】
3B154AB27
3B154AB31
3B154BA09
3B154BA19
3B154BB12
3B154BB33
3B154BB47
3B154BC08
3B154BC22
3B154BC28
3B154DA13
(57)【要約】
【課題】加熱時間を短縮して効率的かつ安価に確実な前処理工程や定着工程を行うことが可能な布帛用乾燥装置を提供する。
【解決手段】布帛9を支持する支持部材2と、布帛9に接触して布帛9を加熱するローラ状の回転自在な加熱部材4と、加熱部材4を布帛9に対して移動自在に保持する枠体5と、布帛9に接触するように加熱部材4を移動させる移動手段8と、を備えた布帛用乾燥装置1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛を支持する支持部材と、
前記布帛に接触して前記布帛を加熱するローラ状の回転自在な加熱部材と、
前記加熱部材を前記布帛に対して移動自在に保持する枠体と、
前記布帛に接触するように前記加熱部材を移動させる移動手段と、
を備えた布帛用乾燥装置。
【請求項2】
請求項1記載の布帛用乾燥装置において、
前記加熱部材を複数有することを特徴とする布帛用乾燥装置。
【請求項3】
請求項2記載の布帛用乾燥装置において、
複数の前記加熱部材はそれぞれ同じ方向に移動することを特徴とする布帛用乾燥装置。
【請求項4】
請求項2記載の布帛用乾燥装置において、
複数の前記加熱部材の少なくとも一つは他の前記加熱部材とは異なる方向に移動することを特徴とする布帛用乾燥装置。
【請求項5】
布帛に画像を形成する画像形成部と、
前記布帛に接触して前記布帛を加熱するローラ状の回転自在な加熱部材と、前記加熱部材を前記布帛に対して移動自在に保持する枠体と、前記布帛に接触するように前記加熱部材を移動させる移動手段と、を備えた乾燥部と、
前記布帛を支持し、該布帛を前記画像形成部と前記乾燥部とに対向させる移動自在な支持部と、
前記支持部に支持された前記布帛と前記画像形成部及び前記乾燥部とを接離させる接離手段と、
を備えた布帛用画像形成装置。
【請求項6】
請求項5記載の布帛用画像形成装置において、
前記加熱部材を複数有することを特徴とする布帛用画像形成装置。
【請求項7】
請求項6記載の布帛用画像形成装置において、
複数の前記加熱部材はそれぞれ同じ方向に移動することを特徴とする布帛用画像形成装置。
【請求項8】
請求項6記載の布帛用画像形成装置において、
複数の前記加熱部材の少なくとも一つは他の前記加熱部材とは異なる方向に移動するこことを特徴とする布帛用画像形成装置。
【請求項9】
布帛に画像を形成する画像形成装置と、
前記布帛に接触して前記布帛を加熱するローラ状の回転自在な加熱部材と、前記加熱部材を前記布帛に対して移動自在かつ接離自在に保持する枠体と、前記布帛に接触するように前記加熱部材を移動させる移動手段と、を備えた乾燥装置と、
前記布帛を支持し、該布帛を前記画像形成装置と前記乾燥装置とに対向させる移動自在な支持装置と、
前記支持装置に支持された前記布帛と前記乾燥装置とを接離させる接離装置と、
を備えた布帛用画像形成システム。
【請求項10】
請求項9記載の布帛用画像形成システムにおいて、
前記加熱部材を複数有することを特徴とする布帛用画像形成システム。
【請求項11】
請求項10記載の布帛用画像形成システムにおいて、
複数の前記加熱部材はそれぞれ同じ方向に移動することを特徴とする布帛用画像形成システム。
【請求項12】
請求項10記載の布帛用画像形成システムにおいて、
複数の前記加熱部材の少なくとも一つは他の前記加熱部材とは異なる方向に移動するこことを特徴とする布帛用画像形成システム。
【請求項13】
請求項9ないし12の何れか一つに記載の布帛用画像形成システムにおいて、
前記接離装置は前記支持装置に支持された前記布帛を前記乾燥装置に対して接離させることを特徴とする布帛用画像形成システム。
【請求項14】
請求項9ないし12の何れか一つに記載の布帛用画像形成システムにおいて、
前記接離装置は前記支持装置に支持された前記布帛に対して前記乾燥装置を接離させることを特徴とする布帛用画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布帛用乾燥装置及び布帛用画像形成装置及び布帛用画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、布帛用の画像形成装置における画像定着時や、画像形成工程の前に布帛に塗布される前処理剤の乾燥時において、布帛より発生する蒸気を逃がしながら簡単かつ短時間で定着や乾燥を行う布帛用乾燥装置が知られている。
布帛用のインクジェット方式による画像形成装置では、画像を形成した後の布帛に対して熱及び圧力を作用させてインクを定着させる必要があるが、一般的な布帛用乾燥装置では熱源として平らなヒータを用いているため、定着時において布帛に塗布されたインクとヒータとの間には隙間が形成されない構成である。
【0003】
上述の構成より、隙間がないためにインクが加熱された際に発生する蒸気の逃げ場がなくなり、蒸気が滞留することでヒータの熱がインクに伝わりにくくなって定着の阻害要因となるため、定着時間を長くする必要があるという問題点がある。
