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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089983
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】感覚提示装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G06F3/01 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205575
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100171446
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 尚幸
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100171930
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 郁一郎
(72)【発明者】
【氏名】澤畠 康仁
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA08
5E555BA02
5E555BB02
5E555BC04
5E555BE17
5E555CB21
5E555CB22
5E555DA08
5E555DA24
5E555DB57
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】ユーザーの動きの位置の範囲等を極度に制限することなく、ユーザーに対して視覚や聴覚以外の感覚の提示をコントロールすることのできる感覚提示装置を提供する。
【解決手段】感覚提示装置は、帯電手段と、感覚制御部とを備える。帯電手段は、コロナ放電現象を起こして対象を帯電させる。感覚制御部は、帯電手段におけるコロナ放電の強さを制御する。なお、感覚提示装置は、前記対象が帯電した電荷を放電させるために前記対象に装着可能とした放電手段と、前記放電手段からアースへの接続のオン/オフを切り替えるスイッチとをさらに備えてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロナ放電現象を起こして対象を帯電させる帯電手段と、
前記帯電手段におけるコロナ放電の強さを制御する感覚制御部と、
を備える感覚提示装置。
【請求項2】
前記帯電手段がコロナ放電を起こす方向に設けられておりアースに接続された導電性マット、
をさらに備える請求項1に記載の感覚提示装置。
【請求項3】
前記対象が帯電した電荷を放電させるために前記対象に装着可能とした放電手段と、
前記放電手段からアースへの接続のオン/オフを切り替えるスイッチと、
をさらに備え、
前記感覚制御部は、前記スイッチのオン/オフを切り替える制御を行う、
請求項1に記載の感覚提示装置。
【請求項4】
前記感覚制御部は、前記対象の向きを検知し、前記対象の向きに応じて前記コロナ放電の強さを制御する、
請求項1に記載の感覚提示装置。
【請求項5】
前記感覚制御部は、映像を含んだ仮想現実コンテンツを出力するとともに、当該仮想現実コンテンツが想定する仮想空間における前記対象の向きと前記仮想空間内における仮想ターゲットの向きとの関係に応じて、前記コロナ放電の強さを制御する、
請求項4に記載の感覚提示装置。
【請求項6】
前記感覚制御部は、前記仮想空間における前記対象と前記仮想ターゲットとの間の距離にも応じて、前記コロナ放電の強さを制御する、
請求項5に記載の感覚提示装置。
【請求項7】
コロナ放電現象を起こして対象を帯電させる帯電手段におけるコロナ放電の強さを制御する感覚制御部、
としてコンピューターを機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感覚提示装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、VR(バーチャルリアリティ(Virtual Reality),仮想現実)やAR(オーグメンテッドリアリティ(Augmented Reality),拡張現実)に関する研究においては、視野外問題(out-of-view problem)という課題がある。視野外問題は、VRやARをユーザーに対して提示している状況において、視野外のオブジェクトをどのように気付かせるかという問題である。
【0003】
非特許文献1や非特許文献2には、ユーザーの視線(視野)が所望のオブジェクトの方向に向かうように誘導するために、視覚的あるいは聴覚的な補助情報を提示する技術が記載されている。例えば視覚を用いる場合には、ユーザーの視野内に矢印を表示させるといったことが行われる。また、聴覚を用いる場合には、空間音響を利用することなどが行われる。
【0004】
また、非特許文献3や非特許文献4には、静電気を用いてユーザーに感覚を与えるための技術が記載されている。静電気力による体性感覚刺激を提示することによってユーザーの注意を視野外に誘導できることは有効である。非特許文献3の図1図2図3などには、前腕部に静電気を帯電させて前腕表面の体毛を逆立たせるためのデバイスが記載されている。また、非特許文献4の図2などには、被験者の前腕部を置くことによって静電気を帯電させるためのシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Uwe Gruenefeld, Abdallah El Ali, Wilko Heuten, and Susanne Boll, Visualizing out-of-view objects in head-mounted augmented reality, In Proceedings of the 19th International Conference on Human-Computer Interaction with Mobile Devices and Services (MobileHCI ’17), Association for Computing Machinery, Article 81, 1-7, 2017年,https://doi.org/10.1145/3098279.3122124