また、インクのみならずインクの前に画質や堅牢性改善のために布帛に塗布される前処理剤を乾燥させる際にも、インクと同様に加熱によって蒸気が発生する。このため、ヒータを接触させて乾燥する際に蒸気の逃げ場がなくなり、乾燥時間を長くする必要がある。ただし、前処理剤の場合はインクの場合とは異なり、長時間加熱すると前処理剤の成分が析出して布帛が白化してしまうという問題点がある。
【0004】
上述の問題点を解決するため、インク定着方法及び前処理剤の乾燥方法として、布帛用乾燥装置の熱を布帛に対して非接触で与える方法が用いられるが、この場合にはインク内部の樹脂成分を十分に加熱することができないため、堅牢性に劣る若しくは十分に加熱するために定着時間が長くなるという問題点がある。
他の方法として、手動で布帛用乾燥装置の開閉を繰り返して蒸気を逃がすという方法も考えられるが、定着時や前処理剤の乾燥時に布帛用乾燥装置を操作する操作者が必要となり、効率化が難しいという問題点がある。また、自動で開閉を繰り返す布帛用乾燥装置も知られているが、コストが高すぎるという問題点がある。
【0005】
上述した問題点を解決すべく、処理剤が塗布された布を熱処理する際に、処理剤に含まれる水分が加熱されることにより生じる蒸気が布やヒートプレス機を濡らす可能性を低減する技術が提案されている(例えば「特許文献1」参照)。
「特許文献1」には、布を支持する補助部材と底壁及び側壁を有する貯留部とを備え、底壁及び側壁は貯留対象物を貯留する貯留空間を形成すると共に、貯留対象物の第1方向に沿う移動を案内し、貯留対象物の第2方向に沿う移動を規制する溝を有する布支持台が開示されている。
この技術によれば、貯留対象物が貯留部から第2方向に漏れ出る可能性が低減するため、貯留対象物が布及びヒートプレス機に接触しにくくなり、布及びヒートプレス機が濡れる可能性を低減できるとされている。
【0006】
また他の技術として、装置の大型化を防止すると共に布地に画像を付与するときの作業性を向上する技術が開示されている(例えば「特許文献2」参照)。
「特許文献2」には、布地を保持するトレイが装着される受け部材と、布地を加熱する加熱手段とを備え、加熱手段は、トレイに保持された布地に対向する平面部材と、平面部材を加熱する発熱部材と、平面部材側とは反対側に発熱部材の熱が拡散することを防止する断熱部材とを有する布帛加熱装置が開示されている。
この技術によれば、布地に画像を付与するときの作業性が向上するとされている。
【0007】
さらに他の技術として、小型化及び操作の容易化ができ、さらに安全性を備えた布帛用加熱装置の提供を目的とした技術が開示されている(例えば「特許文献3」参照)。
「特許文献3」には、箱状容器と平板とを有するカセットと、加熱板を内蔵する本体と、本体に設けられたカセットを着脱するための挿入口と、加圧加熱処理と非接触化熱処理とを単一の加熱板で行うべく加熱板の位置を切り替える加熱板位置切り替え機構とを備えた布帛用加熱装置が開示されている。
この技術によれば、安全性を達成でき、取り扱いが極めて容易であり、簡便性及び作業時間の短縮を図ることができ、小型化をも達成可能な布帛用加熱装置を得ることができるとされている。
【0008】
さらに他の技術として、湾曲平面を有する物体に対しても極めて容易に乾燥や加工を施すことが可能なアイロンの提供を目的とした技術が開示されている(例えば「特許文献4」参照)。
「特許文献4」には、回転自在な加熱式ロール体の表面にフッ素系熱収縮性チューブ層を設けた回転式アイロンが開示されている。
この技術によれば、耐薬品性、非粘着性を有することから塗装面の乾燥や溶剤混合物質の乾燥にも使用できると共に、被乾燥面が湾曲状のものでも容易に適用でき、さらに製造が極めて容易であるという効果を有するとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし「特許文献1」に開示された技術では、布を加熱する加熱板に対して布及び多孔質部材を介した反対側に貯留対象物を移動させる溝が設けられているため、加熱板と布との接触面で発生した貯留対象物である蒸気が溝を介して移動するためには、蒸気が時間を掛けて布の内部を通過する必要がある。このため、布の内部を通過する際に蒸気が冷却されて水となり、布が濡れてしまうという問題点がある。
また、被画像形成物が蒸気を逃がしにくい特性(例えば生地が厚い、生地の目が詰まっていて蒸気を通しにくい、生地が布や紙のように隙間を有するものではなくガラス繊維のような隙間のないもの)の場合には、被画像形成物の内部を蒸気が通過できないため、蒸気が溝に移動できずに回収することができないという問題点がある。この問題点は、「特許文献2」、「特許文献3」、「特許文献4」に開示された他の技術でも解決することはできない。
本発明は上述した問題点を解決し、どのような被画像形成物であっても乾燥時や定着時に被画像形成物や画像形成装置が蒸気によって濡れることを防止でき、加熱時間を短縮して効率的かつ安価に確実な前処理工程や定着工程を行うことが可能な布帛用乾燥装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、布帛を支持する支持部材と、前記布帛に接触して前記布帛を加熱するローラ状の回転自在な加熱部材と、前記加熱部材を前記布帛に対して移動自在に保持する枠体と、前記布帛に接触するように前記加熱部材を移動させる移動手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加熱時間を短縮して効率的かつ安価に前処理工程や定着工程を行うことが可能な布帛用乾燥装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係る布帛用乾燥装置の概略図である。
図2】本発明の第1の実施形態に用いられる加熱ローラを説明する概略図である。
図3】閉塞位置を占めたヒートプレス装置を示す概略図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る布帛用乾燥装置の概略図である。
図5】本発明の第3の実施形態に係る画像形成装置の概略図である。
図6】本発明の第4の実施形態に係る画像形成システムの概略正面図である。
図7】本発明の第4の実施形態に係る画像形成システムの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る布帛用乾燥装置を示している。同図において布帛用乾燥装置1は、支持部材としての布帛取付台2、布帛取付台2に対して開閉自在に設けられたヒートプレス装置3を有している。ヒートプレス装置3は、加熱部材である加熱ローラ4、加熱ローラ4を回転自在かつ移動自在に支持する枠体5、加熱ローラ4に発熱のための電力を供給する電力供給部6、加熱ローラ4及び電力供給部6を図1に両矢印で示す移動範囲7内において往復移動させる移動手段8等を備えている。
布帛取付台2は、その上面である載置面2aに装着される布帛としてのTシャツ等の布地9を保持する機能を有し、載置面2a上に載置された布地9は図示しない部材によって伸長された状態で保持される。布地9には、インクジェットプリンタ等の図示しない画像形成装置によって、図に二点鎖線で示す画像形成領域10に画像が形成される。なお、画像形成領域10には、画像形成に先立ち前処理剤が塗布される場合がある。
【0014】
ヒートプレス装置3は布帛取付台2に対して開閉可能に設けられており、図1における枠体5の下端と布帛取付台2の上端とは図示しないヒンジによって接続され、布帛取付台2に対して枠体5が回動可能に取り付けられている。ヒートプレス装置3は、図1において時計回り方向11aに回動することにより枠体5が載置面2aから離間する開放位置を占め、反時計回り方向11bに回動することにより枠体5が載置面2aに対して接触する閉塞位置を占める。
【0015】
枠体5は矩形状に囲まれた形状を呈し内部に空間5aが形成されており、図1において載置面2aと相対する面と対向する面には背板12が配置されている。背板12は加熱ローラ4が外部に露出することを防止するために設けられており、背板12としては耐熱性樹脂等の熱伝導率が低く加熱ローラ4の熱量を外部に伝えにくい材質のものが用いられている。これにより、加熱ローラ4の発熱中に操作者が背板12に触れた場合に、操作者の安全性が確保される。背板12には、加熱ローラ4が水分を含んだ布地9に接触した際に生じる蒸気を、空間5aから外部に放出させるための貫通穴12aが複数個設けられている。
【0016】
加熱ローラ4は、載置面2aに載置された布地9に接触して加熱すべく回転自在に設けられ、かつ移動範囲7内において往復移動可能に設けられたローラ状加熱部材である。加熱ローラ4は枠体5の空間5a内に配置されており、その支軸4aが枠体5に形成された案内溝13内を案内されることによって移動範囲7内において往復移動可能に構成されている。加熱ローラ4については後述する。
案内溝13は枠体5の両側部を貫通する態様で設けられており、加熱ローラ4を所定方向に移動範囲7内で案内する機能を有している。この所定方向とは、ヒートプレス装置3が布帛取付台2に対して閉塞位置を占めたときに、図1において下方向である装置の前方向F及び図1において上方向である装置の後方向R(以下、前後方向FRともいう)であり、布帛取付台2に保持された布地9に設けられた画像形成領域10の全領域を少なくとも覆う方向を指す。
さらに案内溝13は、ヒートプレス装置3が布帛取付台2に対して閉塞位置を占めたときに、加熱ローラ4が布地9に接触して加熱した際に生じる蒸気(水蒸気)等の気体を空間5aの外部に放出させる放出部を兼用している。
【0017】
ここで、図2を参照して加熱ローラ4の断面構成について説明する。加熱ローラ4の断面は、内側から外側に向かって順に、支軸4aを備えた軸心部14、断熱層15、加熱源としてニクロム線等を用いた加熱体16、金属層17、耐熱性ゴム層18、表面被覆層19を有している。耐熱性ゴム層18としてはシリコン系ゴム等が、表面被覆層19としては耐熱性、耐薬品性、被粘着性に優れたフッ素系熱収縮樹脂等が用いられる。また図1に示すように、加熱ローラ4の両端部は電気絶縁性を有する被覆ロール体20によって被覆されている。
【0018】
加熱ローラ4は、軸心部14から被覆ロール体20の外側に突出するように支軸4aが設けられており、被覆ロール体20と軸心部14との間には被覆ロール体20を回転自在に支持する図示しない軸受が設けられている。また加熱ローラ4は、ヒートプレス装置3が閉塞位置を占めたときに、載置面2a上の布地9に対して所定の圧接力で圧接する位置に配置されている。これにより加熱ローラ4は、布地9との接触による摩擦によって被覆ロール体20を回転させて支軸4aが案内溝13上を転動することにより、所定方向への移動が可能に構成されている。