【非特許文献2】Yuki Harada, Junji Ohyama, Quantitative evaluation of visual guidance effects for 360-degree directions, Virtual Reality (2022) 26:759-770, 2021年, https://doi.org/10.1007/s10055-021-00574-7
【非特許文献3】Shogo Fukushima and Hiroyuki Kajimoto, Facilitating a surprised feeling by artificial control of piloerection on the forearm, In Proceedings of the 3rd Augmented Human International Conference (AH ’12), Association for Computing Machinery, Article 8, 1-4, 2012年, https://doi.org/10.1145/2160125.2160133
【非特許文献4】Mikiko Karasawa and Hiroyuki Kajimoto, Presentation of a Feeling of Presence Using an Electrostatic Field: Presence-like Sensation Presentation Using an Electrostatic Field, In Extended Abstracts of the 2021 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (CHI EA '21), Association for Computing Machinery, Article 285, 1-4, 2021年, https://doi.org/10.1145/3411763.3451762
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来技術にはさらに次のような問題がある。非特許文献1や非特許文献2に記載された技術のように、ユーザーの視線(視野)を特定の方向に誘導するために視覚的あるいは聴覚的な補助情報(矢印の表示や、空間音響の使用など)を用いると、それらの補助情報が、本来の映像コンテンツや音声コンテンツに干渉してしまうという問題がある。また、非特許文献3や非特許文献4に記載された技術では、ユーザーの位置を制限する必要があった。つまり、従来技術による静電気提示装置は、高電圧を扱うものであるため、ユーザーの安全のためにユーザーが動ける範囲を制限していた。例えば、前腕部の位置を、静電気を与えるための装置の位置に固定することにより、ユーザーが動ける範囲を制限していた。つまり、ユーザーがある程度自由に動くことを前提としたVR/ARの環境では、非特許文献3や非特許文献4の技術を利用することが困難あるいは不可能であった。
【0007】
つまり、従来技術による静電気力の提示装置では、ユーザー(対象者)の動作は制限されることになる。従来技術による装置からユーザーが10センチメートル(cm)程度以上離れると、静電気力が低下することがわかっており、例えば360度VR映像視聴に合わせて静電気力を提示することは簡単ではないという問題があった。
【0008】
なお、例として説明したVRやARの用途に限らず、視覚や聴覚以外の方法を用いて、自由に動くことのできるユーザーに対して特定の感覚を提示できるようにできれば有用である。
【0009】
本発明は、上記のような事情を考慮して為されたものであり、ユーザー(感覚提示対象者)の動きの位置の範囲を極度に制限することなく、ユーザーに対して提示する感覚をコントロールすることのできる感覚提示装置およびプログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]上記の課題を解決するため、本発明の一態様による感覚提示装置は、コロナ放電現象を起こして対象を帯電させる帯電手段と、前記帯電手段におけるコロナ放電の強さを制御する感覚制御部と、を備える。
【0011】
[2]また、本発明の一態様は、上記[1]の感覚提示装置において、前記帯電手段がコロナ放電を起こす方向に設けられておりアースに接続された導電性マット、をさらに備える。
【0012】
[3]また、本発明の一態様は、上記[1]または[2]の感覚提示装置において、前記対象が帯電した電荷を放電させるために前記対象に装着可能とした放電手段と、前記放電手段からアースへの接続のオン/オフを切り替えるスイッチと、をさらに備え、前記感覚制御部は、前記スイッチのオン/オフを切り替える制御を行う、というものである。
【0013】
[4]また、本発明の一態様は、上記[1]から[3]までのいずれかの感覚提示装置において、前記感覚制御部は、前記対象の向きを検知し、前記対象の向きに応じて前記コロナ放電の強さを制御する、というものである。
【0014】