なお、加熱ローラ4の支持構造はこれに限られず、加熱ローラ4と布地9との接触による摩擦によって加熱ローラ4が回転し、支軸4aが案内溝13上を転動して移動可能であればどのような構成であってもよい。
【0019】
一方の支軸4aの近傍には、加熱ローラ4を構成する加熱体16に電力を供給して発熱させる電力供給部6が配置されている。電力供給部6には外部の電源に接続された図示しない電源コードが接続されており、電力供給部6と加熱体16とは公知の方法、例えば図示しない電源コードの先端をブラシ状として加熱体16に回転リングを取り付ける方法等によって接続されている。電力供給部6は支軸4aに接続されており、加熱ローラ4と一体的に所定方向へ移動可能に構成されている。
【0020】
加熱ローラ4及びこれと一体的に移動可能に設けられた電力供給部6の近傍には、加熱ローラ4及び電力供給部6を移動させる移動手段8が配置されている。移動手段8は一般的なものが採用され、例えば支軸4aと同軸上にピニオンを設け、このピニオンに噛み合うラックを案内溝13に沿って配置し、ピニオンをモータによって回転させるラックアンドピニオン機構が採用される。この構成により、モータが正逆回転することによって加熱ローラ4及び電力供給部6が図1に実線で示す位置と二点鎖線で示す位置との間、すなわち移動範囲7内において往復移動する。移動手段8としてはラックアンドピニオン機構に限定されず、他の構成、例えばモータ及びタイミングプーリ及びタイミングベルトを用いた周知の構成を採用してもよい。
【0021】
次に、布帛用乾燥装置1の動作について説明する。
先ず操作者は、図1に示すようにヒートプレス装置3を開放位置に位置させて布帛取付台2に布地9を保持させる。ここで布帛取付台2に保持される布地9は、少なくとも画像形成領域10に対して前処理剤が塗布された状態あるいはインクによる画像形成が行われた状態であり、湿潤状態であって乾燥あるいは定着が必要な状態である。次に操作者は、ヒートプレス装置3を反時計回り方向11bに回動させ、ヒートプレス装置3を図3に示す閉塞位置に位置決めさせる。ヒートプレス装置3が閉塞位置を占めた後、布帛用乾燥装置1に設けられている図示しないスタートスイッチがオンされることにより、布帛用乾燥装置1の動作が開始される。
【0022】
図示しないスタートスイッチがオンされると、電力供給部6から加熱体16への電力供給が開始されて加熱ローラ4が発熱を開始する。そして、加熱ローラ4の温度が所定の温度に達したことが図示しない温度検知手段によって検知されると移動手段8が作動して、布地9に接触している加熱ローラ4及び電力供給部6が移動範囲7内において往復移動を開始する。このように発熱した加熱ローラ4が布地9に直接接触して転動することにより、画像形成領域10が効率的に加熱されて乾燥あるいは定着が行われる。
【0023】
発熱した加熱ローラ4が上述した湿潤状態の布地9に接触すると、布地9に含まれたインクや前処理剤等の水分が熱によって気化されて蒸気(水蒸気)が発生する。発生した蒸気は、図3に符号21で示すように各案内溝13及び各貫通穴12aから空間5aの外部へと排出される。このように、発熱した加熱ローラ4が直接接触しつつ布地9上を転動することにより、布地9に対する乾燥あるいは定着動作が完了する。布地9の温度や加熱ローラ4の移動量等から乾燥あるいは定着動作が完了したと判断されると、手動操作あるいは自動的に加熱ローラ4が図1に実線で示す初期位置に復帰する。
その後、手動操作あるいは自動的にヒートプレス装置3が開放位置に位置決めされ、乾燥あるいは定着動作が完了した布地9が布帛取付台2から取り外されて、布帛用乾燥装置1による一連の動作が完了する。
【0024】
ヒートプレス装置3の開閉動作、すなわち開放位置と閉塞位置とに選択的に位置決めさせる動作を手動操作で行う場合には、ヒートプレス装置3を開放位置で一時的に保持する機構、保持を解除する機構等が必要となる。これは、布帛取付台2に対して布地9を取り付けたり取り外したりする場合にはヒートプレス装置3が開放位置を占めている必要があり、布地9の取り扱い時に安全性を向上させるためである。ヒートプレス装置3の開閉動作を自動的に行う場合には、ヒンジに代えて布帛取付台2に回動自在に支持されヒートプレス装置3が取り付けられた回動軸を設け、回動軸を所定の角度で回転駆動するサーボモータあるいはステッピングモータを用いる構成等が挙げられる。
また、移動手段8を用いずに加熱ローラ4を手動で移動させる構成としてもよい。この場合の一例として、支軸4aの両端部を各案内溝13からそれぞれ突出させ、突出した両端部を背板12の上部で一体化させて把持部を形成し、形成された把持部を把持して加熱ローラ4を移動範囲7内で往復移動させる構成が挙げられる。この場合には把持部が移動手段として機能する。
【0025】
上述した従来技術では、乾燥あるいは定着動作時において布地と加熱部材とが接触した状態であるため、蒸気の逃げ場がなくなり発生した蒸気によって布地や装置内部が濡れてしまい種々の問題点が生じていた。しかし本発明の構成では、布地9に接触した加熱ローラ4は移動によりその位置を変位させており、布地9における加熱ローラ4との非接触部位が常に存在するため、蒸気21の逃げ場を常に確保することができる。これにより、布帛取付台2からヒートプレス装置3を開放して蒸気21を逃がす構成と同様の作用効果を得ることができ、乾燥あるいは定着時間の短縮化、前処理剤による布地9の白化防止、作業効率の向上、及びコストダウンの達成という各種の作用効果を得ることができる。
さらに、加熱ローラ4が布地9に対して直接接触するので、短時間で堅牢性に優れた画像形成がなされた布地を得ることができる。また、加熱ローラ4が移動範囲7の全般にわたって移動するので、少なくとも布地9の画像形成領域10の全領域を加熱することが可能となる。これにより、布地9の定着工程あるいは乾燥工程を確実に行うことができる。
従って本発明によれば、加熱時間を短縮して効率的かつ安価に確実な前処理工程や定着工程を行うことが可能な布帛用乾燥装置を提供することが可能となる。
【0026】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る布帛用乾燥装置を示している。布帛用乾燥装置1Aは、図1に示した布帛用乾燥装置1と比較すると、加熱ローラ4に代えて加熱部材として3本の加熱ローラ4A,4B,4Cを用いる点、各加熱ローラ4A,4B,4Cにそれぞれ対応して3個の電力供給部6を用いる点、移動手段8に代えて移動手段8A,8B,8Cを用いる点においてのみ相違しており、他の構成は同様である。
各加熱ローラ4A,4B,4Cはそれぞれ加熱ローラ4と同様に構成されており、それぞれの支軸には対応する電力供給部6が一体的に接続されている。各加熱ローラ4A,4B,4Cはそれぞれ所定の間隔をおいて配置されており、それぞれ移動範囲7A,7B,7C内において往復移動可能に設けられている。
【0027】
加熱ローラ4A及びこれと一体的に移動可能に設けられた電力供給部6の近傍には移動手段8と同様の移動手段8Aが設けられている。同様に、加熱ローラ4B及びこれと一体的に移動可能に設けられた電力供給部6の近傍には移動手段8Bが、加熱ローラ4C及びこれと一体的に移動可能に設けられた電力供給部6の近傍には移動手段8Cがそれぞれ設けられている。
移動手段8Aは加熱ローラ4A及び電力供給部6を往復移動可能に、移動手段8Bは加熱ローラ4B及び電力供給部6を往復移動可能に、移動手段8Cは加熱ローラ4C及び電力供給部6を往復移動可能にそれぞれ構成されている。各移動手段8A,8B,8Cはそれぞれ独立して対応する加熱ローラ4A,4B,4C及び電力供給部6を往復移動させる構成であり、各移動手段8A,8B,8Cの駆動部には制御部22からそれぞれ駆動用の制御信号が出力される。
【0028】
制御部22からの制御信号に基づき、各加熱ローラ4A,4B,4Cはそれぞれ対応する移動範囲7A,7B,7Cにおいて往復移動を開始する。このとき各加熱ローラ4A,4B,4Cは、全てが同じ方向に移動する構成、少なくとも一つは他の加熱ローラとは異なる方向に移動する構成の何れも採用可能である。
各加熱ローラ4A,4B,4Cを全て同じ方向に移動させる構成では、第1の実施形態に比して定着工程や乾燥工程の時間を短縮することができると共に、各移動手段8A,8B,8Cの構成及び動作制御を簡略化でき、コストダウンを図ることができる。
各加熱ローラ4A,4B,4Cの少なくとも一つを他の加熱ローラとは異なる方向に移動させる構成では、第1の実施形態に比して定着工程や乾燥工程の時間を短縮することができると共に、各加熱ローラを一方向に移動する場合に比して定着工程や乾燥工程の時間を短縮することができる。
なお、本実施形態では加熱ローラの数量を3本としたが、加熱ローラの本数は2本以上であって枠体内での効率的な移動が可能であれば何本でもよい。
【0029】
図5は、本発明の第3の実施形態に係る布帛用画像形成装置を示している。同図において布帛用画像形成装置23は、装置本体24の内部に、布帛に対して画像形成を行う画像形成部25、布帛に対して定着動作を含めた乾燥動作を行う乾燥部26、布帛を支持する支持部27を備えている。
インクジェット方式の画像形成部25は、インクを吐出する記録ヘッド、記録ヘッドを保持するキャリッジ、キャリッジを移動自在に案内するキャリッジガイド部材、キャリッジを移動させるキャリッジ移動機構等を有する周知の構成である。
乾燥部26は、上述した加熱ローラ4、枠体5と同様の枠体、電力供給部6と同様の電力供給部、移動手段8と同様の移動手段を備えており、ヒートプレス装置3と同様に構成されている。加熱ローラ4及び電力供給部は、駆動手段の作動により図5に実線及び破線で示す位置と二点鎖線で示す位置との間を往復移動する。
【0030】
支持部27は、布帛が保持される取付台28、取付台28に保持された布帛を画像形成部25及び乾燥部26に対して接離させる接離手段としてのリフタ29等を備えている。支持部27は、図示しないレール部材に案内されて図示しない移動機構により移動自在に構成されており、図5に実線で示す画像形成部25に対向する画像形成位置と、図5に一点鎖線で示す乾燥部26に対向する乾燥位置と、図5に二点鎖線で示す装置本体24から露出した露出位置とを選択的に占める。