[5]また、本発明の一態様は、上記[4]の感覚提示装置において、前記感覚制御部は、映像を含んだ仮想現実コンテンツを出力するとともに、当該仮想現実コンテンツが想定する仮想空間における前記対象の向きと前記仮想空間内における仮想ターゲットの向きとの関係に応じて、前記コロナ放電の強さを制御する、というものである。
【0015】
[6]また、本発明の一態様は、上記[5]の感覚提示装置において、前記感覚制御部は、前記仮想空間における前記対象と前記仮想ターゲットとの間の距離にも応じて、前記コロナ放電の強さを制御する、というものである。
【0016】
[7]また、本発明の一態様は、コロナ放電現象を起こして対象を帯電させる帯電手段におけるコロナ放電の強さを制御する感覚制御部、としてコンピューターを機能させるプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、対象から離れた位置から、その強さ(放電の強さ、およびその結果として帯電の強さ)を制御しながら対象(人等)を帯電させることができる。その際に、対象の位置や姿勢が極端に拘束されることがない。
【0018】
VR映像等の視覚コンテンツを提示する場合には、視覚コンテンツや聴覚コンテンツに対して干渉することなく、視野外問題(out-of-view problem)を解決することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態による感覚提示装置の概略機能構成を示すブロック図である。
図2】同実施形態による感覚提示装置がユーザーに対して感覚の提示を行う際の各部の位置関係等を示す概略図である。
図3】同実施形態による感覚提示装置における放電ガン(帯電手段)の配置の例を示す平面図である。
図4】同実施形態による感覚提示装置における放電ガン(帯電手段)の配置の別の例を示す平面図である。
図5】同実施形態による感覚提示装置における放電ガン(帯電手段)の配置のさらに別の例を示す平面図である。
図6】同実施形態の感覚提示装置による静電気力の調整方法の一例を説明するための概略図(平面図)である。
図7】同実施形態において使用する関数f(式(2))の入力と出力との関係を示すグラフである。
図8】同実施形態による感覚提示装置における感覚制御部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9】同実施形態による感覚提示装置の少なくとも一部の機能をコンピューターで構成する場合のその内部における機能構成の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、VRは「バーチャルリアリティ」(virtual reality、仮想現実感)の意味である。
【0021】
本実施形態の感覚提示装置1は、遠隔からのコロナ放電を用いてユーザーを帯電させ、帯電によって生じる皮膚表面への感覚刺激によってユーザーの注意を所定の方向等(例えば、視野外)に誘導しようとするものである。本実施形態の感覚提示装置1は、後で詳細に説明するように遠隔からユーザーに対して感覚刺激を与えることができるため、例えばユーザーが所定の自由度で移動するような場合でも、従来技術(非特許文献3や非特許文献4)を用いる場合よりも安全にユーザーの注意を誘導することができる。
【0022】
図1は、本実施形態による感覚提示装置の概略機能構成を示すブロック図である。図示するように、感覚提示装置1は、感覚制御部11と、帯電制御部12と、帯電手段21と、導電性マット22と、絶縁シート23と、放電手段31と、電気抵抗32および34と、スイッチ33と、ヘッドマウントディスプレイ38とを含んで構成される。感覚提示装置1は、電気回路あるいは電子回路を用いて実現される。また、感覚提示装置1が持つ機能の少なくとも一部を、コンピューターとプログラムとで実現してもよい。
【0023】
感覚提示装置1は、コロナ放電の原理を利用して対象を帯電させる。帯電させる対象は、人(ユーザー)であってよい。コロナ放電自体は既存の技術を用いて発生させることができる。帯電手段21は電極を有している。この帯電手段21の電極に高周波の電圧(高電圧)を印加することにより、電極周辺の電界が振動する。電界が強く振動すると、電極周辺の気体(例えば、空気を構成する気体)の分子が分離してイオンと原子が発生する。また、元々気体中に存在している電子が加速されて他の原子に衝突することにより、さらに原子が分離して、連鎖的に電子とイオンとが増殖し続ける。これらの電荷により、対象(人)を帯電させることができる。電荷は加速されているため、電極と対象との間にある程度の距離があっても、対象を帯電させることが可能である。言い換えれば、帯電させる対象の位置を電極付近に限定する必要がなく、対象(人)はある程度は自由に移動したり姿勢を変えたりすることができる。感覚提示装置1を構成する各部の機能等は、次の通りである。
【0024】
感覚制御部11は、ユーザー(感覚提示の対象者)が感知する感覚を制御する。感覚制御部11は、ユーザーの複数の感覚を刺激するための制御を行うものであってよい。その一つとして、感覚制御部11は、後で述べる帯電手段21におけるコロナ放電の強さを制御する。本実施形態では、感覚制御部11は、さらに、ユーザーの視覚および聴覚に対して影響を与える信号を出力するとともに、後述する帯電手段21を用いてユーザーに対する静電気刺激を与えるための制御を行う。具体的には、感覚制御部11は、ヘッドマウントディスプレイ38に対して、視覚および聴覚に関する信号を送る。ここで、視覚に関する信号は、VR映像の信号である。また、聴覚に関する信号は、聴覚に関する信号は、上記のVR映像に付随する音声の信号である。なお、VRの映像および音声に関する信号は、ユーザーの動きに依存するものであってよい。つまり、感覚制御部11は、不図示の手段を用いてユーザーの位置、向き、および動きの情報を取得し、それらの情報に基づいた映像および音声を、ヘッドマウントディスプレイ38に対して送信する。