リフタ29は、取付台28上の布帛を、図に示す離間位置とこの離間位置から画像形成部25及び乾燥部26に対して近接する近接位置との間で変位させる。支持部27が乾燥位置を占めているとき、リフタ29が作動して取付台28を近接位置に位置させると、取付台28に保持された布帛が所定の圧力で加熱ローラ4に圧接する。リフタ29は、取付台28を上下動可能なシリンダ等の周知の構成が採用される。
【0031】
上述した布帛用画像形成装置23の動作について説明する。布帛用画像形成装置23の操作者は、先ず布帛用画像形成装置23の操作部を操作して支持部27を露出位置に位置決めさせ、取付台28上に画像形成すべき布帛を保持させる。このとき、布帛に対して前処理が必要な場合には、布帛に対して手動で前処理剤を塗布してもよいし、画像形成部25における記録ヘッドのうちの一部のヘッドから前処理液を吐出する構成としてもよい。前処理剤が塗布された場合には、操作者は支持部27を乾燥位置に位置決めさせた後にリフタ29を作動させて取付台28を近接位置に位置させる。
取付台28が近接位置を占めると加熱ローラ4が発熱を開始し、加熱ローラ4が所定の温度に到達すると移動手段が作動して、加熱ローラ4が図5の実線位置と二点鎖線位置との間で往復移動を開始して乾燥動作が開始される。発熱した加熱ローラ4が布帛に接触すると、布帛に含まれる前処理剤が気化されて蒸気が発生し、発生した蒸気は枠体の各案内溝や各貫通穴から枠体の外部へと排出され、さらに装置本体24に設けられた図示しない貫通穴から装置本体24の外部に排出される。
【0032】
布帛の温度や加熱ローラ4の移動量等から乾燥動作が完了したと判断されると、リフタ29が作動して取付台28が離間位置に復帰する。その後、操作者の操作により画像形成動作が開始されると、図示しない移動機構が作動して支持部27が乾燥位置から画像形成位置に変位される。なお、露出位置において取付台28に布帛を保持させた後、前処理動作を行わずに画像形成動作を行う場合には、支持部27は露出位置から画像形成位置に変位される。
支持部27が画像形成位置を占めた後、リフタ29が作動して取付台28が近接位置へと移動された後にキャリッジ移動機構が作動し、取付台28上の布帛に対して記録ヘッドがインクを吐出しながら移動して画像形成動作が行われる。そして布帛上に所望の画像が形成されると、キャリッジ移動機構の作動が停止すると共に記録ヘッドからのインクの吐出が停止した後、リフタ29が作動して取付台28が離間位置に復帰する。
【0033】
取付台28が離間位置を占めると、図示しない移動機構が作動して支持部27が画像形成位置から乾燥位置に変位された後、リフタ29が作動して取付台28が近接位置に移動される。取付台28が近接位置を占めると加熱ローラ4が発熱を開始し、乾燥動作と同様に加熱ローラ4による布帛の定着動作が行われる。定着動作時に布帛から発生した蒸気は枠体の各案内溝や各貫通穴から枠体の外部へと排出され、さらに装置本体24に設けられた図示しない貫通穴から装置本体24の外部に排出される。布帛の温度や加熱ローラ4の移動量等から定着動作が完了したと判断されると、リフタ29が作動して取付台28が離間位置に復帰して定着動作が完了する。
この一連の動作により、第1の実施形態と同様の作用効果、すなわち加熱時間を短縮して効率的かつ安価に確実な前処理工程や定着工程を行うことが可能な布帛用画像形成装置を提供できるという作用効果を得ることができる。
【0034】
第3の実施形態では、前処理動作を行う際に支持部27を露出位置に位置させて手動で前処理剤を塗布させる構成としたが、布帛に対して自動的に前処理剤を塗布する構成を画像形成部25に設ける構成を採用してもよい。この場合には、画像形成動作及び定着動作と同様に、前処理剤の塗布動作を画像形成位置にて行い乾燥動作を乾燥位置にて行う。これにより、前処理動作及び乾燥動作を自動的に行うことができ、さらに乾燥動作に引き続き画像形成動作及び定着動作を行うことができ、一連の工程を全自動で行うことにより工程の簡易化及び短縮化を図ることができる。
【0035】
布帛用画像形成装置23において、第2の実施形態で用いた各加熱ローラ4A,4B,4C、各電力供給部6、各移動手段8A,8B,8Cを、加熱ローラ4及び電力供給部及び移動手段に代えて用いる構成を採用してもよい。
この構成により、第2の実施形態と同様の作用効果、すなわち各移動手段8A,8B,8Cの構成及び動作制御を簡略化できコストダウンを図ることができるという作用効果、各加熱ローラを一方向に移動する場合に比して定着工程や乾燥工程の時間を短縮することができるという作用効果を得ることができる。
【0036】
図6は本発明の第4の実施形態に係る布帛用画像形成システムの概略正面図を、図7は同布帛用画像形成システムの概略側面図をそれぞれ示している。同図において布帛用画像形成システム30は、布帛に対して画像形成を行う画像形成装置31、布帛に対して定着動作を含めた乾燥動作を行う乾燥装置32、布帛を支持する支持装置33を備えている。
インクジェット方式の画像形成装置31は、インクを吐出する記録ヘッド、記録ヘッドを保持するキャリッジ、キャリッジを移動自在に案内するキャリッジガイド部材、キャリッジを移動させるキャリッジ移動機構等を有する、上述した画像形成部25と同様の周知の構成である。