さらに、感覚制御部11は、静電気を用いたユーザーへの感覚の提示を制御する。具体的には、感覚制御部11は、電圧を指示する信号を帯電制御部12に送るつまり、感覚制御部11は。帯電制御部12がユーザーに対して提示する静電気力の強度を制御する。感覚制御部11は、ユーザーとターゲットオブジェクトとの位置関係(向きを含む)に応じて、適切な強さの電圧を算出し、予め設定していた変調方法での静電気力による刺激の提示を制御する。なお、ターゲットオブジェクトとは、例えば仮想空間(VR空間)内に存在することが想定される所定のオブジェクトである。感覚制御部11は、仮想空間内におけるユーザーとターゲットオブジェクトとの間の距離や、ターゲットオブジェクトの方向に対するユーザーの向き(顔(頭部)の向き)などに応じて、静電気力の刺激の強さを制御することができる。電圧の強さの算出のしかたの具体例については、後で説明する。
【0025】
感覚制御部11は、さらに後述するスイッチ33のオン(on)/オフ(off)を切り替える制御を行うものであってよい。即ち、感覚制御部11は、スイッチ33のオン/オフを切り替えるための制御信号を出力することができる。後述するように、スイッチ33によって、ユーザー(対象)の帯電あるいは放電を切り替えることができる。
【0026】
帯電制御部12は、感覚制御部11からの指示に基づき、帯電手段21に電圧を印加する。具体的には、帯電制御部12は、下で説明する帯電手段21が有する針電極に電圧を印加する。帯電制御部12は、この電圧を制御することによって、帯電手段21からのコロナ放電量を調節することができる。負の電圧を印加する場合の方が帯電手段21からのコロナ放電が起こりやすいため、帯電制御部12は帯電手段21に対して例えば負の電圧を印加するようにする。帯電制御部12は、帯電手段21に対して、例えばマイナス数十キロボルト(kV)程度の電圧を印加することができるようにする。
【0027】
帯電制御部12は、さらに、スイッチ33のオン/オフを制御するための放電制御信号を出力する。帯電制御部12は、スイッチ33のオン/オフの制御により、後述するように、ユーザーが帯電している状態を維持するか、ユーザーに帯電している電荷を放電するかを切り替えることができる。
【0028】
帯電手段21は、コロナ放電現象を起こして対象(人(ユーザーとも呼ぶ)、人の身体、人体)を帯電させる。この対象とは感覚提示装置1が感覚を提示する対象である。帯電手段21は、コロナ放電を用いて、感覚提示の対象であるユーザーに対して電荷を放出してそのユーザーを帯電させる。帯電手段21は、放電用の針状の電極を含んで構成される。この針電極は「放電ガン(gun)」とも呼ばれる。帯電手段21の針電極に高電圧をかけることによって、帯電手段21は空中に電荷を放出する。
【0029】
上記の帯電制御部12が例えば-40kV程度の電圧を印加すると、帯電手段21はコロナ放電を起こす。帯電手段21が持つ針電極の先端と対象のユーザーとの間の距離が50センチメートル(cm)程度である場合には、-40kV程度の電圧を印加によって、多くの場合において、そのユーザーには皮膚上の毛が浮き立つような感覚が生じる。
【0030】
つまり、ユーザーが帯電することにより、ユーザーの表面の毛(体毛や頭髪等)を逆立たせる作用が生じる。このとき、毛が動き、あるいは毛に作用する物理的な力が働く。すると、ユーザーの皮膚等の神経系統により、その毛の動き(あるいは力の作用)をユーザーが感知する。その毛に対する作用の大きさは、帯電の強さに依存する。つまり、感覚制御部11は、帯電手段21によるユーザーの帯電の強さを変えたり、ユーザーの帯電状態と放電状態とを切り替えたりすることにより、ユーザーに対して感覚を提示することができる。なお、ユーザーが帯電することによって感じる力を「静電気力」と呼んでもよい。別のいいかをすると、感覚提示装置1は、「トリハダ感」をユーザーに対して与えることができる。
【0031】
導電性マット22は、帯電手段21がほぼコロナ放電を起こす方向に設けられておりアースに接続されている。一例として、導電性マット22は、上記の放電ガン(帯電手段21)による放電位置の下に敷かれる。導電性マット22は、電気抵抗34を介してアースに接続されており、放電ガン(帯電手段21)から放電された電荷の少なくとも一部は、この導電性マット22によって吸収される。言い換えれば、放電ガン(帯電手段21)から放出される電荷のうち、ユーザーに帯電しなかった電荷は、導電性マット22および電気抵抗34を介してアースに逃がされる。つまり、放電ガン(帯電手段21)から放出される電荷が、周囲の電子機器や金属などに意図せず帯電することを防止することができる。なお、導電性マット22は、例えば銅などの金属を用いて実現され得る。なお、導電性マット22を設けない構成としてもよい。
【0032】
絶縁シート23は、導電性マット22の上に敷かれる。ユーザーがこの絶縁シート23の上に位置する場合には、絶縁シート23は、ユーザーと導電性マット22との間を隔てる。絶縁シート23が存在することにより、ユーザーに帯電した電荷が導電性マット22を経由してアース側に流れることが妨げられる。絶縁シート23は、例えばゴムなどの絶縁性の高い物質を用いて実現され得る。なお、絶縁シート23を設けない構成としてもよい。
【0033】
放電手段31は、ユーザーに帯電している電荷を放電するための手段である。放電手段31は、ユーザーに装着することができる形態であってよい。放電手段31は、例えばリストバンドなどのように、ユーザー(対象)の身体の一部に装着可能な装着物として実現され得る。放電手段31は、例えば銅などの金属(導電性物質)がユーザーの身体に接触あるいは近接するように構成される。放電手段31は、電気抵抗32およびスイッチ33を経て、アース側に接続される。
【0034】
電気抵抗32は、上記の放電手段31とアースとの間に配される抵抗である。電気抵抗32としては、例えば数メガオーム(MΩ)程度の高い抵抗値のものを用いるようにする。これにより、ユーザーが帯電している状態で後述するスイッチ33がオフの状態からオンの状態に切り替わった際にも、大きな電流が流れることを防ぐ。つまり、電気抵抗32の存在により、対象(ユーザー)に蓄積された電荷の放電手段31からの放電を安全に行うことができる。
【0035】
スイッチ33は、上記の電気抵抗32とアースとの間における電気的なオン(接続)/オフ(切断)を切り替えるためのものである。スイッチ33のオン/オフは、帯電制御部12からの放電制御信号によって切り替えられる。つまり、スイッチ33がオフの状態の時には、放電手段31を装着しているユーザーの帯電が維持される。また、スイッチ33がオンに切り替わると、放電手段31を装着しているユーザーから電荷が放電される。
【0036】
電気抵抗34は、上記の導電性マット22とアースとの間に配される抵抗である。電気抵抗32としては、例えば数メガオーム(MΩ)程度の高い抵抗値のものを用いるようにする。
【0037】
ヘッドマウントディスプレイ38は、感覚制御部11から送られる映像および音声の信号に基づいて、映像や音声をユーザーに提示するための装置である。つまり、ヘッドマウントディスプレイ38は、映像を表示するためのディスプレイパネル等と、音声を出力するためのスピーカー(ヘッドフォン等)とを備えている。ユーザーは、頭部にヘッドマウントディスプレイ38を装着することができる。
【0038】
上で説明したように、ユーザー(対象)は、帯電することによって静電気力を感じる。また、ユーザーは、帯電状態の変化を感じ取ることができる。つまり、感覚提示装置1は、以下の2つの方法を用いてユーザーの帯電状態を制御する(変化させる)ことができる。
【0039】
その1つ目の方法は、ユーザーの帯電と放電との切り替えである。感覚提示装置1は、放電手段31(リストストラップ等)を介して、ユーザーとアースとの接続時間を所定時間内にオン/オフすることによって、ユーザーの帯電量の時間変調を行うことができる。なお放電手段31を介した放電時に低抵抗でアースに接続すると大きな電流が流れてユーザーが電気ショックを感じることがあるので、安全のために、数MΩ程度の抵抗(電気抵抗32)を介してアースに接続するようにしている。ユーザーが絶縁シート23上に存在することにより、スイッチ33がオフになるように切り替えることによって、ユーザー(放電手段31を装着)をアースから切り離すことができる。絶縁シート23の下の導電性マット22は、数MΩ程度の抵抗(電気抵抗34)を介して電荷を放電できるマットである。
【0040】
その2つ目の方法は、帯電手段21における印加電圧の変調である。感覚提示装置1は、所定時間間隔(例えば100ミリ秒(msec)程度の周期)での変調(印加電圧を変動させる)を行うことで、0ボルト(V)と最大電圧(後で説明する式(1)におけるemax)の間で印加電圧を変化させる。これによって、ユーザーが感じる静電気力の大きさが変動する。例として、感覚提示装置1は、100ミリ秒周期で0Vと最大電圧emaxとを切り替えたり、50%の電圧(0.5×emax)と最大電圧emaxとを切り替えたりする方法などが考えられる。
【0041】
感覚制御部11が帯電に関する変調方法を適宜選択して制御し、その感覚制御部11からの指示に従って帯電制御部12が帯電手段21への印加電圧を変化させる。
【0042】
図2は、本実施形態による感覚提示装置がユーザーに対して感覚の提示を行う際の各部の位置関係等を示す概略図である。つまり、同図は、ユーザーが実際に感覚提示装置1を使用する際のイメージを示している。
【0043】
図示するように、ユーザーから所定距離だけ離れた位置(図示する例では上方)に、帯電手段21(放電ガン)が配置されている。電気配線121は、この帯電手段21に対して電圧を印加するための配線である。帯電手段21は、電気配線121による電圧の印加を受けて、コロナ放電を行い得る。帯電手段21自体はユーザーの動きあるいは位置を物理的に拘束するものではなく、ユーザーは自由に動いたり向きを変えたりすることができる。ただし、帯電手段21が効率的にユーザーに対する放電を行うためには、帯電手段21とユーザーの頭部との間の距離は例えば数十センチメートル(例えば、10センチメートル以上、且つ100センチメートル以下程度)であることが望ましい。この状況において、ユーザーは、帯電手段21の付近の位置に拘束されることなく所定範囲内で自由に動き回ることもできる。
【0044】
また、ユーザーは、例えば手首部分に、放電手段31を装着している。この放電手段31は、電気配線131を介して、電気抵抗32、スイッチ33、およびアースに接続されている。
【0045】
また、図示するように、ユーザーの頭部にはヘッドマウントディスプレイ38が装着されている。ヘッドマウントディスプレイ38は、無線信号あるいは有線信号として映像や音声を受信し、それら映像および音声をユーザーに対して提示する。また、ユーザーの腕には放電手段31(図示する形態の場合にはリストバンド)が装着されている。この放電手段31(リストバンド)が持つ電極はユーザーの身体と電気的に接続されている。放電手段31には電気配線131が接続されている。この電気配線131は、電気抵抗32やスイッチ33(図1を参照)を介してアースに接続するための配線である。
【0046】