乾燥装置32は、上述した加熱ローラ4、枠体5と同様の枠体、電力供給部6と同様の電力供給部、移動手段8と同様の移動手段を備えており、ヒートプレス装置3と同様に構成されている。加熱ローラ4及び電力供給部は、駆動手段の作動により図6に実線及び破線で示す位置と二点鎖線で示す位置との間を往復移動する。
【0037】
支持装置33は、布帛が保持される取付台34、取付台34に保持された布帛を乾燥装置32に対して接離させる接離装置としてのリフタ35等を備えている。支持装置33は、図示しないレール部材に案内されて図示しない移動機構により移動自在に構成されており、画像形成装置31内に進入して取付台34上の布帛が画像形成に供される画像形成位置と、図6に示す乾燥装置32に対向する乾燥位置とを選択的に占める。
リフタ35は、取付台34上の布帛を、図6に示す離間位置とこの離間位置から乾燥装置32に対して近接する近接位置との間で変位させる。支持装置33が乾燥位置を占めているとき、リフタ35が作動して取付台34を近接位置に位置させると、取付台34に保持された布帛が所定の圧力で加熱ローラ4に圧接する。支持装置33が画像形成位置を占めたときには、リフタ35が非作動状態すなわち取付台34が図6に示す高さである離間位置を占めた状態で、取付台34上の布帛は画像形成装置31の画像形成部と相対して画像形成が可能な状態となる。リフタ35としては、リフタ29と同様にシリンダ等の周知の構成が採用される。
【0038】
上述した布帛用画像形成システム30の動作について説明する。布帛用画像形成システム30の操作者は、先ず布帛用画像形成システム30の操作部を操作して支持装置33を乾燥位置に位置決めさせ、取付台34上に画像形成すべき布帛を保持させる。このとき、布帛に対して前処理が必要な場合には、布帛に対して手動で前処理剤を塗布する。前処理剤が塗布された場合には、操作者はリフタ35を作動させて取付台34を近接位置に位置させる。
取付台34が近接位置を占めると加熱ローラ4が発熱を開始し、加熱ローラ4が所定の温度に到達すると移動手段が作動して、加熱ローラ4が図6の実線位置と二点鎖線位置との間で往復移動を開始して乾燥動作が開始される。発熱した加熱ローラ4が布帛に接触すると、布帛に含まれる前処理剤が気化されて蒸気が発生し、発生した蒸気は枠体の各案内溝や各貫通穴から枠体の外部へと排出される。
【0039】
布帛の温度や加熱ローラ4の移動量等から乾燥動作が完了したと判断されると、リフタ35が作動して取付台34が離間位置に復帰する。その後、操作者の操作により画像形成動作が開始されると、図示しない移動機構が作動して支持装置33が乾燥位置から画像形成位置に変位される。なお、乾燥位置において取付台34に布帛を保持させた後、前処理動作を行わずに画像形成動作を行う場合には、支持装置33は乾燥位置から画像形成位置に変位される。
支持装置33が画像形成位置を占めた後、キャリッジ移動機構が作動して取付台34上の布帛に対して記録ヘッドがインクを吐出しながら移動して、画像形成動作が行われる。そして布帛上に所望の画像が形成されると、キャリッジ移動機構の作動が停止すると共に記録ヘッドからのインクの吐出が停止して画像形成動作が完了する。
【0040】
画像形成動作が完了すると、図示しない移動機構が作動して支持装置33が画像形成位置から乾燥位置に変位された後、リフタ35が作動して取付台34が近接位置に移動される。取付台34が近接位置を占めると加熱ローラ4が発熱を開始し、乾燥動作と同様に加熱ローラ4による布帛の定着動作が行われる。定着動作時に布帛から発生した蒸気は枠体の各案内溝や各貫通穴から枠体の外部へと排出される。布帛の温度や加熱ローラ4の移動量等から定着動作が完了したと判断されると、リフタ35が作動して取付台34が離間位置に復帰して定着動作が完了する。
この一連の動作により、第1の実施形態と同様の作用効果、すなわち加熱時間を短縮して効率的かつ安価に確実な前処理工程や定着工程を行うことが可能な布帛用画像形成システムを提供できるという作用効果を得ることができる。
【0041】
第4の実施形態では、前処理動作を行う際に支持装置33を乾燥位置に位置させて手動で前処理剤を塗布させる構成としたが、第3の実施形態と同様に、布帛に対して自動的に前処理剤を塗布する構成を画像形成装置31に設ける構成を採用してもよい。一例として、画像形成装置31における記録ヘッドのうちの一部のヘッドから前処理液を吐出する構成が挙げられる。この場合には、画像形成動作及び定着動作と同様に、前処理剤の塗布動作を画像形成位置にて行い乾燥動作を乾燥位置にて行う。これにより、一連の工程を全自動で行うことにより工程の簡易化及び短縮化を図ることができる。
【0042】
布帛用画像形成システム30において、第2の実施形態で用いた各加熱ローラ4A,4B,4C、各電力供給部6、各移動手段8A,8B,8Cを、加熱ローラ4及び電力供給部及び移動手段に代えて用いる構成を採用してもよい。
この構成により、第2の実施形態と同様の作用効果、すなわち各移動手段8A,8B,8Cの構成及び動作制御を簡略化できコストダウンを図ることができるという作用効果、各加熱ローラを一方向に移動する場合に比して定着工程や乾燥工程の時間を短縮することができるという作用効果を得ることができる。
【0043】