なお、ユーザーが存在する空間の床面には、導電性マット22が敷かれていて、その上に絶縁シート23が敷かれている。なお、この図2においては、導電性マット22から電気抵抗34およびアースへの電気線を省略している。ユーザーは、絶縁シート23の上において立った状態あるいは座った状態等で、感覚提示装置1を使用することができる。導電性マット22は、図1にも示したように、アースに接続されている。帯電手段21から放電される電荷のうち、ユーザーの身体に帯電しない電荷は、導電性マット22を経由してアースに流れるため、空間内のユーザー以外の物に帯電することを防止できる。なお、絶縁シート23の存在は必須ではないが、絶縁シート23の上にユーザーが居ることにより、ユーザーの身体から導電性マット22を介してのアースへの放電を防ぐことができる。
【0047】
一例として図2に示すような各部(各手段)の配置により、感覚提示装置1は、ユーザーに対して、帯電および放電を行うことによる感覚を提示することができる。また、このとき、ユーザーの位置や動きが極端に拘束されることはない。つまり、ここに例示したような形で感覚提示装置1を使用することにより、ユーザーは、所定範囲内での自由な動作を行いながら例えばVRコンテンツを視聴し、且つ同時に静電気力による刺激の提示を受けて感じ取ることができる。
【0048】
なお、感覚提示装置1が動作する環境において、ユーザーを帯電させるための放電ガンの数は、1つであってもよいし複数であってもよい。次に、図3図4、および図5を参照しながら、放電ガンの配置に関する複数のパターンを説明する。
【0049】
図3は、本実施形態の感覚提示装置における放電ガン(帯電手段21)の配置の例を示す平面図である。この図の例では、ユーザーの規準位置の真上に1個の放電ガン(帯電手段21)が配置されている。ただし、ユーザーは移動可能である。
【0050】
図4は、本実施形態の感覚提示装置における放電ガン(帯電手段21)の配置の別の例を示す平面図である。この図の例では、ユーザーの規準位置(感覚提示対象者想定位置20)を原点として、その規準位置からX軸の正方向および負方向にそれぞれ所定距離だけ離れた位置に、計2個の放電ガン(帯電手段21-1および21-2)が配置されている。ただし、ユーザーは移動したり自己の向きを変えたりすることが可能である。このように異なる位置に複数(2個)の放電ガンを配置した場合、感覚提示装置1は、ユーザーに対して複数の方向からの放電を行うことができる。また、複数の方向のそれぞれからの放電の強さのバランスを様々に変化させることができる。また、時間の経過とともに、その放電の強さのバランスを変えることもできる。したがって、ユーザーは、方向性のパターンを伴って静電気による感覚提示を受けることができる。
【0051】
図5は、本実施形態の感覚提示装置における放電ガン(帯電手段21)の配置のさらに別の例を示す平面図である。この図の例では、ユーザーの規準位置を原点として、その規準位置から、Xの正方向および負方向にそれぞれ所定距離だけ離れた位置(Y座標の値は0)、およびYの正方向および負方向にそれぞれ所定距離だけ離れた位置(X座標の値は0)の、計4個の放電ガン(帯電手段21-1、21-2、21-3、および21-4)が配置されている。この図の配置の場合にも、ユーザーは移動したり自己の向きを変えたりすることができる。このように異なる位置に複数(4個)の放電ガンを配置した場合、感覚提示装置1は、図4の場合よりもさらに多様な形態で放電の方向性のパターンを変えることができる。即ち、ユーザーは、多様な方向性のパターンを伴って静電気による感覚提示を受けることができる。
【0052】
図6は、本実施形態の感覚提示装置1による静電気力の調整方法の一例を説明するための概略図(平面図)である。既に説明したように、感覚制御部11は、帯電手段21に対して印加する電圧を制御する。ここでは、帯電手段21(放電ガン)の数が1である場合を想定する。この図において、XY座標平面(水平面)の原点をユーザーの規準位置とする。なお、上記原点を中心と描かれている破線の円は、単位円である。このときユーザーの頭部(感覚提示対象者頭部20H)が向いている方向を表すベクトルを、Vとする。なお、図6はXY平面と平行な面に正射影して描かれているが、ベクトルVがXY平面と垂直な方向(この方向をZ座標で表す)の成分を持っていてもよい。頭部(感覚提示対象者頭部20H)の方向は、例えば、ヘッドマウントディスプレイ38が向く方向に基づいて取得可能である。
【0053】
また、印加電圧の制御に際してシーン内におけるターゲットオブジェクトの存在を想定する。ターゲットオブジェクトは、仮想空間内における任意の物や他のユーザー等であってよい。頭部(感覚提示対象者頭部20H)の中心(原点)からターゲットオブジェクトの位置へのベクトルを、Vとする。このベクトルVも、ベクトルVと同様に、Z軸方向の座標成分を持つものであってよい。
【0054】
感覚制御部11は、ベクトルVおよびVに基づいて、帯電手段21への印加電圧eを下の式(1)のように算出し、制御することができる。
【0055】
【数1】
【0056】
式(1)において、emaxは、印加電圧の最大値であり、例えば予めその値を設定しておくようにしてよい。また、関数f()は、入力されるパラメーター(ここでは、ベクトルVの絶対値、即ち、頭部(感覚提示対象者頭部20H)からターゲットオブジェクトまでの距離)に応じて0から1までの間の値を返す関数である。一例として、下の式(2)で表す関数f()を用いてよい。
【0057】
【数2】
【0058】
式(2)におけるaおよびbは、適宜与えられるパラメーターである。dは、関数f()への入力(式(1)においてはベクトルVの絶対値)である。tanh()は、双曲線正接関数である。式(2)で定義される関数f()は、入力値dがbよりも十分に小さいときには、1を出力する。また、関数f()は、入力値dがbよりも十分に大きいときには、0を出力する。この関数f()の入出力関係を、後で図7のグラフに示す。
【0059】
式(1)における
【数3】