第4の実施形態では、取付台34上に保持された布帛と加熱ローラ4とを接離させる接離装置としてのリフタ35を支持装置33に設ける構成を示した。この構成によれば、支持装置33が接離装置を備えているため、例えば画像形成装置31内に設けられた画像形成部や前処理剤塗布装置に対して取付台34上に保持された布帛を最適な高さまで位置決めすることができ、布帛に対する前処理剤の塗布動作及び画像形成動作を良好に行うことができる。
第4の実施形態の変形例として、加熱ローラ4を保持する枠体を乾燥装置32の装置本体に対して上下動自在に設け、取付台34上に保持された布帛に対して加熱ローラ4を接離させる接離装置を、図6に符号36で示すように乾燥装置32側に設ける構成を採用してもよい。この構成によれば、乾燥装置32が接離装置36を備えているため、支持装置33の構成を簡易化できコストダウンを図ることができる。
【0044】
上記各実施形態では、本発明が適用可能な被記録媒体である布帛としてTシャツである布地9を用いる構成を示したが、布帛はTシャツの他にトレーナ等の衣服として加工された布地、ハンカチやタオル等の一枚で形成される布地、トートバッグ等の製品の一部となっている布地等も含まれる。
【0045】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
[1]布帛を支持する支持部材と、前記布帛に接触して前記布帛を加熱するローラ状の回転自在な加熱部材と、前記加熱部材を前記布帛に対して移動自在に保持する枠体と、前記布帛の全面に接触するように前記加熱部材を移動させる移動手段と、前記支持部材に支持された前記布帛と前記加熱部材とを接離させる接離手段と、を備えた布帛用乾燥装置である。
[2]前記加熱部材を複数有することを特徴とする[1]に記載の布帛用乾燥装置である。
[3]複数の前記加熱部材はそれぞれ同じ方向に移動することを特徴とする[1]に記載の布帛用乾燥装置である。
[4]複数の前記加熱部材の少なくとも一つは他の前記加熱部材とは異なる方向に移動することを特徴とする[2]に記載の布帛用乾燥装置である。
[5]布帛に画像を形成する画像形成部と、前記布帛に接触して前記布帛を加熱するローラ状の回転自在な加熱部材と、前記加熱部材を前記布帛に対して移動自在に保持する枠体と、前記布帛の全面に接触するように前記加熱部材を移動させる移動手段と、を備えた乾燥部と、前記布帛を支持し、該布帛を前記画像形成部と前記乾燥部とに対向させる移動自在な支持部と、前記支持部に支持された前記布帛と前記画像形成部及び前記乾燥部とを接離させる接離手段と、を備えた布帛用画像形成装置である。
[6]前記加熱部材を複数有することを特徴とする[5]に記載の布帛用画像形成装置である。
[7]複数の前記加熱部材はそれぞれ同じ方向に移動することを特徴とする[6]に記載の布帛用画像形成装置である。
[8]複数の前記加熱部材の少なくとも一つは他の前記加熱部材とは異なる方向に移動するこことを特徴とする[6]に記載の布帛用画像形成装置である。
[9]布帛に画像を形成する画像形成装置と、前記布帛に接触して前記布帛を加熱するローラ状の回転自在な加熱部材と、前記加熱部材を前記布帛に対して移動自在かつ接離自在に保持する枠体と、前記布帛の全面に接触するように前記加熱部材を移動させる移動手段と、を備えた乾燥装置と、前記布帛を支持し、該布帛を前記画像形成装置と前記乾燥装置とに対向させる移動自在な支持装置と、前記支持装置に支持された前記布帛と前記乾燥装置とを接離させる接離装置と、を備えた布帛用画像形成システムである。
[10]前記加熱部材を複数有することを特徴とする[9]に記載の布帛用画像形成システムである。
[11]複数の前記加熱部材はそれぞれ同じ方向に移動することを特徴とする[10]に記載の布帛用画像形成システムである。
[12]複数の前記加熱部材の少なくとも一つは他の前記加熱部材とは異なる方向に移動するこことを特徴とする[10]に記載の布帛用画像形成システムである。
[13]前記接離装置は前記支持装置に支持された前記布帛を前記乾燥装置に対して接離させることを特徴とする[9]ないし[12]の何れか一つに記載の布帛用画像形成システムである。
[14]前記接離装置は前記支持装置に支持された前記布帛に対して前記乾燥装置を接離させることを特徴とする[9]ないし[12]の何れか一つに記載の布帛用画像形成システムである。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0047】
1,1A 布帛用乾燥装置
2 支持部材(布帛取付台)
4,4A,4B,4C 加熱部材(加熱ローラ)
5 枠体
8,8A,8B,8C 移動手段
9 布帛(布地)
23 布帛用画像形成装置
25 画像形成部
26 乾燥部
27 支持部
29 接離手段(リフタ)
30 布帛用画像形成システム
31 画像形成装置
32 乾燥装置
33 支持装置
35 接離装置(リフタ)
36 接離装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0048】
【特許文献1】特許第6620665号公報
【特許文献2】特許第6794798号公報
【特許文献3】特許第6238033号公報
【特許文献4】実開昭59-98898号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7