は、ユーザーの頭部(感覚提示対象者頭部20H)が向く方向(ベクトルVの方向)と、ターゲットオブジェクトの方向(ベクトルVの方向)とが成す角度(ずれの角度)の絶対値であり、0以上、且つπ以下の値を取る。
【0060】
つまり、式(1)によって求められる電圧eは、0以上、且つemax以下の値をとる。また、電圧eは、空間内でのユーザーの位置からターゲットオブジェクトまでの距離(ベクトルVの絶対値)に応じて、その距離が短い程、大きな値を取る。言い換えれば、その距離が長い程、小さな値を取る(図7の関数f()のグラフも参照)。また、電圧eは、ユーザーの頭部(感覚提示対象者頭部20H)の向きがターゲットオブジェクトへの向きから乖離しているほど、大きな値をとる。このように、感覚提示装置1は、空間内におけるユーザーの姿勢(向き)や、ユーザーからターゲットオブジェクトまでの距離に応じて、帯電手段21に印加する電圧の大きさを変える。つまり、感覚提示装置1は、ユーザーに対して静電気力を用いてユーザーに提示する感覚を変える。
【0061】
つまり、図7を参照しながら説明したように、感覚制御部11は、対象(ユーザー、またはユーザーが頭部に装着するヘッドマウントディスプレイ38)の向きを検知し、対象の向きに応じてコロナ放電の強さを制御するようにしてよい。また、感覚制御部11は、映像を含んだ仮想現実(VR)コンテンツを出力するとともに、その仮想現実コンテンツが想定する仮想空間における対象(ユーザー)の向きと仮想空間内における仮想ターゲット(前記のターゲットオブジェクト)の向きとの関係に応じて、コロナ放電の強さを制御するようにしてもよい。さらに、感覚制御部11は、前記仮想空間における対象(ユーザー等)と前記仮想ターゲットとの間の距離(前記のベクトルVの絶対値)にも応じて、コロナ放電の強さを制御してもよい。
【0062】
なお、図6や式(1)を用いて説明した静電気力(提示する感覚の大きさ)の制御の方法は単なる一例であり、他の形態の方法によって静電気力を可変とするようにしてもよい。
【0063】
図7は、式(2)で示した関数f()の入力と出力との関係を示すグラフである。ここで図示するグラフは、a=2、b=3とした場合の例である。図示するように、tanh(a(b-d))の作用により、dがbよりも十分に小さい領域においては関数値が1であり、dがbよりも十分に大きい領域においては関数値が0である。dの値がその中間の領域においては、関数f()の値は1から0に滑らかに変化している。言い換えれば、関数f()は、入力値に応じて1以下且つ0以上の値を取るように滑らかに変化する単調減少関数である。
【0064】
図8は、感覚提示装置1における感覚制御部11の処理手順の例を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに沿って手順を説明する。
【0065】
まずステップS11において、感覚制御部11は、仮想空間内のターゲットオブジェクトを設定する。感覚制御部11は、少なくともターゲットオブジェクトの位置(座標)を決定する。ターゲットオブジェクトの位置は、固定されたもの(不変)であってもよいし、時間経過とともに変化するものであってもよい。
【0066】
次にステップS12において、感覚制御部11は、VRコンテンツの提示を開始する。即ち、感覚制御部11は、VRコンテンツの映像および音声の信号をヘッドマウントディスプレイ38に対して送信する。これにより、ヘッドマウントディスプレイ38は、映像および音声を出力し始める。
【0067】
次にステップS13において、感覚制御部11は、その時点におけるユーザーの頭部の方向のベクトル(前記のベクトルV)を取得する。頭部の方向は、例えば、カメラで撮影しているユーザーの頭部あるいはヘッドマウントディスプレイ38の映像に基づいて取得される。あるいは、頭部の方向は、ヘッドマウントディスプレイ38等に設けられた方向取得手段(ジャイロセンサー等)によって取得してもよい。
【0068】
次にステップS14において、感覚制御部11は、その時点における、ユーザーの頭部からターゲットオブジェクトへの方向のベクトル(前記のベクトルV)を取得する。ターゲットオブジェクトの方向は、例えば、把握されるユーザーの頭部の位置(座標)と、ターゲットオブジェクトの位置(座標)とに基づいて算出され得る。
【0069】
次にステップS15において、感覚制御部11は、体性感覚刺激の強度を算出する。体性感覚刺激の強度(印加電圧eの大きさ)は、例えば、前記のベクトルVおよびVに基づいて算出され得る。なお、具体的な算出方法の例は、既に式(1)等を参照しながら説明した通りである。
【0070】
次にステップS16において、感覚制御部11は、体性感覚刺激の提示を帯電制御部12に対して指示する。即ち、感覚制御部11は、ステップS15において算出された体性感覚刺激の強度(静電気刺激の強さ、印加電圧の大きさ)を、帯電制御部12に伝える。これに応じて、帯電制御部12は、帯電手段21に印加する電圧の大きさを変化させる。
【0071】
次にステップS17において、感覚制御部11は、現時点以後においてもコンテンツが継続するか否かを判定する。例えば予め決められた長さのコンテンツであれば、コンテンツがまだ残っているか否かを判定する。また、例えば外部からの終了指示等によって終了するコンテンツであれば、その終了指示を受信しているか否かを判定する。コンテンツが継続する場合(S17:YES)には、ステップS13に戻る。コンテンツが継続しない場合(S17:NO)には、感覚制御部11は、本フローチャート全体の処理を終了する。なお、所定時間間隔ごと(例えば、1秒ごと、映像の1フレームごと、あるいは映像の数フレームごとなど)にステップS17からS13への遷移を行うように、タイミングの制御を行ってもよい。
【0072】
図9は、本実施形態の感覚提示装置1の少なくとも一部の機能をコンピューターで構成する場合のその内部における機能構成の例を示すブロック図である。感覚提示装置1において、少なくとも感覚制御部11はコンピューターを用いて実現可能である。感覚提示装置1内の他の要素の少なくとも一部がコンピューターを用いて実現されてもよい。図示するように、そのコンピューターは、中央処理装置901と、RAM902と、入出力ポート903と、入出力デバイス904や905等と、バス906と、を含んで構成される。コンピューター自体は、既存技術を用いて実現可能である。中央処理装置901は、RAM902等から読み込んだプログラムに含まれる命令を実行する。中央処理装置901は、各命令にしたがって、RAM902にデータを書き込んだり、RAM902からデータを読み出したり、算術演算や論理演算を行ったりする。RAM902は、データやプログラムを記憶する。RAM902に含まれる各要素は、アドレスを持ち、アドレスを用いてアクセスされ得るものである。なお、RAMは、「ランダムアクセスメモリー」の略である。入出力ポート903は、中央処理装置901が外部の入出力デバイス等とデータのやり取りを行うためのポートである。入出力デバイス904や905は、入出力デバイスである。入出力デバイス904や905は、入出力ポート903を介して中央処理装置901との間でデータをやりとりする。バス906は、コンピューター内部で使用される共通の通信路である。例えば、中央処理装置901は、バス906を介してRAM902のデータを読んだり書いたりする。また、例えば、中央処理装置901は、バス906を介して入出力ポートにアクセスする。
【0073】
前述の通り、少なくとも感覚制御部11等の機能を、コンピューターで実現することができる。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピューター読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピューターシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、DVD-ROM、USBメモリー等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。つまり、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、非一過性の(non-transitory)コンピューター読み取り可能な記録媒体であってよい。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、一時的に、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバーやクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリーのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0074】
以上説明したように、本実施形態の感覚提示装置1は、静電気力をユーザーに対して作用させることにより、ユーザーに対して感覚を提示することができる。VRコンテンツを提示する感覚提示装置1は、ヘッドマウントディスプレイを装着して映像を見るユーザーの視野外からの情報を、ユーザーに気付かせることができる。この技術は、VRコンテンツの提示時に限らず、応用できる。感覚提示装置1が持つ感覚提示の手段は、映像(動画)番組の提示以外にも、ゲーム等のインタラクティブメディアで幅広い応用が可能である。
【0075】
以上、実施形態を説明したが、本発明はさらに次のような変形例でも実施することが可能である。
【0076】
[変形例]上記実施形態において、感覚提示装置1は、VR映像等をユーザーに対して提示するものであったが、変形例として、感覚提示装置1は、VR映像やその他の映像等をユーザーに対して提示しなくてもよい。この場合にも、帯電手段21は、コロナ放電現象を起こして対象を帯電させることができる。また、感覚制御部11は、帯電手段21におけるコロナ放電の強さを制御することができる。このように、本変形例では、感覚提示装置1は、映像(VRコンテンツ等)とは無関係に、ユーザーに対して静電気力による感覚を提示することができる。実施形態の図7の例では、VRコンテンツ内のターゲットオブジェクトとの位置、向き、距離の関係において感覚制御部11が印加電圧を制御していた。一方で、VR映像等の映像コンテンツとは無関係に感覚制御部11が印加電圧を制御する場合には、提示される感覚の意味付けは、そのときの状況(文脈)に応じた解釈がなされ得るものである。
【0077】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、例えば、機械と人との間のインターフェースの手段の多様化および質の向上のために利用することができる。その一例は、仮想空間等における視野外の情報の提示である。また別の例は、仮想空間に限らず一般の状況における情報の提示である。但し、本発明の利用範囲はここに例示したものには限られない。
【符号の説明】
【0079】
1 感覚提示装置
11 感覚制御部
12 帯電制御部
20 感覚提示対象者想定位置
20H 感覚提示対象者頭部
21,21-1,21-2,21-3,21-4 帯電手段
22 導電性マット
23 絶縁シート
31 放電手段
32 電気抵抗
33 スイッチ
34 電気抵抗
38 ヘッドマウントディスプレイ
121,131 電気配線
901 中央処理装置
902 RAM
903 入出力ポート
904,905 入出力デバイス
906 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9